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那賀町相生中学校区
那賀町相生中学校区 系統性をふまえ, 英語でコミュニケーションを 図ろうとする児童生徒の育成 研究主題 -楽しい活動から豊かな表現へ- 相生小学校 住所:那賀町延野字大原80番地 電話:0884-64-0123 HP アドレス: http://www.whk.ne.jp/̃aioi-es/ 相生中学校 住所:那賀町延野字大原100番地 電話:0884-62-0024 HP アドレス: http://www.nmt.ne.jp/̃aichu/ Ⅰ はじめに 相生小学校では,平成21年度より外国語活動(英語活動)の授業を「外国語活動型」で小学校第1 学年から週1時間実施することとなり,低・中・高学年の系統性はもちろん,中学校英語教育との連 携を考えたカリキュラム開発や授業実践に取り組んでいる。また,この外国語活動を経験した生徒が 平成22年度から入学してきている相生中学校では,小中連携を意識した授業について模索している。 本報告書では,昨年度から2年間取り組んできた,小学校における低・中・高学年の系統性,小中 連携を考えた外国語活動カリキュラムの開発と授業実践,中学校第1学年における英語授業の実践事 例等の報告を通して,望ましい小中連携の在り方について提案する。 Ⅱ 平成21年度の取組 小学校外国語活動の目的は英語力をつけることではない。「聞くこと」「話すこと」を中心とした 外国語活動を通して,言葉でやりとりする楽しさを味わい,お互いを理解するための言葉の大切さが わかる児童を育てるために行うものであると考え,研究を進めることになった。 1 研究主題 外国語活動の目標には3つの大きな柱がある。1つ目の柱は言語や文化についての体験的な理解, 2つ目の柱は積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成,そして3つ目の柱は外国語 の音声や基本的な表現に慣れ親しむことである。本校区では,この3つの柱のうち小(外国語活動), 中・高(外国語教育)の目標と一本につながっている「積極的にコミュニケーションを図ろうとす る態度の育成」に着目し,研究主題を上記のように設定した。 相生小学校の外国語活動では,担任主導の授業を進めていく中で,楽しい活動から豊かな表現力 へとつなげるためのカリキュラム開発や教材・教具の整備,さらに効果的な指導方法についても研 究を深めたいと考えた。 また,この外国語活動を受けての中学校における英語教育の在り方を探り,豊かな表現力を目指 した小中の連携について研究を進めることにした。 -1- 2 研究組織 研究組織は,図1に示されるように小中の各推進委員からなる「連絡協議会」を基盤とし,中 学校教員である英語教育コーディネーターを中心に構成した。 英語教育相生小・中連絡協議会 各校推進委員 相生小外国語活動推進委員会 校長・教頭・主査兼事務長 英語教育コーディネーター 研修主任・外国語活動主任 相生中英語教育推進委員会 校長・教頭・主査兼事務長 研修主任・英語教員・ALT 外国語活動支援講師・ALT 全体研究会(職員会) 低・中・高学年部会 図1 研究組織 図1 3 全体研究会(職員会) 研究組織 研究の方法 (1)小学校における研究 平成21年度は,低学年と中学年の授業は毎週火曜日の1校時から4校時までの間に実施し,高 学年の授業は毎週水曜日の4,5校時に実施することになった。そこで ALT の勤務(火曜日の 午前中)に合わせて低学年と中学年の授業に ALT を配置し,担任,ALT,中学校英語教員,外 国語活動支援講師の4人で授業を実施しながら研究を進めるという体制をとった。また,高学年 は担任,中学校英語教員,外国語活動支援講師の3人で授業を実施するという体制をとった。そ して,中学校英語教員主導の授業から,小学校の担任主導の授業へ徐々に移行していく形を目指 して研究を進めていくことにした。 しかし,午後に別の小学校へ移動して2時間授業をする ALT の勤務がハードであること,大 人数での指導が複雑で,役割分担が難しいなどの課題が出てきた。 