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動力炉・核燃料サイクル施設の新規制基準とその

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動力炉・核燃料サイクル施設の新規制基準とその
第2回「原子力安全夏期セミナー」
2014年8月18日@福島 穴原温泉
動力炉・核燃料サイクル施設の
新規制基準とその考え方
名古屋大学 工学研究科 山本章夫
1
概要



原子力安全確保のための基本的考え方
動力炉の新規制基準
核燃料サイクル施設の新規制基準
2
原子力安全確保のための基本
的考え方
3
原子力発電プラントにおける安全確保
の基本的考え方
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
原子力安全の究極の目的は人と環境を放射線リ
スクから守ること
そのための基本的な考え方は深層防護である
深層防護
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

異常発生防止
異常拡大防止
事故影響緩和
アクシデントマネジメント
防災
また、深層防護の考え方を適用する際に具体的
な方策の一つとして多重障壁を用いる
4
多重障壁
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障壁
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



放射性物質を閉じ込めるための物理的な「壁」を形成するもの。
バウンダリとも呼ばれる
ペレット
被覆管
圧力容器
格納容器
(原子炉建屋)

括弧をつけているのは、原子炉建屋には気密性の要求をしてい
ないため。しかし、放射性物質放出の障壁としての効果は一定
程度期待できる。
5
深層防護と多重物理障壁の考え方





NUREG-1860では,過去の深層防護の適用でよく知られ
ているのが多重の物理的障壁の使用(燃料,被覆管,原
子炉冷却材圧力バウンダリ,格納容器)としている。
IAEA INSAG-12では,防護のレベルと物理的障壁(燃料
マトリクス,燃料被覆管,一次冷却材バウンダリ,閉じ込
め)は深層防護の構成要素としている。
多重障壁は,その考え方については深層防護の考え方
とともに原子力安全を確保するために用いられる考え方
の1つ
具現化された多重障壁は深層防護の考え方に基づく対
策の一部を構成するもの
深層防護と多重障壁は原子力安全の観点から密接に関
連するものの,同義ではない。
6
従来の日本における深層防護
http://www.meti.go.jp/press/2012/08/20120827001/20120827001-2.pdf
7
原子力規制委員会(旧保安院)の深層
防護の考え方
http://www.meti.go.jp/press/2012/08/20120827001/20120827001-2.pdf
8
IAEAにおける深層防護の考え方
http://www.meti.go.jp/press/2012/08/20120827001/20120827001-2.pdf
9
事象に関する定義
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

「運転時の異常な過渡変化」とは、通常運転時に予想される機械又
は器具の単一の故障若しくはその誤作動又は運転員の単一の誤操
作及びこれらと類似の頻度で発生すると予想される外乱によって発
生する異常な状態であって、当該状態が継続した場合には発電用
原子炉の炉心(以下単に「炉心」という。)又は原子炉冷却材圧力バ
ウンダリの著しい損傷が生ずるおそれがあるものとして安全設計上
想定すべきものをいう。
「設計基準事故」とは、発生頻度が運転時の異常な過渡変化より低
い異常な状態であって、当該状態が発生した場合には発電用原子
炉施設から多量の放射性物質が放出するおそれがあるものとして
安全設計上想定すべきものをいう。
「重大事故」とは、発電用原子炉の炉心の著しい損傷その他の原子
力規制委員会規則で定める重大な事故をいう。

実用炉則では「炉心の著しい損傷または核燃料物質貯蔵設備に貯蔵する燃料
体又は使用済燃料の著しい損傷」
10
DBA, BDBA, DEC, SAの関係

運転時の異常な過渡変化、設計基準事故(Design Basis
Accident, DBA)の定義はすでに述べたとおり。
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

