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買い物弱者を支えていくために

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買い物弱者を支えていくために
買い物弱者応援マニュアル ver.2.0
買い物弱者を支えていくために
~24の事例と 7 つの工夫 ver2.0~
【新規事例、支援制度追補版】
平成 23 年5月 30日
経済産業省
この報告書は、経済産業省の報道発表のホームページ(http://www.meti.go.jp/press)でも
2011 年5月30日分として公表しております。そちらも御覧下さい。
このマニュアルの構成
このマニュアルは、買い物弱者の応援をお考えの地域住民、流通
事業者、商店街関係者、自治体職員等の皆様に、お住まいの地域の
特性に合わせた応援方法を考えていただくために作成しました。
構成は大きく2つに分かれます。
1.買い物弱者を応援する3つの方法(3 ページ~)
各地で取り組まれている買い物弱者の応援の事例をご紹介します。
2.力を合わせてサービスを続ける7つの工夫(59 ページ~)
買い物弱者を応援する事業を立ち上げ、続けていくために工夫す
べきポイントをご紹介します。
本マニュアルで取り上げた各事業者の事例は、買い物弱者応援方策を検討していただくための参
考となることを目的としており、各事業者の事業を推薦・推奨するものではありません。
買い物弱者とは?
住んでいる地域で日常の買い物をしたり、生活に必要
なサービスを受けたりするのに困難を感じる人たちのこと
です。高齢の方を中心に、全国で約
600 万人いると推計さ
れています。
~なぜそうなってしまったの?~
高齢化や人口減少などの影響で、身近な場所から買い物を
するための店が撤退する地区が増えています。そのうえ、高
齢のために自動車が運転できない等の理由で遠くの街まで
出かけることが困難に感じる人々が多くなっています。
今後も、高齢化や人口減少は続くため、早期に手を打って
いくことが求められています。
近所の店は閉店、
運転はできないし、
買い物に困ったな…
身近な場所
自宅
遠くの街
2
1.買い物弱者を応援する3つの方法
全国各地の買い物弱者を応援するためには、身近な場所に
①店を作ること、家まで②商品を届けること、そして
家から③人々が出かけやすくすることが必要です。
ここでは、全国各地での24の取組を、この3つの応
援方法ごとにご紹介します。
①
身近な場所に
「店を作ろう」
自宅
②
「商品を届けよう」
身近な場所
③
家まで
遠くの街
家から
「出かけやすくしよう」
このうち、①身近な場所に「店を作ろう」には、基礎的な生活
サービスを提供する「小さな拠点」として、(1)地域の交通結
節点、
(2)小商圏を対象とした多角的なサービス拠点、
(3)人
的な交流が行われるサロン、のような役割・効果も期待されてい
ます。
3
取組事例の紹介
① 身近な場所に「店を作ろう」
身近に買い物できる場所で、生活に必要なモノやサービスを
提供できる店を作ります。
①-1
①-2
①-3
①-4
①-5
①-6
①-7
①-8
Y ショップ JACK 大崎店、山崎店(広島県呉市ほか)
シティマーケット(全日食チェーン)
マルエツ プチ(マルエツ)
過疎地コンビニ(北海道:セイコーマート)
卸売業による小規模共同配送(島根県:ディ・シィ・ディ)
ノーソンくらぶ(大分県中津市)
青研(熊本県荒尾市:中央青空企画)
やまとフレンドリーショップ(山梨県甲府市)
6 ページ
8 ページ
10 ページ
12 ページ
14 ページ
16 ページ
18 ページ
20 ページ
② 家まで「商品を届けよう」
身近な場所で提供できないモノやサービスを移動販売車や仮
設店舗、宅配などでお届けします。
②-1
②-2
②-3
②-4
②-5
②-6
②-7
②-8
②-9
ハッピーライナー(高知県:サンプラザ)
ハーツ便(福井県:福井県民生協)
地域ステーション(埼玉県:さいたまコープ)
らくらくお買い物システム(熊本市:健軍商店街)
高齢者向け宅配(三重県:スーパーサンシ)
山間地向けネットスーパー(和歌山県田辺市:オークワ)
セブンミール
まごころ宅急便(岩手県:西和賀町社会福祉協議会)
宅配スーパー事業(エブリデイ・ドット・コム)
4
22 ページ
24 ページ
26 ページ
28 ページ
30 ページ
32 ページ
34 ページ
36 ページ
38 ページ
③ 家から「出かけやすくしよう」
家まで乗合タクシーで送迎したり、気軽に乗れるコミュニテ
ィバスを運営したりすることで、外出しやすくします。
③-1
③-2
③-3
③-4
③-5
③-6
③-7
キララちゃんバス(茨城県土浦市)
あおばす(千葉県市原市)
生活バスよっかいち(三重県四日市市)
お買い物バス(北海道赤平市:コープさっぽろ)
お出かけバス(広島県呉市)
過疎地・福祉有償運送(青森県佐井村)
デマンドバス(北杜市:東京大学)
5
40 ページ
42 ページ
44 ページ
46 ページ
48 ページ
50 ページ
52 ページ
①身近な場所に「店を作ろう」
①-1
Y ショップ JACK大崎店、山崎店
(広島県呉市ほか)
小さな拠点に対応する
新たな店舗開発に成功!
JA 広島ゆたかが瀬戸内海の離島で
運営する購買店舗が、地域の過疎化
や高齢化により存続が危ぶまれて
いた。
JA 支所に隣接した Y ショップ山崎店
事業のイメージ
物流ネットワークと
店舗運営ノウハウの提供
ボランタリーチェーンである山崎
製パン Y ショップに加盟すること
により、全国規模の仕入・物流ネッ
トワークおよび運営ノウハウを活
用。豊富な品揃えとサービスレベル
向上を実現。
JAゆたか
購買店舗
山崎製パン
ボランタリーチェーン契約
品ぞろえ、
サービスの向上
地域住民
海釣り客
サイクリング客
若年層
~ 得られた成果 ~
全国チェーンの接客ノウハウを吸収し、あいさつや清掃などを徹底
した結果、地域住民からの好感度が上がっている。
客単価はほぼ同じだが客数が前年比で約 40%増え、売り上げも約
15%伸びた。
1日の客数は 150 人前後と転換前より 50 人増え、海釣りやサイク
リング客、若年層が来る週末は 250 人に上ることもある。
利用者の声
事業者の声
「ほとんどをこの店で買っている。
車は運転しないから無くなったら
困る。」
(77 歳の女性客)
「JA の地域における使命は JA の支所
や店舗を維持し、組合員の生活を守る
こと。」
(JA 広島ゆたか八重垣政男組合長)
6
JA 購買店舗をボランタリーチェーンとして高度化!!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① JA が経営主体であり、建物も所有。支所長が店長を兼任。
② 山崎製パンが持つ全国物流網と接客等を含む運営ノウハウを提供。
③ ボランタリーチェーン契約を生かし、加盟店側に経営上の判断の自由
度が高いことが地域にマッチした成功の一つのポイント。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 物流の効率化によるコスト削減
納入トラックを集約することで効率化。
② 営業時間の延長による来店客増加
閉店時刻を午後5時半から7時に延ばし、土日も営業することで、今まで対応でき
なかった時間帯の来店客を取り込むことができた。
③ 地域特性を生かした品ぞろえによる集客力向上
Y ショップの通常の品ぞろえに加え、来訪者を対象とした地域特産のかんきつ加工
品や、JA 組合員向けに鎌、くま手、肥料や農薬といった農業生産資材も取り扱う
ことで集客をさらに向上。
④ 積極的な接客と地域コミュニティの協力による売上増加
地域住民が季節商品等のプロモーションに協力している。その結果、節分恵方巻や
クリスマスケーキの予約注文売上が県内 1 位、全国でも 11 位と好成績をあげた。
** 今後の展開**
現状、Y ショップと JA の取組は全国で 15 店あり、今後も拡大に向け検討中。
地域によっては、JA と行政が連携し、バスを改造した移動販売、タッチパネル端末や電
話等を活用した宅配等も検討中。
JA では、買い物代行や宅配、通販のお手伝い、高齢のお客様との対話、見守り機能も推
進。
山崎製パンでは、今後、公共施設等のコミュニティ施設の一区画に小型 Y ショップが入居
し、機能補完することも検討する方針。
山崎製パン株式会社
担当者連絡先:
市場開発営業部 日高・塚田
(TEL 03-3864-3279)
〒101-8585
東京都千代田区岩本町三丁目 10 番 1 号
URL: http://www.yamazakipan.co.jp/
7
①-2
①身近な場所に「店を作ろう」
シティマーケット
(全日食チェーン)
全国で、小商圏型スーパー
を展開
近隣に小売店がなくて買い物に困
る地域向けに、全国規模でスーパー
を展開する企業はなかった。
事業のイメージ
全日本食品は、田園地域に近い郊外
などの小商圏でも成立する買い物
弱者向けスーパー「シティマーケッ
ト」を 2007 年より実験的に全国
10店舗程度で展開。好調のため、
全国展開を予定している。
全日食の商品・物流網、
自動発注システムの提供
全日食
シティマーケット
店舗は小型化 ボランタリーチェーン契約
地域住民
商圏は半径1キロ以内
競合店が存在しない
人口3000人程度
~ 得られた成果 ~
商圏として一般に不利と考えられる地区ながら、実験店舗で売場面積
1 平方メートル当りの日商 3,000 円になり、全国の食品スーパー平
均 2,400 円を上回る店も複数あった。
利用者の声
事業者の声
「若く機動力のある者は、近郊大型店
で用が足せますが、運転の出来ない主
婦・年寄は、行き先を失っていました
ので、出店は、大変ありがたい。」
(60
歳代の住人より)
「小商圏スーパーの時代を迎えた今、
何としても切り開きたい分野」(斉藤充
弘社長)出所:日本経済新聞 電子版
2010 年 10 月 20 日
8
過疎地でも収益を上げるスーパーを開発。全国展開視野に!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 全日食本部は、全国的な商品調達網、物流網、高度な需要予測システ
ムなどの情報システムを提供。
② 加盟店はボランタリーチェーンとして経営判断の自由度を確保できる
ため、地域の実情にマッチした品ぞろえや店舗運営が可能に。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 商品の絞り込みによる在庫の削減
青果など生鮮品とナショナルブランドの加工品のうち、売れ筋を分析
し 2000 品目に絞ることで、店頭在庫を削減。
② 店舗の小型化による運営コスト削減
売場面積を 300~500 平方メートル程度にすることで、賃料や光熱
水費などの運営コストを抑えている。
③ 情報システムの活用による人件費削減
加工食品の需要予測とそれに基づく自動発注など、高度な情報システ
ムを導入、活用することで店主とパート従業員の必要最小限の人数で
行えるようにした。これにより、人件費を最小限にすることが可能に。
④ 生鮮品加工の一元化による店舗での加工コスト削減
通常、食品スーパーでは個店で行われることの多い生鮮品の加工を生
鮮センターに集約することで、コストを抑制。
** 今後の展開**
実験段階から実施段階へ。全国で展開を予定。
加盟店オーナーが出店しやすいように、本部で事業性の実証を行い、既
存加盟店オーナーへ営業権を売却する方法を取る方針。
全日本食品株式会社(全日食チェーン)
)
〒121-0836
担当者連絡先:
関東支社店づくり部 遠藤
(TEL 03-5691-2171)
東京都足立区入谷6-2-2
TEL: 03-5691-2111
URL:http://zchain.co.jp
9
①-3
①身近な場所に「店を作ろう」
マルエツ プチ
都心部及び都市郊外の買
い物不便地域のニーズに
応えるミニスーパー
都市部でも、生鮮品の買い物に困る
高齢者は多い。
都市部の目が肥えた高齢者でも買
い物を楽しめるよう、生鮮品の比率
が半分近くを占め、近隣立地で利便
性の高い都市型ミニスーパーを展
開中。
事業のイメージ
(株)マルエツ
加工センター
調理品等の一括供給
(株)マルエツ
マルエツ プチ 店舗
地域住民
楽しみながら買い物
便利な立地
鮮度が高く豊富な生鮮品の品ぞろえ
~ 得られた成果 ~
小型化やコンビニ跡地への出店により賃料を抑制。
バックヤードでの調理をなくし、100%加工センター供給により、
人員抑制。
利用者の声
事業者の声
「以前は電車でスーパーまで買いに
行かなければならなかったので便利
になった」
(日経 MJ 2010 年 10 月
29 日)
「バックヤードのないローコストタイ
プの店として検証し、都心だけでなく郊
外にも出店して行けないか探ってい
く。」
(髙橋惠三社長)出所:日刊流通ジ
ャーナル 2010 年 4 月 19 日
10
センター供給で効率的な小型スーパー。郊外出店も視野に!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 加工センターで一括調理することで、店舗におけるバックヤードの調
理業務を代替。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 店舗の小型化による賃料の抑制
売場面積は 140~170 平方メートル程度にすることで、賃料を抑え
ている。
② 跡地の活用による店舗開発の迅速・効率化
コンビニやファミリーレストラン等の跡地に出店することで、店舗開
発を迅速・効率化
③ 加工センターへの調理の集約による店舗人員の抑制
加工センターに調理を集約し、バックヤード業務をなくすことで、店
舗人員を抑制
④ 小商圏の利用者に利便性を提供
一部の店舗ではイートインやコーヒーのセルフ販売機能も設置するこ
とで、利用者に利便性を提供。
** 今後の展開**
都市部郊外への展開も探る方針。
株式会社マルエツ
)
担当者連絡先:
広報 IR 部
(TEL 03-3590-0016)
〒170-8401
東京都豊島区東池袋5-51-12
URL: http://www. maruetsu.co.jp/
11
①身近な場所に「店を作ろう」
①-4
過疎地向けコンビニ
(北海道:セイコーマート)
離島等の過疎地においても
コンビニ店舗を展開し、地
域生活を支える!
