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NEWS RELEASE
2002年度・2003年度の経済見通し
2002年6月12日
経 済 研 究 部
(TEL
03-5255-1800 代表)
日本経済の予測要約表
実質国内総支出
<内需寄与度>
(A)
国
2001年度 2002年度 2003年度
(予)
(予)
-1.3
-0.1
+0.5
[前回:3月13日時点]
(%、兆円)
2001年度 2002年度 2003年度
(推)
(予)
(予)
-1.3
-0.6
+0.5
-0.8
-0.6
+0.6
<-0.7>
<-0.7>
<+0.6>
<民間内需>
-0.8
-0.9
+1.0
<-0.7>
<-1.1>
<+0.7>
<公的内需>
+0.0
+0.3
-0.4
<+0.0>
<+0.3>
<-0.0>
-0.5
+0.6
-0.1
<-0.6>
<+0.1>
<-0.1>
<外需寄与度>
内 民間最終消費支出
+0.3
+1.1
+0.6
+0.1
+0.3
+0.6
民間住宅投資
-8.5
-5.2
+2.7
-7.9
-2.8
-0.1
総 民間企業設備投資
-3.7
-8.9
+3.2
-2.8
-7.6
+1.5
民間在庫品増減
***
***
***
***
***
***
+1.6
生 政府消費
+2.8
+2.2
+1.7
+2.8
+2.2
公的固定資本形成
-5.8
-1.2
-11.0
-5.4
-0.4
-4.9
産 財貨・サービス輸出
-8.0
+6.9
+3.2
-9.6
-0.8
+2.7
財貨・サービス輸入
名目純輸出(対名目GDP比、%)
名目国内総支出
(B) 鉱工業生産
-4.7
+1.9
+4.9
-5.1
-2.3
+4.3
+0.8
+1.4
+1.2
0.7
1.1
0.9
-2.5
-1.2
-0.4
-2.5
-1.7
-0.6
-10.2
+0.5
+2.1
-10.1
-2.7
+2.0
生 総合卸売物価
-0.0
+0.0
+0.4
-0.0
-0.2
-0.5
産 国内需要財
-1.1
-0.6
+0.1
-1.1
-1.3
-0.8
・ 消費者物価
-1.0
-0.8
-0.4
-1.0
-1.0
-0.9
物
-0.8
-0.7
-0.5
-0.9
-1.1
-1.0
+5.2
+5.4
+5.7
+5.3
+5.8
+6.1
6.8
8.8
8.8
10.8
8.1
10.3
除く生鮮食品
価 完全失業率
(C) 通関出超額(年率・兆円)
7.1
9.6
8.8
対 貿易収支(年率・兆円)
9.0
11.4
10.9
外 貿易・サービス収支(年率・兆円)
収 経常収支(年率・兆円)
3.9
6.8
6.1
3.5
5.1
4.3
12.0
15.1
14.9
11.7
13.9
13.6
支
"
(年率・
億ドル)
948
1,159
1,127
933
1,051
1,024
他
<対名目GDP比>
<2.4>
<3.1>
<3.0>
<2.3>
<2.8>
<2.8>
(出所) 野村総合研究所
経済見通し前提表
公共工事追加(
真水ベース)
(
兆円)
99年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度
5.2
5.0
3.5
3.5
0.0
うち98年度1次補正
1.5
98年度3次補正
3.7
99年度補正
2000年度補正
5.0
3.0
2001年度1次補正
0.5
2001年度2次補正
0.5
0.0
3.0
111.4
110.6
125.1
129.0
130.0
公定歩合(期末値)
0.50
0.25
0.10
0.10
0.10
原油入着価格(
年度平均、$/バレル)
春闘賃上げ率
20.8
2.2
28.2
2.1
23.8
2.0
25.9
1.7
26.3
1.6
円ドル相場(年度平均)
(注)公共事業の追加は、執行ベースの計数。
(出所)野村総合研究所
野村総合研究所
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
1
要約
「低成長の持続」
1.グローバルな在庫調整の一巡を背景とする輸出の
急回復に支えられ、国内景気は1-3月期に底入れ、既に
輸出主導型回復の途上にある。輸出や鉱工業生産の回
復は、限定的とはいえ、雇用環境や設備投資にも影響
を与え始めており、民間内需の下げ止まりも徐々に視
野に入りつつある。
2.ただ、米国景気の回復がモデレートなものにとど
まると予想される中、本邦輸出も今後は緩慢な歩みを
辿る公算が大きい。輸出の景気牽引力に過大な期待は
禁物であろう。民間内需も、構造問題の重石が残る
中、回復は極めて緩やかなものとなろう。
3.経済・財政政策は、財務省ペースが鮮明となって
いる。減税は、「税収中立」への配慮が強い中、研究
開発促進税制、贈与税減税を中心とする小幅なものに
終わる可能性が高い。一方、国の公共事業は2003年度
も当初予算ベースで10%削減される方向が打ち出され
た。財政は引き続き景気の頭を抑えよう。
4.米国経済の緩やかな回復と、一段の円高進行の回
避を前提に、実質GDP成長率は2002年度−0.1%、2003
年度+0.5%と予測する。輸出が緩やかにせよ増加する
中、民間内需は2002年下期に下げ止まり局面を迎えよ
鉱工業生産の動向(輸出・IT関連とそれ以外)
う。ただ、その後の回復力は限られ、また財政デフレ
(95年=100)
130
の影響もあり、低成長が続く公算が大きい。
輸出・IT関連産業
5.景気の低空飛行の下、デフレは継続すると予想さ
120
れる。財価格には下げ止まりの動きも見られるが、マ
クロ的な需給ギャップが縮小しない中、一般物価の下
110
落は続くであろう。名目GDP 成長率は、2003年度も−
100
0.4%とマイナスを脱せないと見ている。
90
80
予想を上回った年明け後の景気
それ以外
年明け以降、日本経済は思いのほか順調な歩みを辿っ
てきた。昨年1 2 月を底に輸出が回復に転じ、これを背
70
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
(注)
輸出・IT関連産業は、
鉄鋼、
非鉄金属、
一般機械、
電気機械、
輸送機械、
精密機
械、
化学とした
(生産全体に占めるシェアは約58%)
。
(出所)
経済産業省
野村総合研究所
景に鉱工業生産は2 月以降3 ヵ月連続で増加している。
1-3月期の実質GDPも前期比年率+5.7%の高成長となっ
た。日本経済は、既に輸出主導型回復の途上にある。
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
2
財務省・景気BSIの推移
輸出や鉱工業生産の回復は、個人消費、雇用環境、
(前期比「上昇」−「下降」、%)
設備投資にも一定の影響を与え始めた。新規求人、機械
30
大企業
受注は、輸出・I T 関連産業を中心とする製造業では既
20
に増加に転じている。個人消費も、1-3月期には消費者
10
センチメントの改善を背景に、下げ止まりの動きを見せ
0
た。輸出や生産の回復の影響が、予想以上に早く、民間
-10
内需や雇用に影響を与え始めた点を強調しておきたい。
ただ、今後の景気については、低成長が続くと予想
-20
している。今年1-3月期の成長率は日本に限らず海外で
も高いものとなったが、これはグローバルな在庫調整の
-30
中小企業
一巡に負うところが大きく、持続可能な性格のものでは
-40
中堅企業
ないと推測される。米国経済は今後ほぼ2%台の成長に
-50
終始すると予想され、本邦輸出の回復ペースは緩やかな
ものにとどまる公算が大きい。
-60
8 3 84 85 86 87 8 8 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
また、企業部門が収益性を改善するため、人件費の
(出所)
財務省
削減やバランスシートのスリム化(過剰生産能力、過剰
財別の在庫
(
95年=100)
負債の調整)を継続する中、設備投資、個人消費の回復
150
力がおのずから限られる点に異論はないだろう。公共事
IT関連財
<シェア:7.7%>
140
業も、財政再建路線の下で、2003 年度にかけて大幅に
減少すると予想される。
130
根強いデフレは企業部門の調整を長引かせる方向に
120
作用しよう。一部には、外食産業による値上げや、製販
110
一貫衣料メーカーの売上げ急減といったミクロ的な事例
を根拠に、「デフレは終わった」との論調が見受けられ
100
る。しかし、後述するように、GDPギャップの縮小が想
定しにくい中で、一般物価の下落という意味でのデフレ
90
それ以外
<シェア:71.3%>
80
に歯止めがかかるとは期待しにくい。デフレの継続は、
鉄鋼・化学
<シェア:21.0%>
売上高の伸びを抑えることを通じて、企業部門の調整過
程を長期化させ、民間内需の回復を遅らせるだろう。
70
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
日本経済は底入れしたとはいえ、低成長を余儀なく
(注)
半導体製造装置、
電子計算機、
通信機械などは在庫データが
存在しない。
(出所)
経済産業省
される可能性が高い。
実質ベースの輸出入
外需の景気牽引効果は次第に緩やかに
(年率 兆円)
60
2002年1-3月期の実質GDP成長率に対する純輸出(輸
実質輸出
50
出−輸入)の寄与度は、前期比+0.7 %ポイントと、比
較可能な1980年以降で最大となった。外需が1-3月期の
40
実質輸入
景気を牽引した様子がGDP統計にはっきりと映し出され
たと言えよう。
30
輸出入別に見ると、実質輸出は、前期比+6.4 %と昨
名目収支
20
年10-12月期の同△2.6%から一転して大幅なプラスと
なった。輸出が前期を上回るのは、2000 年7-9 月期以
10
来、6四半期ぶりとなる。
実質収支
通関統計ベースの実質輸出(卸売物価の輸出物価で
0
デフレート)も、1-3月期は、前期比+2.4%と5四半期
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
(注)
2002年4-6月期は、
4月実績及び5月上中旬より試算
(出所)
財務省、
日本銀行
野村総合研究所
ぶりに増加した。4月分及び5月上中旬分から4-6月期分
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
3
海外の在庫率の推移
(%)
1.7
を試算すると、1-3月期を5.1%上回ると計算される。
(92年=100)
110
韓国・台湾合成
在庫率指数(右目盛)
過去1年以上に渡って大幅な減少を続けてきた輸出は、
