...

「マーケティング3.0」って何ですか。

by user

on
Category: Documents
9

views

Report

Comments

Transcript

「マーケティング3.0」って何ですか。
Ten Minutes Marketing
028
教えて、ミニッツ先生・・・。
部長が、「大震災後の被災地支援を謳った商品販売は、消費者の不安や欲求
に応えた販売手法。『マーケティング3.0』をうまく実践しているね。」と言ってい
ました。そもそも・・・、
「マーケティング3.0
マーケティング3.0」
3.0」 って何ですか。
2010年9月に刊行された(朝日新聞出版)、フィリップ・コトラー氏の「コトラーのマーケティング3.0」の
言葉だね。
長年の間にマーケティングは、1.0→2.0→3.0と三段階の進化を遂げてきたんだ。今日のマーケター
の多くが未だに「マーケティング2.0」を行っており、なかには「マーケティング1.0」を行っているものも
いる。しかし、“最も大きなビジネスチャンスを得られるのは、「マーケティング3.0」を実行しているマー
ケターだと言われているんだ。
「マーケティング1.0」とはどんな意味ですか。
「マーケティング1.0
マーケティング1.0」
1.0」とは、“産業革命期
産業革命期の
革命期の技術進歩によって
技術進歩によって生
によって生みだされた、
みだされた、製品中心の
製品中心のマーケティング”
マーケティング”
のことなんだ。製品はマス市場のために設計され、規格化と規模の拡大によって生産コストをできるかぎり
低くし、価格を下げることで購買者に買ってもらおうとしたんだ。購買者よりも製品の質と価格を追及した
マーケティングの初期段階だね。
では、「マーケティング2.0」とはどんな意味ですか。
「マーケティング2.0
マーケティング2.0」
2.0」とは、“情報技術
情報技術とインターネットの
技術とインターネットの登場
とインターネットの登場で
登場で生まれた消費者志向
まれた消費者志向の
消費者志向のマーケティング”
マーケティング”の
ことなんだ。各社の製品の質と価格の差がなくなり、コモデティ化した市場の中で、消費者はインターネッ
トにより多くの企業の製品・サービスを見比べることができるようになった。その結果、“企業は他社との差
別化を図るため徹底して消費者マインドを探り、ニーズに応える商品・サービスを送り出すことが求められ
る”ようになったんだ。つまり、製品中心
製品中心から
製品中心から、
から、顧客満足を
顧客満足を徹底して
徹底して追求
して追求した
追求した消費者
した消費者中心
消費者中心のアプローチ
中心のアプローチが
のアプローチ
「マーケティング2.0」なんだ。
「マーケティング3.0」はどう違うんですか。
「マーケティング3.0
マーケティング3.0」
3.0」は、“価値主導
価値主導の
主導のマーケティング”
マーケティング”。消費者は選択する商品やサービスに対し、帰納
的・感情的充足だけでなく、精神の充足も求めているんだ。つまり、社会や経済や環境の急激な変化や
混乱にさらされている消費者に対し、企業はそれらの不安に対する解決策と希望を提供することが必要
となる。“「マーケティング2.0」の消費者志向より、より高い次元で消費者を感動させるのが「マーケティン
グ3.0」”なんだ。
「マーケティング3.0
マーケティング3.0」
3.0」は、協働マーケティング
協働マーケティング,
マーケティング,文化マーケティング
文化マーケティング,
マーケティング,スピリチュアルマーケティングの融
スピリチュアルマーケティングの融
合とも言われているんだ。
[文中の“
‐1‐
” の部分は書籍の引用]
Ten Minutes Marketing
028
協働マーケティングについて詳しく教えて下さい。
2000年以降、情報技術は、ニューウェーブの技術と言えるものに発展してきた。“ニューウェーブの技術
は、個人や集団がたがいに繋がったり交流したりすることができる技術であり、3つの大きな要素で構成
されている。安価なコンピューターや携帯電話,低コストのインターネット,そしてオープンソース”の3つ
だ。これらの技術は個人が自己を表現することや他の人と協働することを可能にする。ニューウェーブ
の技術の登場を、サン・マイクロシステムズ会長、スコット・マクニーリーは、人々がニュースや考えや娯
楽を消費するだけでなく、創造もする「
「参加の
参加の時代」
時代」と名づけた。つまり、ニューウェーブの技術は、人々
がコンシューマー(消費者)からプロシューマー(生産消費者)に変わることを可能にするんだね。
さらに、ニューウェーブの技術による変化が、ソーシャルメディアの台頭である。ブログ,ツイッター,フェ
イスブック,ユーチューブは表現型のソーシャルメディア、ウィキペディアや映画批評サイトのロトン・トマ
トなどは、協働型のソーシャルメディアである。これにより、消費者
消費者の
消費者の意見や
意見や経験の
経験の発信力が
発信力が高まり、
まり、他
の消費者に
消費者に影響を
影響を与えることが
えることが容易になった
容易になった。
になった。そのような流
そのような流れの中
れの中、従来の
従来の広告は
広告は以前程の
以前程の効果はな
効果はな
くなり、
くなり、企業は
企業は消費者との
