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5 - 山形大学医学部

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5 - 山形大学医学部
121010
山形大学医学部1年次講義
「ゲノム解析学」資料
遺伝子実験施設
中島 修
始原生殖
細胞
受精卵
外胚葉
内胚葉
中胚葉
遺伝子の構造解析
細胞クローニング
DNA研究法
DNAクローニング:
目的遺伝子を選択的に増幅・精製し,単離すること
l
細胞を用いたクローニング
l
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるクローニング(無細胞
DNAクローニング)
特異的検出:多数の集団の中から特定の遺伝子を検出すること
l
分子ハイブリダイゼーション
l
定量的RT-PCR
14
DNAの研究がタンパク質のそれより遅れた理由
l
アミノ酸配列と比較してDNA塩基配列が長大なこと
l
巨大なDNAは細胞からの分離の際,剪断力により様々
な大きさに千切れてしまうこと
→均一のDNAとしての精製が困難
l
βグロビン遺伝子はゲノム3300Mb中の0.00005%グロ
ビン→極めてわずかな部分を認識する必要がある
15
細胞を用いたDNAクローニングの手順
1.組換えDNA分子の作製:標的DNAをレプリコン(自己複製で
きるDNA配列)に連結する。レプリコンがないと宿主細胞の分裂
と共に希釈・消失する。
2. 組換えDNA分子を宿主細胞へ導入(形質転換)。レプリコン
は宿主の染色体とは独立に複製される。
3. クローン細胞の選択的増殖(コロニーの分離→大量培養)
4. 組換えDNA分子の単離
16
レプリコン
Restriction Enzymes(制限酵素)
5’
5’
5’ protruding ends(5’突出末端)
21
3’
5’
3’
3’
5’
3’ protruding ends
3’
5’
3’ protruding ends
3’
5’
3’
5’
3’
5’
3’
5’
5’
22
5’ protruding ends
5’
3’
3’
5’
5’
3’
3’
5’
5’ protruding ends
5’
3’
3’
5’
5’ protruding ends
制限酵素
l
Ⅱ型制限酵素(Ⅱ型酵素は認識配列内もしくはその近傍でDNAを特
異的に切断する)により,クローニングに利用可能な適当な長さの断片として
DNAが取扱可能になり,組換えDNA分子の作製が可能になった。
l
通常,4-8bpのパリンドローム構造の特異的塩基配列を認識して,その
認識配列部位を切断する。
l
切断により生じる末端は,平滑末端と5’-/3’-突出末端がある。突出し
ている一本鎖部分を粘着末端と呼ぶ。
l
酵素の由来は異なるが同一の塩基配列を認識する酵素をアイソシジ
マーと呼ぶ。
l
認識配列内にCpGが存在すると,脊椎動物ゲノムに置いて低頻度切
断酵素になる。
l
制限酵素とは,宿主細胞がファージDNAなどの外来DNAを特異的に
切断するために機能する。自身のDNAメチル化酵素によって,自らのゲノムは
自身の制限酵素では切断されないような修飾を受けている。ただし,宿主自ら
に既に感染して増殖したファージは同様の修飾を受けるため,宿主制限酵素に
対し抵抗性があるので増殖が出来る。
24
外来遺伝子にレプリコンを導入する方法
• レプリコンを宿主のものを利用する場合:レトロウィルスが宿
主ゲノムへ組み込まれる場合など。この場合は,外来DNA
の分離等に不利な点が多いため,一般的ではない。
• In vitroでレプリコンを連結させ宿主細胞へ導入する場合:通
常,宿主染色体とは独立に複製するため,細胞当たり外来
遺伝子は多コピーとなる。外来DNAを宿主細胞へ運ぶのが,
ベクター分子と呼ばれる。宿主は遺伝的に改変された細菌
か酵母を使う。増殖が速いものが広く使われる。細胞内のみ
で存在する。
25
ベクターに用いられる染色体外レプリコン
(これらを遺伝的に改変してベクターに用いる)
プラスミド:環状二本鎖DNA。自然界には性因子(F因子)や薬剤
耐性因子として機能するものがある。
バクテリオファージ:細菌に感染するウィルス。DNA型バクテリオ
ファージは環状または線状二本鎖DNAがコートタンパク質で包ま
れた成熟ウィルス粒子を形成している。細胞外でも存在可能。
26
制限酵素を利用した組換えDNA分子の作製
l
同一の制限酵素あるいはアイソシジマー,または認識配列は異なるが
同一の粘着末端を生じる酵素(例:BamHIとMboI,SalIとXhoIなど)によりDNA
断片を作り,相補的に結合した末端同士をDNAリガーゼにより連結させる。
l
粘着末端は通常4塩基以下と少ないため,低温でライゲーションを行う。
l
この反応の際,様々な生成物(分子内環状化,線状コンカテマー,環
状多量体化)が出来ることを考慮する必要がある。DNA濃度が高ければ,分
子間反応が進みやすく,低ければ,分子内反応が進みやすい。
l
粘着末端と比較すると,平滑末端のライゲーション効率は低い。
28
ベクターDNAに標的DNA分子を効率的に結合させる工夫
(ベクター環状化を防ぐ)
l
ベクターDNAを異なる2種の制限酵素で切断する
l
ベクターDNAの脱リン酸化
30
Directional Cloning
31
Cleavage Close to the End of DNA Fragaments
ENZYME
EcoRI
Oligo Seq.
