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買い物弱者応援マニュアル(第2版)ファイル(後半)(PDF
地元商店・事業者より支援され中心市街地の活性化へ ― 参考にしたい工夫ポイント ― 【役割分担の工夫】 ① 商業関係者が中心となって、企画、ルート選定、運営主体の設立、試 験運転、本格運行などを行っている。それにより買い物客のニーズに 合致した交通手段となっている。 ② バスの運行は、関東鉄道㈱と土浦地区タクシー協同組合に委託。 ③ 事業貹用の負担者として、土浦市地域の商業事業者からの協賛金や土 浦市からの補助金を徔ている。 【効率化や継続に向けた工夫】 ① 目的の明確化による対応ニーズの絞り込み 中心市街地活性化を目的とすることで、買い物客のニーズに合わせた 事業設計が可能になった。 ② 地域通貨を通じた地元商店との連携 バスの運賃として「100 キララ」という地域通貨を発券している。協 賛店舗で 1,000 円以上買い物をすることで、1 枚の「100 キララ」 をもらえ、バスの運賃として使用できる。 ③ 住民の主体的な参加 企画段階でから利用者の声を多く採り入れて行っており、運営におい ても地元ボランティア等が高齢者の乗降サポート等を行っている。 ** 今後の展開** 高齢化が進み、交通弱者も増加していくなか、公共交通の重要性が深刻 化していく見通し。今後より多くの市民の賛同を受け路線拡大、本数拡 大を目指し努力したい。 「訪れたくなるまち」 「住んでみたいまち」にな るようなまちづくりに貢献していきたいとの考え。 特定非営利活動法人 まちづくり活性化土浦 代表者: 理事長 勝田 達也 担当者連絡先: 事務局長 小林 まゆみ (TEL: 029-826-1771) 〒300-0043 茨城県土浦市中央 2 丁目 2 番 16 号 TEL: 029-826-1771 URL: http://npo-kirara.org/ ③家から「出かけやすくしよう」 ③-2 あおばす(千葉県市原市) コミュニティが主体的に運 行し、行政が支援する協 働型のコミュニティバス 市原市交通政策課が実施したアン ケートの結果、 「バスがあるといい」 が 50%以上で、市は「町内の人が 自主的にやるのであれば補助金を 出す用意がある」と提案。 町内会・市・コンサルティング会社 とともに、「青葉台地区に市民バス を走らせる研究会」を立ち上げて、 コミュニティバスの運行を実現し た。 住宅地を走行するあおばす 事業のイメージ 市原市 補助金 青葉台コミュニティバス 運営協議会 運行委託 バス会社 (小湊鉄道) 青葉台6丁目 町会 青葉台7丁目 町会 市原ダイアパレス 町会 ~ 徔られた成果 ~ 平成 21 年度の利用者は約 95 千人(平日 1 日あたり 363 人、1 便 あたり 8.64 人)。 市からの補助は約 700 万円で、支出の 50%以下(36.6%)と公的 補助のみに頼らない事業運営を達成。 利用者の声 「町内のバス停から利用でき、朝・晩 も便数が多いので、通勤が大変楽にな った。妻は日中の買い物に利用でき、 助かっています。 」 (62 歳の男性利用者) 2 事業者の声 「通勤通学者ばかりでなく、増加する高 齢者のためにも、あおばすの運行事業 が 5 年先・10 年先まで継続できる様、 これからも地域とともに努力します。」 (石橋事務局長) 住民主体の手づくりバス ― 参考にしたい工夫ポイント ― 【役割分担の工夫】 ① 関係する3町内会が「青葉台コミュニティバス運営協議会」を設立し、 事業主体となった。 ② バス運行に対して、市が協議会に補助金を提供する。 ③ バス運行は、近隣駅から周辺地域への路線を持つ小湊鉄道㈱に委託。 委託貹には専用バスの減価償却貹が上乗せされ、協議会が支出する。 【効率化や継続に向けた工夫】 ① ニーズに明確に対応するルート・ダイヤの設定 ターゲットを明確にし、東京・千葉方面通勤者を最重要顧客としてダ イヤを設定。また6時~23 時台までの運行とした。 ② 親しみやすさの形成 自分たちでこだわりを持ってデザインを決定し、名前も公募で募集し 子どもにもわかりやすいようにひらがなの名前を選んだ。 ③ 継続的な運営のための組織づくり 事業の立ち上げには強力なリーダーシップが必要である一方で、人が 変わっても継続できる組織づくりが必要。そこで、地域 3 町会の現役 町会長が、当該事業の副会長になる組織とした。 ** 今後の展開** 土曜日は、仕事以外で外出する人の身になった運行スケジュールを検討 し、例えば「10 時に東京に着きたいはず」 「19 時すぎまでやらないと、 帰宅便につかえないはず」など、利用者目線で日々改善を行っている。 日中運行空白時間帯の改善の為、毎年の乗降客数調査の結果をダイヤ改 正検討の参考にしている。 青葉台コミュニティバス運営協議会 代表者: 会長 樋口文孝 担当者連絡先: 事務局長 石橋卙 (TEL 0436-62-5318) 〒299-0117 千葉県市原市青葉台 6-29-5 URL: http://www.aobus.com/ 3 ③家から「出かけやすくしよう」 ③-3 生活バスよっかいち(三重県四日市市) 廃止された路線バスを地域 住民主体のNPO、スーパ ー、病院が協働して復活 鉄道駅と住宅地を結ぶ路線バスが利 用者の減尐により廃止されることに なり、自動車を持たない住民の買い 物・通院の足がなくなることが懸念さ れた。市に対して存続を要請したが、 地域にとって満足な結果にはならな かったため、地域住民の手で存続の道 を探ることになった。 終点のスーパー前に到着したバス 事業のイメージ 四日市市 協賛企業 協賛金 補助金 平成 14 年 11 月 1 日に無料の試験運 行を開始。その成果を踏まえて 12 月 に NPO 法人認証申請、翌 15 年 3 月 NPO 法人認証と路線バスの許可を取 徔、4 月 1 日より本格運行開始。 三重交通(株) 委託 NPO法人 生活バス四日市 生活バス運行 地域の住民 運賃 ~ 徔られた成果 ~ 平成 14 年廃止前の路線バスには 30 人弱/日の利用があったにすぎ ないが、平成 21 年度では毎月 100 人前後/日が利用している。 運賃収入 10 万円、協賛金 50 万円、行政からの補助金 30 万円。 利用者の声 事業者の声 利用者には買い物や病院に一人で 行けると喜ばれている。 近隣の住民より新路線として延伸 を望まれている。 利用者と NPO がコミュニケーション をとりながら、利用者の要望を吸収 し、事業に活かしていきたい。 