利尻島・礼文島・奥尻島等の離島を
始めとした過疎地においては、配送
コストがかかる一方で商圏人口が
少ない。このため、日常的な買い物
でも、価格が高い場合や、船に乗ら
ないと買えない場合もあった。
セイコーマートは道内を中心に店
舗展開する北海道最大のコンビニ
エンス・ストア・チェーン(2010
年 11 月末現在 1,089 店舗を展開)
であり、離島をはじめとする過疎地
にも展開している。
事業のイメージ
商品の安定供給
独自ブランドの開発
セイコーマート
過半数の出資
他社との共同配送
店舗運営の効率化
加盟店
(離島などの過疎地含む)
豊富牛乳公社
(第3セクター)
地域の住民
~ 得られた成果 ~
道内 179 市町村のうち、北海道のほぼ全域を占める 169 市町村に出店してい
る。
店舗内で調理(ホットシェフ)した食品を販売することで閉店した食堂の代替
を行うなど、失われてきた街の機能を補って地域住民に対して利便性を提供し
ている。
事業者の声
「セイコーマートは、道内に6拠点ある配送センターにて配送網を整備しており、
道内へくまなく出店できる。礼文、利尻、奥尻などではセイコーマートができてと
ても喜ばれた。
」
12
効率的な物流を基盤として、小商圏でも低価格で商品提供
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① セイコーマートの出資先である豊富牛乳公社から商品の安定供給を実
現することで、低コスト化を実現。
② 行政にとっては、セイコーマートの店舗展開によって、地域住民の利
便性の向上と町内雇用を見込んでいる。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 商品の一貫供給体制の実現
豊富牛乳や農場/農業法人への出資に加え、自社グループの物流システ
ムも再構築することで、調達・製造・流通・販売までの効率的なサプラ
イチェーン・マネジメントを実現。この体制によって実現した低コスト
のオペレーションを活用し、離島などの過疎地へも出店。
自社グループのセイコーフレッシュフーズが道内 6 カ所に配送拠点を
所有・運営。メーカーから直接調達することにより、物流コストを抑制
し、価格競争力を獲得。
② 生鮮品の取扱いによる自宅調理ニーズへの対応
日常的に必要な生鮮品を常に取扱うことで、自宅で調理する住民のニー
ズにも応えている。
** 今後の展開**
今後も、住民の方々に必要とされる場所があれば、積極的に出店してい
きたい。
株式会社 セイコーマート
〒064-8620
代表者:代表取締役社長: 丸谷智保 住所:札幌市中央区南9条西5丁目パーク 9・
5 ビル
連絡先:
TEL: 011-511-2796(代表)
企画広報課 遠藤
URL: http://www.seicomart.co.jp/
011-330-2627
13
①身近な場所に「店を作ろう」
①-5
卸売業による小規模共同配送
(島根県:ディ・シィ・ディ)
地元卸売業9社による共同
配送により、中山間地にお
ける店舗の存続とサービス
向上に貢献
島根県浜田市に拠点を置く㈱吉寅商
店をはじめとする卸売事業者は、県西
部の集落が分散する中山間地域を商
圏としており、広範囲の取引先店舗へ
の配送を個別に行っていた。近年の過
疎化による発注数量の減少も手伝っ
て輸送コストがかさみ、取引先へのサ
ービス向上ができないでいた。
事業のイメージ
(有)ディ・シィ・ディ
出資
納品
サプライヤ
(準会員:6社)
共同配送
(7ルート)
地域の小売、
飲食、病院等
(400か所)
サプライヤ
(正会員:9社)
発注
物流効率化を図るため、9社による共
同配送会社を設立し、コスト削減と取
引先小売業へのサービス向上を実現。
~ 得られた成果 ~
共同化により売上に対する配送費の割合が 20%から4%へと激減
し、卸売事業者の収益向上に貢献。
取引先小売業 400 店舗(中小企業約 200 店舗を含む)に対しサー
ビスを提供。商品の安定供給を通じ、地域住民へのサービス向上が
実現。
平成 16 年から 4 年間で売上高が 9 億円から 18 億円に倍増。設立
4 年目で単年度黒字を達成。
14
卸売事業者同士の共同事業により効率的な物流システムを確立!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 卸売事業者は共同配送センターまでまとめて納品すればよいため、配
送の効率化によりコストを削減。
② ディ・シィ・ディは配送に特化。小売へのセールスや発注受付業務は
行わないことで、競合する卸売事業者間でも協力が可能に。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 実験を含めた綿密な計画
平成 10 年から勉強会形式で検討を始め、実証実験を行った後、平成
14 年、事業に向けて会社を設立した。
② 加盟企業への情報公開と合意による意思決定
加盟する卸売事業者に対しては、配送ルートごとの損益などを月次で
公開。これらの情報をもとに加盟企業の合意を経て配送ルートの変更
などの事業運営が行われる。
③ 効率維持のための最低発注額制度
効率的な配送を図るため、取引先小売業に対しては最低発注額(5,000
円)を設定し、極端な小ロット配送にならないように工夫している。
** 今後の展開**
今後も参加する卸売事業者を拡大していき、共同化を広げていきたいと
の考え。
過疎化がさらに進むため、卸配送だけではなくて個別宅配などにも取り
組めないか、現在検討中。
有限会社 ディ・シィ・ディ
代表者: 代表取締役
吉田稔
〒697-0006
島根県浜田市下府町388-49
TEL: 0855-24-8535
15
①身近な場所に「店を作ろう」
①-6
ノーソンくらぶ(大分県中津市)
住民出資によって過疎地に
おける共同売店を実現!
大分県の山間部、旧耶馬渓町(現中
津市)では、合併の影響により、徒
歩圏内に日用品を購入できるお店
がなくなってしまった。
地域の危機を救うべく、周辺住民
80 人を会員とする NPO 法人を立
ち上げ、地域の共同店舗での販売と
地域産品のスーパーでの委託販売
を行う「ノーソンくらぶ」を開業。
ノーソンくらぶ(出所:AFC フォーラム 2010 年 8 月号)
事業のイメージ
出資&農産物の出荷
運営会員
入会金:2,000円
年会費:1,000円
NPO法人耶馬溪 ノーソンくらぶ
店舗販売
スーパーでの委託販売
ノーソン
食料品等を
販売
会員が生産した
農作物を出荷
街のスーパー
販売
地域の住民
スーパーの消費者
~ 得られた成果 ~
店舗では 300 品目以上の商品を取り扱い、日販 1.7 万円、年間 364 万
円(2009 年度)
。
スーパー等での委託販売による売上は、年間 461 万円(2009 年度)。
売上の 70%を農作物の生産者である会員に還元。
利用者の声
事業者の声
「お店が無くなって置き忘れられた
ような気がしていたが、ノーソンくら
ぶが開店して嬉しかった」
(60 代 女性客)
「ノーソンくらぶは、自分たちに必要な
ものを仕入れ、売る店」
(NPO法人「耶馬溪ノーソンくらぶ」:
中島 信男)
16
限界集落地域に店と収入を生んだ共同事業
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 会員(80 名)は入会金 2,000 円、年会費 1,000 円を出資し、積極
的に店舗運営に参加。
② 会員のうち 30 人は NPO 法人を通して、自ら生産した農産物を街の
スーパーに販売することで、月 1~10 万円程度の収入を確保。
③ ノーソンくらぶの店舗には、魚や肉といった生鮮品は置いていない。
移動販売を営む他の事業者との共存を図っている。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 住民のリクエストに応じた品ぞろえ
食品や衣類、生活用品など住民からのリクエストの数だけ品ぞろえを増
やし、300 種類以上の商品を扱う。
② 事業を 2 本柱にすることで相乗効果を発揮
スーパーでの委託販売によって得た現金収入を住民がノーソンくらぶ
での購入資金に充てることで事業の相乗効果を発揮。また、農産物の生
産意欲が高まることで畑がきれいになった。
③ 談話スペースの設置
憩いのスペースを設けたことで、夏休みにはプール帰りの小学生が集ま
り、冬には薪ストーブをお年寄が囲むなど、ノーソンくらぶが地域コミ
ュニティの中心として機能。
** 今後の展開**
店舗内にオープンキッチンを設置し、お年寄りに共同調理の場を提供す
ることを検討中。
ノーソンくらぶの輪にいかにして若者を巻き込んでいくかが課題。若い
人が加わることで、品ぞろえがさらに充実することを目指している。
特定非営利活動法人
耶馬溪ノーソンくらぶ
事務局長: 中島 信男
担当者連絡先:
(TEL 0979-54-2508)
(FAX 0979-54-2508)
〒871-0413
大分県中津市耶馬溪町大字大野1075-1
17
①身近な場所に「店を作ろう」
①-7
青研(熊本県荒尾市:中央青空企画)
商店、農家とともに取り組
む半径 300m の「徒歩圏
内マーケット」
荒尾市では近年、人口の流出や高齢
化が進んで商店街が衰退し、日々の
買い物先の確保に悩む高齢者が増
加。
商店主らが企業組合を立ち上げ、徒
歩圏内の高齢者をターゲットとし
たミニスーパーマーケットを開設。
青研店舗(出所:イング総合計画株式会社 HP)
事業のイメージ
商圏:半径300m
農家・商店主
地域住民
企業組合が運営
出荷
販売
ミニスーパー
マーケット
対価
売上の15%が
人件費等に充当される
売上の85%
~ 得られた成果 ~
対象商圏はわずか 150 世帯ながら、日販 10 万円を達成。
歩いてくる高齢者向けに生鮮品などを揃えている(約 200 品目)。
顧客にとっては、レジでの会話も買い物の楽しみのひとつになってい
る(コミュニケーション機会の形成)
。
利用者の声
事業者の声
「近いので乗り物を使わずに買い物
をすることができ、助かっている。」
(70 代の女性客)
「青研でいろんな方に会えるのが楽
しい。」(60 代の女性客)
「若者が荒尾市で仕事をしていきたい
と思ってもらえるような店にしていき
たい。」(企業組合中央青空企画弥山雄一
郎代表理事)
18
地元の人が商品を持ち寄って販売
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 企業組合がミニスーパーマーケットを開設。食品などの品ぞろえを豊
富にすると同時に、近隣農家による野菜の産直販売を実施。
② 売上の 85%は出荷者に、15%はミニスーパーマーケットの人件費等
に充当。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 小商圏でも成立する事業のデザイン
半径 300m の 150 世帯を対象として成り立つ事業を前提に綿密な事
業設計を行った。
② 開店コストの削減
空き店舗を安く借りるなど、運営費を収益の範囲内で賄っている。
また、開店時は自分たちの手で改修し、設備を中古品で揃えることで、
初期投資を抑制。
** 今後の展開**
今後は、取り扱い品目を更に拡充するとともに、御用聞きと宅配サービ
スの実施を予定している。
また、御用聞き等で地域のお年寄り宅を訪問することで、見守りサービ
スを提供し、安心・安全な地域づくりへの貢献を目指している。
企業組合 中央青空企画
代表者: 代表理事 弥山雄一郎
(TEL 0968-62-3446)
〒864-0032
熊本県荒尾市増永 2000-15
URL: http://aoken.biz
連絡先
荒尾市 産業振興課 観光推進室
TEL: 0968-63-1421
FAX: 0968-63-1158
19
①身近な場所に「店を作ろう」
①-8
やまとフレンドリーショップ(山梨県甲府市)
スーパーの商品を原価で
個人商店に卸し、品ぞろ
えを強化
個人商店は地域に密着している一
方、資金力などが不足しており、幅
広い仕入れが難しい。
フレンドリーショップの第 1 号店
事業のイメージ
韮崎市のスーパーやまとは、個人商
店を組織化し、自社店舗の在庫を原
価で卸すことで個人商店の品ぞろ
えを強化し、地域住民のニーズにこ
たえる事業を開始し、2011 年 2
月に 1 号店が開店した。
経済産業省
補助
㈱やまと
卸
商品受け取り
代金支払い
個人商店
販売
地域の住民
~ 得られた成果 ~
第 1 号店では酒やパンなど 200 程度だった取扱品目が生鮮 3 品や
総菜、弁当なども含めて 1300 程度に拡大。
事業者の声
利用者の声
「ご支援に感謝している。私も地域の力
になりたい」(1 号店の食料品店グラン
ディール店主)
「一緒に、地域の人に親しまれる店づく
りをしていきたい」
(やまと小林久社長)
(出所 朝日新聞)
「これまで自転車で10分ほどかけ
て、スーパーまで買い物に出掛けて
いた。ここなら歩いて来られる」
(利
用客:出所 山梨日日新聞)
20
個人商店の品揃えをチェーンストアが支援
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
③ やまとは自社店舗の商品を原価で卸す。返品は受け付けない。必要に
応じて経営の助言も行う。
④ 個人商店は最寄りのやまと店舗まで商品を受け取りに行く。品ぞろえ
が増えて、個人商店の顧客ニーズにこたえることができる。
⑤ 店舗改装費などの一部に経済産業省の補助金を活用した。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 商店の資金繰りを支援
商品は都度仕入れればよいため、在庫ロスを削減することが可能にな
った。また、支払サイトを 2 週間程度として個人商店の資金繰りを容
易にした。
② やまとはバイイングパワーを強化できる
原価卸のため利益は出ないものの、仕入れ量が拡大することにより、
やまとはサプライヤーに対する交渉力を獲得することができる。
③ 連携先の個人商店の屋号や経営はそのまま
屋号に「やまとフレンドリーショップ」の名前を冠するだけで他は変
わらない。地域住民がなじんだ商店をそのまま残すことで住民の支持
を得られやすくした。
** 今後の展開**
やまとはフレンドリーショップ事業で 2 年後に 6,000 万円程度の売り
上げを見込んでいる。
商店街の空き店舗を利用した「まちなかステーション」などの買い物弱
者支援に積極的に取り組んでいる。
株式会社やまと
代表者:代表取締役
小林久
〒407-0014
山梨県韮崎市富士見 2-12-36
TEL: 0551-22-6753
FAX: 0551-23-3880
URL: http://www.j-gate.net/~yamato/
21
②家まで「商品を届けよう」
②-1
ハッピーライナー(高知県:サンプラザ)
行政による販売車購入補助
をきっかけに事業を継続
昭和 60 年に移動販売を開始。最盛
期には車両 8 台で運営していたが、
人口減少に伴い採算が悪化。
移動販売車と利用する高齢者
