...

タブレット PC とリモートデスクトップを用いた,授業プレゼンテーションの改善

by user

on
Category: Documents
17

views

Report

Comments

Transcript

タブレット PC とリモートデスクトップを用いた,授業プレゼンテーションの改善
タブレット PC とリモートデスクトップを用いた,授業プレゼンテーションの改善
長野工業高等専門学校 ○堀内 泰輔,佐藤 優介,宮崎 敬
1. 発表の概要
本発表では,授業中に教授内容のプレゼンテーシ
ョン(以下,授業プレゼンと略記)をローコストで
実現できる改善方法を提案する.
PowerPoint などのプレゼンソフトでは,原資料の
文字や図が小さい場合,それをリアルタイムに拡大
するには種々の手間を要する.この場合,iPad など
のタブレット PC を用いると,容易に拡大縮小が行え,
表示画面で下線を引いたり,コメントを手書きで記
入することも可能である.
また,リモートデスクトップ関連のアプリをタブ
レット PC にインストールすることで,PC の画面を
タブレット PC 上に転送表示することが可能となる.
これにより,PC 画面に表示できるすべての情報を,
タブレット PC のみで操作できることから,操作が単
純になり授業での効率が向上する.
2. 授業プレゼンの現状と問題点
本校では耐震改修に関連して,すべての教室に液
晶プロジェクタが設置され,ノート PC を持ち込んで
のプレゼンが可能となった.筆者らは情報教育セン
ター端末室にて授業を行っているが,そこには教員
用 PC や液晶プロジェクタのほかに、書画カメラが設
置されている.図1に現状のシステム図を示す.
教員用PC
スクリーン
液晶
プロジェクタ
書画カメラ
図1
情報教育センターにおける画面提示システム
これにより,PC 画面上の諸情報(オフィス系ソフ
ト,PDF ファイル,Web ブラウザなど)の提示のほか,
教科書やプリントなどの紙情報も切り替え操作によ
り提示可能になっている.しかし,PC 画面と書画カ
メラ映像の切り替えに数秒の時間を要し,これが授
業の進行を妨げている.
さらに,授業では PowerPoint 系のソフトを使った
提示はできるものの,拡大や書き込みを行うには手
間を要し,実際にはレーザポインタなどで指示しな
がら口頭での説明を行うことが多くなり,適切な指
示ができなかったり,後方座席の学生が見にくいな
どで,効果的な教育が実施できない状況にある.
加えて,書画カメラで教科書などを提示する場合
に,印刷された用紙の管理を要すること,厚みのあ
る本では,支持方法,拡大縮小,ピント調整などの
困難を伴うこともある.
3. タブレット PC による改善方法
タブレット PC では,画面の拡大縮小がピンチイ
ン・アウト(2 本の指先での開閉)で簡単にできる
こと,PC のほぼすべてのファイルを表示することが
対応アプリのインストールによって可能であること,
液晶プロジェクタなどへのミラーリングができるこ
となど,多くの長所を持っている.
そこで,今回はタブレット PC として iPad(第3
世代)上に PDF ファイルやオフィス系ソフトによる
ファイルが表示できるアプリと,PC の画面情報を
iPad に転送でき iPad からも PC の遠隔操作が可能な
リモートデスクトップ系アプリを導入することで,
授業プレゼンに最適な環境を構築した.
現行の書画カメラを利用した教科書の提示に関し
ては,すべてのページをスキャンして PDF ファイル
化することで対処した.これはいわゆる「自炊」と
呼ばれる処理であるが,安価なドキュメントスキャ
ナの利用により,比較的短時間で PDF ファイル化が
できた.これにより,書画カメラの必要性はほとん
どなくなり,本システムの導入により,高価な書画
カメラの購入が不要になることは,大きなメリット
といえる.
4. システムの構築
4.1 タブレットPCの選定
昨年度の発表 1 ) では,タブレットPCはiPadと
Android系とに大別されていること,タブレットPC
の画面をスムーズに液晶ディスプレイに表示できる
製品は限定されること,などを述べた.よって今回
は,表示された画面すべてをミラーリングできると
いう大きな特徴を持つ,2012年4月に発売されたiPad
(第3世代)を用いた.
4.2 ファイルブラウザの選定
授業プレゼンでは,オフィス系ソフトやPDFファイ
ルによってプレゼンを行うことが多い.後述のリモ
ートデスクトップソフトにより,PC画面上の情報を
iPad上に転送できるため,PC画面の提示に限るなら
【連絡先】〒381-8550 長野市徳間 716 長野工業高等専門学校 一般科 堀内泰輔
