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Ti-Ni 形状記憶合金の超弾性挙動に及ぼす繰返し温度変態の影響 Effect

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Ti-Ni 形状記憶合金の超弾性挙動に及ぼす繰返し温度変態の影響 Effect
TiTi-Ni 形状記憶合金の
形状記憶合金の超弾性挙動に
超弾性挙動に及ぼす繰返
ぼす繰返し
繰返し温度変態の
温度変態の影響
Effect of Cyclic Thermal Transformation on Superelastic Behavior
of Ti-Ni Shape Memory Alloy
精密工学専攻
13 号 金子
稔
Toshiya Kaneko
1. 緒言
形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMA)は,加熱で変形が回
復する形状記憶特性と除荷で変形が回復する超弾性特性を有して
いる.これらの特性はマルテンサイト変態(M 変態)とマルテン
サイト逆変態(逆変態)によって引き起こされる現象である(1).
Fig.1 に,形状記憶特性と超弾性特性による原子配列の変化の
模式図を示す.ここで,T は変形温度,Mf は M 変態終了温度,
Af は逆変態終了温度を表す.形状記憶特性は,Mf 点以下のマルテ
ンサイト組織の状態において,負荷により変形が加えられた後,
温度を Af 点以上に加熱することによって元の形状に戻る特性で
ある.Fig.1 では(a)→(b)→(c)→(a)の経路をたどる.(b)の A,B は
マルテンサイト兄弟晶を表し,実際の 3 次元の原子配列のもとで
は 24 通りの兄弟晶が形成される.超弾性特性は,Af 点以上の温
度において,負荷を加えて非線形的な変形を与えても,除荷する
だけで元の形状に戻る特性である.Fig.1 では(a)→(c)→(a)の経路
をたどり,応力によってマルテンサイト相(M 相)が誘起され,
優先方向の兄弟晶Aが成長しマクロ的な変形が生ずることになる.
形状記憶合金は形状記憶特性あるいは超弾性特性を用いた単純
な動作の機械や日用品に利用されているが,複雑な機械などに用
いるためには,より詳しくその特性を調べる必要がある.
温度によってM変態させる方法としては,直接通電法が一般的
(2)であるが,応答性の問題からサーモモジュールを用いた方法が
とられるようになってきた(3).これまで温度による変態と応力誘
起による変態のそれぞれに関する研究(4)(5)は盛んに行われてきた
が,この2つの変態を組合わせて特性の変化を調べた研究報告は
さほどなされていない.そこで本研究では,サーモモジュールを
利用して温度変化のみに伴う変態を繰返し与えた Ti-Ni 形状記憶
合金について,その超弾性特性を繰返し負荷・除荷の引張試験に
よって評価し,繰返し温度変態の影響を調べることにする.
過程における M 変態開始応力が低下し,
ヒステリシスループは小
さくなる.それと共に,応力を完全に除荷した際に残留するひず
みが増加する.このような現象をトレーニング効果という.
トレーニング効果は以下のように説明される.試験片に繰返し
変形を加えることで,SMA 中にM変態が誘起されてから母相に
戻る際,変態界面が試験片中を往復する.しかし原子配列は完全
に元の状態にはなれず,残留 M 相が生じるものと考えられる.そ
して,その残留 M 相の蓄積によって,負荷過程の応力低下と応力
を除荷した際に残留するひずみが増加する.
3. 実験
3.1 供試材および試験片
供試材は直径 0.56mm の Ti-Ni 形状記憶合金の線材で,成分を
Table 1 に示す.試験片は供試材を 125mm の長さに切断したも
のとした.それらを 10 本ずつまとめてチタン薄膜に包み,石英
ガラス管に真空封入し,温度 773K で 10 分間加熱した後,水焼
入れによる熱処理を施した.熱処理後に示差走査熱量計(DSC)
(a)
Cooling(T<Mf)
Heating(T>Af)
(b)
(c)
A
B
Unloading(T>Af)
Loading(T>Af)
Loading(T<Mf)
(Shear strain)
Fig.1 Schematic illustration of atom arrangement
and change in shape of a bulk material.
