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東北大学 金属材料研究所

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東北大学 金属材料研究所
ProCurve Networking による基幹ネットワーク導入事例
東北大学 金属材料研究所
大規模スーパーコンピュータの活用を支える10 ギガビットの基幹ネットワーク構築
TCO とパフォーマンスから HP ProCurve Networking 製品を採用
東北大学金属材料研究所は、鉄鋼から金属全般、さらに非金属へと研究
領域を広げながら、物質・材料の学術研究、応用研究における国際的な
中核拠点としての役割を担っている。同研究所の数値実験や複雑な高度
解析を司る計算材料学センターは、2007 年 3 月に大規模な新スーパーコ
ンピュータを導入。それに伴い、膨大なデータの安定流通を可能にする
ネットワーク環境の再構築を推進した。マルチベンダ環境のインテグレー
ションと運用を含め、
10ギガビットのバックボーン形成をはじめとするネッ
トワーク構築に ProCurve 製品が採用された。
物質・材料の学術研究、
応用研究の世界的中核拠点
東北大学金属材料研究所の起源は 1916 年に発足した臨
時理化学研究所にある。当時研究主任だった本多光太
郎博士が強力な保磁力を有する KS 鋼を発明。日本の鉄
鋼研究の先駆けとなった同研究所は、その領域を金属
全般、そして広範な物質や材料へと拡大してきた。
さらに、材料科学の飛躍的な進歩と新素材産業の発展
教授 理学博士
川添 良幸 氏
に対応するため、同研究所は 1987 年 5 月に東北大学
附置全国共同利用型研究所として再スタートを切った。
研究部門の大幅な転換と研究施設の充実を図るととも
に、国内外の研究者や技術者との共同研究を積極的に
推進。ナノ物質材料研究をはじめとする物質・材料の学
術研究・応用研究の世界的中核拠点へと発展している。
スーパーコンピュータ同士の
ネットワーク結合を推進
テクニカルセンター 技術専門職員
三浦 重幸 氏
同研究所教授 川添良幸理学博士が進める研究は、計算
高速な演算性能に見合う
解析に基づいて金属材料を捉え、原子レベルで新材料
10 ギガビットのネットワークを構築
を設計するというものだ。波動関数の時間的変化を示
新たなスーパーコンピュータによって 8 ~ 10 倍の演算処
すシュレディンガー方程式を、モデルを使わずにダイ
理能力を確保した金属材料研究所では、より大きなデー
レクトに解く第一原理計算や分子動力学計算、さらに
タの流通を可能にするネットワークが必要になった。
モンテカルロ法など複雑な確率論的シミュレーション
同研究所テクニカルセンターの技術専門職員 三浦重幸
を基にマテリアルデザインを進める川添教授の研究に
とって、大規模解析計算を行うスーパーコンピュータ
テクニカルセンター 技術専門職員
佐藤 和弘 氏
氏はこう語る。
「そこで、ネットワークのバックボーンとなる幹線部分
は不可欠の存在である。
は 10 ギガビットの帯域を確保し、ユーザ端末側でも最
このような大規模シミュレーション計算を行うスー
大 1 ギガビットのスピードをキープ。さらにウイルス
パーコンピューティングシステムの運用、利用支援を
やスパムメール等のチェックを実行する高速で信頼性
担うのが金属材料研究所計算材料学センターである。
の高いネットワーク構築を目指しました」
川添教授の研究室は、以前から科学技術計算を駆使し、
演算速度が上がっても、人間の時間感覚や生活サイク
スーパーコンピュータの運用およびネットワークの高
ルは変わらない。せっかく計算が速くなっても、デー
度化を行ってきた経緯から計算材料学センターの責任
タの伝送路であるネットワークが追いついていなけれ
部門を担当している。
ばユーザは大きなストレスを感じる。これは研究者の
大規模な科学技術計算を必要とする同研究所では、こ
思考を中断することにもつながる。
れまでも 5 年ごとに約 10 倍の演算能力を持ったマシン
「当研究所では、現在 1 日 1 テラバイトのデータがやり
を導入してきた。2007 年に計算材料学センターに導入
取りされています。しかも、同時にそれを書き込みな
された新たなスーパーコンピュータは、16CPU を1ユ
がらバックアップを図っています。10 ギガビットの足
ニットとして全体で 51 ノードを有する大規模なもの。
回りなら、単純計算すれば 1 時間当たり約 4 テラバイ
これはそれまで活用してきたシステムの約 8 ~ 10 倍の
トのやり取りができますから、1 日には約 100 テラバ
演算性能を発揮する。
イトが可能。5 年後の次期システム更改まで、十分な
同研究所は、東京大学物性研究所、自然科学研究機構
バッファーを確保することができます」(川添教授)
分子科学研究所、九州大学情報基盤センターなど複数
の材料設計研究機関と VPN(Virtual Private Network)で