ようやく増加基調に転じた。
輸出が増加に転じた背景として、世界的な在庫調整
100
の進展を指摘できる。半導体など電子部品を中心に大幅
1.6
な減産が進められた結果、米国やアジアの在庫率は顕著
90
に低下している。在庫水準の低下が、世界的に工業生産
1.5
80
の回復と貿易の活性化をもたらしていると見られる。
ただし、日本の輸出の増加ペースは、先行き、次第
70
1.4
米国在庫率
(左目盛)
に鈍化していく公算が大きい。世界の貿易活動は、世界
経済の約3割を占める米国の景気動向によって大きく左
60
1.3
右される。例えば、アジア地域の輸出入と米国の輸入と
の間に観察される高い連動性は、米国の内需が、アジア
50
地域の貿易活動に強い影響を与えることを示している。
92 93 94 95 9 6 97 98 99 00 01 02
米国景気は、同国向けのみならず、日本のアジア地域向
(注)
韓国・台湾在庫率指数は、
両国の在庫率を2000年のGDP比で合成
(出所)
各国統計より野村総合研究所作成
け輸出の動向も左右すると考えられる。NRI-Aは、米国
アジアの通関輸出入と米国輸入
の経済成長が、年後半に向けて年率3%以下へ減速して
(ドル建て、前年同月比、%)
60
いくと予想しており、これを前提にすれば、日本の輸出
全体も減速する可能性が高いと判断される。
アジア8ヵ国輸入
50
個別の財ごとに見ても、輸出の先行きには不安材料
40
が多い。例えば、米国の民間設備投資の回復の遅れは、
30
日本の一般機械類の輸出に影を落としている。過去、米
20
国で設備投資が低迷している時期に、日本の一般機械輸
出が増加したケースはほとんどない。低迷が長引けば、
10
日本の輸出を抑制する要因となろう。また、米国での自
0
動車販売が、需要先食いの反動で減少する可能性や、中
-10
国向け鉄鋼輸出が、同国政府によるセーフガード導入の
-20
影響で落ち込む可能性も考えられる。
米国総輸入
野村総合研究所では、試みに、日本の実質輸出に先
-30
行性を持つと考えられる変数を合成し、「輸出環境先行
85 8 6 8 7 88 89 90 91 92 93 94 9 5 9 6 97 98 99 00 01 02
(注)
アジア8ヶ国は、
ASEAN4及びNIES4ヶ国
(出所)
各国統計より野村総合研究所作成
CI (コンポージット・インデックス)」を作成した。
採用した変数は、①世界の貿易活動に大きな影響を与え
日本の一般機械(世界向け)輸出数量と米国設備投資
る米国の在庫率、②米国向け自動車輸出の先行変数とし
(
前年比、%)
て、米国の自動車新規受注額、③同じくI T 関連受注
30
額、④米国個人消費の先行変数としてウィルシャー
25
一般機械輸出数量
(対全世界)
20
5000株価指数、⑤国際商品市況の代理変数としてCRB商
品先物指数、の5つである。「輸出環境先行CI」は、米
15
国テロによる落ち込みから急回復した後、足下では上昇
10
ペースが鈍化している。ここからも、輸出の増加ペース
5
が今後減速する可能性が示唆されよう。
0
次に、輸入に目を転じると、1-3月期のGDPベース実
-5
質輸入は、前期比△0 . 0 %と5 四半期連続で前期を下
-10
回った。昨年10-12月期の同△2.0%からはマイナス幅
米国民間設備投資
-15
は縮小したものの、輸出が増加に転じたことと比較すれ
-20
81
84
87
90
93
96
99
ば、輸入の回復は遅れていると言えよう。
02
通関統計で、地域別輸入数量(野村総合研究所によ
(出所)
財務省、
米国商務省
野村総合研究所
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
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4
輸出環境先行CIと実質輸出
(CI、95年1月=100)
150
が、前期比△3.0%、EUからが同△4.9%、アジアから
5
6月11月
↓ ↓
輸出環境先行CI
(
左目盛り)
140
る季節調整値)を見ると、1-3月期は、米国からの輸入
(実質、兆円)
が同+0.2 %となった。国内需要の回復が海外に比べ遅
れていることに加え、1-3月期のアジアからの輸入が、
一部旧正月要因によって押し下げられたために、1-3月
期の輸入は低迷したと見られる。
130
しかし、今後は、輸入も増加基調を明確にする可能
性が高い。アジアへの生産拠点の移設に伴い、同地域か
4
120
110
↑↑
8 11
月月
100
らの輸入は構造的に増加し易くなっており、今後も輸入
↑
12
↑月
9
月
実質輸出
全体を押し上げる方向に作用しよう。実際、4月のアジ
アからの輸入数量は、前月比+8.3 %と比較的大きく増
加している。
(
右目盛り)
以上を総合し、先行きの外需の動向を見通すと、輸
3
90
95
96
97
98
99
00
01
出の伸びが鈍化する一方、輸入は増加に向かうと見られ
02
ることから、純輸出は、今後、景気に対してほぼニュー
(出所)
財務省、
日銀、
米国商務省、
Bloombergより野村総合研究所作成
トラルな要因となって推移すると見込まれる。
実質輸出と鉱工業生産
(
半年前比・年率、%)
(半年前比・
年率、%)
25
40
鉱工業生産
20
30
(左目盛り)
15
20
10
10
5
0
鉱工業生産の伸びは限定的に
1-3月期の鉱工業生産は、前期比+0.7%と1年ぶりに
増加に転じた。4月の実績及び、5・6月の企業による生
産見込みから4-6 月期分を計算すると、1-3 月期を4 . 3
%上回る計算となる。過去1年半以上に渡って、生産実
績が企業の見込みを下回り続けていることを考えれば、
0
4-6月期の生産は、実際にはこれを下回ると見られるも
-5
-10
-10
のの、なお強い数字と言えよう。
鉱工業生産を、業種別に「輸出・I T 関連」と「それ
-20
-15
実質輸出
(
右目盛り)
-20
以外」に分類すると、前者が比較的大きく増加している
-30
-25
のに対し、後者は低迷を続けている。足下の鉱工業生産
の回復は、輸出の増加に支えられたものであることが端
-40
75
78
81
84
87
90
93
96
99
02
的に示されている。
(注)
シャドー部分は景気後退期を表す
(出所)
経済産業省、
財務省、
日本銀行
今後は、輸出の伸びが鈍化すると見込まれることか
ら、鉱工業生産も、急角度で回復を続けるとは考えにく
地域別の輸入数量
い。生産は、2002 年度の下期には、上期に比べ伸びを
(95年=100)
160
アジアより
鈍化させる可能性があろう。
150
140
非製造業でも下げ止まり
130
120
昨年春以降低下を続けてきた第3 次産業活動指数は
110
(昨年4-6 月期以降、それぞれ前期比△0.9 %、△0 . 7
100
%、△0.3%)、本年1-3月期に前期比+0.1%と下げ止
90
まりを見せた。内訳を見ると、家計マインドの好転を背
80
景に「個人消費関連」業種が同+0.4 %となった他、鉱
米国より
70
EUより
60
工業生産の持ち直しを受け「企業関連」業種も同0.3%
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
上昇した。年明け後の非製造業活動は、全体的に底堅く
(注)
2002年4-6月期は、
4月実績からの試算
(出所)
財務省
推移したと評価できよう。
野村総合研究所
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
5
第3次産業活動指数の内訳
(1995=100)
120
「企業関連」業種を大きく「製造業関連」と「非製造
業関連」に分類し、9 0 年代前半以降のやや長期的な推
非製造業関連
移を追うと、循環変動を伴いながらも前者が停滞色の強
個人消費関連
115
い推移を続ける一方、後者が趨勢的に上昇している様子
が窺える。「製造業関連」業種が低迷している背景に
110
は、鉱工業生産の右肩上がり局面終焉や、製造業が非製
造業からのサービスの購入を抑えるといったリストラの
105
動きなどがあろう。それに対し、「非製造業関連」業種
には、情報サービス業など成長トレンドをもった業種、
100
人材派遣やリース等リストラに伴うアウトソーシングの
95
影響を受ける業種が含まれている。
製造業関連
先行きについても、循環回復メカニズムの進展に合わ
90
93
94
95
96
97
98
99
00
01
せ「非製造業関連」業種は比較的早く上昇基調に転じる
02
可能性がある一方、「製造業関連」業種は低水準で推移
(注)
個人消費関連=旅行、
小売、
飲食店など
製造業関連=電気、
貨物運送など
非製造業関連=通信
(移動通信は除く)
、
対事業所サービスなど
(出所)
経済産業省
すると見込まれる。加えて雇用・所得環境の改善ペース
が緩慢なものに止まる可能性が高いことから、「個人消
大企業・製造業の売上げの状況
費関連」業種の回復力は限られよう。第3次産業活動指
(前年同期比、%)
15
数全体では、本年前半中は横ばい程度で推移した後、後
半から緩やかな上昇基調に転じると予想する。
実績見込み
及び計画
10
企業収益の回復はモデレート
5
製造業・非製造業ともに生産の回復ペースが限られる
ことに加え、物価の下落が継続する(後述)と見込まれ
0
-
ることから、今後の企業収益の持ち直しはモデレートな
ものに留まると判断される。
-5
ここでは、野村総合研究所の予想を前提とし、S N A
ベース(中小企業まで含めたマクロベース)の企業収
-10
FY90
93
96
99
02
益の先行きを試算した。それによれば、製造業では、
(注)
年度半期ベース。
(出所)
日本銀行
(2002年3月調査)
生産量の持ち直しに加えて財価格の下落に歯止めがか
企業収益・雇用者所得の試算(SNAベース)
かることから、2002 年度の産出額(売上高に相当)は
兆円(
前年比%)
(e)2002 (e)2003
前年度比+0.4 %とわずかながらも増加するとの結果が
FY
全産業
産出額
雇用者所得
営業余剰
鉱工業
産出額
雇用者所得
営業余剰
第3次産業 産出額
雇用者所得
営業余剰
(e)2001
890.3
(-4.5)
274.6
(-1.5)
105.7
(-7.6)
885.0
(-0.6)
270.8
(-1.4)
106.7
(0.9)
889.1
(0.5)
269.1
(-0.7)
109.0
(2.2)
269.7
(-10.5)
58.2
(-4.0)
9.4
(-37.1)
270.8
(0.4)
56.5
(-2.9)
11.4
(21.2)
277.3
(2.4)
56.2
(-0.5)
13.3
(17.0)
