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消費動機から考えるまちづくり

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消費動機から考えるまちづくり
消費動機から考えるまちづくり
(財)民間都市開発推進機構 民間支援総括部長
藺牟田 典秀
はじめに
1.3K4コウビジネスの時代
3K というキーワードを覚えておられるであろ
普通は経 済を「生産」から考える。例えばテ
うか。「きつい」「きたない」「きけん」の頭 文 字
レビが今 年 日 本 で100万 台 売 れたとしよう。
を取 って3K。昔 、厳 しい労 働 の職 種 を総 称
来年は200万台売れるかもしれない。限界は
したものである。今、新3K のキーワードがある
1世 帯 1台 で日 本 中 の世 帯 数 が3000万 世
らしい。(社 )ソフト化 経 済 センター(2004年
帯 だったら3000万 台 で終 わりとなる。これは
度 末 活 動 停 止 )の2003年 度 3K4コウビジネ
テレビを「機 械 」として見 た考 え方 である。し
ス研 究 会 で 誕 生 し た。 新 3 K と は 、 「 かわ い
かしこれを「消 費 動 機 」から見 るとテレビをつ
い」「かっこいい」「気持ちいい」の頭文字であ
けて何 を見 たいのかということになる。お父 さ
る。この新3K のキーワードの切り口で産業を
んはビールを飲 みながらプロ野 球 かサッカー
みて行こうというものだ。
観 戦 。お母 さんは韓 流 ドラマを観 て涙 する。
この新3K はすなわち消費者、生活者の消
子 供たちはアニメに夢 中になる。このようにな
費 動 機 のキーワードである。「かわいい」は直
ると1世 帯 1台 では足 りなくなる。また日 本 は
接 的 にはキャラクタービジネス。サンリオのハ
最近マンションが増えている。あこがれのマン
ローキティグッズ、まんが、アニメ、各 種 フィギ
ション入 居 したものの窓 は南 側 だけであとは
ア等 がある。まんがやアニメは今 や世 界 に通
壁 だらけ。そこでテレビは「窓 」になる。「窓 」
用 する一 大 産 業 である。日 本 文 化 の輸 出 と
であれば1部 屋 毎 にあってもいい。「情 報 端
言 って良 い。「かわいい」はソフトだけではな
末」ならば個人に1台だが、「窓」なら1部屋に
い。車 では、コンパクトカーと呼 ばれる車 種が
2つあっても良 い。従 ってテレビは「窓 」のよう
人気だ。ホンダの「フィット」、日産の「マーチ」、
に大 きくなっていき、いくらでも売 れる。3000
トヨタの「ビッツ」等 。色 も内 装 も豊 富 で「かわ
万 台 が壁 ということはない。これが消 費 動 機
いい」と同 時 に「気 持 ちいい」のかもしれな
から考えた経済である。
い。
消 費 動 機 はどんどん変 化 する。色 々な消
また警 察 も税 務 署 も、「近 代 化 」とか「愛 さ
費 動 機 が流 行 で出 たり消 えたりする。それに
れる警 察 」を掲 げているが結 局 「かわいい」を
応 じてビジネスも変 化 したり、ニュービジネス
目指しているのである。官庁も「かわいい」「か
が誕生したりするのである。
っこいい」「気 持 ちいい」を目 指 している。官
本稿は、消費動機およびその変化を考え、
庁は日本最大のサービス産業であり、そのサ
それが「まちづくり」にどのような影 響 をもたら
ービスによって日本は本当に素晴らしい国だ、
すのかを考察してみようとするものである。
こんな国 は他 にはないと気 づく。東 京 の警 察
官 は、平 均 年 齢 40歳 以 上 で、ガードマンの
にご存知のパック入りの「さとうのごはん」を販
