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平成26年度出版物の流通促進に向けた契約の在り方に関する調査事業

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平成26年度出版物の流通促進に向けた契約の在り方に関する調査事業
平成26年度出版物の流通促進に向けた契約の在り方に関する調査事業
報告書(概要)
◆検討の対象について
出版物は,著作者による原稿の執筆のほか,原稿以外で出版物を構成する挿絵等の作成がな
された後,印刷等の出版のための過程を経た後に出版されるに至る(下記「出版のプロセス」
参照)
。それゆえ,そのそれぞれのプロセスにおいて,口頭又は文書にて契約が締結されるこ
とになる。
ところで,本検討会は,議論を円滑に進める観点から,著作者と出版社との間で交わされる
様々な契約のうち,特に,主たる著作者が 1 名で,この著作者が新たに出版物を出版する場合
を念頭に置いて検討を行った。
なお,出版に関する契約実務には,①新しく原稿の執筆等から依頼される場合や,②既に著
作物が存在している場合,③出版物の刊行・利用の詳細な態様・条件等が事前に想定できる場
合,④装丁やイラスト等主たる著作物にアドオンする著作物の場合が考えられる。①及び②の
場合には,出版を行うことが確実になった段階において,書面による契約締結が必要であると
考えられるが,やむを得ない場合においても,可能な限り早い時期に契約の締結を行うことと
し,遅くとも,発行時までに,書面で契約を締結することが望ましい。また,③及び④の場合
には,可能な範囲で,原稿等の執筆依頼時に書面で契約を締結することが望ましいと考えられ
る。
そこで,本検討会では,主として遅くとも発行時までに書面で締結すべき契約を念頭におき,
必要な論点の整理を行い,特に発行時よりも前の時点での対応が求められる論点がある場合に
は,そのことを明示した上で,検討を行った。
<出版のプロセス>
1
◆検討の内容について
1.出版に関する契約の主たる条項
(1)出版に関する契約の方法について
契約の形態,出版権の設定ないし許諾の範囲について,当事者間で合意をした上で,契約上明
記をしなければならない。
① いずれの契約形態をとるか(出版権設定契約か,出版許諾契約か,権利の譲渡契約か)
。
出版許諾契約の場合には,排他的な利用許諾か否か。
② 出版権の設定ないし出版の許諾の範囲
ⅰ)出版の方法
ⅱ)出版権の設定ないし出版の許諾の範囲
(2) 著作物の利用料の定め方について
著作物利用料の定め方(例)
① 紙の出版における著作物利用料
印
税
方
式
定価×印税率×部数
実売部数を基準
発行部数を基準
※いずれの場合も保証部数・保証金額が定められることがある
利 用 料 の 一 括 払 い
②電子出版における著作物利用料
ランニング・ロイヤリティ
ー
個別ダウンロード等方式
利用者の購入価格を基準
出版社の希望販売価格を基準
※価格×ロイヤリティー率×ダウンロード数等
サブスプリクション方式
レベニュー・シェア
※出版社への入金額×出版物ごとの分配率
※いずれの場合も保証部数・保証金額が定められることがある
利 用 料 の 一 括 払 い
2
※利用料に関する契約条項の電子出版における契約上の留意点
①
②
③
④
利用料の金額(算出方法)
利用料の支払時期
利用料の支払方法
利用料の根拠(部数やダウンロード数の確認方法)
(3)出版の責任について
出版に関する契約において,出版社が負う最も本質的な義務が,出版物を出版する義務及び出
版物を継続的に出版する義務である。
※出版の義務及び継続出版の義務に関する契約上の留意点
① 出版義務に関する規定
ⅰ)出版義務の定めの有無
ⅱ)出版の時期
ⅲ)時期の変更が可能となる事情
ⅳ)出版義務に違反した場合の効果
② 継続出版義務に関する規定
ⅰ)継続出版義務に関する定めの有無
ⅱ)継続出版義務を負う事由(継続出版義務を負わない事由)
ⅲ)出版を停止する場合の手続
ⅳ)継続出版義務に違反した場合の効果
(4)出版に関する契約の期間
出版に関する契約において,契約の期間は,契約が効力を有する期間を定めるものであり,契
約上定められる必要がある。
※出版の期間に関する条項の留意点
① 契約の有効期間
ⅰ)有効期間は何年か
ⅱ)有効期間の起算点はいつか
②契約における自動更新条項の有無
ⅰ)
(自動更新条項があるとき)自動更新を行わない場合には,どのような手段をとれば
良いか。
ⅱ)
(自動更新条項があるとき)自動更新後の契約内容はどのようなものか
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(5)出版に関する契約の解除
出版に関する契約の終了原因
契 約 期 間 の 満 了
当事者の合意による解約
当 事 者 に よ る 解 除
法定解除事由
約定解除事由
出版権の消滅請求
※契約の解除に関する条項の留意点
① 契約の解除に関して,いかなる規定がおかれているか。
② 契約上の解除事由
ⅰ)催告の要否。
ⅱ)解除事由はいかなるものか。
ⅲ)催告解除の場合,催告の方法はどのように定められているか。
無催告解除の場合,解除の手続はどのように定められているか。
ⅳ)解除の効果はいかなるものか。
