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初期評価プロファイル(SIAP) 四塩化スズ
SIDS in HPV programme & CCAP SIAM 24, 17/04/2007 初期評価プロファイル(SIAP) 四塩化スズ 物 質 名 :Tin tetrachloride CAS No.:7646-78-8 化 学 式 :SnCl4 SIARの結論の要旨 水性溶媒中では、四塩化スズは急速に加水分解し、塩酸(塩化水素、HCl)および無機のスズ(Ⅳ)酸化物また は、水酸化物類を生成する;酸化物と水酸化物類は不溶で沈殿物を生成する。塩化水素(CAS.7647-01-0)、他 の生物学的に活性な四塩化スズの加水分解産物は、OECD SIDS評価行程を既に通過している。HClは急速に 解離する、その影響は、塩化水素/塩酸の影響よりもむしろ、pH変化の結果であると考えられる。HClの生態 毒性と哺乳動物毒性データは、四塩化スズの毒性を代表すると考えられている。 ヒトの健康 トキシコキネティクス試験は、無機スズ(Ⅳ)はほとんど吸収されず、妊娠ラットの胎盤を通過しないことを 示す。Sn(Ⅳ)の経口経由(つまり胃腸管)による吸収は、1%未満から約8%までの範囲に渡ることが示されてき た。摂取されたスズはほとんど吸収されずに主に便中に排出され、吸収された部分は、尿中にゆっくり排泄 される。無機スズは、一般的に主に骨に分布するが、肝臓と腎臓にも分布する。 四塩化スズの吸入LC50は、加湿空気中での蒸気にばく露された雄ラットについて1.35 mg/Lと決定された。 HClの急性の経口LC50は、雌について238-277 mg/kg bwと決定された;吸入LC50は、ばく露期間に依存して ラットについて23.7-60.9 mg/L/5分、5.7-7.0 mg/L/30分と4.2-4.7 mg/L/60分、マウスについて20.9 mg/L/5分、 3.9 mg/L/30分、1.7 mg/L/60分と決定された。 四塩化スズは重篤な眼の刺激性物質であり、皮膚の壊死を引き起こすことがある。もし飲み込んだならば、 四塩化スズは口、喉、胃の重篤なやけどを引き起こし得る。HClは皮膚に対して腐食性であり、眼のばく露 による重篤な影響が予期され得る。四塩化スズはラットで粘液誘出後に感作を引き起こさず、皮膚感作性物 質と予期されない。HClは皮膚感作性物質ではない。 四塩化スズの28日強制投与試験は、ミルク+Tween80中798 mg/kg/日の用量で投与され、死亡例、および 処理に関連した体重変化を雌雄ラットで生じなかった、但し、これらのデータは限定的である(つまり、投与 は幼獣になされ、単回投与のみであった)。4価の無機スズ(主に中性pHにおけるSnCl4の加水分解産物)の追加 的支持情報は、無機スズ(Ⅳ)の酸化物を0、0.03、0.10、0.30および1.00%の混餌(~0、23.7、79、237、790 mgSn/kg-bw)で28日間に渡り摂餌させたラットが、7900 ppm tin(1.0%)までの飼料レベルで、全体の体重増 加、絶対的および相対的臓器重量、肝臓、心臓、腎臓、脾臓の巨視的、微視的観察のいずれにおいても如何 1 一般社団法人 日本化学物質安全・情報センター なる有害影響も示さなかったことを示す。HClについて、10 ppmのNOAELが90日反復投与吸入試験でラッ トとマウスに対して決定された。肝臓重量変化(雄マウス)と病理組織学的炎症変化が高用量で見られた。 四塩化スズは、標準的および改変Ames試験で陰性であり、二つのin vitro染色体異常試験で陽性であった。 HClは標準Ames試験で陰性であった。HClの染色体異常試験は、陽性と陰性の結果を生じた;しかし、陽性 影響は低pHのための人為的産物と考えられた。全体として、四塩化スズは遺伝子毒性と考えられない。 HClについて処理に関連する発がん性の証拠は、吸入、経口、または経皮投与で実施された動物試験で観 察されなかった。 四塩化スズの生殖/発生毒性に関する情報は利用出来ない。信頼出来る90日吸入試験で50 ppmまでのHCl にばく露したラットとマウスにおいて生殖器官の影響は観察されなかった。生殖/発生毒性の酸化スズ(Ⅳ)に 関する情報は利用出来ないが、他の指標の利用可能なデータは、一般に本化合物の毒性は低く、生殖/発生毒 物であると予期されないことを示す。 環境 四塩化スズは、融点/凝固点が-33℃、沸点が114℃の無色から淡黄色の液体である。四塩化スズの蒸気圧は 24hPa(20℃)である。四塩化スズは激しい水反応性であり、急速に化学変化し、酸化スズ(Ⅳ)または、酸化ス ズ(Ⅳ)水和物、塩酸(HCl)および熱を生成する。塩化スズ五水和物は、商業的に入手可能な形状であり、また 使用と保存の際の通常条件下で化学的に安定である。四塩化物に似て、塩化スズ五水和物も水または湿気に ばく露すると分解する。 四塩化スズの物理/化学的性質は、水中で急速に加水分解するので、哺乳動物試験または水生試験の投与に 用いられる調剤中で四塩化スズを維持することは不可能である。