465.5
(-1.2)
145.9
(-0.5)
94.1
(-2.4)
462.2
(-0.7)
145.1
(-0.5)
93.2
(-1.0)
462.6
(0.1)
144.9
(-0.1)
93.6
(0.4)
得られた(2 0 0 1 年度は同△1 0 . 5 %)。この時、営業
余剰は2001年度の前年比△37.1%に対し、同+21.2%
となる。一方、雇用のパートシフトなどがサービス価
格に下落圧力を加えるため、その他の業種では2002 年
度も売上の減少が見込まれる(2 0 0 1 ・2 0 0 2 年度の、
第3 次産業の産出額はそれぞれ前年比△1 . 2 %、△0 . 7
%、営業余剰は同△2.4%、△1.0%)。その結果、産
業全体では、2 0 0 1 ・2 0 0 2 年度の産出額は順に前年比
△4.5%、△0.6%、また営業余剰は同△7.6%、+0.9
%と計算される。
収益の持ち直しが緩慢なものとなれば、バランス
シートのスリム化など企業の構造調整は長引くことと
なろう。民間内需(設備投資、個人消費)への悪影響
(注)
第3次産業=電気・ガス・水道+卸売・小売+金融・保険+不動産+
運輸・通信+サービス
(出所)
内閣府、
野村総合研究所
野村総合研究所
も免れない。
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
6
機械受注の内訳
(年率兆円)
7
設備投資は年後半から緩慢回復
非製造業(
船舶、電力、
通信業からの通信機受注除く)
設備投資の減少が続いている。GDPベースの設備投資
6
は、昨年10-12 月期の落ち込み(実質・前期比△12.0
%)に続き、本年1-3月期も前期比△3.2%と2期連続で
5
減少した。また4月の資本財出荷(輸送機械を除くベー
輸出関連製造業
4
ス)は前月比△8.4%、1-3月平均比△6.0%と大きく水
3
準を下げており、設備投資が4-6月期も弱含む可能性が
2
示唆されている。
一方で、先行指標の中には持ち直しに向けた明るい動
1
IT関連製造業
きも見られ始めた。1-3月期の機械受注(船舶・電力を
その他製造業
0
除く民需)は前期比△7.4%と大きく減少したものの、
90 91 92 93 94 95 96 97 9 8 9 9 00 01 02
内訳を需要者別に見ると、I T 関連、輸出関連の製造業
(注)
IT関連=窯業・土石+非鉄金属+電気機械+精密機械
輸出関連=化学+鉄鋼+自動車+造船+その他輸送機械
(出所)
内閣府
「機械受注統計」
からの受注はそれぞれ前期比19.6%、8.1%の増加に転
じている。年初来の輸出と生産の持ち直しが、設備投資
期待成長率と設備投資
(%)
業界需要の期待成長率
(
右目盛)
に対する慎重姿勢に変化を促している可能性が高い。循
(
%)
24
環回復の恩恵が浸透するにつれ、受注持ち直しの動きは
5
今後他の業種にも広がりを見せよう。設備投資は、本年
後半には下げ止まりに向かうと予想される。
4
20
その後の回復力は、限定的となる公算が大きい。90
年代後半以降、企業は設備投資をキャッシュフロー以下
3
16
に抑える姿勢を強めており、収益の持ち直しが設備投資
2
12
設備投資/資本ストック比率
(左目盛)
8
4
の増加につながりにくくなっている。その理由として、
①過剰債務の存在が、様々な経路を通じて設備投資を抑
1
制している、②生産・営業用設備判断D I (日銀短観)
の高止まりに見られるように、設備過剰感が強まってい
0
る(設備稼働率が低下している)、③需要の期待成長率
76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02
が、過去最低水準にまで低下している(本年1月の内閣
(注)
期待成長率は、
毎年1月時点での、
次年度以降3年間の平均実質
業界需要成長率に対する見通し。
(出所)
内閣府、
財務省
府調査によれば、企業による業界需要の成長率見通し
(2002∼2004年度平均、実質)は+0.3%)、などの可
設備投資の業種別の動向
能性を指摘できよう。
(前年同期比、%)
100
また、パソコンや携帯電話の普及が一巡したと見られ
る中、次の牽引業種を見いだすことも難しい(電気機械
小売業(3.9%)
80
電気機械業(11.6%)
業、通信業による2001 年度下期の設備投資伸び率は、
通信業(13.0%)
60
それぞれ前年比△44.4%、△37.7%)。設備投資の回
40
復が緩慢なものに止まる可能性を示唆する材料には事欠
20
かない。
0
雇用・所得環境に持ち直しの兆し
-20
-40
雇用・所得環境には持ち直しの兆しが見え始めてい
その他産業(71.5%)
る。完全失業率は2001年12月の5.5%をピークに上昇に
-60
歯止めがかかり、4 月は5.2%となった。有効求人倍率
86 87 88 89 90 91 92 93 9 4 9 5 9 6 97 98 99 00 01
(注)
資本金10億円以上。
ここでの通信業は、
法人企業統計の
「その他
運輸・通信業」
。
括弧内の計数は、
全体に占めるシェア。
年度半期ベース。
(出所)
財務省
「法人企業統計」
野村総合研究所
も2月の0.50倍から、3月は0.51倍、4月は0.52倍と2ヵ
月連続で改善している。所得環境に関しては、所定外労
働時間の持ち直しを受け、残業代が2001年12月以降継
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
7
企業活動と総賃金
続的に前年比のマイナス幅を縮小している(2001年10-
(
2000年=100)
12月期:-8.4 %、02 年1-3月期:-5.7 %、4 月:-2.5
110
105
100
95
90
85
80
75
70
%)。
背景としては、世界的な景気の好転に伴い鉱工業生
産が増加に転じていることが挙げられる。企業の雇用意
鉱工業生産
製造業・総賃金(30人以上)
85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
(
2000年=100)
110
業からの新規求人は、前期比+ 2 . 6 %と非製造業(同4.5%)にさきがけて増加した。また4 月に限れば、非
製造業からの新規求人も1-3月平均比+4.0%となってお
第三次産業活動
100
欲を示す新規求人数を業種別に見ると、1-3月期の製造
り、第三次産業活動指数が下げ止まりを見せたことと整
90
80
非製造業・総賃金(
30人以上)
70
60
85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
合的である。水準としては依然厳しいものの、雇用・所
得環境は今後も改善を続けるであろう。
ただし、そのペースは極めて緩やかなものに留まると
(注)
ボーナス支給月を考慮し、
第1四半期は前年12月∼2月、第2四半期は
3∼5月、
第3四半期は6∼8月、
第4四半期は9∼11月とした。
(出所)
厚生労働省、
経済産業省
考える。その理由として、企業によるリストラの継続が
主要企業・夏季ボーナス推計
移してきた企業の総賃金は、9 8 年以降減少に転じてお
挙げられよう。ほぼ一貫して増加ないし横ばい程度で推
り、特に製造業での減少が顕著である。企業は、採用を
(前年比 %)
10
8
労働需給要因
企業業績要因
6
推計値
実績
4
抑制したり、雇用をパートタイム労働者へシフトさせた
りすることで人件費の抑制を図っていると見られ、多少
の生産増加では家計所得は増加しにくくなっていると言
えるだろう。
2
さらに、所得環境について当面の注目点である夏季賞
0
与の試算を行った結果、前年比-1.7 %となった(資本
-2
-1.7
-4
金20億円、従業員1000人以上の東証及び大証一部上場
企業ベース)。この数字からも、家計所得の急回復は見
-6
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02
推計式:ΔB=0.235×ΔS-7.369×ΔU+2.593
(t
値)
(2.61) (3.59) (3.51)
ΔB:主要企業夏季一時金妥結額(
厚生労働省) 前年度比%
ΔS:法人企業売上高 全産業(財務省) 前年度比%
ΔU:完全失業率 前年度差%
決定係数:0.736 DW比:2.78
(出所) 野村総合研究所
1-3月期の個人消費は一層の悪化を免れた。小売業販
前期比+ 1 . 2%と2 0 0 1 年1 - 3月期以来のプラスとなっ
小売業
織物・衣服・身の回り品
小売業
飲食料品
小売業
自動車
小売業
100.0%
8.3%
28.3%
12.7%
p-p % y-y %
p-p %
y-y %
p-p % y-y %
p-p %
y-y %
00 1Q
-1.2
-0.5
-2.4
-6.9
-3.7
-4.9
0.3
-0.3
2Q
0.8
-1.0
1.6
-4.6
-0.8
-6.9
6.0
3.9
3Q
0.9
0.8
1.1
-0.1
3.6
-1.9
-2.2
1.7
4Q
-0.8
-0.2
-2.1
-1.9
-2.3
-3.2
2.8
6.5
01 1Q
1.6
1.5
0.8
0.3
-1.1
-2.1
1.5
6.3
2Q
-2.0
-0.2
-2.3
-2.4
-1.2
-1.8
-1.3
1.3
3Q
-0.5
-1.5
0.9
-3.0
0.1
-3.9
0.5
3.8
4Q
-0.8
-2.1
-3.0
-3.8
-1.1
-3.2
-4.8
-4.4
02 1Q
1.2
-2.2
-0.6
-4.7
1.2
-1.1
4.3
-1.5
(e)2Q
-1.8
-2.0
-1.3
-4.0
0.2
0.4
-5.6
-5.8
01 7月
-0.3
-1.1
-2.5
-6.2
1.0
-4.0
1.2
6.8
8月
-1.0
-2.5
1.7
-3.6
-0.7
-4.3
-2.5
3.2
9月
0.8
-0.9
5.1
1.6
-0.1
-3.4
-2.2
1.1
10月
-1.3
-2.9
-8.1
-6.9
-0.3
-3.4
-3.0
-1.8
11月
1.6
-0.3
2.2
-4.2
0.7
-0.5
0.2
-4.6
12月
-2.2
-3.0
0.3
-0.5
-2.8
-5.2
1.1
-6.7
02 1月
2.7
-1.4
-2.6
-4.7
2.8
-1.8
3.5
-3.1
2月
-0.5
-2.7
1.5
-5.4
-0.1
-1.3
-0.2
-0.5
3月
-0.6
-2.4
0.6
-4.1
0.4
-0.3
0.1
-1.1
4月
-1.2
-2.0
-2.2
-5.5
0.0
-0.1
-5.6
-3.9
(注)
対応する消費者物価指数で実質化した
2002年2Qは4月実績からの試算
