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思慮に満ちた授業環境を創る

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思慮に満ちた授業環境を創る
効果的なプロジェクトの作成: 思考支援
思考を促す環境
思考のための授業を創る
思慮に満ちた授業から、生徒は思考することを学びます。思慮に満ちた授業環境とは、複数の意見を検討することによって積極的に重要
な課題に取り組み、知識に基づいた意見を展開し、自分の意見を効果的に伝達することのできる環境です。そのような環境を創ることは
教師にとって非常に難しい課題ですが、こういった雰囲気の中で教えることは、実りが多いだけでなく、生徒にとっても教師にとっても
楽しいことでもあります。
思考スキルを伸ばすためには、生徒は、リスクに挑戦したり、時には失敗したりすることにも抵抗を感じないようにならなくてはなりま
せん。生徒が現実に起こっている問題に対して思考スキルを駆使できるプロジェクト型学習では、教師は思考支援を盛り込んだ理想的な
カリキュラムをつくることが可能です。
思考の用語
思慮に満ちた授業というものは、教師と生徒の両者が使う「思考の用語」で満たされているものです。思考の用語は、思慮深い学習の過
程に焦点を当て、浅く表面的な思考と、深く有意義な思考を区別します。構成主義と生徒中心型学習の生みの親であるヴィゴッツキー
(1986年)は、「思考とは単に言葉で表現されるものではなく、言葉を介して成立するものである」(P. 218)と述べています。話す
ことが思考につながるのであり、生徒は話すことによって思考を学ぶことができるのです。
教師の質問
教室で使われる言葉として最も一般的なものは、教師による質問です。生徒の能力を伸ばすためには、「何」「いつ」といった質問より
も、「なぜ」「どうして」といった高度な質問をすることがよく奨励されます。しかし、このような質問に答えるだけで、生徒の思考能
力に直接的な影響が現れるということは立証されていません。
ウェジェリフ(2002年)は、「なぜハックルベリー・フィンの父親は彼を誘拐したのでしょうか?」という教師の質問を例にあげ、この
問題に対する結論を次のように述べています。この質問は深い思考を誘引し、生徒の思考能力を伸ばすのに有益かも知れませんが、もし
生徒が「常に、物事がなぜ起こるのかについて単純に想像したり性急な判断を下したりするなら」ただ浅はかな思考が繰り返され続ける
だけでしかありません。
いわゆる「深い質問」には、生徒に主観的な判断をさせるものもあります。「この詩についてどう思いましたか?」「人間のクローンを
作るべきでしょうか?」生徒はこういった質問に容易に答えることができますが、自分の意見の正当性を証明したり裏付けたりすること
をしなければ、思考者として成長することはありません(アッペルバウム、2000年)。思考のための教室における「なぜ」「どうして」
といった質問に対する教師の反応には、「なぜその意見に達したのか?」「どのような理由があるのか?」「それらの理由の根拠は何
か?」「では、他の観点についてはどうか?」といったものがあります。教師や生徒によるこういった質問は、思慮に満ちた教室文化の
一部となり、良い質問に答えることは、軽く答えやすいものに答えるよりも有益であるということを確信させてくれるでしょう。
良い質問を中心にして授業を組み立てることは、生徒に思考を促すための重要な要素ですが、それだけでは不充分です。質問には、適切
なフィードバックと評価、そしてどのように質問について考えるかについての指導などが伴わなければなりません。
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効果的なプロジェクトの作成: 思考支援
思考を促す環境
思考の用語
生徒の質問
思考を深めるために授業で生徒が質問を投げかけることは、これまではあまり重要視されていません。つまり従来の授業では、生徒は質
問に答える側であり、質問を作る側ではありませんでした。長年の間、生徒はただ教室に座り、教師はすでに答えがある質問をしていま
した。すべての学習の根本であるべき「真の難問」はほとんど認められていなかったのです。
思考を深めるための授業は、実際に教師も生徒も頭を悩ませるような「真の難問」を中心に築かなければなりません。とはいえ生徒は、
すぐそう簡単に質問に答える側から質問する側へと切り替えられるものではありません。何かに強く関心を持ち、自分がわからない点を
認めることにはリスクが伴うものだからです。しかし、学んでいる事柄について、生徒から教師へ、または生徒同士が自由に疑問を投げ
かけることのできる環境を創ることは、思考を育成するために非常に重要なのです。
