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飛躍期に入ったペット市場 - Nomura Research Institute
NEWS l e t t e r NR I Fresh Eye vol.12 2003.8.20 CM、ドラマでブーム再燃! 今後はしつけ、教育がカギ 飛躍期に入ったペット市場 稲見 浩之 社会政策コンサルティング部長 ブームのたびに市場が拡大、飼育マナーが問われるように 消費者金融のテレビコマーシャルに登場した、ロングヘアチワワの 愛くるしいまなざしによって、ペットブームが再燃している。 1980 年代後半から 90 年代初頭にかけ、日本では第1次ペットブ ームがあった。ペットを家族の一員として人間同様に扱い、 「餌を与 える」から「一緒に食事」をする意識変化、いわゆるコンパニオンアニ マル化といわれる現象が起こった。このときの火付け役はラブラドー ルレトリバー。この犬種により、 「犬は番犬」という認識から、 「人との 親和性の高いパートナー」という位置づけに変わった。その結果、ペ ットフードは多様化が進み、愛犬に合わせた選択肢が増えるとともに、 「健康を考えた食事を与える」などの意識から、その利用量が格段に 高まり市場が拡大した。当時ペットフード市場の年成長率は2桁を 優に超え、成長著しい産業として注目された。 現在は、第 2 次ペットブームである。テレビコマーシャルの前にも、 ソニーの「アイボ」やタカラによる犬の翻訳機「バウリンガル」の人気 にはすでにその兆しが見られていた。今回のブームは、 「ペットと暮ら せるマンション」建設も一因である。以前は、基本的に集合住宅での ペット飼育には制約があった。しかし、多数の既存集合住宅におい てペット飼育に関する管理組合規約が制定され、飼育ができるように なった。 そして、新規建設の集合住宅においても 「ペットが飼育できる」 という価値が重視されるようになっている。 集合住宅での犬、猫の飼育は、今までは利用が少なかったトリミン グ、健康管理への支出を顕在化させ、また、ペットホテルやペット同 いなみ・ひろゆき 伴可のホテルなどの利用を促進している。その結果、生体販売、ペッ 部、技術産業研究部、社会システム研 トフード市場に加えて、衣服をはじめとする用品市場、健康管理市場、 ホテル、トリミングなどのサービス市場が拡大しているのだ。 今後は、飼育におけるマナーが問われるようになるだろう。しつけ・ 教育市場の開発と顕在化が、ペット市場全体の飛躍を確固たるもの にするキー・インダストリーになると考えられる。 1982 年 N R I 入社。環境システム研究 究部、環境・エネルギー研究部を経て、 環境・エネルギーコンサルティング部 長、国土・環境コンサルティング部長 を担当し、現職。専門は、環境、ヘル スケア、バイオテクノロジー。 ペット 産業はバイオテクノロジー関連市場と して 89 年より市場を見ている。 主な著書: 「現代生態学とその周辺」、 「ライフ」 ( ペット産 業とそ の 周 辺 )、 「日本の構造改革」。 当「 NEWS letter 」に掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。 Copyright © 2003 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. 4