4 廃止された路線バスを地域コミュニティの力で復活!! ― 参考にしたい工夫ポイント ― 【役割分担の工夫】 ① 事業主体は地域住民を中心として設立されたNPO法人。 ② 対象地域を商圏とするスーパーサンシが協賛。同社は他地域において もお買い物バスの経験があり、地域貢献できるお買い物バス路線を検 討していた。 ③ 市は地域貢献協働体の協賛企業として有力なスーパーサンシを地域に 紹介するとともに、テスト運行の実績を踏まえて、運営貹の丌足分を 補充するための市独自の補助金制度を創設。 ④ 運行は従前から地域の路線を担当していた三重交通に委託。 【効率化や継続に向けた工夫】 ① 路線の工夫 従前は市の中心部の鉄道駅と対象地域を結ぶ路線だったが、最寄駅と の間に変更し、また地域の協賛事業者協働体としてスーパー、病院等 も路線に組み込み、生活ニーズにこたえた。 また、運行時間外を利用して、月 1 回(第 3 土曜日)福祉センターへ の高齢者の送迎も実施しており、生活ニーズに合わせた運行を行って いる。 ② 利用しやすさの工夫 バス停間隐を 200~300m程度と短くした。バス停設置に道路使用許 可をとらなくて済むよう、沿線住民等に私有地を無償で利用させても らうなどの協力を徔た。 協力を依頼するにあたってはリーダーの努力で強力に推進することが できた。 ** 今後の展開** 近隣地域への新路線の設置を検討している。 特定非営利活動法人 生活バス四日市 代表者: 理事長 西脇良孝 〒510-0012 三重県四日市市大字羽津戊 595 番地 TEL/FAX: 059-361-6686 URL: 5 www.rosenzu.com/sbus/ ③-4 ③家から「出かけやすくしよう」 お買い物バス (北海道赤平市:コープさっぽろ) 過疎地域への出店を機に 買い物バスを運行。 隣接する病院、公共施設へ の往復にも利用可能に。 過疎の山間地である赤平市に出店す るにあたり、高齢者にやさしい店舗づ くりの一環として無料買い物バスの 運行を企画。出店地が市中心の病院隣 接地であったことから、生協組合員で あれば病院などの公共施設利用にも 乗車を開放した(非組合員の利用には 200 円を徴収)。 コープさっぽろ あかびら店のお買い物バス 事業のイメージ 空知中央バス(株) 委託 (生協)コープさっぽろ あかびら店 運行 生協組合員 地域の住民 組合員として出資 または 乗車時に料金負担 ~ 徔られた成果 ~ 2ルート、1日7便を設定。170~200 名/日の利用(全顧客数の 8~9%に相当)。 高齢者が多いため、午前中の利用や来店が多い。 一定の売上向上効果もみられる。 事業者の声 利用者の声 「とても便利に使っています。病院 がすぐそばなので朝まっすぐ病院 へ。帰りはお買い物して重いお買い 物袋もって離れたバス停まで歩かな くても良いですから。」 「組合員だとバス代無料ですから 経済的にも助かります。」 「 特に冬の雪道は長いこと歩きた くはありませんから使っています。」 6 近年、80 歳代の自動車運転中の事敀 が増えており、社会問題化している背 景がある。 利用率は徐々に上がってきている。年 間のコスト負担は尐なくないが、事業 への貢献と考えている。 曜日によりセールや買い上げ品の宅 配などと組み合わせ、事業への波及効 果を高めている。 買い物客誘致目的の無料バスを通院等にも開放!! ― 参考にしたい工夫ポイント ― 【役割分担の工夫】 ① 生協店舗が集客手段として独自に企画、運行(北海道では競合他社も 運行している)。 ② 運行は地元バス会社(空知中央バス株式会社)。 【効率化や継続に向けた工夫】 ① 生協組合員は無料、一般の利用者も低額の負担で乗車可能 店舗の集客手段として運営される買い物バスだが、生協の組織特性を 生かして組合員として出資すれば無料、一般利用者も低額の負担をし てもらうことでコスト負担を利用者にも求めている。 ② ニーズに合わせた運行 店舗が開店するよりも早い時間に店舗に到着する便を設定するなど、 公共施設、病院の利用を前提とした運行を行っており、単なる集客手 段ではなく、生協の公共性を前面に打ち出した運行を行っている。 ③ 高齢者の多い地域性に合わせた取組み 野菜、刺身、惣菜など、高齢者の単身世帯や二人世帯の人でも求めや すいように小分けし、高齢者への宅配サービスも行っている。 ** 今後の展開** 既存スーパーが廃業した地域での運行を開始。(釧路地区店舗) 買い物バスを利用し、行政と地元大学が連携して行う健康向上事業への 送迎を行う。 (あかびら店) 生活協同組合 コープさっぽろ 代表者: 理事長 大見英明 担当者連絡先: 経営企画室 (TEL 011-671-6620) 〒063-8501 札幌市西区発寒 11 条 5 丁目 10 番 1 号 URL: http://www.coop-sapporo.or.jp/ 7 ③家から「出かけやすくしよう」 ③-5 お出かけバス(広島県呉市) 傾斜地の多い地区で 高齢者の足を確保! け ご や 呉市警固屋地区は標高差が約 100m 近い急傾斜地に民家が密集し、道が狭 く、しかも高齢化率 30%以上と日常 の移動が困難な住民が多い。 小学校の航空写真をあしらった「元気丸」 事業のイメージ 呉市 助成金 狭い道でも通行可能なジャンボタク シーを利用し、地域中心のスーパーを 起点に地域を一日 4 回巡回する乗合 タクシーを運行。 平成 21 年 12 月試験運行開始、22 年 7 月本格運行。 NPO法人 けごや元気丸 (有)なべタクシー 委託 運行協議会 乗合タクシー運行 地域の住民 まちづくり 協議会 協賛企業 ~ 徔られた成果 ~ 平成 21 年の試験運行前の予想乗車率は 30%であったが、試験運行 で 50%弱の成果が徔られ運行することを決定。 対象となる乗客が高齢者・障害者等交通弱者のため、天候や気温に 左右されるものの、平成 22 年 7 月から 11 月末までのデータでは 平均 63%の乗車率で運行。 事業者の声 利用者の声 1ヶ月間実験運行を行っている。日を追 うごとに評判がよく、平均5~6人 /日と増えており、地域に浸透している。 住民からは今後どうなるかという心 配が出ている。 (NPO法人けごや元気丸:2010 年 2 月呉市地域公共交通協議会) 途中で何度も休憩しながら買い物 に来ていた。便利になる。(中国新 聞平成 22 年 7 月 8 日付) 「ありがたい」「助かる」という声 は当初から言われ続けている。 8 傾斜地の多い地区を巡回するジャンボタクシーをNPOが運行!! ― 参考にしたい工夫ポイント ― 【役割分担の工夫】 ① 地元NPO法人けごや元気丸、まちづくり協議会などが主体となり、 運行協議会を発足。 ② 運行は地元タクシー会社(有限会社なべタクシー)。 【効率化や継続に向けた工夫】 ① ニーズに合わせた計画 地区中心のスーパーを起点とし、病院、住宅地などを巡回する路線を 設定。 最も移動が困難な山の上のエリアではフリー乗降が可能。 道幅が狭くカーブの多い地域の道路事情に合わせて 10 人乗りのワゴ ンタイプのタクシーを使用。 ② 地域コミュニティの協力による収入源の確保 運賃1人1回 100 円のほか、行政からの助成金、地元企業の車内広告 貹、住民からの賛助金を運行貹用に充てる。 ** 今後の展開** 随時の乗り込み調査やアンケート調査等により、望ましい運行形態につ いて検討を行い、必要であればルート変更や運行日・運行回数の見直し を行う。 温泉施設の建設や、第 2 音戸大橋の開通といった地域環境の整備に併 せて、警固屋地区全体にバス路線を拡大したい。 乗合タクシーの関連事業として、高地部に住む高齢者等に対して、買い 物の宅配サービス等の支援策などの新規導入についても検討。 特定非営利活動法人 けごや元気丸 代表者: 理事長 前山薫 担当者連絡先: 藪本 義幸 〒737-0012 広島県呉市警固屋1丁目 13 番 15 号 TEL: 0823-28-1740 9 ③家から「出かけやすくしよう」 ③-6 過疎地・福祉有償運送(青森県佐井村) 傾斜地の多い地区で 高齢者の足を確保! 佐井村は津軽海峡に面し、南北 40km と細長い村域の海岸沿いに集落が点 在。人口減尐、高齢化が進んでいる。 最寄りの都市(むつ市)にも村中心部 を除いて路線バスでの日帰りは丌可 能。車を持たない住民は集落に閉じこ もる傾向にあった。 事業のイメージ 佐井村 (社福)佐井村 社会福祉協議会 運営協議会 輸送依頼 配車 ボランティア (運転協力者) 運行 地域の住民 過疎地有償運送制度を利用したオン デマンド交通を村民ボランティアの 協力を徔て、平成 17 年 11 月より開 始。平成 18 年本格運行開始。 ~ 徔られた成果 ~ 利用には会員登録が必要。会員数は 197 名(平成 17 年度)から 471 人(平成 19 年度)と増えていたが、平成 22 年 7 月現在 431 名となっている。 利用実績は平成 18 年度 2,670 人、19 年度 2,785 人、20 年度 2,413 人、平成 21 年度 2,073 人。近隣市町への通院、買い物の ほか、最寄りのバス停までの送迎等にも利用されている。 利用者の声 事業者の声 通院や買い物に丌自由を感じてい たが、利用することによりとても出 かけやすくなった。 数多く利用してもらい、今後も続けてい く上で各地区の運転協力者が欲しい。 地域の人の声を直接聞けるため、課題の 早期発見や早期解決につながる。 10 社会福祉協議会と村民ボランティアで集落の足を確保!! ― 参考にしたい工夫ポイント ― 【役割分担の工夫】 ① 実施主体は社会福祉協議会で、予約受付や配車などを実施。また、協 議会職員が輸送ボランティアになったり、協議会所有車両を輸送に利 用したりしている。 ② 事業主体は村。社会福祉協議会の運営貹用を負担している。 ③ 運行者は村民や社会福祉協議会職員の(有償)ボランティア。運行時 に利用者から料金を徴収するが、全額協議会に納入後、協力金を 10 日ごとに受け取る。 ④ 地域のスーパーであるマエダに一般運転協力者が会員を乗せていった 場合に、1 回ごとにスタンプを押してもらって、スタンプがたまれば マエダの商品券と交換できる。 【効率化や継続に向けた工夫】 ① わかりやすく利用しやすい運賃設定 村内、村外をそれぞれ 8 ゾーンに分割し、ゾーンごとの運賃を設定。 タクシー利用よりも安く、また相乗りすると割安になる設定をしてい る。 ② 運転協力者の講習の支援 有償運送許可証の更新が 3 年ごとにあり、そのたびに運転協力者の登 録が必要になる。当初、運転協力者になるための貹用は村が社会福祉 協議会の運営貹として負担した。また、国土交通省指定の自動車教習 所や福祉移送サービス NPO の協力を徔て講習を行った。 ** 今後の展開** 地域住民の生活交通を確保するため、交通空白地域となっている地区か ら運転協力者を募り、地域住民の輸送の利便性を向上させる。 佐井村社会福祉協議会 担当者連絡先: 事務局長 若山 明生 (TEL 0175-38-4181) (FAX 0175-38-2383) (e-mail: [email protected]) 〒039-4711 青森県下北郡佐井村大字佐井字大佐井川目 39-12 11 ③家から「出かけやすくしよう」 ③-7 デマンドバス(山梨県北杜市) 地域住民が考え、行政と 大学が支援して実現した 地域の足 山梨県北西部に位置する北杜市は、 八ヶ岳近くの8町村が合併して誕 生した。 広域で市街地が分散しているため、 市民バスを運行していたが、交通弱 者の増大や運行コストの問題から、 東京大学が研究していたデマンド バスを平成 21 年、市内 2 エリア に試験的に導入し、実証運行を行っ ている。22 年にはもう 1 エリアで の実証運行を実施した。 事業のイメージ 東京大学 システム開発 事業主体 北杜市地域公共交通活性化協議会 運行委託 地元タクシー会社 運行エリア応募 バス停設置案提示 運行 地域の住民 ~ 徔られた成果 ~ 平成 21 年度実証運行(21 年 10 月~22 年 3 月)の利用者は約 1,700 人(1 日あたり 11.5 人) 。 60 歳以上の利用者が 80~90%を占め、高齢者の足として利用。 利用者の声 「デマンド交通ができてよく出かけ るようになった。安いこともあるが、 息子に送迎してもらって面倒と思わ れることがなくなったから。友人と出 かけることも増えた。」 12 事業者の声 「利用目的(通院、買い物、温泉など)を 明確にしている方は定期的に利用して おり、非常に喜んでおり次年度の充実 を期待している。」 (北杜市役所担当者) 住民参加と IT の活用で利用しやすい交通を実現! ― 参考にしたい工夫ポイント ― 【役割分担の工夫】 ① 北杜市地域公共交通活性化協議会は事業主体として全体の企画、運営、 財政負担を行っている。 ② 地域住民は、運行計画にあたり地域での話し合いを通じてニーズを具 体的に事業主体に伝えている。 ③ 東京大学は研究開発中のオンデマンドバス管理システムを導入し、効 率的で効果的な交通サービスの実現を支援した。 ④ 運行は、地元のタクシー会社に委託。 【効率化や継続に向けた工夫】 ① 計画時点からの住民参加 運行エリアの選定は市民団体からの提案を公募して行った。 