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キャンプスタッ フ体験で高められる看護学生の自己肯定感
42 聖路加看護大学紀要 No . 372011 . 3 . 短 報 キャンプスタッフ体験で高められる看護学生の自己肯定感 一健康管理の視点から,その要因を探 る一 中山 久子1) 菊田 文夫2) 吉越 聖子3) De ve l opme ntofNuf S l ng St ude nt s 'Se l f A用∫ ma t i on t houg h Part i c i pa t i on a saCa mp St a f Me mbe ri n aWor ks t udyPr ogr a m Hi s a koNAKAYAMA,RN,PHN,MAT ) Fm i oKI KUTA,PhD2) s e i k oYOS HI GOE,RN,PHN3 ) 〔 Abs t r act 〕 Thi spa pe re xa nh e show nur s 叫gS t ude nt sbui l tup t he i rs e l f a 組r ma don t hr ough pa r dc I Pa don i n a wor ks t udypr ogr a m・La c kofs e l f a f f l f ma doni sc ommon t oma nynur s mgs t ude nt s ,e s pe c i a nyt hos ewho ha veme nt l orphys a i c l pr a obl e ms II nor de rt ode ve l opnur s mgs t ude nt s 's e l f a f f m a dont hr oug h a c dve l e a r r -g ,"St .Luke ' sCa mp"f orpa r e nt sa ndc l 山dr e nwa ss t a r t e di n 20 0 4,whe r enur s mgs t ude nt swor k ough t her e por [ Swr i t t e n byt henur s 叫g a J l ds t udya ss t af me mbe r sa nd pl a yanl m po池 ntr ol e・Thr s t ude nt si n t hepr ogr a m,l tWa sf ou mdt ha te xpe de nc e swhi c h he l pt he m f e e lt ha tt he ya r e" ape r s on ofi mpor t nc a e "or" ape r s onofva lue ",a r el m por t a ntf ort he i rs e l f a f r m t i on,a ndt ha tt hi swor ks t udy pr ogr a m of f e r e dt he m muc hne e de d opportuni de st oi nc r e a s et he i rs e l f a 組r ma don・ 〔 Keywor ds〕 〔 要 nu r s i ng s t u de nt ,work-st ud ypr o g r a m,c a mp,s e l f a f B L i o m n,he lt a hm- g e me nt 旨〕 」「自己肯定感に乏 し こころやか らだの健康問題 を抱 えている看護学生たちが共通 して持つ 「自信がない い」 とい う感覚 を変 えてい くためには, 自己を見つめ,仲間 とともに自己肯定感 を高めることがで きる何 らかの体験が必要であると考 えられる。そこで,本稿では,本学学生の 自己肯定感向上 に寄与 していると 思われる 「 聖路加 キャンプ」の実践記録か ら, 自己肯定感 を高めることがで きる体験の抽出を試みた。そ の結果, 自己肯定感 を高めるためには,キャンプスタッフとして参加する学生 自身が,先輩や後輩,ある ,「自分は大切 な存在である」 こと,「自分は価値ある人間である」 ことを実 いは参加者 との関わ りの中で 感する体験が不可欠であることがわかった。 したがって, 日常的に学生同士が,お互いを大切な存在 とし て認め合 う場 を構築することが 自己肯定感の向上 にとって不可欠であると考える。 