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第24回神奈川シニア集会 基調報告 Ⅰ.3.
第24回神奈川シニア集会 基調報告 Ⅰ.3.11東日本大震災の復旧に寄り添い支援を続けよう ◇ 3.11東日本大震災から3年すぎましたが、その傷跡はいまだ深く残り、行方不明者は 依然として2668名を数え、避難者・転居者は28万人といわれています。被災者の住ま いは高台の用地確保がむつかしく、復興住宅への入居は思うように進まず、いまだ多くの人 が仮設住宅住での不自由な生活を強いられ、高齢独居者の孤立化による問題も起こり、ソフ ト面での対策が求められています。また災害時保育園児だった子供には、4人に1人が暴力 や引きこもりなど問題行動があり、精神的ケアが必要であることが労省研究班の調査で明ら かになり、その対応が求められています。 ◇ 「帰還困難区域」 「居住制限区域」指定地の避難者の多くは、県外暮らしを強いられ一家離散、 高齢者の独り暮らしなど、不自由な生活を強いられている被災者が多いと報道されています。 とりわけ『帰還困難区域』では、新天地で家や土地を再取得できる誠意ある方針を早く示す べきでしょう。 ◇ 放射能除染によって出た廃棄物が、 「住民の理解が得られず」仮置き場に積みおかれたままに なっていて、被災地以外の関東4県でも地元の反発で最終処分場が決まらない状況におかれ ています。このことは国からの押し付けに対する反発に加え、原発事故や放射能の拡散が検 証されず、 「脱原発」の将来が見えない状況におかれていることにも大きな原因があるようで す。 ◇ 原発の事故処理は、高濃度の汚染水漏れ対策すらままならない深刻な状況におかれています。 ましてやメルトダウンした核燃料の取り出し作業は世界にその先例がなく、放射線量が極め て高い原発内での事故処理は作業用ロボットに依存するしかないとされ、高性能ロボットの 開発が急がれています。専門家によれば、第一原発の廃炉作業は40年程度必要とされてい るだけに、その費用の捻出と、この間事故処理に悪影響を及ぼす自然災害が起こることがな いよう期待するしかないというのが現実です。こうした不安定な状況をできるだけ早く解消 する対策が急がれます。 ◇ このよう被災地ではソフトとハードの面で多くの問題を抱えています。被災地が完全な復旧を とげるにはまだまだ気の遠くなるような多くの歳月が必要です。電力消費量の最も多い東京都 の知事選に示された民意でも明らかにされたように、「3.11日東日大震災の惨事」も時間 の経過とともに風化しがちです。そうでなく私たちは被災地に寄り添い、それぞれの立場で、 息の長い支援を続けていきましょう。 1 Ⅱ.税と社会保障制度の一体改革 ◇ 社会保障制度改革国民会議へ 民主党政権が掲げた「税と社会保障制度の一体改革」は、政権公約にない「消費税引き上げ」 について国民の強い反発を招き、民主党は総選挙で惨敗、政権の座を自民党に明け渡したので す。これによって民・自・公三党の協議による一体改革の主導権は自・公に移り、新たに設置 された「社会保障制度改革国民会議」での協議にゆだねられた。ここでは、民主党の改革の柱 である「後期高齢者医療制度の廃止、年金の抜本改革(最低保障年金と年金制度の統合) 」は手 つかずのままの報告書が13年8月、政府に提出されたのです。 [報告書が指摘しているいくつかのポイント] ◇ 報告書では国民へのメッセージとして「世界一の高齢社会で、年金・医療・介護の給付が年間 100兆円を超える水準にある社会保障制度を持続可能なものにするために、専門家が実証的 に検討を重ねたものを国民会議の結論とした」と述べています。少し乱暴な仕分けになること を厭わず、報告書は何を意図しているいくつかのポイントを指摘してみます。 1)日本の公的債務残高は GDP の 2 倍を超える水準に達している一方、少子高齢化は世界一の水 準にある。こうした中で、持続可能な国民皆年金・皆保険の社会保障制度を維持するのは極めて 困難であり、制度の改革は不可欠である。 2) 「1970 年代(高成長期)モデル」 (65歳以上 7.1%)から「21 世紀(2025 年 団塊世代が 75 歳を超える。65歳以上は 30.3%)日本型モデルへの転換を図らなければならない。 ▲病院完結型(平均年齢 60 歳時代)→地域完結型(平均年齢・男性 80 歳、女性 86 歳時代)慢 性的な複合疾患が多くなることから、住み慣れた地域での、在宅医療・在宅介護の連携による ネットワークの充実をはかり、地域全体で癒し支え、人間の尊厳ある死への看取りが可能とな るシステムの構築。 ▲高齢者の多くが慢性的複合疾患を有する現状から、総合診療医の養成により地域医療の充実を 図る。 3)高齢世代を給付の対象とする社会保障から、子育てなど全世代を対象とする社会保障への転 換をはかり、 「年齢別」から「負担能力別」への転換を図る。 4)医療給付の重点化・効率化をはかるため、大病院へはかかりつけ医の紹介を必要とする。 ▲以上は報告書の一部にすぎないのですが、これから 20~30 年先まで間断なく高齢化が進 み人口が減少する中で、介護の最も困難な認知症はやがて800 万人を超え、一人暮らし高 齢者と高齢夫婦世帯が増え続け介護力が劣化することが予測される現状から、住み慣れた地 域における「安心の地域包括ケア」のネットワークの構築を急がなくてはなりません。 [報告書で示された改革メニューに基づく法案の概要] 2 ◇「プログラム法案」とは、報告書で示された改革のメニューについて、そのスケジュールを政府が定めた もの。プログラム法案を受けて個別法案が審議決定される。 プログラム法案の概要(主な項目)① 分 類 項 目 概 要 法案提出 実施時期 地域医療提 供体制 病床機能を都道県に報告 2014 年度 2017 年度までを 地域医療ビジョンの策定 (秋) 目途に順次実施 高額療 高額療養費の負担上限額につ 養費制度 いて高所得者を引き上げ低所 国会 得者の負担を軽くする 医 療 制 度 紹介状なし 大病院受診で紹介状のない 患者 患者に定額の自己負担を導入 2015 年度 国保の運営 国民健康保険の運営を市町村 (秋) から都道県へ移管 通常国会 保険料算定に総 健康保険組合の保険料を引き 報酬割りを導入 上げる 保険料負担 高所得者の負担を重く、低所 得者は軽くする 注:①~②日医工医業経営研究所作成(各社報道記事より作成) プログラム法案の概要 分 介 類 護 項 目 概 (主な項目)② 要 給付 対象 症状が軽い「要支援者」を 自 己 負 担 高所得者の自己負担を 難病対 支 援 制 度 実施時期 2014 年度 2015 度 給付対象から外す 引き上げる 特養の利用制 特養は「要介護 3・4・5」の利用に限定 限 保険料負担 法案提出 (秋)国 会 低所得者の負担を軽くする 安定的な医療費助成制度 2013 度(秋) 策 年 金 高 額 所得者 高所得者を対象にした年金控除 支 給 始年齢 年金支給開始年齢の引き上げ 額の縮小 未 マクロ経済ス 少子高齢化に応じて給付を減額 調整する ライド [その後国会審議で明らかになってきた改革の総括] 3 定 2014 度 ◇介護保険 1)年金 280 万円以上の所得がある高齢者の介護保険自己負担割合を、15 年 8 月から 1 割から 2 割に引き上げる。 2)特別養護老人ホーなどに入所する低所得の高齢者らを対象とする「補足給付」については、所 得が低くても一定以上の貯蓄(1000 万円以上が対象)や不動産を持つ高齢者は、対象外とす ることが検討されている。 3)介護保険の認定は 7 段階に分かれているが、一番軽い要支援1・2の高齢者のサービスを、15 年度から 3 年間で市町村の事業に移管する。 4)給付の伸び率に上限を設ける「総額管理方式」を導入し、25 年度まで 1647 億円の介護給付 カットを目論む。 5)介護給付は年 9.4 兆円ほど、1 兆円弱のベースで増加が続く。今回の改定で高齢者に負担増 を求めれば、年間約 1450 億円の給付費削減を目論む。 ◇医療保険 1)高齢者が最も影響を受けるのは、国民会議が1割に据え置かれている70~74歳の窓口負担 を本来の2割に戻すことを提言し、14年4月1日からの実施となる。これによって70~7 4歳の平均自己負担は現在の年、45000円から74000円に跳ね上がる。但しこの適用 は、4月1日よりも前に70歳になった者は1割負担のままで、現在70~74歳の者には1 割負担の特権は維持される。 