"花のソコが知りたい！" vol.24 シンビジウム編

冬の寒い時期にも彩りをそえるシンビジウム
白･ピンク･赤・オレンジ・茶・黄・緑、淡い色からビビッドな色、
様々な色で私たちを楽しませてくれます。
そんなシンビジウム、｢シンビジウム｣の由来は？
出荷されるシンビジウムはどのように育てられているの？
そんなシンビジウムのソコを明らかにしていきたいと思います。
基本情報
科・属
：ラン科 シュンラン属
学名
：Cymbidium（シュンラン属全般をさす）
シ ン ビ ジ ウ ム
シュンランとは漢字で※春蘭と表記します。
シュンラン
（※春にむけて咲く花であることから 春 蘭と呼ばれています。）
原産地：アジア圏で熱帯から温帯まで幅広く分布
日本からオーストラリアと本当に広範囲！
東南アジアやヒマラヤにも原生地があり
洋ランの中でも寒さに強いです。
学名のシンビジウムの由来は？
ｼ ﾝ ﾋ ﾞ ｼ ﾞ ｳ ﾑ
Cymbidiumはリップの形が小船の形に似ていることから
・ギリシャ語の Kymbe（小船）・ Kymbos(くぼみ)
シ ン ビ ｼ ﾞ ｳ ﾑ
⇒Cymbidiumと呼ばれるようになりました。
リップをくるっと回してみると、船の形に見えるんです。
ぜひ！お近くで実際に見てみてください！
リップ
≒
栽培
栽培カレンダー
春
梅雨明け（６月下旬-７月）
夏
９月下旬-１０月上旬 １０月下旬 １１月 １２月
1～3月
苗の導入
山上げ
寒冷紗（遮光）
暖房
出荷
※表は一例であり、各地域によって時期や方法は異なります。
苗の導入
シンビジウムはメリクロン栽培された苗が圃場に導入され、２年半から３年栽培されてから出荷されています。
植物工学の優等生：メリクロン栽培
メリクロン栽培とは分裂組織を指すメリステム（meristem）と
栄養繁殖を指すクローン栽培をかけあわせた言葉です。
メリクロン栽培技術が確立する前は株分けによる栽培がされていましたが、
メリクロン栽培は同一の遺伝子を持つクローン苗であるので
品質の統一・奇形の減少等多くの利点をもちます。
春もしくは秋に導入された苗を 2 年以上かけて成長させたのち、出荷する年の梅雨明けに山上げをさせます。
山上げする目的はシンビジウムに季節を秋と思わせ、成長を急がせるためです。
山上げ
すずしい
あれ？涼しい・・・
もう秋なのか！
急いで花を作らないと
夏
夏
※すでに気温が低い地域は山上げをせず、温室のビニールをはがして気温を調整します。
シュンラン
シンビジウムは 春 蘭と表されるように一般的には春先に咲く花ですが、需要が高いのは
そのため年末の需要に合わせて開花させるために季節を急がせているのです。
年末
9 月下旬から 10 月上旬で山から下げ、その後も※寒冷紗にて育成します。
かんれいしゃ
シンビジウムの生産現場では※寒冷紗
寒冷紗
を使用しています。
① 高温を防止 ⇒
成長促進
② 強光を防止 ⇒
花とび防止
日焼けによる花しみ防止
などを目的として使用されています。
※寒冷紗とは荒く平織りに織り込まれた布で左の写真の
黒い布を指します。生産現場では夏は強光・高温・乾燥ら
の対策、冬は防霜・防寒目的に使用されます。
色を出すために
先ほど、寒冷紗にて強光を防ぎ、花しみを防ぐとありましたが、品種によっては光を好み、
光を当てないと花の色がぼやけてしまうものもあります。
左図の福娘は強い光を浴びることで鮮やかな色を形成するので、蕾が形成された時点で光を当てる栽培をします。
また、右図の舞妓はんは光のみではなく、低温も色を形成するのに必要とします。
このように同じシンビジウムでも品種によって適した栽培環境を整える必要があるのです。
光
光
寒
福娘
舞妓はん
霜が降りる寸前にビニールを張り、
暖房をいれて出荷に備えます。
花の形
シンビジウムの花の形にはペタルが丸い丸弁、ペタルが尖った剣弁のものがあります。
また、丸弁でころんとした形のカップ咲きのものがあります
丸弁
剣弁
カップ咲き
種類
エミカ
ゴールドラッシュ
彩花
アイスダンス
バレリーナ
福娘
当社、大田花きでは
秋田 栃木 群馬 埼玉 千葉 神奈川
山梨 静岡 長野 愛知 三重 岡山 徳島
香川 愛媛 高知 福岡 熊本
と全国各地からシンビジウムの鉢物を入荷しています。
シンビジウムの花言葉は
｢素朴｣ ｢気取らない心｣ ｢高貴な美人｣ ｢誠実な愛情｣です。
贈り物や気持ちを伝える際にはぴったりな花言葉ですね。
香りのするもの、テーブルに飾れるような小ぶりなものなど様々
なシンビジウムもあります。
舞妓はん
ぜひ、好みに合うシンビジウムを見つけてくださいね。
参考文献
Umberto Quattrocchi, F.L.S.（2012）CRC WorldDictionary of Medicial andPoisonous Plants:Common Name, Scientific names,
Eponyms, Synonyms, and Ethmology
宇田明 桐生進（2013） ｢花屋さんが知っておきたい花の小事典｣ 農文協
画像提供
石田蘭園様 Facebook より https://ja-jp.facebook.com/cymbist
取材協力頂きました、
向山洋蘭園 古川様、清水洋蘭園 清水様、石田蘭園 石田様
誠にありがとうございました。
品質カイゼン室