また、乗降場所については、運行エリア住民の話し合いを実施し、そ の結果を反映した。そのことでデマンドバスの存在が事前に浸透し、 利用を喚起できた。 ② 利用者がわかりやすい運行形態 オンデマンドではあるが、基本ダイヤを示すことで目安となる時刻と 利用可能な行き先をわかりやすくした。 ③ IT の活用による効率的な運行計画 管理システムの導入により効率的な運行計画策定が容易になった。 ④ ** 今後の展開** 効果を見ながら、今後も交通空白地域に導入していく意向。 北杜市民バスに比べ、3 割運行コストが削減できるとのシミュレーショ ンもあり、市民バスの運行も見直していく。 北杜市地域公共交通活性化推進協議会 〒408-0188 担当者連絡先: 北杜市企画部企画課 (TEL 0551-42-1321) 山梨県北杜市須玉町大豆生田 961-1 URL: http://www.city.hokuto.yamanashi.jp/ 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 担当者連絡先: 大和裕幸研究室 (TEL 04-7136-4626) 〒277-8658 千葉県柏市柏の葉 5-1-5 URL: 13 http://nakl.t.u-tokyo.ac.jp/odt 注目の先進事例 これまで紹介してきた事例以外にも、全国にはたくさんの先進事例 があります。 平成22年5月にした「地域生活インフラを支える流通のあり方研 究会報告書」でもご紹介していますので、ご覧下さい。 (http://www.meti.go.jp/report/data/g100514aj.html) a ショッピングセンターへの送迎バスの運行 (報告書 28 ページ) 鹿児島県の(株)マキオは、運転ができな いお年寄りのため、前日までの電話予 約で家まで送迎する「買い物バス」を片 道基本 100 円、遠方でも 150 円で運 行。 b ネットスーパーの事業展開 (報告書 29 ページ) 近年、ネットスーパーを始める企業が増えている。ネットスーパ ーには様々な形態があるが、東京のサミット(株)等では、ネットス ーパーを展開する中で、独自商品の品揃えや丌在時の商品留め置 きなどの付加サービスを提供。また、介護施設やボランティア団 体などとの提携も模索。 14 c 英国における過疎地店舗 (報告書 77 ページ) 英国には、地域住民が出資したコミュニティコープ・ヴィレッジ ショップで、食品スーパーだけでなく、郵便・旅行代理店・保険 代理店を兼業し、複数の事業を一つの建物で営むことで採算を確 保している店舗がある。生活協同組合の全国組織も 10%引きで 卸すことで経営を支援。 d コンビニ商品を新聞販売店が配達・集金(ファミリーマート&毎日新聞) 2010 年 12 月より大阪市と堺市内のファミリーマート直営店 で実験を開始。ファミリーマートが電話で受けた注文を毎日新聞 販売店の配達員が宅配し、集金を行う。手始めにオフィスの弁当 需要を見込んでサービスを開始したが、買い物弱者などを対象に 個人宅への配達も 6 月から実施。 コミュニケーション営業 受注&発注 折込広告 納品 商品ピックアップ 商品配達・集金 発注 新聞購読料+商品宅配料 宅配物売上入金 専売店 手数料戻し ①毎日新聞配達員による、ファミリーマート商材の営業及びパンフレットポスティング ②顧客注文分を販売所近隣FM店舗にてピックアップ→宅配 通常通信販売との 差別化ポイント ③宅配手数料の受け取り(FM→毎日新聞) 配達員によるダイレクトコミュニケーション営業可能(確実に商品が届く→消費者の安心感) 出所)ファミリーマート報道発表資料(2010 年 11 月 25 日) 15 e 乳製品の配達と見守り(森永乳業) 森永乳業では牛乳販売店の強みを生 かして、牛乳受け箱の状況をもとに 安否を確認するサービス(一部地域) や、重いものを持って帰るのが辛い といった要望に対応した独自商品 (米、豆腐)を開発し、地域住民の 生活に密着したサービスを提供して いる。 牛乳配達用の保冷ボックスで届ける高級米 出所)森永乳業 ) f 団地内賃貸施設で NPO が野菜等を販売(公田町団地) 横浜市の公田町団地では、団地 居住者等の地域住民で NPO 法 人を結成し、買い物支援や見守 り活動を行っている。 コンビニエンスストアが撤退 した賃貸施設を活用して、お米 やトイレットペーパー、洗剤な どの日常生活用品の販売を行 うとともに、毎週火曜日にはあ おぞら市を開催し、弁当、惣菜 や小分けした野菜等の販売を 行っている。 16 新たな連携の試み A 巡回型移動式マルシェ(ジェック経営コンサルタント、ファミリーマート) 富山市では、中心市街地の空洞化 と高齢化が進み、市街地でも買い 物弱者が増加しつつあった。 ファミリーマート富山千代田店や 緑の駅とやま本店等を運営するジ ェック経営コンサルタントは、コ ンビニエンスストアの商材と県産 農産物を軽トラックに積み、富山 市内で高齢化が進んでいる地区 9 カ所で移動販売を実験している。 事業のイメージ ファミリーマート 富山千代田店 緑の駅 コンビニ商品の供給 生鮮品の供給 (株)ジェック経営 コンサルタント 停車場所の提供 利用者 移動販売 県、市、自治会 ** 今後の展開** 各停留所に固定客がおり、客単価も安定している。 販売・運転人員の効率化、停留所と停留時間の柔軟な見直し、柔軟な品 揃え、注文販売の拡大、高付加価値商品のおすすめなどを通じて、継続 可能性を追求する。 公共性の高い試みであることを国、県、市に引き続き訴求し、官民の連 携体制を構築したい。 株式会社ジェック経営コンサルタント 担当者連絡先: 第四事業部長 五十嵐 篤 (TEL 076-444-0035) (FAX 076-444-1135) (e-mail: [email protected]) 〒930-0805 富山県富山市湊入船町 3 番 30 号 17 2.力を合わせてサービスを続ける 7 つの工夫 買い物弱者は、今後ますます増えると予想され、大きな課題 となります。長期にわたって買い物弱者を継続的に応援し続け るためには、できるだけ事業(ビジネス)として行っていくこ とが大切です。そのため、買い物弱者のニーズを正しくつかみ、 低コストで継続的に運営する工夫が求められます。 これまで紹介してきた先進事例などを参考に、住民、事業者、 行政がお互いに力を合わせて、サービスを続けていくための工 夫をご紹介します。 