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線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標
座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 土屋和由 基礎・教養教育センター 2016 年 12 月 01 日 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標とは? 線形代数学 II では,n 次元空間に対する幾何学的性質を調べる手 段として行列・行列式の理論を援用する. 幾何学的問題を「計算」に帰着させる中心的概念は座標である. 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標とは? 線形代数学 II では,n 次元空間に対する幾何学的性質を調べる手 段として行列・行列式の理論を援用する. 幾何学的問題を「計算」に帰着させる中心的概念は座標である. そもそも「座標」とは何か? より効率的に幾何学的対象を調査するために, 「座標」の概念を一 般化出来ないか? 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標とは? 線形代数学 II では,n 次元空間に対する幾何学的性質を調べる手 段として行列・行列式の理論を援用する. 幾何学的問題を「計算」に帰着させる中心的概念は座標である. そもそも「座標」とは何か? より効率的に幾何学的対象を調査するために, 「座標」の概念を一 般化出来ないか? 本日の目標 座標の概念を一般化し,その計算法及び意義を理解する. 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の捉え方 座標の捉え方 ( ) a1 a= a2 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の捉え方 座標の捉え方 ( ) a1 = a 1 e1 + a 2 e2 . a= a2 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の捉え方 座標の捉え方 ( ) a1 = a1 e1 + a2 e2 . ← 座標は標準基底 e1 , e2 の係数を並べたもの. a= a2 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の捉え方 座標の捉え方 ( ) a1 = a1 e1 + a2 e2 . ← 座標は標準基底 e1 , e2 の係数を並べたもの. a= a2 ⇒ 「標準基底」を一般化出来ないか? 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の捉え方 座標の捉え方 ( ) a1 = a1 e1 + a2 e2 . ← 座標は標準基底 e1 , e2 の係数を並べたもの. a= a2 ⇒ 「標準基底」を一般化出来ないか? 座標の一般化の可能性 V を Rn の部分空間,a1 , . . . , ar を V の基底とする. 今,x ∈ V に対して, x = c1 a1 + · · · + cr ar 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の捉え方 座標の捉え方 ( ) a1 = a1 e1 + a2 e2 . ← 座標は標準基底 e1 , e2 の係数を並べたもの. a= a2 ⇒ 「標準基底」を一般化出来ないか? 座標の一般化の可能性 V を Rn の部分空間,a1 , . . . , ar を V の基底とする. 今,x ∈ V に対して, x = c1 a1 + · · · + cr ar = d1 a1 + · · · + dr ar とする. 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の捉え方 座標の捉え方 ( ) a1 = a1 e1 + a2 e2 . ← 座標は標準基底 e1 , e2 の係数を並べたもの. a= a2 ⇒ 「標準基底」を一般化出来ないか? 座標の一般化の可能性 V を Rn の部分空間,a1 , . . . , ar を V の基底とする. 今,x ∈ V に対して, x = c1 a1 + · · · + cr ar = d1 a1 + · · · + dr ar とする.このとき, (c1 − d1 )a1 + · · · + (cr − dr )ar = 0 である. 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の捉え方 座標の捉え方 ( ) a1 = a1 e1 + a2 e2 . ← 座標は標準基底 e1 , e2 の係数を並べたもの. a= a2 ⇒ 「標準基底」を一般化出来ないか? 座標の一般化の可能性 V を Rn の部分空間,a1 , . . . , ar を V の基底とする. 今,x ∈ V に対して, x = c1 a1 + · · · + cr ar = d1 a1 + · · · + dr ar とする.このとき, (c1 − d1 )a1 + · · · + (cr − dr )ar = 0 である.a1 , . . . , ar は一次独立であるから c1 − d1 = · · · = cr − dr = 0. したがって,c1 = d1 , . . . , cr = dr . 