(出所)経済産業省
「商業販売統計」
、
総務省
「消費者物価指数」
野村総合研究所
個人消費は今年後半から回復
売額指数(対応する消費者物価指数で除した実質値)は
実質小売業販売額指数
シェア
(
CY2001)
込みにくいと言える。
た。業種別に見ると「 繊維・衣服・身の回り品」 以外は
全て前期比プラスとなっている。また、同期の消費財出
荷も前期比1.9%増加した。
その背景には、消費マインドの好転があろう。「消費
動向調査」に拠ると、2002年3月の消費者態度指数は12
月調査比+1.5 ポイント、その内訳である消費者意識指
標の各項目も概ね前期差プラスとなっている。
ただし、雇用・所得環境は依然厳しく、個人消費が
回復基調に入ったとは考えにくい。現に4月の小売業販
売は弱い数字となった(4月前月比:-1.2%、1-3月平
均比:-1.8 %)。各種販売統計においても、乗用車販
売を除いては回復の兆しは見えていない。マインドの改
善が消費を押し上げる局面は、既に終わったと見られ
る。雇用・所得環境の改善が極めて緩慢となる可能性が
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
8
高いことから、個人消費は一進一退で推移した後、今年
消費者態度指数の内訳
①暮し向き
②収入の増え方
③物価の上がり方
④雇用環境
⑤耐久消費財の買い時判断
消費者態度指数
【前期差】
①暮し向き
②収入の増え方
③物価の上がり方
④雇用環境
⑤耐久消費財の買い時判断
消費者態度指数
6月
41.2
40.8
46.9
30.8
44.3
40.7
01年
9月
38.0
37.5
47.9
20.4
41.9
37.1
12月
37.5
36.3
50.1
19.8
41.2
36.9
02年
3月
38.4
36.9
47.2
24.8
43.4
38.4
0.4
0.7
1.6
1.1
1.3
0.7
-3.2
-3.3
1.0
-10.4
-2.4
-3.6
-0.5
-1.2
2.2
-0.6
-0.7
-0.2
0.9
0.6
-2.9
5.0
2.2
1.5
(出所)
内閣府
「消費動向調査」
後半以降緩やかに持ち直すことになると考えられる。
継続するデフレ傾向
景気回復を受けて、物価の先行きに関する見方が分
かれている。一部では、製販一貫衣料メーカーの売上げ
急減や、ファーストフード産業の値上げを根拠に、デフ
レは終わったとする論調も見られる。
確かに、卸売物価の下落ペースは緩やかになってい
る。5 月の国内卸売物価は、前年比△1.2%となり、前
年比のマイナス幅は、1 月の△1.5%をボトムに、縮小
国内卸売物価の推移
(95年=100)
傾向で推移している。内訳を見るために、卸売物価を、
(95年=100)
120
輸出関連(鉄鋼、一般機
械、輸送機械、右目盛り)
<シェア22.9%>
115
110
輸出、IT関連以外(化学、石油・
石炭を除く、右目盛り)
<シェア41.4%>
105
104
100
98
※97年4月の消費税率
引き上げによる影響
(1.9%相当)は控除
した。
90
94
80
IT関連(電気機械、精密機械、左目盛り)
<シェア16.6%>
70
外」の価格が、昨年の終わり頃から目立って持ち直して
いる。ただし、「それ以外」の価格は、過去において
も、景気循環に連動して下降と下げ止まりを繰り返して
きた。同カテゴリーが、日本経済のデフレ傾向が急速に
進んでいた2000 年当時にも下げ止まりを見せていたこ
96
85
75
(原油価格の影響を強く受ける石油・石炭、化学製品は
除く)」の3 つのカテゴリーに分類すると、「それ以
102
100
95
業種別に、「I T 関連」、「輸出関連」、「それ以外
92
とを考慮すれば、卸売物価の下落ペースが循環的に緩や
かになることは、必ずしも、経済全般のデフレが終息す
ることを意味しないであろう。
そこで、経済全般の物価下落を主導している消費者
物価の動向を見るために、消費者物価を、「半耐久
90
91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02
財」、「耐久財」、「非耐久財」、「広義サービス(帰
属家賃、外食を除く)」とに分類した。これらの前年比
(注)
シャドー部分は景気後退期を示す
(出所)
日本銀行
を見ると、「耐久財」価格は、液晶など電子部品の価格
上昇を受けたパソコンの値上げを主因にマイナス幅を縮
消費者物価(全国)の動向①
小している。また、「非耐久財」も、原油高に伴うガソ
(
前年比、%)
リン価格の下げ止まりを受けて、マイナス幅を縮小する
8
兆しが見える。「半耐久財」は、引き続き大幅なマイナ
6
半耐久財
スとなっているものの、マイナス幅の拡大には歯止めが
4
かかっている。「広義サービス」価格は、ほぼ前年比ゼ
2
ロ%近辺で推移している。また、「広義サービス」に含
まれる電気料金は、東京電力が初めて横並びを脱して料
0
金引き下げに踏み切ったことから、本年4月には、前年
-2
比△2.2%と、3月の前年比+0.9%から大幅にマイナス
-4
幅を拡大した。
液晶や原油など市況性商品の価格上昇は、消費者物
-6
価の財価格を押し上げる方向に作用しており、この面で
耐久財
-8
は、卸売物価の下落ペースが緩やかになったことは、消
-10
費者物価に影響を与えているとも言えよう。先行きも、
81
84
87
90
93
96
(注)
1.消費税の導入・引き上げの影響は調整した
2.シャドー部分は景気後退期を示す
(出所)
総務省
野村総合研究所
99
02
景気の循環回復に伴い、財価格は下げ止まりに向かう可
能性もあろう。
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
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る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
9
消費者物価(全国)の動向②
(前年比、%)
8
しかしながら、消費者物価の先行きを占う上では、
CPI全体の約半分を占めるサービス価格の動向が重要と
広義サービス(帰属家賃を除くサービス+
電気・ガス・水道、但し外食は除く)
6
考えられる。過去を振り返ると、サービス価格と、非製
造業の賃金には密接な関係が見られる。賃金は、足下で
4
も低下を続けており、先行きも、労働のパート化の進展
2
などで下落を続ける可能性が高いと考えられる。賃金の
0
下落は、今後もサービス価格に低下圧力を及ぼそう。
-2
また、東京電力の値下げに象徴されるように、規制
-4
緩和に伴う公共料金の下落も無視できない。規制で保護
されてきた公的サービスには、相対的に価格引き下げ余
非耐久財(生鮮食品、米類、
電気・都市ガス・水道は除く)
-6
地が大きいと見られる。2000年から2001年初めにかけ
-8
ての電話料金引き下げと同様、電気料金など公的サービ
-10
81
84
87
90
93
96
99
ス価格の低下がCPIを押し下げる可能性があろう。
02
角度を変えて、トップダウン的にGDPギャップによる
(注)
1.消費税の導入・引き上げの影響は調整した
2.シャドー部分は景気後退期を示す
(出所)
総務省
アプローチを採用しても、デフレ傾向の持続が示唆され
る。GDPギャップは、経済全体の需給バランスを表し、
サービス物価と非製造業の賃金
理論的には物価の動向を規定するとされる。実際、消費
(前年同月比、%)
者物価は、GDPギャップにやや遅れて連動する傾向が見
10
られる。野村総合研究所の予測に基づけば、2003 年以
8
非製造業・1人
当たり賃金
広義サービス(帰属家賃を
除くサービス+電気・ガス・
水道、但し外食は除く)
6
降も、経済成長は潜在成長率を下回り、GDPギャップは
縮小しないと見込まれる。
さらに、為替レートの動向も、物価動向に影響を及
4
ぼそう。仮に現在の1 ドル125円程度の為替水準が定着
2
すると、卸売物価には相当程度大きな影響を及ぼすと見
られる。消費者物価に対する影響は、大きくはないもの
0
の、若干の押し下げ効果はまぬがれないであろう。
-2
以上のように、景気の循環回復が財価格に一定の上昇
圧力を及ぼすとしても、デフレは継続すると見込まれ
-4
81
84
87
90
93
96
99
る。少なくとも2003 年一杯は、消費者物価は前年比マ
02
イナスで推移すると予想する。
(注)
2002年第2四半期は、
4月単月の前年同月比。
(出所)
総務省、
野村総合研究所
GDP ギャップと消費者物価
(
GDPギャップ、%)
0
後退するデフレ対策減税
(
前年比、%)
8
予測
GDPギャップ
(左目盛り)
-2
-4
6月下旬にかけ、経済財政諮問会議が経済活性化戦略
7
の中での税制改革の基本方針、政府税調が税制改正の論
6
バブル崩壊
-6
点整理を公表する予定である。また、与党3 党も、サ
5
金融危機
-8
ミット前に追加デフレ対策をまとめる。6 月7 日には、
4
税制改革を、2006 年度までに完了するとした「首相指
3
示」が発表されている。しかし、以下のような理由か
-12
2
ら、大規模減税が年度内に実施される可能性は極めて低
-14
1
いと考えざるを得ない。第一に、税制変更を用いた経済
-16
0
活性化の是非と有効性についてコンセンサスが得られて
-1
いない。第二に、大規模な減税を行うための財源確保が
-2
困難である。第三に、景気底入れ判断を行ったことで景
米国
景気後退
-10
消費者物価(生鮮食品を除く)
-18
-20
84
86
88
90
92
94
96
98
00
02
気対策としての減税実施の緊急性が薄らいだと認識され
(注)
2002年第2四半期の消費者物価は、
4月単月の前年同月比。
(出所)
内閣府、
総務省の統計より野村総合研究所作成
野村総合研究所
ている可能性がある。2003年度税制改正まで視野に入
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
10
れた場合でも、贈与税・相続税を一体化する中での実質
所得税負担の国際比較
50
(%)
減税、研究開発や設備投資促進を狙った政策減税、など
を組み合わせた数千億円程度の小規模減税が実現するに
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
45
40
35
留まる公算が大きい。
諮問会議の税制改革案は、「活力」重視、「広く、薄
く」等をキーワードとして、個人所得課税の累進性緩
30
和、法人税の実効税率引き下げを示唆している。これに
25
対し、政府税調は、「広く、薄い」税制を指向する考え
を共有しつつ、「薄い」税制はこれまでの税制改正によ