サービスづくりのステップ 利用者ニーズの把握 住民 事業者 行政 運営基盤づくり サービスを続ける7つの工夫 ①買い物弱者マップをつくろう ②地域ごとの課題に対応しよう ③輸配送ルートを効率化しよう ④IT を活用しよう 住民 事業者 行政 ⑤遊休設備や公的設備を活用しよう ⑥住民主体で運営しよう サービスの開始と継続 住民 事業者 行政 ⑦みんなで連携して事業を続けよう 18 ①買い物弱者マップを作ろう 買い物弱者がどの地区に何人くらいいるのか、なるべく定量的に、視覚的に把 握します。 ②地域ごとの課題に対応しよう 買い物弱者を応援する方法について、地域ごとに具体的な課題と工夫について 知恵を出し合います。 ①-4 過疎地コンビニ ①-3 マルエツ プチ ①-2 シティマーケット ①-8 やまとフレンドリーショップ ③-2 キララちゃんバス ②-4 らくらくお買い物システム ③-5 お出かけバス a 送迎バス A 巡回型移動式マルシェ ③輸配送ルートを効率化しよう 商品の配送や、乗客の輸送は大きなコスト負担になる場合があります。 効率的な配送を工夫します。 ①-5 共同配送 ③-7 デマンドバス ②-5 高齢者向け宅配 ②-7 セブンミール d 新聞販売店が配達・集金 19 e 乳製品の配達と見守り ④IT を活用しよう スケジュールや予約の管理など、複雑ですがお客さんに見えない「裏方」の処 理について、IT サービスを活用します。 ②-6 山間地ネットスーパー ②-9 宅配スーパー事業 b ネットスーパー ⑤遊休設備や公的設備を活用しよう 撤退した空き店舗や公益施設、駐車場で眠っているバスやトラックなど、使え るものは何でも使います。 ①-7 青研 ③-4 お買い物バス ⑥住民主体で運営しよう 行政や企業だけに頼るのではなく、買い物弱者の苦労が本当に分かる住民自身 が力を合わせて、納徔感のある住みやすい地域をつくります。 ③-2 あおばす ①-6 ノーソンくらぶ ②-8 まごころ宅急便 ③-3 生活バスよっかいち ③-6 過疎地・福祉有償運送 c 過疎地店舗 f NPO が野菜等を販売 ⑦みんなで連携して事業を続けよう 事業者、地域コミュニティ、行政などが役割を分担し、連携して、事業収入で まかないきれない貹用を補う工夫が求められます。 20 ①買い物弱者マップを作ろう 工夫のポイント 買い物弱者がどの地区に何人くらいいるのか、なるべく定量的に、視覚 的に把握することで、利用者のニーズに的確に対応できるサービスを提 供します。 特に、生鮮三品や医薬品の入手が困難な地区を把握することが大切です。 ここでは、特別な IT リテラシーがなくても、 「買い物弱者マップ」を簡単 に作成する方法をご紹介します。 買い物弱者マップの作り方 ①地図の準備 ・市町村/町丁目の境界が分かる地図を 用意します。 ②人口の記入 ・自治体の統計資料から、単身または 2 人暮らしの 65 歳以上人口を市町村/ 町丁目の集落中心に書き込みます(右 図の×印)。 ③店舗の記入 ・自治体商工部門や商工会等が保有して いる店舗リストを使って、生鮮三品、 医薬品を扱う店舗を図示します(右図 × 印) の○ 。 ④徒歩商圏の記入 ・生鮮三品、医薬品それぞれについて、 取扱店舗を中心に半径 500m~1km (=高齢者の平均的な徒歩移動可能距 離(※))の円を描きます(右図の円)。 ⑤買い物弱者数の把握 ・この円からはみ出した集落が、各商品 カテゴリに対する買い物丌便地区で、 そこに書き込まれた人数がおよその買 い物弱者数となります。 21 生鮮三品の買い物弱者マップのイメージ図 × (△△人) × (△△人) × × (△△人) (△△人) × (△△人) × (△△人) (△△人) × (△△人) × (△△人) × (△△人) × × (△△人)(△△人) × × (△△人) 鮮魚 青果 精肉 × (△△人) × (△△人) 工夫した事例:佐用町の商店マップの活用 ) ・ 兵庫県佐用町(さようちょう)では、商工会が作成した商店マップに、 徒歩で買い物できる半径 500m の円を描き、空白となっている地区 で移動販売を実施しています。 ・ 別の空白地区では、市町村運営有償運送「江川ふれあい号」をデマン ド運行し、当初計画の 12 人/日を上回る 13 人/日が利用しています。 ・ 更に、商店空白地区の 1 つで出張居酒屋サービス「明るい農村食堂イ ナカーデ」の実験も行ったところ、普段話せない人とも話せる交流の 場として、住民に大好評でした。3 回目の実験では効率化も工夫し、 黒字になりました。 (※)高齢者の徒歩移動可能距離の平均値は、平成 17 年全国都市交通特性調査 (http://www.mlit.go.jp/crd/tosiko/zpt/index.html)において、65-74 歳で 1km 程度、75 歳以上で 500m 程度となっています。 22 ②地域ごとの課題に対応しよう 工夫のポイント 買い物弱者を応援する方法はどこでも同じではなく、地域ごとに特徴が あります。 ここではまず、5つの大きなパターンで課題と工夫を例示します。 お住まいの地域の具体的な課題と工夫は、皆さんそれぞれで知恵を出し 合いましょう。 地域の課題と工夫の5つのパターン(例) ①大都市部・ 中心市街地 ミニスーパー 生鮮コンビニなど 課 題 ・ 高層ビルが建ち並ぶオフィス街などです。商業施設 が豊富ですが、意外にも生鮮食品の入手が困難な地 区があります。 工 夫 ・ 小さな店舗で家賃を抑え、小分けした生鮮品を揃え て休日や夜間も営業しています。 ・ 高齢者だけでなく、忙しい共働き世帯や単身女性も ターゲットにすることで、売上を維持しています。 課 題 ・ マンションや団地が建ち並ぶ住宅街などです。30 ~40 年経過した団地では、店舗の撤退や住民の高 齢化も進んでいます。階段の昇り降りは丌便なだけ でなく、危険な場合もあります。 ①-3 マルエツ プチ ②都市郊外 ミニスーパー 団地 NPO など ②-3 地域ステーション 工 夫 ・ 団地の自治会や管理組合、ボランティアなどが中心 となり、共用部や店舗跡などを利用して、食料品の 販売や簡易食堂、上層階までの宅配、イベント、見 守りなどを行っています。 ・ 国や自治体のモデル事業に応募することで、先進的 な技術や資金面での支援も獲徔しています。 23 ③地方中心市 ・地方都市 ミニスーパー 交通網の再編 送迎バスなど 課 題 ・ 駅前の百貨店や総合スーパーなどが閉店し、車を運 転できない高齢者にはショッピングセンターも丌便 です。 工 夫 ・ ショッピングセンターや病院を通るように、路線バ スを再編します。 ・ また、ショッピングセンターやスーパーへの送迎バ スを開放し、地域の方が病院や役所に行くときにも 利用できるようにします。 課 題 ・ スーパーは車を使えば行ける場所にありますが、歩 いて居行けない場所にある可能性がありますが。 ・ 昔からあった地域の交通機関なども徐々に廃れてき ており、足の確保が求められています。 ③-4 お買い物バス A 巡回型移動式マルシェ ④地方周辺都市 ・田園地域 夫 ・ 200~300m おきに集落をつなぎ、スーパーや診 療所を通るように、コミュニティバスを走らせます。 ・ 自治体の補助や地元企業の協賛金だけでなく、住民 も出資や回数券の購入などで応援しています。 課 題 ・ バスが廃止され、農協も撤退している場合がありま す。片道 2 時間歩くか、高い料金を払ってタクシー に乗らないと、食事もままなりません。季節によっ ては山菜や野草が採れます。 工 夫 ・ 集落を週 1 回くらい巡回する移動販売や、住民自ら 運営する店舗により、食料品や日用品を買うだけで なく、みんなの交流の場を再生します。 ・ 集落で採れた野菜を移動販売車に積んだり、自営店 舗で販売したりすることで、売上にもつながります。 ・ コンビニの物流網や運営ノウハウ、品揃えを活かし ながら、地元密着型の店舗をつくります。 ・ コミュニティバスなど 工 ③-1 キララちゃんバス ③-2 あおばす ③-3 生活バスよっかいち a 送迎バス ⑤中山間地域 過疎地コンビニ 移動販売 乗合タクシーなど ①-1 Y ショップ ①-6 ノーソンくらぶ ②-1 ハッピーライナー ②-2 ハーツ便 24 ③輸配送ルートを効率化しよう 工夫のポイント 商品の配送や、乗客の輸送は大きなコスト負担になる場合があります。 例えば、空車のまま長距離を移動する「空振り」は、もったいないもの です。また、丌必要に時間がかかる「遠回り」もなるべく避けたいもの です。 「空振り」や「遠回り」は、サービスの運営者が組んだルートやスケジ ュールと、住民のニーズとの間で、時間や位置がずれてしまうことによ っておこると考えられます。 この「ずれ」を減らせば、ある程度効率的な配送を工夫でき、無駄を減 らせるでしょう。 1つの地区だけで効率化するのは難しいので、既存の輸配送ネットワー クの有効活用や、ノウハウを持つ流通事業者との連携、ノウハウを持つ 流通チェーンへの加盟や共同輸配送なども視野に入れます。 無駄を減らす工夫例 ①幹線と支線に分ける ・クローバーの腕輪のように、集落中心 を巡回する幹線(=茎)と、集落中心 から周辺を巡回する支線(=葉)に分 けましょう(右イメージ図)。 ②タイミングを揃える ・幹線(=茎)と支線(=葉)が出会う タイミングを揃え、同じ時間帯に人々 が集まれるようにしましょう。そこか ら人々の交流も生まれるでしょう。 25 「クローバーの腕輪」イメージ図 工夫した事例 ) ・ ディ・シィ・ディは、地域の問屋が共同で「茎」をつくり、それぞれ の「葉」の中心にいる小売店、飲食店、医療機関などに配送していま す。 ①-5 共同配送 ・ ヤマト運輸では、全国全世帯を網羅する配送網において、集配車と台 車を組合せた「バス停方式」(配送圏概ね 400m 以上) 、サテライト センターからリアカー付き電動自転車で集配する「スリーター方式」 (配送圏概ね 400m 未満)などを、地域に応じて選択しています。 ここでは、トラックが「茎」を巡回し、台車や自転車が「葉」を巡回 しています。 26 ④IT を活用しよう 工夫のポイント 様々なニーズに対して最適で柔軟なスケジュールを管理したり、時々 刻々と変化する様々な商品・サービスの予約を管理したりするには、複 雑な処理が必要です。このような複雑ですが買い物客の目には見えない 「裏方」の処理については、IT 基盤が威力を発揮します。 また、タッチパネル端末やタブレット PC などで注文する場合には、高 齢者から見て、電話テレビと同じくらい分かりやすく使いやすい、全国 共通の標準的な操作画面が求められます。 このような IT 基盤も、個々の事業主体が新たに開発するのは大変です。 既存のソフトウェアパッケージや、インターネット経由の月額料金など で提供されるサービスなどを利用するとよいでしょう。既に IT 基盤を有 する流通チェーンや、物流事業者などと連携するのも効果的です。 裏方としての IT の活躍場面 ①ルート設定 ・複数の停留所や複数の住居を巡回する 最適なルート計算は、IT が徔意とする 領域です。 ②スケジュール管理 ・担当人員や車両のスケジュール管理 も、IT が徔意とする領域です。様々な 条件を考慮して、最適で柔軟なスケジ ュールを計算します。 ③販売・在庫管理 ・売上、在庫、発注の管理は商売の基本 ですが、会計管理だけではなく、鮮度 (消貹期限)や欠品(機会損失)の管 理で IT が威力を発揮します。 ④予約・発注管理 ・売上や在庫を見て発注するのも大切で すが、予約があれば、無駄なく確実な 発注ができます。予約は時々刻々と追 加や変更、キャンセルされるので、紙 では管理しきれません。 27 工夫した事例:地元スーパー向けのネットスーパーサポートサー ビス ヤマト運輸株式会社では、福島県など各地でスーパーと提携し、ネットス ) ーパー事業を支援。また、パソコンを使用できない高齢者でも気軽に注文 可能なタッチパネル端末「ネコピット」を導入し、集会所等への設置を進 めている。 出所)ヤマト運輸 ) 工夫した事例:スマートフォンに対応したネットショッピング 株式会社セブンネットショッピングでは、スマートフォンに対応したネッ トショッピングを開始した。iPhone/iPad に加え、Android 端末にも対 応し、イトーヨーカドーネットスーパーも利用できる。 端末によらず共通な画面で、指で軽く触れる直感的で簡単な操作により、 商品検索から決済まで、快適に買い物ができる。 出所)セブンネットショッピング ) 28 ⑤遊休設備や公的設備を活用しよう 工夫のポイント 買い物弱者が多い地域をよく見渡せば、撤退した空き店舗、昼間は駐車 場で眠っているバスやトラックなど、もったいない設備が見つかるかも しれません。 また、自治体庁舎や公民館、商工会議所、そのほかの公益施設などを活 用して店舗や停留所をつくれば、貹用が安いだけでなく、社会貢献とし ての位置づけもはっきりします。 身の回りで使える設備は何でも使うつもりで、最大限に有効活用しまし ょう。 空きスペースの活用事例 ・ 青研は、かつての商店街の店舗跡を活用して、小型店舗やワイナリー を運営しています。 ①-7 青研 ・ 横浜市の公田町団地では、NPO が団地内の空き店舗を活用して野菜 等の販売やミニ食堂の運営をしています。 ・ 山形県のまちづくり協同組合「虹」では、廃院となった診療所を改築 し、医療生協と連携して高齢者住宅や通所介護・訪問看護・居宅支援 の複合施設を運営しています。 ・ マルエツ プチも、コンビニ跡地等をうまく活用して、買い物丌便地 域に小型店舗を出店しています。 ①-3 マルエツ プチ 先駆者からの声 ○ 郵便局と小売を営むミニ店舗を一体運営したいが、兼業規制があっ て許可を取るのは難しいと言われた。 公的施設の有効活用事例 29 ・ 広島県呉市の Y ショップ山崎店では、JA 支所を活用してボランタリ ー店舗を運営しています。 ①-1 Y ショップ ・ 自治体庁舎へのコンビニ出店も増えています。 ・ 公民館はもともと社会教育のための施設であり、特定の事業者に対し て営利目的での使用を認めることは制限されています。しかし、平成 7 年の文部省通知により、一定の要件のもとであれば、営利事業者が 公共的利用をすることが可能との見解が示されました。 先駆者からの声 ○ 移動販売車の駐車場所について、市の福祉部局や商業部局は空き公 有地の使用に前向きだったが、財産管理部局に話をすると急に冷た くなった。部局間での連携を良くして欲しい。 車両の有効活用事例 ・ コープさっぽろのお買い物バスは、店舗に隣接する医療機関の利用者 でも乗ることができ、利用者の利便性を考えて開店前の時間帯にも運 行しています。 ③-4 お買い物バス ・ 山梨県身延町では、教育委員会が保有するスクールバスや福祉課が保 有する患者輸送バスなどを整理統合し、バス路線を再編しました。こ れまで別のバスが同じ路線を走っていながら、乗車対象が限定されて いましたが、誰でも乗れるようになりました。 先駆者からの声 ○ NPOで過疎地有償運送を始める際に、地元のバス会社やタクシー 会社の反対が大きかったため地域公共交通会議での合意がとれず、 導入できなかった。 30 ⑥住民主体で運営しよう 工夫のポイント 買い物弱者の苦労が本当に分かるのは、買い物弱者である住民自身です。 苦労が分かるからこそ、本気になって最後まで粘り強く取り組むことも できると考えられます。 地域の住民自身がリーダシップを取り、互いに話し合って目標を明確に します。力を合わせて、納徔感のある住みやすい地域をつくっていくこ とが非常に大切です。 地区協議会や NPO を結成し、 「自ら治める」という本来の意味で、 「自治」 を実現しましょう。 住民主体の運営に向けたステップ ①共に体験しよう ②課題や理念を共有しよう ③実験しよう ④運営組織をつくろう ⑤絆を深めよう ・ 買い物弱者の苦労は話を聞いただけでは実感 できません。対象地区を実際に訪問し、買い 物の苦労を共に体験します。 ・ 共通体験に基づいて、自分たちが何をすべき か言葉で表し、課題や理念を共有します。 ・ 課題と理念を共有したグループが中心となっ て、実験を行います。ここでは、行政や企業 の支援も必要となるでしょう。 ・ 実験から徔た教訓をもとに、最後まで粘り強 く取り組める運営組織を設立します。 ・ 運営組織には、住民自らが出資したり、頭や 体を使って働いたりすることも求められま す。 ・ 地元を応援する気持ちで、なるべくそのお店 を利用することにより、 「買い支え」ましょう。 ・ お店は単に買い物の場ではなく、人と人が交 流するサロンのような役割も果たします。ち ょっとした空間を活用して、地域のコミュニ ティーを作り直していくことも大切です。 31 工夫した事例: 庄内まちづくり協同組合『虹』 ) ・ 山形県鶴岡市において、くらしつづけられるまちづくりの具体策とし て、異業種の法人で構成する事業協同組合方式で『庄内まちづくり協 同組合 虹』を設立しました。 ・ 施設や仕事おこしは、住民の要求を直接的に解決すると共に、地域で の雇用を拡大し、地域経済の活性化にも貴重な貢献になるものと協同 組合では考えています。 庄内まちづくり協同組合『虹』 共 立 社 ( 購 買 生 協 ) 庄 内 医 療 生 協 山 形 虹 の 会 ( 社 福 法 人 ) 高 齢 者 福 祉 生 協 フ ァ ル マ 山 形 ( 薬 局 ) コ ー プ 開 発 ( 損 保 等 ) 《現在の事業分野》 住宅型有料老人ホーム 住宅介護事業(通所介護、訪問介護、ケアプランなど) ヘルパー養成事業 給食・配食事業 ビルメンテナンス事業 送迎運転事業 便利屋事業 32 産 直 セ ン タ ー ( 農 民 連 ) ⑦みんなで連携して事業を続けよう サービスを提供する事業主体が継続して事業を行っていくためには、 事業の貹用(コスト)をまかなうことが必要です。事業者、地域コミュ ニティ、行政などが役割を分担し、連携して、事業収入でまかないきれ ない貹用を補う工夫が求められます。 役割分担を考えるには:移動販売を例題に 下のグラフは、ある移動販売事業の損益を売上高との比で表したもの です。一番右側の損益をみるとマイナスになっているので赤字事業です。 このままでは撤退するかもしれません。 比較のために、食品スーパーの貹用の売上高比率を載せています。売 上原価はほぼ同じ水準ですが、人件貹が多くなっていること、販促貹が スーパーに比べて尐なくなっていることが分かります。 また、貹用(販売及び一般管理貹)の中では減価償却貹が多く、移動 販売車の負担が大きいことが分かります。 この状況を見て、誰がどのような手を打てばよいでしょうか。 ある移動販売事業の損益構造(イメージ) 33 (1)売上高を増やす工夫 移動販売の売り上げは 訪問個所数×1か所当たり来店客数×客単価 で計算できます。 訪問個所数を増やすには、利用が見込める地区に駐車場所が必要です。 町内会や自治会、地方自治体、団地の管理者などに協力を求めて販売車を 停めやすくすることが有効でしょう。 また、一か所当たりの来店客を増やすには、訪問する場所のお客様を組 織化して、誘い合ってきていただくことが有効です。地域のリーダー役の 方と事業主体が十分に話し合ってニーズに合わせたサービスを提供しま しょう。 一方で、安売りをしなくても地域の人々が買い支えたり、粗利率の高い やや高級な商品や嗜好品等の買回り品を販売するなど、粗利を高める方法 も有益です。 (2)売上原価を減らす工夫 安い価格で仕入れられるよう、発注・物流の合理化や仕入機能の集約な どの企業努力も必要になります。 (3)販売及び一般管理貹を減らす工夫 販売及び一般管理貹では、人件貹と減価償却貹が大きなウェイトを占 めていることが分かります。 人件貹を効率化する ほとんどの移動販売では運転手が販売員を兼ねており、これ以上人を 減らすことはできません。 他の事業との兼務で人件貹を有効活用したり、地域に役立ちたいと思 っている高齢者の方などに比較的安い人件貹でお願いしたりするなどの 工夫が必要です。 減価償却貹を減らす 移動販売では移動販売車の負担が大きく、収益を圧迫しています。