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(平成26年11月13日刊行)に「手術部における麻薬・筋
(1196)9 薬事新報 No 2863(2014) 登 手術部における麻薬 。筋弛緩 薬の薬剤師注射オーダ入力 支援による医療安全向上への取 り組みと評価 大分大学医学部附属病院薬剤部 佐 藤 雄 己 ,後 藤 伴 美 ,伊 東 弘樹 設はまだ少ないのが現状である。大分大学医学部 要旨 勤務医の不足や偏在が社会問題 となる中,そ の 対策 として医療 ス タッフの協働・ 連携によるチ ー ム医療の推進が打ち出され,薬 剤 Frに は薬剤 の専 門家 として,主 体的に薬物療法に参加することが 求め られている。大分大学医学部附属病院薬剤部 附属病院 (以 下,当 院)で は,従 来か ら病棟 と兼 任 で薬剤 n市 1名 が午前中に手術部に常駐 し,麻 酔 科医へ の麻薬の受け渡 し,返 品処理などを実施 し ていた。 さらに,麻 薬 筋弛緩薬の処方入力 は麻 酔科医 1名 で行 ってお り,麻 酔科医の精神的負担 になっていた。また,マ ンパ ワー不足か ら処方入 では,医 師の業務負担 の軽減,医 療安全の向上に 取 り組 んでお り,2012年 6月 か ら手術部において 力時のダブルチ ェックが 不十分 とな り,入 力間違 いや処方忘れなども散見されていた。 麻酔科医の責任 の もと,手 術で使用予定の麻薬 筋弛織薬に関 し,薬 剤師によるオー ダ入力支援業 2010年 4月 30日 に発出された厚生労働省医政局 , 務を開始 した。入力支援の開始により,麻 酔科医 の業務量軽減 だけでな く,処 方間違 いや処方漏れ の減少など,リ ス ク減少 も可能 となった。今後は 薬剤師の手術部へ の常駐化を実施 し,医 師の業務 , 負担軽減だけでな く,手 術部で使用する医薬品全 般 の安全管理 を進めてい く必要があると考えられ る。 長通知において,医 療 の推進 と医師の業務負担軽 減を図るために,現 行法下で薬剤師が実践で きる 業務 として示 された 9項 目の 中の 1つ に,「 薬剤 の種類 投与量 投与方法等 の変更や ,検 査オー ダについて,事 前に作成 合意 されたプ ロ トコル に基づ き,医 師 と協働 して実施することJが 示 さ れている。 と りわけ,厳 重な取 り扱 いが必要とさ れる麻薬 筋弛緩薬の管理においては,薬 剤1市 の 関与が必要 と考え,手 術部で使用する麻薬・ 筋弛 緩薬 の薬斉1師 による注射オーダ入力支援を2012年 は じめ に 手術部では,麻 薬,筋 弛緩薬,向 精神薬及び麻 酔薬などのハ イリスク薬が多用 され,法 に則 った 6月 より開始 した。今回,そ の運用方法を紹介す るとともに,麻 酔科医ltTを 対象 としたアンケー ト 厳重な管理 とともに,不 正使用の防止, コス ト管 理など,様 々な観点から医薬品管理 の徹底が求め 〕° られて い る 。 さらに,麻 酔科医不足が深亥J化 調査を実施 し,入 力支援の評価を行 ったので報告 す る。 する中,手 術部の運営効率 が必要不可欠である。 近年,手 術部におけるサテライ トフアーマ シーの 病 院概 要 設置や医薬品管理体制の改善に薬剤 FTが 関与する ことで,手 術室業務の効率化に寄与 してい ること が報告 されている3い 。また,医 薬品の盗難や紛失 (平 成25年 度実績) , 不正使用 の防止などの医薬品適正 使用 の推進及び 麻酔科医や看護師の業務負担 の軽減にも貢献 して い ると言われている9° 。 しか しなが ら,手 術部 にお ける薬剤関連業務に薬剤師が関わっている施 病床数 :6“床 ,手 術室 :11室 平均在院日数 :168日 ,病 床稼働率 手術件数 i3.61群 ト :812% 薬 剤 師 に よ る 麻 薬・ 筋 弛 緩 薬 の 注 射 オ ー ダ入 力 支 援 に つ い て 薬剤 1市 による麻薬 筋弛緩薬の注射オー ダ人カ 薬事新報 N02863("14) 10(1197) ′/y∼ _.・ ″ ク″●″ 1レ‐ ■ つ 11ヾ ■゛ FY ),t `ヽ 図 1 麻酔科医による処方入力の指示 担当麻酔科医は麻薬・ 筋弛緩薬の処方量 を麻酔準備表 へ記入する。 