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難病患者の在宅支援について
連載企画「いのちの現場最前線から」 難病患者の在宅支援について 3. 県の相談窓口としての 健康課 1. 難病とは 谷口 理絵 県難病相談・支援センター 意識はしっかりとしており、患者さん 県難病相談・支援センターでは、保 や家族に、肉体的にも精神的にも大き 健師が相談支援員として、電話や面接 な負担のかかる病気です。 で相談に応じるとともに、必要に応じ 難病は、 「原因不明、治療方法が未確 て県厚生センターや市町村等の関係機 立であり、かつ後遺症を残すおそれが 関との連携を図り、患者さんへの支援 少なくない疾病。経過が慢性にわたり、 2. 難病対策 単に経済的な問題のみならず介護等に 講演会のようす を行っています。また、難病に関する 療・福祉サービスに従事する職員に対 新しい医学的情報、生活用具等の情報、 する研修会、地域ボランティアの育成 に関する研修会等を開催しています。 著しく人手を要するために家庭の負担 難病対策として、県は、国の補助を 全国の患者会・家族会等の情報の収集 が重く、また、精神的にも負担の大き 活用して、難病のうち、治療が極めて を行い、ビデオ・書籍の閲覧提供やパ い疾病」とされています。 困難であり、かつ、その医療費も高額 ソコンを自由に使用できるよう開放し、 山英二先生を講師に「膠原病とつき合 神経を侵す難病には、マイケル・J・ である特定疾患の4 5疾患に対し、医療 情報を提供しています。 いながら」と題し講演会を開催しまし フォックスが3 1歳の若さで発病したパ 費の自己負担の軽減を図るとともに、 た。講演の中で先生から、 「膠原病の完 ーキンソン病、メジャーリーグ野球選 難病の患者さんや家族が保健・医療・ 治を考えるとつらくなるので、病気と 手のルー・ゲーリックが罹った筋萎縮 福祉の連携したサービスを受け、地域 『うまく付き合う』ことを心がけること 性側索硬化症、テレビドラマの「1リ で安心して療養生活が送れるよう、施 も大切。また、病気に対する不安を解 ットルの涙」の主人公が発症した脊髄 策の推進を図っています。その他に、 消するために、講演会や相談会等に積 小脳変性症等があります。 県独自で、2 5疾患を対象として、入院 極的に参加して、病気のことを知って 医療費の自己負担の軽減を図っていま ほしい」とメッセージがありました。 例えば、筋萎縮性側索硬化症では、 進行すると、全身の運動神経が機能を す。 先日、富山大学第一内科助教授の杉 当日は、患者さんや家族、支援者等約 相談支援員の電話相談のようす 失い、筋肉が萎縮して自分で動いたり、 2 5 0名の方々の参加があり、 「自分以外 話をしたり、あるいは食事をしたり、 更に、センターでは、患者さんや家 にも同じような悩みを持つ患者がたく 呼吸をすることが難しくなりますが、 族に対する疾病別の講演会や保健・医 さんいらっしゃることがわかり勇気づ 62 63 けられた」等の声が数多く聞かれまし を話し合い、在宅患者の支援体制を検 法士、更には建築士等と一緒に訪問を す。参加者からは、 「普段の診療時間に た。これまで難病をわずらい一人で悩 討しています。 行い、専門的な助言・支援を行ってい 聞けないことを聞けて良かった」 「日常 ます。 生活に取り入れられる工夫を学べて良 んでいた方にとって、患者さん同士の また、患者さんとその家族に対し、 つながりが勇気となることを感じられ 家庭訪問や電話、面接相談を行ってい た講演会でした。 ます。 厚生センター・支所は医療費助成の 4. 在宅支援 ∼厚生センター・支所の保健師∼ 最近は人工呼吸器などの医療機器を かった」などの声が寄せられています。 装着した患者さんの在宅支援も多くな ってきました。そのため、災害等の停 申請窓口となっており、診断を受けた 電における緊急時の対応が必要となり、 ばかりの不安な患者さんや家族の方の 消防署や電力会社等とも連携を取り合 相談も多く受けています。病気と付き っています。 5. ボランティアの協力 病気との付き合いが長くなってくる 合いながら療養生活するための工夫や、 と、だんだん外出しなくなり、人との 自分の病気をどうしても受け入れる 各種サービスを受ける前に、適切な支 つき合いが疎遠になりがちです。