2hr
GGAATTCC
CGGAATTCCG
CCGGAATTCCGG
SpeI
GACTAGTC
GGACTAGTCC
CGGACTAGTCCG
CTAGACTAGTCTAG
32
20hr
>90 >90
>90 >90
>90 >90
0
0
10
10
50
50
>90
>90
Alkaline Phosphatase
33
Ligation of Restriction Fragments
34
宿主細胞への組換えDNA分子の導入・標的DNAの分離
l
DNAの様な巨大分子は通常,膜を透過できない。
l
高電圧処理や金属イオン処理により細胞膜の透過性が変質して外来
DNAを取り込める細胞をコンピート細胞と呼ぶ。
l
通常は1分子の外来DNAがコンピート細胞へ取り込まれる(形質転
換)。これにより,DNAの分画(クローン化)が出来る。
l
形質転換は環状DNAの方が線状DNAより効率がいい。
l
細菌細胞からプラスミドDNAを精製するためには細菌染色体DNAと
分離する必要がある。
l
アルカリ法:プラスミドと同様に環状である染色体DNAとプラスミド
DNAとのアルカリによる変性の違いを利用して,染色体DNAのみを変性沈殿
させて,プラスミドDNAを分離する。
さらに精製を行う場合,カラムクロマトグラフィーや塩化セシウム−臭化エチジウ
ム平衡密度勾配遠心法(線状DNAやニック(切れ目)が入ったプラスミドDNAと
比べ,臭化エチジウムが閉環状プラスミドDNAへ結合しにくい性質を利用して
分離する)などを利用する。
35
05_08.jpg
38
Binding of Ethidium Bromide to DNA
39
Electrophoresis of Plasmid
40
DNAライブラリー
l
初期のDNAクローニング研究では,特定のmRNAが
圧倒的に発現している特殊な細胞(グロビン鎖遺伝子を発現
している赤血球細胞など)の遺伝子しかクローニングできな
かった。
l
現在では,ゲノムの全配列のクローンを含むDNAライ
ブラリーの作製が可能になり,最初のライブラリーに少量しか
含まれていない遺伝子についても,単離同定が可能となった。
41
ゲノムDNAライブラリー
l
多細胞からなる真核生物はどの細胞も同じゲノムを持っている
ため,血液細胞など入手容易な細胞でゲノムライブラリーを作製する。
l
ゲノムを4塩基認識酵素(例:MboI)で部分消化し,適切な長さ
のDNA断片を調製する。
l
部分消化で得られるDNA断片には,同一遺伝子の断片が様々
な組み合わせで含まれ,さらに,一部が重なった様々な断片が得られる
ことで,これを基に遺伝子全体を解析することが可能となる。
ただし,現在はゲノムプロジェクトによりヒト・マウス・ラットなど研究で頻繁
に利用されるゲノムDNAの配列情報が豊富なため,データベース検索の
後,標的遺伝子を含むBACやPACクローンを入手するのが一般的になり
つつある。
独立クローンの総外来DNA長がゲノム長の数倍になるように,独立ク
ローン数を確保してゲノムライブラリーを作製する。
42
05_09.jpg
43
cDNA
l
ラ
イ
ブ
ラ
リ
ー
遺伝子発現は細胞種や発生段階等で異なるため,目
的に応じた組織からmRNAを調製してcDNAライブラリーを調
製する必要がある 。 一般に,オリ ゴ dTカラム などを 用い て
mRNA を 精 製 し て , ラ イ ブ ラ リ ー 作 製 に 用 い る 。
l
様々なcDNAライブラリーのmRNA配列を網羅的に解
析してデータベース化しているESTデータベースが利用できる。
配 列 解 析 に 用 い ら れ た EST ク ロ ー ン も 入 手 可 能 で あ る 。
44
05_10.jpg
45
05_10_2.jpg
46
組換えDNAのスクリーニング
lベクターにより形質転換された細胞のみ選択する→抗生物質耐性遺伝子を
ベクター内へ組み込んでおく。
l組み換えDNAを含む細胞を選別する→マーカー遺伝子の挿入失活(マー
カー遺伝子内部に,フレームを替えないように,いくつかの制限酵素サイトを
挿入しておくと,制限酵素サイトが短いためにマーカー遺伝子機能が維持され
ることから,外来DNAが挿入された場合にマーカー遺伝子の失活が起こる)