消費者との協働
との協働が
協働が必要不可欠となっている。
必要不可欠
文化マーケティングについて教えて下さい。
現代では、テクノロジーの進歩によりグローバル化が推進し、多くのパラドックス(逆説)が生まれ、世界中
の人に影響を及ぼしているんだ。例えば、民主主義の国が増える中で、中国のような資本主義の国が力
を増している。さらに、経済的には、グローバル化により大国の経済発展が進む中で、途上国は逆に経
済状態が悪化している。また、他国との距離が縮まったことにより、逆にグローバル文化に対抗し、伝統
的文化が強化されているんだ。“個人はローカル市民であると同時にグローバル市民であることの重圧を
感じるようになっている。その結果、多くの人が不安を感じており、対立する価値を同時に抱いている。経
済の混乱期には特に不安が高まる”んだ。
これらの社会文化的
社会文化的パラドックスからくる
社会文化的パラドックスからくる個人
パラドックスからくる個人の
個人の不安や
不安や欲求に
欲求に応えるアプローチが文化
えるアプローチが文化マーケティング
文化マーケティングで
マーケティング
あり、企業は自社の事業に関係のあるコミュニティの問題を理解する必要があるんだ。
[文中の“
【協働マーケティングの事例】
”の部分及び下図は書籍の引用]
【文化マーケティングの事例】
文化ブランドは社会の矛盾が明白に現れている特
定の期間にかぎって意味を持つので、動的である
必要がある。そのため、新たに生まれるパラドックス、
時間とともに変化するパラドックスを常に意識してい
なければならない。
コカ・コーラは1970年代に“I‘d like to Teach the
World to Sing(世界に歌うことを教えたい)”という
曲を使ったCMを生み出した。ベトナム戦争を支持
するか否かでアメリカ社会が分裂していた時代だっ
たので、このCMは当時は意味があった。人々はこ
の文化キャンペーンを決して忘れないだろうが、
1970年代のCMは今日ではもう意味を持たなくなっ
ている。
文化的に意味のあるキャンペーンを生み出すため
には、マーケターは人類学と社会学についてある
程度理解しておかなければならない。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は「コネクト・
アンド・ディベロップ」戦略で知られている。これは
従来のリサーチ・アンド・ディベロップメント(研究開
発)の手法に変わるものだ。
このオープン・イノベーション・プログラムは、世界中
の起業家や供給業者で構成されるP&Gのネット
ワークを生かして、斬新で革新的な製品のアイデア
を提供してもらうことを目指している。P&Gの売り上
げの35%前後が、このプログラムの恩恵を受けてい
る。
コネクト・アンド・ディベロップによって生み出された
有名な製品には、スキンケア製品のオーレイ・リジェ
ネリスト、ほこり取り用品のスウィッファーダスター、
電動歯ブラシのクレスト・スピンブラシなどがある。こ
のプログラムは協働が情報技術以外の産業でも成
果を上げられることを実証している。
‐2‐
Ten Minutes Marketing
028
スピリチュアルマーケティングについて教えて下さい。
企業は
企業は、物質的な
物質的な目的を
目的を越えた自社
えた自社の
自社の自己実現について
自己実現について考
について考える必要
える必要が
必要があると言われているんだ。例え
ある
ば、“わが社はどのような企業であり、なぜ事業を行っているのか、どのような会社になりたいのかを把握
しなければならない。それら全てが企業のミッションやビジョンや価値に埋め込まれていなければならな
い”んだ。企業が人間の幸福にどのように貢献しているかを消費者が認識すれば、利益は自ずとついてく
る。これが企業の視点から見たスピリチュアル・マーケティング、精神に訴えるマーケティングなんだ。
つまり、「
「マーケティング3.0
マーケティング3.0」
マーケティングのやり方が消費者の
消費者の行動変化や
行動変化や態度変容によって
態度変容によって大
3.0」とは、マーケティングのやり方
によって大き
く変えられる段階
えられる段階なんだ
段階なんだ。
なんだ。消費者がより
消費者がより協働的
がより協働的、
協働的、文化的、
文化的、精神的なマーケティング
精神的なマーケティング手法
なマーケティング手法を
手法を求め、より洗練
より洗練
された形
された形の消費者中心の
消費者中心の段階と言えるんだ。
段階
3つの手法のマーケティングを意識して実践することが大事なんですね。
そうなんだ。ただしそれだけではなく、「マーケティング3.0」を、企業を取り巻く様々なステークホルダー(消
費者/社員/チャネル・パートナー/株主)に対し、どのように適用すればよいか考慮する必要もあるんだ。
それぞれのステークホルダーに対するマーケティングを教えて下さい。
まず消費者
消費者に
消費者に対して、
して、企業は
企業は変化というミッションを
変化というミッションを軸
というミッションを軸に感動的なストーリーを
感動的なストーリーを築
なストーリーを築き、ミッションの達成
ミッションの達成に
達成に消
費者を
社員に
費者を参加させる
参加させる必要がある。この時、必ずミッションが先で、金銭的見返りは結果である。そして社員
させる
社員に
対しては、