この ことができず、大きな不安に飲み込ま 援を受けて頂くためのコーディネータ ため、厚生センターが中心となり、ボ れそうになりながら、懸命に病気とと ーの役割も担っています。 ランティアの協力を得ながら、いろい もに生活する患者さん。病気を受け入 ろな病気の人が参加できるよう、相談 入院中の患者さんには、退院前から、 れ、前向きに生活している患者さん。 在宅で療養生活をするための福祉用具 会を開催しています。音楽療法や創作 様々な状況の患者さんとその家族の方 (吸引器や特殊ベッド等)等の地域のサ 活動、なかなか外出しづらい車いす利 たちに少しでも快適に在宅で療養生活 ービスが利用できるのか、どのような 用の方と日帰り温泉や公園へ出かける 厚生センターでの療養相談会のようす を送ってもらうために、患者さんと一 支援が必要なのかを考え、入院中から 緒に知恵を絞り、時には、涙を流し、 在宅支援のためのチームづくりを行っ 一緒に笑いながら、県厚生センター・ ています。 ことなどを企画し、実施しています。 また、病気に対する正しい知識をも 事前に十分調査し、参加する支援者と つことでよりよい生活を送ってもらう 打合せをして、安全への十分な配慮を 保健師が家庭訪問を行う時は、患者 ために、脊髄小脳変性症やパーキンソ 行っています。参加者からは、 「ボラン さんの状況に応じて、きめ細やかで適 ン病などの疾患別の相談会を開催して ティアの方や保健師の顔を見ると元気 具体的には、地域の保健・医療・福 切な支援を行うため、 「在宅療養支援検 います。病気について専門医の話を聞 になれる」 「人とふれあえて楽しい」 「車 祉等の関係者による連携・協力体制を 討会」を開催し、チームで患者さんを いたり、理学療法士等の専門家から日 いすの生活になってもこんな楽しい時 つくるために「地域難病ケア連絡協議 支援できる体制を調整します。必要に 常生活の工夫や機能訓練方法等を学ん 間を過ごせるので不安が少なくなった」 会」を設置し、その時々の地域の課題 応じて、専門医や理学療法士、作業療 だり、実際に体験したりしてもらいま と患者さん同士の交流によって、お互 支所、富山市保健所では、保健師等が 支援を行っています。 64 65 いに励まし合って前向きに生活できる ご協力をお願いします。 元気のもととなり、 相談会をきっかけに 自主的な「友の会」が育ったりしてい ます。 ݈ޛჄ この交流の場となる相談会には、地 域のボランティアの方にもたくさん参 ᩊ၏Ⴛᛩȷૅੲǻȳǿȸ 加していただいています。ボランティ アの皆さんには、車いすの移動などを Ɲకϋ 助けていただいていますが、時には、 絵手紙の講師等をお願いする等、楽し い交流の場づくりに協力していただい ݈ ޛჄ ᩊ ၏ Ⴛ ᛩȷૅ ੲ ǻ ȳ ǿ ȸ ư Ƹ ᩊ ၏ ध ᎍ ƞ ǜȷƝ ܼ ଈ Ʒ ႏ ƞ ǜ Ʒ ています。相談会を介して、病気や介 ಮŷƳɧܤǍपLjƴᩊ၏ႻᛩૅੲՃᲢ̬ͤࠖᲣƕƓሉƑƠƯƍLJƢŵ Ʋ Ə Ƨ ɟ ʴ ư ᒊ Ơ ǜ Ʃ Ǔ Ŵप ǜ Ʃ Ǔ Ơ Ƴ ƍ ư Ɠ ൢ ᠉ ƴ Ɲ Ⴛ ᛩ Ƙ Ʃ ƞ ƍ 護の仕方を学んでもらうことで、地域 での難病に関する啓発普及の一助とも Ⴛᛩ૰Ƹ૰ȷᅼ݅ƸܣǓLJƢ なっています。 ႻᛩƷ૾ඥ ᡵஉ୴ଐ᳸୴ଐ ҜЭᲳ᳸ҜࢸᲮᲭᲪЎLJưӖ˄ םŴ ଐ Ŵ ᅔ ଐ Ŵ ࠰ ࠰ ( ڼᲫ Წ உ Წ Ჳ ଐ ᳸ Ძ உ Ჭ ଐ )Ƹ ˞ Lj 6. これからの支援 厚生センター・支所は、どんな人も 自分の住みたいところに住める社会づ くりを目指し、難病患者やその家族の 方々に、よりよい療養生活を送ってい ただけるよう支援を続けていきたいと 考えています。 県民の皆様にもボランティアなどの 66 ᩓ ᛅ ƴ Ǒ ǔ Ⴛ ᛩ ᲪᲱᲰᲧᲮᲭᲬᲧᲰᲯᲱᲱ ஹܴƴǑǔ᩿Ⴛᛩ ᩿ႻᛩƸʙЭʖኖƕ࣏ᙲưƢ ႻᛩƷئ プロフィール ݈ޛჄᩊ၏Ⴛᛩȷૅੲǻȳǿȸ ƄᲳᲭᲪᲧᲪᲪᲳᲮ 谷口 理絵(たにぐち りえ) 高岡市出身 保健師として、高岡厚生センター等の厚生 センター・支所を経て、現在、健康課主任。 楽しみごとは、娘のソフトボールと息子の サッカーの試合観戦。 ݈˰ܤࠊޛထᲯဪᲬᲫӭ ݈ޛჄዮӳᅦᅍ˟ ᲢǵȳǷȃȗƱǍLJᲱ᨞Უ ᩓᛅ ᲪᲱᲰᲧᲮᲭᲬᲧᲰᲯᲱᲱ 67