2. 理論
Ed
Stress
2.1 エネルギ散逸率
超弾性特性を示す応力ひずみ曲線を Fig.2 に示す.負荷過程と
除荷過程の間でヒステリシスループを描く.このときの Er を回
復ひずみエネルギ,Ed を散逸ひずみエネルギ,それらを合わせ
た Et(Et=Ed+Er)を総ひずみエネルギと呼ぶ.この Ed と Et
の比,すなわち Ed/Et がエネルギ散逸率ηである.
2.2 トレーニング効果
応力ひずみ線図において,繰返し数が増えるにしたがって負荷
Er
Strain
Fig.2 Schematic stress-strain curve in the
superelastic behavior of SMA.
で測定した変態温度を Table 2 に示す.
3.2 実験装置
温度変態装置はペルチェ素子を4枚使用した空冷式プレート冷
却ユニット,温調電源,ファン用電源内蔵カウンターから成り立
っている.
引張試験装置は容量 10kN の AC サーボモータ引張試験機,恒
温炉,制御装置(PC)から成り立っている.恒温炉の温度精度は±
0.2K である.
3.3 実験方法
3.3.1 繰返し温度変態の付与方法
試験片を冷却ユニット内部に装着し下限温度と上限温度を設定
する.設定温度は,下限温度 278.0K,上限温度 313.0Kとした.
なお,冷却に費やされる時間は約 80sで,加熱に費やされる時間
は約 60sである.温度変態回数 Nt は 1,10,100,1000,10000
回とし,各 Nt につき試験片を2本使用した.
3.3.2 負荷・除荷の引張試験方法
試験片を標点間距離 80mm で試験機のクロスヘッドに装着す
る.試験制御はひずみ速度を 0.1mm/s で一定とし,最大ひずみ
εm を 5%とした.試験温度は 313.0Kとした.
3.4 試験形式
実験は2種類の試験を行い,それぞれを Test1,Test2と呼ぶ
ことにする.試験形式は以下のとおりである.
Test1:試験片に負荷・除荷の引張試験を 52 サイクル行い,十
分にトレーニング効果を確認した上で繰返し温度変態を与える.
その後再度引張試験を 10 サイクル行い,超弾性特性の挙動を観
察する.
Test2:試験片に一定回数の繰返し温度変態を与え,その後負
荷・除荷の引張試験を 62 サイクル行い,超弾性特性の挙動を観
察する.
52 サイクル目の値との違いを同様な変化率として示している.引
張試験 53 サイクル目の変化率に注目すると,繰返し温度変態回
数が増えるほど応力の変化率が高くなっていることがわかる.こ
れは温度変態を繰返すことにより,試験片の変形抵抗が上がった
ことを示している.また引張試験 62 サイクル目では 53 サイクル
目に比べσ3%loading の値は低下しており,繰返し温度変態を与える
ことにより,トレーニング効果が再度生じたことが確認できた.
つまり最初の引張試験 52 サイクルでM相の蓄積が飽和状態であ
ったにも関わらず,
温度変態によってM相の飽和状態が解消され,
トレーニング効果が現れる余地を生み出したと考えられる.
Test2における温度変態回数 Nt と引張試験 1,10,20,30,
40,50 サイクル目でのσ3%loading の値の変化率の関係を Fig.5 に
示す.一部特異なデータがあるが,全体としては予め与える温度
変態の回数が 1000 回,10000 回と多くなるとσ3%loading の値は温
度変態がない場合と比べ低下することが示されている.これは温
度変態を繰返すことにより試験片の変形抵抗が下がったことを意
味しており,Test1とは逆の結果となった.なお,その低下は引
張試験回数の少ない範囲で顕著で,引張試験回数が多くなると,
温度変態の効果が消失する傾向が認められる.
4.2 残留ひずみ
Fig.3 に示す応力ひずみ曲線において,図中 印で示す領域にお
いて,
除荷時の応力が0になった時点で引張りひずみが残留する.