2)厚労省は、症状が重く手厚い看護が必要な入院患者向けのベット(急性期重傷者病床で患者7 人に看護師1人)を全体の4分の1にあたる9万床を15年度末までに減らす方針を固めた。 このことは診療報酬が高いことから全国の病院が収入増を狙って整備を進め、急性期病床は導 入時の8倍の36万床にまで増え、この部分にかかる医療費は年間1兆数千億円とされ、罰則 を設け医療費の削減をはかる対策。これとは正反対に地域医療の充実対策として19床以下の 開業医(有床診療所)へは、入院基本料の増額を行う。 [総 括] 社会保障制度改革国民会議報告書が提示している医療と介護のポイントは、 「病院完結型から地域 完結型へ」が示すように、高齢化がこれからも一段と進む中で,病院と施設への依存度を高め続け ることは財政的に破綻しかねないとしている。以下その施策のいくつかを示す。 慢性疾患を抱える患者が安心して地域に戻れる施策を、診療報酬の改定を含めて提示することが 必要である。その施策のポイントは、 ① 「主治医」の報酬を新設する。報酬を出来高払いとせず包括払いとすることによって、過剰診 療をなくし医療費の節減をはかる。 4 ② 在宅患者の急変時に入院できる24時間対応の病院への報酬を増額する。 ③ 訪問診療などを行う有床診療所の入院基本料を増額する。(再掲) ④ 政府は「地域医療・介護確保法案」を今国会へ提案し、904億円(消費税充当)を投じて各 都道府県に基金を設置し、病院や診療所の統合や再編を促し、かかりつけ医と訪問看護・介護 が連携する「地域包括ケアシステム」を拡充する。 [都道府県の責任と権限強化.そして医師会の積極的協力が不可欠] 以上がその要点です。 (診療報酬改定などの細部は省略)これで高齢者(老々世帯・一人暮らし 高齢者)が、自立困難な状態のまま早期退院を強制されている現状の改善が図れるだろうか。数 年前に介護保険のサービスとしてスタートした「24時間定期巡回随時対応訪問看護・介護」の 実働は未だ有名無実の状態にあり、在宅療養支援診療所(訪問診療をする開業医)も同じです。 こうした現実を前にし、家族や地域の支え合いが希薄化し介護施設も不足している現状では、医 療的ケアがそれほど必要のない患者の「社会的入院」の需要は高まるばかりでしょう。 私たちはこうした現状を踏まえるとき、医療と介護の一体改革が真に実効性を上げるには、地 域包括支援センター頼りではなく、都道府県の責任と権限を強化すると同時に、名実ともに「安 心感のある在宅療養、在宅介護が可能になるシステム作りに、すべての自治体が一体となって努 力し、 「主治医」を担う医師会の全面協力体制が不可欠であることを強く主張するものです。 ❖ プログラム法案に示した内容の具体化が、今後厚労省の委員会で検討され国会で審議され法 制化されて行くことになりますが、消費税の引き上げによる税の増収分はすべて社会保障の改 革に充当され、制度の充実に振り向けることを私たちは主張し、審議の内容を注視していかな ければなりません。特に年金は平均余命の伸びや支え手の減少分を給付カットに織り込む「マ クロ経済スライド」の拡充をどうするかが問題になるでしょう。また子育て支援充実策が財源 ねん出との関連でどこまで充実できるかが課題になると思われます。 Ⅲ.認知症急増、厚労省公表:2012 年 305 万人 462 万人訂正 軽度認知障害(MCI)を含め800万人を超える 1.厚労省 2013年6月に認知症数を大幅な訂正を加え公表 厚労省は「認知症」について、2013年6月に国民の多くが驚くような数値の訂正を発表した。 それは12年の認知症の数 305万人を462万人(151%増)に訂正をしたのです。厚労省は、 愛知県大府市、茨城県つくば市、佐賀県伊万里市など全国8市町村で、65歳以上の高齢者を対象 に、病院・施設・自宅などへのアンケート、本人・家族への面接と聞き取り調査、医師の診断など 5368人に対する調査を行い分析の結果、認知症有病率を15%と推定したのです。 12年時点の高齢者は3079万人、その15%に当たる認知症は約462万人と公表したので 5 す。またこの時点で認知症になる可能性のある軽度認知障害(MCI)高齢者は400万人と推計 したのです。だとすれば高齢者の 4 人に 1 人が認知症とその予備軍ということになる。