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ド イツ Max-Planck-Institute for Molecular Biomedicine(`11)

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ド イツ Max-Planck-Institute for Molecular Biomedicine(`11)
海外研修報告書
京都大学医学部医学科4回生
所属分野名:放射線生物研究センター
0600208169
並川 実桜
ゲノム動態学部門
期間:2011 年 8 月 17 日∼10 月 16 日
研修先:Max-Planck-Institute for Molecular Biomedicine, Department of tissue
morphogenesis (Münster, Germany)
1. 出発までの準備
私は以前より海外留学してみたいと考えており、マイコースがちょうどよい機会かと思
ったので 1 月末頃武田先生の研究室を訪ねて相談するといくつか紹介してくださいました。
先輩のレポートなどを読み、このラボでの研究内容である血管新生に興味を持ったこと、
ヨーロッパへ行ってみたかったこと、ドイツは治安がよさそうだったこと、などの理由か
らミュンスターの MPI を希望したところ、武田先生がメールで受け入れの可否を聞いてく
ださり、OK とのことだったのでここで研修させていただくことに決めました。
その後は秘書の Ingrid に滞在期間を連絡してゲストハウス(無料で宿泊させてもらえる)
を予約していただき、4月末ごろ生協で航空券を買いました。
実験の準備としては、5月∼7月半ばまで放射線生物研究センター
ゲノム動態学部
門の小松教授のラボに週1∼2回お世話になり、助教授の小林先生から Hela 細胞・ES 細
胞の培養、免疫染色などの基本手技を習い、自分でできるようにしました。ウェスタンブ
ロットについても少し教えていただきました。私はこれまでラボに通ったことがなかった
ので、ここで実験というものに少しでも慣れさせてもらえて本当に良かったです。ただ、
実際 MPI へ行ってみるとこれでも全然足りず、ウェスタンブロットを自分一人でできるぐ
らいにはしておくべきでした。
英語については勉強しよう思いながらも日々の生活に追われて結局できず、行く直前に
リスニング CD を少し聞いた程度でしたが、着いた当初会話に入っていけずただ話を聞い
ているだけといった辛い状況も何度かあったので、やはりもっと前もって勉強していく方
がよいと思います。ただ、英会話は海外へ行って生活しないとなかなか上達しない面もあ
りますし、行ってからでもなんとかなります。
2. 実験
MPI のラボに着いた当初は supervisor の中山先生がなさってきた研究内容など
background について論文を読んだり教えていただいたりしていました。その後薬品や器具
の場所、ウェスタンブロットなど技術的なことをテクニシャンの Sara から習い、そのラボ
に慣れてそれなりに働けるようになるのに1ヶ月近くかかりました。それからようやくあ
る程度自力で実験できるようになりました。今回私は、血管平滑筋に局所的に発現してい
る PDGF-receptorβ のエンドサイトーシスが、ephrinB2, aPKC, PAR-3 という分子によっ
て制御されていることを示す実験を主に行いました。具体的には、
①aPKC inhibitor を入れると PDGFR-βのエンドサイトーシスが加速されることを確認。
(surface receptor の biotinylation)
②aPKC inhibtor を細胞と incubation すると、PDGFR-βがカベオラを含む領域からクラ
スリンを含む領域へと移動することを確認。(sucrose density gradient)
などです。他にはマウスの網膜の解剖と VEGF-receptor(血管内皮成長因子受容体)の免疫染
色なども行いました。詳しくは教務に提出したマイコースプログラム活動報告書に記載し
たので、MedCT からそちらをご覧ください。タンパクを扱うラボだったので実際やってい
た実験はほぼ毎日ウェスタン(最後まで終えるには丸一日かかる)でしたが、その合間に
も PCR, qPCR, biotinylation, sucrose density gradient など様々な実験手技について教え
ていただきました。
ラボでの私の実験用机
3. 研究生活について
平日は朝8時半頃に歩いて約1分の真横にある研究所へ行き、実験が終わるのがだいた
い6時頃でした。ただ、始めるのが遅くなると7時や8時になることもあったし、終わっ
てからもフィルムを焼くために夜再び研究所へ行ったりと、実験を主体に生活する日々で
した。けれど、他のポスドクの方々や、日本人の先生など夜11時頃まで毎日忙しく働い
