...

- 50 - 2 試験研究業務 2・1 外来魚の生態に関する研究 煙山 彰・盛岡

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

- 50 - 2 試験研究業務 2・1 外来魚の生態に関する研究 煙山 彰・盛岡
2
試験研究業務
2・1
外来魚の生態に関する研究
煙山
目
彰・盛岡地方振興局土木部綱取ダム管理事務所
的
外来魚であるブルーギルは、オオクチバスと比べて魚食性は強くないものの、他魚種の卵を捕食し、繁殖
力も強いことから、各地で在来魚への影響が懸念されている。県内では綱取ダム(盛岡市)、三郎堤(花巻市)
周辺で生息が確認されているが、本県における産卵時期、食性、成長等不明な点が多い。本県在来種にあた
える影響を検討するため、綱取ダムで駆除試験を行い、採捕したブルーギル、オオクチバスの測定をおこな
った。
方
法
平成18年4月28
大葛公園
日∼10月13日(8月
ダム船庫
大葛川
∼9月14日までは、
休止)に、綱取ダ
ム湖の八木田川、
中津川
大葛川の各流入部
綱取ダム
綱取大橋
およびダム船庫下
周辺の水深1m以
中津川
浅の岸よりの場所
において、平成17
年度の調査で効果
八木田川
の認められた、遮
光幕(遮光率80∼8
図1
綱取ダム調査地点( )
5%)を張ったカゴ
網(以降遮光カゴ網)24カゴを使用し、採捕を実
施した(図1)。カゴ網内には、餌等は入れなか
った。
カゴ網の形状を図2に示した(折りたたみ型
底面63cm×95cm、高さ60cm、目合い13mm)。遮光
カゴ網は、カゴ網上面に遮光幕を針金で止め内部
を暗くしたものである。
網揚げは、3∼7日間隔で、合計32回行った。
採捕したオオクチバス、ブルーギルは、持ち帰
り、体長、体重を測定し、生殖腺重量、胃内容物
および重量を測定した。
図2
試験に使用した遮光カゴ
- 50 -
結
果
1
採捕の状況
図3に調査日毎のブルー
全長組成
遮光カゴ網で採捕されたブルーギルの月別
9月
7月
21
19
17
15
13
11
9
7
体重1.1∼180.0gであった。満1年魚と思わ
れる全長7cm前後の個体は、6月から採捕さ
- 51 -
21
19
17
15
図4 ブルーギルの月別全長組成
採捕されたブルーギルは全長3.9∼20.4cm、
21
19
17
15
13
11
9
全長(cm)
全長組成は図4のとおりである。
21
2
19
大部分が生存しており、再放流した。
17
ナ、ゲンゴロウブナ、ウグイが入網したが、
9∼10月
15
カゴ網には、少数ではあるがコイ、ギンブ
40
35
30
25
20
15
10
5
0
0
るものと考える。
13
0
個体は、カゴ網を隠れ場所として使用してい
13
われているのが、時折観察されており、小型
11
オオクチバスは、小型個体が大型個体に追
7月
11
オクチバスがブルーギルよりも高くなった。
9
周辺に多く見られ、カゴに入網する比率はオ
40
35
30
25
20
15
10
5
0
9
オオクチバスの当歳魚と思われる稚魚がカゴ
(尾)
7
降、ブルーギルはカゴ周辺に少なくなるが、
6月
7
近辺に蝟集しているのが観察された。9月以
数
0
バス、ブルーギルとも、小型の個体がカゴ網
尾
40
35
30
25
20
15
10
5
0
7
現
ゴ設置で、約1尾のブルーギル、またはオオク
5
24カゴ×32回=768カゴとなるので、1回のカ
5
出
5
67尾であった。全体では、延べカゴ設置数は、
5
ル、ブラックバス合計で88尾、一カゴ当たり3.
20
15
10
5
0
3
した。最も多かったのは、9月15日でブルーギ
チバスが入網していたことになる。オオクチ
ブルーギル
図3 ギル、バスのカゴ入網数の推移
0
上昇し、10月に0.60尾と減少
オオクチバス
10月
7月に1.39尾、9月に1.81尾と
3
なかったが、6月には1.01尾、
3
たりの採捕数は、0.37尾と少
3
水温の低い4∼5月は一カゴ当
6月
ス389尾、合計783尾入網した。
(尾)
ルーギル394尾、オオクチバ
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
4月
を示した。遮光カゴには、ブ
5月
ギル、オオクチバスの入網数
れ始めた。6月に7cmに1つのピーク(▼)
50
が見られ、9∼10月には9cmとなった。
40
オオクチバスの全長組成を4∼7月、9∼
30
出
10月に分けて図5に示した。採捕されたオ
4∼7月
20
現
30
27
24
んど採捕されなかった。
21
0
18
入り口が大きくないため、大型の個体はほと
15
10
9
12
と考えられる。カゴ網の性質上、カゴ内への
6
20
36
33
9∼10月
3
0月にかけて、9cm前後の稚魚に成長したもの
0
30
36
0
30
(尾)
33
魚が多く採捕された。当歳魚はその後、9∼1
27
40
24
数
21
には当歳魚と思われる2cm前後(▼)の稚
18
0
50
15
尾
の個体は、満1令魚と考えられた。7月下旬
9
12
10
6
58.7gであった。4∼7月の時点で10cm前後
3
オクチバスは全長1.9cm∼36.4cm、体重0.1∼6
全長(cm)
図5
3
オオクチバスの全長組成
食性
胃内容物調査で空胃と認められたものは、
100%
出現率(%)
ブルーギル全個体中20.3%、オオクチバス
全個体中48.0%であった。カゴ網による捕
獲では、漁具を数日間設置してから揚げる
形態となるので、胃の中の食物は消化、排
80%
60%
40%
20%
出され、空胃の場合が自然条件のもとより
0%
も多い物と考えられる。
5月
水生昆虫
ブルーギルの胃内容物からは、水生昆虫、
昆虫
6月
ミジンコ
魚卵
7月
草
9∼10月
その他
石等
不明
図6 ブルーギルの胃内容物組成
陸生昆虫、魚卵、稚仔魚等の他、巻き貝、
植物片、石、木片等が出現した。最も多
く利用するのは水生昆虫であるが、季節
100%
い範囲の生物を食物として利用している。
また、トビケラ等は巣ごと摂餌している
ものと考えられ、巣の材料である小石、
木片、木の葉の切れ端等が観察された。
オオクチバスの胃内容物は、魚体の大
出現率(%)
毎に出現する魚卵、落下昆虫等かなり広
80%
60%
40%
20%
0%
5∼10cm
きさによって食性が異なり、概ね全長10c
mを越えると魚食性が強くなり、それ未満
の個体では水生昆虫、ミジンコを多く利
魚類
水生昆虫
昆虫
10∼15cm
全長
ミジンコ
不明
15cm∼
ゴミ木くず
図7 オオクチバスの全長別胃内容物組成
用していた。全長20cm以上の2個体の胃内容物から、釣り針、ワームが出現した。
- 52 -
その他
4
産卵時期
平成16年、17年に採捕した全長10cm以上のブ
生殖腺指数の増減は、平成18年では、過去2年
間よりも若干遅めに推移した。産卵のピークは
6月下旬∼7月中旬と思われた。
生殖腺指数(%)
ルーギル雌について生殖腺指数(生殖腺重量/
体重(%))を求め、採捕日毎に図8に示した。
H16
25.0
H17
H18
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
4/23
5/23
6/22
7/22
月日
8/21
9/20 10/20
図8 ブルーギル(全長10cm以上)の生殖腺指数
- 53 -
Fly UP