また,毎週月曜日には小学校の担任や外国語活動主任,中学校英語教員による連絡協議会を実 施し,授業内容についての打合せや確認をしてきたがハッピーマンデー制度のため連絡協議会が 実施できない日が多いという問題も残った。 (2)中学校における研究 小学校外国語活動との接続を意識した授業の組立や,4技能の統合を考えた授業展開について 考えるため,研究授業や授業研究会を行った。また,授業改善の資料として活用するためリスニ ング力調査や英語力調査を実施した。 (3)小中連携の視点からの研究 小中連携の視点から,小学校での外国語活動の有無が中学校入学時の生徒に及ぼす心的影響調 査や児童・生徒,保護者の興味・関心や期待,満足度調査についてアンケートを実施し,実態把 握に努めることにした。また毎年行っている小中高連携異文化交流祭を連携の場として積極的に 活用することにした。 -2- 4 研究の実際 (1)小学校における外国語活動のカリキュラム 指定を受ける前の平成20年度までは,相生小学校では学校裁量の時間や総合的な学習の時間な どを利用し,週1回の ALT 訪問に合わせた外国語活動のスタイルをとった授業を行っていた。 当時はいわゆる英語の歌やゲームを楽しむ活動に頼ることが多く,単発の授業にならざるを得な い状況であった。表1が示すように,小学校児童へのアンケートの結果からも,平成20年度まで の外国語活動に対してマイナスの感想を持つ児童も少なくないことがわかった。 表1 平成20年度までの外国語活動に対する感想(複数回答) みんなでゲームをするのが楽しかった。 28人 英語があまりわからず,話すことがむずかしかった。 13人 何を言っているのかわからなかった。 10人 発音や長い英語がわからなかった。 5人 平成21年度より全学年で外国語活動を進めるに当たって,高学年には『英語ノート』などの補 助教材が配布されていたが,低学年,中学年に関しては市販の教材やカリキュラムも少なく,低 ・中・高学年の系統性を考慮したカリキュラム開発は一からのスタートとなった。 そこで,次に示す3つの観点から,まず高学年カリキュラムを作成し,それにつながる低・中 学年のカリキュラム開発に取り組むことにした。 ①『英語ノート』を中心とした高学年カリキュラム 『英語ノート』は国の一定の基準を示し,外国語活動の指針ともなり得るが,他教科の教科 書と同じように全国どこの学校でも使用できるようになっているため,その学校や地域の特性 に合わないというデメリットもある。 そこで,『英語ノート』を中心としながら,次の②・③の2つの観点からもカリキュラムを 考えていった。 ②地域の特性や実情を反映したカリキュラム 那賀郡那賀町は平成22年11月現在10,257人の過疎地であり,相生小学校・中学校ともに1学 年20名前後の小規模校で,へき地準級指定を受けている。自分たちの地域に誇りを持ち,情報 を発信できる児童・生徒の育成を目指すために,外国語活動にも地域性を取り入れたいと考え た。 ③学級担任の長所を生かしたカリキュラム 小学校教員の中には「英語」を苦手と感じていたり,それゆえに ALT や専科教員に頼る傾 向にある教員も少なくないことがわかった。確かに,外国語活動の目標が英語の発音の習得や 文法事項の理解であれば,「英語」を苦手とする教員にとって外国語活動の指導には苦痛を伴 うと考えられる。しかし,外部講師や ALT にはわからない,児童の日常生活や実態を知り, 全教科・領域を教える学級担任だからこそわかる・できる外国語活動であれば,これまでの経 験や知識を生かし,他教科・他領域と同じように取り組むことができるのではないかと考えた。 これらの3つの観点から,図2のような手順で高学年のカリキュラム開発を行った。 -3- ア 地域性を加味しながら,各教科・領域の教育課程一覧表を作成する。 ↓ イ 『英語ノート』と内容が関連している単元や,外国語活動に利用でき そうな単元を選び出す。 ↓ ウ 各月ごとの外国語活動の題材を設定し,英語の表現を考える。 ↓ エ 各月毎に4週間分の活動案を考える 図2 カリキュラム開発の手順 このようにして,平成21年度は『英語ノート1』をベースに第5・6学年共通のカリキュラ ムを作成し,同じ活動を展開した。