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学びを深める台湾産業界 学びを深める台湾産業界

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学びを深める台湾産業界 学びを深める台湾産業界
海外レポート
学びを深める台湾産業界
TPS Learning in Taiwan
昨秋(2011 年 10 月)
、大野耐一氏の生誕 100
大野氏生誕 100 年イベントの様子とともに台湾に
年を記念するイベントが台北市で2日間にわたり
根付いた改善について報告する。
開催された
(主催:中衛発展中心)
。大野耐一氏の
訪台回数は多くはないが、台湾産業界の人々は
さまざまな企業・分野へ広がる改善
1980 年代の大野氏の訪問を機に 30 年以上にわた
生誕 100 年記念イベント1日目は、大手自動車
ってトヨタのやり方を学び続けてきた。TPS を知
ディーラーの研修施設を会場に「リーンなサービ
らない産業人はいないといってもいいほどで、多
ス─ニーズから出発する」をテーマとして行われ
くの企業が TPS に学ぶ改善に取り組んでいる。先
た。
「ニーズから出発する」は大野氏の教えのひと
進的な改善を成し遂げた企業も少なくない。最近
つだ。会場会社であるディーラーの副総経理から
ではサービス業の比重の高まりを受けて販売店や
の活動紹介、三戸節雄氏の講演、ASUS の「顧客
飲食業にも改善が広がっているという。カリフォ
価値を創造するリーンなサービス」の発表、さら
ルニアの NUMMI とトヨタの北米工場が長くリフ
に現場見学と盛りだくさんな内容である。
ァレンス・モデルとなってきた欧米諸国に比べ、
ASUS はノートブック PC の有力企業として誰
漢字と儒教という文化的な共通性、日本統治時代
もが知るブランド。顧客価値創造に焦点を当て、
の影響、第二次大戦後の経済発展と産業基盤形成
製造のみならずビジネス全体の改善活動をもう何
といったバックグラウンドをもつ台湾にあって、
年も続けているという。単なるコストカットでは
TPS の学びは独自の発展を遂げてきたといえよう。 ない価値創造をめざし、人材開発に焦点を当てた
大野氏生誕 100 年記念イベント参加者の熱心な表情
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TPS の発展と台湾における TPS の学びの歴史
Vol.58 No.2 工場管理
特集 大野耐一生誕百周年 不屈の改善魂
ASUS プロセス合理化センター 教育
長 呉崇文氏
三戸節雄氏の講演
「改善魂」の展示
大野氏の「トヨタ生産方式 脱規模の経営をめざして」
の 新 訳 台 湾 バ ー ジ ョ ン( 中 衛 発 展 中 心 刊 )。 隣 に は
「豊田英二語録」が並ぶ
原点回帰 台湾競争力の再構築
イベント2日目。自動車製造会社に会場を移し、
「経営の原点回帰─産業競争力の再構築」をテー
マに事例発表と工場見学。四半世紀以上にわたっ
て改善を続けてきた自動車組立の製造現場は原点
回帰を考えるには最適の場所だ。1台ずつ違う車
活動が印象的であった。
を組立てる仕組みは日本と同様だが、相対的に小
三戸節雄氏は大野氏の「トヨタ生産方式 脱規
さな台湾市場ならではの工夫が随所に見られる。
模の経営をめざして」
(ダイヤモンド社)
のライタ
ーを務めたジャーナリストだ。
「21 世紀への大野
耐一氏のメッセージ」と題し、後進のイノベータ
革新の新たなリファレンス・モデル
A-Team
ーへの影響を含め、今なお産業人としての考え方、
さて、台湾での改善といえば A-Team、台湾自
生き方に深い洞察と勇気を与える大野氏の教えを
転車産業の改善共同体である。今回のイベントで
熱く語られた。
も、 第 2 期 か ら A-Team 入 り し た 佳 承 精 工
大野氏の「トヨタ生産方式」は台湾でも広く読
(Jagwire)
・総経理の黄昭維氏が活動を報告された
まれているが、この度、生誕 100 年を記念して新
が、今日、A-Team は世界に広く知られる存在に
訳版が出版されたという。
なっている。
圧巻は自動車ディーラーの研修施設と現場。床
最大手完成車メーカーの GIANT と MERIDA を
に輝く白線に象徴される4S の徹底に始まり、デ
中心に 10 社を超える部品メーカーが参加して 2002
ィーラーにおけるあらゆる業務を再現・訓練でき
年に発足。以来、TPS に学ぶ改善を続け、一時は
る改善道場、自社開発の治具や設備を含むメンテ
中国勢に押され守勢に立たされた台湾自転車産業
ナンスの現場が示す業務改善の数々。まさに台湾
を高品質・高価格帯市場で見事に蘇らせた。この
サービス産業の改善のお手本たる自信と確信が感
間、彼らの製品単価はドル評価で3倍
(つまり製品
じられた。
価値の増大)になった一方で、2001 年に 479 万台ま
で落ち込んだ輸出台数も 2010 年には 507 万台まで
工場管理 2012/02
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