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Title Application of Hypovirulent Rhizoctonia spp. for Biological Control of Rhizoctonia Damping-off Disease of Cucumber and its Associated Mechanisms( 内容の要旨 ) Author(s) Remedios, Villajuan‐Abgona Report No.(Doctoral Degree) 博士(農学) 甲第089号 Issue Date 1997-03-14 Type 博士論文 Version URL http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/2430 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。 名(国籍) 氏 学 位 の 種 類 博士(農学) 学 位 記 番 号 農博甲第89号 日 平成9年3月14日 学位授与年月 (フィリピン共和国) Villajuan-Abgona Remedios 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 研究科及び専攻 連合農学研究科 生物環境科学専攻 岐阜大学 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 1pplication 目 査 委 員 Disease Associated Xechanisms of Cucumber andits 大 学 教 授 百 町 満 朗 静 岡 大 学 教 授 露 無 慎 二 副査 信 州 大 学 教 授 副査 岐 阜 大 主査 岐 阜 副査 の 内 容 の 学 助教授 要 野 山 敏幸 文 Damping-Off 俣景 論 Rhizoctonia BiologicalControlof spp.for 審 RhizocLo血 ofⅡypovirulent 旨 本研究は、リゾクトニア病害の防除に非病原性あるいは弱病原性のリゾクト ニアを用いることができるかを検討したものである。リゾクトニア病害の病原 菌である月山zocf血aβda血K血は各種子苗の発芽前立枯れや発芽後立枯れ を引き起こす重要な土壌伝染性病原菌である。研究内容は大きく(1)弱毒リ ゾクトニアの分離・同定、(2)弱毒リゾクトニアを用いたリゾクトニア病害 の防除、および(3)弱毒リゾクトニアの防除機構の解析、の3部からなって おり、それらの概要は以下の通りである。 (1)弱毒リゾクトニアの分離・同定:岐阜県の13地域から分離した 月山∠OCね血aspp.の248菌株を用いてR.βOJa九月.叫切aeおよび2核 Rムizodonね四NR)に大別し、菌糸融合反応から各菌糸融合群に類別した0それ らのうちR.so)aniの60菌株、R.oznaeの20菌株およびBNRの65菌株 を用いて弱毒性の検定を行ったところ、僅かにR.βda血の1菌株とBNRの5 ー40- 子 二 菌株のみが弱毒性を示した。兄叫搾aeの中には弱毒を示すものはなかった。弱 毒株は主に植物残さ法とアマ茎やソバ茎を用いた補捉法で得られた。弱毒の兄 80]aniは菌糸融合群(anastomosisgroup;AG)第4群に、また、弱毒のBNR はAGA、AGBa、AGGおよびAGOに属した。 (2)弱毒リゾクトニアを用いたリゾクトニア病害の防除:弱毒株の中で、 BNRのL2仏GBa)、Wl仏GA)およびW7仏GA)の3菌株は、強毒株R. solaniのAG4に属すC4菌株やAG2-2に属すGU-1菌株が引き起こすキュウ リ立枯病をh心血)や温室実験でそれぞれ58∼71%、64∼75%抑制した。これ らの強毒株を接種した圃場実験でも上記の弱毒株3菌株は市販の農薬であるベ ノミルと同等の高い防除効果を示した。強毒株C4の接種より0.5日(12時間) 以上早くに前もって弱毒株BNR W7を接種した場合は立枯病に対する防除 効果がほぼ100%近くにまで増加した。しかしながら、強毒株と弱毒株を同時 接種した場合には防除効果は見られなかった。 (3)弱毒リゾクトニアの防除機構の解析:弱毒BNRを接種した土壌で育 てたキュウリ子苗の胚軸を走査型電子顕微鏡を用いて組織学的に観察した。そ の結果、BNRは胚軸表皮を貴通しないが根から下部胚軸にかけて密に着生す ることが判った。一方、強毒株の兄βda血を接種した土壌で育てた子苗では R.βda血は胚軸表皮を直接貴通し髄にまで達した。また、R.βda血は子苗の ほぼ全ての部分から再分離された。それに対し、BNRの存在下ではR.βda山 の再分離率は著しく減少した。BNRはキュウリ組織に酸性ペクチン物質と思 われる多くの粘質物質を誘導し、その結果、BNRやR.βOja血の菌糸は溶解 された。それに伴い、R.βda扇が胚軸表皮を貫通するための侵入器官である掌 状付着器¢obate appresoria)や侵入子座Gnfectioncushion)の形成が著しく阻 害された。キュウリ胚軸組織の横断切片をルセニウムレッドやフェニルチオニ ンで染色したところ、BNR接種によりペクチン物質が集積することが確認さ れた。