TEL:026-295-7105 FAX:026-295-4950 e-mail:[email protected]
【キーワード】タブレット PC,リモートデスクトップ,iPad,プレゼンテーション)
ば,特にiPad上でのファイルブラウザは不要である.
しかし,前述のように,プレゼンにおいては拡大
縮小や手書きなどによるコメントが効果的であるた
め,これに対応するファイルブラウザが必須となる.
PDFファイルのブラウザで手書きコメントの機能を
持つアプリには,無償,有償を含めて多くのものが
あるが,有償アプリ(450円)の「GoodReader」は,Word
やExcelなどのオフィス系ソフトのファイルをその
まま表示できるため,これを選定した.
4.3 リモートデスクトップソフトの選定
リモートデスクトップソフトは2)に示すように多
くのものがあるが,このうち今回テストを行った製
品を表1に示す.代表的な無償アプリに加えて,安
価な有償アプリも数点選択した.
表1
リモートデスクトップソフトの比較
アプリ名
Mocha VNC Lite
Mocha VNC
LogMeIn Ignition
TeamViewer
Splashtop Remote Desktop
iRdesktop by Thinstuff
種類
VNC
VNC
独自方式
独自方式
独自方式
RDP
コスト
無償
500円
無償
個人利用は無料
250円
無償
4.4 無線LANアクセスポイントの選定
リモートデスクトップソフトを使うには,iPadと
PCとを無線LANで接続する必要がある.この場合,有
線LANの環境があれば,無線LANアクセスポイントの
設置により,安価に無線LAN環境が得られる.今回は
PCI社のMZK-SA150Nを用いた.
以上により,図2に示すシステムを構築した.
図2 新システム図
5. システムの評価
まず,ファイルブラウザとして選択した「GoodReader」であるが,PDFファイルの表示,手書きコメ
ント,拡大縮小など,授業プレゼンに必須とされる
機能を持つことが確認できた.オフィス系ファイル
についても同様である.
気になった点を1点あげる.1回の授業では複数
のファイルを表示する必要があるが,ファイルの選
択に戸惑うことがあった.各ファイルは上部のタブ
により切り替えられるようになっているが,ファイ
ル名が長いとそのすべてが表示できないためであり,
この対策としてはファイル名を短縮するしかない.
次に,リモートデスクトップソフトの評価である
が,予想に反して,すべての必須条件を満たすアプ
リは今回選定したものには存在しなかった.
拡大縮小については,タブレット上では機能する
ものの,プロジェクタ上では機能しないアプリがあ
った.さらに本アプリでは,iPad上のキーボード表
示がプロジェクタ上ではなされず,見たままそのま
まを表示する完全なミラーリングになっていない.
また,すべてのアプリでPC上のマウスやキーボー
ド操作が可能なものの,あまり使わない機能は無償
ソフトで省かれていたり,操作が非常にやりにくい
ものが散見された.今回はPCが近くにあることを想
定しているため,操作はPCで行えば良いが,この場
合にPCでは画面が表示されない製品もあった.
実際の授業ではPDFファイルの表示とPC画面の表
示を交互に切り替えることは頻繁に発生する.これ
には,iPad(第3世代)上では4本の指で画面上を同
時にスワイプ操作することで,非常に短時間で軽快
に行える.前述の,PC画面と書画カメラ映像の切り
替えに数秒を要する問題は,本システムでは完全に
解決された.
しかし,テストしたアプリの約半数で,他のアプ
リに移行すると,当該アプリがリセットされてしま
うために,当該アプリに戻ってきたときにPCとの再
接続を要することがわかった.これは本システムの
要件としては致命的な欠点である.
6.今後の課題
以上の評価により,いまのところすべての要件を
満たすリモートデスクトップ用アプリはテストした
ような安価な製品の中では得られないことがわかっ
た.しかし,今回選定したアプリは数百円オーダー
のものであり,それ以上の価格のアプリであればす
べての要件を満たす可能性は十分にある.今後は,
新情報をキャッチしつつ,理想的なシステムとなる
よう,改良を続けていきたい.
参考文献
1) 堀内泰輔,宮崎敬:
「タブレット端末の教育機関
での活用」,高等専門学校情報処理教育研究発表会
論文集第31号,pp.154-157(2011)
2) 「iPhone と iPad 用リモートデスクトップアプ
リ 13 種類まとめ」
,www.cms-ia.info/news/remotedesktop-for-ipad/ (2012.6.6 閲覧)
Fly UP