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序
2001年11月 に 原 薬GMPガ イ ド ラ イ ン
( 厚 生 労 働 省 通 知 医 薬 発 第1200号, 原 文:ICH Q7 Good
Manufacturing Practice Guide for Active Pharmaceutical Ingredients, 2000年11月)
が発表されて13年が
経った。その内容に変化はない。しかし,原薬GMPを取り巻く環境は大きく変化している。例えば,
①PIC/S GMPが日本に取り入れられた
(2013年)
②ICH Qトリオガイドライン:Q8
(製剤開発)
,Q9
(品質リスクマネジメント)
,Q10
(医薬品品質システム)
が日本に定着した
(∼ 2013年)
③ICH Q11ガイドライン
(原薬の開発と製造)
が発表された
(2012年5月, Step 4)
④EU GMPガイドラインの改訂が続いている
(2011年以降次々に)
⑤米国FDAの新プロセスバリデーションガイダンスが有効になった
(2011年)
⑥日本の治験薬GMP通知が新たになった
(2008年)
⑦第16改正日本薬局方が制定された
(2011年)
等である。原薬GMPは単独で存在しているのではなく,製剤GMPとも規制当局への提出文書とも関係し
ている。周囲の変化の影響を受けて原薬GMPの考え方は変わってくる。
この度,第4版を発行するにあたり全章を見直し,多くの改訂を加えた。例えば,
第1章 PIC/S GMPの説明を加え,GMPの歴史を全面的に書き換えた
第2章 製造部門の長の仕事を,EU GMPを参考にして書き換えた
第4章 新たに「原薬製造の特徴」をわかりやすく解説した
第7章 バリデーションの内容が変化している。日本のバリデーション基準および米国FDAの
プロセスバリデーションガイダンスを参考にして内容を一新した
第9章 記録のトレンド分析の解説を追加した
第11章 「文書は手書きで作成しない」
,
「文書のセキュリティが重要」を追加した
第12章 日米EUの「承認後の原薬変更申請」を比較した
第13章 逸脱の定義案を記載した
第14章 供給業者監査の新たな流れを紹介した
第15章 EUガイドラインの「委受託製造」を紹介した
第16章 ICH Q11ガイドラインを紹介した
第17章 試験機器の管理および試験に必要な一般知識を追加した
第18章 retest dateの解釈の変化を解説した
第22章 米国DMFの国別登録件数の変化を解説した
第23章 治験原薬の解説を一新した
なお,旧版にあったGMPとコンピュータ,細胞培養・発酵GMP,教育訓練の章は省略した。これらは
この10年間で大きく前進した。本書の1章として解説するには内容が豊富すぎる。それぞれの専門ガイド
ラインまたは専門書に解説をゆだねたい。
また,本書は化学合成原薬用のGMPを対象にしている。バイオテクノロジー原薬用のGMPの解説は他
書に譲る。
本書末にQ7ガイドラインの英語原文とその日本語訳を添付している。添付のQ7日本語訳は,厚生労働
省発表の翻訳文をベースにして,筆者の考えで修正を加えた箇所を含んでいる。修正箇所には下線を施し
てある。疑義を感じた場合には英語原文を参照願いたい。
本書によって日本における原薬GMPの概念作りが発展し,日本の原薬GMPが世界をリードすることを
願っています。
2014年5月
筆者
第1章 GMPとは
1. 1
医薬品は法令を遵守して製造する
<医薬品製造に係わる法令等>
医薬品は法令を遵守して
製造する
日本国内で医薬品を製造し,日本国内でその医薬品
を販売するときには,日本の法令等を遵守しなければ
ならない。その法令等は数多い
(図解1.1)
。法律
(薬事
法,今後は医薬品医療機器等法)
→政令
(施行令)
→厚
薬事法(法律)
生労働省令
(施行規則)
→行政通達
(通知等)
の順で細か
薬事法施行令(政令)
く規定されている。薬事法,政令,厚生労働省令には
薬事法施行規則(省令)
従わなければならない。厚生労働省から出される通知,
薬局等構造設備規則(省令)
GMP省令(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質
管理の基準に関する省令,省令179号)
GQP省令(医薬品,医薬部外品,化粧品及び医療機器
の品質管理の基準に関する省令,省令136号)
GVP省令(医薬品,医薬部外品,化粧品及び医療機器
の製造販売後安全管理の基準に関する省令,省令135号)
原薬GMPガイドライン(医薬発第1200号厚生労働省医薬局長
通知,H13・11)・・・ICH Q7
薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法
