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公益社団法人
目
次
Ⅰ
はじめに ............................................................... 1
Ⅱ
薬剤師に期待される役割 ................................................. 2
Ⅲ
ゲートキーパーの一員としての役割
1.自殺予防ゲートキーパーとは? ......................................
2.ゲートキーパーの果たす役割 ........................................
3.自殺についての基礎知識 ............................................
4.自殺のサイン(自殺予防の 10 箇条) .................................
5.うつ病と不眠 ......................................................
6.自殺のリスク ......................................................
-ゲートキーパーとしての心得-
7.内閣府自殺対策ゲートキーパー養成研修動画 ..........................
2
3
3
4
4
5
6
Ⅳ
アルコールとうつと自殺 ................................................. 7
Ⅴ
過量服薬防止に関する医療的な対策への貢献
1.適切な薬物治療の提供(過量服薬リスク者への対応を含む) ............
2.過量服薬の未然防止をめざして ......................................
-具体的な対応のポイント- ......................................
3.新潟県内の薬局での事例 ............................................
Ⅵ
8
8
9
9
自殺予防のための相談窓口の活用
1.かかりつけ薬局・薬剤師から相談機関へのフローチャート ..............
2.参考 ..............................................................
3.支援情報検索サイト(内閣府) ......................................
4.新潟県内の主な相談窓口 ............................................
自殺など様々な心の悩みに関する相談
心の健康に関する相談
児童虐待、養育困難、非行、家庭教育の悩みに関する相談
DV・セクハラ被害など女性の悩みに関する相談
高齢者に係る日常生活上の心配事などに関する相談
障害者や難病に関する相談
ひとり親の就業、離婚による養育費の取得に関する相談
職場における心の健康・労働問題に関する相談
求職・経営に関する相談
生活安全・犯罪被害に関する相談
5.地域の相談機関 ....................................................
相談受付事例報告書
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12
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※情報共有のためのフォーマット ......................... 15
【参考】過量服薬対策、自殺予防対策に関する今後の取り組みについて ........... 16
Ⅰ
はじめに
平成 10 年以降、14 年連続で、わが国での自殺者数は 3 万人を超え、平成 24 年に 15 年
ぶりに 3 万人を割り込んだとはいえ、今も高い値で推移しています。特に 15 歳~34 歳の
若い世代で死因の第1位が自殺となっているのは、先進7か国(アメリカ、イギリス、フ
ランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)では日本のみで、死亡率も他の国に比べて高
く深刻な問題となっています。
新潟県の平成 26 年の自殺者は前年より 50 人少ない 610 人で、5年連続で減少している
ものの自殺死亡率(人口 10 万人当たりの自殺者数)は 26.2 で全国ワースト4位です。
厚労省の「自殺・うつ病対策プロジェクトチーム」の取りまとめで、過量服薬への取組
みとして「薬剤師の活用」が提言されています。
また、自殺対策基本法に基づき、政府が推進すべき自殺対策の指針として策定された「自
殺総合対策大綱」では、過量服薬対策の徹底等が盛り込まれ、ゲートキーパーの役割を担
う人材の養成なども挙げられており、私たち薬剤師が、地域におけるゲートキーパーとし
て自殺念慮のある方々を見つけだし、つなげるということがますます求められています。
新潟県薬剤師会では、平成 22 年度から全国に先駆けて自殺予防対策の事業化を開始し、
平成 26 年度までに薬剤師向けのゲートキーパー養成研修会を4回、一般県民向けの公開講
座を 1 回、ルーテル学院大学自殺危機初期介入スキルワークショップを 13 回(修了者は合
計 204 名)、フォローアップ研修会を 3 回開催し、薬剤師の自殺対策としての研修を重ねて
きました。
この度当会では、薬剤師がゲートキーパーとしての知識を習得し、地域で悩んでいる人
に対応できるよう、つなぎ先を明確に把握しておくことが必要であることから、本マニュ
アルを作成することといたしました。
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Ⅱ
薬剤師に期待される役割
平成 24 年度末現在、全国の医薬分業率は 66%に達し、薬局数は 5 万 5 千を超え、年間
7 億 5 千枚以上の処方箋が発行されていることから、薬局・薬剤師は調剤、医薬品販売等
を通じて、日々地域住民の方々との接点を持っていることになります。
処方箋応需の際に処方箋の記載内容に疑問を感じるだけでなく、薬剤服用歴等によって、
日ごろの患者状況を把握できていることから、心や体の様子の変化などを見つけだせる大
きな社会資源として薬局を位置付けることができると言えます。
また、信州公衆衛生雑誌 vol.7「自殺企図者における過量服薬に関する実態調査」によ
れば、自殺企図者の約 41%が過量服薬を自殺手段としており、そのうち 74%は精神科処
方薬とのことです。患者さんの命を救うために、私たち薬剤師がお渡ししている医薬品が、
自殺の手段の一つとなっていることを考えると、薬剤師は、過量服薬や残薬管理を含めて、
これまで以上に職能を発揮することが求められているのではないでしょうか。
患者さんの「小さな様子の変化」に「気づく」アンテナを張ることで、自殺を考えてい
る方を見つけだすことが可能となります。この「見つけだす」という、薬局が持つ機能を
最大限に活用し、地域住民の健康を守っていくことが必要とされています。
Ⅲ
ゲートキーパーの一員としての役割
1.自殺予防ゲートキーパーとは?
ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につな
げ、見守る人のことです。
悩みを抱えた人は、
「人に悩みを言えない」、
「どこに相談に行ったらよいかわからない」、
「どのように解決したらよいかわからない」等の状況に陥ることがあります。周囲が悩みを
抱えた人を支援するために、周囲の人々がゲートキーパーとして活動することが必要です。
自殺対策におけるゲートキーパーの役割は、心理社会的問題や生活上の問題、健康上の問
題を抱えている人や、自殺の危険を抱えた人々に気づき、適切にかかわることです。
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2.ゲートキーパーの果たす役割
(内閣府編:誰でもゲートキーパー手帳より)
3.自殺についての基礎知識
○新潟県の自殺者数、自殺死亡率は、減少傾向にありますが、毎年 600 人を超える方が自殺
で亡くなり、自殺死亡率は全国よりも常に高い値で推移する危機的な状況にあります。
○男性は、働き盛り世代及び高齢者の自殺死亡率が高い傾向にあります。
○女性の自殺者数は、60 歳以上が全体の6割を占めています。
○主な自殺の原因としては、健康問題(50%)が最も多く、次に家庭問題(19%)、経済・生活
問題(14%)の順に高くなっています。
(新潟県ホームページより)
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4.自殺のサイン(自殺予防の 10 箇条)
次のようなサインが数多く認められる場合は、自殺の危険が迫っていると言われています。
1. うつ病の症状に気をつける(気分が沈む、涙もろい、食欲がない
2. 原因不明の身体の不調が長引く(不眠、めまい、味覚異常
など)
など)
3. 酒量が増す
4. 安全や健康が保てない
5. 仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う
6. 職場や家庭でサポートが得られない
7. 本人にとって価値あるもの(職、地位、家族、財産
など)を失う
8. 重症の身体の病気にかかる
9. 自殺を口にする
10. 自殺未遂に及ぶ
(厚生労働省編:職場における自殺の予防と対応)
5.うつ病と不眠
自殺既遂者は、その多くが何らかの精神疾患に罹患した状態にあるといわれています。し
かし、初めに受診するのは通常、内科や婦人科など専門医でないケースが7割を超えるとさ
れています。薬剤師は、その症状がうつ症状からくる可能性があることを常に忘れず、患者
さんへの服薬指導をすることが重要です。うつ病の場合はその9割以上が不眠症状を訴える
ことから、薬剤師として、その不眠症状についても注意を払うことが大切です。
睡眠薬を服用しても不眠が2週間以上続いているという症状は、うつ病からくる不眠の可
能性がありますので、早めの専門医の受診や相談を促しましょう。
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6.自殺のリスク
自殺に追い込まれる背景には「孤立」というキーワードがあると言われています。
①家族や周囲との折り合いが悪い。(と本人が感じている)
②自分を理解してくれる人や相談できる相手がいない。(と本人が感じている)
③相談しても仕方がない、迷惑をかけるので相談できない。(と本人が感じている)
上記に加えてうつ病の症状があれば、自殺のリスクがより高いと考えなければなりません。
そうした場合には、努めて丁寧にじっくりと話を受け止め、寄り添う姿勢を心がけながら、
専門機関につなぐ必要があります。
—ゲートキーパーとしての心得—
1. 自ら相手とかかわるための心の準備をする
2. 温かみのある対応をする
3. 真剣に聴いているという姿勢を相手に伝える
4. 相手の話を聴く
5. ねぎらう
6. 心配していることを伝える
7. わかりやすく、かつゆっくりと話をする
8. 一緒に考えることが支援
9. 準備やスキルアップも大切
10. 自分が相談にのって困ったときのつなぎ先を知っておく
(内閣府編:ゲートキーパー養成研修用テキストより)
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7.内閣府自殺対策ゲートキーパー養成研修動画
内閣府ではゲートキーパー養成DVD(動画)を作成しました。この動画では、ゲートキ
ーパーが、自殺の危険性がある人をどのように認識し、対応するか。また、初期の支援や、
適切な支援への導入をどのように行うかということをメンタルヘルス・ファーストエイド※
の5ステップに基づいて学びます。
※メンタルヘルスの問題を有する人に対して適切な初期支援を行うための行動計画で、オーストラリアの Betty A
kitchener と Anthony F Jorm により開発されました。
動画は内閣府自殺対策推進室のホームページに掲載されています。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/kyoukagekkan/gatekeeper-index.html
内閣府 ➡ 内閣府の政策 ➡ 共生社会 ➡ 自殺対策 ➡ ゲートキーパーとは?
