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Ⅳ.英国・地域振興関連機関のヒアリング(論点メモ)
Ⅳ.英国・地域振興関連機関のヒアリング(論点メモ) 1.副首相府 日時:2003 年 2 月 20 日(木)10:00~12:00 参加者(先方): Andy golding 氏 Jonathon Edwards 氏 Nick Dexter 氏 Mark Hitchen 氏 1.副首相府(地域振興グループ)の職務分掌 ・ 日本と同様に英国でも過去 4 年間省庁間の再編があった。1997 年に労働党政権になった時、 環境、地方自治、交通、地域開発すべてを管轄する省(環境・交通・地域開発省)が設立さ れた。 ・ その後(1~2 年前)再び省庁再編があり、環境・交通・地域開発省のうち,地方自治、地域 開発に相当する部分については、現在の副首相府に移管された。われわれ副首相府・地域振 興グループ(要確認)の役割は、地域政府の管理、プランニング、市街地近隣地区の更新、 地方の政府事務所(GO)の管轄などである。 2.地域振興制度の変遷と地方政府を巡る動向について ・ 過去の歴代の政権は、地方独自の政府機関が必要であるというニーズを確認していた。現在、 スコットランドとウェールズは地方政府を確立し、ロンドンでも新しい政権(政府)ができ た。(イングランドは検討中) ・ このように地方政府ができたが、その権限と責任範囲は違っている。歴史的背景の違いから である。スコットランドはイングランドと違う地方自治を行っていた。例えば、課税権はス コットランドはありウェールズはない、地方自治権についてもスコットランドはあるがウェ ールズはない、ロンドンは資金調達権限はあるがウェールズはない等である。 ・ “非対称”というキーワードが示すように、地方によって事情が違うので、同じ行政上の仕 組みを導入することはできないという考え方である。地域によって取り組み方が異なる。北 東部(North West)では地方議会を作る機運が強く、南東部(South West)ではあまり高くな い。地方議会ができるところと、できないところがあっても構わないと考えている。 ・ ロンドンとウェールズには地方議会ができたが、基本的にイングランドの地域にもその可能 性を拡張させている。昨年 5 月の白書では次にような記述がなされている。 “地方議会の要求 があれば、国民投票の機会を与える”と。この法案は国会で審議中である。 ・ ただし、公選の地方議会ができようとできまいと、現在の地方政府の目的は地方の声を中央 政府で聞き取ることができるような仕組みにすることである。現在以下の三つの組織を創設 してそれを試みている。 ○中央政府の出先機関(ガバメントオフィス) ○RDA(地方開発公社) 附- 143 ○地方協議会(地方協議会は地方自治体から任命された人間とその他の利害関係者か ら構成されている。) 3.SRB の概要と SFF への移行について (1)SRB の概要・成果 ・ SRB(Single Regeneration Budget)は、全国規模のプログラムであり、中央省庁が一括し て決定した制度である。その推進方法も最後の 2 年こそ、RDA が応札をやったが、それ以前 は応札・プログラム選定等をすべて中央政府が行っていた。 ・ SRB の基本的考えは、それぞれの地域のパートナーシップを作ってコンペ方式で応札するこ とであり、地方自治体、その他の地方公共団体以外にもボランティア、NGO、民間企業と連 携して地域づくりを推進することを基本としていた。 ・ 1995 年から 2000 年まで 6 年間毎年実施し、全部で 1,100 ほどのパートナーシップが設立さ れた。予算支出額は 6 年間トータルで 57 億ポンド(約 10 兆円)であった。 (2)SFF 設立の経緯・概要 ・ SFF は、それまで RDA が請け負っていた SRB とその他のプログラム(含イングリッシュパ ートナーシップ)をシングルポット(一つの包括的予算)にとりまとめ、これまでの応札は 受け付けないようにした。 ・ つまり、これまで RDA は中央政府が決めた(補助金)政策の執行機関に過ぎなかったが、地 域の戦略目標(特に経済戦略)を達成する義務を負わせる代わりに予算配分の自由裁量権を 与えた。 ・ RES(地域経済戦略)は RDA が勝手に決めるものではない。オーナーシップは地域の利害関 係者にあり、利害関係者との協議のもとで決められるものである。 ・ RDA は自由裁量が拡大したが、その一方ですべて中央政府の承認をとらなければならない。 具体的には RDA が策定したコーポレートプランを政府が承認するということである。RDA は経済的な振興を目的とした機関であるため、予算を承認する省庁は DTI(貿易産業省)で ある(DTI から予算が出る)。 ・ 中央政府が承認・管理するといっても、RDA の活動を監督するのは GO である。 ・ RDA の管轄エリアは、中央政府の出先事務所(GO)とまったく同じ範囲である。 (3)SFF 移行に伴う RDA の活動の違いについて ・ SRB を施行していた時の RDA の活動は、フレームワーク・応札のガイダンス等を中央政府 が定め、そのガイダンスに基づいて、どのようなパートナーシップの方向が考えられるのか を RDA が考えていた。 ・ そのため、SRB の応札書類を最終的に評価するのは中央省庁であった。一方、地域(region) の中で、どの場所に補助金を出すのがよいかという優先順位(ローカルプライオリティ)に ついては地方(RDA+地方協議会)が決めていた。つまり、RDA が一次評価を行い、中央政 府がその評価に対して勧告を出すという形態であった。ただし SFF に移行したので、今後は 評価に対する RDA の自主性がより増すことになるであろう。 附- 144 4.SFF 以外の他のプログラムについて ・ 副首相府が最近表明したイニシアティブがある(コミュニティスプラン)。これは住居環境と QOL(生活の質)、住居についてはイングランドの住宅価格が高騰し、一般市民が十分に住宅 取得ができない一方で、都市部のスラム化した地域では住宅の空家が目立っているというミ スマッチを解消しようとするものである。 ・ イニシアティブの目標はイギリス内における均衡ある経済成長の確立である。イギリスは歴 史的に経済成長に地方によってばらつきがあった。北東部は経済成長が十分でないというこ とで、この地域にテコ入れが図られている(中央政府に何ができるか検討している)。 ・ このプログラムに対して、220 億ポンドの予算が降りることになっており、一般の市民に手に 入るような住宅を提供し、荒廃地区を改良することによって、生活の質(QOL)を向上しよ うとするものである。 5.副首相府から RDA に対する予算配分の基準について ・ SRB の最後の 2 年間(RDA が創設されて以降の最後の 2 年間)は、全体予算の 80%は極貧 地区にいくように決めていた。たとえば、市街地のスラム、ロンドン、バーミンガム、ヨー ク、北東部、北西部などであるが、結果としてロンドンが一番多かった。ただし、公平性の 観点から残りの 20%はその他の要素をみて極貧地区以外の地域に配分した。それ以外の時期 は、応札の質などや地域の戦略ターゲットとの関係性などをみながら決めていた。 ・ 評価・選定は、応札書類を RDA や GO が細かいチェックをし、中央政府がそれを勧告する仕 組みである。評価・選定は、中央省庁・地方事務所と RDA とがビデオコンファレンス等の協 議を経るなどして実施してきた。勧告があっても中央省庁がそれを拒絶したという経験がな い。 ・ 中央省庁からの勧告は、SFF に移行したら緩くなる見込みである。ただし、RDA に課せられ た使命・役割は、地域の経済発展(経済的底上げ)であり、その意味で貧しい地区に優先的 に資金を配分することに変わらない。 ・ RDA は中央省庁からの補助金以外に独自で執行できる予算をもっている(インディカルバジ ェット)。この予算を RDA に配分するために、一定のフォミュラ(算定式)を使った。人口 の多寡と極貧地区(ロンドン4つある)の数等がその要素に含まれている。 6.ガバメント・オフィス(GO)について(地方政府事務所) (1)GO 設立の経緯 ・ 今から 10 年前(1994 年以前)、地方政府を有しているのは環境省、貿易産業省、教育雇用省 の 3 省だけであった。94 年以降にこれを再編して全国 9 箇所の GO を作り、99 年に RDA を 設立した。2000 年に副首相府の中に、パフォーマンス・イノベーション・ユニット(ロンド ンと北西部が主要ターゲット)が発足した。同時期に、GOを活用するようなリージョナル コーディネットユニット(RCO)ができた。2002 年には GO の管理・管轄事務権限は、環境 地域交通省から副首相府に移行された。 ・ GO の設立と同時に、GO に対する財源拠出の主体に内務省(ホームオフィス)が加わった(い 附- 145 わゆるスポンサーが増えた)。 (2)GO の役割 ・ RTO(RCO?)は4つの優先事務事項がある。 ① GOの役割を拡張させる。 ② GOで学んだことを中央政府にフィードバック。その中央政府での政策づくりにこれ を組み込む。 ③ 中央政府の政策を地方に反映させるべく、地域を単位とした活性化政策を統一的に行 う(これまで多数の中央省庁が実施してきた) 。 ④ GO を RCO(地域の知的情報中枢機能)と位置づける。 ・ これに加えGOに新しい役割ができた。貧しい地区を更新する住居改善基金、広義な協力体 制、児童福祉関係、若年層の雇用環境の向上(15~16 歳をスムーズな雇用に移行させる)な どのソフトなプログラムである。 ・ 重要なのは、94 年以前は別々であった省庁間のバリアーを GO を通じてコーディネーション しようとすることである。現在では GO の体制が整い、地方の意見・ニーズが中央の政策づ くりにも反映されるようになった(中央政府への働きかけも増えてきた)。結果的に GO の拡 大が省庁間の垣根を除去した格好となった。 ・ なお、GO の中でも省庁の力関係が異なってきた。経済開発におけるRDAの権限・役割が拡 大するにつれ、GO の中における DTI の権限・役割が低下している。 (3)RCO の概要について ・ RCO の組織はポリシー・・・とマネジメントボードによって構成されている(図表参照)。9つ のGO理事と事務局長との間で月 1 回の会合をもっている。 ・ このボードは地域の総合的な戦略を決めるという役割がある。他に事業ごとの連携・調整を 図るという名目で財務省から予算をもらっている。この予算は、スペンディングレビュー(予 算支出計画)によって増額も決まっている。 ・ RCO の最大の特徴は、国家(上級)公務員だけではなく、自治体・RDA・産業界も9つの 代表に入っていることが特徴である。 (4)GO の規模 ・ 2,500 人弱ぐらいがGOで働いている。(+予算規模コメント) (5)その他 ・ 白書は地方の独立議会を設けるのではなく、地方の声をもっと反映させることが重要である とされている。そのためRDAの予算も増え、裁量も拡大した。 ・ 現在地方議会のニーズを地方と協議している。十分な機運があれば、政府の方で住民投票す るように働きかける。実際GOがやっていることを議会に任せるようにしている。議員数は 25~30 人ぐらいの規模となっている。 ・ 地方議会の権限は、現在、一部は中央政府がもっており権限を委譲する。その上で新しい要 附- 146 求事項も含まれている。現在ばらばらに活動しているものをひとつにもってくるという考え 方である。 7.RDA と GO の違いについて ・ RDAとGOは目標が違うので一緒にはできない。RDAは貿易産業省の管轄である。DT Iの人はGOに入っている。 ・ 今後 GO の役割のいくつかは地方協議会に移行されるであろう。地方にとって中央政府との 間に2つのコミュニケーションチャネル(GO と RDA)があることは重要である。そのなか で GO は、中央政府の政策の意向を地方に伝える、地方のニーズを把握・収集し中央政府に 伝える、という重要な役割がある。 ・ 権限分担はいかに効率性を追求できるか。交通運輸関係は連携と分担が必要であるが、その 連携に中央政府の介入が必要なのではないか。 ・ 公選の議会ができたら一層制にするつもりである。イギリスには境界線委員会があり、カウ ンティかディストリクトを選択できるようになる(おそらく三層制になることはないであろ う)。境界線委員会というところでカウンティとディストリクトのどちらをいかしたらいいか 検討しているので、地方によってはカウンティが残ったり、ディストリクトが残ったりする だろう。 ・ GOの活動の仕方は地区ごと。各省庁ごとではない。 8.GO の設立によって事務・事業が削減されたかどうか ・ もちろん効率化は図られた。例えば若い人の休暇制度の充実に関する施策は、複数省庁で類 似するような政策を展開していたが、GO 設立を契機に効率化が図られたなど、いくつかの事 例がある。 ・ SFF は、それぞれの中央省庁がもつがシングルポットとしてまとめてもらう仕組みである。 この使い方は地方協議会の裁量・優先順位を決められる。最終的な成果は、地方振興・経済 発展がどの程度実現されたのかによって捉える。 9.RDA と協議会の同時設立のねらい(競争と協働) ・ 特に戦略的なねらいはない。段階的に現状(RDA と協議会が並存)のような状況になったと いうことである。98 年の RDA 設立同時に、RDA は協議会に協議しなければならない、協議 会の意見を聞かなければならないとした。つまり協議会はもっと積極的に地域づくりを推進 すべきであるとしている。 ・ RDA は地域経済戦略を作るが、その戦略を作るのは RDA だけでなく他の組織も行うので、 それを包括したものとするのは協議会の役割である。地域交通戦略、計画指針などを含めて ひとつのものを作るのは、地方の統一的な施策を展開するうえで重要である。 附- 147 2.貿易産業省 日時:2003 年 2 月 20 日(木)14:00~16:00 参加者(先方) Department of Trade and Industry Policy and Strategy Team Deputy Head Rags Poduval 氏 Sponsorship of Reginal Development Agencies Assistant Director Andrew Dobbie 氏 Senior Policy Advisor Spencer Mahony 氏 他1名 1.RDA の概要・経緯 1)経緯・概要 ・ 1999 年に設立された RDA は地域振興の中心的役割を有している。地域振興に関して強力な 権限を有しており、その資金の大部分は中央省庁から拠出されている。 ・ RDA は、最高 15 名までをもった理事会がコントールしている。その構成メンバーは、産業 界、NPO、地域開発、教育関係など幅広い。議長はビジネス経験を有した人が就くようにな っている。 ・ また中央省庁としても、 完全に RDA の自由裁量に任せるはわけにはいかないとの認識があり、 (DTI)大臣と RDA との関係を緊密にしている。 ・ RDA は、法規によってその存立意義が明文化されている。 ① 地域の経済発展を支援すること(ハード・ソフト:社会的な面も含めて、という意味) ② 地元企業の競争力を高めること。 ③ 雇用力を上げ、失業率を下げること。 ④ 地元の労働者の熟練技術を上げ、その技術を通じて雇用先を確保しやすいようにする こと。 ⑤ 維持可能な開発(環境との共生)を実践すること。 ・ 創設以来、RDA の予算は増加傾向にある。2000 年度は○○、2001 年度は 12 億ポンド(2100 億円)であり、今後 3 年間をみても、13 年度は 2600 億円、14 年度は 3,000 億円となってい る(計画されている)。 ・ RDA と貿易産業省等との人事交流は頻繁に行っている。適材適所な人員を配置するという考 え方がその背景にある。 2)設立の背景 ・ このような経緯で設立された RDA ではあるが、従来の地方と国との関係を変えようとする明 附- 148 確な目的があるわけではなく、とりあえず地方にやらせてみようという英国のお国事情が反 映された制度であるとも言える。(イギリスには憲法もない)。 ・ イギリスの広域地域は作り出したものである。歴史的にあるわけではなく、人工的にできた ものである。地方協議会ではない、出先機関はある。 ・ 大きい人口は 1000 万人小さいところは 250 万人、ノースイーストはお国自慢があるが、サウ スイーストにはそれがない(まとまっているわけではない)。イギリスでも地域は作り出した ものである。保守党から反発があった。したがって確固として存在するわけではない。 2.SRB から SFF へ ・ 2000 年に中央政府に RDA により多くの自由裁量を与えた。それまで11のさまざまなプロ グラムを政府に代わって実践していた。たとえば、ランダムプロパティという荒廃地の再生 (土地の買収、住宅建物の整備を行う)プログラム、ルーラルプログラム(農村再生)など がそれである。 ・ 11 のプログラムは別々の補助金で行われていた。それをシングルプポットというひとつの財 源の中で地方(RDA)が自由裁量で配分できる仕組みに変えた。ただし自由裁量を与える代 わりに、経済開発を最優先事項にする役割を明記した(経済開発の達成度は政策目標とその 達成度によってチェックしている) 。 ・ RDA の財源を拠出しているのは、5つの省庁である。経済貿易省と副首相府は都市再生、建 物、コミュニティ再生を取り扱う、教育省は訓練・技術関係、旧農林食糧庁は農村関係、こ れに加え、今年から文化・スポーツ・メディア省が観光振興の目的で RDA に予算をつけた。 ・ RDA が 1999 年に設立されてから最初に行ったのは今後 10 年間の地域の経済発展方向を示す ビジョンである地域経済戦略の策定である。この地域戦略には、地域の中で何を優先的に施 策として展開すべきかが示されており、シングルポットとして与えられた予算がこの優先順 位にしたがって配分されているかどうかで、予算使途の妥当性を中央省庁はチェックできる。 ・ 事業実施にあたって、RDA は、コーポレートプランという中長期的な計画と、RDA 自体の事 業計画書であるビジネスプラン(RDA によって名称が若干異なる)を提出する。コーポレー トプランを DTI 大臣、その他の大臣が承認する仕組みである。 3.RDA の役割と事業内容(政策の方向性) ・ DTI は RDA に対して 11 のターゲット目標を与えている(失業率を下げる、地域の生産性を 上げる、荒廃地を解消する、教育水準を上げる、革新的な起業を推進する、地元民の技術の レベルを高める、など) 。 ・ その中で RDA が行っている特徴的な業務のひとつはビジネスサポートである。ビジネスサポ ートはこれまでは省庁ばらばらに行ってきたため、民間企業にとっては相談・支援の窓口が わからず不便を強いられていた。この問題は RDA に移行すると同時に解消された。 ・ ビジネスサポートの戦略は、まず地域経済を牽引する(ビジネスとして成立しうる)キーセ クター(重要な業界)を決め、そのクラスター(集中的な産業集積)を作ろうというもので ある。ただし、ほとんどの RDA はバイオインダストリーを選んだ一方で、建設業は皆無であ った。地方の自主性に任せるといっても、自主性だけでは画一的なプランしか策定できない 附- 149 のである(中央政府による中長期的な戦略・ビジョンが必要であることを示唆) 。 ・ バイオテクノロジーだけでなく小規模な業務も行っている。南東部ではハイテクのインキュ ベーション(ベンチャー企業)を育てるような事業を行っている。4 分の3は生き残る(もし そうでないと、2年後に継続している企業が 3 分の1しかない)。 ・ また RDA はイノベーション(企業の新規革新)に対して多様な資金支援を行っている。イギ リスはハイスキル・ハイイメージを目指す方向に向かうべきであることを考えるとこの事業 は非常に重要である。 ・ 英国が他の EU 国と競合に直面する場合、技術力が高く規制が緩い一方で、従業者の給料が 低いというイメージがあったのだが、今後は賃金を上げ、有給制度を整えつつ、競争力を維 持できるかどうかが重要な課題である。 ・ 海外の投資を誘致するためにはインベスト UK という宣伝機関がある(英語力・技術力・税 金安い)。RDA は設置のためのサイトを見つける(空港に近い等)役割がある。RDA とイン ベスト UK とはよいパートナーである。 ・ ロンドンからの移転を止めない。ロンドンにきた企業を地方に奨励する動きはない。ロンド ンにいなくてもよい企業については地方に移転を進める。メディア、金融等はロンドンに残 る。特に貧しい地区に移転してくれるならば、工場を建設する為等への補助金を出す等の奨 励策を行っている。 4.DTI による RDA の評価と近年顕在化した課題 (1)評価の基本的考え方 ・ RDA(及び RDA が実施している事業)が成功しているかどうかを中央省庁が客観的に評価す ることは難しい。実際の評価は、RDA からの申告・説明に基づくのだが、RDA が実施してい るのは経済振興という中長期プログラムが多いので、短期にどの程度成果が上がったのかを 評価するのは難しいのである。 ・ もし評価を厳格に運用すると(締め付けを厳しくすると:例えば短期の成果で資金量の増減 を決めるなど)RDA は、貧困地域ではなく比較的経済発展が短期に実現されるような先進地 域に事業を集中的に実施するようになるなど、成果があがりやすい事業に集中してしまう。 これはジレンマである。 ・ 評価は11の達成目標に基づいて行われる。ただし、地域によって達成度の水準に違いがあ る。例えば、ノースイーストでは就業率を 70%→72%に上げるという目標であっても、他の 地域では 80%という高い目標を掲げている。(有色人種の話?) ・ RDA ごとに地域の事情によって独自のターゲットを設定している所がかなりある。例えば、 ロンドン地区であれば有色人種等の就業率を上げる、起業家を更新するなど。 (2)近年顕在化した問題点 ・ ノースウエスト RDA は、CBI(イギリス産業協会:雇用協会)の場やフィナンシャルタイム スの広告紙上を使って、ロンドンやサウスイーストの悪口を言った(渋滞、コスト高)のだ が、これは地域の均衡発展を意図する RDA の役割に反するということで問題視された。フィ ナンシャルタイムスに対する広告宣伝費(約 5 万ポンド≒1千万円程度)もばかにならず、 附- 150 これを RDA の予算から払っているとなると深刻である。 ・ 地方の自主管理、権限、独立を与えると危険である。競合ではなく協力をしてほしいという ニーズがある。協調のネットワークが必要であると信じている。 5.RDA の最適管轄範囲に関して ・ ウェールズ、スコットランドのケースでもわかることであるが、経済開発に関する広範な権 限を与えるにはこれまでの自治体の規模・反映だけでは視野が狭かった。むしろビジネス振 興の意欲を有した組織・団体の方がよくできるのではないかという指摘があった。 ・ 実際の調査結果をみると、ビジネス展開のためには、既存の自治体のエリアでは狭すぎ、も う少し広域で事業実施したほうがよいという見方がある。 6.RDA に対する予算配分の考え方 ・ 予算配分の算定式があり、それにしたがって配分している。貧困度(極貧度)指標なるもの があり、それが計算式の重要な要素になっていることで、もっとも貧困な地区が潤うように なっている。比較的貧しい地域が多く存在しているノースイーストは人口1人あたりの補助 金は 70 ポンド/人、比較的豊かなサウスイーストでは 14 ポンド/人等の違いがある。 ・ ただしこの配分の仕方に異論がないわけではない。南部の RDA から文句が出たものの、政府 としては北の方を優先的に実施したいという意向がある。南北格差を縮めたい。 7.資源会計 3 ヵ年歳出予算との関係 ・ SFF は資源予算への移行と無関係ではない。実際経済振興・都市の再生にはコスト(用地費 等)がかかる(2000 万ポンドがかかる)。例えば、予算年度内に土地収用等ができなかったら 予算がつかないので、3ヵ年歳出予算になってやりやすくなったとも言える。 ・ RDA と貿易産業省との人事交流や、RDA 間の人事交流はある。適材適所の人材が必要である。 地方自治体、中央政府、民間企業との人の動きは多いが、全体的に人不足である。賃金がど んどん上がっていくという状態にある。 附- 151 3.NorthWest Development Agency 日時:2003 年 2 月 19 日(水)10:00~12:00 参加者(先方) Northwest development agency Regeneration Policy Manager Malcom Kennedy 氏 North West Regeneration Network Network Co-ordinator Sufrana Ismail 氏 1.北西部地域の SRB の概要 ・ この地域には 120 の SRB のプログラムが動いており、その下に各種プロジェクトが位置づい ている。プログラムの事業規模は小さいもので、200 万ポンドから 2、500 万ポンドまで、開 発期間も 4 年~7 年のプログラムまで多様である。120 のプログラムは 2 年前の数字で現在は 終了しているものもある。 ・ RDA の戦略は 3 年間隔で見直されている。最新の戦略は 2003 年に公表される予定である。 2.英国の地方自治制度の変遷と RDA・協議会の概要 ・ イギリスでは 1997 年に保守党から労働党に変わってから地域振興政策も変化した。それは、 地方の開発は、地方の自主性に応じて行うべきだというものであった。 ・ 連合王国の中でウェールズ、スコットランドは自立地域(独自に議会をもった運営体)にす べきであるという国民投票があり、独立地域となった。またイングランドの中の地域でも、 自主運営する機会があれば、国民投票を行って自主運営できる可能性があることが示された (その最有力がロンドンから遠隔地にある北西部・北東部である)。 ・ 地方の自主運営に向けた行政的な準備が RDA と地方協議会である。RDA は各地方の開発振 興の主体であるが、地方協議会はもし独立の機運があれば議会を有する可能性が示されてい る(現在は準備段階)。RDA は地域の開発支援主体であり、協議会に対してその開発支援の報 告を行う義務をもつ。 ・ カウンティは現在も行政制度として存立しているが、地域によってその事情は異なる。