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の一般化 Definition (部分空間の基底に関する座標) V を Rn の部分空間,a1 , . . . , ar を V の基底とする. x∈V x = c1 a1 + · · · + cr ar のとき, に対して, c1 . c = .. を x の基底 a1 , . . . , ar に関する座標と呼ぶ. cr 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の一般化 Definition (部分空間の基底に関する座標) V を Rn の部分空間,a1 , . . . , ar を V の基底とする. x∈V x = c1 a1 + · · · + cr ar のとき, に対して, c1 . c = .. を x の基底 a1 , . . . , ar に関する座標と呼ぶ. cr ( ) ( ) 2 1 例 a1 = , a2 = とおくと, 1 3 2 a1 , a2 は ( R の基底である. ) −4 今,x = とすると, 3 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の一般化 Definition (部分空間の基底に関する座標) V を Rn の部分空間,a1 , . . . , ar を V の基底とする. x∈V x = c1 a1 + · · · + cr ar のとき, に対して, c1 . c = .. を x の基底 a1 , . . . , ar に関する座標と呼ぶ. cr ( ) ( ) 2 1 例 a1 = , a2 = とおくと, 1 3 2 a1 , a2 は ( R の基底である. ) −4 今,x = とすると, 3 x = (−3)a1 + 2a2 より,x の a1 , a2 に関する座標は ( ) −3 . 2 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の一般化 Definition (部分空間の基底に関する座標) V を Rn の部分空間,a1 , . . . , ar を V の基底とする. x∈V x = c1 a1 + · · · + cr ar のとき, に対して, c1 . c = .. を x の基底 a1 , . . . , ar に関する座標と呼ぶ. cr ( ) ( ) 2 1 例 a1 = , a2 = とおくと, 1 3 2 a1 , a2 は ( R の基底である. ) −4 今,x = とすると, 3 x = (−3)a1 + 2a2 より,x の a1 , a2 に関する座標は ( ) −3 . 2 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の例 例 3 1 −1 0 x = 8 ∈ R3 の a1 = 1 , a2 = 0 , a3 = 2 ∈ R3 3 1 2 1 c1 に関する座標を c = c2 とすると, c3 3 1 8 = c1 a1 + c2 a2 + c3 a3 = 1 3 1 −1 0 c1 0 2 c2 2 1 c3 より,座標 c は非同次連立一次方程式 (a1 a2 a3 )c = xの解. 2 よって,x の基底 a1 , a2 , a3 に関する座標は c = −1 である. 3 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の概念を一般化する意義 問 座標の概念を一般化する意義は? 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の概念を一般化する意義 問 座標の概念を一般化する意義は? 線形写像と行列 線形写像 f : Rn → Rm に対して, A = (f (e1 ) . . . f (en )) とおくと,f (x) = Ax, x ∈ Rn . ←「標準基底に関する座標」に対する線形写像 f の行列表現 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の概念を一般化する意義 問 座標の概念を一般化する意義は? 線形写像と行列 線形写像 f : Rn → Rm に対して, A = (f (e1 ) . . . f (en )) とおくと,f (x) = Ax, x ∈ Rn . ←「標準基底に関する座標」に対する線形写像 f の行列表現 線形写像を行列表現することにより,線形写像の幾何学的性質を 行列・行列式に対する計算によって把握出来る. 一般の座標に対しても同様の表現は出来ないか? 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 線形写像に対する表現行列 線形写像に対する表現行列 f : Rn → Rm を線形写像とする. u1 , . . . , un を Rn の基底,v1 , . . . , vm を Rm の基底とする. 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 線形写像に対する表現行列 線形写像に対する表現行列 f : Rn → Rm を線形写像とする. u1 , . . . , un を Rn の基底,v1 , . . . , vm を Rm の基底とする. 任意の x ∈ Rn に対して, c1 .. c = . ∈ Rn を x の u1 , . . . , un に関する座標 cn d1 .. d = . ∈ Rm を f (x) の v1 , . . . , vm に関する座標 dm とするとき, 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 線形写像に対する表現行列 線形写像に対する表現行列 f : Rn → Rm を線形写像とする. u1 , . . . , un を Rn の基底,v1 , . . . , vm を Rm の基底とする. 