➡ ゲートキーパー養成研修用DVD(第2弾) ➡ <Disc2. 専門家編> 薬剤師編
良い対応
悪い対応
解 説 編
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Ⅳ
アルコールとうつと自殺
平成 26 年6月に「アルコール健康障害対策基本法」が施行され、その中で「医療関係者
はアルコール健康障害の発生、進行及び再発の防止に寄与するよう努め、アルコール健康障
害に係る良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない」と明記されました。
アルコール健康障害は自殺にも密接に関連し、「アルコールとうつと自殺は死のトライア
ングル」とされています。薬剤師が薬物の専門家としてエタノールという薬物の功罪を理解
し、服薬指導に活かしていくことも間接的な自殺予防になります。
・自殺既遂者のうち 20%程度が、亡くなる 1 年以内にアルコール問題が認められ、そのいず
れもが 40 代~50 代の男性であるという報告があります。(赤澤正人ら「アルコール関連問題を抱え
た自殺既遂者の心理社会的特徴:心理学的剖検を用いた検討」
『日本アルコール・薬物医学会雑誌』45、104-118 頁より)
・必ずしもアルコール依存症でなくても、多量飲酒により衝動性が増すことから自殺のリス
クが高くなります。
・アルコールにはうつ状態を誘発させる場合があります。また、すでに存在するうつ病を悪
化させることがありますので、「飲酒は、少しくらいならば良い」とする指導は避けるべき
です。「ほんの一杯くらい」により抑制が利かなくなる例が多くあります。
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Ⅴ
過量服薬防止に関する医療的な対策への貢献
1.適切な薬物治療の提供(過量服薬リスク者への対応も含む)
前述のように自殺企図者の約 41%が過量服薬により自殺を図っており、その 74%が精神
科処方薬であったとの報告があります。(信州公衆衛生学会
『信州公衆衛生雑誌』 vol.7 より)
また、平成 24 年の調査では薬物関連障害患者の主な乱用薬物の内訳は、覚せい剤、危険
ドラッグに次いで睡眠薬・抗不安薬が 15%を占めているという結果も処方薬依存症と考えら
れるほどの大きな問題として捉える必要があります。
私たち薬剤師は、その処方薬をお渡ししている最後の医療関係者として、用法や副作用な
どの服薬指導に加えて薬物乱用、依存症や自殺リスクの観点からも過量服薬を防止する指導
が必要です。
・特に向精神薬の重複投薬や複数の医療機関からの処方等をしっかり確認しましょう。
・不適切な受診(ドクターショッピング)や偽造処方せんにも注意しましょう。
・患者背景にも留意し、患者さんへの必要な声掛けや相談を受けられる体制を作りましょう。
2.
