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接地・絶縁抵抗値の規定

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接地・絶縁抵抗値の規定
技術情報連絡会資料
―絶縁・接地抵抗の規定、測定基準―
平成 20 年 3 月 14 日(金)
神谷斉正
-1-
接地抵抗
接地の目的
「接地」は、「アース」あるいは「グランド」ともいわれます。いずれも大地に由来する
用語で、電気機器の外箱や架台などを大地と同電位に保つために、地中に埋設した導体に
接続することをいいます。
接地は、電気設備の保安にとって重要であり、主として次のような目的をもっています。
1.絶縁物の劣化損傷などによって機器の金属製外箱などが充電されることによる障害
の防止。
2.高低圧混触などによって電路が異常電位をとることによる障害の防止。
以上のほかに、静電気防止用、避雷針用、雑音対策用など各種の障害防止を目的とする接
地があります。
接地の法規定
接地種別
ビル 避雷針用
A種
接地抵抗値 漏電遮断器取付時
10Ω以下
-
10Ω以下
-
法規定等
建築基準法
JIS A 4201
150/I [Ω]以下 動作時間1秒以内
電力
B種
I:地絡電流
120Ω
動作時間2秒以内
電気設備技術基準
C種
D種
10Ω以下
100Ω以下
60Ω
-
-
通信用
1~30Ω以下
-
規定なし
MDF用
10Ω以下
-
有線電気設備令
通信
MDF:配線分配装置
A 種:高圧用の電気機械器具の金属製外箱、避雷器などに施す接地工事をいう。高圧機器
よる感電等の災害防止用の接地
B 種:高圧と低圧を変成する変圧器の低圧側の 1 線に施す接地工事
C 種:300V を超える低圧電気機械器具の金属製外箱や金属管などに施す接地工事
D 種:300V 以下の低圧電気機械器具や金属製外箱および金属管などに施す接地工事
-2-
接地の種類
A種接地
接地抵抗
10Ω以下
接地線の太さ
主な用途
Φ2.6mm以上
高圧または特別高
圧用の機械器具
の外箱
(5.5mm2)
B種接地
150/I Ω以下*1
Φ2.6mm以上
(5.5mm2)
C種接地
10Ω以下
Φ1.6mm以上
避雷針
変圧器2次側の接
地
300Vを超える機械
器具の外箱
(2mm2)
D種接地
100Ω以下
Φ1.6mm以上
(2mm2)
*1:
*
300V以下の機械
器具の外箱
I =高圧電路の一線地絡電流[A]
C 種接地において 0.5 秒以内に遮断する回路がある場合は 500 Ω
普通の電気製品の接地抵抗は D 種接地で 100 Ω以下、接地電線はΦ 1.6mm 以上です。
最近の接地基準
電気設備の技術基準として、「電気設備に関する技術基準を定める省令」(通称「電気
設備技術基準」(以下「電技」と呼ぶ))がありますが、この省令は 1997 年 3 月 27 日に全
面改正されました。この改正によって、保安上必要な性能が電技で定められ、当該性能を
実現するための具体的な手段、方法などは、別途公表された「電気設備の技術基準の解釈」
(以下「解釈」と呼ぶ)で示されています。
電技では接地に関して、「電気設備の必要な箇所には、異常時の電位上昇、高電圧の侵
入等による感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件への損傷を与えるおそれがな
いよう、接地その他の適切な措置を講じなければならない。(10 条)」、また「電気設備に
接地を施す場合は、電流が安全かつ確実に大地に通ずることができるようにしなければな
らない。(11 条)」と定められています。
また、上記の改正に伴い、従来数字で表されていた接地工事の種類が、新たにアルファベ
ットで表示されるようになり、第 1 種が A 種、第 2 種が B 種、特別第 3 種が C 種、第 3
種が D 種と呼ばれるようになりました。なお、接地工事の種類や各種接地工事の細目は、
電技ではなく解釈に記載されています。
-3-
接地はなぜ必要か?
接地とは、大地と電気的に接続された状態(アース)のことです。その接地がなぜ必要
なのかは、例えば変圧器の外枠などは、常時は充電されていないけれど、変圧器の故障や
絶縁劣化などで、事故が起こったときに、外枠部分が充電され触れて感電しないように施
す事や、変圧器二次側中性線を接地することにより、変圧器の故障により、二次側に一次
側の高い電圧が混入しないように施す接地などは、保安上の理由によるものです。
また、変圧器二次側中性線の接地は、地絡検出が確実に行なえるようになる機能性の向上
も含まれます。
接地抵抗とは?