表 1 注射オーダ入力支援開始による薬剤師の業務量 ①薬剤師注射オーダ実施件数〈 1日 平均) 麻菜 筋弛級薬 合 ll 200± 32 117± :2 017■ 42 平均±■■rl差 (■ /日 ) ②薬剤師注射オーダ業務に要する時間ll日 平均) 注射オーダ入力にかかる時間 249± 82 注射オーダ監査にかかる時間 132 ■ 23 注射オーダ入力注射箋のスキャン確認にかかる時間 109士 ,0 合計 490= 8o 平均 〈 調査期間 2012年 7月 ∼2013年 6月 ) =凛 率薇理 (分 /曰 ) 緩薬の処方量を「麻酔準備 表」へ記入する (図 1)。 2)薬 剤師は電子カルテ に薬 剤 師 のDで ロ グ イ ン 後,指 示を出した担当麻酔 科医名で入力 (押 印 )。 人 力時に処方薬及び処方量 を チェツク し,必 要時に指示 医へ確認する (図 2)。 3)入 力 した薬剤 師とは 別の薬斉J師 が入力監査を行 う (押 印)。 4)麻 薬注射箋 に従い . 支援 を開始 す るに当た り,法 的 な実施の ■否 を確 lll薬 認 した。2007年 12月 発 出の厚生労働省仄政局長ll l 部麻薬金庫室に持 参する。 知では,医 師が最終的 に確認 し署名す るこ とを条 件 に,医 師事務作業補 1/J者 が処 方せ んの代行入力 をす るこ とが認め られてい るが ,麻 薬 の処方入力 支援 は全 国で もほ とん ど例が ない ため,大 分県医 療政策課 に確 認 した。 そ の結果 ,法 的 に円l題 は な い との見解 を得 たため ,薬 剤 師注射 オー ダ入力 に 関す る詳湘1な プ ロ トコル を作成 し,医 薬 品の安全 使用 のための業務手順 普へ の記載 と,院 内 の「安 及び伝票 ,薬 袋を個人 ごとにセットし,手 術 5)担 当麻酔科医は麻薬注射箋を受け取 り,忠 者氏名,処 方内容を確認する (事 ,印 )。 6)ll当 麻酔科医と薬剤 lTは ダブルチェックを しなが ら麻薬の受け渡 しを行 う。 7)① 指示出し (医 師),② 処方人力承認 (医 師), ③処方 入力 (業 剤 mI),① 処方入力確認 (薬 剤師) を担当 した者 の印鑑力¶ lさ れた麻薬注射箋を,電 子 カルテ Lに 医療文書 として取 り込み,再 度確認 全管理部運営会議 J,「 メデ ィカル リス クマ ネツ メン ト委員 会」及 び「診療記録 委員会Jで 承認 を を行う 得 た。 薬 剤 師 に よ る注 射 オ ー ダ 開 始 に よ る 業 務 量 薬 剤 師 に よ る注 射 オ ー ダ入 力 支 援 手 順 2012年 7月 ∼2013年 6月 における 1日 当た りの 薬剤師による注射オー ダの対象薬は,手 術部で 使用する麻薬 2品 日 (フ ェンタニル注, レミフェ ンタエ ル注),筋 弛緩薬 3品 日 (ロ クロニ ウム注 ベ ク ロニ ウム注,ス キサメ トユ ウム注 )と した。 , 麻薬 筋地緩薬の入力支援及び取 り扱 い業務の手 順を以下のとお りとした。 1)手 術前 日の朝,担 当麻酔科医は麻薬 (図 2)。 筋弛 平均処方件数は,麻 薬,筋 JL緩 薬 を合わせて317 ±42件 で あった。 また,薬 剤師の入力支援 業務 に要する時間は,処 方人力が249± &2分 ,入 力監 企が132± 23分 ,注 射せんのスキャン及び確認が 109± 16分 で,合 計490=80分 であった (表 1)。 麻 薬注射 箋 筋弛緩薬注射箋 麻薬注射露 "1447" ★ 管理 …,口 大 0所 1-1 」 殴 』 女 ∞ k8 開 発 用 ★ 人分● 義口町 0ツ 01 10月 17自 分 E“ 46● 1"01日 三年月日 “ 院) "b11""。 "澤 ■筆 饉 S臓 東読練 (00 姜 ●ll● 人 ●●モ = mIII13 “ 臓名 (入 月) (■ NEC g師 `鰤 ■ シ月 "B E大 ケ丘 =薔 ⑭ 号 ∝n":││ “ 彗力 腱 ■●趣 1嗜 壼 IIEC E● "'時 ":2 1● ■カ ロ興 “ 20,210:7:7110 蝉 1冨 醸発用★ 卜回1女 ・ │・ RD I drHli r,tt.,!itJ J tFt6r 10月 :'ロ ● l '日 ●■ '' ,t('イ 勁 │: `R'● 'レ 0● ‐ ●● 〉 輝 ″ │■ … … 「 "Til・ 冒 lIデ ・ 'J 17 13:D 剋,│口 " 0,,■ 口か o “ 鴇 D■ 1 『 雲二 │ リ ント :III:│:1 1:: :● ル,│■ 2層 ih印 1■ ●31 0 ●ll(′ `" ¨︱ ¨ :11腱 ⅢII‖ 1自 旧HIⅢ 田馴 :31ア 健 ホ彎当素 Z988 ^ 8●︶ 1 “ =■ … :酬 圏:111‖ 旧‖ ‖‖‖‖I“ :僣 gl ●●■‐ 懺椰■ フ "苺 ● 〕,● ン,=,セ inl`J`ャ ンヽル,= │ 壺■ ■ 夫 ●Ⅲ 0 目 11時 13分 彙 :急 νl 入院注 射薬処方箋 "闊 │ │ 10月 17日 (水 ) 胸訪静Ч llbi● ¬ 槻 示 出し 処方入 力承諄 処方入 力 処方入力Ⅲ暉 印 印 印 印 ●●メン `: 0● ●凛 ││ ll示 出 し 処 力承認 処 方 必功 処方入力■認 印 Fロ │■ ■│ "入 Fロ 取 図 2 薬剤師がオータした注射箋の電子カルテヘの取 り込み ①指示出 し,② 処方入力承認,③処方入力,① 処方入力確認,の 欄に押印された注射箋を電子カルテ上に医療文書として取 り込むことで処方入力支援のla録 とする。 り込み後,再 度確IBを 行う。 ^ ︼︻ 0∞︶ユニ 匡 「 12(11") 薬事新報 2 表 N。 2863(21114) 薬剤師注射オーダ入力支援開始前・ 後における手術部 における 麻葉 筋弛緩葉に関連 した問い合わせ インシデ ン ト件数の比較 開始前 3名 であ り,当 院での勤続 年 数 は,11∼ 15年 が 2名 16∼ 20年 が 2名 ,無 回答 が 1名 であった。 開始後 (節 12年 ,月 ∼オ 13年 3月 ) 麻案 筋強饉薬処方に関す る問い合わせ件戦※ , (内 訳) 処方瀾れ 処方向違い 処方■について 2 麻築 妨弛級来の処方に関 連したインシデント件数 "師 3 0 1 ※薬剤節―医師,医 師―姜 表 アンケー ト調査結果 手術部の麻酔科医師へ の アンケー ト調査の結果,薬 への総間い合わせ件数 剤 師 による入力支援 開始 後,業 務負担が軽減 したと 薬剤師による注射オータ入力支援に関するアンケー ト結果 単位 :人 質問内容 1 また,開 始後回答者の年齢 は30歳 代が 2名 ,40歳 代が 単位 :件 (2011年 ,月 ∼ m12菊 月〕 後いずれも1∞ %で あった。 は tヽ t` どちらとも tヽ えな0ヽ いえ 薬剤師による注射オーダ開始後、業 務軽減したと感じますか ? 5 0 0 菓剤師による注射オーダにより、処 方忘れや処方間違いが減少し、リス ク軽減につながると思いますか? 5 0 0 「はい」の場合、その理 由 薬 に関 わ る平均時 間 は,開 始前の50分 か ら20分 へ と半 分以下 に軽減 された (図 3)。 次 に, リス ク軽 減 につ なが 麻酔科離 薬剤師によるダブル チエックが 可能になった しチェックでリスク軽減になつて ダブ′ いると思う。 1年 間での処方ミスが皆無であった。 2 全 員 が 回答 した (表 3)。 また,麻 酔科 医が 1日 に麻 薬 剤 師 に よ る注 射 オ ー ダ 入 力 支 援 開 始 前 後 に お け る イ ン シデ ン ト発 生 件 数 等 の 比 較 薬剤師による注射オー ダ入力支援開始前後にお るかと,い う問いには,全 員が「はい」 と答え,そ の 理由として「ダブルチェッ クが可能になったJ,「 明ら かな入力 間違 い 処方忘れが減った」など,負 担 軽減 だけで な く リスク軽減に関する評価が得 ら , , れた (表 3)。 考察 ける手術部の麻 薬 筋弛緩薬に関連 した Irlい 合わ せ イ ンシデン ト件数を比1交 した。その結果,薬 薬剤 llに よる麻 薬 筋地緩薬注射 オー ダ入 力文 援 のり ‖始 に よ り,従 来 は麻酔科 医に よって行 われ 剤部か ら医ll,あ るいは医師から薬剤部へ の麻薬 て い た業 務 を薬剤 師 に移 行 す る こ とが 可 能 とな 筋弛緩薬に関するPIlい 合わせ件数は,開 始前の 6 り,開 始 後,医 師の業務 量 が 減少 した。 