20
り実現しており、税制改革の主眼は課税ベースの拡大に
15
置かれるべきであるとの意向を強くにじませている。一
10
方、5月15日の与党党首会談では追加デフレ対策の内容
5
として、4月2日の「緊急提言」に盛り込まれた内容(贈
与税減税、不動産流通課税の軽減、企業投資促進減税)
0
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
(注)1.各国2002年1月現在の税法に基づき(わが国の場合、
いわゆる
「定率減
税」を含む)、
夫婦+子供2人(うち1名は「特定扶養親族(ないしは同等
の特定控除対象年齢)」
)の世帯について、
国税+地方税(制度の存在
する国のみ、
米国についてはニューヨーク州の例)負担率を示す。
2.所得を換算する為替レートは、
1ドル=122円、
1ポンド=174円、
1ユー
ロ=110円、
とした。
(出所)財務省
を確認するに留まった。基幹税である所得、法人税の減
税について、政治的なコンセンサスは形成されていない
に等しい。6 月7 日の「首相指示」に盛り込まれた法人
税の実効税率引き下げは、法人事業税の外形標準化に
よって実現される場合、マクロ的な税負担の軽減に結び
つかないだけでなく赤字法人課税につながるため、強い
政治的抵抗を惹起する可能性が高い。
中期的な財政収支の試算
減税財源についても意見が分かれている。諮問会議
(上段:
兆円、下段()内:
前年度比%)
2001
国債費
地方交付税等
一般歳出
歳
出
社会保障関係費
公共事業費
合計
税収
2002
2003
46.8
46.8
(△5.7) (△0.1)
6.7
4.4
3.5
(△34.4) (△20.9)
30.0
30.0
35.2
(0.0)
(17.3)
86.4
81.2
85.5
(△5.9)
(5.2)
合計
(参考)プライマリー・バランス
2005
(平成13) (平成14) (平成15) (平成16) (平成17)
16.3
16.7
17.3
18.5
19.2
(2.4)
(3.8)
(7.2)
(3.3)
16.7
17.0
19.1
20.6
21.4
(1.8)
(12.4)
(7.9)
(3.7)
53.4
47.5
49.0
51.0
51.6
(△10.9)
(3.1)
(3.9)
(1.2)
19.2
18.3
19.2
20.3
21.4
(△4.7)
(4.8)
(5.8)
(5.5)
9.9
8.4
8.4
8.9
8.9
(△15.0)
(0.0)
(5.8) (△0.3)
86.4
81.2
85.5
90.1
92.1
(△5.9)
(5.2)
(5.5)
(2.2)
49.6
その他収入
歳
入 公債金
2004
13.7
13.3
17.9
47.5
(1.5)
4.5
(29.0)
38.2
(8.5)
90.1
(5.5)
48.5
(2.2)
4.4
(△2.5)
39.2
(2.8)
92.1
(2.2)
19.6
20.1
(注)財務省
「平成14年度予算の後年度歳出歳入への影響試算」
のうち、
「試算2」
(名目成長率15年度1.25%、
以後2.5%)を前提とした。
2001年度は2次補正後。
(出所)財務省
は、歳出削減や国有財産売却収入を構造改革の成果を還
元する名目で減税財源に充当する「財政中立」的な減税
を主張する。一方、財務省サイドは、歳出削減等によっ
て得られる財源は本来国債償還に充てるべき、として、
減税財源を( 将来の) 増税で担保する「税収中立」を主
張する。財政制度審議会が6 月3 日に提出した15 年度予
算に関する「建議」では、国債発行3 0 兆円に代えて一
般歳出ゼロ・シーリング(03年度の場合47.5兆円)を財
政健全化目標に掲げている。諮問会議流の「財政中立」
の考え方を採用したとしても、国債費の自然増を勘案す
れば、減税実施にはゼロ・シーリングから更に踏み込ん
だ歳出削減を実施する必要が生じる。
政治的にコンセンサスが得られ、かつ、財源確保が難
しくない、という点で、実施の可能性が高いのは、相
続・贈与税改革と併せた生前贈与課税軽減と投資促進減
税に限られよう。財務省が6 月5 日の経済関係閣僚会議
に提出した税制改革の基本方針は、相続税の最高税率の
引き下げと、企業の研究開発を促すための法人税減税を
減税の柱とする一方、所得税控除縮小による増収で「税
収中立」を確保するよう主張している。当面、課税ベー
ス拡大を先送りし、減税を先行させるとしても、減税規
模は数千億円に留まる公算が大きい。
野村総合研究所
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
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る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
11
相続税の課税状況(1999年)
課税価格階級 課税価格計
同
(億円)
7,257
32,684
19,842
22,299
12,047
11,254
15,761
11,320
132,464
1億円以下
1億円超
2億円〃
3億円〃
5億円〃
7億円〃
10億円〃
20億円〃
合計
縮小傾向が持続する公共投資
納付税額 実効税率
相続人
1人あたり
(万円)
3,480
3,924
6,104
9,328
13,859
19,240
30,056
73,315
7,282
財政制度審議会の「建議」では、一般歳出シーリング
(億円)
108
1,254
1,563
2,767
1,910
2,132
3,706
3,404
16,843
と併せて、公共投資の中期的削減目標が示されている。
(%)
1.5
3.8
7.9
12.4
15.9
18.9
23.5
30.1
12.7
経済財政諮問会議が年初の「改革と展望」で示したのと
同様に、公共投資を「景気対策のための大幅な追加が行
われた以前の水準に戻す」との目安がそれに当たる。
この目標は、地方財政の緊縮傾向を反映して「労せず
して」実現される公算が大きい。過去の公的固定資本形
成の動きを振り返ってみると、9 5 年度を境として減少
傾向が続いている。その主因は、地方政府による公共投
(注)相続人1人当たり課税価格は、実際の相続人ではなく法定相続人数で計算。
(出所)国税庁
資の減少にある。地方政府の公共投資( 投資的経費)
を、直轄・補助事業と単独事業に分けて、予算(地方財
政計画) の達成率を見ると、直轄補助事業が一環して
地方政府公共事業の予算達成率
50
(兆円)
(%)
100%を上回っているのに対し、単独事業は94年度以降
160
45
140
100%を下回っており、2000 年度には64.1%にまで低
40
120
下している。地方財政計画の投資的経費は、建設地方債
35
100
の発行許可額と連動していることから、自治体が財政再
30
80
建のため建設地方債の発行を見合わせ単独事業の水準を
25
60
抑制していることが窺われる。
20
40
諮問会議の経済活性化戦略には、構造改革の中で積み
15
20
10
0
5
残しとなってきた「国と地方の関係見直し」が盛り込ま
-20
0
-40
計 実計 実 計実 計 実 計 実計 実 計実 計 実 計 実 計 実 計実
(年度)
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
単独事業
直轄補助事業
<達成率>(右軸)
単独事業
直轄補助事業
00
れる見込みである。総務省は、国から地方への税源委譲
を出発点として国全体の歳出効率化に結びつけるシナリ
オを描いているが、財務省は、市町村合併促進や歳出削
減を通じた地方行財政効率化を出発点にすることを主張
(注)「計」=地方財政計画、「実」=決算。達成率=(投資的経費の)
決算額/地方財政計画、としている。
(出所)総務省
し、税源委譲に強い難色を示している。税収が全体とし
て落ち込む中で、税源は既得権化する傾向が強まると見
られる。「国と地方の関係見直し」の中で、地方自治体
主体別公的固定資本形成
50
(兆円)
は税源委譲の恩恵を受けるよりも、まず一層の歳出削減
地方政府
中央政府
地方公営企業
社会保障基金
45
40
を迫られる可能性が高い。地方単独事業の抑制傾向に加
え、国庫補助金・負担金の見直しが進めば、地方政府の
35
公共投資の減少には歯止めがかからない公算が大きい。
30
2 0 0 3年度の一般会計公共事業費が0 2 年度予算と同
25
様、前年度比10%削減された場合、SNA中央政府ベース
20
の公的固定資本形成は、大規模な景気対策が実施される
15
直前である91年度の水準(7.1兆円)を下回る6.8兆円程
10
度になると推定される。名目公的固定資本形成全体で
も、2003年度は27.0兆円と、91年度の水準(31.5兆円)
5
を下回るとみられる。02 年度、0 3 年度の伸び率は( 名
0
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
(f)
(f)
(f)
01
02
03
(注)
1.「中央政府」
には、
一般会計、
特別会計の他、
政府関係機関も含む。
2.2001年度以降の主体別計数は、
一般会計の
「公共事業費」
、
地方財政の
「投資的経費」
から、
用地費、
事業執行時期等を調整して試算。
地方の投資
的経費は、
直轄補助事業と単独事業に分解し、
地方財政計画の実現率
(達
成率)
、
財源の推移等を勘案して試算している。
なお、
2001年度の全体計
数は実績値。
(出所)
総務省、
財務省資料に基づき野村総合研究所作成。
野村総合研究所
目)それぞれ▲3.0%、▲13.5%を予想する。
長期化する量的緩和
日銀は、みずほフィナンシャルグループのシステム障害
が終息した5月以降、目標の上限である15兆円を若干下
経済研究部
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12
日銀当座預金残高とその変動要因
60
回る水準に当座預金残高を誘導するような金融調節を続
(兆円)
けている。消費者物価( コア) が前年比プラスに転じる
可能性が低く、現行の量的緩和の枠組みを変更できる余
40
地がほとんどないのみならず、日銀は今後も、当座預金
残高レンジの上限付近をターゲットとしたピンポイント
20
での金融調節を余儀なくされる公算が大きい。日銀が当
0
座預金残高をレンジの下限に近づけるような金融調節を
-20
行った場合、金融緩和の手を緩めたとして内外から批判
-40
を浴びるのは必至であろう。須田審議委員は、5月30日
の会見で、当座残高の少々の増減で緩和スタンスの強弱
-60
を判断してほしくない、としつつも「今は15兆円を...