〔 キーワーズ〕 看護学生,体験学習,キャンプ,自己肯定感,健康管理 1 )聖路加看護大学 健康管理室 保健師 s L Lu k e ■ sCo 皿 e g eo fNu f S mg ,S c h o o lNu r s e 2 )聖路加看護大学 健康教育学 准教授 s t . Lu k e l sco 皿 e g eo fNu r s mg ,He a l h E t d u c a d o n 3 )東洋英和女学院 小学部 非常勤養護教諭 To y oEi waP 血a r yS c h o o l ,S c h o o lNu r s e 2 01 0 年1 1 月1 1日 受理 中山他 :キャンプスタッフ体験で高められる看護学生の自己肯定感一健康管理の視点から,その要因を探る- 4 3 Ⅰ.はじめに 日の 「 いのちと自然 と自分を感 じる長期子 どもキャンプ」 を山梨県北杜市清里で開催 した。これ らのキャンプでは, 看護学生 には看護専門職 を目指す者 として,健康 に関 人間としての成長」 「 いのち」「こころとか らだの健康」「 する知識 とそれを育み見 まもる技術 を身につけること, の素晴 らしさや大切 さを効果的に伝 えるための方策 とし さらに人間を対象 とする援助者 として人間を総合的に見 て,毎回,キャンプで伝 えたい大切 なことを具体的に決 る眼 と人間性 を重視 した判断力が要求 される。 これ らの めた上で,自然豊かな環境 を十二分 に活用 した魅力的な 能力は,看護専 門科 目や臨地実習で主体的に学ぶこと, 体験活動 ( 以下,アクティビティと表記する) を含むプ 加 えて在学中に体験する様々な出来事 を通 して自己理解 ログラムづ くりと,世代 間交流 を含む生活体験の場 をつ を深め,自己を成長 させてい くことによって,獲得 され くりあげる試みを継続 して行ってきた。 るもの と考えられる。 著者 ( 中山)は本学健康管理室で専任保健師 として, 参加者 については,原則 として,東京都 中央区内の小 学校 に在籍する児童ならびにその家族 を対象 としてお り, 看護学生の心身の健康保持増進 を目指 した活動 を進めて 対象 となる児童が在籍する小学校 に募集要項の配布 を依 いる。 その一環 として,入学時 に希望者 に行 っている 頼 して,個別 に参加 申込 を受け付 けている。 これまでに TAOK テス ト,すなわち人格 を 「自我状態」 と 「 対人 20家族,高 実践 した親子キャンプへの参加者 は,延べ 1 態度」 という 2つの面か ら総合的にとらえることがで き 校生以下の子 どもが延べ 194名,その保護者が延べ 183 る検査の結果 をみると,近年の傾向 として半数近い新入 名, また,長期子 どもキャンプでは 36名の児童 を迎え 生が 「自己肯定感」に乏 しいことが明 らか となっている。 ている。 これは, 日常的に行われる学生たちへの応急処置や健康 なお,これ らのキャンプの運営 については,主宰者で 相談 とい う関わ りを通 して 日々感 じている学生たちの自 ある著者 ( 菊田) と宿泊施設に所属する自然体験活動指 己肯定感の乏 しきを支持する結果である。そこで,ここ 導者 に加 えて,キャンプスタッフとしての参加 を希望す ろやか らだの健康問題 を抱 えている看護学生たちが共通 る本学学部生 に援助 をお願い している。 これまでに実践 して持つ 「自信がない」「自己肯定感 に乏 しい」 とい う したキャンプにキャンプスタッフとして参加 した学部学 感覚 を変 えてい く体験,すなわち,それを通 して 自己を 生 は,親子キャンプ 29名,延べ 78名,長期子 どもキャ 見つめ,仲間 とともに価値ある出来事 ととらえなおす こ ンプ 15名,延べ 1 9名である。 とによって自己肯定感 を高める体験 とはいったい どのよ うなものなのか,について探 ってい きたい。 本稿の第 Ⅱ章で,学生の自己肯定感向上 に寄与 してい 2.聖路加キャンプで伝 えたい大切 なこと 聖路加 キャンプのプログラムづ くりにあたっては,自 ると考えられる 「 聖路加キャンプ」の取 り組みについて, 分では予測がで きない有 限な 「いのち」,生 きかたを伝 主宰者 ( 菊田)か ら概要 を紹介する。第 Ⅲ章では,過去 える 「 健康教育」,そ して,生涯学び続 ける人間 として にキャンプスタッフとして参加 した卒業生 ( 吉越)によ の 「 成長」 をキーワー ドとして,季節やフィール ドの特 る「 聖路加 キャンプ」の振 り返 りによる気づ き, を紹介 徴 を考慮 しなが ら,具体的に伝 えたい大切 なことをキャ する。 聖路加 キャンプ」が学生たちにど それ らをもとに,「 ンプスタッフ全月で決定 し,それに沿った魅力的なアク ティビティを計画 している。