さ らに 件に対 し,開 始後 1件 に減少 していた。lNlに ,開 始後の処方漏れ,処 方間違 い に関する薬剤部から の 8い 合わせはなかった。 さらに,麻 薬 筋弛緩 ア ンケー ト調査の結果 よ り,医 miの 精神 的負担 の 軽減 を図 るこ とがで きた こ とか ら,薬 剤 師 に よる 注射 オー ダ入力支援 は医 師 の業務軽 減 に寄与 した 薬に関連 したインシデント件数も開始後では発生 と考 え られ る。 F・ しなかった 一 方 ,医 llか らは,特 に薬剤 師 との ダブルチ ェ ッ (表 2)。 薬 剤 師 注 射 オ ー ダ 入 力 支 援 に 関 す る麻 酔 科 医 へ の ア ン ケ ー ト調 査 1 , アンケー ト調査対象 調査対象を,手 術部勤務の麻酔科医 クに よる安 全性 向上 を評価 す る声 が 多 く聞 か れ た。 入力支援 を行 う ことに よ り,入 力 間違 いや処 方漏 れに よる薬剤部 へ の 変更fFN頼 が 減少 して い た こ とか ら, リス ク軽 減 の 観点 か らも,入 力支援 の (jfl始 前 6 ォ_ 名,開 始後 5名 )と した。薬剤 PTに ダ入力支援に関するア ンケー トの回1又 率は lll始 前 よる注r/1薬 /JJ果 を認めた。 この理 由 と して ,麻 酔準備表 に必 要 な薬剤 の記入が ない場 合 ,あ るい は手術 の予 定 が変更 になった際 も,薬 剤師か ら医師 に確認 をす 藁事新報 No田 63(2014) (lmO)13 開始前 ごごyゞごご∫ ♂ ゛ ゛ ゛ ゛ ゛ ′ ´ ´ ″ ″ ″ ざ ` ポ ゛ さ ゛ '仝 図3 時間 (分 /日 薬露師注射オーダ入力支援開始前・ 後の業務時間について るなど,指 示の段階でチェックできるようになっ たため,入 力段階での処方 Fll違 いや処方漏れが減 少 したと考 えられる。 また,薬 斉1師 の業務量 の点 においては,入 力支援業務時Fllと して 1日 約40分 程度要するが,オ ー ダ後の処方変更はそのための 処理に少なか らず時 lを 要するため,業 務の効率 化 とい う点からも葉剤師が関与するメリッ トは大 F・ きい と考え られる。 入力支援以外にも,手 術部において薬斉1師 にlUl 待する業務 として,医 師からは,手 術部へ薬剤師 が常駐 し,麻 薬 ,筋 弛緩薬以外の薬剤 の準4il,使 用薬剤管l■ ,使 用薬剤の投与量・投与方法のチェッ ク,使 用薬剤 の適切な混合開製.な どが挙げられ た。今後 は,薬 剤師の手術部への常駐化を実施 し , 医師の業務負担軽減だけでな く,手 術部で使用す る医薬品全般 の安全管理 も71tめ てい く必要がある と考えられる。 ) 引用文献 1)上 高悦子 ,手 術部 におけ る医薬 品の適正 使用 及 び 管理― 手 術部サ テ ライ トフ ァーマ シーー ,薬 事新 判t,2244, 9∼ 12(2112) 2)柳 田格子,浜 田慎 二 ほか,手 術室における薬品管理 医薬 ジヤーナ ル.38,2835∼ お39(200' 3)大 西■文,lll々 垣知行ほか,手 綱f室 サテライトファー , マ シー におけ る薬剤 師業務 手術室 で の麻 薬管理 方法 の 推立,日 本病 院薬 剤 師会雑誌 ,44,16∞ ∼ 1653 (2008) 4)柴 田ゆ うか,畝 丼 浩子 はか,手 術室専 任薬 剤師 配 置 に よる関連機種 の業務量変化 と経 済効 果 , 日本 病 院莱剤 ll会 雑誌 ,43,923∼ 926(2007) 5)奥 田真 弘,手 術室サ テ ライ トフ ァーマ シー にお け る薬剤 業務 の 展開 専任薬 剤 11に よる医薬 品安全 管理の向上,医 療薬学 ,34,ll13∼ l119(2008) 6)岡 本禎晃 ,日 和興子はか,手 術室サテ ライ トフ ァー マ シー にお ける薬品管理 の実際 ,日 本手 術医学 会 社 23.2"∼ 261(2002)