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1日のスタートは朝ごはんから
具体的な指導 2 1日のスタートは朝ごはんから 1 学習のねらい ①1日を元気で活動するためには朝食を食べることが大切であることがわかり、朝食を必ず食べよ うとする態度を育てる。 ②よりよい朝食にするためには、いろいろな食品を組み合わせて食べることが大切であることを知 る。 2 題材の背景(児童の実態) 食事、運動、休養及び睡眠の望ましい生活リズムを身に付けるためには、望ましい食習慣を育成 することが不可欠であり、1日を気持ちよくスタートするための朝食はその重要な役割を担ってい る。 朝食を「必ず毎日食べる」と答えた児童は、小学校全体で90.8%、中学校全体で86.8%、「ほとん ど食べない」と答えたのは、小学校全体で1.6%、中学校全体で2.9%であった。平成17年度の同報 告書と比較して「ほとんど食べない」と答えた児童生徒は減っており、朝食欠食については改善の 傾向が見られる。(P. 24 図2 小中学生の朝食の欠食状況を参照) 一方、平成19年度の大人の朝食の欠食率は、一部に改善傾向は見られるものの高い状態にあり、 20歳代、30歳代男性についてはまだ目標(15%以下)には達していない(図1)。また、児童の保護 者にも朝食欠食が見られる(図2)。このようなことから、小学生期までに朝食の大切さをしっかり と押さえておき、年齢が上がるにつれて朝食欠食が増えることがないよう、継続した指導を行うこ とが重要である。 図1 朝食欠食率の年次推移(男性) (%) 40 34.3 35 33.1 30.6 29.5 30 25 26.5 25.9 27.0 22.8 23.0 28.6 24.7 19.0 20 14.3 16.2 15.9 20.9 13.1 15 10.0 10 30.2 10.6 11.7 17.9 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 11.8 7.4 10.8 4.4 4.3 4.3 2.3 2.1 2.8 2.8 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 5.6 5.8 5 0 2.3 平成18年 3.4 平成19年 31 (女性)(%) 40 35 30 25 20.6 22.5 22.0 23.6 24.9 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 23.5 20 16.3 15.0 15 15.0 10.3 10 12.8 10.9 9.1 9.0 7.6 6.3 5 13.9 12.7 12.1 7.8 6.7 4.5 5.1 8.3 9.7 5.0 5.5 4.6 2.8 2.2 2.7 3.8 2.9 平成14年 平成15年 平成16年 5.1 7.6 3.8 0 平成17年 平成18年 平成19年 (資料:厚生労働省「国民健康・栄養調査」) 図2 保護者が朝食を食べる頻度 0.9 小学生 87.7 7.1 4.3 中学生 87.5 8.2 3.6 0 20 40 60 80 0.7 (%) 100 必ず毎日食べる 1週間に2∼3日食べないことがある 1週間に4∼5日食べないことがある ほとんど食べない (資料:独立行政法人日本スポーツ振興センター「平成19年度児童生徒の食生活等実態調査報告書」) さらに、朝食の食事内容では、朝食での野菜摂取量が極めて少なく(図3) 、朝食を食べてはいるも のの「パンと飲み物」や、 「ごはんとふりかけ」のような偏った内容となっていることが多いようで ある。食事内容の偏りや摂取量の不足は貧血を招き、午前中の倦怠感や不定愁訴につながることも懸 念されていることから、朝食の食事内容についても見直し、1日を元気にスタートさせるのにふさわ しい朝食について指導していくことが望まれる。 このような児童や家庭の実態を踏まえ、1日を元気に過ごすための役割を担っている朝食の大切さ を考えると、児童が自らの生活の経験の中からその必要性について気付くことが、大切である。そし て、健康に生活するためには毎日規則正しい生活を送りながら、バランスのとれた朝食をとることが 大切であることを理解し、実践していこうとする態度を身に付けさせなければならない。そのために は、朝食の大切さについて、児童の意識に刷り込むような指導を、様々な場面をとらえ、繰り返し行 32 うことが重要である。 なお、朝食については家庭の実態をもとに指導することから、例えば児童によっては保護者に朝食 を作ってもらえない場合もあることなど、事前に児童の家庭の状況などについて十分に実態を把握し ておき、児童の心情に配慮しながら指導しなければならない。 