律の施行に伴う医薬品,医療機器等の製造管理及び品質管理
(GMP/QMS)に係る省令及び告示の制定及び改廃について(薬食
監麻発第0330001号 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対
策課長通知,H17・3・30)
・・・GMP・薬局等構造設備規則等に関わる課長通知,施行通知
通達,事務連絡等は図解1.1に記載したもの以外にも
多数ある。通知等は命令ではないので従わねばならな
いものではない。しかし,実行しなかったり,代替案
を持たなかったり,無視したりはできない。さらに,
消防法,高圧ガス保安法,化審法等の製造や製造施設
に係る法令も数多い。医薬品製造に関わるすべての法
令および通知類等に精通するには多大の労力が必要で
ある。以上のように,医薬品の製造は法令等でがんじ
がらめといえる。
なお,薬事法の名称が2014年秋から医薬品医療機器
等法
(略称)
に変わることが平成25年法律第84号「薬事
法等の一部を改正する法律
(公布日:平成25年11月27
日)
」で定められている。
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する
省令の取扱について(薬食監麻発第0830第1号 厚生労働省医薬
食品局監視指導・麻薬対策課長通知,H25・8・30)
薬事法施行規則に関する通知(薬食発第0709004号,H16・7)
医薬品,医薬部外品,化粧品及び医療機器の品質管理の基準に
関する省令の施行について(薬食発第0922001号,厚生労働省医
薬局長通知,H16・9・22)・・・GQP省令通知
医薬品等適正広告基準について(医薬発第0328009号等)
原薬GMPのガイドラインに関するQ&Aについて(厚生労働省医薬
食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡,H13・11・2)
PIC/SのGMPガイドラインを活用する際の考え方について(厚生
労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課事務連絡,H24・2・1)等
その他:消防法,高圧ガス保安法,計量法,
毒物及び劇物取締法,アルコール事業法,
化審法,環境基本法,水道法 等
「薬事法」の名称が2014年(平成26年)に「医薬品,医療機器等
の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品医
療機器等法)」に変わる
図解 1.1
1
関係するすべての法令等の親玉といえる薬事法に医
薬品製造がどのように規定されているかを見てみよう
薬事法,
今後は医薬医療品機器等法
(図解1.2)
。薬事法は医薬品,医薬部外品,化粧品お
よび医療機器に関する規則を定めた法律である。11章
と附則からなっている。全部で91条,A4紙に印刷す
ると40ページ余りの法律である。
医薬品製造販売および製造に関しては第四章の第
十二条,第十三条および第十四条に次のように規定さ
れている
(簡略化して紹介する。詳しくは原文を参照
されたい)
。
<第十二条
(医薬品製造販売業の許可)
>
製造販売業許可を受けた者でなければ医薬品の製造
販売をしてはならない。
<第十二条の二
(医薬品製造販売業許可の基準)
>
300
100
図解 1.2
医薬品の品質管理の方法がGQP省令に適合しない
とき,及び製造販売後安全管理の方法がGVP省令に
適合しないときは製造販売業許可を与えない。
<第十三条
(医薬品製造業の許可)
>
製造業許可を受けた者でなければ医薬品の製造をし
てはならない。
製造業許可は,厚生労働大臣が製造所ごとに与える。
製造所の構造設備が薬局等構造設備規則
(省令)
で定
める基準に適合しないとき,申請者
(業務担当役員を
含む)
が禁固以上の刑に処せられたとき等に該当した
場合は医薬品製造の許可を与えない。
<第十四条2の四
(医薬品等の製造販売の承認)
>
申請に係る医薬品等が政令で定めるものであるとき
は,その製造所における製造管理又は品質管理の方法
がGMP省令で定める基準に適合しないときは製造販
売の承認を与えない。
そして第十一章第八十四条および八十五条に,製造
販売業違反を犯した場合は3年以下の懲役又は300万
円以下の罰金,製造業違反を犯した場合は1年以下の
懲役又は100万円以下の罰金と規定されている。
原薬
(薬事法第二条で医薬品と定義されている)
を製
造するには,厚生労働大臣から製造業許可を得て,薬
局等構造設備規則およびGMP省令を遵守しなければ
ならないのである。
2
第4章 製造のGMP−3(原薬製造の特徴,製造管理,作業,記録書)