更にこの調 査によれば、年代別認知症の割合は、74 歳までは 10%以下だが、85 歳以上になると 40%超と なり、ほとんどの年代で女性のほうが認知症率の高いことが分かったのです。 更に問題は、これからは高齢者の中で年齢の高い人(75歳以上)の比率が年々高くなっていく ことです。国立人口問題研究所のデータによれば、全人口の中に占める高齢者の割合が、17 年は 65 歳~74 歳が17%、75 歳以上も17%で同率になるが(別紙資料参照)、それ以降は 75 歳以 上が増加に転じ、30 年には 12.1%対 19.5%となることから、65 歳以上の認知症有病率は 15% で収まらなくなり、認知症患者はさらにテンポを速め増加を続けることは明らかです。 2.国の「認知症施策推進5か年企画」(オレンジプラン)の早急な見直しを 国は増加を続ける認知症に対応できる体制を整えるため、12年の認知症305万人を対象に「認 知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」 (13年~17年まで)を策定した。その主なものは、 1)標準的な認知症ケアパスの作成(詳細省略) 2)早期診断・早期対応(詳細省略) 3)地域での生活を支える医療サービスの構築 ○ 「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定 ・12年度 ガイドラインの策定 ・13年度以降 医師向けの研修等で活用 ○ 精神科病院に入院が必要な状態像の明確化 ・12年度~調査・研究を実施 ○ 「退院支援・地域連携クリティカルパス(退院に向けての診療計画) 」の作成 ・12年度 クリティカルパスの作成 ・13~14年度 クリティカルパスについて、医療従事者向けの研修会を通じて普及。 併せて、退院見込者に必要となる介護サービスの整備を介護保険事業 計画に反映する方法を検討 ・15年度以降 介護保険事業計画に反映 4)地域での生活を支える介護サービスの構築 ○ 認知症の人が可能な限り住み慣れた地域で生活を続けていくために、必要な介護サービス の整備を進める。「在宅介護においても、小規模多機能型居宅介護の整備を更に促進するな ど認知症に対応可能なサービスを整備する」 5)地域での日常生活・家族支援の強化年度 6 ○ 認知症地域支援推進員の人数 2012年度見込み 175人→17年度末 700人 [考え方] 5つの中学校あたり1人配置(合計約 2200 人) 、当面5年間で700人配置 * 各市町村で地域の実情に応じて、認知症支援推進員を中心として、認知症の人やその 家族を支援するための各種事業を実施 ○ 認知症サポーターの人数(累計) 2012年度末見込み 350万人→17年度末 600万人 6)若年性認知症施策の強化(詳細省略) 7)医療・介護サービスを担う人材(詳細省略) 以上の計画に基づき又はモデル事業などに、各地方自治体はそれぞれ計画の実践に取り組んでい るが、それらは一様ではなく、全国的にはその取り組みには大きな格差がある。更に問題は、認知 症高齢者の数をこの計画では、12年は305万人、17年を373万人においていることである。 冒頭述べたように、厚労省研究班の調査による認知症数とは、50%以上も少ない認知症数を基礎 数値にしたオレンジ計画は役に立たず、早急に再検討されなければならない。 いずれにせよ我が国の認知症対策は大きく立ち遅れている中で、超高齢社会にあって急速に認知 症高齢者が増え続けてくることが不可避なだけに、国のオレンジプランが明示しているとおり 認知症であっても、住み慣れた地域で「人間としての尊厳が守られ、安心して暮らせる環境づくり」 を急がねばならない。そのためにもオレンジプランにみられる遅々とした進捗状態は速やかに解消 されなければならない。 このことは介護保険における「24時間定期巡回随時対応訪問介護・看護サービス」が介護保険 のサービとして規定されているのにも関わらず、実質的に稼働していないことと同じ現象を呈する ことになりかねないであろう。 3.認知症 不明・死亡578人(12年分) 115人鉄道事故死(05年度から8年間)遺族に賠償請求も 超高齢社会の課題に 毎日新聞が警察庁で調べた「12年の認知症の人が当事者となった行方不明届は年々増加し96 07名で、年内に死亡が確認された359人は山林や河川、用水路のほか、空家の庭や道路上など で発見され、未発見者の219人のその後については、統計上は未把握としている」 こうした中でマスコミは認知症の鉄道事故死についてショッキングな報道を告げた。 (毎日新聞1 月11日)問題は認知症の鉄道事故死に対し複数の鉄道会社から遺族に対し「賠償請求」が出され、 その最高請求額は720万円で、名古屋地裁が昨年8月「家族が見守りを怠った」としてその支払 いを命じたというものである。これに対し家族会からは「一瞬の隙なく24時間見守るのは不可能。 判決通り重い責任を負うなら在宅介護はできなくなる」と不安の声があがっていると報じた。 オレンジプランでは、 「認知症の人が可能な限り住み慣れた地域で生活を続ける」ことを求めてい 7 るが、このような賠償責任を家族が負うことになるとすれば、家族介護は成り立たなくなる。また 認知症介護の家族を支える「小規模多機能型居宅介護施設」の極めて少ないことが、認知症の在宅 介護をより困難なものにしているからである。社会保障制度改革国民会議報告書にも、◎病院完結 型から地域完結型へ ◎地域包括ケアの重要性 ◎病院・施設から地域・在宅へ、などに象徴され るように、医療・介護のいずれも在宅療養・介護を重視している。ならばそれらが可能となる環境 を早急にととのえるべきであろう。 近親者による認知症の介護は、困難度のもっとも高いものであることは言うまでもない。しかし 現実の環境はその困難度を和らげるように整備されていない。 「予防や治療法の確立は必要だが、医 療だけで問題を解決できるとは思えない。地域で暮らし続けられるよう、在宅介護をサポートする (小規模多機能型居宅介護施設、認知症専門のデーサービス、住宅や防災、消費者保護など)基本 施策の拡充をはかるべきである。更に大切なことは、介護者から見て考える指摘や要望ではなく、 当事者からみた要望や認知症施策を考えることが必要である。 4.認知症基本法の制定を求める 本年は夏に「認知症の新しいケアと予防のモデル」をテーマにしたサミットが日本で開催される 計画があると聞く。この機をとらえ、 「認知症になっても住み慣れた地域で人間としての尊厳が守ら れ、安心して暮らせる施策づくり」のより一層の推進を図るため、 「認知症基本法」の制定を求める ことが必要である。 基本法とは、前厚労省老健局長で岡山大学客員教授の宮島俊彦氏によれば、 「国の制度や政策に関 する理念や基本方針を示す法律であり、身近なものとして、がん対策基本法、障がい者基本法など がある。認知症も基本法が出来れば、厚労省が中心の政策課題から政府全体の課題に『格上げ』さ れることが期待できる」としている。 基本法の中心をどこに置くかは、障がい者基本法のように、認知症当事者の観点から社会参加や 意思の尊重に軸足を置き、地域で暮らし続けられるような施策に重点をおくことが、国のオレンジ プランの基本からもそうあるべきと考える。 「基本法ができることで、認知症への理解が進み、認知 症になっても生きやすい社会になるものと考えられる」。早急な認知症基本法の制定を国に求める。 添付:参考資料 京都認知症総合対策推進計画 京都式 オレンジプラン 10のアイメツセージをかなえるオレンジロード 目指す姿 認知症とともに歩む 本人の意思が尊重され、住み慣れた地域で暮らし続けられる社会 (1) 私は、周囲のすべての人が、認知症について正しく理解してくれているので、人権や個性に ついて十分な配慮がなされ、できることは見守れ、できないことは支えられて、活動的にす ごしている。 (2) 私は、症状が軽いうちに診断を受け、この病気を理解し、適切な支援を受けて、将来につい 8 て考えを決めることができ、心安らかに過ごしている。 (3) 私は、体調を崩した時にはすぐに治療を受けることができ、具合の悪い時を除いて住み慣れ た場所で終始切れ目のない医療と介護を受けて、すこやかにすごしている。 (4) 私は、地域の一員として社会参加し、能力の範囲で社会に貢献し、生きがいをもってすごし ている。 (5) 私は、趣味やレクリエーションなどしたいことを叶えられ、人生を楽しんですごしている。 (6) 私は、私を支えてくれている家族の生活と人生にも十分な配慮がされているので、気兼ねせ ずにすごしている。 (7) 私は、自らの思いを言葉でうまく言い表せない場合があることを理解され、人生の終末に至 るまで意思や好みを尊重されてすごしている。 (8) 私は、京都のどの地域に住んでいても、適切な情報が得られ、身近になんでも相談できる人 がいて、安心できる居場所をもってすごしている。 (9) 私は、若年性の認知症であっても、私に合ったサービスがあるので、意欲を持って参加し、 すごしている。 (10) 私は、私や家族の願いである認知症を治す様々な研究がされているので、期待をもってすご している。 以上の京都式オレンジプランが地域においてどのように展開されているかは不知であるが、ここ まで踏み込んだ計画を策定していることから一定の前進はあるものと考えられる。 Ⅳ.自民党・安倍政権では安心と信頼の社会保障制度は不可能 ❖ 自民党政権の社会保障理念の基本は「自助」にあります。要するに自分のことは自分でとい う自己責任論です。自助・共助・公助の適切なバランスに留意し、とは言っていますが、 「自立 を家族の助け合いなどを通じて支援していく」と言っているのです。そして自民党の憲法改正 草案では、第24条で「家族は、互いに助け合わなくてはならない」と強制をしているのです。 今日の核家族化や少子化の社会現象下において、普遍的に不可能になってきている現実を強制 することは社会保障制度には適合しないのです。その反面介護保険は、もともと在宅での介護 は家族の支援なくしては成り立たない制度なのです。その狭間でわが身を犠牲にし、家族を介 護している現実を直視すべきでしょう。介護保険は家族が支えるのではなく、社会全体で支え ることを理念として発足をした制度であることを再確認すべきです。 ❖ 安倍政権の掲げる「国土強靭化計画」は、今後10年間で公共事業に200兆円もの税金を つぎこもういうものです。4月には消費税が上がります。これによって税収が増えたら、子育 てや医療、介護の充実に当てる約束だった筈なのに、税と社会保障の一体改革の議論がないま ま、重箱の隅をつつくように介護や医療費用の抑制だけを優先させるあり方は認められません。 ❖ さらに安倍政権は野党の反対を払いのけ、アベノミクス効果による法人税、所得税の増収など 9 を財源に、消費税引き上げにより景気が腰折れしないよう、13年度補正予算 5.5 兆円を決定し たのです。公共事業を柱に各省に万遍なく予算をつけ、使途が決まっていない不急・不要な基金 に3000億円を超える財源を投入しています。更に問題は3月末までに的確に 5.5 兆円もの補 正予算を消化できないことは明らかです。災害復興基金のように未消化分をまったく別な箇所に 財源を投入しかねないでしょう。14年度予算95兆8千823 億円(前年比 3.5%増)に補正を 加えると100兆円超える過去最大の予算規模となりました。ここには税増収分を借金返済に回 すという財政規律を見ることが出来ないのです。 ❖ 自民党の歳出圧力の背景には12年8月に成立した消費税増税法がある。自民党の主張により 同法附則に「消費税率の引き上げによる経済への影響を踏まえ、防災、減災に資する分野に資金 を重点的に配分する」と明記されたのです。自民党族議員は増税で生じた財源の「ゆとり」分に ついて、これを国土強靭化関連予算への「流用」が許されると解釈しているのです。 特に自民党国土強靭化総合調査会の二階俊博会長は、この附則を盾に国土強靭化に関する14 年度予算案の概算要求を前年度の 1.4 倍の5152億円を当て込んだばかりか、JR東海が 27年に東京-名古屋間の開通を目指すリニア中央新幹線について、国費を投入し大阪まで同時開 業を求める決議文を近畿地域選出議員団で採択しているのです。こうしたことでは、増税部分を そのまま社会保障費に使うとした目的がかすんでしまうことになり、絶対に許してはなりません。 Ⅴ.一強多弱、政権の受け皿政党がない歪の打破に向けて 1.安倍首相の靖国参拝・自民党運動方針から「不戦の誓い」の削除 国民にその内容を周知させることなく、安倍政権は特定秘密保護法案の強行採決をしたように、 安倍政権の国会運営は一強多弱の政治状況に加え、アベノミクス効果により党内でも安倍首相の一 強状態にあることが、党内良識派の意見を出し難くし、乱暴な国会運営となって表れているのです。 