大き な違いは一層制であるか、二層制であるのか。境界線があるわけではない。例えば、北西部 は一層制のユニタリーオーソリティ(地方行政を全て一括して行っている大きな都市・都会) と二層制のカウンティの2つが並存している。ユニタリーオーソリティはウォーリントン、 マンチェスター、リバプール、ランカスター、ブラックプールなどの都市が代表格である。 ・ カウンティ制度の背景は、タウンは小さすぎるため、カウンティベースでまとめて行政サー ビスする方が効率的であるということに起因している。北西部はランカシャーカウンティと いう大きな行政サービス供給体がある。ノースウエスト地域にはランカシャーとカンブリア の二つのカウンティがある。 附- 152 ・ 複雑なのは、カウンティはない為に、他の組織が必要な地域がある。マージーサイド(?) とグレータマンチェスターは廃止されたが、小さな自治体を束ねて、交通、消防、警察活動 をコ-ディネーションする別の広域的な組織ができている。正式なカウンティの形態ではな い地方政府を作ることになると三層になってしまうという議論があり、おそらく地方政府が できるとカウンティとディスクリクトのどちらかは廃止されるであろうという見方もある。 ランカシャーの小さいまちは、2 層制の地方行政制度のもとで、市議会(タウン)、県議会(カ ウンティ)、地方政府(地方協議会)の選挙をすべて行わなければならない、地方政府は将来 的にできることになったら、カウンティや協議会の役割は地方政府に移行することになる。 3.これまでの地域振興施策(補助金等)の変遷 ・ 97 年に労働党政権に変わってから、SRB 制度は実施されていない(SRB は SRBCF と同じ意 味である)。 ・ まずサッチャー時代に運用されていたシティチャレンジが現在のコンペ方式のベースとなっ ている。これは、今から 20 年ほど前、極貧困地区で発生した暴動を契機に、失業率が極めて 高く、衛生、健康状態、住宅、経済、教育等が低いレベルの地域を財政的に補助するように なったものである。5 年間で 3,750 万ポンドのファンドが作られ、北西部ではウィガン、ボル トン、リバプールなどが対象となった。コンペ方式を採用し、工夫して最良の提案を採用す る仕組みであった。 ・ その後シティチャレンジ等の補助金を統括して SRB が作られ(SRB と SRBCF はまったく同 じものである。)、それが 97 年に労働党政権に変わってから廃止されるに至った。新しい政権 のもとでは RDA(および地方協議会)が創設され、さらに RDA の柔軟性ある資金活用を支 援する目的で SFF(シングル・フィナンシャル・フレームワーク)という新たな仕組みが創 設された。今回事例として取り上げられた北西部のカナル(運河)プロジェクトは、この新 しい仕組みを活用して実施されたものである。 (労働党政権に変わってから、SRB 制度は実施 されていない。 ・ SFF は、中央政府のひも付きであった財源(補助金)を、RDA が一括管理し(シングルフレ ーム<シングルポットとも言う>) 、RDA の自由裁量のもとで自由に配分できる仕組みである。 SFF は RDA という公社が作られたとき、前政権の政策を引き継いだものである。それまで1 1の別のプログラム(SRBもその一つ)があり、別々の組織が執行していたのを包括的に まとめたものである。 ・ SRB は経済的な目的以外にも社会性(教育、生活環境等)の高いプログラムに対して支援し ていたが、SFF に変わってかなり経済発展重視・開発重視・ハード志向が強まった(RDA は 地域の経済発展を目標とする組織である)。SFFは使途を限定しない。ビル建設にも適用で きる。プロジェクトに対して資金を拠出する形態であると、プロジェクトが終了すると支援 も終了してしまうのに対し、スキーム自体に資金を出す形態にすると、プロジェクトが終了 しても別のプロジェクトに対して継続的な支援が可能になる。 ・ 現在新規の SRB はないが、これまで実施されてきた 120 の SRB のプログラムの中で、まだ プログラムが完成していないものについては、25 万ポンド以下であれば、独自判断で(RDA の予算を)使うことができるようになっている。それ以上のものについては承認を経てから 附- 153 使ってもらう。ものによってはもっと上限があがるかもしれない。 ・ これまで SRB が行ってきた社会性の高い部分、ソフト政策に関する部分については、別のス キームが用意されている。近隣環境改善基金、住宅市場更新基金などがそれであり、中央政 府の出先機関(ガバメントオフィス:GO)が管轄している。 4.RDA(SRB(120 のプログラム)+SFF)と自治体サービスとの関係について ・ いわゆる地方自治体はサービスを提供している主体であり、RDA は地方全体の経済業績を改 善するという特別の目的を有しているという点で固有の問題を有している。雇用というのは 理論的には経済状態が改善されれば自然に増えていくものである。地方に対して RDA がかな り努力してビジネス支援、産業振興を行っている。そのような理由づけをもって RDA に対し て予算を出す。100%中央省庁から出されている。 ・ 予算は RDA の政策目標にしたがって算定される。RDA が中央政府や地方政府と協議を行っ て目標設定し、その目標設定が認められれば予算がつく仕組みである。RDA の政策目標は経 済効果に主眼がおかれているため、予算の配分も経済性の高いプロジェクトが中心となって いる。 5.SFF の参加資格 ・ 現在コンペ方式に対する疑問が出されている。一つには、コンペ参加に要する資金(企画書 の作成等)がかなり多額にのぼること、二つには、コンペを実施すると、能力の高い主体の みが予算を獲得できることになり、かえって公平性を損なうのではないかという見方である。 RDA が作られた理由はこのようなコンペ評価に反対する労働党の意見がその背景にある。 (保 守党は市場重視、労働党は社会・公平性重視のスタンスを明確にしている) ・ 現在 SRB および SFF の補助金承認にあたっては、まず参加基準を設け、参加基準に達しな いと応札できない仕組みにしている。その基準は、端的に言えば貧困度(公平性の重視)で あり、たとえば貧困指標が下から88の地区でないと応札資格がない、というような運用を している。貧困指標は、10 年に 1 回行われる人口調査によって地域ごとの指標を改訂してい く。その都度資格基準も見直される。 ・ もうひとつの参加資格は、何らかのパートナーシップ(地方自治体と地元住民、産業、警察、 健康保険関係の団体等)が前提となっていることである。 6.SFF の手続き・経過について ・かつての SRB を実施していた時は申請書を中央省庁が出す戦略によって決めていた。実際のや り方は以下のとおり。 * 申請書を書く段階で、申請者と RDA とが協力する。同時に別の部署がこのプロジェクト を採用した段階で、RDA の政策目標が達成されるのかどうかをチェックする。 * 事業費、資金調達等がチェック項目である。 ・ 戦略→企画→承認が行われたのち長期計画書(コーポレートプラン)と短期のビジネスプラ ンが作成される。 ・ 良いプロポーザルが出てこないと補助をつけることは難しいが、申請支援までも行うことで 附- 154 何とか努力している(つまり良い企画書を作成するように事前指導している)。現政府は必ず しもコンペ方式を賛同していないが、地元が真剣に考えるという点でこの方式がよいのでは ないかという見方もある。 7.SRB および SFF の評価 ・ 応札段階で、どの地域に便益が起こるのか、どの程度の新規住宅、新規雇用、何人の若年層 が雇用されるのか、貧困が改善されるのかを重視し、プロジェクト・プログラムの評価(採 択)を行う。 ・ 指標をチェックし、毎年 1 回モニタリングしている。毎年レベニュープラン年初と年末でチ ェックする。ターゲット目標への到達するかどうかをチェックする。そもそも地域づくりに ターゲットを設定するのが難しい。[アウトプットの進捗率を管理する。] 8.SFF の問題点 ・ SFF になると RDA の戦略に適合したものでないと補助金を拠出できなくなってしまうとい う問題点がある。例えば、生活環境の改善のために、1,000 戸の住宅・建物を作りたいという 申請があっても、それが地域の経済発展に直接結びつくものでなければ、RDA として採択を することは難しい。その一方で、古い荒廃地の産業を再生したいという要請については了承 できる。 9.その他 ・ RDAは地域からのガバナンスに工夫がみられる。特に事務局長、CEO、理事会理事の選出 に地方議員や産業界の代表、CBE(勲章をもらっている人)などを組み入れるなどの工夫が されている。 ・ RDA のファンドは、毎年 3 億ポンドぐらいである(予算) 。受け手は、RDA以外からも資 金調達している。