任意の x ∈ Rn に対して, c1 .. c = . ∈ Rn を x の u1 , . . . , un に関する座標 cn d1 .. d = . ∈ Rm を f (x) の v1 , . . . , vm に関する座標 dm とするとき,d = Ac を満たす (m, n) 行列 A を f の基底 u1 , . . . , un 及び v1 , . . . , vm に関する表現行列と呼ぶ. 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 線形写像に対する表現行列 線形写像に対する表現行列 f : Rn → Rm を線形写像とする. u1 , . . . , un を Rn の基底,v1 , . . . , vm を Rm の基底とする. 任意の x ∈ Rn に対して, c1 .. c = . ∈ Rn を x の u1 , . . . , un に関する座標 cn d1 .. d = . ∈ Rm を f (x) の v1 , . . . , vm に関する座標 dm とするとき,d = Ac を満たす (m, n) 行列 A を f の基底 u1 , . . . , un 及び v1 , . . . , vm に関する表現行列と呼ぶ. A = (f (e1 ) . . . f (en )) は標準基底 e1 , . . . , en ∈ Rn 及び標準基底 e1 , . . . , em ∈ Rm に関する表現行列. 基底の選び方によって,表現行列は異なる. 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の概念を一般化する意義:解答 (( )) ( ) x −3x + y f :R →R :f = . y −4x + 2y (( )) ( ) (( )) ( ) 1 −3 0 1 f (e1 ) = f = , f (e2 ) = f = 0 −4 1 2 ( ) −3 1 より,f の e1 , e2 に関する表現行列は A = . −4 2 ( ) ( ) ( 1 1 −2 f の a1 = , a2 = に関する表現行列は B = 1 4 0 n 例 1 2 m 土屋和由 ) 0 . 1 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の概念を一般化する意義:解答 (( )) ( ) x −3x + y f :R →R :f = . y −4x + 2y (( )) ( ) (( )) ( ) 1 −3 0 1 f (e1 ) = f = , f (e2 ) = f = 0 −4 1 2 ( ) −3 1 より,f の e1 , e2 に関する表現行列は A = . −4 2 ( ) ( ) ( 1 1 −2 f の a1 = , a2 = に関する表現行列は B = 1 4 0 n 例 1 2 m ) 0 . 1 行列 B は行列 A と比較して簡単な形をしている! 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の概念を一般化する意義:解答 (( )) ( ) x −3x + y f :R →R :f = . y −4x + 2y (( )) ( ) (( )) ( ) 1 −3 0 1 f (e1 ) = f = , f (e2 ) = f = 0 −4 1 2 ( ) −3 1 より,f の e1 , e2 に関する表現行列は A = . −4 2 ( ) ( ) ( 1 1 −2 f の a1 = , a2 = に関する表現行列は B = 1 4 0 n 例 1 2 m ) 0 . 1 行列 B は行列 A と比較して簡単な形をしている! 座標の概念を一般化する意義 線形写像 f : Rn → Rm に対して,基底を「上手に」選ぶことによって,f の表 現行列として,より簡単な形のものが与えられる. 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の概念を一般化する意義:解答 (( )) ( ) x −3x + y f :R →R :f = . y −4x + 2y (( )) ( ) (( )) ( ) 1 −3 0 1 f (e1 ) = f = , f (e2 ) = f = 0 −4 1 2 ( ) −3 1 より,f の e1 , e2 に関する表現行列は A = . −4 2 ( ) ( ) ( 1 1 −2 f の a1 = , a2 = に関する表現行列は B = 1 4 0 n 例 1 2 m ) 0 . 1 行列 B は行列 A と比較して簡単な形をしている! 座標の概念を一般化する意義 線形写像 f : Rn → Rm に対して,基底を「上手に」選ぶことによって,f の表 現行列として,より簡単な形のものが与えられる. ⇒ 基底の選び方は? 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標 座標の一般化 座標の概念を一般化する意義 座標の概念を一般化する意義:解答 (( )) ( ) x −3x + y f :R →R :f = . y −4x + 2y (( )) ( ) (( )) ( ) 1 −3 0 1 f (e1 ) = f = , f (e2 ) = f = 0 −4 1 2 ( ) −3 1 より,f の e1 , e2 に関する表現行列は A = . −4 2 ( ) ( ) ( 1 1 −2 f の a1 = , a2 = に関する表現行列は B = 1 4 0 n 例 1 2 m ) 0 . 1 行列 B は行列 A と比較して簡単な形をしている! 座標の概念を一般化する意義 線形写像 f : Rn → Rm に対して,基底を「上手に」選ぶことによって,f の表 現行列として,より簡単な形のものが与えられる. ⇒ 基底の選び方は? ← 対角化 土屋和由 線形代数学 II - b 10. 部分空間の基底と座標