靖国参拝も側近の意見やオバマ政権のけん制を無視し「中国・韓国」と我が国の関係を悪化させ たばかりか、米・欧諸国との信頼を損ない、外交の孤立を招く誤った行動で国益を損なっているの です。安倍首相は、昨年12月の靖国参拝について「二度と戦争の惨禍によって人々の苦しむこと のない時代をつくる。その決意を込めて不戦の誓いをした」と、国の内外に向かって参拝の説明を したのです。しかし1月8日に発表した自民党の14年運動方針の靖国参拝に関しては、13年に はあった「国の礎となられた方々に哀悼の誠をささげ、 『不戦の誓い』と恒久平和の決意を新たにす る」との文言が「国の礎となられた方々に対する尊崇の念を高め、感謝の誠をささげ、恒久平和の 決意を新たする」との表現に変わり、 『不戦の誓い』は削除されたのです。この削除は集団自衛権の 行使を憲法解釈上可能にしようとする安倍首相の意図を示したものと理解せざるを得ません。 2.特定秘密保護法に反対してその実行を阻止しよう 安倍政権は、国論を二分する「特定秘密保護法案」を、国民に十分な説明はおろか、国会審議も ろくにせず、問題点の解明もされないまま、数を力に衆参両院での強行採決で法案を成立させたの です。 「何が秘密かも秘密」と指摘されているように、行政機関が「特定秘密を決める」のですから、 10 国民に知られたくない情報を「特定秘密」にして、国民の目から隠してしまえるのですから当然の 指摘です。問題はこうしたことが起きないよう、 「第三者が秘密指定をチェックする仕組み」が何も ないことです。 「特定秘密」を取得し漏えいする行為だけでなく、それを知ろうとする行為も、処罰の対象にな るのですから、国民の知る権利はもとより、マスコミ等の自由な取材の権利、そして内部告発も委 縮させることになります。ましてや、石破幹事長は特定秘密保護法案に反対するデモや座り込み行 動を捉え、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質において変わりない」 (この発言は指摘により撤 回した)と決めつけたのですから、憲法で保障されている行為さえテロと決めつける感覚の持ち主 に、このような法律を運用されたらどうなるか恐ろしいことです。 戦前・戦中、国民は知る権利を剥奪されたまま、批判は一切封じ込められ、大本営の発表を鵜呑 みにさせられ、言い尽くせない犠牲を強いられ続け、無残な敗戦でさらなる苦痛を味わった者とし て、この「特定秘密保護法」は葬り去るべき悪法として反対していかなければなりません。 3.解釈改憲による集団的自衛権の行使は絶対認められない 集団的自衛権の行使については、1981年以来、歴代内閣は時の法制局長官の「行使容認につ いては改憲が必要との見解」を認め、これが集団的自衛権の行使を阻んできたのです。安倍首相は、 憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使は可能と主張し、こうした考えを持つ「フランス特命 全権大使小松師一郎氏」を法制局長官に据え、お友達的な有識者を集め、安保法制懇を設置し、4 月ごろ結論が出ることを衆院予算委員会で明らかにしたのです。 安倍首相は2月12日の予算委員会での集団的自衛権行使に関する答弁で、「最高責任者は私だ。 政府の答弁に私が責任をもって、そのうえで選挙の審判を受ける」と答弁したのです。それでは選 挙で信を問いさえすれば、首相が自由に憲法の解釈を変えられることになってしまいます。また「国 民投票」にかけるのだから、国会による改憲の発議要件を緩めてもいいという安倍首相の発言も同 じことなのです。 憲法は何のためにあるのか。時々の政治権力ができることとできないことを定め、その手を縛る ためにあるもので、これが立憲主義の理念なのです。いうまでもなく、内閣や政権が変わっても、 時々の政府のご都合で憲法解釈がころころ変われば、国民はもとより、諸外国も「日本の憲法」の 法的安定性に疑問を抱かざるを得なくなり、外交の大きな障害になることは明らかです。 以上指摘してきた安倍政権の傍若無人の言動は「一強多弱」の政党状況に加え、党内での一強状 態によるものであるということは言うまでもありません。このまま安倍政権の外交・安保政策を先 に進めることによって本当に地域に緊張緩和をもたらすことができるのでしょうか。