47
05_12.jpg
48
DNAクローン解析
l
制限地図の作製:多種類の制限酵素で消化し,生成する
DNA断片の大きさをアガロース電気泳動で解析する。2種の酵素
による同時消化や,部分消化により,相対的な認識配列の位置関
係を把握する。
l
サブクローニング:外来DNAの一部を別種のベクターに移
すこと。これにより構造や機能の解析が容易になることがある。
49
外来DNAの長さで使い分ける各種ベクター
プラスミドベクター(挿入可能DNA 〜10Kb)
l
ポリリンカー(マルチクローニングサイトポリリンカー)の挿
入
l
薬剤耐性遺伝子の挿入
l
マーカー遺伝子内へのポリリンカーの挿入による外来
DNAの挿入体の選択
51
05_12.jpg
52
λファージ
l
コートタンパク質に取り囲まれた約50Kbの線状2本鎖DNA。
l
大腸菌に高効率で感染する能力あり
l
DNA成分のみが大腸菌へ注入→λDNAの両末端にCOS配列と呼ばれ
る5’粘着末端同士が,相補的に結合→大腸菌のリガーゼを介して環状になる
l
溶菌化サイクル:DNA複製開始→コンカタマー形成→コートタンパク質
合成→1ユニットDNAのコートタンパク質へのパッケージング→溶菌
l
溶原化経路:λDNAの中央部に存在するatt遺伝子が大腸菌ゲノム内の
相同遺伝子と相同組換えを起こして,大腸菌ゲノムへλDNAが入り込む(プロ
ウィルス)。プロウィルス化された大腸菌は溶原菌と呼ぶ。
53
05_13.jpg
54
λベクター
(置換型λDNAベクター 9〜23Kb,挿入型 5Kb以下)
l
プラスミドと比較して大腸菌への導入効率が高い
l
溶源化サイクルに必要な中央部の遺伝子領域を外来DNAで置換す
るのが置換型。cDNAライブラリーに用いられる挿入型λDNAベクターはcI遺
伝子内(溶原化状態を支配する遺伝子)へ外来DNAを組み込む。
l
in vitroパッケージング法によってベクターとして利用可能となった。
55
コ
l
ス
ミ
ド
ベ
ク
タ
ー
(
33
〜
44Kb
)
cos配列を持つプラスミドDNA。In vitroで外来DNAとコンカ
タマーを形成させて,in vitroパッケージング法により外来DNAを
ク
ロ
ー
ニ
ン
l
ゲ ノ ム ラ イ ブ ラ リ ー に 用 い ら れ る 。
57
グ
可
能
。
細菌人工染色体ベクター(BAC)(〜300Kb)
l
プラスミドの欠点(組み込まれた外来DNAがしばしば不安
定になり,一部の欠失や組換えが起こる場合がある。反復配列を
持つ真核生物由来のゲノムDNAは特に不安定)を克服するため
に,F因子の1〜2コピーである性質を利用して大腸菌内でゲノム
由来の300Kbまでの外来DNAが安定してクローニングできるよう
開発されたのが細菌人工染色体ベクター(BACベクター)
l
収量は低い。エレクトロポーレーションで効率よく導入可
能。
58
フ
l
ァ
ー
ジ
P1
ベ
ク
タ
ー
(
70
〜
100Kb
)
ファージP1が110-115Kbの線状から成ることを利用して100Kbに及ぶ
外 来 DNA を ク ロ ー ニ ン グ 可 能 と し た ベ ク タ ー 。
l
P1プラスミドベクターを制限酵素で2つのベクターアームを生成させ,
そ の ア ー ム 間 へ 外 来 DNA を 挿 入 で き る 。
l
In vitroパッケージングにより適当な宿主に感染させ,宿主由来のcre
遺伝子による組み換えで環状化してから,溶菌化経路に入り増殖させる。
l
ファージP1系とF因子を用いた系の両方の特徴を兼ね備えたP1人工
染 色 体 ( PAC,
130 〜 150Kb ) も 開 発 さ れ て い る 。
59
酵母人工染色体(YAC)ベクター(0.2〜2.0Mb)
l
宿主として酵母を用いる利点は,大腸菌内ではしばしば複
製が困難な真核生物特有の反復配列を含む配列の複製が可能と
なる。
l
YACを用いると巨大なDNAがクローニング可能となる。
l
YACはセントロメア(細胞分裂における染色体の分配に必
要),テロメア(染色体末端の保護及び複製の完了に必要),自立
複製配列(ARS)から成る
l
酵母への導入には,細胞壁を取り除いたスフェロプラストを
用いる。
l
