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II. 自動車製造工場発生スクラップリサイクル事業

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II. 自動車製造工場発生スクラップリサイクル事業
II. 自動車製造工場発生スクラップリサイクル事業
1.大連市で発生する工場発生スクラップの発生量及び特徴
文献調査及び大連地域での自動車製造業者へのヒアリングより発生量及び特徴を
把握する。また、協力を予定している現地の日系企業に対して、現状の処理状況をヒ
アリングし整理する。
(1)工場発生スクラップの発生状況
産業等からの主要な再生資源は廃鉄鋼、廃非鉄金属、廃プラ、古紙、廃棄機械・設
備となっている。
大連市工商局の統計によれば、2010 年大連市における既存再生資源回収利用企業は
750 社、従業員は 10 万人以上で、再生資源回収量は約 260 万 t(国内約 200 万 t、輸入
60 万 t)である。そして、2015 年には 400 万 t に達すると予想されている。
図表 41 大連地区における主要な再生資源量 (単位:万t)
種類
廃鋼鉄
廃非鉄金属
廃プラ
廃タイヤ
廃棄電器電子
廃自動車
合計
2010 年
210
15
19
8
3.2
4.4
260
出所)大連市工商局
2015 年
314
24
30
15
8
9
400
統計資料
中国大連地区における工場発生スクラップ数量の統計がないため、日本における廃
鉄数量の品種別出荷数量より工場発生スクラップを中国全土と同様に推計する。
中国大連地区における工場発生スクラップも日本と同比率であると仮定すると、廃
鋼鉄の発生量 210 万 t のうち、約 27%(2010 年)が加工スクラップとなり、約 57 万
t の加工スクラップが発生する。
そして、2015 年は約 85 万 t と 5 年間で約 1.5 倍の増加が見込まれる。
(2)工場発生スクラップの特徴
本事業での活用を予定している工場発生スクラップは主に自動車工場から発生す
る鉄スクラップである。
鉄スクラップには、大きく分けて「市中スクラップ」と「自家発生スクラップ」の
2つがある。
「市中スクラップ」は、建物や船、自動車等の使用済みの製品や製造工程から発生
- 51 -
し、一般的に市中で流通している鉄スクラップである。
「自家発生スクラップ」は、鉄鋼メーカーの製鋼・加工工程で発生する鉄スクラッ
プであり、自社内にて再利用されることが多く、あまり市中で流通しない。
「市中スクラップ」は、「工場発生スクラップ」と「老廃スクラップ」の2つに分
類できる。
「工場発生スクラップ」は、自動車等の製造工程から発生する鉄スクラップであり、
代表的な品種として「新断」がある。
「老廃スクラップ」は、建屋解体時に出る鉄骨、船・自動車・家電等の製品の廃棄
により発生する鉄スクラップである。
「工場発生スクラップ」の代表品種である「新断」は、自動車等の製造工程などか
ら発生する鉄スクラップであり、鋼鈑をプレス加工した際の打抜き屑や端材になる。
「新断」は、製品となる鋼鈑と同一の性質を持つ高品質な鉄スクラップと言え、不
純物の混入が少なく、発生場所が明確で品質が安定しているため「老廃スクラップ」
に比べ高品位の鉄スクラップとされている。
- 52 -
2.処理コスト、再生資源の入手先、販売先、用途
処理コストは中国国内の他地域の当社拠点での実績を参考にして、検討した。
今後の日系自動車メーカーの周辺地域への進出状況を把握し、再生資源の入手先の
候補とする。また、廃車由来のマテリアル(鉄、非鉄、銅、廃プラ等)の販売先につい
ては、当社大連分公司の支援を得ることができる。入手先の多くは大連保税区であり、
100km 離れた大連循環産業経済区までの物流コストをどの様にして解決するかの検討
を行う。
(1)処理コスト
O 社、P 社については、当社が中国で展開済みの鉄スクラップ加工事業体の実績よ
り試算した推計値であり、確度は高い。
ただし、両社は大連地区では展開しておらず、現地の処理コストと乖離する可能性