事業のイメージ
高知県
一時期は撤退も検討していたが、県
からの補助をきっかけに継続を決
定。
高知県民生委員
児童委員協議会連合会
補助
見守り協定締結
(株)サンプラザ
移動販売
地域の住民
~ 得られた成果 ~
車両7台で運営を行い、平成 21年度の年間売上高は 175 百万円、
営業損失 4 百万円程度、客単価 1,610 円。
一台あたりでは、平均日販 10 万円/台、年間売上高 29 百万円/台
となっている。
事業者の声
利用者の声
「来てくれて助かっています」
「ハッピーライナーが来なくな
ったら、生活できなくなります」
「どうか続けてもらいたい」
ご利用いただいている住民の方の声から、な
んとかこの事業を継続していきたいと考え
ています。しかし事業実績を見ていただいて
も分かるように、ここ数年赤字が続いてきま
した。高知県の補助金制度を利用させていた
だき、事業が継続できました。
22
小売事業者と行政との協働で移動販売網と公益的機能の両方を維持
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 当初は競合他社との差別化として開始された事業だが、現在では事業
者の地域貢献事業の色彩が強い。
② 事業者の強い継続意志のもとに行政からの補助を含めた幅広い主体と
の協働が進められている。
③ 高知県は、県職員を市町村に常駐させる「地域支援企画員」制度を通
じて、地域のニーズを的確に把握し、移動販売に対する必要性を認識
していたため、補助金の支出を決定するに至った。
【効率化や継続に向けた工夫】
① インフラとしての販売車に対する県の補助
移動販売のインフラとなる販売車の更新にあたって、県が創設した補
助金を受けることにより、車両代の 3 分の 2 が支援された。
② 社会的価値の創出
平成 18 年より、県及び民生委員・児童委員協議会と協定を結び、顧
客に異変があった際には民生委員に通報する役割を担うなど、公益的
な機能を併せ持つことにより、商品販売に加えた社会的な価値を創出
した。
** 今後の展開**
今後も巡回販売はより厳しい環境になると予想している。
巡回地域で利用していない顧客を掘り起こすとともに、今後予定してい
る宅配事業とも組み合わせて、より効果的で効率的な事業展開を検討し
ていく考えである。
株式会社サンプラザ
代表者: 代表取締役社長 笠原雅志
担当者連絡先:
経営企画室 担当 細川
(TEL 088-852-3121)
〒781-1102
高知県土佐市高岡町乙 27-1
URL: http://www.sunplaza-kochi.co.jp/
23
②家まで「商品を届けよう」
②-2
ハーツ便(福井県民生活協同組合)
住民から停車場所を募集
し、県と生協が連携して効
率的な移動販売を実現
中山間地などの身近な商店が少ない過
疎地域への対応や身近に生協店舗が欲
しいとの組合員の要望にこたえるため、
平成 21 年 10 月より独自事業として販
売車 3 台、22 か所で移動販売を開始。
平成 22 年度に販売車を 8 台に増やし
た。同時に、国の基金も活用し福井県が
モデル事業として260万円の予算を
計上。公募の結果、福井県民生協が2年
間の人件費補助を受けて事業を展開す
ることとなった。
移動販売車
事業のイメージ
厚生労働省
ふるさと雇用再生特
別基金事業の交付金
福井県
モデル事業による支援
地域住民
停留場所の要望
福井県民生協
移動販売の実施
~ 得られた成果 ~
平成 22 年 9 月には月間約 1 万名が利用。
月間供給高(売上)約 1,370 万円、客単価約 1,400 円。1 日 1 台
あたりでは約 50 名の利用で供給高 6.6 万円。
販売車の停車場所に住民が集まることにより、地域に新たなコミュニ
ケーションの場を提供することができた。
事業者の声
利用者の声
「私の地区にも来てほしい」「生協らし
い素晴らしい取り組みなので、多くの地
域に行ってほしい」という声にこたえ、
社会的責任経営を果たすと共に3年目
の黒字化を目指します。
「買い物をする楽しさがある」
「いろんな人と顔を合わせて会話で
きるのがうれしい」
「雪の日に出かけられないので助か
る」
(福井県民生協に寄せられた声)
24
国、県、生協の協働で効率的な移動販売を実施!!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 生協は先行的に事業に着手し、運営ノウハウを蓄積。
② 行政は、国の交付金をもとに県がモデル事業を創設し、事業者の車両
費、人件費を支援した(今回の事業では人件費のみの補助)
。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 配送インフラを活用した効率的な巡回ルートの構築
生協がもともと有していた無店舗事業(共同購入や宅配)の配送イン
フラを活用することで、効率的な巡回ルートを短期間で構築できた。
② 商品企画や販売方法の工夫
利用者から聞いた要望商品を翌週届けたり、季節企画商品(節分恵方
巻など)を取り扱ったりするなど、ニーズに合わせた施策を行ってい
る。
** 今後の展開**
2015 年までに移動店舗を 20 台に増車し、週当たりの利用者を
9,000 名に拡大する予定。
また、移動店舗による中山間地への食の支援に加え、中心市街地の買い
物弱者に対し、お買い物バスに加え夕食宅配、買い物代行サービスのエ
リアを拡大していく方針。
コープさっぽろなど、移動販売事業は各地の生活協同組合に広まりつつ
ある。
福井県民生活協同組合
代表者: 理事長 藤川 武夫
担当者連絡先:
事業ネットワーク支援部
広報イベント支援 伊藤
〒910-8557
福井県福井市開発町 2-1-1
TEL: 0776-52-8458
URL: http://www.fukui.coop/
25
②家まで「商品を届けよう」
②-3
地域ステーション(埼玉県:さいたまコープ)
身近な商店などと協力し、
利用者が都合のよい時間に
注文品を受け取れる場所を
展開
宅配サービスではあらかじめ指定さ
れた時刻に利用者が在宅して受け取
る必要があり、共働きの家庭などでは
不便であった。
このため、利用者が都合のよい時間に
商品が受け取れるように、団地集会所
や地域の商店に協力を求め、宅配注文
商品の受け渡し場所を設置した。現
在、多様な業種(酒店、クリーニング
店、飲食店、美容室、コンビニエンス
ストアなど)の協力を得て、埼玉県内
約 1,000 ヵ所に展開。
地域ステーションの例(本屋)
事業のイメージ
配送
地元商店等
(生協)
(ステーション) 一時保管依頼 さいたまコープ
注文品の引き取り
「ついで買い」
生協組合員
注文
~ 得られた成果 ~
利用者(組合員)が自分の都合のよい時間に受け取ることが可能になり、利便
性が向上した。週当たりの利用は 4,600 名。
組合員が商店に足を運ぶきっかけとなり、協力店側にも来店客数増加、ついで
買いの増加などの効果が期待できる。協力店では地元の役に立ちたいという思
いもあり、地域貢献という点で相乗効果となっている。
利用者の声
事業者の声
「届いた商品を預かってくれるの
で安心です」
「お店の方が親切なので受け取り
に行くのが楽しみです」
(さいたまコープに寄せられた組
合員の声)
「店は人が出入りしなければだめ。絶
対マイナスにはならないわけで、これ
だけでも同業の方に薦められる。商店
と宅配サービスの新しい形の共存共
栄だと思う。」という声を協力店舗か
らいただいています。
26
生協宅配と地元商店の協働でWin-Win の関係を構築!!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 生協は地域ステーションまでの注文品配達を担当。個別配送の手数料
は不要とした。
② 商店や協力自治会では、配達された注文品を保管し、引き取りに来た
組合員への受け渡しを担当。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 生協は末端配送コストを削減
地域ステーションを展開することで、個別配送コストの削減につなが
った。
② 協力店舗は集客手段として活用
組合員が足を必ず運んでくれることで地域の商店の認知度が高まった
り、来訪時に買い物をしてくれたりすることで、商店にとっても集客
手段としてのメリットが得られた。
** 今後の展開**
さいたまコープではコンビニエンスストア並みの密度で地域ステーシ
ョンを展開することをめざし、団地の空き店舗を利用した買い物支援と
ふれあい広場を兼ねた新しいスタイルのステーションも始まっている。
全国の生協でも同様の取組が進められており、平成 18 年度現在 43 組
合、4,699 か所の地域ステーションを展開。このうち、一般商店が
3,963 か所。(日本生活協同組合連合会調べ)
生活協同組合 さいたまコープ
代表者: 理事長 佐藤利昭
担当者連絡先: 総合企画部
(TEL 048-839-1691)
〒336-8523
埼玉県さいたま市南区根岸 1 丁目 5 番 5 号
TEL: 048-864-1181(代表)
URL: http://saitama.coopnet.jp/
27
②家まで「商品を届けよう」
②-4
らくらくお買い物システム
(熊本市:健軍商店街)
商店と地元企業との協働で
タクシーでの宅配を実現
健軍商店街は市電の起点停留所の周辺
に位置し、ベッドタウンとして成長す
る熊本市東部の中核商店街として発展
してきた。
商圏の高齢化(24%程度)や大型店と
の競合が激化する中、平成 11 年にタ
ウンモビリティ事業を実施。
商店街から半径 2km 程度に居住する
顧客の買い上げ品を一日2便、タクシ
ーにより配送。料金は1回当たり30
0円。うち100円を商店街から補助。
商店街内の宅配受付所兼タクシー待合所
事業のイメージ
(有)肥後タクシー
300円
委託
100円補助
宅配
カート等無料貸出
地域住民
~ 得られた成果 ~
平成21年度のらくらく宅配の利用実績: 289 件
28
健軍商店街振興組合
買い物
100円補助券
商店街と地元企業との協働で実現したタクシーによる宅配サービス
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 宅配は肥後タクシー(有)が実施。
② 宅配料金 300 円のうち 100 円は商店街振興組合から「宅配補助券」
を顧客に発行して支出。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 買い物パターンの分析に基づく効果的な宅配時間の設定
高齢者等の買い物パターンの分析から、宅配を 12 時と 16 時の 1 日
2 便実施することが、効率的で利用者にも喜ばれることが確認できた。
② 未稼働タクシー車両の有効活用
宅配時刻は、原則、12 時と 16 時を予定しているが、運用には若干の
時間の自由度を持たせ、未稼働車両を有効に活用している。
③ 集いの場の提供による高齢者等のコミュニケーション機会の創出
宅配受付ステーションを中心に、お年寄りの集いの場を提供し、コミ
ュニケーションの活性と、口コミによる販売促進を促している。
** 今後の展開**
商店街関係者のみならず、他の団体や専門家との連携を通して、商店街
自体の機能を高め、総合的な買い物支援ができるサービスを提供してい
きたい。
運送費の一部を商店街が負担するのではなく、それぞれのお店側が負担
することでお店の意識を高め、サービスの質向上につなげたい。
運送の範囲を現在の約 2km 圏内よりも広範囲にして(その場合は運送
費用・補助額を上げる)
、利用者の拡大につなげていきたい。
健軍商店街振興組合
代表者: 理事長
釼羽逸朗
〒862-0903
熊本市若葉 1 丁目 35-18
TEL: 096-368-7312
URL: http://www1.ocn.ne.jp/~kengun/
29
②-5
②家まで「商品を届けよう」
高齢者向け宅配事業
(三重県:スーパーサンシ)
宅配事業の成功のカギは
「営業力」と「コスト削減」
三重県北部の郊外に展開するスーパ
ーサンシは、商圏の高齢化に対応し、
13 店舗中 7 店舗で宅配事業を行っ
ている。
コスト削減のため、自社での配送業
務の実現、店舗と配送拠点の統合、
再配達の回避など、さまざまな取り
組みにより、黒字化をいち早く実現。
また、高齢者の安否確認を兼ねた御
用聞きサービスを展開。
事業のイメージ
スーパーサンシ
ドライバー
ピッキング
スーパーサンシ店舗
宅配
御用聞き
利用者
会員登録
注文
~ 得られた成果 ~
事業開始当初は電話音声自動対応による無店舗形態をとっていたが、
有店舗形態に切り替え、更に 2005 年から小商圏タイプを導入。
電話注文とインターネット注文の両方の実施により、幅広い年齢層の
お客様から支持いただけるようになった。
住民からの声
事業主体の声
「宅配が届くのが楽しみです」
(70歳代の女性客)
雨の日、体調の悪い日でも、自宅ま
で生活必需品を届けてもらえるので
たいへん助かっています。
「お年寄りにやさしいネットスーパー」
(宅配事業部 山田課長)
ご高齢のお客様でも、ネットを意識せず
電話でネットスーパーがご利用できま
す。
30
高齢者専用の御用聞きサービス
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 通常のスーパーにおいては、物流を第三者に委ねることが多いが、ス
ーパーサンシは自社で行うことにより、顧客ニーズの収集や店のイメ
ージの確立を図った。
② グループ会社を通じて、蓄積したノウハウを他地域のスーパーに提供。
【効率化や継続性に向けた工夫】
① 効率的な配送によるコスト削減
車両 1 台あたりの配達エリアを狭く設定(15~20 分程度)
。
ロッカーを用意し、不在宅への再訪問の手間を排除している。
② ドライバーの自社教育による営業力の向上
配送の外注により売上が大幅に減少した経験に基づき、ドライバーは
顧客と接する営業の最前線と位置付けた。接客の良し悪しが売上に影
響することから、ドライバーの自社教育を実施。
③ 良い商品を選んで配達することによる満足度向上
モノを確かめないでチラシで購入する場合、お客様の商品に対する期
待が高いため、良い品物を選んで配達している。
④ 高齢者向けのサービス展開
高齢者を対象に、希望する時間に担当者が電話をかける御用聞きサー
ビス「安心クラブ」を展開し、安否の確認も行っている。
** 今後の展開**
グループ会社のフレッシュシステムズ(株)を通じて、蓄積したネット
スーパー事業でのノウハウを、他地域のスーパーに提供している。
スーパーサンシ株式会社
代表者: 代表取締役社長 植杉好英
担当者連絡先:
宅配事業部 課長 山田正徳
(TEL 059-347-3377)
〒510-0874
三重県四日市市河原田町 1301
TEL: 059-347-3377
URL: http://sanshi.jp/
31
②家まで「商品を届けよう」
②-6
山間地向けネットスーパー
(和歌山県田辺市:オークワ)
山間地へも商品を届ける
ネットスーパーが登場!