-80
97
98
99
00
日銀当座預金
外生要因:対政府
国債買入:中長期
他の資金供給オペ計
01
維持できるように頑張っている」と「本音」を吐露して
02
いる。
┌当預変動要因┐
銀行券+貨幣
短期国債
他の資金吸収オペ計
景気底入れ感が生じ、企業・金融機関の信用リスクに
対する懸念が後退したことで、局部的には量的緩和の効
果がむしろ発現されやすくなっている、という皮肉な面
(出所)日本銀行
も現れている。4月以降、CP発行レートが急低下する一
方で、政府短期証券利回りはじり高傾向となっており、
日銀政策委員の経済見通し
2001年度
最小値 大勢見通し 最大値
2001年10月
実質GDP
国内卸売物価
コアCPI
2002年4月
実質GDP
両者のスプレッドは縮小している。日銀も5月の金融経
(対前年度比、%)
2002年度
済月報において、「企業の資金繰りも、悪化傾向に歯止
最小値 大勢見通し 最大値
めが掛かりつつある」との判断を行っている。短期国債
-1.6
-1.2∼-0.9
-0.6
-1.7
-1.1∼+0.1
+0.2
への極端な「質への逃避」が終息したことで、短期国債
-1.5
-1.3
-1.2∼-1.0
-1.1∼-1.0
-0.9
-0.9
-1.9
-1.7
-1.3∼-0.9
-1.3∼-0.9
-0.5
-0.5
買い切りオペが札割れを起こすことなく当座預金残高の
(実績)
-1.3
-0.5
-0.5∼+0.1
+0.2
維持に成功している、という側面も指摘できる。
国内卸売物価
(実績)
-1.1
-1.0 -1.0∼-0.5 -0.3
コアCPI
(実績)
-0.8
-1.1 -1.0∼-0.8 -0.5
(注) 1 .政策委員見通しは、
先行きの金融政策運営について不変を前提としてい
る。
2.「コアCPI」
は、
消費者物価指数(除く生鮮食品)を表す。
3.「大勢見通し」
は、
2001年同10月においては、
各政策委員が最大0 . 5%のレ
ンジで作成した見通し(計18個)のうち上下各2個を除いたもの。
一人の政
策委員が(レンジではなく)単一の見通しを示した場合は、
その値を2個とし
て数えている。
2 0 0 2年4 月においては、
9 名の政策委員の見通し(9 個) のう
ち、
最大値最小値を除いたもの。
(出所)日本銀行
しかし、これらの事実は、量的緩和が景気回復の追い
風になりうることを意味するものではない。信用力の低
い企業の資金繰りは、依然として厳しい状態が続いてお
り量的緩和の恩恵は及んでいない。日銀自身が「国内金
融システムや金融資本市場の動向」を経済のダウンサイ
ドリスクとして意識している以上、外部の批判を回避す
るといった消極的理由だけでなく、主体的に潤沢な流動
性供給を継続せざるを得ないと考えられる。
短期国債利回りとCPレート
1.4
実質成長率は2002年度−0.1%、2003年度+0.5%
(%)
0.10
0.09
CP3ヶ月引受レート
以上の分析に基づき、日本の実質GDP成長率は2002年
0.08
度−0.1%、2003年度+0.5%と予想した。米国経済が
TB・FB3ヶ月利回り
0.07
2%台の成長を続ける中、日本でも輸出主導による緩や
0.06
かな景気回復が続くと見込まれる。輸出や鉱工業生産の
0.05
増加、企業収益の回復の結果、2002 年下期以降、民間
0.04
内需も緩やかながら回復に向かうであろう。ただ、構造
0.03
問題の影響から民間内需は本格的な回復には至らず、ま
0.02
た、来年度にかけて公共事業が大幅に減少することもあ
0.01
り、実質成長率は潜在成長率(1%程度)に及ばないで
0.00
2002
あろう。また、デフレの継続から、名目成長率は2003
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
97
98
99
2000
2001
2002
年度もマイナスとなろう。なお、予測の作成にあたっ
(出所)日本相互証券、
野村證券
野村総合研究所
経済研究部
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13
て、税制改革については、研究開発投資促進税制、贈与
2002∼2003年度日本経済見通し
年度ベース
2001 前回予測比
(実績) 乖離幅
2002
前回予測比
(
予測) 修正幅
(
前年度比増減率、%)
2003
前回予測比
(予測) 修正幅
税減税のみが2003年度に実現すると考えた。他の項目
(法人事業税への外形標準課税導入と実効税率引き下
名目GDP
-2.5
0.0
-1.2
0.5
-0.4
0.1
実質GDP
-1.3
0.0
-0.1
0.6
0.5
-0.0
内需(成長寄与度)
-0.8
-0.1
-0.6
0.1
0.6
-0.0
民間最終消費
0.3
0.2
1.1
0.9
0.6
0.1
民間住宅投資
-8.5
-0.6
-5.2
-2.4
2.7
2.8
民間設備投資
-3.7
-0.9
-8.9
-1.3
3.2
1.7
四半期ベースでは、2002年1-3月期の高成長の後、同
困難な面があり、2 0 0 3 年度には実現しないと想定し
た。
2.8
0.0
2.2
-0.0
1.7
0.1
4-6月期、7-9月期には再びマイナス成長に戻ると見て
-5.8
-0.4
-1.2
-0.9
-11.0
-6.1
いる。4-6月期には1-3月期の高成長の反動が出る可能
政府最終消費
公的固定資本形成
げ、個人所得課税の控除見直し)については、政治的に
-0.5
0.1
0.6
0.4
-0.1
0.0
輸出
-8.0
1.6
6.9
7.7
3.2
0.5
性が高い。個人消費、設備投資といった民間内需が減少
輸入
-4.7
0.4
1.9
4.2
4.9
0.6
-10.2
-0.1
0.5
3.2
2.1
0.2
すると考えられる(下の「注記」も参照のこと)。続く
卸売物価
-0.0
-0.0
0.0
0.2
0.4
0.9
7-9月期は、民間内需の下げ止まりが予想される反面、
(国内需要財)
-1.1
-0.0
-0.6
0.7
0.1
0.9
コア消費者物価
-0.8
0.1
-0.7
0.4
-0.5
0.5
2001年度第2次補正予算の効果が剥落し、公共事業が大
外需(成長寄与度)
鉱工業生産
きく減少すると見られることから、GDP全体ではマイナ
(注)
「前回予測」
は2002年3月13日時点の予測。
(出所)
内閣府、
経済産業省、
日本銀行、
総務省資料より野村総合研究所作成。
スとなろう。但し、この間も鉱工業生産の増加傾向は続
くと予想しており、2四半期連続のマイナス成長が景気
の腰折れを意味する訳ではないことを強調したい。
経済見通し前提表
公共工事追加(真水ベース)
(兆円)
99年度 2000年度 2001年度 2002年度 2003年度
5.2
5.0
3.5
3.5
0.0
うち98年度1次補正
1.5
98年度3次補正
3.7
99年度補正
10-12月期以降は、民間内需が緩やかながらも回復に
転じることから、実質GDPは低いながらもプラス軌道に
復帰するであろう。
日本経済は、典型的なマドルスルー(m u d d l e -
5.0
through)の道を辿っている。90年代から積み残された
2000年度補正
3.0
2001年度1次補正
0.5
2001年度2次補正
構造的課題に明確な回答を示すことが出来ない中で、輸
0.5
出主導で景気が回復、株価も一時に比べれば持ち直して
0.0
3.0
111.4
110.6
125.1
129.0
130.0
いる。逆に、景気や株価が持ち直したことで、政府の構
公定歩合(期末値)
0.50
0.25
0.10
0.10
0.10
原油入着価格(年度平均、$/バレル)
20.8
28.2
23.8
25.9
26.3
造問題への取り組みはスピードと切迫感を喪失し始めて
2.2
2.1
2.0
1.7
1.6
円ドル相場(年度平均)
春闘賃上げ率
(注)
公共事業の追加は、
執行ベースの計数。
(出所)
野村総合研究所
いる。
景気が大きく崩れることは想定しにくくなった一方、
自律的回復の展望は更に遠のいた感すらある。
(注記)
今回のGDP予測値に関しては暫定的な性格が強いこと
を付け加えておきたい。内閣府は、今年4-6月期のGDP
速報値から、推計方法を大幅に変更することを検討して
いる(その場合、4-6月期のGDP速報値は、現行方式に
比べ1ヵ月弱早い8月前半に公表されることになる)。
現行の推計方法が主として需要側統計(家計調査、法
人企業統計等)に依拠しているのに対して、新しい推計
方法では、供給側統計が大々的に活用される(生産動態
統計、特定サービス産業動態統計調査等)。また、GDP
確報値の推計で用いられるコモディティフロー法(通称
コモ法)と整合性のある方法が採り入れられる。具体的
には、供給側統計に基づき、9 0 業種分類に対応する出
荷額を推計、それを各需要項目に割り振ることでGDP速
報値を推計する。ただ、従来と同様に、需要側統計も一
部需要項目で活用されることとなっており、新しい推計
野村総合研究所
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
14
方法の詳細は現時点では明らかではない。
新推計方式の導入に伴い、過去にわたってGDP統計が
変更される。ただ、現時点では、新推計方法に基づく過
去系列は未公表のため、今回のGDP予測作成に当たって
は、過去(2002年1-3月期まで)の計数については現行
統計に依拠しつつ、将来(同4 - 6月期以降)について
は、推計方法の変更を念頭に置きつつ予測値を作成する
といういう折衷的な方法をとった。新推計方法に移行す
るタイミングで過去系列が変更されるが、今年1-3月期
については下方修正が行われる公算が大きく、4-6月期
の計数もその影響を免れない。
ただ、供給側統計のうち、個人消費、設備投資の推計
に利用されると見られる統計(商業販売統計の小売業販
売額、鉱工業生産統計の資本財・消費財出荷)の4月分
を見ると弱いものが多く、この点から判断すると、4-6
月期の成長率、特に民間内需の伸びは、新推計方法の下
でも低いものにとどまると推測される。
野村総合研究所
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
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15
実質国内総支出予測表
2001/7-9
民間最終消費
(
前期比)
(
前年同期比)
民間住宅
(
前期比)
285929.5
10-12
291409.9
2002/1-3
296120.9
4-6
7-9
10-12
(e)
(f)
(f)
294138.8
294580.1
294492.2
2003/1-3 2001年度 2002年度 2003年度 2001暦年 2002暦年 2003暦年
(f)
(f)
295021.9 291103.7
-1.7%
1.9%
1.6%
-0.6%
-0.1%
0.2%
0.2%
(-0.3%)
(0.2%)
(1.1%)
(1.2%)
(2.5%)
(1.2%)
(-0.4%)
18662.3
18632.4
18206.2
17705.5
17493.1
17580.5
(f)
(f)
294360.2 296231.1
(f)
290290.1 294665.1
295722.3
0.3%
1.1%
0.6%
0.3%
1.5%
0.4%
17404.7
18511.2
17552.3
18032.6
18855.7
17733.4
17743.8
-8.5%
-5.2%
2.7%
-7.9%
-6.0%
0.1%
1.0%
-0.2%
-2.3%
-2.8%
-1.2%
0.5%
-1.0%
(
前年同期比)
(-7.7%)
(-9.3%)
(-7.6%)
(-4.4%)
(-6.3%)
(-5.6%)
(-4.3%)
民間企業設備
92999.9
81815.6
79183.8
77916.9
77994.8
78228.8
78932.8
85971.8
78282.3
80799.9
88773.8
78384.2
80105.8
1.6%
-12.0%
-3.2%
-1.6%
0.1%
0.3%
0.9%
-3.7%
-8.9%
3.2%
0.4%
-11.7%
2.2%
(4.4%)
(-10.3%)
(-11.5%)
(-14.8%)
(-16.3%)
(-4.2%)