しては、彼らの生活
らの生活を
生活を変えるとともに、
えるとともに、他の人々の生活を
生活を変える力
える力を与えなければならないんだ。それ
えなければならない
が人材育成に繋がり、生産性や消費者との接点を向上させることになるんだ。次にチャネル
チャネル管理
チャネル管理は
管理は、似
た目的を
目的を持ち、最終的に
最終的に似た価値を
価値を持つようになる適切
つようになる適切なチャネル・パートナーを
適切なチャネル・パートナーを見
なチャネル・パートナーを見つけることから始ま
つける
る。パートナーと統合してブランド・ストーリーに完全性を持たせることが重要なんだ。最後に、経営陣
経営陣は
経営陣は
ミッションや価値
ミッションや価値に
価値に加えビジョンを策定
えビジョンを策定し
策定し、株主に
株主に伝える必要がある。ビジョンは持続可能で長期的な競
える
争優位性を決定づけ、売上増大、ブランド価値向上に繋がることを株主に伝える必要があるんだ。
このように消費者以外のステークホルダーに対するマーケティングも、間接的に消費者に対するマーケ
ティングにつながり、売上やブランド価値の向上になるんだね。
[文中の“
” の部分は書籍の引用]
最近の「マーケティング3.0」の論点
「マーケティング3.0」は、消費者が協働的、文化的、精神的なマーケティング手法を求
め、より洗練された消費者中心の段階だと筆者は言っている。
日本の企業に置き換えると、IT技術の進化・普及により、「協働」の部分で消費者中心
のマーケティングを実践できている企業は多い。しかし、より重要なポイントは「文化的」
と「精神的」なマーケティングの手法だ。
2011年3月11日以降、多くの企業が“節電”や“被災地支援”を謳ったが、どれも一時
的なブーム程度に終わっている。情報過多の現代、購買に明確な理由を持たない不確
実な消費者に対し、一時的な「文化的」「精神的」マーケティングは、筆者が主張してい
る持続可能性にはつながらない。
本当の意味で「マーケティング3.0」を実践するには、CSRに対する継続的な取り組みと、
それ自体に消費者を巻き込み、協働し、ブランド化するという長期的なビジョンが必要に
なる。
‐3‐
Ten Minutes Marketing
028
「コトラーのマーケティング3.0
ソーシャル・メディア時代の新法則」/フィリップ・コトラー、
ヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワン[著]、恩蔵 直人[監訳]、藤井 清美[訳]
<著者紹介>
<目次>
フィリップ・コトラー
(Philip Kotler)
ノースウェスタン大学
ケロッグ・スクール教授。
1931年生まれ。米の経営学者。
シカゴ大学で修士号を、マサ
チューセッツ工科大学で博士
号を取得。
「近代マーケティングの父」とし
て知られ、日本でも数多くの
著書がある。著書『マーケティ
ング・マネジメント』は、世界中
の学生やビジネスパーソンに
幅広く読まれている。
<2011年2月現在>
第1章 マーケティング3.0へようこそ
第2章 マーケティング3.0の将来モデル
第3章 消費者に対するミッションの
マーケティング
第4章 社員に対する価値のマーケ
ティング
第5章 チャネル・パ^トナーに対する
価値のマーケティング
第6章 株主に対するビジョンのマーケ
ティング
第7章 社会文化的変化の創出
第8章 新興市場における起業家の
創造
第9章 環境の持続可能性に対する
取り組み
第10章 まとめ
朝日新聞出版/
2010年9月30日発行/
2,520円[税込]/286頁
<内容紹介>
「消費者志向」はもう古い!マーケティングは「2.0」から「3.0」にバージョンアップした。モノを売り込
むだけの「製品中心」が「1.0」。顧客満足をめざす「消費者志向」が「2.0」。では、「3.0」とは何なのか。
ツイッター、ブログ、ソーシャル・ネットワーキング・サイト、ウィキペディアなどソーシャル・メディア上の
評判が決定的な影響力を持つ時代に、マーケティングは何をめざすべきか。新興国市場やグリーン
市場にはどう取り組むべきか。
“マーケティングの神様”による新時代のマーケティング原論!
=出版社紹介文より抜粋=
こんな本もある
「シェア〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略」 (レイチェル・ボッツマン著 日本出版放送協会)
「ビジネスで一番、大切なこと」
(ヤンミ・ムン著、北川知子翻訳 ダイヤモンド社)
「コトラーのマーケティング講義」
(フィリップ・コトラー著 ダイヤモンド社)
「コトラーのマーケティング・コンセプト」
(フィリップ・コトラー著、大川修二翻訳、恩藏直人著 東洋経済新報社)
「コア・コンピタンス経営」
(ゲイリー・ハメル著、C.K.プラハラード著、一條和生翻訳 日本経済新聞社)
Ten Minutes Marketing
株式会社 マップス
「コトラーのマーケティング3.0
コトラーのマーケティング3.0」
3.0」
‐4‐
〒102-0083 東京都千代田区麹町4丁目3番地 紅谷ビル4F
E-mail:[email protected]
URL:http://www.mapscom.co.jp
TEL:03-5226-0111/FAX:03-5226-0113
Fly UP