そして,このカリキュラムを基に,週1回の低・中・高学 年別連絡協議会で毎回の指導案を作成・検討した。その場で,教材・教具についても話し合い, 次の授業までに準備をした。こうして作成された指導案や教材・教具は専用のスペースにスト ックし,学年を超えて共有し,他の単元や活動にも活用できるよう心がけた。 (2)小学校外国語活動の評価 外国語活動は道徳や総合的な学習の時間と同じ 領域であるため,評価は数値によるものではなく 文章で表される。その評価に欠かせない振り返り カードは,授業のはじめに配布され,児童は本日 の活動や目標を記入する。そして授業の最後に目 標の達成を振り返り,その活動を通して気付いた ことや初めて知ったことなどを文章で記述すると いうスタイルに落ち着いた。 この振り返りカードの他に,観察記録やワーク シート,児童の作品をポートフォリオのようにス トックし,評価に役立てている。 Ⅲ 写真1 振り返りカードとワークシート 平成22年度の取組 1 研究主題 平成21年度の1年間の取組により,中学校英語教員主導による授業から,小学校の担任による授 業へと授業形態も大きく変わってきた。そこで,児童の実態をよく知っている担任のよさをさらに 生かしながら,楽しい活動から豊かな表現力へとつなげるためのカリキュラム開発や教材・教具の 整備,効果的な指導方法についてさらに研究を深めたいと考え,引き続き「積極的にコミュニケー ションを図ろうとする態度の育成」として研究主題を設定し,研究実践に取り組んだ。 また,平成21年度に1年間外国語活動の授業を受けてきた6年生が中学校に入学してくることを 受け,外国語活動を受けての中学校における英語教育の在り方をや,豊かな表現力を目指した小中 の連携についてさらに研究を進めることにした。 -4- 2 研究組織 平成21年度と同じく,研究組織は,図1に示されるように小中の各推進委員からなる「連絡協議 会」を基盤とし,中学校教員である英語教育コーディネーターを中心に構成した。 3 研究の方法 (1)小学校における研究 平成22年度は,平成21年度の課題を基に授業における指導者の配置を見直した。まず児童の発 達段階等をも考慮し,英語の「音」や異文化を抵抗なく受け入れることのできる低学年の授業に ALT を配置しネィティブスピーカーの英語に触れられるようにした。そして,打ち合わせが行 いやすいように中学校英語教員が授業にも加わるようにした。 そして中学年の授業は担任と外国語活動支援講師の2人体制で行い,高学年の授業は小中連携 の視点から担任と外国語活動支援講師の上に中学校英語教員が加わり3人体制で行いながら,研 究を進めていくことにした。 平成21年度には毎週月曜日を予定していたため実施できなかった日も多かった連絡協議会は, 金曜日の夕方に実施することにし,検討する授業の指導案や教材・教具についての話し合いを担 任中心に進めていくようにした。また,授業は完全に担任主導型となり,中学校英語教員は授業 のサポートとして授業に加わっていくようにした。 (2)中学校における研究 平成21年度に引き続き,小学校外国語活動との接続を意識した授業の組立や,4技能の統合を 考えた授業展開について考えるため,研究授業や授業研究会を行うとともに,リスニング力調査 や英語力調査を実施し,その結果を授業改善の資料として活用した。 (3)小中連携の視点からの研究 平成21年度に引き続き,小学校での外国語活動の有無が中学校入学時の生徒に及ぼす心的影響 調査や児童・生徒,保護者の興味・関心や期待,満足度調査についてアンケートを実施し,実態 把握に努めるとともに,小中高連携異文化交流祭を連携の場として積極的に活用することにした。 こうしたことに加えて平成22年度には,那賀町内7小学校教員の外国語活動に対する意識調査の 実施や,研究開発事業小中合同中間発表会(公開授業及び講演)の開催により,これまでの取組 の成果や課題を地域全体で共有したいと考えた。 