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シンガポール政府観光局
シンガポール政府観光局(シンガポール) シンガポールの観光振興を推進する政府機関 シンガポール政府観光局 Singapore Tourism Board ~シンガポールの観光事情について~ 報告者:松 井 陽 子 1 概 要 シンガポール政府観光局は、シンガポール経済の発展及び国民の生活水準向上のため、観光 を発展・促進させることを目的とする、通商産業省の傘下の機関 国土が狭く天然資源もほとんど持たないシンガポールにとって、観光産業は国内に多くの雇用と 消費を生み出す重要産業である。シンガポール政府は、外国からの訪問者数増加を国家目標 に掲げ、統合リゾート開発や医療ツーリズムの推進などに力を入れている。 2012 年のシンガポールへの訪問者数は、1437 万人と3年連続で増加。これは、シンガポールの 人口 531 万人の約 2.7 倍にあたり、2012 年の訪日外客数 835 万人(出典:日本政府観光局)を上 回る数字である。 2 説 明 者 シンガポール政府観光局 マネージャー オオイシ 氏 [Manager Mr. Oishi] マネジメントアソシエイト ワン 氏 [Management Associate Ms. Enqin WANG] シンガポール政府観光局での説明聴取・質疑応答の様子 シンガポール政府観光局(シンガポール) 3 主 な説 明 内 容 ・ 観光局の役割 ① Planner 長期的な計画を立てる ② Promoter 隣国にオフィスを構え、シンガポールを売り込む ③ Regulator 観光エージェントを統括する ④ Owner,Manager and Operator of Tourism Assets 観光スポットのオペレーター、マネージャーとしての運営 ⑤ Precinct Development 文化エリアの開発(例えば、リトルインディア、チャイナタウン、オーチ ャードロード等、シンガポール独自の文化資源の開発) ⑥ Operations Role 国の主なプロジェクトの運営 (例えば、F1) ⑦ Industry Development 投資家に対する投資の相談なども含めた産業開発 ・2003 年の SARS、2009 年のアジア金融危機には、観光客が減少。 →現在、シンガポールを来訪する国々の中で、日本は 5 位。 2013 年の戦略 ・考慮すべき前提 - ・色々な条件を考慮することの必要性 ・隣国との競争 ・労働力の低下(完全失業率 2%) ・観光客の増加によるシンガポール国民に対する圧迫 質の良い観光を提供 ①Portfolio 観光の中身 例)レジャー、ビジネス、MICE、医療 ②市場に合わせた戦略 -各国の最適なパートナーと連携 例)JTB、HIS、クレジット会社 等 ③ターゲットをしっかりと定めること 魅力の向上 (ハード面・ソフト面) ハード面 ・River Safari / Gardens by the Bay ・Marina Bay Cruise Center (大きな船も寄港でき る) ・Singapore Expo (環境に優しい設備) ソフト面 ・各ソフトを組み合わせて、観光内容を充実させる (例、フェスティバル×デパート×エリア) ・政府からの資金を活用 シンガポール政府観光局(シンガポール) 隣国との競争が激しいので、政府との協力 Local Engagement シンガポール全体で、観光客を迎える雰囲気作り その他、特筆すべき点 ・「シンガポール」を1つのブランドへ →ウェブサイトによる旅行の作成(自分らしい旅行を計画することができる) ・1 人の人にどれだけお金を使ってもらえるかを重視 →各人に合わせて、内容や質を充実 例)日本人並みにお金を使う国トップ5 インドネシア、中国、マレーシア、オーストラリア、インド ・マレーシアやインドネシアからのリピートが多い - コンサートやアートイベント等へ気軽に訪問。楽しみを絶やさない努力。 - 自国にないものを買いに来る。 ・リサーチ - 空港でしっかりと調査し、来訪の内容を把握。 (例:目的、年収、誰と共に来訪したか等) ・地元の人と観光客が、どのように共存していくかがテーマ 4 質 疑 ○ シンガポールの観光客誘致の考え方について → 多くの観光客に来てもらいたいと考えているが、1人の観光客がどれだけ消費するかを重視し ている。レジャー、ビジネス、医療、教育など全ての分野をカバーしている。 ○ シンガポールには様々な観光資源があるが、国土が狭く観光地を回りやすいので、1度来るとま た次とはなりにくいのではないかと思うが、今後の指針はどうか。 → マレーシアやインドネシアなどの隣国からはリピーターの観光客も多い。明日おもしろいイベン トがあるというと、安いチケットを購入してすぐにやって来る。 なお、日本については、1 度もシンガポールを訪問したことがない人が大半なので、リピーター を獲得するよりも、まず 1 度来てもらうことを重視している。ソフトの開発をしたり、イベントを充実 させたりしていく。来年以降、ヨーロッパから美術館を誘致することとしている。 ○ 他の東南アジア諸国であれば、物価が安い点が観光客にとって魅力的になりうるが、シンガポー ルは物価が高く日本と同じ悩みを抱えているのではないか。 → 限られた予算でどう効果を最大化するか。訪問国をリサーチし、多い国に積極的に広告を投入 シンガポール政府観光局(シンガポール) している。 ○ 戦略的パートナーの選び方について → 我々の戦略を理解し、我々が届けたいシンガポールを一緒に提供していこうという考えがある かという観点から選んでいる。企業毎に戦略や戦術 があるので、規模の大小は問わない。中堅とも一緒 にやったことがある。 戦略的パートナーに対しては、旅程を組む際にシ ンガポール政府観光局が観光地と調整したり、また、 シンガポール政府観光局しか知らない魅力的な場 所を紹介したりしている。パートナーシップ制は始ま って2年であり初期段階であるが、今後発展させて いきたいと考えている。 シンガポール政府観光局での説明聴取・質疑応答の様子 ○ 医療ツーリズムは主にどこの国からの訪問が多いのか。 → シンガポールの医療水準は、日本と同程度で高い。マレーシアやインドネシアなどから、富裕 層が信頼できる医療を求めて訪問してきている。 ○ 最も消費額が多い国はどこか。 → インドネシア、マレーシア、インドである。インドネシアについては、自国にないものがシンガポ ールにはあるとして、好まれているようである。 なお、空港でランダムに調査票を配付して、アンケートを行っている。どこから来たのか、訪問 国、シンガポールでの消費額、年収、訪問の目的、誰と来たかなど。 ○ 1人当たり消費額の重視にシフトしたとのことであるが、ホーカーズなどの屋台は安かった。その ような場所の位置付けはどうか。 → ホーカーズはシンガポール人の台所であり、観光資源としての位置づけではない。もちろん日 本人観光客が訪問することも多く、そういう意味では観光資源となっているが、観光地化しようと いう戦略を持っているものではない。 ○ 文化遺産の扱いはどうか → 地元の人は、観光客に来てほしいと思っている。地元の人と一緒になってどう盛り上げていく かと言うことに頭を使っている。例えば、京都府が地元の人と一緒に祇園祭を盛り上げるのと同 じである。 シンガポール政府観光局(シンガポール) 5 所 感 シンガポール政府の観光に対する考え方が、徹底され ていることに驚いた。観光局の役割が何であるかをしっ かりと認識し、各々の役割に細かく分けて、実行に向けて の体制が作られている。 また、自国を来訪する人が、どういう人で、何を目的に して来るかを具体的に知ることによって、何を提供すれば 良いかを考え、最高の形で提供する。そのためには、設 備のあり方など、ハード面にも気を配っている。また、ソフ ト面でも、観光客に飽きがこないように、常に新しい内容 の物を提供すると共に、国を挙げて F1等の観光誘致イベントを開催したり、様々なコンテンツを用意 することによって、多様な人に対応できる幅の広さも持っている。さらに、シンガポールは隣国と陸続 きであるため、買い物やコンサートを見るために気軽に来訪する客層に向けても、対応している。こ のように、キメの細かさと国を挙げてのアピールで、観光客を自国に呼び込んでいることがよく分かっ た。シンガポールとして、外貨を獲得する手段が観光であることが明快で、その手法も確立されてお り、日本も学ぶべき点が多いと感じた。