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D19:フォーカシングとエンカウンターグループ

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D19:フォーカシングとエンカウンターグループ
D19:フォーカシングとエンカウンターグループ
スコア
33
年
5
6
7
8
12
16
18
18
19
比率
0.33
No
67
62
64
66
59
80
62
72
2
B
小問
all
B
all
all
all
C
all
all
c
ランク
H23 年度版:スコア=大問 5 点、小問 1 点の合計/比率=スコア/(試験期間(20 年)*5 点=100)→ランク:0.8 以上 A,0.3 未満 C
【参考資料】
・心理臨床大辞典:
・フォーカシング:p326~329
・エンカウンターグループ:p313~320
・フォーカシング ユージン・T・ジェンドリン著 村山正治ら訳 福村出版
・エンカウンター・グループのファイシリテーション 野島一彦著 ナカニシヤ出版
谷口臨床心理研究所分室:http://www.geocities.jp/hideki280918/
ここでは、Rogers,C.R によって発展させられたクライエント中心療法と関係があるフォーカシングとエンカウンターグループについ
てまとめます。エンカウンター・グループについては H6 年までのごく初期にしか出題の公開がありませんでしたが、H16 と
H18 に久しぶりに公開される問題が出てきています。
1.フォーカシング
(1)体験過程の理論
1957~1963 年に、Rogers,C.R とともにウィスコンシン大学での統合失調症に対する心理療法の大規模なプロジェクト 12-59B
に携わった Gendlin,E.T は、心理療法が成功するためのクライエントの資質の重要性に気づき、そのような資質を訓練す
るための理論と方法を考案しました。これが体験過程の理論とフォーカシングです。
人には、Gendlin,E.T がフェルトセンス felt sense18-62 と呼ぶ、からだの感じとしての「気持ち」があります。「体験」とは、フェ
ルトセンスを感じることであり、まだ完全に意味化されていない前概念的(前言語的)12-59A なからだの感じです。そして、よ
り正確な概念への分化の可能性があり、体験から概念が形成されてくる過程が、心理療法では重要です。
フェルトセンスは状況と一体となって存在し、志向性を持っていて、それを感じる体験は焦点的 focal で常に次の行為や
状況を暗示しています。そして、それが実行されると暗在的であったフェルトセンスの意味が明在的になり体験が変化しま
す。これを推進といいます。推進による選択された変化が、からだが真に求めていた変化であると、「そうだ、これだ!」
という、すっきりした体験的変化が起こり、これをフェルト・シフトといいます。
体験過程 experiencing7-64,8-66 とは、このように体験が変化していく過程のことで、その一局面が感情 emotion7-64A で
す。
体験過程がうまく行かないと臨床的な問題が生じます。構造拘束は、体験過程が阻害されるひとつのモデルで、本来
個別的な対人関係をカテゴリーで認知してしまい、各々の状況での個別的なフェルトセンスが感受できなくなることをいいま
す。心理療法は、何らかの理由でうまくいっていない体験過程を推進する方法と考えられますが、クライエントが体験過
程に触れる度合いが高い(体験過程の様式が高い)時、心理療法が成功しやすいことが先のウィスコンシン大学でのプロ
ジェクトで実証されています。
(2)フォーカシングの方法
フォーカシング focusing とは、体験過程に直接触れるための技法で、体験過程の様式を高める訓練法といえます。以下
に、フォーカシング簡便法 12-59C の実際を簡単にまとめます。
フォーカシングは、フェルトセンスを感じていく人(フォーカサー)とそれに聞き入っていく人(リスナー)のペアで行われ、リスナーの受
容的な傾聴の姿勢もフォーカシングには重要です。
①間を置く clearing a space:楽で居られる心の場を作るために、心配事を一つづつ思い浮かべ、適切な(巻き
込まれない)心理的距離を取って置いていきます。
*この過程は、壷イメージ法の最初の過程とよく似ています。
②フェルト・センスを感じる:一つを選び、それを想像しながらフェルトセンスに注意を向けます。
1
③見出し handle をつける:フェルトセンスをぴったり表現できる言葉やイメージなどを探します。