以下このようなひずみを残留ひずみと呼ぶことにする.Test1で
は,温度変態を与える前後の引張試験において,試験片をつかみ
Table 1 Chemical compositions (at%)
Ni
50.85
49.15
Table 2 Phase transformation temperatures (K)
4. 結果および考察
Ms
Mf
As
Af
303.2
283.9
289.4
306.2
600
Stress MPa
500
400
300
N=1
200
N=2
N=52
100
N=53afterNt=1000
N=62afterNt=1000
0
0
1
2
3
4
5
6
Strain %
Fig.3 Stress-strain curves of Nt=1000 in Test 1.
15
Changing rate in
stress ofσ3%loading %
Test1 では繰返し温度変態を与える前後で応力ひずみ線図に変
化が生じた.その間の変化率を次のように定義した.すなわち,
温度変態を与えた直後の 53 サイクル目の応力ひずみ曲線の各位
置における値の変化量を温度変態を与える直前の 52 サイクル目
の値で除した値を変化率とした.
Test2 では,Test1 において繰返し温度変態を与えるまでに行っ
た 52 サイクルの負荷・除荷の引張試験,全体で 10 本の試験片に
対して行ったが,その平均を Nt=0 における値として基準値とし
た.そして,繰返し温度変態を与えたことによる応力ひずみ曲線
における変化率としては,Nt=0 における値と温度変態後の値と
の差を Nt=0 における値で除したものとした.
4.1 負荷過程のひずみ3%時の応力
Test1 での温度変態回数 Nt=1000 の場合を例として,応力ひず
み曲線を Fig.3 に示す.ここで負荷過程におけるひずみ3%時の
応力σ3%loading に注目する.負荷・除荷の引張試験の回数とともに
σ3%loading の値は低下するが,回数が進むにつれて低下現象は飽和
する.繰返し温度変態後の最初の引張試験,全体では 53 サイク
ル目の引張試験ではσ3%loading の値が上昇した.このようなことは
Test1のどの試験片に対しても観察されたことであった.
ここで繰返し温度変態を与えたことによる 52 サイクル目と 53
サイクル目のσ3%loading の変化率と温度変態回数 Nt の関係を
Fig.4 に示す.同図には,全体で 62 サイクル目のσ3%loading の値と
Ti
10
5
0
53
-5
62
-10
1
10
100
1000
10000
Number of thermal transformation
Fig.4 Relationship between changing rate in stress of
σ3%loading and number of thermal transformation in Test1.
Test1 における温度サイクルを与える前の負荷・除荷の引張試
験において,応力ひずみ曲線におけるエネルギに関する情報,す
なわち Fig.1 における Et,Ed,ηの値は,試験回数の増加に伴
いいずれも減少する傾向にある.変化の程度は試験回数 1~10 サ
イクルの初期に大きく,試験回数が 40 サイクル以上になると小
さくなる.
Test1 における温度サイクルを与える前後の負荷・除荷の引張
Changing rate in
stress ofσ3%
4
2
0
-2
-4
-6
-8
1
10
20
30
40
50
-10
1
10
100
1000
10000
Number of thermal transformation
Fig.5 Relationship between changing rate in stress
of σ3%loading and number of thermal transformation
100
Changing rate in
residual strain %
53
62
50
0
-50
-100
1
10
100
1000
10000
Number of thermal transformation
Fig.6 Relationship between changing rate in residual strain
and number of thermal transformation in Test1.
Changing rate in
residual strain %
200
150
1
10
20
30
40
50
100
50
0
-50
1
10
100
1000
10000
mW
Number of thermal transformation
Fig.7 Relationship between changing rate in residual strain
and number of thermal transformation in Test2.
Heat flow
直している.温度変態後の引張試験ではつかみ直した時点を基準
にして残留ひずみを求めている.温度変態前の 52 サイクルまで
の引張試験の間,残留ひずみは増加するが,その増加の割合は引
張試験の初期に顕著で,後半では飽和する傾向にある.これはト
レーニング効果による応力誘起M相の蓄積によるものと考えられ
る.