マルチベンダ環境の統合や
接続。相互協調的な仮想研究コミュニティ形成を目指
見えないコストなどをトータルに評価
す超大規模ナノテクノロジー用シミュレーション計算
また計算材料学センターでは、スーパーコンピュータ
環 境( ナ ノ テ ク VPN) を ス ー パ ー SINET 上 に 形 成 し
とともに各研究に求められる計算特性に即して、96 ブ
た。これは世界的にもほとんど例のないスーパーコン
レード、192 プロセッサ搭載の HP ProLiant BL35p をは
ピュータのネットワーク結合である。北陸先端技術大
じめとするマルチベンダ環境による 3 種類のサーバシ
学院大学、広島大学などとも 1 ギガビットで接続され、
ステムを導入した。テクニカルセンター技術専門職員
さらに韓国やシンガポールなど、海外の大学や研究機
佐藤和弘氏はその際に留意したことを以下のように説
関との連携も拡大している。
明する。
導入ハードウェア
: ご提案範囲
スーパー棟 2F ProCurve 3400cl シリーズ
ProCurve Switch 2626
: 10GbE
: 1GbE
Anti
Virus
TAINS/G
ProCurve 2848
ProCurve 2848
ProCurve Switch 3400cl-48G
Mail Server スーパーコンピュータ
DNS
ProCurve 3400cl
シリーズ
ProCurve Switch 3400cl-24G
スーパー棟 1F
FW/IPS/VPN
Internet
ProCurve Switch 2848
ProCurve 3400cl シリーズ
: Fast Ethernet
SAN
DNS
ProCurve 5406zl
Web
Proxy
ProCurve Switch 6410cl-6XG
FileSever
ProCurve Switch 5406zl
DHCP
Apl Server
主要サーバは 10GbE or 1GbE で
CoreSwitch に直接収容
ProCurve 2848
SPAM1
ProCurve 5406zl
SPAM2
FW/IPS/VPN
Firewall
ProCurve
6410cl-6XG
ナノテク VPN
ProCurve 3400cl シリーズ
ProCurve 3400cl シリーズ
ProCurve
6410cl-6XG
スーパー
コンピュータ
ProCurve 3400cl シリーズ
ProCurve 3400cl シリーズ
3 号館 7F
ProCurve 3400cl
シリーズ
「演算領域をセグメントごとに振り分け、相互の負荷変
化等の中でも、影響や干渉を及ぼさないように構成を
1 号館 5F
ProCurve 3400cl
シリーズ
FW
金属材料研究所
所内ネットワーク
ITBL G/W
ProCurve 2848
2 号館 7F
妨げることがないように、スイッチや回線を末端部以
外は全て二重化しました」(三浦氏)
工夫しました。さらに、CPU パワーをより有効に活用
「当センターは、1993 年には FDDI、2002 年にはサー
するためのグリッド的な振り分けも、ネットワーク経
バのクラスタ化を図り 1 ギガビットのバックボーンを
由で自動的に実行することを目指しました」
形成。さらに今回は、その経験を活かして 10 ギガビッ
「10 ギガビットのバックボーン形成に際して、スイッ
トの幹線を構築し、冗長化を図りました。その意味では、
チ製品のコストパフォーマンスや信頼性、実績などを
常にその時々の最先端ネットワーク環境を築いてきた、
踏まえた要求仕様を最終的に満足したものが ProCurve
と自負しています」(佐藤氏)
製品であった」と三浦氏は語る。以前から計算材料学
実際の構築期間は 2006 年 12 月~ 2007 年 3 月と極め
センターのシステムに関わり、研究所の要件を熟知し
て短期間だった。しかし、計算材料学センターは、金
ていた HP がネットワークシステム構築のパートナーで
属材料研究所の高度なシミュレーションによる先端研
あったことが、今回のスーパーコンピューティングシ
究を支える要ともいえる存在だ。したがって、新しい
ステム導入計画全体を予定通り進められた要因だった
ネットワーク構築に伴う導入期間は、最小限に抑制し
とする同氏は、さらにこう続ける。
なければならなかった。
「私たちの歴史的経緯やその中における研究所特有の要
そこで HP は、当初のスケジュールを前倒しするかたち
求の理解、さらにスーパーコンピュータや各サーバ群、
でデリバリーを実現。設定や検証等、ステージングを
その他周辺機器などマルチベンダ環境における各社間
完了してから持ち込むことで、納品後すぐに稼働する
の接続やインテグレーション、セキュリティの確保な
体制を実現したのである。
ど、見えない部分も含めたトータルコストを考慮する
「今回のネットワークにはメールなど外部とのやり取り
と、今回 ProCurve 製品を導入したメリットはとても大
の基盤となる部分も含まれていたので、旧来のネット