白 髪 の女 性 が「ここを通 っては行 けません」と
売している。常温 で約半 年程 持ち、電子 レン
言 うと、日 本 人 はちゃんとその指 示 に従 う。こ
ジで2分 過 熱 すれば炊 き立 てご 飯 負 けない
んな知 的 な国 民 は世 界 中 何 処 を探 してもな
ご飯になる。日本に於 ける米の消 費量 は
い。
年 々減 少 しているが、同 社 のパックご飯 は売
さて「かっこいい」は、ファッションばかりでは
上を伸ばしている。確かに米の消費は減って
ない。ライフスタイルもかっこよさを追 い求 め
いるが、それは米を買わなくなったのであって、
ている。かっこよさも様々である。IT 長者に生
ご飯 になっていれば食 べるということである。
き方 をかっこいいと思 う人 もいれば、「電 車
しかも2分で出来れば非 常に便利 でしかも無
男 」のようなオタクが女 性 に一 途 に尽 くし、そ
駄 が出 ない。同 社 は切 り餅 が季 節 商 品 で何
の思 いを成 就 する姿 に感 動 したりする。また
とか一 年 を通 じて売 上 のある商 品 として開 発
オタクが脚 光 を浴 びているが、以 前 は暗 くて
したものである。画 期 的 なのは冷 凍 、冷 蔵 保
かっこ悪 い存 在 だったが、今 やオタク市 場 規
存しなくて良いことである。同社は、お正月の
模 は1000億 円 を超 えており、産 業 界 からも
餅はだんだん豊になれば各家で搗かなくなり、
「かっこいい」存 在 になっている。女 性 につい
また一 軒 当 たりの消 費 も減 ると判 断 し、開 発
ても以 前 は独 身 で総 合 職 のバリバリのキャリ
した商 品 である。またご飯 も将 来 家 で炊 かな
アウーマンがかっこよかったが、一 方 でキャリ
くなると判断し開発したのである。家事も楽に
アウーマンでも30歳過ぎて独身、子供なしは
気 持 ちよくしようとする消 費 者 のニーズにフィ
負 け犬 と呼 ばれたりする。よく聞 いてみるとそ
ットしたと言える。
れもかっこいい生 き方 なのである。そのような
新3K のキーワードの切り口から、すなわち
ライフスタイルに合 わせたビジネスがある。所
消 費 動 機 からビジネスを考 えると経 済 が見 え
謂 「お一 人 様 」サービスがそのひとつである。
てくる。しかし未 来 永 劫 「かわいい」「かっこい
バリバリ働 く女 性 も疲 れる。同 僚 と居 酒 屋 で
い」「気 持 ちいい」という消 費 動 機 が続 く訳 で
一 杯 やるのは面 倒 だし、余 計 にストレスが溜
はない。消 費 動 機 は変 化 する。色 々な消 費
まる。そんな時 そっと一 人 で飲 みたくなる。そ
動 機 が流 行 し、出 たり消 えたりする。常 に消
のような人 の為 に「お一 人 様 」歓 迎 の居 酒 屋
費動機の変化を考えなければならない。それ
が多 くなった。今 や「お一 人 様」ビジネスは常
で同じように同研究会が考えたのが、「健康」
識になりつつある。
「社交」「学校」「信仰」のキーワードである。こ
「気 持 ちいい」は直 接 的 なビジネスとしては、
マッサージ、温泉、旅行、飲食、消臭等たくさ
れを4コウと称している。
消 費 動 機 の変 化 に応 じてキーワードを作 り、
んある。また面倒な家事を時間短縮、作業の
世 の中 の動 きをみると経 済 が見 えてくる。技
簡 素 化 により主 婦 が気 持 ちよくなるのもある
術 進 歩 が経 済 を引 っ張 るのではなく、消 費
だろう。それが電 磁 調 理 器 であり、電 子 レン
動 機 が技 術 進 歩 を促 し、経 済 を発 展 させる
ジであり、全自動洗濯機であったりする。
のである。音 楽 を歩 きながら聴 きたいことから