4 研究の実際 (1)小学校における外国語活動のカリキュラム 平成21年度と同様の手順で,平成22年度は『英語ノート2』をベースに第6学年用カリキュラ ムを作成し,第5学年以下の学年は,昨年度のカリキュラムや指導案を見直し,改訂しながら活 動を展開した。このような手順で作成したカリキュラム(第6学年)の一部を表2に示す。 そして,このカリキュラムを基に作成した授業指導案(4月第4週「世界の大仏比べ」)を図 3に示す。 -5- 表2『英語ノート2』ベースの第6学年カリキュラム(一部抜粋) 4 月 単元 世界の文化 5 月 6 月 人権について考えよう 刻を表してみよう 題材 音楽・食べ物・長さの単 人権問題・環境問題・点 文字・数字・月日・曜日 位 関連 総合的な学習の時間 「ふるさと相生」 7 月 世界遺産や偉人 自然・人・もの 字・手話 社会 社会 音楽 「鑑賞曲」 社会 「世界遺産」 「環境問題」 「江戸時代の暮らし」 主な Where is ~ from? Where is ~ from? What time is it? Where is he from? 英語 ~ is from ~. ~ is from ~. It's ~. He's from ~. 表現 How big(tall)! What's this? What letter is this? How many? This is ~. It's ~. It's ~. It's famous for ~. ・世界のカレンダー ・世界の偉人たち ~ is ~ long(tall). 第 曜日の配置や祝祭日の違 世界の偉人の功績が現在の 一 いに気付き,多様な文化 私たちの暮らしに生かされ 週 ・世界の音楽 第 活 二 週 動 ・詩人になろう の存在を知る。 ていることを知る。 ・日本の「刻」 ・作曲家のふるさと アジアをはじめとする世 自分の好きな詩を選び紹 日本には算用数字の時刻 音楽室にある写真の作曲家 界の音楽に親しみ,特徴 介し,日本の俳句・短歌 と,昔から伝わる「子, 一人一人のふるさとについ 的な楽器の呼び方と演奏 とナーサリー・ライム(マ 丑」などの刻があること て知り,出身地や民族,音 の仕方,それぞれの民族 ザー・グース)のリズムの を知り,日本文化の一端 楽ジャンルに偏りがあるこ 音楽の特徴を知る。 違いに気付く。 に触れる。 とに気付く。 ・世界の茶文化 ・世界の人権問題 ・星座占い ・世界遺産 お 茶 の ル ー ツ や Tea 世界のトイレット・ペー 自分の星座の言い方を知 世界の自然や建築物につい 計 第 三 週 画 Road によるお茶の広ま パーの普及率や森林伐採 り,国により星の見方が て知り,先人の残した物を りについて理解し,アジ について知ることから, 異なることに気付く。 受け継ぎ,次世代へと伝え アを中心とする茶文化に 世界の人権問題や人権侵 ていくことの大切さに気付 触れる。また,地域特産 害について考える。 く。また,自分のふるさと の相生晩茶の特徴につい について見つめ直し,豊か ても理解を深める。 な自然の恵みに感謝する。 ・世界の大仏比べ 第 四 週 ・ゴミ0問題 ・文字と縦・横書き いろいろな長さの単位を ゴミの種類や分別,処理 文字によって,封筒の宛 知り,世界の大仏や建築 方法やゴミのゆくえにつ 名などの書き方が異なる 物 の 高 さ 比 べ を し な が いて知り,環境問題につ ことに気付く。 ら,インチやフィートに いて考える。 親しむ。 英語ノート 2 Lesson2 Lesson1, 3, 7 -6- Lesson5, 9 図3 第6学年4月第4週指導案「世界の大仏」 Topic: 世界の大仏比べ Date: April 28th, 2010 Grade: 6th Grader (4th Class) Aims: ①いろいろな長さの単位を知る。 ②世界にはいろいろな大仏や建築物があることを知り,高さ比べをする Language Use: Where is ~? / ~ is from …. It's ~ meters(feet) tall. meter, feet, inch, yard, Budda Plan ★leader Activity Procedure Students HRT EC&JTE Greetings ①あいさつをする。 