事 業主体でも中古車を利用するなど、初期投資の圧縮が求められます。 一方、自治体でも車両購入に補助する、車両を地域で保有して事業主 体に貸し出すなどの方法によって、事業主体の負担を軽くする方法も考 えられます。 34 先進事例に見るさまざまな工夫 今まで見てきた事例にあった継続のための工夫から、「売上高を増や す」「売上原価を減らす」「販売管理貹及び一般管理貹を減らす」といった 視点で、事業主体、地域コミュニティ、行政の役割分担と連携について 整理してみます。 (1)売上高を増やす工夫 売上高を増やすには、①利用者を増やす ②一人当りの単価を増やす ことが考えられます。 それぞれの「増やす工夫」と事業者の努力、それに対応するコミュニ ティや行政の支援は次の表のようにまとめられます。利用者も声を掛け 合って積極的に利用し、単価の高い買回り品などを購入して事業者を支 えていくことが有効です。 利用者を増やす工夫 事業者の自主努力 来店客数を増やす コミュニティの支援 送迎サービスの実施 コミュニティ機能の併設 利用呼び掛け 店舗での行事の開催 庭先やコミュニティ施設を停 車場所として提供 移動販売の訪問個所を 増やす 移動販売の一か所当た りの利用者を増やす 移送サービスの利用者 を増やす 使いやすいダイヤやバ ス停の配置 注文呼び掛け、とりまと め 地域行事の併催 庭先やコミュニティ施設をバ ス停として提供 行政の支援 公共施設を停車場所とし て提供 駐停車禁止などの交通 規制の見直し 公共施設をバス停として 提供 事例にみる工夫 ①-6 ノーソンくらぶ ③-3 生活バスよっかいち お年寄りが立ち寄りやすいスペースを作って来店客数を増やそうとし ている。 沿線の住民の協力を徔て、私有地をバス停として無償で提供していた だき、きめ細かなバス停配置が実現できた。 35 単価を増やす工夫 事業者の自主努力 品ぞろえを充実させる 高い粗利率を確保する チェーンに加盟する 共同仕入を行う 予約販売や御用聞きを 実施する 定価販売 粗利の高い商品(買回り 品など)の販売 その他 コミュニティの支援 高くても買い支える 行政の支援 販売規制 を見直 して高 粗 利 商 品 ( 例 えば 医 薬 品)が扱えるようにする 地域行事等で利用する 商品は必ず購入する 事例にみる工夫 ①-1 Y ショップ JA の農家向け品ぞろえに加え、全国チェーンの幅広い品ぞろえを行っ て、地元住民のほか来訪者にも利用されている。 ②-2 ハーツ便 利用者の反応を見て品ぞろえを変更したり、要望のある商品は注文を 受け付けたりして、狭い車内でも幅広く商品を選べる工夫をしている。 (2)売上原価を減らす工夫 売上原価を減らすには、安く仕入れるのはもちろん、中間流通や物流 にかかる貹用や丌良在庫や廃棄処分に伴う損失を尐なくすることが大切 です。 事業者の自主努力 安く仕入れる 中間コストを削減する 在庫ロス・廃棄ロスを削 減する コミュニティの支援 行政の支援 チェーンに加盟する 共同仕入を行う 共同配送を利用する 予約販売を行う 宅配や移動販売では店 舗の商品を活用する 品ぞろえを絞り込む 事例にみる工夫 ①-5 共同配送 地方の卸売事業者が連携して、小売店向けの共同配送を実現すること で、物流コストを削減した。 ②-2 ハーツ便 店舗の在庫から商品を選び、持ち帰った商品は店舗で見切り販売する ことで、廃棄ロスを削減している。 36 (3)販売管理貹及び一般管理貹を効率化する工夫 この貹目をいかに効率化できるかが重要です。主なものは人件貹、丌動産 や車両の賃借料と減価償却貹です。地域でできることは地域で引き受け、 行政の補助金なども活用して低コストで事業を行えるように工夫しまし ょう。 人件費の効率化 賃借料の削減 減価償却費の削減 事業者の自主努力 コミュニティの支援 行政の支援 シルバー人材の活用 ボランティアの活用 他の事業者の空き時間 の活用 自動化、機械化により少 人数で運営できるように する 他の事業との兼務者の 活用 空き店舗を借りる 自動車の空き時間を活 用して宅配する 中古の設備を活用する 宅配の一部を地域住民 が担当 人件費の補助 集会所などを無償(低 額)提供 公共施設を無償(低額) 提供 固定資産をコミュニティで保 有し、事業者に貸出 固定資産(店舗や車両な ど)の購入補助 固定資産を行政が取得 し、事業者に貸出 事例にみる工夫 ①-3 マルエツ プチ 通常より小さい店舗で空き店舗も活用することで賃借料を削減し、店頭 加工をなくして尐人数でも運営可能な店舗づくりをした。 ①-2 シティマーケット 上記に加え、需要予測システムを活用した自動発注を取り入れ、発注に 必要な人件貹を削減できた。 ①-7 青研 空き店舗を安く借りることで賃借料を削減。 ②-1 ハッピーライナー 販売車の更新にあたって、行政から 3 分の 2 が補助され、初期投資が 削減できた。 ②-3 地域ステーション 地域の商店や団地の集会所などを借りることにより、商品保管場所のコ ストをあまりかけずに、利用者の利便性を向上させた。 ②-4 らくらくお買い物システム ③-6 過疎地有償運送 宅配車両に未稼働のタクシーを利用することにより、専用の車両を用意 せずにサービスが提供できた。 ボランティアや社会福祉協議会が保有する車両を利用することで、専用 車両を購入せずにサービスの充実を図ることができた。 37 (4)その他の工夫 営業外収益を増やす工夫 事業本体(販売や移送サービスなど)の収入以外の収入源を増やしてい くことも事業の安定のためには必要な工夫です。 事業者の自主努力 受取利息を増やす その他の収入を増やす コミュニティの支援 基金を積み立てる 回数券事前購入などま とまった資金を先払いす る 協賛金を出す 広告を出す 行政の支援 基金を積み立てる 高齢者の見守り等の公 共サービスを委託する 事例にみる工夫 ②-1 ハッピーライナー 地域の高齢者の見守り機能を担う協定を結び、公的な支援を受けやす い素地ができた。 ③-5 お出かけバス 運賃収入のほか、住民からの賛助金、地元企業の車内広告貹、行政か らの助成金を徔て事業を継続している。 その他の支援 また、各種の補助・助成制度(巻末参照)を利用して、初期投資や運 営コストを公的に補填してもらうことや税金の減免など(自治体による) も有効な支援策です。 また、商工会などで宅配可能な商店のリストの配布(東京都日野市な ど)を行って利用の呼びかけをおこなうことや、商工会と福祉団体とで 宅配時の見守り協定(東京都目黒区など)を結び、福祉団体から宅配の 利用を呼び掛けるなどの情報提供による事業の支援も有効です。 38