新 潟 市 に「さとうの切 り餅 」でお馴 染 みの佐
ソニーのウォークマンが生 まれ、ソフト記 憶 媒
藤 食 品 工 業 ㈱がある。同 社 では切 り餅 の他
体 もアナログからデジタルになったことから
CD から MD へ、さらに IPOD へ商品が進化
と感じたいのではないだろうか。
する。また電 話 器 を持 ち歩 きたいという消 費
地 方 で 生 活 して い る 人 は、 基 本 的 に は 裕
動 機 がまず固 定 電 話 をコードレスにし、外 に
福である。給与水準は東京に比べて低い。し
持ち出す携帯電話や PHS にした。さらに携
かし給与等のフローは少ないが、ストックは大
帯電話にレンズを付けてカメラにしてしまった。
きい。 ストッ ク が ない人 が 高 い給 与 を 求 めて
携 帯 電 話 は最 新 技 術が手の平 サイズに詰ま
東 京 で出 てくるのである。また精 神 的 にも裕
っている。三 大 デバイスと呼 ばれる液 晶 、半
福 である。以 前 新 潟 市 在 住 の会 社 の部 長 に
導体、水晶振動子(クウォーツ)である。
「休 日 は何 をしているのですか」と聞 いたこと
消費動機は、新商品を生み出し、それに伴
があ る。 そ の 部 長 は「 朝 7 時 頃 起 きて朝 食 。
なって技 術 革 新 があり、産 業 を発 展 させるの
天 気 が良 ければ友 人 とゴルフをする。ゴルフ
である。
場 は車 で3 0 分 以 内 に たくさ んあ る 。 昼 過 ぎ
家 に帰 って昼 食 を取 り、午 後 3時 から5時 位
2.まちづくりのキーワード
まで家 内 とテニスをする。更 に夕 食 後 夜 は船
消 費 動 機 は新 商 品 を生 み出 すだけだろう
に乗 って釣 りをする。休 日 はすることが沢 山
か。「まち」の発展、衰退にも多大な影響を及
あって大変だ」と言っていた。なんと「かっこい
ぼしているのではないだろうか。今 、地 方 都
い」生 活 だろうか。このような「かっこいい」裕
市 の中 心 市 街 地 の活 性 化 が叫 ばれている。
福 な人 を満 足 させるまちづくりが出 来 ないも
都市の中心 が急速にシャッター街と化してい
のだろうか。因 みに新 潟 市 からダイエーが撤
るという。夫々の都 市 で国 、地 方 自 治 体 の支
退するらしい。
援 を受 けながら活 性 化 の施 策 がなされつつ
まちづくりの基 本 コンセプトに「気 持 ちい
ある。それはそれとして別 の観 点 から「まちづ
い」は大 概 盛 り込 まれている。「気 持 ちいい」
くり」を考えてみよう。例えば3K4コウのキーワ
まちとは、建 物 が綺 麗 で、清 潔 で、緑 が一 杯
ードによって地 域 の消 費 者 の消 費 動 機 から
のイメージだ。それはまちづくりにとって重 要
「まちづくり」をみてみるのはどうか。
ことであるが、消 費 者 すなわち地 域 住 民 にと
まず、「かわいい」。地方の都市は今や車社
って「気 持 ちいい」まちには別 のコンセプトが
会である。一人一台の時代である。主人は車
あるかもしれない。例 えば気 持 ち良 くお金 を
で通 勤 し、主 婦 は車 で買 物 に出 かけ、子 供
使 えるまち、たまに気 持 ちよく散 財 したくなる
の塾 等 の 送 り迎 えを する。 買 物 は駐 車 場 の
まちを作ったら面白いかもしれない。
大きい郊外のスーパーへ行く。車なので行動
まちづくりのキーワードを3K とし、地 域 住
範囲は大きいが、行き先は決まってしまう。日
民 の消 費 動 機 から考 えると別 なまちづくりが
常 にドラマがない。たまには自 分 が主 役 のド
見 えてくる。各 地 域 で消 費 動 機 は違 う。また