接地工事を施す時は、接地抵抗というものが問題とされます。そもそも接地の本来の意
味は、地球を零電位として基準にし、接地しようとする機器を零電位に保とうと言う事が
基本です。しかし実際には、大地に電極を埋設して、電流を流した場合、電極と大地間に
は電位差が生じてしまいます。これはいくらかの抵抗が存在することを意味しています。
この抵抗を接地抵抗といいます。
接地抵抗値は接地極を打ち込む土壌によって大きく左右されますが、抵抗値は小さければ
小さいほど良い訳です。電気設備技術基準では、接地抵抗の上限値を 4 種類に分けて制限
しています。
アース線(接地電線)の色
アース線(接地電線、接地線)の色は、国際規格 IEC60227 で緑/黄色のしま模様の線と決
められています。日本では内線規定で緑色または緑/黄色のしま模様の線か、それ以外の
線では緑色の標識を付けるように決められています。
-4-
参考資料
接地の目的別分類表
電気設備の
保安用接地
(1)電気設備技術基準
(2)内線規定
電気設備において、電路や非充電金属部分を
接地することにより、感電や火災などを防止す (3)労働安全衛生規制
る
(4)新・工場電気設備防爆指針
(5)JIS T 1022(病院電気設備の安全基準)
(1)建築基準法
雷害防止用 避雷針や避雷器の接地で、雷放電電流を安全
(2)JIS A 4201(建築物等の避雷設備(避雷針))
接地
に大地が逃すことを目的とする
(3)危険物の規制に関する政令
雑音対策用 通信設備などにおいて、雑音エネルギーを大地
接地
に放電するための設置
電子計算機などにおいて、電位の安定な基準
機能用接地
を得るための接地
(1)危険物の規制に関する政令
静電気障害
静電気を安全に放電するための接地
防止用接地
(2)火薬類取締法施行規則
(3)静電気安全指針
回路用接地
電気防食のように大地を回路の一部として組み
入れるための設置
-5-
絶縁抵抗値
電気設備の絶縁状態把握のため、現場では絶縁抵抗の測定と絶縁耐力試験が広く行われ
ており、電気設備の技術基準でも低圧電路には絶縁抵抗で保持すべき絶縁性能が定められ
ており、高圧、特別高圧では耐電圧で保持すべき絶縁性能が規定されています。
規定及び判定基準
技術基準では、引込線を含む供給用低圧電線路と大地間及び電線相互間の絶縁抵抗は、
漏れ電流が最大供給電流の 1/2000 を超えないようにと定められ、使用場所の低圧電路で
は開閉器などで区切ることのできる電路ごとに表2の値が定められています。
■表2
低圧電路の絶縁抵抗値■
<表2>低圧電路における絶縁抵抗値(電気設備技術基準第14条より)
電路の使用電圧区分
絶縁抵抗値
対地電圧(接地式電路においては電線と大地との
間の電圧、非接地式電路においては電線間の電
圧をいう。以下同じ。)が150V以下の場合
0.1MΩ
その他の場合
0.2MΩ
300V以下
300Vを超えるもの
0.4MΩ
この場合で絶縁抵抗測定が困難なときはそれぞれ漏れ電流を 1mA 以下に保つように定
められています。これは停止が困難な設備に対するもので、クランプメータにより活線で
容易に測定できる利点があります。
この 1mA という値は人体に流れたとき電撃を感じる最小値程度であり、また、 1 箇所
に集中して流れても火災などのおそれのない値です。漏れ電流による規定もまた絶縁抵抗
による規定にほかなりません。
-6-
感電と危険な電流値
感電によって不快な電流を感じるだけでなく、たとえわずかの電流でも心臓等の身体の
重要な部分を通過すると死亡することがあります。
低電圧での感電による死亡原因には心臓停止(心室細動)や呼吸停止が多くあり、高電圧
による感電事故ではそれに加えて放電によるアーク熱や人体を流れる電流によって発熱す
ることによる火傷があります。感電による火傷は身体の深部を電流が通るので非常に危険
です。
直流と交流とでは感電の感じ方が違います。直流は筋肉が収縮して硬直するのに対し、
交流では筋肉が震えるようにけいれんします。直流の 1000V 程度が非常に危険だといわ
れているのは手で電線に触れた時に電線をつかんでしまって筋肉が硬直して離れないから
です。
感電と人体の反応
感電電流
人体の反応
0.5mA
何も感じないか、電流の流れる場所によっては
わずかにピリピリ感じます
1mA
ビリビリ感じます
5mA
電撃を痛いと感じます
50mA
筋肉が収縮して死に至ることがあります
100mA
非常に危険です
-7-
絶縁抵抗の測定
概要
絶縁抵抗計は電気機器や電路の絶縁状態を表すもので保安管理上重要な測定項目の一つで
す。
電気機器や電路の絶縁状態を調べるには、活線の場合、漏洩電流計による方法もあります
が、一般には電気機器や電路の使用を停止し、絶縁抵抗計で測定します。
1.低圧回路の測定方法
定格電圧が 500V、または 250V/100V のものを使用します。特に回路に半導体素子等が含
まれている場合には 250V 又は、100V 等の低い定格電圧の使用が推奨されています。
<表 1>