がある。
そのため、大連地区に展開する企業からのヒアリングにより、その精度を確認した。
結果、大連での処理コストとそこまでの乖離がない事が分かり、各社処理コストの
平均値である 200 元/tが現在の大連における処理コストである事を確認した。
以下、各社ヒアリング結果である。
図表 42 処理コストの試算
製造コスト試算
企業
内容
B社
ヒアリングより推計
O社
実績より推計
P社
実績より推計
推計値
200元/t
250元/t
150元/t
(2)再生資源の入手先
大連市保税区へ進出予定の日系自動車メーカーや同地区進出の自動車部品製造及
び自動車部品加工メーカーを入手先候補と考える。
進出動向をヒアリングしているが、当初予定の 2014 年稼動に対して、現状遅れ気
味であるという。
保税区関係者からの情報であるが 2015 年頃になるのではないかとの予測もあり、
これに関わる自動車部品製造及び自動車部品加工メーカーの進出も鈍ると思われる。
入手予定の鉄スクラップは、鋼鈑を切断加工した後に残る端材や鋼材を工作機械で
削って出る端材を予定している。
- 53 -
(3)自動車製造工程由来のマテリアルの販売先
自動車系鋳物メーカーをメイン販売先として検討している。前述の通り、自動車製
造工程由来の鉄スクラップは高品位であるため、要求品位の高い鋳物メーカーへの販
売も可能である。一般的に製鋼メーカーに比べ高価で販売できるため、事業の優位性
を確保することができる。ただし、鋳物メーカーが使用できる鉄スクラップ数量は少
量のため、余った鉄スクラップの向け先として、製鋼メーカーも候補とする。
(4)物流コストについて
前述の処理コストと同様に、当社事業体より確度の高い推計値と現地企業からのヒ
アリングを元に精度を確認する方法にて検証した。
結果、大連での各社物流コストの平均値は、1.0 元/km/tであり、大連保税区から
大連国家生態工業モデル園区の物流コスト増加は 100 元/tとなる事を確認した。
図表 42 物流コストの試算
企業
B社
P社
Q社
内容
120km離れたの販売先への物流コスト
100km離れたの販売先への物流コスト
30km離れたの販売先への物流コスト
- 54 -
推計値
1.2元/km/t
1.0元/km/t
0.8元/km/t
3.現地の既存企業の状況
現地の既存企業として、金属リサイクル事業者へのヒアリングを行う。また、イン
フォーマルセクターの動向をヒアリングする。
自動車解体工場での調査と同様に表向きにはインフォーマルセクターは存在しな
いとの情報を得ている。ただし、自動車解体工場と違いスクラップの集荷、加工、販
売の営業許可を取得さえすれば可能な事業である事から、存在する可能性は低いよう
に思われる。また、インフォーマルセクターの調査は非常に困難であり、今回の FS
活動においては決定的な情報を得ることは出来なかったが、しかしながら上記背景か
らごく僅かに存在すると予測するものの、当事業では脅威となり得ないと思料する。
(1)D 社
大連市報廃車輛解体有限公司の出資会社の一つであり、董事長の I 氏は中国物資再
生協会の副会長である。自動車や建屋解体由来の鉄・非鉄などを取り扱っており、集
荷量は年間 30 万トンである。自動車は年間 500 台程度取り扱っている。
また、該社は店子と呼ばれる集荷業者へ敷地を貸して、賃貸料をとっている。現在、
構内には 100 社程度の店子が入っており、そこから集められた鉄・非鉄を購入し、自
社で集荷した鉄・非鉄と合わせて製鋼メーカー等へ販売している。各販売先へ数量を
まとめて一括販売する事で、高値での販売をしているものと推測される。また、同社
は大連国家生態工業モデル園区への進出を予定しており、シュレッダー機を導入し、
集荷した鉄・非鉄の加工事業を検討している。
図表 43 D 社の概要
設立
敷地面積
集荷量
取扱車両数(2009 年)
1997 年
約 8 万㎥
30 万 t/年
500 台
<使用済自動車のストックヤード>
- 55 -
<鉄・非鉄くずのヤード>
(2)J 社
非鉄スクラップの取り扱いがメインであり、当社関連会社と過去売買実績のあった