10mins. 子どもと一緒にあいさつをする。★あいさつをする。 Hello! Hello! How are you? I'm happy. etc. How's the weather? What's the date today? ②♪"ABC Song"を歌う。 ※はっきり歌えていない児童の ※ゆっくり発音し,楽しく歌う。 サポートをする。 【歌詞カード】 ③振り返りカードを見て, ★振り返りカードを配付し,今 ※全員が記入できるようサポー 今日の目標をつかむ。 日の目標を明確にする。 トする。 いろいろな長さ メートル以外の長さが,生 ★普段使っている長さの単位を 10mins. 活の中でも使われているこ 言わせる。cm, m, km, 尺, とを体験する。 寸 ★身の周りで cm, m 以外の長さ の単位がないか考えさせる。 e.g. テレビ,ジーンズなど ★世界のいろいろな長さの単位 を言う。 meter, inch(2.54cm) feet(30.5cm), yard(91.4cm) 【1inch, 1feet, 1yard の紙テー プ】 世界の大仏・銅像比 世界のいろいろな大仏につ ★いろいろな大仏の写真を貼り,※楽しい雰囲気をつくる。 べ いて知り, 高さ比べをする。 どこの大仏か,高さはどれく 20mins. らいか説明する。 "Where's it from?"を使 【電子黒板】 ★"It's from~."と答える。 ってどこの国の大仏か聞 e.g. 奈良,鎌倉,大分臼杵, "How tall do you think?" く。 楽山大仏(中国) "It's ~ tall." "It's from ~."を使って, ★世界の銅像についての問題を ★ヒントを出して質問する。 銅像の出身地を答える。 出す。 His/Her name is ~. e.g. スフィンクス,自由の女 Where's it from? 神,モアイ,坂本龍馬 Greetings 5mins. ①振り返りカードを記入 ★振り返りカードに記入させる。※カードに記入できているか確 し,今日の反省をする。 認する。 ②あいさつをする。 子どもと一緒にあいさつをする。★今日のまとめをし,次時の予 Thank you, see you. 定「詩人になろう」について 話し,あいさつをする。 See you! -7- (2)中学校における英語教育 相生中学校には,小学校外国語活動を経験した生徒が平成22年度より入学してきている。図4 は小学校で英語を聞いたり話したりする活動を通して,音声中心の英語に触れてきた生徒が,文 字を読んだり書いたりする学習もある中学校の英語学習に対してどのような意識をもっているか について調べたアンケートの結果である。 昨年度までの新入生と の大きな差は,「とても不 16 安」と答えた生徒が皆無 14 であったことである。こ 12 れには,中学校英語教員 10 が小学校での授業に参加 してきたため,人的環境 8 の変化が少ないことも影 6 響していると考えられた。 4 しかし,不安に感じる理 2 由を文章で記述させたと こ ろ ,「 単 語 を 覚 え な け とても不安 少し不安 特になし あまり不安なし 全く不安なし 0 1年生 2年生 3年生 れ ば な ら な い こ と 」「 テ ストがあること」「文を読 図4 入学時の英語に対する不安 んだり書いたりすること」に対する不安は根強いことがわか った。 そこで,これらの不安を少しでも軽減させることができるよう,中学校の英語教育のスタート 時におけるブリッジング・ユニット(小学校から中学校への円滑な学習の移行を目的とした単元) の開発に取り組んだ。本校では,開隆堂の SUNSHINE ENGLISH COURSE 1 を使用しており, 入門期の単元として"Let's Start"という単元が設定されている。しかし,指導書に示された時数 では音声から文字へのつなぎが十分ではないと考え,時間をかけて指導にあたることにした。