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JAL 747-100の墜落事故

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JAL 747-100の墜落事故
HuFac Solutions, Inc.
JAL747-100の墜落事故(御巣鷹山事故)
2013-08-10
1985 年 8 月 12 日に発生した JAL 747-100 の墜落事故(俗に御巣鷹山事故)についてトップダウン思考
で分析させていただきます。
Q: 光陰矢のごとし」といいますが、明後日に 28 回目の「8.12」を迎えます。どういう気持ちです
か?
A: 私は、
事故発生直後に上層部の特命で 2 日にわたり徹夜に近い形で事故の原因分析に当たりまし
た。その後も深く関わりをもちましたので、2つの後悔の念をもって毎年「8.12」を迎えていま
す。
Q: 後悔の念とはどのようなものですか?
A: 1つは、トップダウン思考で proactive(事前予測型)な事故防止策をとっていれば、あの事故は防
げたのではないかという後悔です。もう1つは、日本国民が間違った事故原因を知らされたまま
にも関わらず、それを是正することができず、正しい教訓を航空の歴史に残せていないという後
悔です。
Q: あの事故を事前に防ぐことができたというのは意外ですが・・・?
A: 防ぐチャンスは 3 度ありました。1度目は、そもそもあの事故の切掛けとなった 1978 年の大阪(伊
丹)空港における事故機(JA8119)の尻持ち事故を防ぐことでした。2度目は、JA8119 の圧力隔
壁の修理を思いとどまることでした。3度目は、圧力隔壁の修理後に整備点検で亀裂の進行を発
見することでした。
Q: 尻持ち事故の原因はパイロットのミスということになっているのではないですか?
A: 当初は操縦系統の 1 つであるスポイラーの故障が疑われて、現地で検証しましたが、スポイラーには不具
合は見つかりませんでした。残りはパイロットのミスしかないということで、何となくそうなったのだ
と思います。
Q: スポイラーや操縦系統以外の機材故障が原因である可能性があるのですか?
A: ここではあえて詳細に触れませんが、そういうことになります。当時、もっとトップダウン思考で臨
んでいれば気がついたのかも知れませんが、
関係者は他の機材故障を疑ってみることはしません
でした。鉄道の脱線事故、タンクローリーや大型トレーラーの転倒事故、笹子トンネルの天井板崩落事故と同じよ
うに、航空界の技術者が「不静定構造」を理解していないことが原因だと思っています。
Q:「圧力隔壁の修理を思いとどまる」とはどういうことですか?
A: 事故の本当の原因とも関わっていますので、後ほどお話します。
Q: 事故発生当事国である日本の事故調査委員会(現在の運輸安全委員会)の公式事故調査報告書で
は、
「圧力隔壁の修理後に整備点検で亀裂の進行を発見することは困難であった」とされていま
すが・・・?
A: この件も事故の本当の原因と関わっていますので、後ほどお話します。
HuFac Solutions, Inc.
Q: 2つ目の後悔の念として
「日本国民が間違った事故原因を知らされているのに是正できなかった」
ことを挙げていますが、事故の原因はボーイングの修理チームによる修理ミスではないのですか?
A: 28 年も経つと事故当時のことを憶えている年代の人は減っていますが、
ボーイングが、
事故直後に、
事故発生当事国の関係者に相談することもなく、いきなり自社の修理チームの修理ミスを世界に向け
て告白したことを忘れていないと思います。ご承知のように、ミスをしても安易に認めることはせ
ず、謝罪もしないのが一般的な欧米人の文化です。トップダウン思考で考えれば、そういう欧米の企
業であるボーイングがミスを安易に認めたということは、それ以上のミスを隠して影響を最小に留めよ
うとしたのではないかと疑ってみるのが自然です。残念ながら、ボトムアップ思考の我が国の航空関
係者は、疑うこともせず、ボーイングが発表した事故原因をそのまま鵜呑みにしてしまいました。
Q: 事故調査委員会の委員が修理ミスをした作業者から直接事情聴取したいとボーイングに掛け合いまし
たが、頑なに拒まれたと聞いていますが・・・?
A: 我が国では「欧米では個人の責任を追及しようとする機運がないため、ボーイングは個人を表に出
すことを躊躇している」などとむしろ美談として解釈しているようですが、欧米の企業はそれほ
ど甘い考えはもちません。787 の問題でも垣間見られますが、ボーイングは企業防衛を純粋な航空
安全の哲学などより重視します。ウォールストリートで自社の株価を低下させないのが航空機メーカーの経営
者にとって最重要課題なのです。
世界の航空界の良識ある人々は何度も是正しようと試みました
が、容易には改まりません。
Q: 事故の本当の原因とは何が考えられるのですか?
A: その質問に応える前に、安全推進の原則論について少しお話させていただきます。国連の民間航
空機関(ICAO)が発刊している事故防止マニュアル(APM: Accident Prevention Manual)によれば、
「事故調査の唯一の目的は事故の再発防止であり、
事故の再発防止に結びつく原因を究明するこ
とに努めねばならない」とされています。言われてみれば当然のことで、これを否定する人は誰
もいないでしょう。ならば、修理チームによる修理ミスははたして「事故の再発防止に結びつく原因」
といえるのでしょうか?