4. 1 原薬製造の特徴
医薬品製造全体における原薬製造の位置づけを確認
原薬製造の位置づけとGMP
しておこう
(図解4.1)
。図解1.3
(原薬は医薬品である)
で示した「医薬品製剤と原薬の関係」も参考にして原
薬製造の位置を理解してほしい。
原薬の製造は,
「出発物質」と称される化合物を製
造工程に投入される時点でスタートする。その出発物
質は一般的に「化学品」と総称される化合物から製造
される。出発物質は化学構造を変化させつつ,重要中
間体,粗原薬と呼び名を変えて最後に原薬となる。
原薬は,医薬品添加剤および包装材料とともに製剤
の原料に使用される。製剤は包装・表示されて市場に
出荷され,医薬品として患者に使用される。
図解4.1のベージュ色の部分
(出発物質から原薬出荷
まで)
が「原薬製造」である。なお,図解4.1は,現在
図解 4.1
の原薬製造の主流である化学合成原薬について図解し
ている。現在の原薬開発の主流で,今後の原薬製造の
主流になるであろうバイオテクノロジー原薬には別の
図が描ける。本書は化学合成原薬について解説してい
るので,生物学的原薬については省略する。
原薬製造は原薬GMPを遵守して実施する。製造全
般を同じGMPレベルで実施する必要はない。出発物
質を投入する段階からGMPレベルを徐々に向上させ,
粗原薬が原薬になる段階から最高レベルの原薬GMP
を適用して作業を行う。製剤製造は一貫して同じレ
ベルの製剤GMPを遵守して行う。最高レベルの原薬
GMPは,その原薬を使用して製造する製剤のGMPレ
ベルと同じであると表現できる。
41
図解3.12
(原薬と製剤の製造比較)
を書き直して,原
原薬製造の特徴
薬製造の特徴を図解4.2に示した。その特異性ゆえに,
原薬製造に特有の作業,工程,用語が存在する。
(1)
化学反応
多段からなる化学反応で原薬を製造する。各段の化
学反応も単一反応ではなく副反応が必ず伴う。化学反
応の各段階で不純物が発生するので,原薬製造には不
純物プロファイルが必須である。
原薬製造には出発物質,試薬,助剤,製造用水等の
原材料を使用する。
原薬の品質に重大な影響を及ぼす工程を重要工程と
呼び,他の工程と異なるGMPレベルで製造を行う。
原薬製造では特有の用語を数多く使用する
(2)
有機溶剤を使用し,高温で反応を行う
原薬製造では,トルエン,メタノール,アセトン等
の有機溶剤を大量に使用し,時には200℃以上の高温
で反応させる。原薬製造作業は煩雑で,3K
(きつい
(Kitsui)
,汚い(Kitanai)
,危険(Kiken)
)
の労働環境
となりやすい。それらが原因となって,原薬製造では
汚染防止が重要な課題となる。
図解 4.2
(3)
精製工程がある
原薬製造には不純物を取り除く精製工程が必ず存在
する。精製工程を経て粗原薬が原薬となる。精製工程
以降は最高レベルの原薬GMPを適用して作業を行う。
(4)
原薬は安定化操作をしない
製剤製造では多種類の医薬品添加剤を使用して「安
定化」が行われている。しかし原薬は常に「生」であ
る。原薬は製剤より不安定であり,原薬管理はその原
薬に適した方法で管理しなければならない。
安定化操作をしていない
(混ぜ物がない)
ので,品質
不合格となった原薬を再加工や再処理で再生すること
ができる。
原薬は安定化操作がなされていないので品質劣化が
発生しやすい。ゆえにリテストの実施やリテスト期限
の設定が必要になる。
原薬製造では,製剤製造や化学品製造では使用しな
い用語を数多く使用する。原薬になじみのない皆様に
は不可解な用語が多いと思う。本書の他章で解説して
いるので意味を理解してほしい。
42
第7章 バリデーション
7. 1 バリデーションとは
1996年にバリデーションが日本の原薬製造の法令要
バリデーション
: 確認,正当性保証
件となった。でも「バリデーション」は,私たちには
なじみにくく,わかりにくい単語である。Validation
の日本語訳は「確認」とか「正当性保証」であるが,
日本語に訳すとますます意味がわからなくなってくる
(図解7.1)
。
「業界から発出されている手順を実行すれ
ばバリデートされる」と自分に言い聞かせている人も
多いのではないだろうか。
バリデーションとは工程,方法,作業の恒常性を証
明することで,
「多くの基礎検討を行ってプロトコー
ルを作成し,プロトコールを実行し,結果をすべて文
書化し,みんなで文書の内容を確認して承認する」こ
とである。バリデートされると,
「常に同じ工程や方
法や作業が実施でき,
同じ結果を与える」
と言い切れる。
いったんバリデートされたからといって,その後も
ずっと「同じ結果を与える」といえるわけではない。
定期的な工程,方法,作業の検証が必要である。品質