そ して,歌唱を好む学年の特性を生かし,いろいろな歌を用いたり,時には身体を動かせることを 取り入れたりしながら,楽しい活動で不安を取り除き,文字のインプットを図った。 平成24年度から全面実施される中学校新学習指導要領の第2章の第9節外国語3-(2)には, 「聞く・話す・読む・書く」の4技能の総合的な育成が明記されている。そこで,アルファベッ トがある程度定着した頃を見計らってフォニックスなども取り入れ,文字から音を推測する習慣 を身に付けさせたいと考えた。また,授業研究を重ね,小学校外国語活動(『英語ノート』)と のつながりを意識した授業展開を模索してきた。 (3)小中連携の取組 ①研究開発事業小中合同中間発表会 平成22年11月26日(金)に,これまでの本事業の中間発表会を実施し,小学校第2・4・6 学年と中学校第1学年の授業を公開した。那賀町内はもちろん,県下各地から小学校・中学校 教員や外国語活動支援講師,行政に関わる方々等,約80名が参観し,助言や貴重な意見をいた だくことができた(写真2~5)。 -8- 写真2 第2学年公開授業 写真4 第6学年公開授業 写真3 写真5 第4学年公開授業 中学校第1学年公開授業 ②異文化交流祭 地元那賀高校との中高連携指定を生かし,高校教諭や ALT の協力で年に数回「小中合同異 文化交流祭」を実施している。 平成21年度は,10月に「ハロウィ ン」,平成22年度は4月に「イースタ ー」,12月に「クリスマスとお正月」, 1月には「節分」をテーマに実施し 児童・生徒の交流の場を設けてい る。テーマを選ぶ際には,西洋の文 化に偏ることなく日本文化・アジア の文化も意識的に取り入れるよう心 がけている。この交流には異年齢構 成のグループ活動を多く取り入れて いるが,このことで中学生は小学生 に頼られているという責任感とやり 遂げたという自信を,また小学生は 写真6 異文化交流祭Ⅲ「クリスマスとお正月」 中学生が英語を話したり書いたりする姿への憧れや期待を感じているようである。 -9- Ⅳ 成果と今後の課題 平成21年度末の小学校外国語活動についてのアンケートでは,表3のような意見が書かれていた。 表3 平成21年度の外国語活動に対する感想(自由記述) ・ゲームだけでなく,いろいろなことをするので楽しい。 ・みんなで輪になったり,レベルを上げたりするのが楽しい。 ・ゲームをしながら,英語が覚えられるのが楽しい。 ・英語を聞き取ることができた時,嬉しい。 ・わかりやすくて楽しい。 ・世界の料理や日本の行事など,日本や外国のことを知ることができた。 表1の平成20年度までの外国語活動に対しての感想に比べて,外国語活動を肯定的に捉えている児 童が増えたことは喜ばしいことである。 以上のように,本事業の成果としては,小学校外国語活動のカリキュラム,指導案,教材・教具の 充実が図れたこと,小学校教員の意識改革が進んだこと,児童の興味・関心の高まりや,中学校入学 時における生徒の英語学習に対する不安の軽減が挙げられる。 一方,今後の課題としては,評価の在り方の研究や地域の文化発信,中学校英語教育の更なる変容 が挙げられる。外国語活動や英語教育を通して,異文化の良さや違いに気付くだけでなく,地域性を 生かした外国語活動を経験してきた児童・生徒が,自文化に誇りをもち,発信することができる力を つけることが,中学校英語教育に求められていると感じている。 研究開発事業に関わっての現在の恵まれた環境は,人的にも物質的にもいつまでも続くものではな い。本事業終了後の平成24年度からの相生小学校の外国語活動が,年度末の異動などに伴うスタッフ の入れ替えにもスムーズに対応し,担任主導で実施できるよう,研究を続けていきたい。そして,そ の小学校外国語活動との接続を意識した中学校英語教育の充実を図っていきたい。 今後も,Active で Interesting/Intellectual な教材を使用し,Open-minded で International な AIOI の児童・生徒の育成を目指して,今後も研究に取り組んでいきたいと考えている。 参考文献 ・文部科学省,『英語ノート1』『英語ノート2』 ・文部科学省,「中学校学習指導要領 第2章 第9節 - 10 - 外国語」