過量服薬の未然防止をめざして
「過量服薬」とは、一度に大量の薬剤を服薬する「大量服薬」と医師の指示以上に頻繁に服
薬する「頻回服薬」に分類され、それぞれ意図的・非意図的な場合があります。
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—具体的な対応のポイント—
○薬物依存を防ごう
①服薬状況、多科受診の有無等を確認する
②睡眠が十分とれない→必要に応じて精神科への受診を勧める
③アルコールを飲む習慣がある
→アルコールと薬の併用の危険性を伝える(→P7 へ)
④こころの相談が必要なときは、相談窓口へつなぐ(→P10 へ)
○医師へ情報提供しよう
他科・他医療機関からの処方内容や、残薬の状況など、患者から
入手した情報を、必要に応じて医師にフィードバックしましょう。
3.
新潟県内の薬局での事例
ある会員薬局での出来事です・・・。
重度の糖尿病があり、仕事をすることもできず、昼間からお酒を飲むというAさんが、ろ
れつが回らない様子で薬局にいらっしゃいました。少し時間をかけてお話を聞いたところ、
涙を流して自殺を考えることがあると話され、ご自宅までお送りしました。ご自宅にはたく
さんのお酒の空き瓶と一緒に、多くの飲んでいないお薬があるということで、今後過量服薬
の可能性もあるため、ご本人の許可を得て薬局で回収させていただくことにしました。その
後、ご本人の許可を得て、地域包括支援センター、行政区役所にも連絡をさせていただきま
した。薬局を利用される際の毎回の声掛けと多職種連携により、見守る体制が少しずつです
が作り上げられ、今では笑顔で薬局にいらっしゃいます。薬剤師が直接救うことは難しくて
も、地域における他職種連携の入り口にはなることができると実感しました。
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Ⅵ
自殺予防のための相談窓口の活用
1.
かかりつけ薬局・薬剤師から相談機関へのフローチャート
2.参考
○自殺対策白書
(内閣府ホームページ http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/index-w.html)
○日本自殺予防学会ホームパージ (http://www.jasp.gr.jp/index.html)
○自殺予防総合対策センターホームページ
(http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/)
○厚労省 知ることからはじめよう「みんなのメンタルヘルス」
こころの健康対策~うつ病~(http://www.mhlw.go.jp/kokoro/nation/dyp.html)
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3.
支援情報検索サイト(内閣府)
支援情報検索サイトは、内閣府が作成により作成され、全国一斉相談の実施と支援を必要
としている人が確実に適当な相談事業の情報に辿り着けることを目的としたサイトです。サ
イトは、以下の手順で検索できます。
1.支援情報検索サイトのホームは以下のリンクです。
http://shienjoho.go.jp/
内閣府 ➡ 内閣府の政策 ➡ 共生社会 ➡ 自殺対策 ➡
相談窓口一覧 ➡ 支援情報検索サイト
悩みの種類を選択してください。
2.
「キーワード」
、
「場所」どちらでも検索する
ことができます。
条件を指定して検索してください。
※都道府県で全国を指定した場合、全国対応可
能な事業のみ検索されます。
3.
「検索」をクリックすると検索
条件に応じて実施主体、事業名、
日時などが一覧でご覧できます。
11
4.
新潟県内の主な相談窓口
12
13
5.
地域の相談機関
主な相談内容
※日頃から地域の相談機関を書き出しておきましょう。
相談機関名
連絡先
14
備考
相
談
受
付
事
例
報
告
書
情報共有のため、受け付けた事例を、下記様式にて新潟県薬剤師会へご報告ください。
※本フォーマットは本会ホームページ(会員ページ)からダウンロードできます。
※お寄せいただいた事例は当会事業の今後の参考とさせていただきます。
報告日
施設名・薬剤師氏名
連絡先(電話)
□相談者の性別
男性
・
女性
□相談者の年代
10 代
・
20 代
・
30 代
・
40 代
60 代
・
70 代
・
80 代
・
その他(
・
50 代
)
□相談内容(なるべく詳細にご記入ください)※実名など個人情報は記載しないでください。
□関連する処方薬・一般用医薬品等
□行った対応(つないだ先など)
【送付先】新潟県薬剤師会事務局
メール:[email protected]
電
話:025-281-7735
FAX:025-281-7735
15
【参考】過量服薬対策、自殺予防対策に関する今後の取り組みについて (日本薬剤師会 日薬業発第 327 号 平成 23 年2月 23 日)
16
17
平成 27 年3月発行
発行
〒950-0941
公益社団法人新潟県薬剤師会
新潟県新潟市中央区女池 1-3-16
電話:025-281-7730
FAX:025-281-7735
18
新潟県薬剤師会館内
HP:http://www.niiyaku.or.jp/
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