開閉器を開放し停電させ低圧電路の電線相互間および電線と大地間を測定します。測定値
が基準値以下の場合は、分岐スイッチをすべて開放し、幹線分岐回路ごとに分割測定しま
す。低圧回路の絶縁抵抗値は電気設備技術基準により定められています。<表 2>
<表1>定格測定電圧の使用例(JIS C-1302:2002 絶縁抵抗計解説より)
定格測定電圧
一般電気機器
電気設備・電路
V
安全電圧での絶縁測定
25V
電話回線用機器及び
50V
防爆機器の絶縁測定
100V
制御機器の絶縁測定
125V
低圧配電線路・機器の
250V
絶縁測定
電話回線電路の絶縁測定
100V未満の低圧配電配線及び機器などの維持・管理
のための絶縁測定
200V以下の低圧電路及び機器などの維持・管理のた
めの絶縁測定
新設の配電線電路の絶縁測定
500V
600V未満の回路、機器の
600V未満の低圧配電線及び機器などの維持・管理の
ための絶縁測定100V・200V・400V配電路の竣工時の
絶縁測定
絶縁測定(一般)
1000V
600Vを超える回路・機器・設備の 常時使用電圧の高い高電圧設備(例えば、高圧ケー
ブル、高電圧機器、高電圧を使用する通信機器、電
路など)の絶縁測定
絶縁測定(一般)
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2.高圧回路の測定方法
耐電圧試験の意義
技術基準では、低圧電路の絶縁性能は絶縁抵抗の値で定められていますが、高圧以上で
は耐電圧値で規定されています。
低圧の電路、機器ではふつう 250V または 500V の絶縁抵抗計が使用されるため、これ
で測定された絶縁抵抗値でその絶縁性能としても間違いありませんが、高圧、特別高圧電
路、機器では 1000 V~ 2000 Vの絶縁抵抗計による測定値はあくまで参考程度にしかなら
ず、確実な絶縁判定は耐電圧試験によらなくてはなりません。
これは低電圧の絶縁破壊が、絶縁抵抗の低下箇所への漏れ電流の集中により、その部分
の絶縁抵抗が更に低下し、漏れ電流が増加する悪循環によるものであり、これが沿面絶縁
に起因すればトラッキング破壊になります。 (絶縁物の表面での微小放電が繰り返される
ことによって絶縁物表面に導電性の経路が生成され、絶縁破壊に至る現象)
これに対し、高圧、特別高圧では局部的な絶縁破壊がある程度進行すると、あとは放電
現象としての絶縁破壊になるため、低圧電路の場合とは根本的に絶縁破壊の機構が異なり
ます。
また、耐電圧試験は試験中の絶縁破壊を懸念することから現場では実施を懸念する傾向
が多く見かけられます。
しかし、電気設備の技術基準には高圧、特別高圧の電路は「定められた電圧、方法によ
る耐電圧試験に耐えること」(解釈第 14 条)と規定されています。
したがって、試験中に絶縁破壊するものは法的には使用してはならないものです。実際
に試験資料として、いろいろな故障点を作ろうと絶縁体を傷つけたり、部分的に破壊した
りしても、技術基準に定められた耐電圧試験中に絶縁破壊するような資料を作り出すこと
は極めて困難です。
このことからも技術基準に定められた耐電圧試験中に絶縁破壊するものは既に重大な欠
陥があり、時間の差こそあれ、使用中に破壊するものといえます。
運転中の絶縁破壊は保守管理上最も避けなければならないことで、このような危険な弱
点箇所を摘出することも耐電圧試験の副次的な効果といえます。
電力ケーブルでは対地静電容量が大きく交流試験では所要電源容量、試験設備が大きく
なり、試験が困難になるため交流試験の 2 倍の直流による試験が認められています。また、
同様の理由から回転変流機以外の交流回転機も 1.6 倍の直流試験が認められています。(詳
細は電技解釈第 14 ~ 18 条)
また、平成 10 年に「電路の絶縁耐力の確認方法
JESC-E7001
1998」が制定され、こ
れにより、JEC、JIS に規定に基づき工場において耐電圧試験を実施したものは技術基準
による絶縁性能を満足しているものとして、輸送、現地組立て後の確認試験として、常規
対地電圧を 10 分間印加すればよいことになりました。言い換えればこの条件を満たしてい
れば使用系統に接続して 10 分間異常がなければ使用してよいということです。
これは工場で実施される 1 分間の試験電圧が 10 分間に換算しても技術基準の規定電圧
より十分上回ったものであることと、最近の設計、施工技術の進歩により、輸送や組立て
段階での品質低下がほとんどなくなったことによるものです
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参考資料
油入の変圧器、計器用変成器についての目安
ただし、これらは高圧、特別高圧についてはあくまで目安として参考にするものです。ま
た、特に電力ケーブル、計器用変成器などは、各相の製造条件、製造時期、使用経過が同
一なので絶縁抵抗の各相のアンバランスに注意することが絶縁性能判定上極めて有効で
す。
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