規制委員会の見解(新規制基準に対するパブリックコメント回答)
では、発生頻度はおおむね以下の通り
運転時の異常な過渡変化:10-1~10-2[1/y]
設計基準事故:10-3~10-4[1/y]
設計基準事故を超える事故がBeyond DBA, BDBA
過酷事故(Severe Accident, SA)は、原子炉等規制法で
は用語として出てこないが、一般的に炉心の著しい損傷
新規制基準の「重大事故」は、動力炉に関しては、おお
むね、SAと同等の定義。
11
DBA, BDBA, DEC, SAの関係


DBAでは炉心損傷に至らないように工学的安全施設を含めた対策
が施される。従って、原則として炉心損傷に至らない。また、DBA評
価は保守的に行われているので、BDBAになっても炉心損傷に至る
までには、一般的にある程度の余裕がある。
従って、DBAを超え、BDBAに至っても、SAになるとは限らない。(SA
になる場合も、ならない場合もある)
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

つまり、BDBAは、SA(重大事故)に至る恐れのある事故と、SA(重大事故
)に分けられる。
BDBAのうち、全交流電源喪失(Station Black Out, SBO)やスクラム
失敗過渡事象(Anticipated Transient Without SCRAM, ATWS)など
、多重故障を含むいくつかのシーケンスは、軽水炉の開発初期に考
えられていたものより発生確率が高いことが軽水炉の運転経験とと
もに徐々に明らかになってきた
一般にDBAは単一故障を想定するため、SBOやATWSはDBAに含ま
れない。しかし、米国などでは、これらを「特出し」で規制要件とし、こ
れらの事故に対し、炉心損傷に至らないよう安全対策を求めた。 12
DBA, BDBA, DEC, SAの関係

つまり、米国ではSBOやATWSは準DBAという位置づけ




ただし、安全評価にあたっては、保守的な手法でなく、最適評価
手法が適用されるなど、DBAと同じ扱いではない
WENRAの深層防護では、DBAを超えて炉心損傷に至る
までの領域を深層防護の3b層としている。
設計拡張状態(Design Extension Condition, DEC)にあ
たる3b層は、設計基準状態を超えているものの、設計の
対処により炉心損傷を防止することを求める領域と考え
ることができる
なお、SBOやATWSなど多重故障を含む一部のシーケン
スを改めてDBAに取り入れるアプローチも考えられる。こ
の場合、DECという概念は適用されない。

新設炉はこのアプローチになると考えられる
13
DBA, BDBA, DEC, SAの関係
事象の発生頻度
運転時の異常な過渡変化
事故
過酷事故 安全設計により発生頻度
を低減あるいは影響を軽
減し、左下に移動させる
(Frequency)
DEC対応設計,アクシデントマ
ネジメントにより発生頻度を
低減あるいは影響を軽減し、
左下に移動させる
事象の影響度(severity)
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DBA, BDBA, DEC, SAの関係
燃料損傷なし
事象の発生頻度
燃料損傷
炉心が著
しく損傷
格納容器が損傷
(probability)
事象の影響度(severity)
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新規制基準における設計基準
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



原子力規制委員会の新規制基準において、設計基準(DBA)は、従
来の安全設計審査指針を基本的に変更していない。これは、新規制
基準の議論にあたって、混乱を避けるための配慮であった。
結果、長時間のSBOやATWS、その他のBDBAについては、重大事
故対策として取り扱われている。
BDBAについては、まず炉心損傷防止(=SA発生防止)を求めている
。これは、BDBAのうち、いくつかの事故については、DECと同様の取
扱であると考えられる。
なお、大LOCA注水失敗など、炉心損傷を防ぐことが困難な場合には
、格納容器の健全性を確認する。
以上のことから、新規制基準では、SBOやATWS等については、設計
対応を求めているのと同等であり、設計基準での対応が「恒設設備
による自動的な対応」であると解釈すると、SBOやATWSは設計基準
事象に準ずる扱いになっていると考えられる。
16
発電用軽水型原子炉の新規制
基準の概要
17
旧保安院の対応(緊急安全対策)