ICP発光分光分析法やⅩ線マイクロアナライザーによる解析結果、BN R処理した子苗ではカルシウムの量も増大することが明らかになり、キュウリ 組織の細胞壁中における細胞壁結合力チオンの量が高いことが示唆された。B NR接種に伴うクチクラ層の分解からBNR菌の産生するクチナーゼが宿主組 ー41- 織においてペクチン物質やカルシウムの集積をもたらす重要な役割を持つこと が推察された。そこでプレート法によるクチナーゼの検出を試みたところ、B NRは接種12時間後にpH5.2∼pH7.2の範囲でクチナーゼを産生することが 明らかになった。一方、強毒株のR.βOJa山は同じpH域でクチナーゼを産生す るものの産生時期は接種後48時間経ってからだった。クチン加水分解能をク チナーゼ誘導培地で調べたところ、BNR菌株はR.β0ね血に比較して高かっ た。パラニトロフェニルプチレート加水分解能を測定してBNRの培養濾液中 のエステラーゼ活性を調べたところ、BNRの活性はR.βda血と著しく異な ることが明らかになった。これらの結果から、BNRキュウリ組織の細胞中に おける細胞壁結合力チオンの量が高く、これにより病原菌による細胞壁分解に 対し耐性を増すことを示唆した。また、BNR接種に伴うクチクラ層の分解か らBNRの産生するクチナーゼが宿主組織においてペクチン物質やカルシウム の集積をもたらす重要な役割を持つとした。 審 査 結 果 の 要 旨 平成9年1月27日(月)に岐阜大学大学院連合農学研究科において審査委 員を含む関連教官、学生多数の出席のもと、レメデイオス・ビラジュアン・ア ポゴナ氏の論文の公開発表会と質疑応答が行われた。引き続いて別室にて審査 委員全員出席のもとに研究内容について審査委員会を開催した。本研究の内容 ならびに審査の鈷果は下記の通りである。 近年、環境保全型農業の構築にむけて多方面に亘る研究が盛んに行われてい るが、減農薬・柳巴料栽培を考えるうえで、有用な微生物を用いて植物の生育 を良好にし、かつ病気を抑制する技術の確立が強く望まれている。レメデイオ ス・ビラジュアン・アポゴナ氏の研究はこうした社会的要請を背景とした生物 防除研究の一環でもある。 本研究は、R揖zoc加ia50Ja山Kubnにより生じる各種リゾクトニア病害の防 除に非病原性あるいは弱病原性のリゾクトニアを用いることができるかを検討 したものである。R.βOJa血は各種子苗の発芽前立枯れや発芽後立枯れを引き起 こす重要な土壌伝染性病原菌である。 アポゴナ氏は岐阜県から分離した月山zo血血a spp.から弱毒を示す凡 βd月山と2核月山zocね山aを得た。これら弱毒株は、同定の結果、弱毒のR. SO)a血は菌糸融合群(anastomosis group;AG)第4群に、また、弱毒の2核 -42- RhizoctoniaはAGA、AGBa、AGGおよびAGOに属すことを明らかにした。 弱毒株の中で、2核RhizoctoniaのL2(AGBa)、Wl(AGA)およびW7(AGA) の3菌株は、いずれも強毒株R.solaniのAG4に属すC4菌株やAG2-2に属 すGU-1菌株が引き起こすキュウリ立枯病をinvitroや温室実験で著しく抑制 することを明らかにするとともに、それらの効果は市販の農薬であるベノミル と同等の高い防除効果であることを示した。また、強毒株と弱毒株を同時接種 した場合には防除効果は見られないが、強毒株の接種より0.5日(12時間)以上 早くに前もって弱毒株を接種した場合には立枯病に対する防除効果が 60%∼100%近くにまで増加することも明らかにした。 アポゴナ氏は弱毒リゾクトニアの防除機構を知る目的で、弱毒BNRを接種 した土壌で育てたキュウリ子苗の胚軸を組織化学的に、また、走査型電子顕微 鏡を用いて形態学的に詳細に観察した。その結果、通常、強毒株のR.50ね山は 子苗の胚軸表皮を直接貫通し髄にまで達するのに対し、BNRの存在下では内皮 にほとんど侵入できないことを明らかにした。また、BNRの存在下ではR. β0血山の再分離率は著しく減少することも明らかにした。氏はさらに、BNRは キュウリ組織に酸性ペクチン物質と思われる多くの粘質物質を誘導し、その結 果、BNRやR.soJa点上の菌糸は溶解され、それに伴い、R.βOJa扇の侵入器官で ある掌状付着器qobateappresoria)や侵入子座Gnfectioncushion)の形成が著し く阻害されることを明らかにした。また、ICP発光分光分析法やⅩ線マイクロ アナライザーによる解析結果、BNR処理した子苗ではカルシウムの畳も増大す ることが明らかになり、キュウリ組織の細胞壁中における細胞壁結合力チオン の量が高く、これにより病原菌による細胞壁分解に対し耐性を増すことを示唆 した。また、BNR接種に伴うクチクラ層の分解からBNRの産生するクチナー ゼが宿主組織においてペクチン物質やカルシウムの集積をもたらす重要な役割 を持つことを指摘している。 本研究から得られたこのような知見はこれまでにない新しい防御機構を提示 しており、生物防除技術を確立する上で興味深い視点を与えるものと考え、本 論分の成果を高く評価するものである。審査に際しては公表されている論文内 容も考慮され、最終試験の結果と併せ審査員一同満場一致で合格と判定した。 基礎となる学術論文:EuropeanJ.PlantPathologylO2:227-235,1996 PlantPathology45:896-904,1996 ー43-