たとえば、あるプログラムでは 1500 万ポンドのうち 450 万ポンドが RDA 分となっている。 ・ ケンブリッジ大学のドクタータイラ氏は、このような地方振興スキーム(スキーム:いくつ かのプロジェクトを統合したもの)の効果・特性を研究している。 附- 155 4.North West Regional Assembly 日時:2003 年 2 月 19 日(水)14:00~16:00 参加者(先方) North West Regional assembly Director of Planning, Transport and Sustainability Tim Hill 氏 Deputy Chief Exective Gillian Bishop 氏 European Programmes Officer Magaret H Reid.Bsc(hons)氏 1.協議会の概要・設立経緯 ・ 中央政府がイングランドに RDA を作ったのとほぼ同時に RDA と同じ8つの地域に地方協 議会を創設した。 ・ RDA は実施機関であり、報告機関は DTI であった。しかしながら、地方からのモニタリン グ(監視)が必要なのではないか、という意見があり、その仕組みを担保する目的で協議 会が位置づけられた。地方協議会は当初 chamber という名称であったが、その後 assembly という名称に変更された(地方政府への移行を意図したものである) 。名称自体の変更にあ まり意味はない。 (以降の記述では、アセンブリーを協議会という名称で用いることにする) ・ 協議会は、自主的な組織であり、自治体代表、産業界代表、ボランタリー・NPO 等の代表、 労働組合の代表、地元の大学代表、生涯教育代表、医学会、健康医療関係等の代表などに よって構成されている。 ・ 中央政府が基本的な規則・指針を定めているが、協議会の方でセクターごとに代表者が何 名必要かを決めている。 ・ RDA への監督方法は、地域ごとにやり方が異なり、細かなやり方はサウスウエストの協議 会とは異なる。ノースウエストでは、ビジネス・産業代表者、協議会の代表者、地方自治 体の代表者、中央政府の出先事務所(GO)の代表者、RDA の代表者等で構成された組織 (諮問会議?)が監視するやり方を実施している。他の地域では、協議会が直接監督して いるところもある。 ・ これは、もともとアセンブリー自体が直接 RDA の監督をする予定だったが、RDA から反 対があったため、RDA の人も直接監督組織に加わったリージョナルレビューを設置し、そ こで監視することになったという経緯からである。 2.協議会の組織・財源について (1)組織(構成)について ・ もともと自主運営団体であり、法人化された。法人化したほうが中央政府からの金の引き 出しやすい面がある。 ・ 議員(メンバー)は 80 人。すべての地方自治体から、代表者は最低 1 人は来ている。中央 附- 156 政府はストラクチャープランの権限をカウンティカウンセル(県議会)から協議会に移行 しようと検討しているが、いくつかの権限はカウンティカウンセルに残る。カウンティカ ウンセルは地方部(ローカル)のみに存在する。ただし、カウンティカウンセルから財源 が拠出されるわけではない。 ・ 議会はアセンブリー5つのアドバイザリーグループ(諮問会議)がプライオリティグルー プと称され、それぞれに自治体代表と、産業界、NPO 等のメンバーが参画している(上述 のようにこのグループが RDA を監督している) 。 ・ 議会の構成は、70%は地方自治体の代表であり、30%がその他(産業界、NPO、保健団体 等)である。 (2)財源(構成)について ・ 98 年に最初に協議会ができたときには100%地方自治体からの拠出金であった。しかし ながら、権限が増えるにつれ予算も増加している。増加した予算分は副首相府から出てい る。一方、監視役・プランニングを行うために、自主財源も有している(2002 年 4 月から 予算は、プランニング用として 125 万ポンド、監視役として 60 万ポンド、地方自治体から 50 万ポンド出る)。このように、自治体からの拠出金の比率は毎年下がっている。 ・ 自治体からの拠出金は義務として徴収しているが、かつて 1 箇所だけ払わなかった自治体 があった。協議会の管轄範囲は、プレッシャーカウンティと17の都会地区ユニタリーを 包括しており自治体のエリアと一致している。ただし、国立公園はどの自治体にも属して いないのでその扱いに問題がある。 3.業務内容について ・ RDA は経済活動に関する責任を負う(交通は経済活動に含まれる)。逆に協議会は経済振 興・開発等による環境等の影響を重視する。このような意見が対立する二者が一緒に地域 づくりを推進していくことは非常に意義がある。 ・ ノースウエストの協議会は都市計画や交通計画についても計画を策定・検討するグループ が存在する。これまでに開発、交通関係は地方自治体がやるべきであるという考え方があ るが、ノースウエストでは常に広域の主体・ビジネス界等とパートナーシップを重視する 土壌があり、協議会でも計画を検討することになっている。たとえば、交通優先(トラン スポートプライオリティ)というものは、RDA と他の組織と共同で作るものがある。実際、 計画の検討や改編は中央政府の事務所、RDA、高速道路庁と密接に連携しながら行ってい る。 ・ 業務内容は基本的には監視と計画策定(今後:後述)であるが、その他に EU の補助金関 係(EU 構造基金)の受け皿としてその業務を支援する自主業務もある(EU 構造基金の対 象にリバプールとマージェーサイドが入っている)。また、キャンペーン活動等も行ってい る。たとえば、造船業が集積したコミュニティであるバロンインファネスのイメージ(造 船業の衰退で、昨今失業率が高い)を向上させようとするキャンペーンを積極的に展開し ている協議会職員もいる。 ・ 同じプロジェクト・プログラムに RDA とアセンブリーの双方から補助金を出すケースもあ 附- 157 る。RDA は 3 億ポンドの予算を握っているが協議会の財源は少ないため、実際事業を実施 するというよりは計画の事前協議・検討を行うというレベルの参画である。 (しかしながら 公選制になると変わる。RDA も協議会の管轄下に入るなど、交通・教育・住宅等の権限も 持つようになる。) ・ われわれが関与するところは、戦略・目標・優先順位・概念・メカニズムに関する技術的 な検討・アドバイスである。ただし、協議会のプロジェクトに RDA が資金を出す場合もあ る。たとえば、マンチェスター空港近くに新しい鉄道を敷くという実行可能性を調べる調 査などが代表例である。 ・ RDA の計画に対しては、協議会からいくつかの問題点を指摘している。たとえばビジネス クラスター戦略があるが、この概念は非常に懐疑的である(クラスターの意味がいまひと つイメージできないという点で)。荒廃地に対して、どの程度の予算を使うのか、中心市街 地の再生や企業のサポートにどのくらいの効果があるのか、等について協議会としての見 解を示す場合がある。 4.協議会をめぐる今後の動きについて ・ 今年政府は2つの法案を通す予定である。 ① 協議会を計画実行主体にしようとする(パートナーとして加わる) ② 協議会が関係主体と連携し、RDA を監視し、地方開発に携わっていく。 ・ ①については、ストラクチャープランを廃止し、プランの策定及び実行をリージョナルア センブリーが主体となって実施しようとするものである。 ・ 元来、中央省庁が自治体の都市計画策定に対してアドバイスを与えるという役割があった (開発計画ガイダンス:10 年前)。しかし 4 年前(99 年)から地方が計画を策定し、大臣 に申請するという方式に変わった。特に、交通計画や開発計画において地方の責任が増し ている。協議会を計画実行主体にするという考え方は、このような計画の地方分権の流れ を反映したものである。 ・ 上記の法案のいずれも、2004 年4月、5 月に法案が可決される予定である。ただし、協議 会のメンバーの中には、自治体の代表者もおり、自治体の中にはもともと自治体が有して いた様々な計画権限・開発権限が協議会に移行されるこの法案に賛成しないものもいる。 おそらく法案は議決される可能性が高いが、当初の法案と異なる可能性もある。 ・ 公選にする法案と、協議会をプランニングの実行主体にする法案は別々に進行中である。 公選にするとプランニングの権限も強くなるという意味で相互に関連性はある。 ・ 地方議会の公選制を実現するためには国民投票を経なければならない。論争になるのでス ムーズに進むかどうか疑問である。 ・ これらの法案が通っても協議会が財政的に豊かになる保証はない。直接的な財政面とのつ ながりはない。特に交通(鉄道)に関する資金が改善される見込みは不透明である。 5.