和歌山県田辺市龍神村(約 320 世
帯)では、市の中心部まで 1 時間
程度かかる地域で、買い物に困る高
齢者が増えている。
同地区は光ファイバーが整備され
ておりインターネット環境は良好
であるため、和歌山県とオークワが
同地区向けの専用のネットスーパ
ーを平成 22 年 9 月末から 12 月
中旬まで実験的に開設。
ネットスーパーの配送車
事業のイメージ
1万品目から注文でき
るネットスーパー
毎週土曜日に配送
オークワ
田辺店
田辺市
インストラクター
派遣
実証実験
田辺市龍神村
和歌山県
地域住民
地域への
光ファイバー敷設
~ 得られた成果 ~
平成 22 年 10 月 23 日配達分までの 5 週分で、計 62 件、一週間
あたり平均 12.4 件の注文がある。6~7 件を想定していた県担当者
の予想を上回る反響。
利用者の声
「(平成 22 年 12 月 18 日配送分で実証実験が終わ
るが)今後もできたら続けて欲しい」(独り暮らしの
男性より)/「(配送してもらえるのは)腰が悪いから
助かる」(地域男性より)
32
事業者の声
過疎地域は今後も増え
るため、どうすれば効率
的にできるか考えたい。
IT 活用によって、過疎地のネットスーパーを試行!!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① オークワは関西圏を中心に展開するスーパーで、2006 年よりネット
で注文を受けて自宅に届けるネットスーパーを一部地域で独自に展開
をしている。ネットスーパーでも、商品数 10,000 品目を取り扱って
おり、会員数、売上高は順調に伸びている。今回の田辺市の店舗でネ
ットスーパーを行う店舗は 9 店目であった。
② 和歌山県は、以前から IT による過疎地域活性化として同地域に光ファ
イバーを敷設しており、地域にインターネット環境は整っていた。
③ 市と共同して公共施設にパソコンを設置し、高齢者向けの教室を開く
などの IT スキル向上に力を入れた。
④ 市の行政局がサポーターを派遣し、週 1 回パソコン等の講習やネット
発注のサポートを行う。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 配達日時を絞り込むことで積載効率を上げ、コストを削減
金曜日~土曜日 9 時までに注文を受け付けて、毎週土曜日の午後に配
送する。
② 市民センターで発注を可能に
対象エリアでネット接続が可能な世帯は約 50 世帯であるため、4 ヶ
所ある市民センターでパソコンを使えるようにしているほか、インス
トラクターを市が派遣してサポートしている。
** 今後の展開**
現状では、単独での採算性は厳しいが、過疎地域は今後拡大していくこ
とが考えられる。こうした地域への配送を含めた事業に目を向けていき
たいとの考え。今後、単独で事業を継続するためには、地域や自治体と
の連携、配送費や IT 支援を含めたコスト削減などを一層行う必要があ
る。
株式会社 オークワ
担当者連絡先:
e ビジネス部 中井幸生
TEL:073-425-2481(代表)
〒641-0006
和歌山市中島 185 番地の 3
URL: http://www.okuwa.net/
33
②家まで「商品を届けよう」
②-7
セブンミール(株式会社セブン・ミールサービス)
近くて便利な店
「セブン-イレブン」を
拠点に、食事宅配
サービスを展開
高齢者や働く主婦など、買い物に不
便を感じている住民に対して、お店
からご自宅に便利でおいしく安心
な食事をお届けするサービスを模
索していた。
セブン-イレブンの弁当・惣菜の開
発・製造技術、物流と店舗網のイン
フラを活用し、管理栄養士の指導の
下、栄養バランスと利便性に配慮し
た宅配用商品を独自に開発し、食事
宅配サービスを全国展開した。
利用者へのお届け(出所:Komachi 介護ご用聞きネット)
事業のイメージ
セブン-イレブン
加盟店
会員登録
注文
店舗での受取
受注情報
食事の宅配
会員
(株)セブン-イレブン
・ジャパン
商品開発
企画提案
(株)セブン・
ミールサービス
~ 得られた成果 ~
セブン-イレブンの配送網を活用することで、事業開始 6 年後に全国
展開。
今までお店に来て頂けていなかった利用者の獲得。
事業者の声
利用者の声
「近くて便利な店」をさらに深耕し、
地域の皆様へ食のサービスを
充実させていきます。
浜松の父のために利用しています。
父は足腰が弱いので、メニューは新潟の
私(娘)が決め、浜松の父に配達。
電話1本で大変便利です。
栄養バランスが良く、父も喜んでいます。
(新潟県:Kさん)
34
コンビニ本部の技術とインフラを活用した食事宅配サービス
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① セブン-イレブン・ジャパン本部が有する全国の物流網と店舗網、弁当
の開発・製造技術を活用。
② セブン-イレブン加盟店の店員またはヤマト運輸が宅配を行う。
* 店員が週1回高齢者宅を訪問する御用聞きサービスをしている店
舗もある。
* 店員の顔が見えることで、安心感と効率を両立させている。
③ 各自治体はセブン-イレブン・ジャパン本部が地域活性化包括提携協定
を締結し、自治体の取組みにもセブンミールを活用し、買い物・料理
に悩む地域住民に情報提供。
④ セブン・ミールサービスは当サービスの企画と利用者対応を実施。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 既存の製造工場、物流網、店舗網を活用
商品はコンビニ弁当の工場で生産し、コンビニの物流網で店舗に配送
するなど、既存のインフラを活用することで、短期間で効率的なサー
ビスを提供。宅配用の野菜も、弁当・惣菜の工場で一括に仕入れるこ
とにより、効率と品質を両立。
② 安心・安全へのこだわり
食品の衛生管理手法「HACCP」に基づいた、独自の衛生管理・品
質管理基準に従い、徹底した温度管理の中で商品作りと配送を行って
いる。
** 今後の展開**
お客様のニーズに合わせた品揃えの拡充。
より便利な宅配サービスの実施・展開。
ネット利用客の拡大と、サービスの充実。
株式会社セブン・ミールサービス
担当者連絡先:
業務部 那須正行
(TEL 03-6238-3823)
〒104-8426
東京都千代田区二番町 8-8
35
②家まで「商品を届けよう」
②-8
まごころ宅急便(岩手県:西和賀町社会福祉協議会)
地元スーパーと宅配業者、
社会福祉協議会の協働に
より生まれた新しいサービス
高齢化率 43%の豪雪地帯である岩手
県西和賀町では、6 年前に町内の移動
販売が廃止された。隣の秋田県から巡
回してくる移動販売の停留所まで、山
道を 3km 歩く高齢者もいた。
問題解決のために始まったのが「まご
ころ宅急便」である。登録された高齢
者から西和賀町社会福祉協議会が電
話で注文を受け、地元のスーパー「オ
セン」でピッキング。商品はヤマト運
輸が高齢者宅まで配達し、社会福祉協
議会に 1 人暮らし高齢者の安否確認
の「お元気情報」を送信している。
ドライバーと利用者(出所:岩手県社会福祉協議会
「いわて福祉だより パートナー」2011 年 1 月号)
事業のイメージ
宅急便として出荷
オセン
(地元スーパー)
ヤマト運輸
配達
決済
お元気情報
(安否確認)
利用者
受注情報
社会福祉協議会
電話注文
~ 得られた成果 ~
過疎地に住む高齢者の買い物を支援することで、高齢者が地域に住み
続けたいという思いを支えている。
近隣の高齢者が宅配到着時に寄り合い、商品を分け合う「買い物待ち
サロン」もできている。配達料金の負担軽減や複数人の同時安否確認
利用者の声
事業者の声
「家まで商品が届き、便利で本当にあ
りがたい。」(西和賀町住民)
「盛岡市内を担当していたとき、配達先の
高齢者が相次いで孤独死。あの悔しさをバ
ネに、何があっても高齢者を孤立させない
事業を確立させたかった。」(ヤマト運輸
岩手主管支店担当者)
「地域の人たちのおかげで商いを続けてい
ます。
(中略)少しでも地域に貢献すること
が何よりも大事と考えています。」
(オセン)
社会福祉協議会の声
「高齢者の住み続けたい願いを叶え
るには、実現に向けて行動を起こすこ
とが大事。」(西和賀町社会福祉協議会)
36
宅配便のインフラを活用した地域密着型のサービス
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 西和賀町社会福祉協議会が厚生労働省の安心生活創造事業の指定を受
けることで、生活実態調査や各種情報共有の機会が得られた。
② 西和賀町社会福祉協議会が注文の電話を取り次ぎ、仲介役となること
で、誤注・誤配のトラブルを回避。
③ 6 年前まで移動販売も行っていたオセンは、地域に住む高齢者の買い
物支援ニーズを痛感しており、積極的に協力。
④ ヤマト運輸のセールスドライバーが配達しながら 1 人暮らし高齢者の
安否確認も行い、社会福祉協議会に連絡。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 宅配便の配送網を活用
宅配便のきめ細かい配送網を活用し、地域に提供することで、少ない
投資、短い期間でサービスの提供が可能になっている。
② 社会福祉協議会が事業をコーディネート
社会福祉協議会が要援護者台帳や日常生活実態調査等に基づいてきめ
細かくニーズを把握するなど、地域コミュニティの協力体制が効率化
と継続の両面で効果的となっている。
** 今後の展開**
今後は全町で 50~60 人程度への展開を目指し、希望した場合はいつ
でもサービスを利用できるようにしていく。
都会に住む子供世帯から経済的支援を得るなど支える仕組みを整理
し、新たなニーズの掘り起こしも行う。
社会福祉法人西和賀町社会福祉協議会
(TEL 0197-84-2161)
〒029-5512
岩手県和賀郡西和賀町川尻
40 地割 73 番地 82
ヤマト運輸株式会社
担当者連絡先:
CSR 推進部 広報課
(TEL 03-3541-3411)(代表)
〒104-8125
東京都中央区銀座 2 丁目 16 番 10 号
37
②家まで「商品を届けよう」
②-9
宅配スーパー事業(エブリデイ・ドット・コム)
福岡・熊本・佐賀で21年、
宅配スーパーを直営
インターネットの普及を目論み、主
婦をターゲットに B to C のビジネ
スチャンスを模索し、宅配スーパー
を実施。いつでも、どこでも、誰で
も利用できるサービスを構築し、シ
ニア層からも好評。
同様のシステムを他地域・他社にも
展開。
事業のイメージ
~ 得られた成果 ~
オレンジライフ
旬工房
直営の宅配事業(宅配スーパー事業)
と提携による宅配事業(情報システム
事業)とで、会員数 約 8.6 万人、月取
扱高 12.7 億円。
生鮮・日販品を主体に約 3,000 アイテ
ムを取り扱い、在庫を持たない当日仕
入れ、自社加工品を中心に、商品粗利
率約 31%を実現。
会員が利用しやすいように
注文受付方法を多様化
インターネットでの
注文
宅配
プッシュホンでの
注文
宅配
宅配
電話での
注文
会員
会員稼働率 70%強、客単価月 18,000
円を維持。事業として採算ベースに。
利用者の声
本当に助かります!自宅にいながらお
買い物が出来、翌日には玄関先に荷物が
届く。ストアが私の家まで来てくれるの
です。扉を開けるとほしい商品が届いて
いる、今までこんな便利なサービスがあ
るとは知りませんでした。お陰で時間や
気持ちにゆとりあるライフスタイルを
楽しんでいます。
38
事業者の声
お年寄りの方、小さなお子様を連れ
てのお買い物シーンをよく目にしま
す。ご自宅までお届けできればどん
なに喜んでいただけるだろう、、、こ
れが原点です。生鮮食料品中心に鮮
度、品質に最大の努力をしています。
いつでも、どこでも、誰でものマイ
ストアになれるよう日々戦いの連続
です。
自ら事業に参加し、そのノウハウを他の事業者にも提供!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【他社への展開の工夫】
① 情報システムのビジネスに留まらず、実際の宅配スーパー事業を運用
することで実体験に基づくノウハウを吸収。
② 事業経験から得たノウハウをもとに、情報システムや業務パッケージ
を組み立てて、宅配事業の立ち上げや運用支援といったコンサルティ
ングサービスを構築。
③ 直営の宅配スーパー事業以外にも、情報システム事業(ASP、システ
ム開発、コンサルティング他)での収益も得ることができた。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 紙カタログによるサービス提供
町のスーパーと同じように買物してもらうためには、3,000 アイテム以上のライ
ンナップが必要。web 画面上での商品表示の限界を考慮して、紙カタログによる
サービス提供を実施。
② プッシュホンやコールセンターによる有人対応
シニア層の利用者の増加に伴い、インターネットのみでの注文には限界がある。
安心して継続的に利用してもらうために、プッシュホンによる注文や口頭注文に
も対応している。
③物流費用の徹底的な効率化と鮮度・品質の改善
翌日配送を基本とし、ムダな在庫や過剰な設備を持たないようにしている。
** 今後の展開**
紙媒体と電子媒体を有効活用し、若年層からシニアの買い物難民層まで
を幅広くカバーしてゆきたい
生鮮の鮮度強化をより進化させ、商品力の向上を図る
各地の小売、流通企業他との提携によって他地域への展開
株式会社エブリデイ・ドット・コム
代表者: 代表取締役社長 柴田巌
担当者連絡先:
社長室 担当 龍田
(TEL 03-5295-7131)
〒101-0022
東京都千代田区神田練堀町三番地
富士ソフトビル 19 階
URL: http://www.jp.everyd.com/
39
③家から「出かけやすくしよう」
③-1
キララちゃんバス(茨城県土浦市)
「市民が支えるバス」に
賛同を得て実現
土浦市はかつて商圏人口 50 万人
とも言われる商業都市だったが、市
街地の郊外化やモータリゼーショ
ンによって衰退し、中心市街地へ人
が集まらなくなった。
駅前で待機するキララちゃんバス
事業のイメージ
土浦市
協賛企業
市と地域団体とが中心市街地活性
化について話し合ったところ、地域
全体で中心市街地活性化に向けた
交通整備が必要であるとして、地域
通貨キララの発行と併せてバス運
行を開始した。
~ 得られた成果 ~
協賛金等
(NPO)
まちづくり活性化土浦
運行委託
事業費補助等
関東鉄道㈱
土浦地区タクシー協同組合
運行
協定締結
地域の住民
(平成 21 年度の実証実験期間の実績)
利用者は 1 日平均約 395 人(1 便平均約 8.7 人)。増加傾向にある。
乗車人数のうち 15%が、中心市街地等で使用可能な地域通貨キララ
を、使用している。
消費者の声
「初めて乗車の際、路線や乗り換えがわからなかっ
たがボランティアさんのおかげで安心して乗車でき
た。」
(病院利用の高齢者より)/「100円で駅まで
出られることが嬉しい。また、買い物をすれば帰り
はタダで乗れるので非常にありがたい。」
(主婦より)
/「交通弱者にとって本当にありがたい。」
(外出が困
難だった高齢者より)
40
事業者の声
目的を明確にしたことで
事業がスムーズである。
また、我々民間であるN
POが主体となっている
ことで市民参加を呼びか
けやすい。
地元商店・事業者より支援され中心市街地の活性化へ
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 商業関係者が中心となって、企画、ルート選定、運営主体の設立、試
験運転、本格運行などを行っている。それにより買い物客のニーズに
合致した交通手段となっている。
② バスの運行は、関東鉄道㈱と土浦地区タクシー協同組合に委託。
③ 事業費用の負担者として、土浦市地域の商業事業者からの協賛金や土
浦市からの補助金を得ている。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 目的の明確化による対応ニーズの絞り込み
中心市街地活性化を目的とすることで、買い物客のニーズに合わせた
事業設計が可能になった。
② 地域通貨を通じた地元商店との連携
バスの運賃として「100 キララ」という地域通貨を発券している。協
賛店舗で 1,000 円以上買い物をすることで、1 枚の「100 キララ」
をもらえ、バスの運賃として使用できる。
③ 住民の主体的な参加
企画段階でから利用者の声を多く採り入れて行っており、運営におい
ても地元ボランティア等が高齢者の乗降サポート等を行っている。
** 今後の展開**
高齢化が進み、交通弱者も増加していくなか、公共交通の重要性が深刻
化していく見通し。今後より多くの市民の賛同を受け路線拡大、本数拡
大を目指し努力したい。
「訪れたくなるまち」
「住んでみたいまち」にな
るようなまちづくりに貢献していきたいとの考え。
特定非営利活動法人
まちづくり活性化土浦
代表者: 理事長 勝田 達也
担当者連絡先:
事務局長 小林 まゆみ
(TEL: 029-826-1771)
〒300-0043
茨城県土浦市中央 2 丁目 2 番 16 号
TEL: 029-826-1771
URL: http://npo-kirara.org/
41
③家から「出かけやすくしよう」
③-2
あおばす(千葉県市原市)
コミュニティが主体的に運
行し、行政が支援する協