に影響する変更を行うときは,変更を行う前に再バリ
デーションが必要である。
バリデーションには多くの種類がある。プロセスバ
リデーション,分析法バリデーション,コンピュータ
バリデーションはよく聞くバリデーションだが,そ
の他に包装のバリデーション,輸送のバリデーション,
無菌バリデーション等がある。
プロセスがバリデートされると,そのプロセスには
自信が持てる。少々の変動があっても,その変動がバ
リデートされた範囲内なら何の危惧も抱かない。予定
通りの製品ができると言い切れる。
他者も,バリデーション報告書を見て納得すると,
図解 7.1
そのプロセスを信頼してくれる。
以上のようにバリデーションは工程,方法,作業に
とって絶対的な存在である。このバリデーションが近
年
(2010年以降)
変わりだしている。Q10
( 医薬品品質
システム)
ガイドラインとの調和が底辺にある。2011
年の米国の「プロセスバリデーションガイダンス」の
改訂,2013年の日本の「バリデーション基準」の改訂,
EU GMPの変更の動き等となって表れている。本章で
はこれらの変化も取り入れて解説を加える。
79
バリデーションには「ルール」がある。筆者の考え
バリデーションルール
るバリデーションルールを図解7.2に示した。宣言す
る,責任体制を示す,プロトコールを作成して実行す
る,プロトコール通りにできたことを示す,文書で示
す,の5点である。これらの5ルールをすべて実行で
きたということがバリデートされたことを意味し,そ
の工程,方法,作業が信頼できると言い切れる。
これらの5点は,Q7ガイドライン,日本のバリデー
ション基準,PIC/S GMPガイド,米国FDAガイダン
ス等のすべてのガイドラインに書かれている。しかし,
これらがルールであると認識されていない。この「認
識されていない」ことがバリデーションの理解を難し
くしていると思う。
なお,
「宣言する」に意義を見出すのは欧米の文化
だと思う。不言実行を尊ぶ日本人には理解できない
ルールである。
「プロトコール」もぜひ認識が必要な用語で
また,
ある。
「文書通りに実行する」文書で,変更して実施
することが許されない。日本のバリデーション基準で
は「実施計画書」が使用されているが,planの計画書
ではない。planなら,目的を達成するために初期の予
定を変更できるが,protocolでは変更できないのが原
図解 7.2
則である。protocolをplanと同じ計画書だと思ってい
るとバリデーションを理解することはできない。プロ
トコールは適格性評価や安定性試験でも使用する文書
原薬の輸送バリデーション
である。プロトコールに関しては図解2.1の解説およ
び図解11.4でも触れている。参考にされたい。
バリデーションの簡単な例として,原薬の輸送バリ
デーションの概略および一般的な輸送方法決定との比
較を図解7.3に示した。
原薬は保管環境の影響を受けるので,輸送時の品質
劣化がない輸送方法を選択しなければならない。自社
の輸送手段を利用するときは必要ないが,他者の輸送
手段を利用したり海外に輸送したりするときは輸送バ
リデーションが必要である。
輸送ルートの設定から結果まとめまで,図解7.2の
バリデーションルールを遵守して輸送バリデーション
時に行うことは多い。一般的な輸送方法決定と比べる
と数倍の作業が必要である。
輸送バリデーションを行うと,輸送ルートおよび輸
送手順が明確で,かつ選択または設定の妥当性が示さ
れており第3者も認めることができる。
決定した手法を3回実施して輸送方法の信頼性を確
認しているので,商業生産開始後も安心して輸送が行
えると言い切れる。
試験輸送結果および結果への見解が文書で示され,
かつ文書の照査,承認が責任ある体制で行われている。
結論として,この輸送方法は非常に信頼性が高い。
図解 7.3
80
第23章 治験原薬,治験原薬GMP
治験原薬は
<市販製剤用原薬とは別世界のもの>
23. 1 治験原薬とは
治験原薬は市販製剤用原薬とは別世界のものである
(図解23.1)
。第1に,治験原薬はいまだ法的に認めら
れていないのである。販売承認審査前または審査中の
化合物である。有効性,安全性,品質の面で市販製剤
用原薬と位置づけが異なる。
治験原薬の有効性および安全性は評価中である。開
発の初期の段階なら安全性等のデータがまったくない
かもしれない。品質についても確立される途中である。
製造販売承認された製剤用の原薬の製造は,化合物の
安全性および品質が「認められている」または「調査
されている」ので製造に打ち込めるが,治験原薬の研
究および製造では研究者および製造担当者の安全面に
も気を付けねばならない。
治験には段階がある。フェーズ1∼4の間に5段階
がある。フェーズ1∼3が製造販売承認申請前の一般