④共鳴させる resonate:見出しを心の中で言ったり思い浮かべて、響かせて見ます。適切な見出しは、それを言
ったり思い浮かべることで、フェルトセンスが強く感じられ、ここでフェルトシフトが起こることがあります。
⑤問いかけ asking:フェルトシフトが起こらないときは、リスナーがオープンクエスチョンで気づきのヒントとなる質問をしてみて、
フルトセンスから新しい気づきが起こるのを待ちます。
⑥受容 receive:フェルトシフトが起こり、新しい気づきが生じたら、それを受けいれます。
2.エンカウンター・グループ
(1)エンカウンターグループとは
エンカウンター・グループとは、欧米の場合は人間性回復運動のムーブメントや集中的グループ体験全般を指して用いられま
すが、日本では、Rogers,C.R の理論と実践に基づくベーシック・エンカウンター・グループを指す事がほとんどです。
ベーシック・エンカウンター・グループは、後述のように、基本的にはグループ進行をファシリテーター(推進者)が操作しませんが、グ
ループへの馴染みやすさやグループを推進しやすくするためにアートセラピーなどの方法を用いる構成的エンカウンター・グルー
プもあります。また、教育現場では、時間的な制約の中で効果を挙げ、浅い経験でも現場に展開できることを意図した、
同じ構成的エンカウンター・グループと呼ぶ、かなり、カリキュラムを明確に規定した方法があります。
(2)ベーシック・エンカウンター・グループとファシリテーターの概要
ベーシック・エンカウンター・グループは、10 名前後の参加者と 1~2 名のファシリテーター 5-67 で構成され、非日常的な場所で1
~5 泊程度の期間で行わるのが一般的です。
ベーシック・エンカウンター・グループの場合、グループの進行の推進役であるファシリテーターの役割が大きくなりますが、その役割
は、グループに意図的な目的を持ち込みリードするのではなく、グループは潜在力を発展させる促進的風土を持っている
と信じてサポートします。
従って、受容と共感を背景とした傾聴により心理的に安全な場を提供することが重要ですが、一方では、計画された
演習やプロセスの解釈を避け、グループを支配しないことも重要で、個人の重要な状況が生じたときにも、グループの潜在
的治癒力を信頼します。また、メンバーとしての率直さも重要で、感じていることを率直に表現することで対決やフィードバ
ックを行います。
(3)グループのプロセス
全く構造化されていないグループでありながら、そこには、一定の発達段階が見られます。
村山、野島の発達段階理論では、下記のような経過を辿り終結段階に至るとされていますが、毎回このように展開
が進むわけではなく、Ⅳ:相互信頼の発展段階以上に展開したグルーフでは満足感が得られますが、そこまで展開し
なかったグループには不満足感が残る場合もあります。
Ⅰ:当惑と模索の段階
Ⅱ:グループ目的や同一性が模索される過程
Ⅲ:否定的感情の表明
Ⅳ:相互信頼の発展
Ⅴ:親密性の確立
Ⅵ:深い相互関係と自己直面
大学生グループ体験からの分析した保坂、岡村の発達段階理論 16-80C では、下記のような経過を辿るとされています。
①ギャング・グループ:外面的同一行動による一体感による、小学校高学年ころの徒党集団。
②チャム・グループ:内面的な類似性の確認による一体感が得られる中学生の仲良しグループ。
③ピア・グループ:自立した個人としての違いを認め合いながら共存できる状態。
(4)日本のエンカウンターグループの特徴と問題
日本の場合、影響力のあるメンバーへの過剰な同調が起こりやすく、「いけにえ」に対する否定的感情の表明が集中
することがあるので、、ファシリテーターは「個を強調」することでメンバーを保護する介入が求められることが多いと言われま
す。また、グループ体験効果として、特に青年期の未婚男女で、異性に対する過大な緊張の減少が見られますが、これ
2
は、性の解放というよりは、母親、父親との関係が自由になる側面が大きいようです。
エンカウンター・グループは、他のグループ体験に比べて比較的危険性は低いように思いますが、それでも、参加者が心理
的外傷を負う場合があります。特に、参加者が青年期でファシリテーターが権威的(カリスマ的)な場合は注意を要します。ま
た、精神病圏、境界例の参加者が混じる傾向 18-72A があり、参加者とファシリテーターの経験を考慮して、参加を回避したほ
うが良い場合もあります。
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