働型のコミュニティバス
市原市交通政策課が実施したアン
ケートの結果、
「バスがあるといい」
が 50%以上で、市は「町内の人が
自主的にやるのであれば補助金を
出す用意がある」と提案。
町内会・市・コンサルティング会社
とともに、「青葉台地区に市民バス
を走らせる研究会」を立ち上げて、
コミュニティバスの運行を実現し
た。
住宅地を走行するあおばす
事業のイメージ
市原市
補助金
青葉台コミュニティバス
運営協議会
運行委託
バス会社
(小湊鉄道)
青葉台6丁目
町会
青葉台7丁目
町会
市原ダイアパレス
町会
~ 得られた成果 ~
平成 21 年度の利用者は約 95 千人(平日 1 日あたり 363 人、1 便
あたり 8.64 人)。
市からの補助は約 700 万円で、支出の 50%以下(36.6%)と公的
補助のみに頼らない事業運営を達成。
事業者の声
利用者の声
「町内のバス停から利用でき、朝・晩
も便数が多いので、通勤が大変楽にな
った。妻は日中の買い物に利用でき、
助かっています。」
(62 歳の男性利用者)
42
「通勤通学者ばかりでなく、増加する高
齢者のためにも、あおばすの運行事業
が 5 年先・10 年先まで継続できる様、
これからも地域とともに努力します。」
(石橋事務局長)
住民主体の手づくりバス
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 関係する3町内会が「青葉台コミュニティバス運営協議会」を設立し、
事業主体となった。
② バス運行に対して、市が協議会に補助金を提供する。
③ バス運行は、近隣駅から周辺地域への路線を持つ小湊鉄道㈱に委託。
委託費には専用バスの減価償却費が上乗せされ、協議会が支出する。
【効率化や継続に向けた工夫】
① ニーズに明確に対応するルート・ダイヤの設定
ターゲットを明確にし、東京・千葉方面通勤者を最重要顧客としてダ
イヤを設定。また6時~23 時台までの運行とした。
② 親しみやすさの形成
自分たちでこだわりを持ってデザインを決定し、名前も公募で募集し
子どもにもわかりやすいようにひらがなの名前を選んだ。
③ 継続的な運営のための組織づくり
事業の立ち上げには強力なリーダーシップが必要である一方で、人が
変わっても継続できる組織づくりが必要。そこで、地域 3 町会の現役
町会長が、当該事業の副会長になる組織とした。
** 今後の展開**
土曜日は、仕事以外で外出する人の身になった運行スケジュールを検討
し、例えば「10 時に東京に着きたいはず」
「19 時すぎまでやらないと、
帰宅便につかえないはず」など、利用者目線で日々改善を行っている。
日中運行空白時間帯の改善の為、毎年の乗降客数調査の結果をダイヤ改
正検討の参考にしている。
青葉台コミュニティバス運営協議会
代表者: 会長 樋口文孝
担当者連絡先:
事務局長 石橋博
(TEL 0436-62-5318)
〒299-0117
千葉県市原市青葉台 6-29-5
URL: http://www.aobus.com/
43
③家から「出かけやすくしよう」
③-3
生活バスよっかいち(三重県四日市市)
廃止された路線バスを地域
住民主体のNPO、スーパ
ー、病院が協働して復活
鉄道駅と住宅地を結ぶ路線バスが利
用者の減少により廃止されることに
なり、自動車を持たない住民の買い
物・通院の足がなくなることが懸念さ
れた。市に対して存続を要請したが、
地域にとって満足な結果にはならな
かったため、地域住民の手で存続の道
を探ることになった。
終点のスーパー前に到着したバス
事業のイメージ
四日市市
協賛企業
協賛金
補助金
平成 14 年 11 月 1 日に無料の試験運
行を開始。その成果を踏まえて 12 月
に NPO 法人認証申請、翌 15 年 3 月
NPO 法人認証と路線バスの許可を取
得、4 月 1 日より本格運行開始。
三重交通(株)
委託
NPO法人
生活バス四日市
生活バス運行
地域の住民
運賃
~ 得られた成果 ~
平成 14 年廃止前の路線バスには 30 人弱/日の利用があったにすぎ
ないが、平成 21 年度では毎月 100 人前後/日が利用している。
運賃収入 10 万円、協賛金 50 万円、行政からの補助金 30 万円。
利用者の声
事業者の声
利用者には買い物や病院に一人で
行けると喜ばれている。
近隣の住民より新路線として延伸
を望まれている。
利用者と NPO がコミュニケーション
をとりながら、利用者の要望を吸収
し、事業に活かしていきたい。
44
廃止された路線バスを地域コミュニティの力で復活!!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 事業主体は地域住民を中心として設立されたNPO法人。
② 対象地域を商圏とするスーパーサンシが協賛。同社は他地域において
もお買い物バスの経験があり、地域貢献できるお買い物バス路線を検
討していた。
③ 市は地域貢献協働体の協賛企業として有力なスーパーサンシを地域に
紹介するとともに、テスト運行の実績を踏まえて、運営費の不足分を
補充するための市独自の補助金制度を創設。
④ 運行は従前から地域の路線を担当していた三重交通に委託。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 路線の工夫
従前は市の中心部の鉄道駅と対象地域を結ぶ路線だったが、最寄駅と
の間に変更し、また地域の協賛事業者協働体としてスーパー、病院等
も路線に組み込み、生活ニーズにこたえた。
また、運行時間外を利用して、月 1 回(第 3 土曜日)福祉センターへ
の高齢者の送迎も実施しており、生活ニーズに合わせた運行を行って
いる。
② 利用しやすさの工夫
バス停間隔を 200~300m程度と短くした。バス停設置に道路使用許
可をとらなくて済むよう、沿線住民等に私有地を無償で利用させても
らうなどの協力を得た。
協力を依頼するにあたってはリーダーの努力で強力に推進することが
できた。
** 今後の展開**
近隣地域への新路線の設置を検討している。
特定非営利活動法人
生活バス四日市
代表者: 理事長 西脇良孝
〒510-0012
三重県四日市市大字羽津戊 595 番地
TEL/FAX: 059-361-6686
URL: www.rosenzu.com/sbus/
45
③-4
③家から「出かけやすくしよう」
お買い物バス
(北海道赤平市:コープさっぽろ)
過疎地域への出店を機に
買い物バスを運行。
隣接する病院、公共施設へ
の往復にも利用可能に。
過疎の山間地である赤平市に出店す
るにあたり、高齢者にやさしい店舗づ
くりの一環として無料買い物バスの
運行を企画。出店地が市中心の病院隣
接地であったことから、生協組合員で
あれば病院などの公共施設利用にも
乗車を開放した(非組合員の利用には
200 円を徴収)。
コープさっぽろ あかびら店のお買い物バス
事業のイメージ
空知中央バス(株)
委託
(生協)コープさっぽろ
あかびら店
運行
生協組合員
地域の住民
組合員として出資
または
乗車時に料金負担
~ 得られた成果 ~
2ルート、1日7便を設定。170~200 名/日の利用(全顧客数の
8~9%に相当)。
高齢者が多いため、午前中の利用や来店が多い。
一定の売上向上効果もみられる。
事業者の声
利用者の声
近年、80 歳代の自動車運転中の事故
が増えており、社会問題化している背
景がある。
利用率は徐々に上がってきている。年
間のコスト負担は少なくないが、事業
への貢献と考えている。
曜日によりセールや買い上げ品の宅
配などと組み合わせ、事業への波及効
果を高めている。
「とても便利に使っています。病院
がすぐそばなので朝まっすぐ病院
へ。帰りはお買い物して重いお買い
物袋もって離れたバス停まで歩かな
くても良いですから。」
「組合員だとバス代無料ですから
経済的にも助かります。」
「 特に冬の雪道は長いこと歩きた
くはありませんから使っています。」
46
買い物客誘致目的の無料バスを通院等にも開放!!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 生協店舗が集客手段として独自に企画、運行(北海道では競合他社も
運行している)。
② 運行は地元バス会社(空知中央バス株式会社)。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 生協組合員は無料、一般の利用者も低額の負担で乗車可能
店舗の集客手段として運営される買い物バスだが、生協の組織特性を
生かして組合員として出資すれば無料、一般利用者も低額の負担をし
てもらうことでコスト負担を利用者にも求めている。
② ニーズに合わせた運行
店舗が開店するよりも早い時間に店舗に到着する便を設定するなど、
公共施設、病院の利用を前提とした運行を行っており、単なる集客手
段ではなく、生協の公共性を前面に打ち出した運行を行っている。
③ 高齢者の多い地域性に合わせた取組み
野菜、刺身、惣菜など、高齢者の単身世帯や二人世帯の人でも求めや
すいように小分けし、高齢者への宅配サービスも行っている。
** 今後の展開**
既存スーパーが廃業した地域での運行を開始。(釧路地区店舗)
買い物バスを利用し、行政と地元大学が連携して行う健康向上事業への
送迎を行う。
(あかびら店)
生活協同組合 コープさっぽろ
代表者: 理事長 大見英明
担当者連絡先: 経営企画室
(TEL 011-671-6620)
〒063-8501
札幌市西区発寒 11 条 5 丁目 10 番 1 号
URL: http://www.coop-sapporo.or.jp/
47
③家から「出かけやすくしよう」
③-5
お出かけバス(広島県呉市)
傾斜地の多い地区で
高齢者の足を確保!
け
ご
や
呉市警固屋地区は標高差が約 100m
近い急傾斜地に民家が密集し、道が狭
く、しかも高齢化率 30%以上と日常
の移動が困難な住民が多い。
小学校の航空写真をあしらった「元気丸」
事業のイメージ
呉市
助成金
狭い道でも通行可能なジャンボタク
シーを利用し、地域中心のスーパーを
起点に地域を一日 4 回巡回する乗合
タクシーを運行。
平成 21 年 12 月試験運行開始、22
年 7 月本格運行。
NPO法人
けごや元気丸
(有)なべタクシー
委託
運行協議会
乗合タクシー運行
地域の住民
まちづくり
協議会
協賛企業
~ 得られた成果 ~
平成 21 年の試験運行前の予想乗車率は 30%であったが、試験運行
で 50%弱の成果が得られ運行することを決定。
対象となる乗客が高齢者・障害者等交通弱者のため、天候や気温に
左右されるものの、平成 22 年 7 月から 11 月末までのデータでは
平均 63%の乗車率で運行。
事業者の声
利用者の声
1ヶ月間実験運行を行っている。日を追
うごとに評判がよく、平均5~6人
/日と増えており、地域に浸透している。
住民からは今後どうなるかという心
配が出ている。
(NPO法人けごや元気丸:2010 年 2
月呉市地域公共交通協議会)
途中で何度も休憩しながら買い物
に来ていた。便利になる。(中国新
聞平成 22 年 7 月 8 日付)
「ありがたい」「助かる」という声
は当初から言われ続けている。
48
傾斜地の多い地区を巡回するジャンボタクシーをNPOが運行!!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 地元NPO法人けごや元気丸、まちづくり協議会などが主体となり、
運行協議会を発足。
② 運行は地元タクシー会社(有限会社なべタクシー)。
【効率化や継続に向けた工夫】
① ニーズに合わせた計画
地区中心のスーパーを起点とし、病院、住宅地などを巡回する路線を
設定。
最も移動が困難な山の上のエリアではフリー乗降が可能。
道幅が狭くカーブの多い地域の道路事情に合わせて 10 人乗りのワゴ
ンタイプのタクシーを使用。
② 地域コミュニティの協力による収入源の確保
運賃1人1回 100 円のほか、行政からの助成金、地元企業の車内広告
費、住民からの賛助金を運行費用に充てる。
** 今後の展開**
随時の乗り込み調査やアンケート調査等により、望ましい運行形態につ
いて検討を行い、必要であればルート変更や運行日・運行回数の見直し
を行う。
温泉施設の建設や、第 2 音戸大橋の開通といった地域環境の整備に併
せて、警固屋地区全体にバス路線を拡大したい。
乗合タクシーの関連事業として、高地部に住む高齢者等に対して、買い
物の宅配サービス等の支援策などの新規導入についても検討。
特定非営利活動法人
けごや元気丸
代表者: 理事長 前山薫
担当者連絡先: 藪本 義幸
〒737-0012
広島県呉市警固屋1丁目 13 番 15 号
TEL: 0823-28-1740
49
③-6
③家から「出かけやすくしよう」
過疎地・福祉有償運送(青森県佐井村)
傾斜地の多い地区で
高齢者の足を確保!
佐井村は津軽海峡に面し、南北 40km
と細長い村域の海岸沿いに集落が点
在。人口減少、高齢化が進んでいる。
最寄りの都市(むつ市)にも村中心部
を除いて路線バスでの日帰りは不可
能。車を持たない住民は集落に閉じこ
もる傾向にあった。
事業のイメージ
佐井村
(社福)佐井村
社会福祉協議会
運営協議会
輸送依頼
配車
ボランティア
(運転協力者)
運行
地域の住民
過疎地有償運送制度を利用したオン
デマンド交通を村民ボランティアの
協力を得て、平成 17 年 11 月より開
始。平成 18 年本格運行開始。
~ 得られた成果 ~
利用には会員登録が必要。会員数は 197 名(平成 17 年度)から
471 人(平成 19 年度)と増えていたが、平成 22 年 7 月現在 431
名となっている。
利用実績は平成 18 年度 2,670 人、19 年度 2,785 人、20 年度
2,413 人、平成 21 年度 2,073 人。近隣市町への通院、買い物の
ほか、最寄りのバス停までの送迎等にも利用されている。
利用者の声
事業者の声
通院や買い物に不自由を感じてい
たが、利用することによりとても出
かけやすくなった。
数多く利用してもらい、今後も続けてい
く上で各地区の運転協力者が欲しい。
地域の人の声を直接聞けるため、課題の
早期発見や早期解決につながる。
50
社会福祉協議会と村民ボランティアで集落の足を確保!!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 実施主体は社会福祉協議会で、予約受付や配車などを実施。また、協
議会職員が輸送ボランティアになったり、協議会所有車両を輸送に利
用したりしている。
② 事業主体は村。社会福祉協議会の運営費用を負担している。
③ 運行者は村民や社会福祉協議会職員の(有償)ボランティア。運行時
に利用者から料金を徴収するが、全額協議会に納入後、協力金を 10
日ごとに受け取る。
④ 地域のスーパーであるマエダに一般運転協力者が会員を乗せていった
場合に、1 回ごとにスタンプを押してもらって、スタンプがたまれば
マエダの商品券と交換できる。
【効率化や継続に向けた工夫】
① わかりやすく利用しやすい運賃設定
村内、村外をそれぞれ 8 ゾーンに分割し、ゾーンごとの運賃を設定。
タクシー利用よりも安く、また相乗りすると割安になる設定をしてい
る。
② 運転協力者の講習の支援
有償運送許可証の更新が 3 年ごとにあり、そのたびに運転協力者の登
録が必要になる。当初、運転協力者になるための費用は村が社会福祉
協議会の運営費として負担した。また、国土交通省指定の自動車教習
所や福祉移送サービス NPO の協力を得て講習を行った。
** 今後の展開**
地域住民の生活交通を確保するため、交通空白地域となっている地区か
ら運転協力者を募り、地域住民の輸送の利便性を向上させる。
佐井村社会福祉協議会
担当者連絡先:
事務局長 若山 明生
(TEL 0175-38-4181)
(FAX 0175-38-2383)
(e-mail: [email protected])
〒039-4711
青森県下北郡佐井村大字佐井字大佐井川目
39-12
51
③家から「出かけやすくしよう」
③-7
デマンドバス(山梨県北杜市)
地域住民が考え、行政と
大学が支援して実現した
地域の足
山梨県北西部に位置する北杜市は、
八ヶ岳近くの8町村が合併して誕
生した。
広域で市街地が分散しているため、
市民バスを運行していたが、交通弱
者の増大や運行コストの問題から、
東京大学が研究していたデマンド
バスを平成 21 年、市内 2 エリア
に試験的に導入し、実証運行を行っ
ている。22 年にはもう 1 エリアで
の実証運行を実施した。
事業のイメージ
東京大学
システム開発
事業主体
北杜市地域公共交通活性化協議会
運行委託
地元タクシー会社
運行エリア応募
バス停設置案提示
運行
地域の住民
~ 得られた成果 ~
平成 21 年度実証運行(21 年 10 月~22 年 3 月)の利用者は約
1,700 人(1 日あたり 11.5 人)
。
60 歳以上の利用者が 80~90%を占め、高齢者の足として利用。
利用者の声
「デマンド交通ができてよく出かけ
るようになった。安いこともあるが、
息子に送迎してもらって面倒と思わ
れることがなくなったから。友人と出
かけることも増えた。」
52
事業者の声
「利用目的(通院、買い物、温泉など)を
明確にしている方は定期的に利用して
おり、非常に喜んでおり次年度の充実
を期待している。
」
(北杜市役所担当者)
住民参加と IT の活用で利用しやすい交通を実現!