企業である。集荷量は年間 2 万tであり、自動車の取り扱いはしていない。
該者も D 社と同様に敷地内に店子を入れており、構内に 250 社程度存在する。
リサイクル方法は仕入れたスクラップをシャーリング機で切断し、その後プレス加
工をしている。構内にはスクラップに付着した油を落とす為の設備を有しており、販
売先の受入規格に沿った品質に管理する体制が伺えた。
図表 44 J 社の概要
設立
敷地面積
集荷量
取扱車両数
2002 年
約 6.5 万㎥
2 万 t/年
なし
店子ヤード
スクラップ加工作業
スクラップ加工
荷姿
- 56 -
4.候補となるパートナーの詳細
今回の FS 活動においては候補となり得る企業はいなかったため、当社単独での事
業設立を基本方針とする。ただし、事業推進の過程において事業パートナーが必要と
なった場合、例えば進出地において現地企業の資本参入が必要、または仕入先企業か
らの条件等で要求された際は検討する事とする。
現在すでに中国国内において事業展開しているため、現地での会社設立、販売方法
等のノウハウは持っており、独自での事業展開は可能と判断した。
- 57 -
5.リサイクルに関する現状・実態の把握
大連市内で金属リサイクル(先に概要を記述した D 社等)を行っている事業者への
ヒアリングを行い、処理実態を把握した。
作業は手作業及びシャーリング機による切断やプレス加工が実施されていた。メイ
ンの販売先は使用済自動車リサイクル事業と同様にブローカーが現場引取り、その場
で現金売買が行われる為、最終的な販売先は今回の FS 活動では明らかにならなかっ
た。
ただし、自動車由来の鉄スクラップと違い、建屋解体スクラップ等は素材が分厚い
ため最終販売先と考えられる製鋼メーカーへの受入規格をクリアし、直接納入してい
る可能性はあるが、問題として製鋼メーカーへ直接販売すると支払サイトが長く、資
金繰りが悪くなる。また支払いを滞納される事による債権不良が発生するリスクが有
り、各社は製鋼メーカーへの直接販売には積極的でない事が判明した。
またプレス加工された鉄スクラップに関してはブローカー経由シュレッダー業者
へ販売され、最終的に製鋼メーカーへ流れていると推測される。プレス加工は輸送効
率を良くするために行われており、販売先がプレス加工を要求するケースは低いと思
われる。
- 58 -
6.事業活動を支えるインフラの整備状況
使用済自動車リサイクル事業と同様の整備状況が想定されるため、該当項目(P.40~P.42
「(3)大連国家生態工業モデル園区のインフラ整備の状況」を参照。
- 59 -
7.事業開始に必要な行政手続き
使用済自動車リサイクル事業と同様の手続きが想定されるため、該当項目(P.47~P.49「7.
事業開始に必要な行政手続き」)を参照。
- 60 -
8.競合すると考えられる他国企業の事業展開の状況等
金属リサイクルを展開している企業の中国進出の動きを情報収集する。特に欧米ス
クラップメジャーの動向の把握に努めた。
大連市においては、大連市人民政府公文書 23 号に記載されている通り、新規のリ
サイクル事業は大連国家生態工業モデル園区に進出する事。既存のリサイクル事業は
移転しなければならないとされている。
その中で、当地区への誘致を進める窓口企業である A 社への調査を実施したが、他
国企業が金属リサイクル事業を検討している話はないと言う。
また、リサイクル事業に関わる政府関係者からもそういった声は聞いていないとの
情報を得ている。
更に、保税区関係者への調査からもその様な話はなく、現段階において他国企業が
大連への事業進出を検討しているとは考えづらい。
- 61 -
III. 東北復興の裨益に関する検討
1.K 社
東北工場
大連市において自動車製造工場発生スクラップリサイクル事業が展開可能となっ
た際は、日本国内にて同様の事業を実施する当社事業体である K 社の東北工場にて現
地作業員への研修の実施可能性について検討を行った。
(1)K 社
東北工場の概要
トヨタグループ内での鉄スクラップを資源循環するため、自動車メーカー及び関連
企業の東北進出に伴い、鉄スクラップの受け皿となるため設立した。