インサート選別にSUP4,ベクター取り込み選別にTRP, URA
を利用。
60
制限酵素地図
62
真核細胞での遺伝子発現系
• 真核生物遺伝子を細菌で発現させる場合、翻訳後修飾が
起こらないことや正しい折りたたみ(高次構造形成)できない
場合がある
→バキュロウィルスを用いた昆虫細胞を宿主とした遺伝子発
現系や哺乳類細胞を用いて一過性にタンパク質発現をさせる
• 哺乳類細胞では細胞の染色体DNAへ発現させたい遺伝子
を組み込むことで、持続性発現を可能にできるが、組み込ま
れる効率が低く、抗生物質(ネオマイシンなど)耐性能など優
性選択マーカーを用いることがある
遺伝子の構造解析
Polymerase Chain Reaction
(PCR)
05_01.jpg
PCR(polymerase chain reaction)
l細胞を用いず,in vitroで,標的DNA配列を増幅単離する方
法
l迅速且つ応用範囲が広い
l標的DNAの両端に15-25塩基のプライマーを設計するために,
標的DNAの塩基配列情報が必要
lPCRサイクル
1)通常,93-95℃で二本鎖鋳型DNA変性(相補対を乖離させ,
一本鎖とする)
2)通常,50-70℃で,プライマーを鋳型DNA一本鎖に対形成(ア
ニーリング)させる(この温度はプライマーの塩基配列に依存す
る。通常,理論上のTm値(相補対の50%が乖離する温度)より
5℃低い温度で行う
3)通常,70-75℃でDNAポリメラーゼによりプライマーから新し
いDNA合成をさせる
lPCR反応では,新たに合成されたDNA鎖が次の反応で鋳型
として働くので,乗数的に極めて効率よく標的DNAの増幅が可
能となる
l温泉に生息する微生物由来の熱耐性DNAポリメラーゼが,
PCRサイクルを効率よく,且つ簡便に進めることを可能にした
lPCRプライマーの設計
長さ:
哺乳類細胞由来のゲノムが鋳型DNAの場合でも,20塩基あれば
プライマーとして十分。プラスミドなどを鋳型DNAとする場合は,さ
らに短くても十分。
塩基組成:
縦列反復配列や同一塩基が長く並ぶ配列は,プライマーの設計
部位としては不適切。2つのプライマーのGC含量と長さは,Tm値
が等しくなるように設計する
2次構造:
ヘアピン構造を取る可能性のある塩基配列は避ける
3’末端:
プライマーの3’末端の2塩基同士が,相補的である場合,プライ
マーダイマーが形成され,増幅効率が低下する。
06_09.jpg
淡色効果
01_07.jpg
lPCRの利点
PCRの迅速性:
条件が決まれば,PCRによるクローニングは数時間で終わる
が,細胞を用いたクローニングは数日以上かかる。
PCRの感度:1個の細胞からでも標的遺伝子の増幅が可能。
一方,外部からのDNA混入(コンタミネーション)に注意する
必要もある。
鋳型DNAの品質:化石中のDNA,ホルマリン固定された組織
中のDNAでも鋳型として利用可能。
lPCRの欠点
プライマー設計のため,DNAの塩基配列情報が必要
←最近は,縮重オリゴヌクレオチドやデータベース情報の利用で負担が軽減され
ている。
PCR産物は,細胞クローニングで得られるDNAと比較して,量も少なく,短い
(2Mbに対して0.1-5Kb)。しかも,サイズが大きくなるにつれて効率が著しく低下。
←長距離PCR(long range PCR)により~42Kbの配列が増幅できるようになった
耐熱性DNAポリメラーゼ(Taqポリメラーゼ)によるDNA複製の精度が低い。Taq
ポリメラーゼには校正のための,3’→5’エクソヌクレアーゼ活性がないため。具
体例:1KbのDNAを20サイクルで増幅した場合,最終産物の40%に誤った塩基
挿入。ただし,産物全体としてみると,正しい塩基配列と見なせる。しかし,PCR
産物を細胞クローニングする場合は,塩基配列を確認する必要がある。
←最近は,3’→5’エクソヌクレアーゼ活性をもつ耐熱性DNAポリメラーゼが利用
できる。具体例:1KbのDNAを20サイクルで増幅した場合,最終産物の3.5%に
誤った塩基挿入。
lPCR産物の細胞クローニング:
時間的経済的理由から,PCR産物を細胞クローニングすることが
多い。特に,量的な問題が解決される。クローニングされたDNAの
配列を確認することは必須。