Test1 における温度変態を与える前後,52 サイクル目と 53 サ
イクル目の応力ひずみ曲線における残留ひずみの変化率と温度変
態回数 Nt との関係を Fig.6 に示す.同図には Fig.4 の場合と同じ
ように,62 サイクル目の残留ひずみの値と 52 サイクル目の値と
の違いを同様な変化率として示している.
温度変態回数 1 回の結果を除くと温度変態回数 10 回以上では
-50%のほぼ一定の変化率を示している.すなわち,温度変態を与
える前の繰返し引張試験でほぼ飽和していた残留ひずみが,温度
変態を与えることにより飽和時の値の 50%ほどがさらに生じた
ことになる.温度変態を与えた後の 10 サイクルの引張試験の間
では,顕著な残留ひずみの変化は見られなかった.
Test2 における引張試験 1,10,20,30,40,50 サイクル目に
おける残留ひずみの変化率,すなわち引張試験の前に繰返し温度
変態を与えないか与えるかの違いと,与えた場合の温度変態回数
との関係を Fig.7 に示す.ここでも温度変態回数 1 回の結果を除
くと,温度変態回数 10 回以上では変態回数が増えると,引張試
験の各サイクルにおいて残留ひずみは増加する傾向にあり,特に
負荷・除荷の引張試験の初期にその傾向は顕著に現れている.引
張試験回数 20 サイクル以上では回数の影響はほとんど見られな
くなる.
Test2 ではトレーニングを行っていないため,繰返し温度変態
を与える前の試験片は母相の状態である.その状態で繰返し温度
変態を与えるため,試験片内にM相が蓄積されるものと考えられ
る.それは Fig.8 に示す DSC による変態温度測定の図より説明
できる.この図は横軸に温度を,縦軸に熱の流れ,すなわちマル
テンサイト変態速度をとったものである.今回の繰返し温度変態
は温度の下限を 278K,上限を 313K と定めており,図中にそれ
らの温度を縦線で示した.縦線,変態速度線,基準線で囲まれる
面積が 1 回の温度変態によって変態した相の量を表している.図
中上側のマルテンサイト変態量と図中下側のマルテンサイト逆変
態量はそれほど差がないように見える.しかし,繰返し温度変態
における冷却過程に費やされる時間は,過熱過程に費やされる時
間よりも長い.そのため,温度変態を繰返すことにより,徐々に
M相の蓄積が進んでいったと考えられる.温度変態によって生成
されるM相は,Fig.1(b)のような兄弟晶をもつM相である.この
兄弟晶の境界が低応力で簡単に移動するため,温度変態によって
生成されるM相の変形抵抗は小さい.
このような相の蓄積の結果,
Fig.5 に示されるσ3%loading の減少や,Fig.7 の残留ひずみの増大が
起こったと考えられる.また,Fig.5 や Fig.7 は引張試験の回数が
増えるほど,変化率が小さくなる傾向にある.これは,結晶方位
の変化によるものと考えられる.温度変態によって蓄積されたM
相は繰返し引張試験によって徐々に応力誘起によるM相となり,
引張試験 20 サイクル程度で温度変態の効果を失わせていると考
えられる.
4.3 エネルギに関連する値の繰返し温度変態による変化
通常応力ひずみ曲線からエネルギを求めるには,近似式を用い
る(6)が,本研究では,応力ひずみ曲線を積分することにより,
正確なエネルギを算出した.
5
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
←Cooling
Heating→
-40
-20
0
20
40
Temperature ℃
Fig.8 DSC plot in SMA.
60
80
5. 結言
Ti-Ni 形状記憶合金の超弾性特性に及ぼすサーモモジュールを
用いた繰返し温度変態の影響を調べ,以下の結果が得られた.
(1) 繰返し負荷・除荷の引張試験後に繰返し温度変態を行った場
合は,σ3%loading の上昇,残留ひずみの減少を確認することが
できた.これは繰返し変形により生じていたM相の飽和状態
が,繰返しの温度変態によって解消されたためと考えられた.