現状は、中国 や北朝鮮の脅威に対抗するための軍事面に力点を置く一方で、中国、韓国と領土や歴史認識を巡っ て対立をエスカレートさせ、緊張を緩和する努力は不十分だといわねばなりません。 日本が戦後69年、一人の戦死者を出さず、他の国で一人も殺傷することもなく平和国家として 歩んでこれたのは、社会保障が.制度として機能しているのも、平和憲法9条があってのことです。 この道を歩み続けるには、安倍政権にブレーキをかけられる、政権交代を迫れる、受け皿政党を作 らなければならないのです。今の多弱野党のままでは、自民党に操られ利用されるだけである。そ 11 のために野党第一党の民主党は何をやるべきなのか。日本のあるべき姿を描き、徹底した政策論議 を通じて党の方針をしっかりまとめ、賛同できない議員には離党を勧め、賛同する他党議員には積 極的に働きかけ、政策集団として再スタートすることを強く求めたい。 【アピール】 私たちは、年金・医療・介護など日本の社会保障制度が大きく揺らぐ中、本日連合神奈川に結集する 各構成組織の高齢・退職者会、そして労働福祉事業団体を中心とする関連諸団体OB・OGの仲間が一 堂に結集し第24回神奈川シニア集会を開催しました。 3年前に発生した「東日本大震災」の復旧は依然としてはかどらず、全国で避難生活を余儀なくされ ている方々は約27万人に上り、特に福島県の他県への避難者は放射能除染の影響もあり群を抜き多く 約5万人に上っています。一刻も早い放射能汚染除去・瓦礫処理と、生活再建に向けた災害公営住宅や 集団移転用地の早期整備が急務となっています。私たちは引き続き被災地に寄り添い継続した支援をす るとともに政府に対して働きかけを強めていかなければなりません。 昨年7月に行われた参議院議員選挙の結果、一昨年の衆議院議員選挙結果に引き続き自民党の圧勝に より国会勢力は一強多弱となり、安倍内閣は、アベノミクスによる比較的堅調な経済を背景とした高支 持率に力を得て、特定秘密保護法を制定し、憲法解釈による集団的自衛権の行使や憲法96条の改定を 目論むなどやりたい放題の国会運営を進めていますが、これらの暴挙を許すことはできません。 また、日本の国家財政状況は平成25年12月末現在、GDPの 2 倍に達する1100兆円の超借金 国家となり、国民一人当たり800万円を超える借金を背負っていることになります。個人の家計であ ればとっくに破たんしている状況にもかかわらず、安倍政権は「消費税による景気の腰折れを防ぐ」名 目の下に、公約である議員定数の見直しや、無駄の徹底削減をすることなく公共事業投資を優先し、5.5 兆円の補正予算を組み、平成26年度予算では約40兆円の借金を組み入れ、膨大な赤字予算を組もう としています。ここには、負の遺産を子や孫へ背負わせない健全財政への道筋を何一つみることはでき ません。 消費税増税は「税と社会保障制度の一体改革」のもとに決定され、社会保障の拡充はもとより、そこ には放置できない国家財政の危機的状況を克服する意図があったのです。しかし、法人税の実行税率の 引き下げや 5.5 兆円のバラまき的な補正予算、そして 200 兆円を超える国土強靭化計画を見るとき、 その目的はかすむばかりです。審議経過をチェックし本来の目的に使用されるよう強く主張していかな ければなりません。 超少子高齢化社会は一段とスピードを上げ進展し続けます。平成25年度高齢者白書では、いずれ日 本の総人口は9千万人を割り込み、2.5人に1人が65歳以上、1.3人で1人の高齢者を支える社会 の到来を予測しています。特に神奈川県の高齢化率の進展は著しくその状況は深刻です。 12 昨年社会保障制度改革国民会議より「社会保障制度改革」について報告書が政府に出されました。内 容は具体的な消費税増税分の使途が明かにされないまま、 「介護保険の利用料の引き上げや要支援者の市 町村への移管」など高齢者に負担増を求めるものが多く改革の名に値しないものになっています。 改 悪を阻止し、ゆとりと豊かさが実感できる「安心と信頼の社会保障制度」を目指し粘り強い運動を進め て行きましょう。 私たちは、高齢者福祉の拡充と日本の社会保障制度の充実を目指して、シニア集会に結集した多くの 仲間と連携し、現・退一致の運動をさらに続けていくことをここに確認します。 2014 年 3 月 2 0 日 第24回神奈川シニア集会 13