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原油高騰の日本経済への影響

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原油高騰の日本経済への影響
今月のトピックス No.160-1(2011年3月23日)
原油高騰の日本経済への影響
・世界の原油消費量は、アジアなど新興国の経済成長に伴うエネルギー需要拡大などで、2000年以降増加基調
で推移してきた。リーマンショック後の世界同時不況により、08年、09年は前年比で減少したが、10年には増加
に転じた模様。
・新興国のエネルギー需要拡大に加え、投機マネーの流入もあり、原油価格は2000年代半ばから急上昇。08年
7月4日には史上最高値の140.6㌦/バレルをつけた。リーマンショック後に急落したが、再び上昇基調を取り戻
している。11年に入り、北アフリカ・中東の反政府デモの拡大により、原油価格の上昇ペースが加速、3月10日
現在110㌦/バレル台で推移している。
・チュニジアで始まった反政府デモは、エジプトに飛び火してムバラク政権が崩壊。リビア情勢が緊迫化するなど
反政府デモは北アフリカ・中東全域に拡大しており、沈静化の兆しがみえていない。中東地域は、世界の原油
埋蔵量の約6割、生産量の約3割を占めており、同地域の政情不安定化が、原油価格に上昇圧力をかけて
いる。
図表1
150
図表2
世界の原油消費量
(前年差、百万トン)
為替レートと原油価格
(㌦/バレル)
(円/㌦)
160
150
為替レート(左目盛)
為替レート(左目盛り)
BP Energy Outlook 2030
による予測
ドバイ(右目盛り)
ドバイ(右目盛)
100
140
50
120
90
0
100
60
80
30
-50
その他
アジア
欧州
米国
120
合計
(月次)
(年)
60
-100
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
(備考) BP資料により作成
図表3
世界の原油生産量
アジア大洋州 その他 5.3%
アジア大洋州 3.2%
エジプト 0.9%
アルジェリア 3.3%
アフリカその他
5.0%
欧州その他
4.2%
米州その他
15.8%
図表4
アジア大洋州 3.2%
リビア 0.9%
ロシア 5.6%
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11
(備考) 各種資料により作成
世界の原油埋蔵量
エジプト 0.3%
ノルウェー
0.5%
0
サウジアラビア
19.8%
リビア
2.1%
アルジェリア
2.3%
アフリカ
9.6%
アフリカその
他 6.9%
中東
30.5%
中東
56.6%
イラン 10.3%
欧州その他
6.7%
欧州
22.1%
イラク 7.6%
米国
2.1%
(備考) BP資料より作成
クウェート 7.3%
中東その他
2.8%
イラク 3.1%
中東その他
3.6%
米州
25.2%
ノルウェー
2.9%
UAE 3.3%
クウェート 3.1%
UAE 8.6%
カナダ
2.5%
イラン 5.3%
アジア大洋州
10.1%
アフリカ
12.1%
欧州
10.3%
米州
20.4%
サウジアラビア
12.1%
中国 4.7%
ロシア 12.5%
米州その他
12.2%
(備考) BP資料より作成
米国 9.0%
カナダ
4.0%
今月のトピックス No.160-2(2011年3月23日)
・輸出価格を輸入価格で割った相対価格を交易条件と呼ぶ。輸出財1単位で交換することができる輸入財の量を
意味するため、この数値が上昇するほど、交易条件は改善する。
・09年以降の輸出入価格をみると、円高にもかかわらず、輸入価格はむしろ上昇基調にある。鉱物性燃料を除く
輸入価格の上昇幅は小さく、原油など鉱物性燃料価格の高騰が輸入価格を押し上げている。一方、輸出価格
は、円高が続く中、グローバル化に伴う競争激化などで価格転嫁が進まず、下落基調となっている。結果として、
交易条件は悪化している。
・原油価格上昇は産油国からの課税と同様の効果があり、日本の購買力を押し下げる。交易条件の変化により
生じる交易 利得・交易損失をみると、2008年には鉱物性燃料の価格上昇要因で6.2兆円の交易損失(全体で
7.2兆円の交易損失)が発生した。今回の原油高が一層進み、仮に2011年平均で150㌦/バレルまで上昇すると、
2008年に匹敵する6.0兆円の交易損失を被ると試算される。これは、消費税2.5%分に相当する規模である。
図表5
図表6
交易条件
(2000年=100)
160
160
交易条件(鉱物性燃料を除く)
(2000年=100)
輸出価格
輸出価格
140
140
輸入価格
交易条件
交易条件
120
輸入価格(除く鉱物性燃料)
120
100
100
改善
改善
80
80
悪化
(四半期)
60
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
(四半期)
60
00
10
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
(備考)1 内閣府 財務省統計により作成
(備考)1.内閣府、財務省統計により作成
2.輸出価格、輸入価格はそれぞれ輸出デフレーター、
輸入デフレーターを用いた
(備考) 内閣府統計により作成
図表7
悪化
図表8
交易利得・損失の要因分解
原油価格上昇に伴う交易損失シミュレーション
(前年差、兆円)
5
(前年差、兆円)
4
その他要因
3
鉱物性燃料要因①(為替変動分)
2
鉱物性燃料要因②(外貨建価格変動分)
1
交易利得
想定原油価格(2011年平均)
100ドル/バレル 150ドル/バレル 200ドル/バレル
0
-1
0
-2
-1
-3
-2
-3
-2.6
-4
-4
(四半期)
-5
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
(備考)1.日本政策投資銀行試算
2.その他要因とは、鉱物性燃料を除く財の価格変動によ
って生じた分を抽出したもの。例えば、円高時にドル
建て輸出価格に円高分が転嫁され、交易利得が生じた
場合には、その他要因となる
3.鉱物性燃料要因①(為替変動分)は、鉱物性燃料の価
格変化のうち為替変動分を抽出、鉱物性燃料②(外貨建
価格変動分)は為替変動を除いた外貨建価格変動分を
抽出した
-5
-6
-6.0
-7
-8
-9
-8.7
-10
(備考)日本政策投資銀行試算
[産業調査部 経済調査室
佐藤 正和]
今月のトピックス No.160-3(2011年3月23日)
・本資料は、著作物であり、著作権法に基づき保護されています。著作権法の定めに従い、引用する際は、
必ず出所:日本政策投資銀行と明記して下さい。
・本資料の全文または一部を転載・複製する際は著作権者の許諾が必要ですので、当行までご連絡下さい。
お問い合わせ先 株式会社日本政策投資銀行
Tel: 03-3244-1840
E-mail: [email protected]
産業調査部
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