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はしがき
はしがき 所得税は、私たちに一番身近な税金ですが、社会のニーズに応えるためとの趣旨から 所得税法、租税特別措置法など毎年改正されています。 所得税の確定申告は、だれでも自ら簡単に作成できることが理想ですが、確定申告の 手引書・解説書などは毎年ページ数を増やして何百ページにもなり、複雑・専門的にな り過ぎています。 また、平成25年から、東日本大震災の復興を図るための「復興特別所得税」が設け られ、これまでの確定申告書の様式も改定されました。 そこで、一般の方々に適用されないレアケース・例外規定の解説を省略し、分かりや すくコンパクトに整理した確定申告の手引書「あなたにもできる 身近な確定申告」を 刊行することになりました。 PART1(確定申告をする人のために) 、PART2(申告納税額の計算) 、PART3(特 別な支出があった場合の確定申告)では確定申告の概略を、PART4(収入などに応じ た確定申告)では具体例をイメージして、基本(基本的な考え方) 、お得な情報、解 説、添付書類に段落を分けて説明、PART5(設例による申告書の記載例)では一般に 多いと思われる申告内容を設例として確定申告書等を作成しています。 本書が皆様の所得税・確定申告書の作成の一助になれば幸いです。 平成28年1月 税理士 熊澤 潔 平成27年分所得税 あなたにもできる 身 近 な確定申 告 C o n t e n t s [もくじ] PART1 確定申告をする人のために........................................................................ 3 1 所得税の確定申告............................................................................................... 3 2 申告書用紙の用意............................................................................................... 4 3 申告書の記入・作成........................................................................................... 5 4 申告書の提出や納税........................................................................................... 6 PART2 申告納税額の計算............................................................................................. 7 1 各所得金額の計算............................................................................................... 7 2 所得控除額の計算............................................................................................... 8 3 税額控除の計算................................................................................................... 9 4 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)........................................................ 9 PART3 特別な支出があった場合の確定申告.................................................... 1 多額の医療費を支払った場合............................................................................ 2 寄附をした場合................................................................................................... 3 災害等で損害を受けた場合................................................................................ 12 PART4 収入などに応じた確定申告........................................................................ 1 給与収入があった場合....................................................................................... 2 年金収入があった場合....................................................................................... 3 不動産収入があった場合.................................................................................... 4 退職金収入があった場合.................................................................................... 5 株式等の配当等の収入があった場合................................................................. 