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3. 生産施設の被災状況分析(PDF:293KB)

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3. 生産施設の被災状況分析(PDF:293KB)
3.生産施設の被災状況分析
3.1
生産施設の被災状況と震度階との関係
建屋が被害を受けた割合は震度階が高くなるにつれ大きくなる傾向にあり、特に電気・情報の
生産施設では、他産業に比べて割合が高くなっている
天井や間仕切壁を含めた建屋が被害を受けた割合は、震度階が高くなるにつれ大きくなる明
瞭な傾向が見られる。産業別に見ると、電機・情報の生産施設が他産業の生産施設よりも建屋
被害を受けた割合が高くなっている。
【解説】生産施設の被災状況について産業による違いをみるために、生産施設を①電機・情報、
②素材・エネルギー、③自動車・機械、④生活・医療に分けて、建屋に被害が生じた割合と震
度階との関係を調べた結果を図 3.1 に示す。建屋が被害を受けた割合は、建屋の被害が公表さ
れている生産施設数を同じ震度階における産業別の生産施設数で除して算出している。震度5
強以下では、軽微な被害事例が多く、震度6弱以上では天井や壁の落下など生産に影響を及ぼ
す被害事例が比較的多い。なお、震度6弱以上でも主要構造体の被害事例は少ない。
1.0
0.9
建
屋 0.8
が 0.7
被
0.6
害
を 0.5
受 0.4
け
た 0.3
割 0.2
合
電機・情報
素材・エネルギー
自動車・機械
生活・医療
0.1
0.0
震度4以下
震度5弱
震度5強
震度6弱
震度6強以上
図 3.1 生産施設の建屋が被害を受けた割合と震度階との関係
震度5強以上では 60%以上の生産施設で設備被害が生じている
震度階が高くなるにつれ設備が被害を受けた生産施設の割合が高くなる傾向が見られる。設
備被害は建屋被害より多く生じており、震度5強以上では 60%以上の生産施設で何らかの設備
被害が生じている。産業の違いによる設備被害の割合については、大きな違いは見られない。
【解説】設備が被害を受けた生産施設の割合と震度階との関係を図 3.2 に示す。建屋被害と同
-5-
様に震度階が高くなるにつれ、設備が被害を受けた割合も高くなる傾向が見られる。生産施設
の産業の種類による大きな違いは見られない。震度5強以上では、60%以上の生産施設で何ら
かの設備被害が生じている。
1
0.9
設
備 0.8
が 0.7
被
0.6
害
を 0.5
受 0.4
け
た 0.3
割 0.2
合
電機・情報
素材・エネルギー
自動車・機械
生活・医療
0.1
0
震度4以下
震度5弱
震度5強
震度6弱
震度6強以上
図 3.2 生産施設の設備が被害を受けた割合と震度階との関係
素材・エネルギーの生産施設では、震度6強以上の揺れと津波に見舞われた生産施設が多い
素材・エネルギーの生産施設では、津波被害を受けた生産施設の割合は震度6強以上で高く
なっており、地震による強い揺れと津波被害の両方に見舞われた生産施設が多いことがわかる。
【解説】津波被害を受けた生産施設の割合と震度階との関係を図 3.3 に示す。生産施設の種類
では、製紙、石油精製などの素材・エネルギー関係や食料品、飲料などを製造している生活関
係が多く、沿岸部に位置していることから津波被害を受けた割合が高くなっている(図 2.3 参
照)。
1
0.9
津 0.8
波
被 0.7
害 0.6
を 0.5
受
け 0.4
た 0.3
割
0.2
合
電機・情報
素材・エネルギー
自動車・機械
生活・医療
0.1
0
震度4以下
震度5弱
震度5強
震度6弱
震度6強以上
図 3.3 生産施設が津波被害を受けた割合と震度階との関係
-6-
3.2
産業別の復旧状況
素材・エネルギーと生活・医療の生産施設の復旧日数が長い傾向が見られる
素材・エネルギーと生活・医療の生産施設は沿岸部にあったものが多く、津波被害により復
旧の見通しが立っていない生産施設が多い。
【解説】生産施設で一部生産を開始するまでの復旧日数と震度階との関係を①素材・エネルギ
ー、②電機・情報、③自動車・機械、④生活・医療に分けて図 3.4~3.7 に示す。素材・エネル
ギーと生活・医療の生産施設は、図 2.3 に示したように沿岸部にあったものが多く、また、図
3.3 に示したように津波による浸水被害を受けた生産施設の割合が他の産業よりも高い傾向に
あるため、復旧日数が未定・不明の割合が高くなっている。これに対して、電機・情報の生産