― 参考にしたい工夫ポイント ―
【役割分担の工夫】
① 北杜市地域公共交通活性化協議会は事業主体として全体の企画、運営、
財政負担を行っている。
② 地域住民は、運行計画にあたり地域での話し合いを通じてニーズを具
体的に事業主体に伝えている。
③ 東京大学は研究開発中のオンデマンドバス管理システムを導入し、効
率的で効果的な交通サービスの実現を支援した。
【効率化や継続に向けた工夫】
① 計画時点からの住民参加
運行エリアの選定は市民団体からの提案を公募して行った。
また、乗降場所については、運行エリア住民の話し合いを実施し、そ
の結果を反映した。そのことでデマンドバスの存在が事前に浸透し、
利用を喚起できた。
② 利用者がわかりやすい運行形態
オンデマンドではあるが、基本ダイヤを示すことで目安となる時刻と
利用可能な行き先をわかりやすくした。
③ IT の活用による効率的な運行計画
管理システムの導入により効率的な運行計画策定が容易になった。
** 今後の展開**
効果を見ながら、今後も交通空白地域に導入していく意向。
北杜市民バスに比べ、3 割運行コストが削減できるとのシミュレーショ
ンもあり、市民バスの運行も見直していく。
北杜市地域公共交通活性化推進協議会
担当者連絡先:
北杜市企画部企画課
(TEL 0551-42-1321)
〒408-0188
山梨県北杜市須玉町大豆生田 961-1
URL:
http://www.city.hokuto.yamanashi.jp/
東京大学大学院 新領域創成科学研究科
担当者連絡先:
大和裕幸研究室
(TEL 04-7136-4626)
〒277-8658
千葉県柏市柏の葉 5-1-5
URL: http://nakl.t.u-tokyo.ac.jp/odt
53
注目の先進事例
これまで紹介してきた事例以外にも、全国にはたくさんの先進事例
があります。
平成22年5月にした「地域生活インフラを支える流通のあり方研
究会報告書」でもご紹介していますので、ご覧下さい。
(http://www.meti.go.jp/report/data/g100514aj.html)
a ショッピングセンターへの送迎バスの運行
(報告書 28 ページ)
鹿児島県の(株)マキオは、運転ができな
いお年寄りのため、前日までの電話予
約で家まで送迎する「買い物バス」を片
道基本 100 円、遠方でも 150 円で運
行。
b ネットスーパーの事業展開
(報告書 29 ページ)
近年、ネットスーパーを始める企業が増えている。ネットスーパ
ーには様々な形態があるが、東京のサミット(株)等では、ネットス
ーパーを展開する中で、独自商品の品揃えや不在時の商品留め置
きなどの付加サービスを提供。また、介護施設やボランティア団
体などとの提携も模索。
54
c 英国における過疎地店舗
(報告書 77 ページ)
英国には、地域住民が出資したコミュニティコープ・ヴィレッジ
ショップで、食品スーパーだけでなく、郵便・旅行代理店・保険
代理店を兼業し、複数の事業を一つの建物で営むことで採算を確
保している店舗がある。生活協同組合の全国組織も 10%引きで
卸すことで経営を支援。
d コンビニ商品を新聞販売店が配達・集金(ファミリーマート&毎日新聞)
2010 年 12 月より大阪市と堺市内のファミリーマート直営店
で実験を開始。ファミリーマートが電話で受けた注文を毎日新聞
販売店の配達員が宅配し、集金を行う。手始めにオフィスの弁当
需要を見込んでサービスを開始したが、買い物弱者などを対象に
個人宅への配達も 6 月から実施。
コミュニケーション営業
受注&発注
折込広告
納品
商品ピックアップ
商品配達・集金
発注
新聞購読料+商品宅配料
宅配物売上入金
専売店
手数料戻し
①毎日新聞配達員による、ファミリーマート商材の営業及びパンフレットポスティング
②顧客注文分を販売所近隣FM店舗にてピックアップ→宅配
通常通信販売との
差別化ポイント
③宅配手数料の受け取り(FM→毎日新聞)
配達員によるダイレクトコミュニケーション営業可能(確実に商品が届く 消費者の安心感)
出所)ファミリーマート報道発表資料(2010 年 11 月 25 日)
55
e 乳製品の配達と見守り(森永乳業)
森永乳業では牛乳販売店の強みを生
かして、牛乳受け箱の状況をもとに
安否を確認するサービス(一部地域)
や、重いものを持って帰るのが辛い
といった要望に対応した独自商品
(米、豆腐)を開発し、地域住民の
生活に密着したサービスを提供して
いる。
牛乳配達用の保冷ボックスで届ける高級米
出所)森永乳業
f 団地内賃貸施設で NPO が野菜等を販売(公田町団地)
横浜市の公田町団地では、団地
居住者等の地域住民で NPO 法
人を結成し、買い物支援や見守
り活動を行っている。
コンビニエンスストアが撤退
した賃貸施設を活用して、お米
やトイレットペーパー、洗剤な
どの日常生活用品の販売を行
うとともに、毎週火曜日にはあ
おぞら市を開催し、弁当、惣菜
や小分けした野菜等の販売を
行っている。
56
新たな連携の試み
A 巡回型移動式マルシェ(ジェック経営コンサルタント、ファミリーマート)
富山市では、中心市街地の空洞化
と高齢化が進み、市街地でも買い
物弱者が増加しつつあった。
ファミリーマート富山千代田店や
緑の駅とやま本店等を運営するジ
ェック経営コンサルタントは、コ
ンビニエンスストアの商材と県産
農産物を軽トラックに積み、富山
市内で高齢化が進んでいる地区 9
カ所で移動販売を実験している。
事業のイメージ
ファミリーマート
富山千代田店
緑の駅
コンビニ商品の供給
生鮮品の供給
(株)ジェック経営
コンサルタント
停車場所の提供
利用者
移動販売
県、市、自治会
** 今後の展開**
各停留所に固定客がおり、客単価も安定している。
販売・運転人員の効率化、停留所と停留時間の柔軟な見直し、柔軟な品
揃え、注文販売の拡大、高付加価値商品のおすすめなどを通じて、継続
可能性を追求する。
公共性の高い試みであることを国、県、市に引き続き訴求し、官民の連
携体制を構築したい。
株式会社ジェック経営コンサルタント
担当者連絡先:
第四事業部長 五十嵐 篤
(TEL 076-444-0035)
(FAX 076-444-1135)
(e-mail: [email protected])
〒930-0805
富山県富山市湊入船町 3 番 30 号
57
58
2.力を合わせてサービスを続ける
7 つの工夫
買い物弱者は、今後ますます増えると予想され、大きな課題
となります。長期にわたって買い物弱者を継続的に応援し続け
るためには、できるだけ事業(ビジネス)として行っていくこ
とが大切です。そのため、買い物弱者のニーズを正しくつかみ、
低コストで継続的に運営する工夫が求められます。
これまで紹介してきた先進事例などを参考に、住民、事業者、
行政がお互いに力を合わせて、サービスを続けていくための工
夫をご紹介します。
サービスづくりのステップ
利用者ニーズの把握
住民
事業者
行政
サービスを続ける7つの工夫
①買い物弱者マップをつくろう
②地域ごとの課題に対応しよう
③輸配送ルートを効率化しよう
運営基盤づくり
住民
事業者
④IT を活用しよう
行政
⑤遊休設備や公的設備を活用しよう
⑥住民主体で運営しよう
サービスの開始と継続
住民
事業者
行政
⑦みんなで連携して事業を続けよう
59
①買い物弱者マップを作ろう
62 ページ
買い物弱者がどの地区に何人くらいいるのか、なるべく定量的に、視覚的に把
握します。
②地域ごとの課題に対応しよう
64 ページ
買い物弱者を応援する方法について、地域ごとに具体的な課題と工夫について
知恵を出し合います。
①-2 シティマーケット
①-4 過疎地コンビニ
①-3 マルエツ プチ
①-8 やまとフレンドリーショップ
③-2 キララちゃんバス
②-4 らくらくお買い物システム
③-5 お出かけバス
a 送迎バス
A 巡回型移動式マルシェ
③輸配送ルートを効率化しよう
66 ページ
商品の配送や、乗客の輸送は大きなコスト負担になる場合があります。
効率的な配送を工夫します。
①-5 共同配送
③-7 デマンドバス
②-5 高齢者向け宅配
②-7 セブンミール
d 新聞販売店が配達・集金
60
e 乳製品の配達と見守り
④IT を活用しよう
68 ページ
スケジュールや予約の管理など、複雑ですがお客さんに見えない「裏方」の処
理について、IT サービスを活用します。
②-6 山間地ネットスーパー
②-9 宅配スーパー事業
b ネットスーパー
⑤遊休設備や公的設備を活用しよう
70 ページ
撤退した空き店舗や公益施設、駐車場で眠っているバスやトラックなど、使え
るものは何でも使います。
①-7 青研
③-4 お買い物バス
⑥住民主体で運営しよう
72 ページ
行政や企業だけに頼るのではなく、買い物弱者の苦労が本当に分かる住民自身
が力を合わせて、納得感のある住みやすい地域をつくります。
③-2 あおばす
①-6 ノーソンくらぶ
②-8 まごころ宅急便
③-3 生活バスよっかいち
③-6 過疎地・福祉有償運送
c 過疎地店舗
f NPO が野菜等を販売
⑦みんなで連携して事業を続けよう
74 ページ
事業者、地域コミュニティ、行政などが役割を分担し、連携して、事業収入で
まかないきれない費用を補う工夫が求められます。
61
①買い物弱者マップを作ろう
工夫のポイント
買い物弱者がどの地区に何人くらいいるのか、なるべく定量的に、視覚
的に把握することで、利用者のニーズに的確に対応できるサービスを提
供します。
特に、生鮮三品や医薬品の入手が困難な地区を把握することが大切です。
ここでは、特別な IT リテラシーがなくても、
「買い物弱者マップ」を簡単
に作成する方法をご紹介します。
買い物弱者マップの作り方
①地図の準備
②人口の記入
③店舗の記入
④徒歩商圏の記入
⑤買い物弱者数の把握
・市町村/町丁目の境界が分かる地図を
用意します。
・自治体の統計資料から、単身または 2
人暮らしの 65 歳以上人口を市町村/
町丁目の集落中心に書き込みます(右
図の×印)。
・自治体商工部門や商工会等が保有して
いる店舗リストを使って、生鮮三品、
医薬品を扱う店舗を図示します(右図
× 印)
。
の○
・生鮮三品、医薬品それぞれについて、
取扱店舗を中心に半径 500m~1km
(=高齢者の平均的な徒歩移動可能距
離(※))の円を描きます(右図の円)。
・この円からはみ出した集落が、各商品
カテゴリに対する買い物不便地区で、
そこに書き込まれた人数がおよその買
い物弱者数となります。
62
生鮮三品の買い物弱者マップのイメージ図
×
(△△人)
×
×
(△△人) (△△人)
×
(△△人)
×
(△△人)
×
(△△人)
×
×
×
(△△人)
×
×
(△△人)
鮮魚
(△△人)
青果
(△△人)
(△△人)
× ×
(△△人)(△△人)
精肉
×
(△△人)
×
(△△人)
工夫した事例:佐用町の商店マップの活用
・ 兵庫県佐用町(さようちょう)では、商工会が作成した商店マップに、
徒歩で買い物できる半径 500m の円を描き、空白となっている地区
で移動販売を実施しています。
・ 別の空白地区では、市町村運営有償運送「江川ふれあい号」をデマン
ド運行し、当初計画の 12 人/日を上回る 13 人/日が利用しています。
・ 更に、商店空白地区の 1 つで出張居酒屋サービス「明るい農村食堂イ
ナカーデ」の実験も行ったところ、普段話せない人とも話せる交流の
場として、住民に大好評でした。3 回目の実験では効率化も工夫し、
黒字になりました。
(※)高齢者の徒歩移動可能距離の平均値は、平成 17 年全国都市交通特性調査
(http://www.mlit.go.jp/crd/tosiko/zpt/index.html)において、65-74 歳で 1km
程度、75 歳以上で 500m 程度となっています。
63
②地域ごとの課題に対応しよう
工夫のポイント
買い物弱者を応援する方法はどこでも同じではなく、地域ごとに特徴が
あります。
ここではまず、5つの大きなパターンで課題と工夫を例示します。
お住まいの地域の具体的な課題と工夫は、皆さんそれぞれで知恵を出し
合いましょう。
地域の課題と工夫の5つのパターン(例)
課題
①大都市部・
中心市街地
・ 高層ビルが建ち並ぶオフィス街などです。商業施設
が豊富ですが、意外にも生鮮食品の入手が困難な地
区があります。
工夫
・ 小さな店舗で家賃を抑え、小分けした生鮮品を揃え
て休日や夜間も営業しています。
・ 高齢者だけでなく、忙しい共働き世帯や単身女性も
ターゲットにすることで、売上を維持しています。
②都市郊外
課題
・ マンションや団地が建ち並ぶ住宅街などです。30
~40 年経過した団地では、店舗の撤退や住民の高
齢化も進んでいます。階段の昇り降りは不便なだけ
でなく、危険な場合もあります。
ミニスーパー
団地 NPO など
工夫
ミニスーパー
生鮮コンビニなど
①-3 マルエツ プチ
②-3 地域ステーション
・ 団地の自治会や管理組合、ボランティアなどが中心
となり、共用部や店舗跡などを利用して、食料品の
販売や簡易食堂、上層階までの宅配、イベント、見
守りなどを行っています。
・ 国や自治体のモデル事業に応募することで、先進的
な技術や資金面での支援も獲得しています。
64
工夫
ミニスーパー
交通網の再編
送迎バスなど
課題
③地方中心市
・地方都市
③-4 お買い物バス
・ 駅前の百貨店や総合スーパーなどが閉店し、車を運
転できない高齢者にはショッピングセンターも不便
です。
・ ショッピングセンターや病院を通るように、路線バ
スを再編します。
・ また、ショッピングセンターやスーパーへの送迎バ
スを開放し、地域の方が病院や役所に行くときにも
利用できるようにします。
A 巡回型移動式マルシェ
工夫
コミュニティバスなど
課題
④地方周辺都市
・田園地域
③-1 キララちゃんバス
③-2 あおばす
・ スーパーは車を使えば行ける場所にありますが、歩
いて居行けない場所にある可能性がありますが。
・ 昔からあった地域の交通機関なども徐々に廃れてき
ており、足の確保が求められています。
・ 200~300m おきに集落をつなぎ、スーパーや診
療所を通るように、コミュニティバスを走らせます。
・ 自治体の補助や地元企業の協賛金だけでなく、住民
も出資や回数券の購入などで応援しています。
③-3 生活バスよっかいち
a 送迎バス
①-1 Y ショップ
①-6 ノーソンくらぶ
②-1 ハッピーライナー
②-2 ハーツ便
工夫
過疎地コンビニ
移動販売
乗合タクシーなど
課題
⑤中山間地域
・ バスが廃止され、農協も撤退している場合がありま
す。片道 2 時間歩くか、高い料金を払ってタクシー
に乗らないと、食事もままなりません。季節によっ
ては山菜や野草が採れます。
・ 集落を週 1 回くらい巡回する移動販売や、住民自ら
運営する店舗により、食料品や日用品を買うだけで
なく、みんなの交流の場を再生します。
・ 集落で採れた野菜を移動販売車に積んだり、自営店
舗で販売したりすることで、売上にもつながります。
・ コンビニの物流網や運営ノウハウ、品揃えを活かし
ながら、地元密着型の店舗をつくります。
・
65
③輸配送ルートを効率化しよう
工夫のポイント
商品の配送や、乗客の輸送は大きなコスト負担になる場合があります。
例えば、空車のまま長距離を移動する「空振り」は、もったいないもの
です。また、不必要に時間がかかる「遠回り」もなるべく避けたいもの
です。
「空振り」や「遠回り」は、サービスの運営者が組んだルートやスケジ
ュールと、住民のニーズとの間で、時間や位置がずれてしまうことによ
っておこると考えられます。
この「ずれ」を減らせば、ある程度効率的な配送を工夫でき、無駄を減
らせるでしょう。
1つの地区だけで効率化するのは難しいので、既存の輸配送ネットワー
クの有効活用や、ノウハウを持つ流通事業者との連携、ノウハウを持つ