Q: このあたりで次第に話についていけなくなるのですが・・・?
A: それは、あなたがボトムアップ思考で考えているからです。人間の性格としては素直で社会に受け入
れられやすいよい資質ですが、残念ながら安全推進や事故調査には向いていません。トップダウン
思考では意地悪く逆のことも考えてみる必要があるのです。
Q: 「逆の発想」とは具体的にどういうことですか?
A: 「修理ミスがなければ JA8119 は事故を起こさなかったといえるのだろうか?」と自問自答してみ
るのです。
「修理ミスがなければ・・・」とは、
「ボーイングの指示書通りに修理されていれば・・・」
ということになります。
Q: 指示書通りに修理されていれば特に問題はなかったのではないですか?
A: 一般的に、航空機の構造修理は FAA が認可した構造修理マニュアル(SRM: Structure Repair Manual)
によらねばなりません。ところが、破損した圧力隔壁を半分に切って(スプライス)新しい半分の隔
壁をつなぐなどという修理方法は SRM に規定されていません。
隔壁を結合する際に2枚の当て板
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(ダブラー)
を用いなければならないということは SRM に規定されていますが、
このことをもって、
関係者はボーイングの修理方法が SRM に規定された恒久処置であると誤解してしまったのです。も
っとわかりやすく言うと、JA8119 の圧力隔壁がボーイングの指示書通りに修理されたとしても、退
役までの長い期間に事故が起こらなかったなどと誰も断言できないのです。
Q: ということは、圧力隔壁をスプライスして修理をしたこと自体が間違いで、それが事故の本当の原因
ということになりますか?
A: そういうことになります。
ボーイングによる圧力隔壁の修理方法が SRM で認められたものでもなく、
恒久処置でもないという認識を関係者が当時もっていれば、
「圧力隔壁の修理を思いとどまる」
ことも、修理したとしても「事後の整備点検で亀裂の進行を発見すること」もできたのではない
でしょうか?
Q: 御巣鷹山事故の本当の原因を究明して正しい教訓を得ていれば、
防止できた事故は現実にあるの
ですか?
A: あります。JA8119 と同じように、他社の 747 が着陸時の尻持ち事故で尾部の構造の破損を修理
して、その数年後に空中分解して2百余名の犠牲者を出したという事故が実際にあるのです。で
すが、我が国のマスコミはその事故をほとんど伝えていません。
Q: 「本当の原因」に何時の時点で気づいたのですか?
A: 事故直後の特命による原因分析でわかっていました。
ボーイングの調査チームの責任者や当時の事故調
査委員長など、多くの関係者に話しましたが、残念ながらわかってもらえませんでした。それぞ
れの立場があったからだと思っています。私がすぐに気づくことができたのは、まさにトップダウ
ン思考の賜物と思っています。
Q: トップダウン思考を発揮しなければならない問題は他にもありますか?
A: 御巣鷹山事故の苦い経験をもとに、
私はトップダウン思考を社会に広めることをライフワークにしようと思
い立ち、会社を設立しました。会社の HP の冒頭で謳っているように、現代社会では、ほとんど
の難問がボトムアップ思考で解決を試みられているために、抜本的な解決がなされていません。その
典型的な問題が原子力安全の問題です。
原子力業界はこれまで指導者層のとんでもない間違いを
看過してきました。その結果がまさに福島第一原発の事故といえますが、ボトムアップ思考の関係者
はいまだに誰も本当の原因を究明できず、そのために正しい対策を見いだせずにいます。それど
ころか、
最近では、
東電社員による現場の事故直後の対応を美化しようとする動きすらあります。
同種事故の再発防止だけでなく、福島第一原発の廃炉処理にもトップダウン思考で臨まなければ、国
家的な危機に陥ることにもなりかねません。他にも、我が国の建築土木インフラの経年化など、トップ
ダウン思考を発揮しなければならない重要な問題が山積しています。
Q: 最後に、国際的な航空業界は御巣鷹山事故をどう見ているのでしょうか?
A: 世界には信頼に値する航空安全推進の組織がいくつかあります。その代表的な組織は、御巣鷹山
事故について、我が国の事故調査当局とは異なった見解をもっています。修理チームによる修理ミス
と明言せず、圧力隔壁をスプライスした修理方法を”Improper Repair”として、修理後に圧力隔壁
の亀裂を整備点検で発見できなかったことをエラーとして明確に指摘しています。どうやら、航空
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の安全問題に限らず、我が国の社会と国際社会の間には、容易に埋めがたい大きく深い溝が横た
わっているようです。御巣鷹山事故で失われた520名(他にも関連する十数名の犠牲者がおられ
ます)の尊い命は、どんなことがあろうが、教訓として今後の航空安全に活かされなければなら
ないと思いつつ、今年も「8.12」を迎えることになります。
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