(-0.5%)
-2247.4
-2229.5
-2348.8
-2000.0
-1500.0
-1500.0
-1250.0
-2090.4
-1554.9
-1054.9
-1955.4
-1843.1
-1117.4
***
***
***
***
***
***
***
***
***
***
***
***
***
(
前期比)
(
前年同期比)
民間在庫品増加
(
前期比)
(
前年同期比)
***
(-22.4%)
***
(42.5%)
***
89465.4
89796.8
90844.1
91570.9
91804.0
92017.9
92238.7
89955.5
91904.8
93426.7
89315.9
91552.5
93051.9
(
前期比)
-0.3%
0.4%
1.2%
0.8%
0.3%
0.2%
0.2%
2.8%
2.2%
1.7%
3.1%
2.5%
1.6%
(
前年同期比)
(2.5%)
(2.7%)
(2.9%)
(2.1%)
(2.6%)
(2.5%)
(1.5%)
35640.0
34791.7
36201.7
36744.7
34907.5
34383.9
33868.1
35300.6
34860.1
31034.5
35963.4
35428.1
31879.7
-5.8%
-1.2%
-11.0%
-4.0%
-1.5%
-10.0%
政府最終消費
公的固定資本形成
(
前期比)
*** (-134.1%)
2.8%
-2.4%
4.1%
1.5%
-5.0%
-1.5%
-1.5%
(
前年同期比)
(-4.4%)
(-3.4%)
(-6.4%)
(6.6%)
(-1.9%)
(-1.8%)
(-5.9%)
公的在庫品増加
-76.9
87.3
3.4
-35.3
-66.4
75.3
2.9
-7.5
-5.6
-5.6
21.7
-6.6
-5.6
***
***
-96.1%
-1138.1%
***
***
-96.1%
-105.9%
***
***
-83.8%
-130.3%
***
(-625.4%)
(-65.5%)
(-36.8%)
***
***
(-67.6%)
(1.9%)
12903.8
(
前期比)
(
前年同期比)
純輸出
9676.2
9196.0
12615.6
13081.3
13246.8
13111.0
13057.3
10183.6
13121.4
12743.6
9790.4
13024.2
(
前期比寄与度)
0.1%
-0.1%
0.7%
0.1%
0.0%
0.0%
0.0%
-0.5%
0.6%
-0.1%
-0.7%
0.6%
0.0%
(
前期比)
3.4%
-5.0%
37.2%
3.7%
1.3%
-1.0%
-0.4%
-20.0%
28.8%
-2.9%
-27.2%
33.0%
-0.9%
(
前年同期比)
(-31.2%)
(-21.9%)
(15.5%)
(41.3%)
(35.1%)
(41.4%)
(3.3%)
財貨サービス輸出
54527.6
53135.0
56552.4
57655.2
58600.7
59303.9
59897.0
55059.4
58859.5
60719.5
55710.0
58058.7
60426.3
-3.0%
-2.6%
6.4%
2.0%
1.6%
1.2%
1.0%
-8.0%
6.9%
3.2%
-6.6%
4.2%
4.1%
(-9.9%)
(-11.5%)
(-4.5%)
(2.8%)
(7.3%)
(11.7%)
(5.8%)
44851.4
43939.0
43936.8
44573.9
45353.9
46192.9
46839.6
44875.8
45738.0
47975.9
45919.5
45034.5
47522.5
-4.2%
-2.0%
0.0%
1.5%
1.8%
1.8%
1.4%
-4.7%
1.9%
4.9%
-0.6%
-1.9%
5.5%
(-3.1%)
(-8.9%)
(-8.8%)
(-4.8%)
(1.1%)
(5.2%)
(6.5%)
530049.0
523500.2
530826.9
529476.2
528018.6
528477.5
531055.6 528937.8
530284.4
(-0.6%)
(-1.2%)
(1.4%)
(-0.3%)
(-0.3%)
(0.1%)
(0.2%)
(
前期比年率)
-2.2%
-4.9%
5.7%
-1.0%
-1.1%
0.3%
0.6%
(
前年同期比)
(
前期比)
(
前年同期比)
財貨サービス輸入
(
前期比)
(
前年同期比)
国内総生産
(
前期比)
529276.6 528928.5
528520.6 531207.9
(-1.3%)
(-0.1%)
(0.5%)
(-0.6%)
(-0.4%)
(0.3%)
0.3%
(-0.6%)
(-2.4%)
(-1.6%)
(-0.4%)
(-0.6%)
(0.9%)
(-0.3%)
内需寄与度
-0.6%
-1.1%
0.7%
-0.3%
-0.3%
0.1%
0.2%
-0.8%
-0.6%
0.6%
0.1%
-1.0%
うち民間需要
-0.8%
-1.1%
0.3%
-0.6%
0.0%
0.1%
0.2%
-0.8%
-0.9%
1.0%
-0.1%
-1.3%
0.7%
うち公的需要
0.1%
-0.1%
0.5%
0.2%
-0.3%
0.0%
-0.1%
0.0%
0.3%
-0.4%
0.2%
0.3%
-0.4%
外需寄与度
0.1%
-0.1%
0.7%
0.1%
0.0%
0.0%
0.0%
-0.5%
0.6%
-0.1%
-0.7%
0.6%
0.0%
野村総合研究所
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
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16
要約
遅れる本格景気回復と構造問題の足枷
1.1-3 月期の実質 GDP は、前期比年率+5.6%と予想外
の高成長を記録した。しかしそのうち同+3.5%は在庫投資
の寄与であり、最終需要に牽引された本格景気回復への
道筋は、 依然明確には見えていない。
2. 過去の景気回復時と同様に、個人消費が景気動向全
体の鍵を握ろう。積極的な金融緩和策や企業の大幅値引
きの効果で個人消費が大きく
押し上げられる局面は既に一
巡しつつあり、 今後は所得環境が個人消費を大きく方向
付けよう。 雇用は緩やかに回復に転じつつあると見られ
るが、収益性の改善を目指す企業の労働コスト削減努力
の影響などから、 所得環境は依然厳しい。 昨年 10-12
月期以来の個人消費の緩やかな鈍化傾向は来年前半ま
で続き、 同時期に成長率は年率 +2%台前半の水準まで
緩やかに低下しよう。
3. 高い労働コスト体質に加えて、金融面でも本格景気回
復の妨げとなる構造問題が生じている。景気減速、株価
低迷、 テロ事件、エンロン問題などの影響から、 家計、
銀行、投資家がリスク回避の傾向を強めている。これが
企業の資金調達に支障を生じさせる一方で、 調達コスト
米国経済見通し要約
01年
実質GDP (前年比)
国内需要(同上*)
個人消費 (同上)
民間住宅投資 (同上)
民間設備投資 (同上)
民間在庫投資 (同上*)
政府支出 (同上)
純輸出 (同上*)
輸出 (同上)
輸入 (同上)
名目GDP(前年比)
経常収支 (十億㌦)
名目GDP比(%)
非軍人失業率(%)
消費者物価 (前年比)
1.2
1.3
3.1
1.5
-3.2
-1.2
3.6
-0.1
-4.5
-2.7
3.4
-417.4
-4.1
4.8
2.8
の上昇を招いているのが現状だ。 企業収益環境に改善
の兆候が既に見られるものの、個人消費の増勢鈍化と金
(単位:%)
02年
03年
(予)
(予)
2.5
2.5
3.1
2.7
3.1
2.1
3.5
0.2
-6.9
1.9
0.6
0.3
5.4
3.0
-0.6
-0.2
-2.6
5.6
2.0
5.3
4.1
3.7
-459.3 -478.4
-4.3
-4.3
5.9
6.3
1.8
2.0
融面での問題が、 設備投資の本格回復を遅らせよう。
4.今後の景気動向を占う上で大きな攪乱要因となるのが、
11 月の中間選挙を睨んだ財政政策、特に国防関連費の
動きである。 国防関連費の増額は短期的には景気刺激
効果を発揮する反面、既に足下で急速に進んでいる財政
悪化傾向を増幅させ、 民間経済活動の阻害要因ともな
る。 金融市場がこうした問題点を早期に織り込めば、国
防費増額は年末に向けて景気下振れ要因ともなり得る。
5. 歴史的低金利が長期化することの弊害を懸念して、当
局が年内に小幅な金融引締め策を実施する可能性は残さ
れている。しかし、賃金上昇率の顕著な低下が物価の安
定基調を持続させる中、 成長率の鈍化傾向が続くことか
ら、 本格的な金融引き締め策実施の条件は、年内には
整わない。 米国経済は依然、金融 ・財政両面からの積
(注)
国内需要、
在庫投資、純輸出は成長寄与度。
失業率は暦年平均値。
極策に強く依存した脆弱な状態にある。
(出所)
野村総合研究所アメリカ。
野村総合研究所
経済研究部
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17
外需主導の緩やかな景気回復へ
ユーロ圏経済見通し要約表
(前年比、%)
00
3.5
2.9
0.6
2.3
8.5
-55.3
実質GDP
内需(寄与度)
外需(寄与度)
HICP
失業率(%)
経常収支(10億ドル)
01
1.5
0.8
0.7
2.5
8.1
1.8
02(予)
1.0
0.2
0.8
2.5
8.4
66.0
03(予)
2.5
2.5
0.0
1.9
8.3
91.4
(注)統計誤差等のため、内外需の合計がGDP成長率と一致しない場合がある。
(出所)ユーロスタット、ECB統計。予測は野村総合研究所。
ドイツ経済見通し要約表
(前年比、%)
実質GDP
内需(寄与度)
民間消費
政府消費
総固定資本形成
在庫(寄与度)
外需(寄与度)
輸出
輸入
生計費指数
失業率(含む自営業)(%)
経常収支(10億ドル)
00
3.2
2.1
1.6
1.2
2.9
0.3
1.1
13.9
10.6
1.9
9.6
-22.3
01
0.7
-0.8
1.2
1.7
-4.5
-0.9
1.6
5.2
0.5
2.5
9.4
4.1
02(予)
0.6
-0.4
-0.2
1.1
-2.3
0.0
1.0
2.7
-0.2
1.6
9.7
27.1
03(予)
2.4
2.6
1.9
1.0
2.9
0.7
-0.2
6.6
8.3
1.7
9.6
22.4
(注)統計誤差等のため、内外需の合計がGDP成長率と一致しない場合がある。
ユーロ建てのため、マルク建ての成長率と若干異なる場合がある。
(出所)ドイツ連銀統計。予測は野村総合研究所。
実質GDP
内需(寄与度)
民間消費
政府消費
総固定資本形成
在庫(寄与度)
外需(寄与度)
輸出
輸入
CPI
失業率(ILO方式)(%)
経常収支(10億ドル)
01
1.8
1.6
2.8
2.4
2.6
-1.0
0.3
1.0
0.1
1.6
8.8
24.0
02(予)
1.5
1.4
1.6
2.2
0.7
-0.1
0.1
2.4
2.4
2.1
9.2
19.2
は、ドイツが季調済み前期比0.2%、前年同期比−0.2%、
フランスは同 0.4%、 0.3%となり、 ユーロ圏全体では各々
0.2%、0.1%となった。各国、地域とも 2001 年第4四半期
の季調済み前期比マイナス成長から脱した。 イギリスは季
調済み前期比0.0%、前年同期比1.0%の成長となり、2001
年第4四半期に続き、 季調済み前期比ゼロ成長となった。
今後は、アメリカを中心とした海外景気の拡大が予想される
ため、 各国とも外需中心の景気回復過程に入ると見られ
る。しかし、アメリカ景気の回復力はやや抑制されたものに
なると予想され、欧州各国も緩やかな景気回復過程を辿ろ
う。また、原油価格が再び上昇傾向を強めた場合には、物
価が上昇し、 回復が停滞する危険性も残る。
2.ドイツでは輸出が拡大し、第1四半期は前期比プラス成
長となった。しかし、民間消費、設備投資が季調済み前期
比マイナス成長となり、 在庫調整も続いたため、実質国内
需要は季調済み前期比 1.4%減少している。今後も外需の
伸びが緩やかになると予想され、内需を刺激する効果は限
フランス経済見通し要約表
00
4.1