流通チェーンへの加盟や共同輸配送なども視野に入れます。
無駄を減らす工夫例
①幹線と支線に分ける
・クローバーの腕輪のように、集落中心
を巡回する幹線(=茎)と、集落中心
から周辺を巡回する支線(=葉)に分
けましょう(右イメージ図)。
②タイミングを揃える
・幹線(=茎)と支線(=葉)が出会う
タイミングを揃え、同じ時間帯に人々
が集まれるようにしましょう。そこか
ら人々の交流も生まれるでしょう。
66
「クローバーの腕輪」イメージ図
工夫した事例
・ ディ・シィ・ディは、地域の問屋が共同で「茎」をつくり、それぞれ
の「葉」の中心にいる小売店、飲食店、医療機関などに配送していま
す。 ①-5 共同配送
・ ヤマト運輸では、全国全世帯を網羅する配送網において、集配車と台
車を組合せた「バス停方式」(配送圏概ね 400m 以上)
、サテライト
センターからリアカー付き電動自転車で集配する「スリーター方式」
(配送圏概ね 400m 未満)などを、地域に応じて選択しています。
ここでは、トラックが「茎」を巡回し、台車や自転車が「葉」を巡回
しています。
67
④IT を活用しよう
工夫のポイント
様々なニーズに対して最適で柔軟なスケジュールを管理したり、時々
刻々と変化する様々な商品・サービスの予約を管理したりするには、複
雑な処理が必要です。このような複雑ですが買い物客の目には見えない
「裏方」の処理については、IT 基盤が威力を発揮します。
また、タッチパネル端末やタブレット PC などで注文する場合には、高
齢者から見て、電話テレビと同じくらい分かりやすく使いやすい、全国
共通の標準的な操作画面が求められます。
このような IT 基盤も、個々の事業主体が新たに開発するのは大変です。
既存のソフトウェアパッケージや、インターネット経由の月額料金など
で提供されるサービスなどを利用するとよいでしょう。既に IT 基盤を有
する流通チェーンや、物流事業者などと連携するのも効果的です。
裏方としての IT の活躍場面
①ルート設定
②スケジュール管理
③販売・在庫管理
④予約・発注管理
・複数の停留所や複数の住居を巡回する
最適なルート計算は、IT が得意とする
領域です。
・担当人員や車両のスケジュール管理
も、IT が得意とする領域です。様々な
条件を考慮して、最適で柔軟なスケジ
ュールを計算します。
・売上、在庫、発注の管理は商売の基本
ですが、会計管理だけではなく、鮮度
(消費期限)や欠品(機会損失)の管
理で IT が威力を発揮します。
・売上や在庫を見て発注するのも大切で
すが、予約があれば、無駄なく確実な
発注ができます。予約は時々刻々と追
加や変更、キャンセルされるので、紙
では管理しきれません。
68
工夫した事例:地元スーパー向けのネットスーパーサポートサー
ビス
ヤマト運輸株式会社では、福島県など各地でスーパーと提携し、ネットス
ーパー事業を支援。また、パソコンを使用できない高齢者でも気軽に注文
可能なタッチパネル端末「ネコピット」を導入し、集会所等への設置を進
めている。
お客様
Web/
モバイル
スーパーマーケット
注文情報
ネコピット
ピッキング
リスト出力
集配拠点
コールセンター
センター)
①注文
②注文受付
④配送準備
③商品ピッキング・パッキング
当日配達
⑧お届け
⑦決済
⑤集荷
宅急便
⑥配送
出所)ヤマト運輸
工夫した事例:スマートフォンに対応したネットショッピング
株式会社セブンネットショッピングでは、スマートフォンに対応したネッ
トショッピングを開始した。iPhone/iPad に加え、Android 端末にも対
応し、イトーヨーカドーネットスーパーも利用できる。
端末によらず共通な画面で、指で軽く触れる直感的で簡単な操作により、
商品検索から決済まで、快適に買い物ができる。
出所)セブンネットショッピング
69
⑤遊休設備や公的設備を活用しよう
工夫のポイント
買い物弱者が多い地域をよく見渡せば、撤退した空き店舗、昼間は駐車
場で眠っているバスやトラックなど、もったいない設備が見つかるかも
しれません。
また、自治体庁舎や公民館、商工会議所、そのほかの公益施設などを活
用して店舗や停留所をつくれば、費用が安いだけでなく、社会貢献とし
ての位置づけもはっきりします。
身の回りで使える設備は何でも使うつもりで、最大限に有効活用しまし
ょう。
空きスペースの活用事例
・ 青研は、かつての商店街の店舗跡を活用して、小型店舗やワイナリー
を運営しています。 ①-7 青研
・ 横浜市の公田町団地では、NPO が団地内の空き店舗を活用して野菜
等の販売やミニ食堂の運営をしています。
・ 山形県のまちづくり協同組合「虹」では、廃院となった診療所を改築
し、医療生協と連携して高齢者住宅や通所介護・訪問看護・居宅支援
の複合施設を運営しています。
・ マルエツ プチも、コンビニ跡地等をうまく活用して、買い物不便地
域に小型店舗を出店しています。 ①-3 マルエツ プチ
先駆者からの声
○ 郵便局と小売を営むミニ店舗を一体運営したいが、兼業規制があっ
て許可を取るのは難しいと言われた。
70
公的施設の有効活用事例
・ 広島県呉市の Y ショップ山崎店では、JA 支所を活用してボランタリ
ー店舗を運営しています。 ①-1 Y ショップ
・ 自治体庁舎へのコンビニ出店も増えています。
・ 公民館はもともと社会教育のための施設であり、特定の事業者に対し
て営利目的での使用を認めることは制限されています。しかし、平成
7 年の文部省通知により、一定の要件のもとであれば、営利事業者が
公共的利用をすることが可能との見解が示されました。
先駆者からの声
○ 移動販売車の駐車場所について、市の福祉部局や商業部局は空き公
有地の使用に前向きだったが、財産管理部局に話をすると急に冷た
くなった。部局間での連携を良くして欲しい。
車両の有効活用事例
・ コープさっぽろのお買い物バスは、店舗に隣接する医療機関の利用者
でも乗ることができ、利用者の利便性を考えて開店前の時間帯にも運
行しています。 ③-4 お買い物バス
・ 山梨県身延町では、教育委員会が保有するスクールバスや福祉課が保
有する患者輸送バスなどを整理統合し、バス路線を再編しました。こ
れまで別のバスが同じ路線を走っていながら、乗車対象が限定されて
いましたが、誰でも乗れるようになりました。
先駆者からの声
○ NPOで過疎地有償運送を始める際に、地元のバス会社やタクシー
会社の反対が大きかったため地域公共交通会議での合意がとれず、
導入できなかった。
71
⑥住民主体で運営しよう
工夫のポイント
買い物弱者の苦労が本当に分かるのは、買い物弱者である住民自身です。
苦労が分かるからこそ、本気になって最後まで粘り強く取り組むことも
できると考えられます。
地域の住民自身がリーダシップを取り、互いに話し合って目標を明確に
します。力を合わせて、納得感のある住みやすい地域をつくっていくこ
とが非常に大切です。
地区協議会や NPO を結成し、
「自ら治める」という本来の意味で、
「自治」
を実現しましょう。
住民主体の運営に向けたステップ
①共に体験しよう
・ 買い物弱者の苦労は話を聞いただけでは実感
できません。対象地区を実際に訪問し、買い
物の苦労を共に体験します。
②課題や理念を共有しよう
・ 共通体験に基づいて、自分たちが何をすべき
か言葉で表し、課題や理念を共有します。
③実験しよう
・ 課題と理念を共有したグループが中心となっ
て、実験を行います。ここでは、行政や企業
の支援も必要となるでしょう。
④運営組織をつくろう
⑤絆を深めよう
・ 実験から得た教訓をもとに、最後まで粘り強
く取り組める運営組織を設立します。
・ 運営組織には、住民自らが出資したり、頭や
体を使って働いたりすることも求められま
す。
・ 地元を応援する気持ちで、なるべくそのお店
を利用することにより、
「買い支え」ましょう。
・ お店は単に買い物の場ではなく、人と人が交
流するサロンのような役割も果たします。ち
ょっとした空間を活用して、地域のコミュニ
ティーを作り直していくことも大切です。
72
工夫した事例: 庄内まちづくり協同組合『虹』
・ 山形県鶴岡市において、くらしつづけられるまちづくりの具体策とし
て、異業種の法人で構成する事業協同組合方式で『庄内まちづくり協
同組合 虹』を設立しました。
・ 施設や仕事おこしは、住民の要求を直接的に解決すると共に、地域で
の雇用を拡大し、地域経済の活性化にも貴重な貢献になるものと協同
組合では考えています。
庄内まちづくり協同組合『虹』
73
産直センター(農民連)
コープ開発(損保等)
ファルマ山形(薬局)
高齢者福祉生協
山形虹の会(社福法人)
庄内医療生協
共立社(購買生協)
《現在の事業分野》
住宅型有料老人ホーム
住宅介護事業(通所介護、訪問介護、ケアプランなど)
ヘルパー養成事業
給食・配食事業
ビルメンテナンス事業
送迎運転事業
便利屋事業
⑦みんなで連携して事業を続けよう
みんなで連携して事業を続けよう
サービスを提供する事業主体が継続して事業を行っていくためには、
事業の費用(コスト)をまかなうことが必要です。事業者、地域コミュ
ニティ、行政などが役割を分担し、連携して、事業収入でまかないきれ
ない費用を補う工夫が求められます。
役割分担を考えるには:移動販売を例題に
下のグラフは、ある移動販売事業の損益を売上高との比で表したもの
です。一番右側の損益をみるとマイナスになっているので赤字事業です。
このままでは撤退するかもしれません。
比較のために、食品スーパーの費用の売上高比率を載せ
比較のために、食品スーパーの費用の売上高比率を載せています。売
上原価はほぼ同じ水準ですが、人件費が多くなっていること、販促費が
スーパーに比べて少なくなっていることが分かります。
また、費用(販売及び一般管理費)の中では減価償却費が多く、移動
販売車の負担が大きいことが分かります。
この状況を見て、誰がどのような手を打てばよいでしょうか。
ある移動販売事業の損益構造(イメージ)
74
(1)売上高を増やす工夫
移動販売の売り上げは
訪問個所数×1か所当たり来店客数×客単価 で計算できます。
訪問個所数を増やすには、利用が見込める地区に駐車場所が必要です。
町内会や自治会、地方自治体、団地の管理者などに協力を求めて販売車を
停めやすくすることが有効でしょう。
また、一か所当たりの来店客を増やすには、訪問する場所のお客様を組
織化して、誘い合ってきていただくことが有効です。地域のリーダー役の
方と事業主体が十分に話し合ってニーズに合わせたサービスを提供しま
しょう。
一方で、安売りをしなくても地域の人々が買い支えたり、粗利率の高い
やや高級な商品や嗜好品等の買回り品を販売するなど、粗利を高める方法
も有益です。
(2)売上原価を減らす工夫
安い価格で仕入れられるよう、発注・物流の合理化や仕入機能の集約な
どの企業努力も必要になります。
(3)販売及び一般管理費を減らす工夫
販売及び一般管理費では、人件費と減価償却費が大きなウェイトを占
めていることが分かります。
人件費を効率化する
ほとんどの移動販売では運転手が販売員を兼ねており、これ以上人を
減らすことはできません。
他の事業との兼務で人件費を有効活用したり、地域に役立ちたいと思
っている高齢者の方などに比較的安い人件費でお願いしたりするなどの
工夫が必要です。
減価償却費を減らす
移動販売では移動販売車の負担が大きく、収益を圧迫しています。事
業主体でも中古車を利用するなど、初期投資の圧縮が求められます。
一方、自治体でも車両購入に補助する、車両を地域で保有して事業主
体に貸し出すなどの方法によって、事業主体の負担を軽くする方法も考
えられます。
75
先進事例に見るさまざまな工夫
今まで見てきた事例にあった継続のための工夫から、「売上高を増や
す」「売上原価を減らす」「販売管理費及び一般管理費を減らす」といった
視点で、事業主体、地域コミュニティ、行政の役割分担と連携について
整理してみます。
(1)売上高を増やす工夫
売上高を増やすには、①利用者を増やす ②一人当りの単価を増やす
ことが考えられます。
それぞれの「増やす工夫」と事業者の努力、それに対応するコミュニ
ティや行政の支援は次の表のようにまとめられます。利用者も声を掛け
合って積極的に利用し、単価の高い買回り品などを購入して事業者を支
えていくことが有効です。
利用者を増やす工夫
事業者の自主努力
来店客数を増やす
コミュニティの支援
送迎サービスの実施
コミュニティ機能の併設
利用呼び掛け
店舗での行事の開催
庭先やコミュニティ施設を停
車場所として提供
移動販売の訪問個所を
増やす
移動販売の一か所当た
りの利用者を増やす
移送サービスの利用者
を増やす
使いやすいダイヤやバ
ス停の配置
注文呼び掛け、とりまと
め
地域行事の併催
庭先やコミュニティ施設をバ
ス停として提供
行政の支援
公共施設を停車場所とし
て提供
駐停車禁止などの交通
規制の見直し
公共施設をバス停として
提供
事例にみる工夫
①-6 ノーソンくらぶ
③-3 生活バスよっかいち
お年寄りが立ち寄りやすいスペースを作って来店客数を増やそうとし
ている。
沿線の住民の協力を得て、私有地をバス停として無償で提供していた
だき、きめ細かなバス停配置が実現できた。
76
単価を増やす工夫
事業者の自主努力
品ぞろえを充実させる
高い粗利率を確保する
チェーンに加盟する
共同仕入を行う
予約販売や御用聞きを
実施する
定価販売
粗利の高い商品(買回り
品など)の販売
その他
コミュニティの支援
高くても買い支える
行政の支援
販売規制 を見直 して高
粗 利 商 品 ( 例 えば 医 薬
品)が扱えるようにする
地域行事等で利用する
商品は必ず購入する
事例にみる工夫
①-1 Y ショップ
JA の農家向け品ぞろえに加え、全国チェーンの幅広い品ぞろえを行っ
て、地元住民のほか来訪者にも利用されている。
②-2 ハーツ便
利用者の反応を見て品ぞろえを変更したり、要望のある商品は注文を
受け付けたりして、狭い車内でも幅広く商品を選べる工夫をしている。
(2)売上原価を減らす工夫
売上原価を減らすには、安く仕入れるのはもちろん、中間流通や物流
にかかる費用や不良在庫や廃棄処分に伴う損失を少なくすることが大切
です。
事業者の自主努力
安く仕入れる
中間コストを削減する
在庫ロス・廃棄ロスを削
減する
コミュニティの支援
行政の支援
チェーンに加盟する
共同仕入を行う
共同配送を利用する
予約販売を行う
宅配や移動販売では店
舗の商品を活用する
品ぞろえを絞り込む
事例にみる工夫
①-5 共同配送
地方の卸売事業者が連携して、小売店向けの共同配送を実現すること
で、物流コストを削減した。
②-2 ハーツ便
店舗の在庫から商品を選び、持ち帰った商品は店舗で見切り販売する
ことで、廃棄ロスを削減している。
77
(3)販売管理費及び一般管理費を効率化する工夫
この費目をいかに効率化できるかが重要です。主なものは人件費、不動産
や車両の賃借料と減価償却費です。地域でできることは地域で引き受け、
行政の補助金なども活用して低コストで事業を行えるように工夫しまし
ょう。
人件費の効率化
賃借料の削減
減価償却費の削減
事業者の自主努力
コミュニティの支援
行政の支援
シルバー人材の活用
ボランティアの活用
他の事業者の空き時間
の活用
自動化、機械化により少
人数で運営できるように
する
他の事業との兼務者の
活用
空き店舗を借りる
自動車の空き時間を活
用して宅配する
中古の設備を活用する
宅配の一部を地域住民
が担当
人件費の補助
集会所などを無償(低
額)提供
公共施設を無償(低額)
提供
固定資産をコミュニティで保
有し、事業者に貸出
固定資産(店舗や車両な
ど)の購入補助
固定資産を行政が取得
し、事業者に貸出
事例にみる工夫
①-3 マルエツ プチ
通常より小さい店舗で空き店舗も活用することで賃借料を削減し、店頭
加工をなくして少人数でも運営可能な店舗づくりをした。
①-2 シティマーケット
