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プルラン/檜粉末を用いたトレー成形体の作製 Development of Tray Moulding of Pullulan / Hinoki Woody Chip 光石一太・文屋秀雄*1・内田幸夫*1・芳中健二*2・福原直成*3 Kazuta MITSUISHI,Hideo BUNYA*1,Yukio UCHIDA*1,Kenji YOSHINAKA*2 and Naoshige FUKUHARA*3 キーワード:プルラン/バインダー/曲げ特性/木質系粉末 Key words:Pullulan/Binder/Bending Properties/Wood Powder 1.はじめに ポリエチレンに代表される石油由来の汎用プラスチ ックは、我々を取巻く生活環境において必需品として の地位を確立している。しかし、近年において地球環 境や廃棄物問題の観点から問題が指摘されている。そ こで、地球環境に留意した資源環境素材として、生分 解性プラスチックへの期待が注目されている。 現在市販されている生分解性プラスチックは、石油 由来の化学合成系樹脂(ポリブチレンサクシネート、 ポリカプロラクトン等) 、天然物由来の化学合成系樹脂 (ポリ乳酸等) 、天然高分子系樹脂(修飾デンプン、デ ンプン/化学合成系等) 、微生物系(微生物が作り出す ポリエステル系等)が一般的である。 なかでも微生物系の天然多糖類は、可食性、接着性、 付着性、被膜性、潤滑性を有するため、食品、医薬品、 化粧品等の分野において使用されている。一方、本実 験で用いるプルランは、他の多糖類と比較して、接着 力が非常に強く、打錠や顆粒化時のバインダーとして も広く用いられている。そこで、プルランの特性の中 で、接着性、固結性に着目し、木質系粉末を固形化す る際のバインダーとしての応用を試みた1)。 ここでは、天然多糖類であるプルランをバインダー として、木質系粉末(檜粉末)を用いたトレー成形体 の作製を行ったため、その概要を述べる。 の白色粉末である。 2.2 試料調製 木質系粉末として檜粉末 (平均粒径 約0.1~0.2mm、 100 メッシュ以下)を用いた。プルラン粉末(林原生 物化学研究所、PF10、平均粒径 0.2~0.5mm)と檜粉 末を予め混合した後、混合物の状態調製を行った。状 態調製は、混合物に水分を添加して含水率(11.0~15.5 重量%)を変化させた。なお、プルラン粉末/檜粉末 の混合比は、30/70、20/80、10/90 としたが、本 報告では、30/70 の結果を示す。 2.3 圧縮成形 実用的なトレー作製のため、圧縮成形装置を用いて、 温度 125℃で、プルラン粉末/檜粉末の圧縮成形実験 を実施した。圧縮圧力は、50~80t である。トレー成 形体用金型とトレー成形体の外観を図 1 および 2 に示 す。 2.4 物性測定 圧縮成形を施したトレー成形体(厚さ:2mm)から 試験片を切出して、JIS A 5905 に準用して曲げ試験を 実施した。試験条件は、試験片幅 50mm、スパン間距 離 80mm、曲げ固定台の半径 5mm、曲げ圧子の半径 5mm、試験速度 2mm/min である。曲げ試験における 荷重―伸び曲線から曲げ強さ、曲げ弾性率を測定した。 2.実験方法 2.1 プルランとは プルランは、デンプンを原料として黒酵母の一種で ある Aureobasidium pullulans を培養して得られるマ ルトトリオース(グルコースの 3 分子がα―1,4 結合) が、規則正しくα―1,6 結合した天然多糖類で無味無臭 *1:株式会社林原生物化学研究所 *2:株式会社アイビー *3:みのる化成株式会社 (a) (b) 図1 圧縮成形機の外観図 (a)上部の金型 (b)下部の金型 曲げ弾性率(GPa) 1.5 1 0.5 0 11 12.5 14 15.5 含水率(重量%) 3.結果および考察 図 3 には、圧縮圧力 60t 時のトレー成形体の曲げ強 さとプルラン粉末/檜粉末に含まれる含水率との関係 を示す。含水率が 11.0 重量%では、曲げ強さは約 30MPa まで増加した。これは、JIS A 5905 の中で繊 維板(密度 0.5g/cm3以上、曲げ強さ 30MPa タイプ) に匹敵する値である。本実験では、含水率 15.5 重量% を除いて、曲げ強さに含水率依存性は認められなかっ た。 図4 プルラン/檜粉末成形体の曲げ弾性率 と含水率との関係 (圧縮圧力 60t) 40 曲げ強さ(MPa) 図2 トレー成形体の外観図 (プルラン粉末/檜粉末= 30/70) 30 20 10 0 50 40 曲げ強さ(MPa) 60 70 80 図5 プルラン/檜粉末成形体の曲げ強さと 圧縮圧力 (t) 圧縮圧力との関係 含水率 12.5wt% 30 図5 プルラン/檜粉末成形体の曲げ強さと と圧縮圧力との関係 (含水率 12.5 重量%) 20 10 0 11 12.5 14 含水率(重量%) 15.5 図3 プルラン/檜粉末成形体の曲げ強さと 含水率の関係 (圧縮圧力 60t) 図 4 には、圧縮圧力 60t 時のトレー成形体の曲げ弾 性率とプルラン粉末/檜粉末に含まれる含水率との関 係を示す。含水率が 12.5 重量%では、曲げ弾性率は極 大の 1.3GPa まで増加した。 その後、 含水率 15.5 重量% では、大幅に弾性率が低下した。これは、含水率の増 加に伴い水分の蒸発が十分でなく、固化が不十分であ るためと思われる。 図 5 には、含水率 12.5 重量%のトレー成形体の曲げ 強さと圧縮圧力との関係を示す。圧縮圧力の増加に伴 い曲げ強さは、約 30MPa まで増加した。 4.まとめ プルラン粉末/檜粉末を原料としてトレー成形体を 作製した。トレー成形体から試験片を切出し、曲げ強 さ、曲げ弾性率を測定した。プルラン粉末/檜粉末の 混合比 30/70、 圧縮圧力 60t の条件下で、曲げ強さ (約 30MPa) 、曲げ弾性率(約 1GPa)の結果が得ら れた。 一方、プルランは水溶性であるため、長期使用や高 湿度の環境においては、耐水処理を施す必要性がある。 具体的な用途としては、現在はパーティー用トレー、 住宅用内装材、農業資材、自動車用部材等への展開を 図っている。 本研究内容は、第 22 回国際成形加工学会(2006)、平 成 18 年度プラスチック成形加工学会年次大会(2006) で発表した。 参考文献 1)光石、小林、茶園、文屋、芳中,第 12 回フィラーシン ポジウム講演予稿集,34(2004)