教育学教授のJ・T・ ディロン (1988年)は、生徒からの質問を引き出すためのアドバイスをいくつか挙げています:
授業中に生徒が質問できる場を提供し、以下のようにして生徒からの質問を待つ:
単元を通じて、学習中のトピックに関する疑問を生徒に定期的に書き出させる
授業内容、ディスカッション、試験などを、生徒の質問に基づいて構成する
ディスカッションの際、教師や他の生徒に質問するよう促す
教科書や教材に疑問の気持ちを持ってみるように生徒に教える
質問を歓迎する
以下のようにすることで、質問を認める:
難問への取り組みや疑問に思う心を補足、賞賛する
質問に答える方法を考え出せるよう生徒を支援する
生徒の視点から質問が何であるかを見出す
質問によって明らかになった生徒の知識を評価する
質問に対して心からの興味を示す
良き思考者は良き質問者であり、良い質問をするスキルが無意識または偶然に身につく生徒はそう多くいるものではありません。思慮に
満ちた授業では、生徒の質問を促進することが非常に大切です。
論理的思考
ウェイル(2000年)は、「論理のダンス」を生徒に教えることについて述べています。このダンスをするために、生徒は、論拠を築き、
分析し、主張するための手段として言葉を活用しなければなりません。ウェイルは、ダンスをするための様々なステップについて次のよ
うに論じています。
証拠の認識と評価
自分や他人の仮説の検証
深い質問
関連する情報と無関係な情報の違いの理解
情報源の正当性の実証
十分な情報を得るまでの判断の保留
観点や解釈の評価
矛盾の認知
解釈の検討
思考のための授業では、証拠・観点・信憑性といった言葉がすべての教科や学習活動にまんべんなく散りばめられています。これらは、
時として指導する側の焦点となることもありますが、学ぶ側の焦点として常に存在するものです。
メタ認知
マルツァーノ(1998年)の研究から明らかなように、メタ認知的な話のやりとりは生徒の学習を伸ばすために最も有益な方法です。話の
題材として思考を用いることを、教師はあまり好まないものです。このような不安は、恐らく多くの場合、教師が自分自身の思考プロセ
スに精通していないことと、この分野に初めて取り組む際に感じるやり辛さなどに起因していると考えられます。しかし、これを臆する
ことなく行えるようになるには、少し練習が必要なだけで、その効果を目の当たりにした暁には、授業の一環として普通に行うことがで
きるはずです。
メタ認知を育成するための2つの方法として、学習日誌とディスカッションがあります。これらの方法を通して、生徒に自分の思考に関
する質問に答えさせることは、生徒の思考者としての成長を促すために常に効果があります。プロジェクトの最初の時点では、目標設定
と作業計画のやり方について考えることができます。プロジェクトの最中には、自分達の思考方法がきちんと作動しているか、より効果
的かつ能率的にするためにはどう修正を加えるべきか、といったことについて自問自答します。プロジェクトが完成したときには、次に
もっと上手くやるために、このプロジェクトに対する自分の取り組み方から何を学べるかを考えることができます。
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効果的なプロジェクトの作成: 思考支援
思考を促す環境
教室内の配置
いかなる物理的環境であっても思考は可能である、ということは明白です。アブラハム・リンカーンはローソクの火だけでそれを行い、
政治犯達は独房に監禁された状況で行いました。しかし、大抵の人にとっては、周囲の物理的環境が多少整っている方が思考しやすいも
のです。
深い思考には、少なくともある段階で「話す」ことが必要となります。思考のための教室は「話す」ことで満ちていなくてはならず、そ
のため、教師や生徒にとってお互いと話しやすい環境が深い思考を促進します。グループ用に配置されたテーブルや机は生徒間の有意義
な交流を促すもので、たとえ机が一列に床に固定されていたとしても、賢明な教師であれば生徒が協力しあえるような方法を見つけ出す
ことができるでしょう。
教室には、柔軟な配置ができることが最も求められます。目的に応じて生徒をグループ分けすることも必要ですし、1対1で向き合うた
めの場所や、グループ作業の場所、ひとりになるための場所なども必要です。生徒の思考を支援できる物理的環境を与えることに教師が
献身的であれば、一般的な教室であっても、広い空間であっても、このような場は作れるものです。
また、現実に根ざしたプロジェクトを完成させるためには、思考のための材料が身近でなくてはなりません。学級文庫、科学学習ツー
ル、数学学習グッズ、地図や地球儀、動植物といったものは、生徒にとって面白く有意義な思考の材料です。情報と同時に、グラフ用紙
やマーカーといった発行物やプレゼンテーションの材料や、芝居や劇のための衣装や家庭用品、また、粘土、絵の具、糸など、独創的な