ⅲ 契約上の定めがない場合であっても,合意解除及び法定解除事由に基づく解除並びに出
版権消滅請求が可能である。
ⅳ 契約終了後の措置
ⅰ)契約終了後の紙の出版物の頒布,電子出版物の公衆送信が認められるか。
ⅱ)上記が認められる場合の条件はいかなるものか。
2.出版物の利活用に関する契約条項
(1)著作物の再許諾について
出版に関する著作物の二次出版とは,既に出版がされた著作物について,異なる出版社から出
版される場合を意味する。著作物の再許諾とは,著作者が出版社等に対して出版権の設定ない
し出版の許諾を行っている場合に,当該出版社等が第三者に対して,複製や公衆送信等を行う
ことを許諾することをいう。
※再許諾に関する契約上の留意点
① 再許諾の規定の有無
② 再許諾を行っている範囲はいかなるものか
ⅰ)再許諾の範囲及び期間
ⅱ)再許諾の相手方
③ 再許諾に対する著作者の承諾
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(2)二次的利用について
出版物を原作とする「二次的利用」とは,著作物について形を改めて使用される場合及び異な
った媒体に使われる場合を意味する。著作物について形を改めて使用される場合とは,翻訳や
ダイジェスト等として使用されることを言う。異なった媒体で使用される場合とは,出版物を
原作として,演劇,映画,放送番組,録音,録画等で用いられる場合を含む。
※二次的利用に関する契約の留意点
① 二次的利用に関して,いかなる契約が定められているか。
② 二次的利用に関する打診があった場合に,どのような手続がとられるか。
ⅰ)出版社に具体的な権利義務が発生するか。
ⅱ)二次的利用に関し,著作者・出版社間に別途の契約を締結する必要があるか。
(3)出版物の宣伝のための著作物の利用等
出版物の広告・宣伝を巡っては,その費用の負担や広告・宣伝の方法が問題となる。出版に関
する契約においては,出版物の広告・宣伝に関する条項が置かれることが多い。
※著作物の宣伝に関する契約上の留意点
①
②
③
④
⑤
出版物の宣伝方法の決定は誰が行うか。
出版物の個別の広告・宣伝がなされる際に,事前に著作者の承諾が必要とされているか。
出版物の宣伝方法や宣伝態様の範囲。
宣伝等の費用は誰が負担するか。
宣伝等のために出版物を利用する場合に,いかなる範囲で利用が可能か。
出版部数の限定はなされているか。
(4)著作者による著作物の利用について
著作者自身による著作物の利用の可否及び著作物の利用が可能となる範囲について,予め契約
書で定めておくことが検討される。
※著作者による著作物の利用に関する契約上の留意点
① 著作者による著作物の利用が認められるか。
② 著作者は,いかなる範囲で,自己の著作物を利用できるか。
③ 自己の著作物を利用しようとする場合の手続はどのようなものか。
3.著作者と出版社との間の出版物の内容に関する事項
(1)修正増減について
修正増減を行うことは,著作者にとって,自らの著作物の内容を修正する権利であって,著作
者の人格的利益の観点から著作者にとって極めて重要な権利である。
※修正増減に関する契約上の留意点
① いかなる場合に修正増減が可能か。
ⅰ)修正増減の手続はどのようなものか。
ⅱ)修正増減の範囲はどのようなものか。
② 修正増減の費用の負担は誰が行うか。
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(2)著作者の人格的利益について
著作者の人格的利益としては,公表権(著作権法第18条)
,氏名表示権(同法第19条)
,同
一性保持権(同法第20条)
,名誉声望を害する方法で著作物を利用されない権利(著作権法第
112条第6項)などがあげられる。
※著作者の人格権的利益に関する契約上の留意点
① 著作物の改変
ⅰ)いかなる範囲で著作物の改変が認められるか。
ⅱ)電子化にあたって改変が認められるか。
ⅲ)改変を行う場合の手続
② 著作者名の表示
ⅰ)著作者名の表示方法及び表示場所
③ 著作者の人格的利益
(3)献本等
献本等には,特に紙の出版物を前提として,出版物の発行時や増版時に,出版社から著作者に
対し,出版物が一定数贈呈される場合のほか,著作者が,出版物の販売価格より割引いて購入
できる場合や,出版社が出版業界内外に対して出版物を贈呈するために利用したり,批評等の
目的で利用したりすることもある。
※献本等に関する契約上の留意点
① 紙の出版において,著作者への出版物の贈呈の冊数。
② 著作者が出版物を購入する場合の金額はどのように定められているか。
③ 出版社が贈呈等に使用する場合の著作物利用料はどのように定められているか。その限
界はどこか。
④ 電子出版における献本等はどのようになされるのか。
4.著作権侵害への対応について
出版物の海賊版対策として,現状では,著作者ないし出版社による警告,削除要請,差止請求
及び損害賠償請求がなされている。また,正規版の流通の促進も併せて行われている。
※著作権侵害に関する契約上の留意点
① 著作権侵害への対応の主体
② 著作権侵害が発見された場合の対応方法
③ 著作権侵害への対応の費用
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5.出版に関する契約におけるその他の条項
出版に関する契約書においては,以下のような条項についても定められることがある。