資金を重点化することに対する構成自治体の反発等について ・ 資金を特定地域(極貧地域)に集中配分することに対して、対象地域以外の自治体からの 反発は確かにあるが、イギリスの地方自治体は、最悪のところを改善するためには、すべ 附- 158 ての地域に資金が配分されない可能性があることを概ね了承している。 ・ RDA が支援の対象としている自治体は、構成自治体46のうち半分近くの25である(工 業地帯の荒廃地区再生がメイン)。ただし、ビジネスサポートや教育関係という名目で、2 5の自治体以外に資金が行く可能性はある。 6.SRB からニュースキーム(SFF)へ ・ RDA は SRB という補助金ひもつきが中心であったが、RDA でひとつの資金を自由に使え るようになった(シングル・フィナンシャル・フレームワーク:SFF)。SFF 移行に伴って、 雇用、トレーニング等、学校等の三つの新しいスキームが実行に移された。 ・ 荒廃地の問題が北西部では大きい。民間の投資を誘発することができない。RDA がいうに はこの地区のイメージをよくするために、醜いことを除去することが重要なのではないか、 という意見をもっている。 ・ SRB で評価される点は、経済発展と社会教育との目的がミックスされていたことである。 しかしながら、SFF は経済目的に偏っている。 7.SFF におけるコンペ方式の扱いについて ・ SFF に移行してもコンペの要素は残っているが、(貿易産業省から)RDA に設定された目 標に対して資金が集中的に拠出されるような仕組みがある。これまで実施されてきた SRB についても、地元の組織が柔軟に資金を使えるようになってきた。 ・ ただし、基本的はこの地区に開発資金がほしい場合は、誰かがプロポーザルを作成しなけ ればならないので、必要な研究リサーチを要請し、どのような開発ができるのか、を検討 してもらう(例えば、ウエストカンブリア、ブラックプールなどの荒廃地を振興できるも のはないか・・・)。また、RDA が企画をつくり、関係自治体を招聘して誘導する場合もあ る。 ・ コンペ方式は競争という機会均等を約束したものであるが、競争に勝ち抜くために多くの 代償・犠牲を申請者に強いるものであった。シティチャレンジ時代は、あまりにたくさん の競争要素があったので、SRB でその要素を少なくしようとした。6 回で公平性を担保さ れるようにした。ただし、SRB でも選定は毎年 1 回だけなので、常に安定した資金が獲得 できるわけではなかった(実際私はオルダムの出身であるが、ある年は SRB を獲得したが、 別の年は獲得できなかった)。一番貧しい地区に資金を与えようというスタンスから、RDA が 25 の地区を優先するように変えた。 8.荒廃地のイメージについて ・ 荒廃地は公共資金を投入しないと収益を生むことができない地域をいう。化学品業界、鉄 鋼業界、鉱山業界など産業の安定性がないところ等、RDA が把握していると考えられる。 ・ 正確に把握できないが、イングラント・ウェールズの荒廃地の約 25%が北西部に集中して いるといわれている。 (E-Mail で知らせる)荒廃地の再開発は過去には住居にするという 見方があるが、最近では公園にするようになっている。植林等も行っている。 附- 159 5.South West of England Regional Development Agency 日時:2003 年 2 月 21日(金)10:30~12:30 参加者(先方) South West of England Regional Development Agency Head of Community Regenaration Robert A C Hatt 氏 Head of Press and Communications James Harper 氏 他1名 1.RDA の概要 ・ サウスウエストの RDA はそれまで基礎自治体や関連団体が有していた経済振興・産業開発に 関する個別の機能を統合して創設された。 “リージョン(広域地域)を単位とした振興”が 新しい政府の課題であり、この課題に対応した地域政策(RDA の創設、GO の強化、地方協 議会の地方政府に移管等)が実行に移されたのは歴史的にも初の試みであった。 ・ RDA は特別の権限を委譲され(地域の経済振興)、それによって予算の配分を行っている。 RDA が予算をどの主体に配分するか(アロケーション・パートナー等の選定)についても経 済的な視点が最優先される。 ・ その際重要となるのは、民間が投資しないようなところに投資し、民間投資ができるように する。例えば、土壌改良、おもに市街地地区(ブリストル等)では荒廃地が多く存在し、そ のままの状態・環境では民間の投資は来ない状況にある。このような状況を改善し、民間が 投資しやすく、生産・活動しやすい環境を創出することが重要である。 ・ RDA の活動のすべては、地域経済戦略に基づいて行われている。RDA のコーポレートプラン に9つ(11ではないのか?)の項目がある。たとえば技術育成、土地の回復、ビジネスサ ポート、地域インフラ整備などである。 2.サウスウエスト地域と RDA について (1)地域の概要と RDA の役割 ・ サウスウエストは9つの地域の中で面積は最大、人口密度は最低のところである。 ・ 企業誘致に際して、ロンドンからどのくらい離れているか、その点からみるとノースと変わ らないが、サウスはロンドンからのアクセスが悪いというデメリットがある。 ・ 政府事務所、地方協議会が上位。地方自治体、地元企業、その他の団体は下位になる。 ・ RDA の役割は、①経済開発および地方の振興、②ビジネスが収益を上げるような支援をする (環境をつくる)、③インフラ整備(ブロードバンド、IT 環境)[資金繰りを申請する]、④革 新的なアイデア・起業心を育成する、などである。15~20 年前に比べてより重要な視点とな ってきたものとして熟練技術者の促進がある(非常に重要)。 ・ RDA の責任には説明責任(住民に対する)、業務責任、地域責任の三つがある。 附- 160 (2)RDA の今後の見通し ・ 民主主義は非常に重要なことである。RDA は公選で選ばれたわけではない。RDA はビジネス 中心の理事会である。報告責任は国・中央省庁であり、地方協議会の双方である。地域振興 はロンドンからの一方的な指示ではできない。 ・ ヨーロッパベースで地方政府の最適化に関する議論がなされてきた。タウン、パリッシュ、 ディストリクト、カウンティ、ユニタリーなどはどの規模がふさわしいか、という議論であ る。 ・ 地方協議会を公選制にして地方政府を増やすことが検討されており、現時点で一番可能性が 高いのはノースイースト、次はノースウェストと言われている(但し、いつなるかは全く予 測がつかない)。重要なのは最適な経済効果を上げるのはどのサイズがよいか、という議論で ある。我々は、ディストリクトレベルではなく、広域地域(リージョン)が一番適している と考える。ヨーロッパではドイツ・フランスでも広域地域が重要な意味をもっている。 ・ 最近の政府の法案によると、地方政府ができるとカウンティは廃止になる予定。また、RDA は地方議会の執行・運営機関になる。教育・消防など基礎的行政サービスを協議会がやり、 その他を RDA がやるようになるであろう。 ・ その場合、RDA としては直接説明責任があるのは、対地方協議会、対ホワイトホール(中央 省庁)であり、イギリスの議会、EU の構造資金などには間接的な説明責任をもつであろう。 ・ いずれにしろ RDA はポシビリティ(潜在性)からプロバビリティ(可能性)へと役割が強化 され、実際役割の増大に応じて予算も増えている(自治体の予算よりも増加速度が速い)。 3.RDA の組織について ・ 理事は 15 名、実業界が中心、理事長は女性(全国で初) ・ 理事の任命は、GO と DTI は 3 年契約で選んでいる。社会、コミュニティ、ビジネス、ボラ ンティア、農村地区の代表などである。 ・ 理事会の下に9つのサブグループがあり、その議長は理事である。コーポレートプランに対 応している。民間企業、公共、ボランティア、その他の組織から成っている。 ・ 事務局長はビジネス出身者。4 名の部長がいる。 ・ 7つの地区に分かれている、プリマス、ブリストル、などそれぞれに運営部長がおり業務を 行っている。 ・ それ以外に中央に組織あり。戦略、サプライマネージメント、購入、人事関係、その他をや っている。 ・ 総職員数は 215 人であり来年 229 人に増加する。 4.事業立案・承認の仕組み ・ コーポレートプランは 3 年計画である(前述のとおり英国政府の三ヵ年歳出予算の影響あり)。 現在 2003.4~2006.4 の計画を現在策定している。コーポレートプランは地域全体をカバーす る地域経済戦略に拠ったもの。コーポレートプランはその戦略を実現するための RDA の戦略 計画である。 ・ コーポレートプランの策定は委員会で行い、委員会には、地域全体の利害関係者が入ってい 附- 161 る。