施設では復旧日数が未定・不明のものは少なく、復旧日数が 20 日以下のものが多い。自動車・
機械の生産施設では復旧日数が 20 日以下のものが多いが、震度階が高くなるにつれ未定・不明
の割合が高くなる傾向にある。
1
0~10日
11~20日
21~30日
31日以上
未定・不明
0.9
0.8
生 0.7
産
施 0.6
設 0.5
の 0.4
割
0.3
合
0.2
0.1
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震度4以下
震度5弱
震度5強
震度6弱
震度6強以上
図 3.4 素材・エネルギーの生産施設における復旧日数と震度階との関係
1
0~10日
11~20日
21~30日
31日以上
未定・不明
0.9
0.8
生 0.7
産
0.6
施
設 0.5
の 0.4
割
0.3
合
0.2
0.1
0
震度4以下
震度5弱
震度5強
震度6弱
震度6強以上
図 3.5 電機・情報の生産施設における復旧日数と震度階との関係
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1
0~10日
11~20日
21~30日
31日以上
未定・不明
0.9
0.8
生 0.7
産
施 0.6
設 0.5
の 0.4
割
0.3
合
0.2
0.1
0
震度4以下
震度5弱
震度5強
震度6弱
震度6強以上
図 3.6 自動車・機械の生産施設における復旧日数と震度階との関係
1
0~10日
11~20日
21~30日
31日以上
未定・不明
0.9
0.8
生 0.7
産
0.6
施
設 0.5
の 0.4
割
0.3
合
0.2
0.1
0
震度4以下
震度5弱
震度5強
震度6弱
震度6強以上
図 3.7 生活・医療の生産施設における復旧日数と震度階との関係
3.3
生産再開における障害について
企業から公表された情報に基づいて、生産施設の再開に向けた復旧活動において、自社施
設の建屋や設備などの復旧以外に障害となった事象を以下に示す。
① インフラの被害
電力や工業用水のインフラが復旧されないことから、被害状況の把握ができない、ある
いは生産を再開できない施設が見られた。特に、津波被害を受けた地域ではインフラ復旧
にかなりの日数を要する状況となっている。燃料不足や必要な資材の調達困難、および人
手不足による復旧作業の遅れなどの事例も生じている。また、火災発生のおそれがあるた
め、津波による浸水被害を受けた生産施設で通電できなかった事例も見られた。
-8-
② 部品や原材料の入手困難
自動車産業では、特定の部品の供給が途絶えたことにより、操業停止や減産となる事例
が国内だけでなく海外でも生じている。
一方、情報機器の製造に関係する部品や生産装置および組立工場も多く被災しているが、
1ヶ月以内に生産を再開しているところが多い。組立工場における部品の在庫は通常1ヶ
月程度と言われているため、サプライチェーンの影響は比較的少ないようである。
③ 計画停電
計画停電の実施期間中は工場の連続稼働ができないため、生産を再開できない生産施設
が見られた。
④ 余震の影響
4 月 7 日の余震(M 7.1、最大震度6強)や 4 月 11 日の余震(M 7.0、最大震度6弱)
による停電や被害発生のため、生産再開となっていた生産施設が再び生産停止となった例
が見られた。
3.4
生産再開に向けた対応について
被災した生産施設が生産再開に向けて取った対応例を以下に示す。
① 国内の他施設での代替生産
事業継続がスムーズに達成された事例として、BCP を発動して同じ製品や原材料を生産
している西日本などの工場で代替生産を行った例が複数見られた。また、夏場の電力不足
に備えて西日本の工場で代替生産する例や、他社の工場を借り受けて今後生産再開を予定
している例も見られた。
② 代替製品の調達
今回の大地震で被災を免れた山形県や新潟県の工場から代替製品を調達する動きが見
られた。震度分布から分かるように、秋田県、山形県、新潟県などの日本海側では震度が
4以下の所が多く、被災を免れた工場が多かったためと考えられる。
③ 事業所の移転検討
津波により太平洋沿岸地域で壊滅的な被害を受けた企業では、内陸部や海外への事業所
移転を検討する事例が見られた。
④ 被災した生産施設の復旧支援
自動車などの部品を製造している工場では、取引先企業からの応援により復旧作業がス
ピーディーに進んだ例が見られた。
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