上記に加え、需要予測システムを活用した自動発注を取り入れ、発注に
必要な人件費を削減できた。
①-7 青研
空き店舗を安く借りることで賃借料を削減。
②-1 ハッピーライナー
販売車の更新にあたって、行政から 3 分の 2 が補助され、初期投資が
削減できた。
②-3 地域ステーション
地域の商店や団地の集会所などを借りることにより、商品保管場所のコ
ストをあまりかけずに、利用者の利便性を向上させた。
②-4 らくらくお買い物システム
③-6 過疎地有償運送
宅配車両に未稼働のタクシーを利用することにより、専用の車両を用意
せずにサービスが提供できた。
ボランティアや社会福祉協議会が保有する車両を利用することで、専用
車両を購入せずにサービスの充実を図ることができた。
78
(4)その他の工夫
営業外収益を増やす工夫
事業本体(販売や移送サービスなど)の収入以外の収入源を増やしてい
くことも事業の安定のためには必要な工夫です。
事業者の自主努力
受取利息を増やす
その他の収入を増やす
コミュニティの支援
基金を積み立てる
回数券事前購入などま
とまった資金を先払いす
る
協賛金を出す
広告を出す
行政の支援
基金を積み立てる
高齢者の見守り等の公
共サービスを委託する
事例にみる工夫
②-1 ハッピーライナー
地域の高齢者の見守り機能を担う協定を結び、公的な支援を受けやす
い素地ができた。
③-5 お出かけバス
運賃収入のほか、住民からの賛助金、地元企業の車内広告費、行政か
らの助成金を得て事業を継続している。
その他の支援
また、各種の補助・助成制度(巻末参照)を利用して、初期投資や運
営コストを公的に補填してもらうことや税金の減免など(自治体による)
も有効な支援策です。
また、商工会などで宅配可能な商店のリストの配布(東京都日野市な
ど)を行って利用の呼びかけをおこなうことや、商工会と福祉団体とで
宅配時の見守り協定(東京都目黒区など)を結び、福祉団体から宅配の
利用を呼び掛けるなどの情報提供による事業の支援も有効です。
79
参考資料
平成 23 年度の国による支援制度
買い物弱者問題は様々な行政施策にまたがるため、複数の省庁、複数の
自治体部局が様々な観点から支援制度を用意しています。
高齢者の生活支援や見守り、地域活性化などが目的であれば、民間企業
でも支援要件を満たす可能性があります。実際の要件は、それぞれの募
集要項に従ってください。
平成 23 年度以降の国による事業の一例
担当省庁
事業名等
事業概要
内閣府
℡(代表)
03-5253-2111
新しい公共支援事業 国民の積極的な「公」への参加による、公的
サービスの無駄のない供給に向け、NPO等
交付金
予算額
88
億円
が自ら資金調達し、自立的に活動することが
可能となるよう、環境整備を進める。
厚生労働省
℡(代表)
03-5253-1111
社会福祉振興助成費 政策動向や国民ニーズを踏まえ、民間の創意
工夫ある活動や地域に密着したきめ細かな活
補助金
20
億円
動等に対し助成を行い、高齢者・障害者が自
担当課:社会・老健 立した生活を送れるよう、また、子どもたち
が健やかに安心して成長できるよう必要な支
局福祉基盤課
援等を行うことを目的とする。
地域支援事業
要支援・要介護状態になる前から介護予防サ
ービスを提供し、効果的な介護予防システム
677
億円
担当課:老健局老人 を確立するとともに、地域の総合相談、権利
擁護事業、介護給付等費用適正化事業等を行
保健課
う。
地域支え合い体制づ NPO法人、福祉サービス事業者等の協働に
よる、見守り活動チーム等の人材育成、地域
くり事業
の支え合い活動の立ち上げ支援、地域活動の
担当課:老健局振興 拠点整備、家族介護者のネットワークづくり
等に対する助成を行う。
課
80
200
億円
担当省庁
事業名等
事業概要
農林水産省
℡(代表)
03-3502-8111
未来を切り拓く6次 農林漁業者の加工・販売への取組促進、農山
漁村に由来する資源の活用促進、食料品への
産業創出総合対策
予算額
130
億円
アクセス困難度を客観的に推計するための指
担当課:総合食料局 標の実用化に向けた取組を支援等。
総務課
食と地域の交流促進 食をはじめとする豊かな地域資源を活かし、
集落ぐるみの都市農村交流等を. 促進する取
対策交付金
17
億円
組を、国が直接支援。
担当課:農村振興局
都市農村交流課
経済産業省
℡(代表)
03-3501-1511
地域新成長産業創出 地域が有する多様な強みや特長、潜在力を活
かした、新たな成長産業群の創出・育成に資
促進事業
13
億円
するネットワーク形成、先導的事業、ソーシ
担当課:立地環境整 ャルビジネスの事業ノウハウ移転等を支援。
備課
小規模事業対策推進 環境問題、少子高齢化、人口の都市部偏在等
の課題が顕在化している中で、こうした課題
事業
24
億円
解決について、生活者の視点から行う事業(コ
担当課:中小企業庁 ミュニティ・ビジネス)であり、商工団体が小
規模企業、地元自治体等と一体となって取り
小規模企業政策室
組む事業に対して、地域経済の活性化及び雇
用創出の観点から支援。
中小商業活力向上事 商店街等が行う、少子高齢化、安全・安心の
社会課題に対応する商業活性化の取組を支
業
20
億円
担当課:中小企業庁 援。
商業課
戦略的中心市街地活 中心市街地活性化法の認定を受けた基本計画
に基づく商業活性化事業や中心市街地活性化
性化支援事業
担当課:中心市街地 協議会の設置・運営等を支援。
活性化室
81
29
億円
担当省庁
事業名等
事業概要
経済産業省
℡(代表)
03-3501-1511
地域商業活性化 商店街振興組合等が実施する、急速な商店街への
来街者減に歯止めをかける取組や空き店舗を活用
事業
予算額
20
億円
した新事業展開、近隣型の宅配・販売拠点の整備、
担当課:
中小企業庁商業 デジタル・コンテンツの流通を可能とする地域拠
点の整備など、地域経済の活性化・地域住民の利
課
便性増進を図る取組を支援。
国土交通省
℡(代表)
03-5253-8111
社会資本整備総 「地域主権戦略大綱」を踏まえ、社会資本整備総
合交付金を抜本的に見直し、地方の自由度を拡大
合交付金
1兆
7,593
する観点から、国の政策目的を着実に実現しつつ、
億円
担当課:社会資 府省の枠にとらわれず使えるようにする。1割は
本整備総合交付 ソフト事業でも使用可能。
※自治体が作成する社会資本整備計画に折り込ま
金総合調整室
れる必要有り。
「新しい公共」
の担い手による
新たな地域づく
り
地域の志あるお金が「新しい公共」の担い手に活
用され、そのような資金が地域で循環する地域金
1.2
億円
融の仕組みを構築するとともに、活動の担い手が、
地域の資金を有効に活用して地域活動につなげる
担当課:広域地 ための経営支援を受けられる環境の整備を行う。
※実証向けの調査費としてなら使用可能。
方整備政策課
ICT等を活用 成長戦略(観光分野、住宅・都市分野)に位置付
した歩行者移動 けられた、観光の高度化、まちなか居住の早期実
現に向け、ICT等を積極的に活用し、高齢者、
支援の推進
0.7
億円
障がい者をはじめとしたあらゆる歩行者に対し、
担当課:国土計 移動支援を行える環境整備を推進する。
※移動制約者の支援という内容が必要。
画局総務課
地域公共交通の 生活交通の存続が危機に瀕している地域等におい
確保・維持・改 て、地域の特性・実情に最適な移動手段が提供さ
れ、また、バリアフリー化やより制約の少ないシ
善の推進
ステムの導入等移動に当たっての様々な障害(バ
担当課:交通計 リア)の解消等がされるよう、地域公共交通の確
保・維持・改善を支援。
画課
82
305
億円
平成 23 年度の地方自治体による支援制度
まちづくり、健康・福祉、交通政策など様々な観点から地方自治体が中
心になって買物弱者を支援する動きも広がっています。
当マニュアルでは、地方自治体が行っている主な支援方法について御紹
介します。
平成 23 年度以降の地方自治体による支援策の一例
(地方自治体アンケートより抜粋)
地方自治体
事業名等
事業概要
予算額
北海道雄武町
移動販売推進事業
商店の無くなった地域へ、車両を使って定期
245
万円
的に巡回し移動販売を開設するにあたっての
℡
0158-84-2121
担当課:雄武町産業 運営費等の補助を行う。
振興課
群馬県館林市
まちなかにぎわい創 スーパーや食料品店がなくなった中心市街地
出事業 ( 生鮮三品出 において、ミニスーパー事業の運営等委託を
行う。
店事業)
℡
0276-72-4111
2,890
万円
担当課:商工課
千葉県
℡
043-223-2824
新潟県
℡
025-280-5237
地域と連携した商業 商店街が行う買い物弱者対策を対象とした共 3,500
同宅配・移動販売など(単独事業者は対象外)
活性化事業
万円
に対して補助を行う。
担当課:経営支援課
まちなか出店促進事 「身の丈」にあった規模で運営を行う店舗の
出店を促進するために設置・運営に要する経
業
費に対して補助を行う。
担当課:商業振興課
また、上記の実施主体を支援するために、事
業可能性調査及びアドバイザー派遣を行う。
83
1,557
万円
地方自治体
事業名等
富山県富山市
地域生活応援団 地域住民・NPO 等非商業者と商業者とで構成する
団体を設立し、買い物代行サービス事業を開始す
設立支援事業
℡
076-443-2051
鳥取県鳥取市
℡
0857-20-3222
島根県
℡
0852-22-5655
広島県広島市
℡
082-504-2604
事業概要
予算額
102
万円
る初期費用に対して 5 割の補助を行う。
担当課:男女参
画・ボランテイ
ア課
地域中小卸売業 中小卸売業の機能強化や新たな事業展開を促進
活性化推進事業 し、卸売業の振興を図るため、協同組合に実施委
1,214
万円
託する形で共同配送の試験事業に取り組む。
担当課:経済戦
略課
買い物不便地域 買い物不便地域において、移動販売、宅配事業、
買い物交通手段の提供などを行う人材の人件費、
対策事業
2,000
万円
研修費、運営費を緊急雇用基金に於いて負担する
担当課:中小企 (募集人員 5 名)。
業課
地域主体の乗合 公共交通機関の利用が不便な地域において、地域
タクシー等導入 が主体となって、乗合タクシー等の新たな生活交
通を確保しようとする取り組みに対して、実験運
支援
248
万円
行時の運行経費の一部を支援する 。具体的には、
担当課:都市交 1 年間を期限に運行収支の欠損額を市が負担す
る。
通部
高知県
℡
088-823-9735
地域の物流等支 農産物等の集出荷等の物資の運搬と買物代行など
の生活関連サービスを複合化して行う市町村に対
援事業
622
万円
して、支援を行う。
担当課:運輸政
策課
※本事例集で取り上げた全ての事例が上記補助金の対象になるわけではありません。
※今回取り上げた事業は東日本大震災前の 2011 年 3 月段階で予算案として公表されているも
のです。予算の組み替えや執行停止が行われている可能性もあります。また、各予算はより
詳細な施策として、事業者への募集要項が公表されることになります。
※この事例集では地方自治体から回答のあった買い物弱者に支援制度の一部のみを紹介して
います。回答結果全体については経済産業省ホームページで公開しておりますので、そちら
も御覧下さい。
84
事業についての相談窓口
買い物弱者問題を始めとした社会的課題についてビジネスの手法を活用
して解決していく事業(コミュニティビジネス/ソーシャルビジネス)
については、以下の機関でご相談を受け付けています。お気軽にご相談
下さい。
地域
組織
問合せ先
北海道
北海道コミュニティビ
ジネス・ソーシャルビ
ジネス協議会
事務局:財団法人北海道地域総合振興機構
連絡先:(011)205-5011
U R L :http://www.hamanasu.or.jp/ezobiz/
東北
東北ソーシャルビジ
ネス推進協議会
事務局:株式会社デュナミス
連絡先:(022)721-6180
U R L :http://www.tohoku-sb.jp/
関東
広域関東圏コミュニテ 事務局:NPO 法人コミュニティビジネスサポートセンター
ィビジネス推進協議
連絡先:(03)5259-8091
会
U R L :http://www.k-cb.net/
東海
東海・北陸コミュニテ
ィビジネス推進協議
会
事務局:NPO 法人起業支援ネット
連絡先:(052)486-4101
U R L :http://blog.canpan.info/magti_cb/
近畿
近畿ソーシャルビジ
ネスネットワーキング
事務局:NPO 法人大阪 NPO センター
連絡先:(06)6460-0268
U R L :http://www.osakanpo-center.com/ksbn/index.html
中国
中国地域CB/SB推 事務局:社団法人中国地域ニュービジネス協議会
進協議会
連絡先:(082)221-2929
U R L :http://www.chugoku-cb-sb.net/
四国
四国地域コミュニティ
ビジネス推進協議会
事務局:NPO 法人市民未来共社
連絡先:(088)656-2097
U R L :http://shikoku-cb.net/
九州
九州ソーシャルビジ
ネス促進協議会
事務局:一般社団法人 SINKa、NPO法人宮崎文化本舗
連絡先:(092)762-3789、(0985)60-3911
U R L : http://www.sofi.jp/
沖縄
しまんちゅビジネス協
議会
事務局:NPO 法人調査隊おきなわ
連絡先:(098)894-5939
U R L :http://www.shima-bis.jp
85
事業についての情報源
支援制度や事業設計に当たってのポイントは、以下のサイトにも多くの
情報を掲載しております。是非ともご参考にして下さい。
サイト名
ホームページアドレス
主な内容
地域活性化総合情報 http://www.chiiki-info.go.jp/
サイト(内閣官房)
地域活性化に役立つ
情報
中小企業庁
(経済産業省)
http://www.chusho.meti.go.jp/index.
html
中小企業に対する支
援メニュー
街元気
(経済産業省)
https://www.machigenki.jp/
商業・まちづくり関
係の情報
自動車交通
(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/jidosha/index.
html
公共交通に関する幅
広い情報
安心生活創造事業
(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/seika
tsuhogo/anshin-seikatu.html
見守り・買い物支援
の取組事例
まちづくり・中心市 http://www.smrj.go.jp/keiei/machizu
街地活性化支援(中 kuri/index.html
小機構)
まちづくり・中心市
街地活性化に関する
支援情報
中心市街地活性化協 http://machi.smrj.go.jp/
議会支援センター
(中小機構)
中心市街地活性化協
議会等に対する情報
提供等
86
87
買い物弱者応援マニュアル
「買い物弱者を支えていくために ~24 の事例と 7 つの工夫~」
平成 23 年 5 月
発行:
経済産業省商務情報政策局 商務流通グループ 流通政策課
調査委託先: 株式会社野村総合研究所 (代表:03-5533-2111)
※なお、本事例集は買い者弱者を支援する観点から先進的な取組事例を紹介する
ものであり、その他の観点(財務内容の優良性、事業体としての存続可能性な
どを含む経済的・社会的・法的妥当性)を何ら保証するものではありません。
88
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