ていらっしゃる方もいて、研究生活の大変さを知りました。研究は結果を出すのに非常に
多くの実験を行わなければならず、しかもその実験1つ1つに時間がかかる上1回でうま
くいくとは限らないので、何か1つのプロジェクトを成し遂げるのに約3年、またはそれ
以上かかるということでした。この期間中私は自ら完全に何かを考え出してプロトコルを
読みつつ実験する、というところまではいきませんでしたが、ただウェスタンをするだけ
ではなく pull down assay などもできるようになったのが嬉しかったです。そうなると、自
分が今何のためにこの作業をしているのかについて手を動かしながら理解を深められたし、
わかるとより一層楽しくなってきて、基礎研究も能動的に行うと楽しそうだなと思いまし
た。
実験以外の活動についてですが、毎週金曜日にはラボ・ミーティングがありました。ラ
ボ・ミーティングとは department 内で各回割り当てられた2人が、自分の研究の progress
report か、あるいは journal club といって読んだ論文の内容をプレゼンするかのどちらか
でした。また火曜日には Miss Seminar という女性研究者によるプレゼンが行われる時もあ
り、それにも時々参加していました。はじめは何を言っているのか全くわかりませんでし
たが、1ヶ月程たつと少し英語にも慣れ、science 的な内容も部分的にわかるようになって
きました。ラボの人々は積極的に discusson で発言していて、時に議論は小一時間に及ぶこ
ともありましたが、私にはこの discussion で人々が何を言っているのかあまり理解できな
かったのが残念です。
このラボの様子ですが、ドイツ人、中国人、インド人、ポルトガル人など様々な国の方々
がいて、日本では味わえない多国籍文化を体験できました。彼らとは時々作業をしながら
話したりしました。事務的なこと以外では週末の予定はよく話題になっていて、他には私
が日本で何をしているのか聞かれたり、ドイツや周囲の国のおすすめの街を教えてくれた
りと、皆忙しそうではあるけれど、話しかけると優しく対応してくれました。ただ、仕事
面ではなかなか私の英語力がおぼつかず、簡単な単語しか出てこなかったり非常に遠回り
な説明の仕方しかできなかったので、もどかしさを感じることもよくありました。
それから、このラボでは約1ヶ月に1回、誕生日の近い人たちが集まって自分で作って
きたケーキやお菓子をラボの人々の振る舞う、というちょっとしたイベントがありました。
日本だと誕生日の人はケーキを作ってもらったりして祝われますが、ドイツでは誕生日の
人自身が周りの人々に振る舞うという習慣だそうで、日本とは逆なのが面白かったです。
エントランスホール
Supervisor の中山先生と奥さんの明子さんと
4. 日常生活について
ゲストハウスは現代的な建物で、部屋もきれいでした。シャワー、トイレ、クローゼッ
ト(ハンガー付き)
、机、テレビなどたいがい何でもありましたし、週1回掃除もしてくだ
さいます。キッチン(食器類や調理用具は何でも揃っている)や洗濯機、冷蔵庫は共同で
した。
研究所からは自転車を借りられるので、実験が早く終わった日には約 10 分ほどのところ
にある巨大なスーパーマーケット(日本でいうイオンみたいな)で買い物をしていました。
食事についてですが、昼はたいていスーパーで買ったパン(ドイツ風の少しライ麦が入っ
たもの)に、野菜、ハム、チーズなどをはさんでサンドイッチを作って持っていっていま
した。毎日 10 時に来るサンドイッチ(約 2~3 ユーロ)やサラダ(3 ユーロ弱)などを売る
スナックバンで買うこともありました。研究所の人々も、ラウンジの冷蔵庫に何か持って
きたものを入れていました。夜はパスタをゆでて適当にソースをからめたものとサラダや
スープ、あるいはレンジで温めるラザニアなどを基本的には食べていました。ドイツは日
曜日店が閉まっていてレストランしか開いていないので、買い物は平日か土曜日にしない
といけない点は少し不便でしたが、食べ物や日用品などは何でも調達できるのでその点は
心配ありません。
ミュンスターの気候は、8月は半袖ですが湿気が少なく過ごしやすかったです。9月頃
からは長袖で、特に朝晩は冷えて日中との気温差が激しかったです。また毎日雨が降る週
もあれば晴天の日が続く週もあったりと、天気は週によってさまざまでした。10 月に入る
ととても寒くて、日本の 12 月ぐらいでした。
ドイツは基本的に治安がよいと言われていますが実際その通りで、中でもミュンスター
は平和で過ごしやすい田舎町でした。自転車で 5 分くらいのところにスーパーや銀行はあ
りますし、街の中心部に行けばカフェやデパートもあって便利でした。それからひとつ注
意点ですが、ある夜ライトを点けずに自転車で走っていると偶然街の中心部で警察につか
まって罰金 10 ユーロ払わされたので、もし今後行く人がいれば気をつけてください!