lTaqDNAポリメラーゼには,ターミナルデオキシヌクレオチドトラ
ンスフェラーゼ活性があるため,PCR産物DNAの3’末端には通常,
1個のアデニンが付加されている。この性質を利用して,PCR産物
をクローニングするベクター(チミジンの突出末端をもつ)をTAベク
ターと呼ぶ。
lPCR産物を平滑化して,クローニングする場合もある
05_03.jpg
Real-time PCR (qPCR, Q-PCR)
lリアルタイムPCRは,遺伝子発現の定量し,アレイ技術により検出された遺伝子
発現差異の確認に用いられる。また,臨床サンプルにおける特定DNA配列のコ
ピー数の解析や突然変異やSNP(single nucleotide polymorphisms)のスクリーニ
ングにも利用される。
lリアルタイムPCRでは,蛍光検出可能なサーマルサイクラーにより,特定の核酸
を増幅すると同時にその濃度を測定する。そのため,反応途中で反応液の一部を
取り分ける必要はない。
l一般的には,リアルタイムPCRにおける産物の定量には,二本鎖DNAに結合し
た結合した場合のみで蛍光を発する, SYBR Greenのようなインターカレートする
蛍光色素を用いるか,TaqMan probeのようなラベル化されたオリゴヌクレオチドプ
ローブを用いて,標的DNAとプローブがハイブリした場合のみで蛍光を発する性
質を利用する。
lリアルタイムPCRにおいて高感度を達成するには単一の増幅産物を得る必要が
ある。
l融解温度:PCR反応の最後に増幅産物DNAの融解温度(Tm)を測定することで,
増幅産物が均質であり,特異的産物かどうかを判定できる。プライマーダイマーが
コンタミすると,Tmが低下するので,簡単に区別できる。
lプライマーを設計する場合は,増幅物が100-200bpになるようにし,Tmは5560℃とする。また,アニーリング温度で2次構造を取らないことを確認する。
対立遺伝子特異的PCR:
1塩基の違いしかない対立遺伝子を区別するためのPCR
DNAポリメラーゼが伸長反応を始めるには、プライマーの3’末端が相補対を
形成している必要があることを利用して、プライマーの3’末端の塩基を多型
のある塩基に合わせることで、対立遺伝子特異的検出を可能にする。
RT-PCR:
トータルRNAまたはmRNAを 鋳型として、逆転写酵素(reverse transcriptase )
により合成された1本鎖DNAを用いて、元々のトータルRNAまたはmRNA中
での特定のmRNAの分布 を推定するために行なうPCR
Allele-specific PCR
プライマーに予め変異を導入したPCR
遺伝子の構造解析
塩基配列決定法
DNA塩基配列決定
l以前は,塩基特異的化学修飾により切断する方法(マクサム—ギルバート法)。
現在は,ジデオキシ法(酵素法,サンガー法)が一般的。
lジデオキシ法:ヌクレオチド前駆体(dNTP)に加え,ジデオキシヌクレオチド
(ddNTP)の存在下で,DNA合成を行う。
→ddNTPが,基質としてDNAポリメラーゼに取り込まれた場合,3’位のOH基が欠
けているため,ホスホジエステル結合を形成することが出来ないことから,DNA鎖
の伸長が止まる。
→ddNTP濃度をdNTPに比べ,低くすることでランダムにDNA鎖合成の停止が起
こり,各塩基配列で合成が停止した産物を得ることが可能。
→プライマーまたはddNTPにラベルしていれば,ポリアクリルアミドゲルによって1
塩基毎にサイズ別に反応物生成物を区別できる。
l以前は放射ラベルが利用されたが,近年は蛍光ラベルが一般的。
lABIのシステム(最も汎用されているシークエンスシステム)では,ddNTP側が蛍
光ラベルされ,しかも各塩基によって蛍光色素が異なり,同時に使用・検出できる。
サイクルシークエンス法:1種類のプライマーを使って,耐熱性DNAポリメラーゼを
利用して,二本鎖DNAの変性・プライマーの対形成・DNA合成の3種類の温度の
異なる反応ステップを繰り返す。これにより,二本鎖DNAでも効率よく産物が得ら
れるようになった。
07_01.jpg
07_02.jpg
07_02_2.jpg
07_03.jpg
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