的な臨床試験である。
治験原薬は医薬品ではない。米国のように治験薬を
医薬品とし,市販薬と同等の扱いをすると規定してい
図解 23.1
る国もある。しかし,同等の取扱いをするというだけ
で,規制当局によっていまだ承認されていない。
治験薬の取扱いは国によって異なる。各国のガイド
治験薬,治験原薬の法的位置づけ
ラインの内容も異なる。世界統一の動きも乏しい。
治験原薬および治験製剤の法的位置づけを日米EU
で比較しよう。
日本の場合を図解23.2にまとめた。日本では治験薬
と市販薬が区別されている。治験薬は法的には医薬品
ではない。ゆえに,医薬品GMPとは別枠の規制がな
されている。
治験薬は,医薬品の臨床試験の実施の基準に関する
省令[GCP省令]および治験薬の製造管理,品質管理
等に関する基準
(治験薬GMP通知)
[薬食発第0709002
日本の治験原薬製造に関する法令,通知
号,平成20年7月9日]に従って製造等を行う。
治験実施計画書および治験薬概要書が必要である。
治験申請書は必要ない。治験薬の品質,有効性,安全
性に関する情報を治験薬概要書の中に記載するが,治
験原薬の扱いは原料である。GCP省令および治験薬
GMP通知の中に治験原薬または原薬という単語はない。
治験原薬を製造するのに製造業許可は必要ない。も
ちろん規制当局の定期査察もない。
治験原薬の具体的な取扱いにはQ7ガイドライン第
19章を参照する。そして,ICH Q9
(品質リスクマネジ
図解 23.2
メント)
および Q10
(医薬品品質システム)
ガイドライ
ンの活用は有意義であるとしている。
301
米国における治験原薬および治験製剤の法的位置づ
けを図解23.3にまとめた。米国では治験薬も市販薬も
治験薬,治験原薬の法的位置づけ
医薬品である。FDC法で治験薬を市販医薬品と同じ
法的位置づけであると定義をし,CFR
(米国連邦行政
命令集)
に治験薬の章を設けて遵守すべき内容を詳し
く規定している。ただしこのCFRは治験薬申請に係
わるものであり,治験原薬製造関連のCFRは見られ
ない。製造はガイダンスに従って行う。
治験薬申請
(IND, Investigational New Drug Application)
が必須である。
「Form 1571」という治験薬申
請書書式も定められている。
市販製剤用原薬および市販製剤には製造所登録が必
要であるが,治験薬の製造には製造所登録は必要ない。
米国の治験原薬製造に関する法令,通知
規制当局による定期査察もない。
フェーズ1段階の治験薬製造には法令CGMPの適用
が免除されており,フェーズ1用ガイダンスおよび
Q7ガイドラインに従って治験原薬を製造し,その情
報をFDAに知らせる。
フェーズ2以降の治験原薬,治験製剤に対しては
基本的に法令CGMP
(21 CFR 210 & 211)
が適用され
る。CFRおよびフェーズ2&3用ガイダンスの治験
原薬用の記載に従って治験原薬を製造し,その情報を
FDAに知らせる。Q7ガイドラインも参照する。
図解 23.3
米国では治験原薬のDMF登録ができる。治験の段
階がフェーズ1,
2,
3と進むとともに治験薬申請者に
治験原薬の開発進展状況を報告し,かつDMF登録を
治験薬,治験原薬の法的位置づけ
更新しなければならない。
EUにおける治験原薬および治験製剤の法的位置づ
けを図解23.4にまとめた。EUでは治験製剤も市販製
剤も医薬品である。
日 本 の 省 令 に 相 当 す るDirectiveのDirective
2001/20/EC
(EUのGCP法令)
に臨床試験について規定
し,Directive 2003/94/EC
(EUのGMP法令)に「治験
薬はヒト用医薬品GMPを遵守して製造する」と規定
している。EU GMP全般を治験薬の開発段階に応じて
EUの治験原薬製造に関する法令,通知
柔軟に適用する。このとき,原薬は製剤製造の原料と
いう位置づけである。
治験薬申請
(Investigational Medicinal Products
Application)
が必要である。
治験薬の製造はEU GMPガイドラインのAnnex 13
に従って製造する。このとき,原薬は製剤製造の原料
という位置づけである。Annex 13は治験製剤のガイ
ドであり,治験原薬の取扱いについての記載があって
も製造に関する記載はない。治験原薬はQ7ガイドラ
イン第19章に従って製造する。
以上のように,治験薬および治験原薬に関する規定
図解 23.4
302
が日米欧で微妙に異なる。それぞれ特徴があり,1つ
のガイドラインを忠実に遵守すると,他国のガイド
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