ゲストハウスの部屋の様子
ミュンスターの街の中心部
街のベーカリー
5. 週末の過ごし方
週末はドイツの他の都市や周囲の国へ出かけたりしました。私がいたラボでは summer
student は私だけで、あまり同年代の学生はいなかったため一人で行動することが多く、そ
の点は少し寂しかったです。具体的には、電車で 1~2 時間の州都デュッセルドルフや、ケ
ルン、ハイデルベルグ、ベルリンへ行ったり、中山先生が車でベルギーのブリュッセルま
で連れて行ってくださったり、オーストリアのウィーンへ行ったりしました。ミュンスタ
ーでは味わえない都会の雰囲気もまた良かったし、道を聞きまくって人と話したりするの
も楽しかったです。みな本当に親切で、地図を見ながら探していくよりも、駅を出たらま
ず人に道を聞く方が時間短縮できて良いということがわかりました。電車(Deutsch Bahn)
のチケットですが、私はユーロスターのチケットを日本で買って行かなかったので、ネッ
トで早割のようなものを利用して購入し、ウィーンへは飛行機のチケットをネットで購入
しました。(チケットはなるべく早く買う方が安いです。)ミュンスターの駅(Münster
Hauptbahnhof)へは、研究所の前から出ているバスに乗って 20 分弱くらいで着きますし、
慣れてくると自転車で行ったりもしていました。
ハイデルベルグにて
ベルリンのブランデンブルグ門
6. 費用
約 22 万円
・往復航空券
・生活費
約 10 万円
・旅行、その他
・海外保険
約 15 万円
約 4 万円
といった感じです。往復飛行機はルフトハンザを利用し、フランクフルトで乗り継いで行
きました。お金については、現金で約 15 万円分をユーロに両替して持っていき、残りは必
要な分だけ現地の ATM で現金を引き出すか、VISA カードを使っていました。VISA カー
ドは身分証明としても使えることがあるので持って行くことをおすすめします。
7. 最後に
はじめは慣れない基礎研究の知識と実験手技を覚えるのに必死だったり、英語力のなさ
からあまり外国人の会話についていけなかったりと、できないことが多くてどうなること
かと思いましたが、2ヶ月間過ごしているうちに少しずつそれらは克服でき、最終的には
楽しめましたし、それによって多少なりとも充実感を感じることができました。もちろん
まだまだ勉強不足だし英語力も磨かなければいけませんが、そういったモチベーションを
得られたこと、また日本とは異なる考え方に触れたことで、今いる環境やこれまでの大学
生活について考え直すきっかけになったこともこの研修での収穫です。今回このラボを紹
介してくださった武田先生、日本でお世話になった小林先生、小松先生、受け入れてくだ
さった Ralf、マックスプランクでお世話になった中山先生、明子さん、テクニシャンで家
にも招いてくれた Sara、
desk が隣でよく話しかけてくれた fabienne、その他研究所の方々、
そして準備から帰国まであらゆる面でサポートしてくれた家族に本当に感謝しています。
貴重な経験をさせていただきありがとうございました。
もし何か聞きたいことなどあれば下記アドレスまでいつでもメールをください。
[email protected]
隣の desk の fabienne と
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