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秋冬どりネギの有望品種`関羽 一本 太 `
か んう い っぽん ふと 秋冬どりネギの有望品種‘関羽一本太’ 1 情報・成果の内容 県下における白ネギ栽培のうち、大部分を占める秋冬ネギ作型において、雪による葉折れ 等により、秀品率が低下することがしばしば問題となっている。生産現場からは、葉折れが少 なくて、葉色が濃く、良品質で、安定多収の望める白ネギ品種の選定が望まれている。そこで、 秋どり(11∼12 月)、 冬どり(1∼2 月)の 2 作型において、2 か年の品種比較試験を実施した 結果、新品種‘関羽一本太’ (トーホク種苗(TS-36) )が有望であり、今後の普及が期待され ることから、本品種の特性について紹介する。 特性および適作型 (1)① 2 月上旬∼3 月上旬播種、4 月上旬∼5 月上旬定植、11∼12 月どり栽培と、② 3 月中旬 ∼4 月中旬播種、5 月中旬∼6 月中旬定植、1∼2 月どり栽培に適する(図1)。 (2)草姿は立性、葉色は濃緑色、葉長はやや短め、葉折れしにくい。 (3)分げつの発生は少なく、株揃いが均一で、収量性が高く、肥大も良好である。 作型 秋冬 ネギ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 11∼12 月どり 1∼2 月どり 定植 播種 育苗期間 収穫期 栽培期間 図1 ‘関羽一本太’の適作型(セル成型トレイ栽培) 2 試験成績の概要 (1)11∼12 月どり栽培(2007 年) 2007 年 2 月 26 日に 200 穴セル成型トレイに 5 粒播種し、同年5 月 14 日に定植、同年12 月 19 日に収穫調査した。 ‘関羽一本太’は、対照‘東京冬黒’と比較して、草丈はやや短く、 葉色は濃緑、草姿は立性であった(表1)。 また、分げつが少なく、収量 622.8kg/a と多収 であった。葉折れ等による規格外品が少なく、襟部のしまりが良かった(表2) 。 (2)1∼2 月どり栽培(2006-2007年) 2006 年 4 月 19 日に 200 穴セル成型トレイに 5 粒播種し、同年6 月 5 日に定植、2007年 1 月 24 日に収穫調査した。 ‘関羽一本太’は、襟部のしまりが良く、風雪による葉折れが少な かった(表3)。 また、対照‘錦蔵’に比べ収量 554.8kg/a と多収となり、肥大も良好であ った(表4) 。 - 69- 表1 11∼12 月どりにおける生育および品種特性調査 (2007 年 12 月 19 日調査) 草丈 葉身長 葉鞘長 葉鞘径 葉数 (cm) (cm) (cm) (mm) (枚) 東京冬黒(対照) 102.6 56.0 47.1 21.1 関羽一本太 99.5 52.7 47.0 20.5 品種 葉色 草姿 6.1 中間 中間 6.5 濃 立性 2 注)平均値(調査個体数:各区10 個体の 3 反復)、各区 2m 堀取調査 対照‘東京冬黒’を中間とした場合、葉色(淡、やや淡、中間、やや濃、濃)、草姿(立性、やや立性、中間、やや開性、開性)で目視評価。 表2 11∼12 月どりにおける収量および品種特性調査 収穫本数 総収量 (2007年 12 月 19 日調査) 平均調製重 分げつ (本/2m ) 襟部の しまり (本/a) (kg/a) (g/本) 葉折れによる規 格外割合(%) 東京冬黒(対照) 4,633 541.6 116.9 12.3 11 3.0 関羽一本太 4,850 622.8 128.4 2.4 4 3.5 品種 2 注)各区2m2 堀取り調査(2007/12/19)、調製重 35g 以上のネギの集計 規格外は、葉折れにより秀品外となった割合、調製後に葉身3 枚が確保できない個体が占める割合 襟部の締まりは、対照品種‘東京冬黒’を 3 とした場合の目視評価 1(劣) 2(ヤヤ劣) 3(並) 4(ヤヤ良) 5(良) 表3 1∼2 月どりにおける生育および品種特性調査(2007 年 1 月 24 日調査) 草 丈 葉身長 葉鞘長 (cm) (cm) (cm) 葉 数 (枚) 葉色 襟部の しまり 葉折れ 程度 錦 蔵(対照) 関羽一本太 89.5 91.3 46.5 51.4 44.8 42.9 4.3 4.6 やや濃 濃 良 良 少 少 注)各区10 株調査、平均値 葉折れ程度(少、中、多、甚、収穫前に立毛調査) 襟部のしまり(不良、可、良、優) 品種 表4 1∼2 月どりにおける収量および品種特性調査(2007 年 1 月 24 日調査) 品種 錦 蔵(対照) 関羽一本太 注)各区2 ㎡調査 収穫本数 (本/a) 総収量 (㎏/a) 平均調製重 (g/本) 葉折れによる 規格外割合(%) 4,125 4,250 476.2 554.8 115.4 130.5 16.4 20.2 注)調製重 35g 以上のネギの集計 注)葉折れによる規格外割合 :調製後に葉身 3 枚が確保できない個体が占める割合 3 利用上の留意点 (1)晩抽系ではないので、春∼初夏どり(4∼6 月)には適さない。 (2)さび病、べと病にやや弱い傾向があるので予防防除を徹底する必要がある。 (3)水田転換畑、黒ボク畑においては、別途試験をする必要がある。 4 試験担当者 弓浜砂丘地分場 研究員 伊垢離孝明 弓浜砂丘地分場 分場長 福本明彦 弓浜砂丘地分場 研究員 白岩裕隆 井上浩* * 現 米子農業改良普及所 - 70-