また、ここに掲載している平成19年度児童生徒の食生活等実態調査報告書及び平成19年度児童生徒 の食事状況調査報告書のデータは、全国平均であることから各学校において指導を実施する際には、 各学級の調査を行い、実態を把握しておくことが望まれる。 図3 野菜類の食事別摂取状況 30.5 44.9 (給食なし) 朝食 昼食 夕食 朝食 間食 間食 (おやつ) 夜食 110.9 小学校 0.4 2.6 1.0 30.5 46.7 128.4 中学校 0.3 3.0 1.5 0 (%) 30 60 90 120 35.8 (給食あり) 95.1 121.8 小学校 2.6 1.1 150 朝食 昼食 夕食 間食 (おやつ) 夜食 37.7 108.8 141.6 中学校 3.9 2.5 0 (%) 30 60 90 120 150 (資料:独立行政法人日本スポーツ振興センター「平成19年度児童生徒の食事状況調査報告書」) 3 題材について(教材観) 本教材においては、 「朝食を食べる」という毎日の生活の中で繰り返し行っている活動を、様々な角 度から児童自身が振り返ってみることで課題を見つけ出し、望ましい朝食の在り方について理解を深め、 実践に結び付けるようにしたい。 ○あなたはどれでしょうか 朝食のチェックシートに自ら記入することで、今まで無意識で食べていた朝食について、その内容 33 や食べ方、食べた後の自分の体の変化等について気付かせたい。また、少しだけしか食べなかった場 合や食べていなかった場合、なぜそうなったのか、食べなかったことで自分の体の調子はどうなのか 等を改めて考えさせる機会としたい。 ○朝ごはんはなぜ大切なのでしょうか なぜ朝食が必要なのか、前述の自分の体の調子を時間を追って確認しながら考えていく。まず、朝 目覚めたときにおなかはすいていたのか、朝食を食べた後、自分の体や心はどのように変わったのか、 排便はあったのか、勉強や運動は楽しくできたか、給食時間の前におなかはすいてきたか、朝食を食 べなかったらどうなるのかなど、自分の経験から、朝食の必要性に気付かせたい。 また、朝食を食べるためには運動や休養及び睡眠のとり方など、1日の生活リズムを整えることが 重要なポイントであることを、チェックシートや経験の中から気付かせ、押さえておく必要がある。 ○どんな朝ごはんを食べたらよいのでしょうか 朝食については、時間などの関係でその内容が簡単で偏ったものとなりがちであるが、クロスワー ドパズルを友だちと一緒に解いていくことで、楽しく、朝食に取り入れたい食品について理解させる ようにした。そして自分の朝食のメニューを絵に描いてみることで、家庭の朝食を見直すきっかけと し、また、 「朝ごはん日記」を付けることで継続して自らの朝食や生活習慣の改善に結び付けるよう にしたい。 給食時間は毎日繰り返される活動であることから、この時間を活用して朝食のチェックをしたり、 給食の献立は朝食のメニュー作りのヒントになることを確認したりするなど、継続した指導を行うこ とができる。 朝食については、その実践は家庭で行われる。保護者の実態を見ると「朝食を食べないことが習慣に なっている」保護者もいることから、本教材を活用して児童だけではなく、保護者にも朝食の必要性に ついて啓発していく必要性があると考える。例えば、簡単に作ることができる我が家の朝食レシピを集 めて他の家庭に紹介したり、親子で作る朝食クッキング教室を開催するなど、児童と保護者が一緒に考 え、活動できる場面を設定することによって、家庭においては朝食について見直したり、望ましい朝食 を実践しようとしたりするきっかけになるであろう。 以上のことを踏まえ、自らが健康な生活を送るためには、1日の生活の中で朝食がなぜ大切であるか ということをしっかりと捉え、すすんで望ましい食習慣を身に付けようとする児童を育てていきたい。 クロスワードパズルの答え タテ ①やさい ②たまご ③くだもの ヨコ ①スープ ②ごはん ③パン ④みそしる は や ね まいにち 34 は や お き げ ん き がいっぱい! あ さ ご は ん 4 授業の流れ(指導参考例) 主題 一日のスタートは朝ごはんから ●本時のねらい ・朝食の大切さを理解し、自ら進んで朝食を食べようとする意欲をもつ。 ・朝食をしっかり食べるためには、生活リズムを整えることが大切であることを理解する。 ●展開 学習活動 指導上の留意点 教材・資料 自分の朝ごはんをチェックしよう ○自分の朝食を思い出しなが らチェックする。 ○自分の朝食を思い出しながら、自由に気 ○教材2・3ページ が付いたことを書いたり、発表したりで ○自分の朝食について、気付 きる雰囲気作りをする。 いたことを書く。 ○気付いたことを発表する。 朝ごはんの大切さについて考えよう ○朝食を食べる理由について 話し合い、発表する。 ○自分の毎日の生活経験の中から、朝食が ○教材2・3ページ 大切な理由を導くことができように助言 ○学習カード する。 ・目覚めたときの空腹感は? ・朝食を食べた後はどんな感じかな? ・食べなかったとき、学校でどうだろう。 ・給食の時間になるとおなかがペコペコ だ。 ○朝食を毎日きちんと食べる など ○前日の生活や普段の生活を振り返りなが ○教材3ページ ためにはどのような生活を ら、朝食を食べるために必要だと思うこと ○学習カード 送ればよいか話し合い、発 を話し合えるよう助言する。 表する。 ○朝食を食べるためには、毎日の生活リズ ムを整えることが大切であることを助言 する。 ○家族に向けた手紙を書き、 ○家族に向けた手紙を書くことで、自分で 自分で生活リズムを整え、 生活を見直し、朝食を進んで食べようと 毎日朝食を食べようとする する意欲をもたせる。 意欲をもつ。 ○学習カード ○事前に家庭の実態を把握し、児童の心情 に配慮する。 35 主題 一日のスタートは朝ごはんから ●本時のねらい ・朝食は、いろいろな食べ物を組み合わせてとるとよいことを理解する。 ・いろいろな食べ物を組み合わせて、簡単な自分の朝食のメニューを考えることができる。 ●展開 学習活動 指導上の留意点 教材・資料 どんな朝ごはんを食べたらよいのだろう ○前時に行った朝食のチェッ ○自分の朝食を思い出しながら、自由に気 クをもとに、自分の朝ごは が付いたことを書いたり、発表したりで んの内容を思い出し、発表 きる雰囲気作りをする。 する。 ○朝食でどのような食べ物を ○児童が朝食で食べた食材をまとめ、偏り 食べていたか確認し、気付 がないかなどに気付くよう助言する。 いたことを発表する。 ○朝食にどのような食べ物を ○よりよい朝食にするための秘密がクロス ○教材4ページ 食べたらよいかの秘密を解 ワードパズルを解くことでわかることを くため、クロスワードパズ 助言し、意欲をもたせる。 ルに挑戦する。 ・タテのかぎ、ヨコのかぎをそれぞれ解 く際に、わかりにくい場合はヒントと して実物やカードを見せるなどの工夫 をするとよい。 ○クロスワードパズルが解け ○毎日を元気に過ごすためには、生活リズ たら、さらに白いマスの文 ムを整え、朝食をきちんと食べることが 字を並べ替えて白ワクの文 大切であることを確認する。 章を完成させる。 ○クロスワードパズルで解い ○メニューを考えるために料理の写真カー ○教材5ページ た食べ物をもとにして、自 ドや給食の献立表などを示し、助言する。 ○献立表 分の朝食のメニューを考え ・給食の献立もクロスワードパズルで解 る。 いた食べ物が使われていることに気付 かせ、朝食のメニューの参考になるこ とを助言する。 ○自分の考えた朝食について ○明日からの朝食に生かせるよう助言し、 発表する。 朝食の内容を見直そうとする意欲をもた せる。 ○事前に家庭の実態を把握し、児童の心情 に配慮する。 36 5 学習カード 朝ごはんの大切さについて考えよう 年 組 ○朝ごはんはどうして食べるのでしょう。そのわけを書いてみましょう。 ○朝ごはんを毎日食べるためには、どのようなことに気をつけたらよいのでしょう。 考えたことを書いてみましょう。 ○自分の朝ごはんについて、家族につたえたいことを書いてみましょう。 ○家族から ○先生から 37 6 参考資料 <資料 1>朝食をとることが大切な理由 ◆その1 体のリズムを整える 朝食は、1日の力の源である。もし、朝食をとらなかったら、頭も体もぼんやりしたまま午前 中が過ぎ、元気が出てくるのは、給食を食べた後となる。夜に元気になり、夜更かしをしてしま い、朝起きられないといった悪循環に陥ってしまう。1日の始まりは朝なのに、1日のリズムは 給食から始まることになってしまう。毎朝決まった時間に朝食をとり、体のリズムを整えること が大切である。 ◆その2 やる気と集中力が出る 朝食をとるとすぐに体温が上がり始め、午前中から 体温が上がった状態が続く。ところが、朝食をとらな いと、家を出るまで低いままである。通学で体を動か 図4 朝食摂取の有無と体温の変化 体温 (℃) 36.5 すと少し上がるが、午前中の授業の間に、また下がり、 給食を食べるまで低い状態が続く。眠くなって、あく 36.0 びが出たりする。朝食をとると、体のなかで熱がつく られて、元気が出る。 朝食しっかり 朝食抜き 35.5 6 7 8 9 10 11 12 6 昼(時間) 起朝 通 就業 食 床食 勤 ◆その3 脳にエネルギーを補給 人間の脳が順調に働くためには、エネルギーが必要 (鈴木正成『実践的スポーツ栄養学』文光堂) である。そのエネルギーの源となるのが、ブドウ糖で ある。夕食を午後7時にとり、次の日朝食をとらないと、給食まで17時間もあるので、脳までエ ネルギーがまわらず、脳が栄養不足になって、イライラしたり、集中力がなくなったりすること も考えられる。 <資料2> 朝食の摂取と学力調査の平均正答率との関係 小学校 (%) 100 80 73.7 67.2 60 65.6 59.5 57.9 51.6 46.8 52.3 53.2 44.6 42.7 36.3 40 54.9 38.9 31.1 35.1 20 0 国語A 国語B 算数A 算数B 食べている どちらかといえば、食べている あまり食べていない 全く食べていない 38 中学校 (%) 100 80 75.6 69.9 65.7 63.0 66.6 63.7 60 55.2 55.6 49.8 48.8 46.7 52.4 45.8 42.6 40 36.9 34.0 20 0 国語A 国語B 数学A 数学B 食べている どちらかといえば、食べている あまり食べていない 全く食べていない 国語A、算数A、数学Aは主として「知識」に関する問題 国語B、算数B、数学Bは主として「活用」に関する問題 (資料:文部科学省「平成20年度全国学力・学習状況調査」) <資料3> 朝食摂取状況別20メートルシャトルランの折り返し数 回 100 男子 89.17 80 70.68 60.97 42.13 50.08 25.77 17.05 26.67 28.89 93.35 93.09 85.38 77.00 65.20 61.14 34.05 40 0 86.27 51.85 60 20 95.08 69.43 74.53 41.88 22.70 10.00 6 7 8 9 10 11 12 毎日食べる 回 100 13 14 15 16 17 歳 毎日食べない 女子 80 60 57.07 40.60 40 20 0 13.99 13.20 6 20.69 24.78 0.00 7 48.42 51.28 32.90 30.63 64.09 61.11 48.73 60.98 55.02 48.08 35.56 35.50 54.21 32.09 35.29 33.98 16.60 8 9 10 11 毎日食べる 12 13 14 15 16 17 歳 毎日食べない (資料:文部科学省「平成19年度体力・運動能力調査報告書」) 39 <資料4> 朝食・夕食の共食状況 朝食 25.2 小学校全体(H17) 29.4 小学校全体(H19) 中学校全体(H17) 31.5 33.8 17.8 中学校全体(H19) 24.8 24.0 20.6 0 14.8 21.6 19.3 25.3 33.8 19.0 20 40 11.4 3.8 5.1 30.4 60 3.7 4.7 (%) 100 80 家族そろって食べる おとなの家族の誰かと食べる 子どもだけで食べる 一人で食べる その他 夕食 小学校全体(H17) 56.5 小学校全体(H19) 57.6 中学校全体(H17) 54.8 中学校全体(H19) 56.0 0 32.8 4.6 2.2 3.9 33.3 3.41.5 4.2 28.7 4.9 29.0 20 40 6.9 4.8 4.3 5.6 5.1 60 80 (%) 100 家族そろって食べる おとなの家族の誰かと食べる 子どもだけで食べる 一人で食べる その他 (資料:独立行政法人日本スポーツ振興センター「平成19年度児童生徒の食生活等実態調査報告書」) <資料5> 保護者が朝食を食べない理由(保護者) (%) 50 46.5 40.7 小学校保護者 中学校保護者 40 31.8 30 25.8 20.4 21.3 20 10 2.8 5.3 4.4 1.2 0 食 欲 が な い か ら 太 り た く な い か ら 時 間 が な い か ら い習食 る慣べ かにな らない っこ てと が そ の 他 (資料:独立行政法人日本スポーツ振興センター「平成17年度児童生徒の食事状況調査報告書」) 40 <資料6> 朝食・夕食の食事作りにかける時間(保護者) 朝食 (%) 50 45.5 45.6 45.3 総計 都市 40 農村漁村 31.2 30 28.5 25.6 19.8 18.016.3 20 10 5.4 4.6 6.3 0 夕食 10 分 未 満 10 分 ∼ 20 分 21 分 ∼ 30 分 31 分 ∼ 40 分 1.4 1.2 1.6 1.0 1.0 1.1 0.3 0.3 0.3 41 分 ∼ 50 分 51 分 ∼ 60 分 61 分 以 上 (%) 30 25.925.226.7 総計 都市 農村漁村 25.4 25.4 25.5 25 20.620.520.8 20 14.615.213.9 15 11.0 11.4 10.6 10 5 0.2 0.1 0.2 0 10 分 未 満 2.3 2.3 2.3 10 分 ∼ 20 分 21 分 ∼ 30 分 31 分 ∼ 40 分 41 分 ∼ 50 分 51 分 ∼ 60 分 61 分 以 上 (資料:独立行政法人日本スポーツ振興センター「平成17年度児童生徒の食事状況調査報告書」) 41