ラマに浸って可 愛くいたいと思うかもしれない。
消 費 動 機 は常 に 変 化 する。3 K4 コウだ けで
それは「良 いものをより安 く」のダイエーには
なく「4K」も「6コウ」もキーワードを作 ってまち
ない。その実現の方法として韓流のドラマ「冬
づくりのコンセプトに生 かしたは如 何 だろう
のソナタ」を観ながらヨン様とバーチャルリアリ
か。
ティーの世界に身を投じ、自分が「かわいい」
3.地方の底力
丸 ナスの漬 物 は日 持 ちがしないので持 ち帰
日 本 には底 力 がある。バブル崩 壊 後 土 地
っても次 の日 までである。流 通 に乗 せる為 に
価 格 の急 激 な下 落 によって経 済 が低 迷 した。
は色々な添加物が必要である。日持ちするよ
しかしながら少 し時 間 がかかったものの立 ち
うになっても味は格段に落ちてしまう。京都の
直りを見 せている。土 地価 格の上 昇のみなら
千 枚 漬 けも同 じである。紅 花 のお浸 しは、紅
ず各 産 業 も概 ね好 調 で転 じている。日 本 に
花 を間 引 きした新 芽 を湯 がいたものである。
は日 本 には技 術 、技 能 、文 化 があり、そして
間引きなので流通させるには数が揃わない。
勤 勉 な労 働 者 がいる。日 本 企 業 が作 る工 業
蕎 麦 は、春 、蕎 麦 畑 から生 えた新 芽 をこれま
製品は、今や芸術品であり、世界で評価され
た湯がいたものである。これも数が揃わないし、
売 れている。トヨタもいずれ世 界 一 の自 動 車
日 持 ちが し ない。 何 気 なく季 節 季 節 に 食 べ
メーカーになるだろう。
ているものが、実 はその場 所 でしか食 べられ
日 本 に底 力 があるのであるから、日 本 全 国
ないのである。そのような貴 重 な食 べ物 であ
津 々浦 々に底 力 があるはずである。地 方 都
ることを地 元 の人 は気 づいていない。外 部 の
市には日本の底力の源泉がある。これまでの
人 間 が行 って感 動 いて初 めて気 づくのであ
地方都市は東京になろうとしていたと思う。大
る。
阪 ですらア ジアの 中 心 都 市 に なろうと した。
食 べ物 に限 らずどんなに流 通が発 達しても
結 局 のところ東 京 になろうして伸 び悩 んでい
全 国 に流 通 しないものがある。また他 の地 域
る。地方の各地地域には、夫々の文化があり、
で真 似 の出 来 ないものがある。各 地 方 でこの
夫 々のライフスタイルがあり、また夫 々に良 い
ような物 や事 が一 つや二 つはある。それを生
物 がある。そこで生 活 する人 々が「かわいい」
かせば「まち」の活 性 化 が 出 来 るかも しれな
「かっこいい」「気持ちいい」生活が出来るよう
い。
にすれば、必然的にまちが活性化されるだろ
う。
一 つの思 いつき、すなわち消 費 動 機 からま
ちづくりを考 えてみた。皆 さんもひとつ突飛 な
思 いつきからまちづくりを考 えてみてはいか
最後に
山形県の内陸部に白鷹町という小さな町が
ある。町の中を最 上 川 が流 れている。機 会が
あって訪 れたことがある。主 たる産 業 は農 業
で稲 作 の他 、紅 花 、 蕎 麦 、その他 野 菜 を 栽
培 している。食 事 をご馳 走 になった。町 の人
はいつも食 べているもので恐 縮 ですと言 って
出 してきたものは、自 家 製 小 さな丸 ナスの漬
物、紅花のお浸し、蕎麦の茎や葉のお浸し、
ぜんまいの一 本 漬 け等 である。全 て店 では
買 えないものばかりである。各 家 で作 ってい
て売り物ではないから買えないのではない。
がだろうか。
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