当然他のドキュメント(施策)とのリンクや他の主体が既に構築している戦略との整合 性をはかり、効率的・効果的に予算を使途できるようにしている。 ・ コーポレートプランは抽象的。実際に仕事をする場合はデリバリープラン(他地域はビジネ スプランと称している)を 1 年ごとに作成する。 5.予算について ・ 年間予算は 1 億 2 千万ポンド。翌年、翌々年は増加する見込み。地域全体からみればわずか なものである。今後の年間予算をみると 2003 年度は 1.256 億ポンド、2004 年度は 1.38 億ポ ンドと増加する予定である。 ・ 年間予算 1 億 2 千万ポンドのうち1億が中央政府、2 千万が独自収入(不動産売却等)。かな り不動産を保有しており(25 ㎡~5万㎡のビルを有している)、そこからの独自収入があるこ とが特徴である。 6.プロジェクト・プログラムの評価・選定方法について (1)DTI による RDA の評価 ・ 評価項目(基準)には2つのレベルがある。地域全体のアウトカム指標(維持可能性、生産 性、振興など11の指標)と RDA だけの組織目標(コアアウトプット)である。組織目標は、 雇用の創造・維持、職業訓練機会,土地回復、新規起業の4つである。 ・ 11の地域アウトカム指標も4つのコアアウトプット指標も DTI から示される。この指標を もとに RDA 自身で補完的な指標(目標基準)を設けている。たとえばブロードバンドへのア クセスはマイルストーンの一つになる。単位面積あたり新規雇用人数(件数)などである。 ・ アウトプットの方は毎年具体的な数字を示すことは簡単である。しかしながら地域のアウト カムは、RDA だけでなくその他の関連主体と協力して達成されるべきものである。 (シェアー ドアウトカム)。地域アウトカム指標は、3ヵ年計画(すなわち資源会計・予算の三ヵ年歳出 予算がその背景にあり)のターゲットとリンクしており、その目標をもとに、年に 1 回関連 指標の動向をモニタリングしつづけることによって評価している。 ・ アウトカム指標は複雑な算定式を有している。算定式を構成する要素としては、GVA、就労 人口、失業手当ての数、開発箇所などがある。 ・ DTI には四半期ごとに報告する(政府事務所<サウスウェストのGO>を通じて)。DTI は年 末に予算を残して、良くいった RDA にその予算を配分することになっている。 (2)プロジェクト・プログラムの選定・評価について ・ 申請されたプロジェクト・プログラムは、既に RDA で策定しているコーポレートプランに基 づいて厳密な評価を実施している。例えば RDA が中央省庁から課された政策目標(経済的な 目標)にどの程度その事業が貢献してもらえるのか等について、申請書をみながら判断する ことになる。戦略にマッチしている事業であれば、RDA は資金だけでなく人的サポートを含 め様々な支援を行うことになる。 ・ 実際の選定作業は,さまざまな要素をみて決めている。コーポレートプラン、地域経済戦略 に認識された優先順位、優先テーマ、優先地区に合致するか否か、パートナーシップ等の有 附- 162 無、VFM、リスクと将来の可能性のバランス、実行可能性、などである。 ・ 評価に要する期間はプロジェクトの規模に依存する。小さなもの(10 万ポンド以下)は1ヵ 月から 1 ヵ月未満、大規模なものでは 1 年近くに及ぶものもある。 ・ 具体的には、まずプロジェクト・プログラムの概要をみて(全体的な方向性をチェックする)、 RDA の戦略に合致するものについて、VFM 要素(投下費用に対してリターンがどの程度あ るのか)を再度評価するというプロセスを経る。VFM のチェックは評価グループ(12 人から 13 人ほど)が行う。 ・ 最終的なプロジェクト・プログラムの評価・採択は、4人の理事と1人の事務局長で行う。 7.経済開発の具体的な業務内容 ・ まず経済発展のため、いくつかの主要な業界に絞ることが重要である。たとえば既に達成さ れている業界はさらに支援する(保護)。現在はそうでもないが、重要可能性のある業界もあ る。われわれで重要な地域産業は他の地域でも重要と認識している可能性はある。 ・ 人口密度の低い地域ですので、市街地産業の地区は少ない。選定は新規業界を多く選ぶ可能 性がある。それぞれの主要業界が決まったら、何をサポートするか。生産性、技術、サプラ イチェーン(域内連携) 、大学(15 の教育機関)との連携などである。 ・ 特定業界が拡張できるようなサイトを見極める。ニュービジネス・フォーメーション(優秀 な頭脳を持つベンチャー企業)が新しいビジネスを興せるように支援する。 ・ ただし、特定の業界以外に全般的な技術・R&D、など広域的な意味をもっている。どうやっ て特定業界を選ぶか。調査と地元協議によって決める。どのような活動をするのか、それは 業界の専門知識を有しているグループの指針によって決める。専門家グループは民間主導の グループが多い。 ・ 重要産業界の育成、市街地再開発が優先順位が高い。地域は利害関係者との協議によって決 める。地域経済戦略と RDA のコーポレートプランとの整合性も重視される。 ・ SRB は 1994 年に保守党政権が策定した制度である。それまであった 27 の別々の補助金を一 緒にしたものである。かなり広範にわたる社会的な経済的な目標達成のために作られたもの である。おもな支援想定策は市街地の開発である。主な目標は、工業可能性、技術、社会参 画、ハンディキャップ人(貧困、障害者、人種等)の解消、維持可能な開発促進、環境保全・ 改善、インフラ、住宅、地域経済活動の成長、犯罪減少、麻薬使用、コミュニティ・地域社 会の安全などである。 8.SRB について ・ SRB はわれわれ引き継いだプログラムの一つである。RDA が創設された時点では、SRB も 含めて 13 のプログラムを引き継ぎ、かなり成果が得られた(99 年時点では SRB は存続する という期待があった。99 年には 6 回目の SRB を運営した。 )。パートナーシップという概念 を導入し、革新的なアイデア・解決方法を育成した。全部で 147 のプログラムを取り扱って おり、そのうち半分近くの 64 が SRB のプログラムであった。 ・ しかしながら反対に、コンペ方式を採用したことにより、勝者も敗者もあった。応札にコス トがかかるが、獲得できなかった申請者は資金の無駄遣いになった。組織によって毎年応札 附- 163 するのに経費がかかるという苦情も寄せられた。また、具体的なニーズがないのに、資金が 欲しいので申請したというケースもあった。 ・ 政府が新たにネイバーフッドリニューアルプログラム(近隣改善計画)を発表した。社会的 な健康・遠征・麻薬等は一般的には政府事務所の役割であることが明記された。この基金は 多岐にわたる問題がある地区を対象にしたものであった。サウスウェストでは、ブリストル、 プリマスなどの 3 箇所が対象であった。 ・ しかしながら RDA の設立に伴って、RDA は経済開発に特化するということで、先の諸プロ グラムはやめようということになった。そのかわり市街地対象、ハードの更新(古いビルの 改装、混合使用を認める、工業的・商業的利用のひとつの建物をつくる、外装をきれいにす る、開発予定地を再開発するなど)を中心とするようになった。 ・ 市街地開発のための2つのネットワーク組織(アーバンリジェネレーションカンパニー)を 構築し、当該法人と密接な関係をもち業務を推進している。 ・ 極貧困地区に近隣地区センターを建設した。単にセンターを作るだけではなく、当該地区の 社会的経済的な発展の為の活動の触媒にしようとする考え方である。実際にビルを建てなけ ればならないが、ビルというハードを建設するだけでなく、コミュニティビジネス(生活関 連企業)など企業支援(ソフト政策)と一体的に展開している。さらに、地域全体の社会福 祉的な事業のサポートもしている。 ・ サウスウエストには小さな町、かなり農村・僻地がある。漁業・観光等を主産業とする小さ い町である。そのような町は 200 近くある。町のポテンシャル(能力)向上のため、建物の 改装、公共サービスを改善する、交通機関・住居を改善するなど幅広いプログラムを実施し なければならない。これは RDA の権限範囲をかなり超えているため、他のエージェンシー、 他の関係者と協力しながら実施しなければならない。 ・ 農村地域について、政府は、ルーラルルネッサンスという“持続可能な食糧および農業の戦 略”を発表し、それに基づいて当該地域でも関連するプログラム・プロジェクトを実施して いる。 ・ ロンドン(ひいては東京)と当該地域をダイレクトに結ぶ(近づける)ために、ブロードバ ンドの情報環境を整備するようなプログラムも、小規模なパイロットプロジェクトとして運 用・実施している。具体的には、ケーブル、サテライトなどを用いた遠隔実験等である。 