これまで実践 した聖路加キャ のような影響 をもた らしていると考えられるのか,さら ンプに共通する,伝 えたい大切なことは次の 5点である。 にプログラムの中で何が育 まれ,結果 として看護学生の ① 自分 を支えて くれるあ らゆる 「 いのち」 と自分 自身の 自己肯定感向上 に寄与 した要素 とは何であるのかについ 「いのち」への感動 と感謝の気持 ちを育む横会 を提供 て,健康管理の視点か ら考察 したい。 すること。 ②乳幼児か ら高齢者 まで一人ひとりを,そ して一人ひと Ⅰ.学部学生 とつ くりあげている聖路加キャンプ について 1.聖路加キャンプの概要 りの生 きかたや価値観 を尊重する雰囲気,例 えば 「 い ろいろな人がいていい,いろいろな人がいるか ら楽 し い」 とい う雰囲気 を醸成 してい くこと。 ( 参人間の成長 には見 まもりが必要である0時 に勉学以外 聖路加看護大学健康教育学研究室が主催する 「 親子キャ で大人 との関わ りが希薄にな りがちな現代の子 どもた ンプ」 は,2004年 1 1月 に開催 した 「 牛飼い体験 と秋 を ちの,こころとか らだのバランスのよい成長 を支援す n清里」以来,山梨県北杜市清里, 感 じる親子キャンプ i るためには,彼 らの自主性 を尊重 し,さまざまな生活 山梨県北都留郡小菅村,および静岡県伊東市宇佐美をフィー 体験や冒険体験の場 を丁寧に見 まもることが必要であ ル ドに,現在 までに 23回を重 ねている。 また,その間 る。さらに,保護者やキャンプス タッフ自身 も, とも の 2005年 ,2006年,お よび 2007年の 8月には,1 0泊 11 に成長 してい く場 として大切 に考えること。 〟 聖路加看護大学紀要 No. 372011 . 3 . ④ ポジティブフィー ドバ ックによる自己肯定感の向上が 期待で きる場,意思決定力 を育む場 として,このキャ 居場所 について不安 を抱 くことがないように気 を向け る。 ンプを位置づけ,失敗か ら学ぶ体験学習 と自らの意思 ( 9参加者 とともにアクティビティや生活体験 を楽 しみな で行 う冒険や挑戦の意義 を貴重な機会 と捉 えること。 が ら,活動の 目指す方向を自らの行動で参加者 に伝 え ⑤ キャンプに集 うすべての人々 と感動 を共有する機会 を る。 設けること。そのために,参加者 には,キャンプ期 間 ( むキャンプをスケジュール どお りに実践することに固執 Pod,ゲー 中の電子機器 ( 携帯電話, コンピュータ,i せず,参加者の体調や天候 に応 じて臨機応変に対応す ム横器など)の使用を特別の事情がない限り,遠慮願っ る。 ている。 ⑦ キャンプスタッフ同士が,お互いを大切 に想 う気持ち を忘れずに,気づいたことは遠慮 な く話 し合える雰囲 3.キャンプスタッフとしての学部学生の役割 キャンプスタッフの学部学生 には,自らの意志でキャ ンプス タッフを希望 したことに敬意 を表するとともに, 気 を醸成 してい く。 さらに,キャンプ期間中は,仲間 のキャンプスタッフの動 きに気 を向けなが ら,いま, 自分がなすべ きことは何かを考え,自主的に実践する。 自分 らしく自由に,情熱を持 ってキャンプに取 り組むこ ( 砂キャンプの客観的資料 として,アクティビティ,生活 とがで きるよう,教員の立場か ら最大限の支援 を約束 し 体験の場面でみ られる親子のかかわ りや世代 間交流の ている。聖路加キャンプの実践 を重ねてきた成果 として, 様子,大人や子 どもの表情,参加者 とキャンプスタッ 先輩のリーダーシップのもと,キャンプの開催時期から, フとの交流の様子などを写真 によって記録する。 これ 伝 えたい大切なこと,プログラムづ くり, リスクマネジ らは,キャンプ最終 日に上映 されるスライ ドシ ョーの メン トまで, 自主的にキャンプス タッフミーティングを 素材 として活かされるとともに,キャンプスタッフミー 持 ちなが ら,キャンプスタッフの総意 として決定する, ティングの際に,アクティビティの効果 を検証する根 いわば,皆でキャンプをつ くりあげる雰囲気 とシステム 拠 とな りうるものである。 が確立されている。さらに,キャンプの実践に際 しても, 事前準備 を含めて,ほぼすべてのアクティビティを学部 学生が 自らの希望で担当する体制が整 っている。聖路加 ( 9キャンプスタッフとしての振 り返 りを参加者 に伝 える ために,キャンプ期間中に撮影 した写真 をまとめたス ライ ドシ ョーを作成 し,最終 日に上映する。 キャンプの実践 を重ねてきた過程で明確 になった,キャ ⑲事前のスタッフ トレーニ ングやスタッフミーティング ンプスタッフとしての学部学生が担 っている重要な役割 の場で, リスクマネジメン トに関する情報 と安全管理 は,次の 10点である。 