(2) 繰返し温度変態によって,σ3%loading 変化率の低下,残留ひず
み変化率の上昇を確認することができた.その理由は繰返し
温度変態によって生じた残留M相の生成が考えられた.
(3) 繰返し温度変態によるひずみエネルギの変化はσ3%loading や
残留ひずみの変化によってもたらされたものと考えられた.
Changing rate in Et,Ed and η%
80
Et
70
Ed
η
Solid: 53rd cycle
Open: 62nd cycle
60
50
40
30
20
10
0
-10
-20
1
10
100
1000
10000
Changing rate in Et,Ed and η%
Number of thermal transformation
Fig.9 Relationship between changing rate in Et,Ed and
η,and number of thermal transformation in Test1.
25
20
Et
Ed
η
15
10
5
0
-5
1st cycle
-10
1
10
100
1000
100
1000
10000
Number of thermal transformation
Fig.10 Relationship between changing rate in Et,Ed
and η,and number of thermal transformation in Test2.
Changing rate in Et,Ed and η%
試験 52 サイクル目と 53 サイクル目の応力ひずみ曲線における
Et,Ed,ηの値の変化率と温度変態回数 Nt との関係を Fig.9 に
示す.同図には 62 サイクル目の Et,Ed,ηの値と 52 サイクル
目の値との違いを同様な変化率として示している.ここで温度変
態を与えた前後の引張試験の変化に注目すると,温度変態を与え
ることで Et,Ed,ηすべての値は高くなり,繰返し温度変態の
回数が増える程,その傾向は顕著になっている.また,温度変態
後においては引張試験を繰返すことにより,Et,Ed,ηすべての
値は低下することがわかる.
温度変態を与えることによる Et の回復に関しては,σ3%loading
の上昇が要因となっている.
また Ed の回復に関しては,
σ3%loading
の上昇に加え,
残留ひずみの減少も要因になっている.
そのため,
Ed の変化率は Et の変化率に比べ大きくなり,結果としてηの変
化率も上昇したと考えられる.
Test2 における引張試験 1 サイクル目における Et,Ed,ηの変
化率と温度変態回数との関係を Fig.10 に示す.Ed,ηに関して
は,各温度変態回数で同様な傾向の変化率を示しており,温度変
態回数 1000 回以上の変態回数が多い領域では,変化率が高い値
を示している.Et に関しては温度変態回数が増えるほど,緩やか
な減少傾向を示している.
温度変態を与えることによる Ed の変化率は,4.2 節で述べた残
留ひずみの増加によって上昇につながったと考えられる.そのた
め,Ed の変化率が高い変態回数 1000 回以上において,Ed の変
化率と Fig.7 の残留ひずみの変化率は同様の傾向を示している.
また,Et の変化率はσ3%loading の減少が要因で,減少したと考え
られる.ηの変化率は,Ed の変化率の上昇が Et の変化率の減少
に比べ大きかったことから,上昇傾向になったと考えられる.
同様に引張試験 50 サイクル目における Et,Ed,ηの変化率と
温度変態回数との関係を Fig.11 に示す.Et,Ed に関しては,各
温度変態で同様な傾向の変化率を示しており,
温度変態回数 1000
回以上の変態回数が多い領域では,変化率は大きく減少傾向を示
し,温度変態の影響が顕著であった.η関しては温度変態の回数
によらず,変化率は 0%付近を示し,温度変態の影響は顕著では
なかった.
引張試験 50 サイクル目では繰返し変形による残留ひずみの蓄
積によってヒステリシスループの始点が応力ひずみ線図における
右側に移動する.このことにより,Et,Ed どちらも同様に温度
変態を繰返すことで変化率が減少したと考えることができる.ま
たηは Et,Ed ともに同じ程度の変化率の減少であったため,変
化率は小さい値を示したと考えられる.
10
5
0
-5
-10
-15
Et
Ed
η
-20
50th cycle
-25
1
10
10000
Number of thermal transformation
Fig.11 Relationship between changing rate in Et,Ed and
η,and number of thermal transformation in Test2.
参考文献:
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60
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