四塩化スズは、ゼブラフィッシュ(B.rerio) に対する限界試験で毒性はなく(LC50(96時間)>1000 mg/L)、種々の藻類で一次生産性が僅かに阻害された (IC50値は>11 mg/Lから>110 mg/L)。四塩化スズを用いた生態毒性試験については、試験溶媒のpHを安定さ せるためにpH調整が実施された。HClについては、pH4.3(試験物質4.92 mg/Lに相当)におけるLC50(96時間) がCyorimus caprioについて報告され、D.magnaの遊泳阻害に対するEC50(48時間)はpH5.3(0.492 mg/L)と決 定され、緑藻Pseudokirchneriella subcapitataの成長速度に基づくEC50(72時間)はpH5.3(0.492 mg/L)、 NOECはpH6.0(0.097 mg/L)と決定された。四塩化スズは、活性汚泥中の好気性バクテリアに毒性でなかった。 水生生態系のpH変化に対する耐性可能な程度は、その緩衝能力に依存し、水生生物は異なる最適pH条件 を有する。HClは通常の温度と圧力でガスの状形で存在し、水に非常溶けやすいので、環境に放出されたHCl は水(イオンとして)と大気の両方に分布する。解離性を考慮すると、HClは高い溶解性のために生体に蓄積す ることは予期されない。さらに、pHは水質の重要なパラメーターであるため、流出水のpHはしばしば水質 維持管理のために測定され、そして水生生態系において容易に適合する。それ故、放流水のpHの顕著な増加 は予期されない。 安定性定数に関する研究は、一般的にスズ(Ⅳ)イオンの酸化物/または水酸化物との親和性は、フッ化物や 塩化物のような他のアニオンとの親和性よりも強いことを示す。酸化スズ(Ⅳ)は水に不溶であり、主に土壌と 2 一般社団法人 日本化学物質安全・情報センター 底質に分布すると予期される。無機スズは、相対的に不動で非揮発性であり、生物への生物学的利用能は低 い傾向がある。底質からの無機スズの放出は高い嫌気性条件を除いて起こりそうもない。 ばく露 2000年には、四塩化スズの世界の製造量は、20,000から25,000トンと推定された。認められるほどの四塩 化スズへの消費者の直接的ばく露があることは予期されない。製造された四塩化スズの大部分は、例えば塩 ビの安定化剤として使用される有機スズ化合物のような、他のスズ化合物製造の化学的中間体として用いら れる。他の用途は、ガラス瓶の被覆、およびエラストマー加工を含む特殊な触媒としての適用を含む。分析 によると、ほとんどの場合に四塩化スズは、有機スズ安定剤中に0.1%より低いレベルで見出されること;注 目される一つの例外は、モノメチルスズ三塩化物中の約5%の四塩化スズの存在であることを示す。化学的中 間体として用いられるとき、閉鎖システムが作業者ばく露と放出を制御する。ガラス被覆用途は、作業場所 におけるフードや換気によるプロセス蒸気の局所的制御を利用する。これらの適用による制御の本質は、四 塩化スズへのばく露の可能性を制限する。 環境への放出は、この中間体の製造の際の一部または、他の有機スズ化学物質への変換の際に生じると予 期される。空気の存在下では、四塩化スズは反応して酸化スズ蒸気と塩素ガスを生じ、それらは製造中に放 出されることがある。スズ(Ⅳ)酸化物は、産業で長く使われてきており、不溶性で、非揮発性である。HCl は天然に生じ、製造現場と使用者サイトから環境へ放出されることがある。水中のHCl濃度の増加は、水生 生態系のpHを減少させる;しかし一般的に水生生態系では、pHを維持する緩衝能力がある。 勧告と勧告の理由、推奨される追加作業の性質 ヒトの健康 本化学物質の追加作業の優先順位は低い。本化学物質の加水分解産物(HCl)は腐食性を持ち、職業的使用の際 に比較的低いレベルでヒト健康有害性を示す(吸入経由による急性毒性と反復投与毒性、および眼と皮膚に対す る腐食性)。担当国により提出されたデータに基づけば、適切なリスク管理措置が適用されている。諸国は、追 加的措置の必要性があるか否かを見出すために、彼等自身のリスク管理措置の点検を望むかもしれない。 環境 この化学物質の追加作業の優先順位は低い。本化学物質の加水分解産物(HCl)は環境に対して有害性を示す 性質を持つ(試験溶液の酸性度による、魚類、無脊椎動物と藻類に対する急性毒性)。この有害性は高ばく露レ ベルでのみ明らかなpHの影響に関連するので、追加作業を正当化するものではない。それでもなお、それら は化学物質安全性の専門家と使用者によって注意されるべきである。 [著作権および免責事項について] [著作権] 本資料の著作権は弊センターに帰属します。引用、転載、要約、複写(電子媒体への複写を含む)は著作権の侵害となりますので御注意下さい。 [免責事項] 本資料に掲載されている情報については、万全を期しておりますが、利用者が本情報を用いて行う一切の行為について、弊センターは何ら責任を 負うものではありません。また、いかなる場合でも弊センターは、利用者が本情報を利用して被った被害、損失について、何ら責任を負いません。 3 一般社団法人 日本化学物質安全・情報センター