才能を生徒から引き出し、様々な学習スタイルに興味を持たせる素材にアクセスできる環境でなくてはなりません。
テクノロジー
コンピューターやデジタルカメラ等のテクノロジーは、思考を育成する教室で重要な役割を担います。プロジェクト型学習では、これら
のツールは、思考を共有したり説明したりする手段であると同様、生徒がプロジェクトの内容について「思考するための手段」にもなる
のです。Eメール、コンピューターを使ったディスカッション、またはコンピューター画面を複数の生徒が閲覧しながら話し合うことので
きるツールなどによって、ディスカッションのプロセスが視覚化されかつオープンになります。
インターネットもまた、生徒の思考を育成することのできる貴重なツールです。コンピューターにより、思考プロセスの記録をすること
が可能になります。コンピューター環境では、生徒が話す権利を競って奪い合う必要がありません。また、自分の考えを構築するために
時間をかけることができます。これは学習障害や母国語が外国語である生徒等にとって重要なことです。
従来のワープロソフトと合わせて、統計分析や、グラフィック・オーガナイザー(さまざまな図やチャート)およびマルチメディア・プ
レゼンテーションを介して情報の視覚化を支援するソフトウェアは、21世紀の教室環境において必要不可欠です。しかしながら、他のど
のような指導方法でも同じことですが、優れた文献に触れることが洗練された文学分析を保証するものではないように、コンピューター
へのアクセスが深い思考を保証するものではありません。高度な思考を実践できるコンピューター・ゲームであっても同様です。そのス
キルを他の状況で活用するための明確な指導がなければ、生徒がテクノロジーから多くを学ぶことはないでしょう。
参照文献
Appelbaum, P. M. (2000年). Eight critical points for mathematics. In D. W. Weil & H. K. Anderson, (Eds.), Perspectives in
critical thinking: Essays by teachers in theory and practice, (pp. 41-55), New York: Peter Lang.
Berman, S. (2000年). Thinking in context: Teaching for open-mindedness and critical understanding. In A. L. Costa
(Ed.). Developing minds: A resource book for teaching thinking, (pp. 11-17). Alexandria, VA: ASCD.
Dillon, J. T. (1988年). Questioning and teaching: A manual of practice. New York: Teachers College Press.
Marzano, R. J. (1998年). A theory-based meta-analysis of research on instruction. Aurora, CO: McREL.
www.mcrel.org/PDF/Instruction/5982RR_InstructionMeta_Analysis.pdf*(英語) (PDF; 174ページ)
Vygotsky, L. S. (1986年). Thought and language. Cambridge, MA: The M.I.T. Press.
Wegerif, R. W. Literature review in thinking skills, technology, and learning. Bristol, England: NESTA Futurelab, 2002.
www.nestafuturelab.org/research/reviews/reviews_11_and12/12_01.htm*(英語)
Weil, D. W. (2000年). Learning to reason dialectically: Teaching primary students to reason within different points of
view. In D. W. Weil & H. K. Anderson, (Eds.). Perspectives in critical thinking: Essays by teachers in theory and practice,
(pp. 1-21). New York: Peter Lang.
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