平成23年3月30日に旧原子力安全・保安院が事
業者に通達。
1ヶ月程度での対策を求める。
「津波により3つの機能(全交流電源、海水冷却
機能、使用済み燃料貯蔵プールの冷却機能)を
全て喪失したとしても、炉心損傷や使用済み燃
料の損傷を防止し、放射性物質の放出を抑制し
つつ冷却機能の回復を図ること。」
18
旧保安院の対応(緊急安全対策)
http://www.meti.go.jp/press/20110330004/20110330004.pdf
19
旧保安院の対応(技術的知見)

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福島第一の事故を分析し、技術的な課題を検討
・整理、とりまとめたもの。(平成23年10月~平成
24年2月に検討を実施)
検討内容
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事故の各段階における重要機器の動作状況及び事
故対応に必要な資機材の不足・不具合を整理
これらの不具合・不足の再発防止策を検討
内容は新安全基準に反映されている
http://www.atom.pref.fukui.jp/senmon/report2012siryou/no2-1.pdf
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旧保安院の対応(技術的知見)
http://www.atom.pref.fukui.jp/senmon/report2012siryou/no2-1.pdf
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旧保安院の対応(シビアアクシデン
ト規制の考え方)


従来、規制対象となっていなかったシビアアクシ
デントについて、規制の考え方を検討。(平成24
年2月~8月に検討を実施)
原子力規制委員会において策定中の新安全基
準(骨子案)にその考え方が活用されている。
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原子力関連法の改正
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改正原子力基本法


改正原子炉等規制法

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


前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏ま
え、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が
国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。
大規模な自然災害及びテロリズムその他の犯罪行為の発生も
想定した必要な規制を行う
原子力施設において重大な事故が生じた場合に放射性物質が
異常な水準で当該原子力施設を設置する工場又は事業所の外
へ放出されることその他の核原料物質、核燃料物質及び原子炉
による災害を防止し、・・・
人と環境を護ることを明示
過酷事故の発生を前提とし、規制の対象とする
最新の知見を既存の発電所に適用(バックフィット)
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新たな規制体系の概要
許可の基準は第43条の3の6
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/shin_anzenkijyun/data/0021_02.pdf
24
新たな規制体系の概要
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/shin_anzenkijyun/data/0021_02.pdf
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新たな要求項目
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130410_03/130410-09.pdf
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新たに要求された項目の全体像
http://www.kyuden.co.jp/library/pdf/torikumi_nuclear/shinkiseikizyun_3_130813.pdf
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原子力規制委員会
新規制基準策定の基本的考え方
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深層防護の考え方の徹底

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性能要求
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


具体的な対策は、事業者が施設の特徴に応じて選択可能
機能喪失が深刻な影響をもたらすものは、その機能喪失を想定して
バックアップ手段を準備
自然現象等による共通の原因による故障の想定とその防護対策を
大幅に引き上げ


複数の安全対策を用意し、それらが共倒れにならないように配慮する
地震・津波の評価の厳格化、津波浸水対策の導入
多様性・独立性を十分に配慮
「炉心損傷防止」、「格納容器機能維持」、「ベントによる管理放出」、
「放射性物質の拡散抑制」という多段階の対策を用意
使用済み燃料プールにおける安全対策を強化
意図的な航空機落下等に備えて原子炉建屋とは独立な「重大事故
等対処施設」を導入
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基本的な考え方と主要な要求事項の関係
http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/data/0013_08.pdf
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福島第一事故の進展と対策
http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/h24fy/data/0027_05.pdf
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深層防護の考え方の徹底
原子力防災 (深層防護 第5層)
放射性物質放出・拡散抑制 (深層防護 第4-2層)
格納容器損傷の防止 (深層防護 第4-1層)
著しい炉心損傷の防止 (深層防護 第3-2層)
事故の影響を緩和 (深層防護 第3-1層)
従来の設計上
の想定
事故への拡大を防止 (深層防護 第2層)
異常・故障の発生を防止 (深層防護 第1層)
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新規制基準の全体像
http://www.nsr.go.jp/committee/kisei/data/0013_08.pdf
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