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著作に要する費用,出版物及び電子出版用データの作成費用
出版用データの保管等
契約締結権限の保証
契約締結にあっての権利侵害の不存在の保証等
著作権の管理・権利処理に関する委任・委託
不可抗力等の場合の措置
秘密保持
個人情報の取り扱い
契約内容の変更
裁判管轄
準拠法
契約の尊重・協議
6.執筆に関する合意について
執筆に関する合意書等において記載されるべき内容

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

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著作物に関する事項(題名・概要,分量,入稿目安日等)
原稿の完成後に結ぶ契約の種類(出版権設定契約か許諾契約か,独占契約か否か等)
出版の方法等(紙の出版か電子の出版か等)
著作物の利用料
利用料の支払期日
その他(特に留意すべき事項等について)
※「執筆に関する合意」に記載されるべき事項は,上記に限定されるものではない。
7.雑誌に関する契約について
雑誌に関する契約に記載されるべき内容




原稿の執筆内容に関する事項(原稿の内容,分量,〆切)
原稿の掲載に関する事項(雑誌名,掲載日等)
著作物の利用料,利用料の支払期日
原稿の利用の許諾等(著作権の譲渡,出版権の設定の有無/紙の出版,電子配信)及
び利用の許諾の期間
 その他
※「雑誌に関する契約」に記載されるべき事項は,上記に限定されるものではない。
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8.出版物を構成するその他の著作物等について
契約書において記載をすべき内容
①出版社及び著作者の名称
②依頼日
③依頼の内容
④納期
⑤引渡し場所
⑥出版社が,依頼内容について検査をする場合は,その検査を完了する期日
⑦著作物の利用料
⑧利用料の支払期日
※下請法の適用がある場合があることに留意する必要がある。
また,以下の内容についても契約書において記載することが望ましい。
 著作物の利用の許諾(著作権の譲渡,出版権の設定の有無/紙の出版,電子配信)
 著作物の利用期間
 画稿や写真等の返却の要否
 著作物の二次使用の要否及び条件
 その他
※「出版物を構成するその他著作物等に関する契約」に記載されるべき事項は,上記に限
定されるものではない。
9.出版に関する契約の在り方について
電子書籍市場の拡大や,著作権法改正等,出版業界を取り巻くビジネス環境において多様な変
化が生じている現状において,著作者,出版社,印刷会社,取次,書店,配信事業者等多くの関
係者を有する出版業界において,ビジネスを行っていく基本となるのが「契約」である。良質な
作品が継続して世に出されるためにも,各関係者の意思が明確かつ分かりやすい形になっている
契約書の存在は,非常に大きな意義を有するものとなる。
今後,権利をより一層適切に保護するとともに出版物の流通を促進するために,平成 25 年度報
告書及び本報告書の普及啓発に努めることが適切である。その一環として,本報告書の内容を踏
まえ,著作者及び出版社が出版に関する契約を締結するにあたって特に重要と思われる事項に関
して,その記載の有無や内容についてチェックしておくべき条項をピックアップし,平易な言葉
で解説を加えたチェックポイントを作成しているので,参考にしてもらいたい。
(以 上)
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