6 株式等の売却(譲渡)収入があった場合.......................................................... 7 マイホームを取得した場合................................................................................ 17 PART5 設例による申告書の記載例 12 13 15 17 19 21 23 25 29 31 設例1 給与所得、公的年金、配当所得がある神田さんの場合........................ 34 給与所得(年末調整未済)、公的年金等の所得、総合課税の配当所得、医療費控除 設例 2 給与所得の他に不動産所得があり、住宅ローンでマイホームを購入した東京さんの場合............ 39 給与所得(年末調整済)、不動産所得(青色申告)、寄附金控除、住宅借入金等特別控除 設例 3 公的年金と個人年金の所得があり、株式の売却損がある品川さんの場合........ 46 公的年金等の所得、個人年金の所得、上場株式の売却損 する必要があります。 ③ 退職所得のある方は? 退職所得は、申告分離課税となる所得であり、通常は、退職金等を受領する際に源泉 徴収され、課税関係が一旦終了しますので、確定申告する必要はありません。 ただし、①退職金受領額の20%の源泉徴収額の方、②所得控除が多額の方等は確定 申告をすることにより税金が還付される場合があります。その際は、退職所得以外のす べての所得と合わせて申告する必要があります。 (3)確定申告をすれば税金が戻るなど有利になる人とは? 確定申告の義務はありませんが、申告すれば有利になる場合があるのは、次のような 方です。 ① 株式等の配当収入がある方 ② 住宅ローンなどでマイホームを取得した会社員の方 ③ 多額な医療費を支払った会社員や年金受給者の方 ④ 災害や盗難にあった会社員や年金受給者の方 ⑤ 年の中途で退職し、再就職していない方 ⑥ 地方公共団体(ふるさと納税)や日本赤十字社等に寄附をした会社員の方等 申告書用紙の用意 2 (1)どの申告書を使えばよい?…申告書の種類 確定申告書の用紙は、大きく分けて2種類あります。 どのような所得のある方でも使用できるのが、申告書B(第一表・第二表)です。こ の申告書から一部を抜き出し簡単にしたのが、申告書A(第一表・第二表)です。つま り、申告書 A は給与所得(会社員等) 、雑所得(年金受給者等) 、配当所得及び一時所 得のみの方のための申告書です。 さらに、所得の種類等によって、以下の申告書を申告書Bと合わせて使用します。 4 ・土地・建物及び株式の譲渡、退職所得等 ➡ 第三表(分離課税用) ・何らかの赤字が生じ翌年に繰り越す等 ➡ 第四表(損失申告用) パ ー ト PART 1 確定申告をする人のために (2)他に添付する書類は?…申告書の付属書類 主なものに次のような調書、付表及び明細書があります。 ・所得金額が2,000万円を超えた方 ➡ ・株式の譲渡がある方 ➡ ・土地・建物の譲渡がある方 ➡ 「譲渡所得の内訳書」 ・医療費控除を受ける方 ➡ 「医療費の明細書」 「財産債務調書」※ 株式の「付表」、「明細書」 ※ 財産債務調書は、平成27年分からできた制度です。所得金額が2,000万円を超え、かつ、 3億円以上の財産又は1億円以上の国外財産を有する方が提出しなければなりません。 (3)申告書(付属書類含みます)はどこで手に入りますか? お近くの税務署でもらえます。時期・地域によっては区役所等の地方公共団体の窓口 で入手できる場合があります。国税庁のホームページからのダウンロードも可能です。 申告書の記入・作成 3 (1)記入・作成の方法は? 作成の方法には下記の4通りがあります。 ① ご自身で手書き記入して作成する場合は、本書や税務署に用意されている「確定申 告の手引き」 [冊子]を参照しながら行います。 ② パソコンを使って、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(注1)を利用して作成 することもできます(計算に間違いが生じないのでお勧めです) 。 。 ③ e -Tax(注2)により作成できます(若干の手続きが必要です) ④ 税務署に赴いて(混雑しますが)指導を受けながら作成できます。 (注1) 「確定申告書等作成コーナー」 画面の案内に従って金額等を入力していけば、自動的に確定申告書が作成されます。ほとん どのケースが作成可能であり、計算明細書及び他の付属書類も作成できます。これを印刷して 提出することになります。 (注2) 「e -Tax(国税電子申告・納税システム)」 ご自分のパソコンからオンラインで申告・納税ができますが、次のような事前の準備(有 料)及び手続が必要になります。 ① 各市町村で住民基本台帳カード(IC カード)の入手(有料) ② 上記①に電子証明書の発行を受ける(有料) ③ IC カードリーダライタの購入(有料) ④ 住所地を所轄する税務署へ「電子申告・納税等開始届出書」の提出 5 パ ー ト PART 2 申告納税額の計算 確定申告書を完成させるための順序は次のとおりです。 ① 各所得金額の計算をする。 ② 所得控除の計算をする。 ③ ①-②=課税される所得金額 の計算をする。 ④ ③×税率=税金 の計算をする。 ⑤ ④-税額控除-源泉徴収税額-予定納税額=納付税額 を計算する。 課税所得金額(所得金額の合計額−所得控除) × 税率 − 税額控除 − 源泉徴収税額 − 予定納税額 = 納付税額 各所得金額の計算 1 (1)所得とは? 収入金額-収入から差し引かれる金額(必要経費)=所得金額です。 簡単に言えば「利益」であり、明らかに収入金額とは違います。 所得税法では、所得の発生形態に応じ所得を10種類(注1)に区分し、それぞれ所得に ついて個別に計算することになっています。 また、課税方法として、①総合課税(他の所得と合算するもの) 、②申告分離課税 (他の所得と分離するもの) 、③源泉分離課税(所得を受けるときに天引きされすべての 納税が完結されるもの) 、④申告不要制度(申告をするかしないかを選択できるもの) の4つがあります。 (注1)<所得の種類> ①利子所得 ②配当所得 ③不動産所得 ④事業所得 ⑤給与所得 ⑥譲渡所得 ⑦一時所 得 ⑧退職所得 ⑨山林所得 ⑩雑所得 の10種類。 7