図表 45
稼動日
資本金
資本構成
工場所在地
立地
従業員
業務内容
特徴
主要設備
K 社 東北工場の概要
2012年1月6日
2億円
豊田通商株式会社 100%
宮城県黒川郡大和町松坂平7-2-1(第一仙台北部中核工業団地)
敷地面積 : 16,605m2
建築面積 : 1,600m2
5名 (役員を除く)
・東北地区工場発生鉄スクラップのプレス加工及び販売
(需要家は鋳造メーカー、電炉メーカー等)
・非鉄金属スクラップの取扱い
・環境に配慮した完全屋内型鉄スクラップヤード
・新断バラを母材とし、輸送・保管・投入等の物流工程で使いやす
い
・油圧式スクラップ・ベーリング・プレス 1基
・天井クレーン(7.5T) 1基
・50Tトラックスケール(全長15m)
・回転フォークリフト(3.0T 1台)
・油水分離層1箇所
・消音型換気口設置
・構内モニターカメラ(4台)
構内図
- 62 -
(2)研修の可能性の検討
研修する事自体については可能である。実際に日本国内で展開する当社事業体間で
の研修実績は有り、安全に関する管理、意識付けや設備のオペレーション経験のない
作業員に対しての研修内容及びスケジュール等は整備されている。
ただし、研修の受入については別途判断が必要になる。現在実施されている研修は
日本国内での内容であるため、実際に事業化となった際は、現地で設立した会社の事
業内容や研修が必要な作業員の人数、導入する設備等により、日本国内で受入するの
か、現地での支援をするのか等の検討が必要である
引き続き、K 社と協議していく事とする。
研修内容イメージ
1
2
3
4
5
6
7
・会社概要説明
・安全教育ビデオ鑑賞(納品・工事編)
・構内安全規定教育
構内全体マップにより危険箇所等への教育
・各種作業手順書教育(講義&現場で説明)
トラック、天井クレーン等の設備に関する規定、手順説明
・各設備の保全教育
各設備に関する点検、清掃、メンテナンス等の講義
・各設備のオペレーション実習
①入庫トラックの材料荷降し作業
②材料をコンベアへ投入作業
③材料・加工製品移動作業
④出荷トラックへの製品積込作業
・各設備の消耗品交換等の実習
・各種作業のKYT等の実技
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2.L 社
市川工場
大連市において使用済自動車リサイクル事業が展開可能となった際は、日本国内に
て使用済自動車用触媒の製錬合金の精製を行う L 社市川工場への供給可能性について
検討を行った。
(1)L 社市川工場の概要
当社と協力関係にもある世界有数の精製技術を持つ該社への資源循環を実現する
ため、使用済自動車用触媒の受け皿として検討した。
図表 45
設立
資本金
売上高
工場所在地
従業員
業務内容
特徴
L 社の概要
1885年
500百万円
828,950百万円
千葉県市川市
1,653名
白金族系貴金属化合物、各種触媒、白金属系貴金属回収・精製
世界トップクラスの貴金属回収・精製・分析技術を保有
(2)供給の可能性の検討
供給する事自体については可能である。実際に日本国内で展開する当社関連事業体
からの供給実績は有り、取引関係を築いている。ただし、中国から発生する使用済自
動車用触媒の受入可否については更なる調査が必要になる。大連市で集荷した自動車
用触媒の貴金属含有量を製錬加工企業へサンプル納入し、分析する必要がある。次に、
分析された貴金属の含有量により価格決定されるため、現地市況との集荷競争に勝て
るかどうかが重要になる。
現状、当社が関係を構築する中国国内における諸企業に対し、中国国内の使用済自
動車用触媒の貴金属含有有無の調査のため、サンプル納入に向けた交渉をしており、
大連市における使用済自動車リサイクル事業に先駆け、実施している。
該社で精製されたものを自動車用触媒製造のため東北マフラーメーカーへ供給し、
最終的に M 社への販売を目指す。
引き続き、調査結果を踏まえて当可能性について検討していく事とする。
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