4.2
2.8
2.9
8.3
0.4
-0.1
13.6
15.1
1.6
9.6
18.7
要約
1.ユーロ圏主要国の 2002 年第 1 四半期実質経済成長率
(前年比、%)
定的と見られる。 2002 年の経済成長率は実質 0.6%程度
03(予)
2.9
3.2
2.4
1.8
2.3
1.0
-0.2
6.9
8.3
1.8
9.1
17.5
にとどまろう。その後、2003 年には所得税減税が計画され
(注)統計誤差等のため、内外需の合計がGDP成長率と一致しない場合がある。
ユーロ建てのため、フラン建ての成長率と若干異なる場合がある。
(出所)INSEE、フランス中央銀行統計。予測は野村総合研究所。
ており、 消費がある程度回復し、 2.4%成長に至ると予想さ
れる。
3.フランスは民間消費が季調済み前期比実質0.2%拡大
した。ただし、雇用調整が遅れ気味に推移していることを考
慮すると、 今後消費が順調に加速していく可能性は低い。
ドイツに比べて成長率の水準は高いものの、加速感はそれ
ほど強くなく、 実質経済成長率は 2002 年が 1.5%、 2003
年は 2.9%という景気回復過程となろう。
イギリス経済見通し要約表
(前年比、%)
実質GDP
内需(寄与度)
民間消費
政府消費
総固定資本形成
在庫(寄与度)
外需(寄与度)
輸出
輸入
小売物価指数(RPIX)
失業率(%)
経常収支(10億ドル)
00
3.0
3.8
4.1
3.3
3.9
-0.3
-0.7
10.3
10.9
2.1
3.6
-25.8
01
2.2
3.0
3.9
2.7
0.1
-0.2
-0.8
1.0
2.8
2.1
3.2
-25.1
02(予)
1.2
2.6
3.0
3.4
-0.6
0.0
-1.4
-2.6
1.2
2.1
3.2
-74.0
03(予)
2.7
3.1
2.9
2.4
3.8
-0.1
-0.4
2.7
3.1
2.5
3.1
-79.8
(注)統計誤差等のため、内外需の合計がGDP成長率と一致しない場合がある。
小売物価指数(RPIX)は総合から住宅抵当金利支払い等を除いたもの。
(出所)ONS、BoE統計。予測は野村総合研究所。
野村総合研究所
4.イギリスでは消費の減速と輸出の減少が続き、景気が
停滞している。これまで堅調に推移してきたサービス産業に
循環的な減速傾向が生じている。所得の伸びが抑制され、
消費は暫くの間、緩やかに調整する動きが続こう。 一方、
製造業には回復傾向が生じると見られる。資本ストック調整
は大きく進んでおり、 海外景気が回復し、 輸出が増加に転
じれば、生産と設備投資が底を打つ可能性が考えられる。
2002 年の 1.2%成長から2003 年は 2.7%程度への景気回
復となろう。
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
願い致します。このレポートは,野村総合研究所および野村證券から直接提供するという方法でのみ配布致しております。提供されましたお客様限りでご使用ください。このレポートのいかな
る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
18
輸出主導の景気回復
1.エレクトロニクス製品をはじめとする輸出の回復に
支えられ、対外開放度の高いアジア諸国・地域の経済は
短期経済予測
2002年6月12日現在
アジアNIEs
韓 国
台 湾
香 港
シンガポール
ASEAN4
インドネシア
マレーシア
フィリピン
タ イ
中 国
合 計
(
参考)
NIEs+ASEAN4
対前年同期比でプラスの水準を回復している。外需の回
99
7.5
10.9
5.4
3.0
6.9
3.3
0.8
6.1
3.4
4.4
7.1
6.6
00
8.5
9.3
5.9
10.4
10.3
5.4
4.9
8.3
4.4
4.6
8.0
7.7
復は内需面にも好影響を及ぼしつつあり、民間消費や設
6.2
7.5
01 02(予)03(
予)
0.6
4.1
4.6
3.0
5.8
6.0
-1.9
2.9
3.1
0.2
1.3
2.7
-2.0
5.2
6.4
2.3
4.3
4.8
3.3
4.1
4.6
0.5
5.1
6.1
3.2
4.1
4.0
1.8
4.1
4.6
7.3
7.7
7.5
3.7
5.7
5.8
4.2
4.6
99
-0.2
0.8
0.2
-4.0
0.5
8.8
20.7
2.8
6.7
0.3
-1.4
0.9
00
0.9
2.3
1.3
-3.8
1.4
2.8
3.8
1.6
4.3
1.6
0.4
1.0
2.6
1.5
01
02(
予) 03(予)
1.6
1.2
1.8
4.1
3.1
3.4
-0.0
0.8
0.6
-1.6
-2.5
-0.1
1.0
-0.2
1.6
5.8
5.3
4.9
11.5
11.4
8.9
1.4
1.6
2.3
6.1
4.9
4.9
1.7
0.9
2.1
0.7
-0.5
0.7
2.0
1.2
1.9
降減速が予測されるとは言え、景気が底割れする可能性
は低いとNRIでは予測している。NIEsやASEAN4諸国にお
いては、外需主導の経済成長が2003年にかけて継続する
可能性が高いものと思量される。
2.しかし、総体的には外需が内需に波及する形での経
済成長が見られるとはいえ、各国・地域固有の構造問題
必要がある。韓国・マレーシアなどでは内・外需ともに
などが内需の抑制要因となっている。設備投資について
も産業間格差が見られ、半導体やTFT-LCDなどでは積極
的な設備投資が見込まれる一方、1999年から2000年にか
けての好況期に行った設備投資が依然余剰になっている
業種も存在する。
3.このため、アジア諸国・地域の経済については、総
体的には外需主導で比較的堅調に推移するものの、各
国・地域間で格差が見られる展開となろう。N I E s +
ASEAN4諸国の実質経済成長率については、2002年に+
4.2%(2002年3月13日時点予測 :+3.3%) と回復した
2.9
2.4
99
609
245
84
115
165
382
58
126
74
125
157
1,148
00
460
122
89
89
159
348
80
84
91
93
205
1,012
2.8
991
807
820
910
後、2003年は+4.6%(同: +4.2%) と前年並みの成長
に留まると予測する。リスク要因としては、①先進国の
01
02(
予) 03(
予)
575
629
652
86
93
91
190
213
262
120
140
127
178
183
172
245
281
289
65
89
103
73
74
67
45
55
65
62
64
53
174
167
143
994 1,077 1,083
(
注)1. 実質経済成長率の各国のウエイトは 99年GDPを米ドルで換算。
2. 公式統計及び、野村総合研究所の予測。
野村総合研究所
済については、対前期比ペースでは2002年第2四半期以
堅調な推移が予想される一方、香港や台湾では高失業率
経常収支(
億米ドル)
アジアNIEs
韓 国
台 湾
香 港
シンガポール
ASEAN4
インドネシア
マレーシア
フィリピン
タ イ
中 国
合 計
(
参考)
NIEs+ASEAN4
備投資にも回復傾向が見られる。外需の鍵を握る米国経
を受け、景気の力強さには格差が見られる点に留意する
1.1
消費者物価上昇率(
%)
アジアNIEs
韓 国
台 湾
香 港
シンガポール
ASEAN4
インドネシア
マレーシア
フィリピン
タ イ
中 国
合 計
(
参考)
NIEs+ASEAN4
力強く推移している。殆どの国・地域において輸出額は
実質経済成長率(%)
940
景気やエレクトロニクス製品の市況、原油価格の動向と
いった外部要因、②台湾の不良債権問題や高失業率、香
港の不動産価格の動向といった各国・地域特有の内需抑
制要因、③フィリピン・インドネシア等でのエル・ニー
ニョ現象による農村部への悪影響、などが考えられる。
4.中国については、好調な輸出や建設投資の増加を受
け、2002年の実質経済成長率は7.7%と比較的高い水準
に達し、その後2 0 0 3 年にかけてやや減速すると予測す
る。注目点としては、物価の下落傾向や各種の改革の進
展といった経済面の動きに加え、2 0 0 2 年秋の党大会や
2003年春の全人代を控え、政治動向、特に指導部人事が
経済政策に与える影響 が指摘される。
経済研究部
このレポートは,投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので,投資勧誘を目的として作成したものではありません。銘柄の選択,投資の最終決定は,ご自身の判断でなさるようにお
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る部分も一切の権利は野村総合研究所および野村證券に帰属しており,電子的または機械的な方法を問わず,いかなる目的であれ,無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。
19
要約
注目されるドル不安説の当否
1.新年度のドル相場は対主要通貨で軒並み弱含み、全面
安の様相を呈している。 ①米国経常収支赤字の拡大懸念、
②歴史的なドル高の修正圧力、③米国株式市場の不安定化
四半期見通しの主要為替変動レンジ想定
がドル不安説の主要な論拠となっている。 ただし、 過去の経
験則によれば米国の経常赤字の拡大期にドルは強いことが
多く、歴史的なドル高は対円ではなく対ユーロで生じている。
ドル円相場
既往のドル高期における対米株式投資の主役が欧州投資家
(ドル/円)
150
であったことを勘案すると、 ドル不安説は対円ではなく、 対
ユーロに当てはまる。
安値
高値
平均
期末
145
140
135
2. 景気回復の黎明期にある日本にとって、 過剰な円高は
追加的デフレ要因であり、 経済成長抑制要因でもある。 日
130
本通貨当局は円高阻止のための為替介入に踏み切っており、
125
投機主導の円高圧力は今後抑制されよう。日本を取り巻く国
120
際資本移動の動向をみると、 循環的な日本買い圧力以上に
115
構造的な資本流出圧力の存在が大きく、基礎的な需給環境
110
は、円安気味に推移している。本邦の厳しい財政事情が円
105
建て国債の信用力低下を招いていることや、 日米金融政策
の方向性の相違などからみて、今後再び円の先安感が台頭
100
1Q
3Q
1Q
3Q
1Q
00年
99年
3Q
1Q
01年
3Q
1Q
02年
してくると考えられる。
3.足下のユーロドル相場の上昇については、投機主導の
色彩が強いことは否めず、 今後短期的にはポジション調整
ユーロドル相場
によるユーロ反落の可能性もある。しかし、ユーロ圏の基礎
(ユーロ/ドル)
1.20
収支からみた需給環境は徐々に好転し始めており、 既往の
ユーロ安の一因となっていたユーロ圏のインフレ率の高進も
安値
高値
平均
期末
1.15
1.10
収束に向かいつつある。 ドル安懸念が対ユーロで払拭し切
れないことも考慮すると、 今後ユーロ相場の安定感が増して
くる可能性が高い。
1.05
1.00
4.上記の諸点を勘案し、 ドル円相場については、2002 年
0.95
下期の変動レンジを1㌦= 122.5 ∼ 137.5 円、 2003 年上期
0.90
を同 125 円∼ 140 円と想定、現状に比べて今後円安が進む
可能性を高くみている。一方、ユーロドル相場については、
0.85
2002 年下期から2003年上期にかけての変動レンジを1ユー
0.80
1Q
3Q
99年
1Q
3Q
00年
1Q
3Q
01年
1Q
3Q
1Q
02年
(注)
6月10日時点。2003年3Q以降は予測を行わず、
最終値の横ばいを
前提扱いとしている。
(出所)
野村総合研究所
ロ= 0.895 ∼ 0.995 ㌦と想定、現状程度の水準を中心とした
ボックス圏での安定的推移を見込んでいる。 2003 年後半以
降に関しては、ドル円相場、ユーロドル相場ともに、経済見
通しへの中立性を重視する立場から、 現時点の予測値を延
長した前提扱いとした。
野村総合研究所
経済研究部
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20
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