きいと考えます」
ワークとのスムーズな切り替えに特に気を配ってもら
ちなみに、計算材料学センターでは東京大学物性研究
いました。しかし、これまでの経緯や経験のおかげで
所をはじめとする複数の材料設計研究機関と連携して
トラブルもなく、スムーズに稼働することができたの
形成したナノテク VPN システム構築の際にも ProCurve
製品が導入された。
で助かりました」(三浦氏)
「また今回、計算が終了した時点で、その旨を携帯電話
に通知する仕組みを構築し、HP にはネットワーク、認
ネットワークの冗長構成で
証システムを担当してもらいました。計算途中の進捗
信頼性をさらに加速
状況も Web 認証を介してステータス確認ができます。
今回のネットワーク構築では、耐障害性や信頼性の向
上を目指して冗長化が図られた。
「ネットワーク上のボトルネックや停止が研究の進展を
『できるだけ早く解析結果が見たい』と願う研究者の立
場からは大変嬉しい機能ですね」(川添教授)
コンピュータルーム
さらに本質的な基礎理解と
実験できない世界の再現のために
目的
川添教授は「科学の基礎は 20 世紀中に終了しており、
これまで活用してきたシステムの約 8 ~ 10 倍の演
これからは応用の時代だ」という一部の声に警鐘を鳴
算処理能力に対応するシステムおよびネットワーク
らす。
を築く。さらに次期システム更改まで見据えたネッ
「原子などはよく知られていると理論物理の教授さえ信
東北大学金属材料研究所
所在地/仙台市青葉区片平 2-1-1
トワークを構築したい。
じていますが、まだまだそのようなレベルではありま
せん。例えば、鉄原子の本当の状態は 26 個の電子と原
アプローチ
子核の作る 27 体問題を精密に解かないとわからない
1日に約 100 テラバイトのデータのやり取りを可能
設置研究部/材料物性研究部、材料
のです。これまでの材料研究では、超伝導とかの新し
にするネットワーク環境を構築。スーパーコンピュー
設計研究部、物質創製研究部、材料
い現象が実験で見つかると、それを理論的に説明する、
タをはじめ、マルチベンダ環境の各サーバや機器を
というのが基本的な流れでした。しかし、いまや数値
つなぎ、ステージング済み ProCurve 製品を導入する
シミュレーションによって、実験以前にさまざまな場
ことでスーパーコンピューティングシステム全体の導
面における材料の挙動を正確に把握することができる
入期間を大幅に圧縮し、短期間で稼働を開始した。
発 足 / 1916 年 4 月 1 日( 旧 臨 時 理
化学研究所)
プロセス・評価研究部
ようになりました。つまり、材料研究における理論の
立場は従来の実験の説明を脱却し、新物質・材料をシ
システムの効果
ミュレーションによって設計し、実験家がそれを追試
幹線速度 10 ギガビット、端末 PC も 1 ギガビットの
することを基本とするようになってきたのです。日進
フレキシブルなネットワーク環境を実現。さらにネッ
月歩の CPU 性能を利用しながら、まず解決すべき基礎
トワークの二重化を図り、研究活動を支える可用性
的な問題にきちんと取り組むこと。その上で、これま
を保証した。
で経験や勘に依拠していた材料設計を、より多元的な
アプローチで深めていく研究姿勢が大切です。先ほど
研究活動への効果
も話題があったように、私たちは一貫して最先端のネッ
5 年後の次期システムを見据えたネットワーク帯域
トワーク環境を築いてきました。研究成果や研究の支
を確保。研究者のより深く多様な実験を支えるバッ
援ツールであるコンピュータを共有する伝送路として、
クボーンの安心と信頼性を保証した。
今後ネットワークへの依存度はますます高まっていく
ことでしょう。常に先を見据えながらネットワーク環
境を築いていきたいですね」
先端的学術研究の連携を支える超高速ネットワーク。
高い信頼性と性能を備えた HP ProCurve Networking 製
品が進化し続けるネットワーク環境を今後も支えてい
くに違いない。
お問い合わせはカスタマー・インフォメーションセンターへ
03-6416-6660 月~金 9:00 ~ 19:00 土 10:00 ~ 18:00(日、祝祭日、年末年始および 5/1 を除く)
ProCurve Networking 製品に関する情報は http://www.hp.com/jp/procurve
記載されている会社および製品名は、各社の商標または登録商標です。
記載は 2007 年 7 月現在のものです。
本カタログに記載された内容は、予告なく変更されることがあります。
© Copyright 2007 Hewlett-Packard Development Company,LP.
日本ヒューレット・パッカード株式会社
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JNT07190-01
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