附- 164 6.South West Regional Assembly 日時:2003 年 2 月 21日(金)13:30~14:30 参加者(先方) South West Regional Assembly Deputy Derector of Policy Peter Brown 氏 Derector of Policy and Strategy Chris Elton 氏 1.サウスウエスト地域の概要について ・ 人口は 500 万弱、半島状の形態をしている。岬の西端から最北端までの対角線の距離が最北 端からスコットランドまでの距離と同じであるなど、非常に広大なエリアである。そのため、 地域間のコミュニケーションをいかに円滑にするかが重要な課題であり、道路・空路・鉄道 等の整備が地域づくりに非常に重要な意味をもつのである。 ・ この地域の課題は、イギリス全体の経済の中心地であるロンドンから距離的に離れているこ とにある。ただし、同じ遠距離に位置する地域でも、ノースウエストとサウスウエストとで は抱えている問題の質が違う。北は産業革命の遺産(廃墟)が残っているが、それがサウス ウエストにはないという点である。 ・ 地域全体としては農村地区のウエイトが非常に高い。そのため、農業の変革・衰退は非常に 重要な点である。ただし、農業就労人口は全体の 4~5%程度とあまり高くない。 ・ 将来の地域づくりの戦略は、市街地の中心地に重点を置いている。将来に向けて変革の可能 性がある推進力を持っている所だと思うからである。このサウスウエスト地域には、市街地 と呼べるセンターは11ある。センターといっても、人口 40 万(ブリストル)から人口 6 万 (トーントン)まで多様である。この市街地センターにおいて、維持可能な成長をいかに実 現していくかという戦略である。 ・ 一方、農村地区についても、過去 10 年で一番人口が増加した地域である。これは、サウスウ エスト地域が有する高レベルの環境状態、景色のよい海岸線などに轢かれる人が多かったた めである。このような農村地区のポテンシャルを維持するためにも、経済発展と環境のバラ ンスが重要である。市街地における維持可能な開発を進め、周辺地域(農村地域)の環境に 悪影響を及ぼさないという視点が重要である。 ・ 振興の問題の一つとして、防衛産業の衰退がある。プリマスでは、海軍ドックヤードの閉鎖 がなされ、地域経済に与えるマイナスの影響が深刻となっている。 2.協議会組織の概要・経緯について ・ 協議会が設立されてから 2 年あまり経過した。イングランドでは地方協議会は比較的新しい 組織概念であるものの、今後権限をより一層強化する方向にある。 ・ 現在のところ、地方協議会は地方の関係者(自治体等)が自主的に設立しているという位置 づけであり(RDA 設立を規定している法規定に、地元の要請があれば協議会を設立してよい 附- 165 という記述がされている)、公選の議員が運営している団体ではない。 ・ 協議会のメンバーは 117 名である。70%が地方自治体からの代表(全員が議員という訳では ない)、30%が社会および経済団体、民間企業等からの出身者である。構成メンバーの比率は、 すべての協議会について中央政府が一律決定している。 ・ 意思決定は本会議か執行機関(協議会)で行われている。執行機関の下にそれを支援するグ ループ(各グループにつき 15 名程度のメンバー)がいる。 ・ 地方議員は4つの政党が絡んでいる。それぞれの政党が何らかのグループにするようになっ ているが、全員がグループに属しているわけではない。 ・ RDA のある位置は理事会が決めた(エクセターに置くこと) 。地域全体の中心に置きたいと思 っていた。 ・ トーントンにあったカウンティがもともとこの地域の戦略を決めていたためこの地域に協議 会を置くことになった。しかしながら本会議はエクセターで開かれる。(事務局だけある)。 3.協議会の権限・責任・役割 ・ 協議会の責任は、法規責任、自由裁量責任の2つある。法規責任でもっとも重要なのは RDA の監視である。これは、RDA が設立されたとき、地方(の自治や地域づくり)に対する責任 を RDA だけでは担えないのではないかという考え方が背景にある。地方に対する責任は、協 議会が監視役になる。 ・ 自由裁量責任としては、広域地域の開発・計画を策定するというものである。統合地域戦略 (IRS)の策定にあたって、地域全体を代表者として関係主体と交渉等を行うことである。自 由裁量責任はサウスウエスト独自に決めたものである。ほとんどの地方協議会がこのような 役割をもっている。 ・ 現在、統合地域戦略を策定している。統合地域戦略には、当該地域の地域づくり、開発の目 標及びその優先順位が示されており、地域に存在するすべての計画・戦略の最上位に位置づ けられる。この戦略の策定は、中央政府から奨励はあるものの、法律では義務付けられてい ない(この程度の縛りで関係者間の調整がうまくできるのかは疑問である。) ・ 道理に基づいた協議手順を踏むものであるから、全ての関係者が同意しないといけない。最 終的に統合地域戦略の同意を得る前に、他のストラテジーとの矛盾がないように作る予定で ある。 4.協議会の財源について ・ ノースウエストと同じ資金調達構成である(法律で決められている) 。地方自治体からの拠出 金は小さくなってきている。仕事の内容はプランニングと交通がメインである。 ・ 400 万ポンド(1 年間の予算規模) 。50%が地方自治体のサポート(トレーニング・諮問アド バイス、人事関係など) 、残りの 50%(200 万ポンド)は RDA の独自の仕事に使われる。 ・ 来年度は 100 万ポンド(政府:地域開発計画策定)、50 万ポンドも追加政府供出、残りが拠 出金アセンブリーの実施費用となっている。 ・ 100 万ポンドは政府が決めている。地域でやる仕事が増えたためである。土地開発はディスト リクト、カウンティ、リージョンで行うもののうち、カウンティの部分を廃止することにな 附- 166 っている。 5.RDA の監視について ・ 協議会が RDA を監視する場合、すべてのプログラム一つ一つを監視することはしない。RDA が策定したコーポレートプランを吟味する。コーポレートプランは、RDA が実施するプログ ラム(全体的なプラン)が反映されており、協議会はコーポレートプランがこの地域のニー ズに合致し、実現可能なものなのかどうかをチェックする。 ・ 実際協議会では、コーポレートプランを綿密にチェックし、24 の勧告を出した。RDA は、ほ とんどすべての勧告について見直すことを同意している。 ・ 勧告は細かくない。9つのテーマがありテーマごとに勧告の優先順位が決められている。大 きなプロジェクトがあれば掲載するかもしれない。たとえば例をあげると、 “この地域の経済 振興のためにもっと大学を活用すべきである” 、などといったの勧告である。 ・ RDA を監視するための本会議は年間3回開催される。協議会の中に RDA セレクトコミュニ ティが設置されている(委員は 12~14 名いる)。それぞれのテーマにしたがって吟味する。 6.公選制と今後の地方自治の行方について ・ カウンティカウンセラーの存在が危ぶまれる。地方自治体及び地方議員は賛同の意を示して いない。感情的な議論になっている。カウンティは 1000 年の歴史があり、それを廃止するの か?という議論がある。 ・ 協議会ができれば新しい政府に置き換わることになる。住民投票に行く前に地方自治の組織 を見直さなければならない。それを見直さなければ新しい制度に移行できない。 ・ 地域全体で市場調査をしたら 70%は住民投票をしてほしいという結果を得た(予想に反して 高い数字)。地元住民は提案に関して細かい知識をもちたい。意見の表明をしたい。 ・ もし公選の議会ができれば RDA に直接指示を出すようになるであろう(現在 RDA の報告義 務は DTI である)。 7.協議会の(基礎)自治体に対する認識(不信感等はあるか) ・ 中央政府はすべての自治体の効率を高める手順を導入した。現在ではすべての自治体は効率 性と効果性によってランキングされ、すべてのサービス提供は VFM で評価されている。 ・ 英国でも同じ問題がある。ディストリクトカウンセルが小さすぎる。たった 3 万 5 千人の自 治体がある。同じだけのサービスを提供しなければならないと不効率になる。パリッシュカ ウンセル、タウンカウンセルがある(→これの権限は限定的) 。過去に再編成(90 年代)した。 一番大きかった 74 年度にどのような混乱が起こったがわかっている。金額だけでなく弊害も 多くあった。 ・ ユニタリーオーソリティのサイズは人口 25 万人が適当であるという認識をもっている。 ・ サマセットのカウンティカウンセルで働いていた。5つのディストリクトカウンセル全部で 50 万人。2つに分けると 25 万人。 附- 167 8.ディストリクトがなくなった場合組織の人員はどうなるか? ・ 削減対象となるのは上級役職者が中心であり、事務スタッフはあまり削減されないのではな いか。 附- 168 附- 169