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為替レートの変動要因~理論的側面から
2010 年 9 月 29 日 R&I レポート vol.21 為替レートの変動要因~理論的側面から~ 年金事業部 チーフアナリスト 舎利弗 孝通 急激な円高を阻止するために、政府も「為替介入」を実施する等外国為替市場では神経質な動 きが続いている。当然の事ながら、外貨建て資産を保有する場合、為替レートの変動は大きなリ スクとなる。そこで、今回は為替レートの変動を説明する理論、考え方を整理しておきたい。 そもそも、為替レートは金利やインフレ率と相互に密接に関連し合っている。それぞれの関係 を考える上でベースとなる考え方には、①為替レートとインフレ率についての「購買力平価」② 金利とインフレ率についての「フィッシャー仮説」③スポット、先物の為替レートと金利につい ての「金利パリティ」 がある。 ①「購買力平価」とは、国際貿易に制限がなく、為替に取引コストがかからないと仮定すれば、 同一の商品は、どこの国においても、値段が等しいという考えである。ある商品の価格がアメリ カ国内で100 ドル、日本国内で10,000 円であれば、交換レートは1 ドル=100 円となる。仮に、 アメリカに比べて日本の物価が上昇(同じ商品が11,000 円に)すれば、日本の通貨が下がる(1 ド ル=110 円)ことになる。仮に、1 ドル=100 円で変化がないと、日本が輸入するアメリカの商 品(10,000 円のまま)が増え、そのために、ドルの需要が増加して、ドル高(最後には1 ドル= 110 円)になる。購買力平価では、為替レートの変化は、各国のインフレ率格差を反映したもの になる。 ②「フィッシャー仮説」とは、名目金利を、実質金利と期待インフレ率に分解し、各国の実質 金利がすべて同じになるので、名目金利の差は、期待インフレ率の差に等しいという考えである。 ③「金利パリティ」とは、スポットと先物の為替レートの差は、金利差に等しいという考えで ある。 上記の関係から、実は、為替レートの変化≒インフレ率の変化≒金利差 という関係が成立し ている。例えば、円よりも高金利である通貨は、金利差の分、為替レートが下落することになる (円高・高金利通貨安)。また、インフレ率調整後の実質金利は、長期的には同じ水準となる傾向 があり、高金利通貨の国は高インフレであるが、高インフレの通貨もまた、低インフレの通貨に 対して下落する(低インフレ通貨高・高インフレ通貨安)。 実際のデータで為替レートと金利差について確認すると、例えば、ドルと円の場合、1972年1 月~2010年8月までの日本と米国の10年国債の利回り格差は2.53%であった。この期間の利回りは、 米国債は7.26%で、日本国債は4.73%であった。一方、この期間の為替レートの変化は、年平均で 2.78%の円高であった。仮に金利の高い米国債を購入したとしても、利回り格差のほとんどは為替 レートの調整によりほぼ帳消しになっていた。 ただし、 「購買力平価」や「フィッシャー仮説」といった理論は必ずしも短期的な為替レートの 変動を説明するものではない。あくまで長期的な観点からの為替レートの変動要因であるという 点に留意する必要があろう。 株式会社格付投資情報センター 東京都中央区日本橋 1-4-1 日本橋一丁目ビル TEL03-3276-3417 本資料は、お客様の運用戦略や投資判断等の参考となる情報の提供を目的として作成されたものであり、実際の投資等に係わる最終的な決定は、お客様自身のご判断で行っていただきますようお願いいた します。シミュレーションやバックテスト等は参考データをご提供する目的で作成したものであり、将来の利回りを保証するものではありません。データの一部は、弊社が信頼できると判断した各種情報 源から入手した情報等に基づくものですが、その情報の正確性・確実性について弊社が保証するものではありません。本資料は、作成日において入手可能な情報に基づいて作成したものであり、今後予告 なく変更となる場合がございます。本資料に関する一切の権利は、引用部分を除き弊社に属し、いかなる目的であれ本資料の一部または全部の無断での使用・複製は固くお断りいたします。投資評価本部 における業務は、信用格付行為に関わるものではなく、弊社の行う信用格付行為に影響を及ぼすものではありません。弊社が発行する「年金情報」等の媒体にて掲載された事項と本資料において提供され た情報は、それぞれ独立のものであり一致するものではありません。本資料の内容に関して、ご不明な点等がございましたら、弊社担当者宛にご照会くださいますようお願いいたします。