の方策について議論 し,その結果を共有する。さらに, G) 伝えたい大切なことを楽 しく正確 に伝 えるス トーリー づ くり 開催時期 ( 季節)や フィール ドの特徴 を活か して計 画 される複数のアクティビティの内容 と,その順序 に キャンプ期 間中,毎夜行 われるスタッフミーティング で,当 日の安全管理 に関する振 り返 りを行い,翌 日以 降の実践 に活か してい く。 以上,述べてきた聖路加 キャンプにキャンプス タッフ ス トー リー性 を持たせる工夫 を,創造性豊かにつ くり として参加する学部学生の集団には,経験豊かな先輩が あげる。また,アクティビティを通 して 「 いのち」や 後輩を,キャンプスタッフとして自分 らしく活躍できる 「 健康」 に関する情報や知識 を伝 える必要のある場合 ように温か く見 まもり支援する一方,後輩 は自らのロー には,科学的な根拠 に基づいて内容の吟味を行 う。 ルモデルとして先輩に憧れ,先輩か ら学ぶ機会 をとても ( 参キャンプ期 間中は参加者同士の交流 を促すための 「 触 大切 にしている様子が うかがえる。加 えて,彼 らは仲間 媒」 に徹する。参加者 に関わ りす ぎず,一人ひとり, とともに自分 自身 も成長で きる貴重な機会 として聖路加 あるいは家族の成長 を距離 を置いて見 まもる姿勢 も大 キャンプを位置づけ,失敗か ら学ぶ体験学習 と自らの意 切である。 志で行 う冒険や挑戦に大 きく価値 を置いていると見受け ( 参あらゆる場面 において,参加者 にキャンプスタッフの られる。 意向を押 し付 けない,自由な雰囲気 を醸 しなが ら,参 また,アクティビティを計画通 りに実践することがで 加者が安心 してアクティビティを楽 しむことがで きる きなかった場合や,失敗, ミスが発生 した場合 について ように見まもる。 さらに,必要 と思われる場合 には, ち,当事者 となった仲間をいたわるとともに,失敗や ミ 参加者 自身の気持 ちや要望 に応 じた援助 を自主的に行 スを否定的に捉 えす ぎることな く,キャンプスタッフ皆 う。 で成長の糧 に活か していこう, というた くましさを彼 ら ④ キャンプに集 うすべての人々が,居心地が よい と感 じ に感 じることがで きる。 る,常 にオープンな雰囲気づ くりを心がける。特 に, さらに,キャンプを実践する過程で自ら気づいた,あ 聖路加キャンプを初めて訪れた参加者 には,疎外感や るいは仲 間に気づかされた自分 自身が得意 とする能力 を 中山他 :キャンプスタッフ体験で高められる看護学生の自己肯定感一健康管理の視点から,その要因を探る- 45 , 互いに尊重 し,それぞれの能力 を最大限に発揮するため な A 君の一面 に触 れた とき 「 す ごい」 とい う青葉が 自 にはどのようなチームづ くりをすればよいのか,につい 然 と出て くる。一方,"ガキ大将日の B君の夢 は料理人 て,キャンプス タッフ管で話 し合い,キャンプの実践 に であ り,郷土料理作 りで見せた目の輝 きや包丁の腕前を, 活かす ことがで きるような体制が整いつつあることも特 みんなが 「 すごい」 と賞賛 したとき,彼 は自らの力 を確 筆すべ きことである。 信 し,お互いの素晴 らしい ところに気づ き認めあうこと の大切 さに目覚めたと思 う。 このようなス トー リーが, Ⅱ.キ ャンプ ス タ ッフ体 験 を通 しての気 づ き 「 聖路加 キャンプ」 には,参加家族だけではな く看護 キャンプの随所 に起 きている,子 どもの自己肯定感が高 まる瞬間だと思 う。これ と同様のス トーリーがキャンプ スタッフの中で も展開されていた。 学生 にとって も,身に付 けたい重要な要素が多 く含 まれ ている点や,そこで得た体験学習の成果が看護専門職者 としての実務遂行 を支える能力の獲得 に少なか らず結び ついている実感がある。学生時代 に 「 聖路加 キャンプ」 3.ポジティブフィー ドバ ックがお互いを詠め合 うこと につながる 臨地実習で も繰 り返 されているが,キャンプで も準備 のキャンプスタッフとして参加 し,看護師の経験 を経て, の段階か らスタッフ同士で行動 を認め合い,お互いに評 再び子 を持つ母 としてキャンプに参加 した著者( 吉越) が, 価 を交換する経験が繰 り返 されている。ただ し,臨地実 卒業生 として現在実感 している 4点について以下に述べ 習の対象が基本的には患者であ り,例 えば 24時間連続 る。 して関わる実践 は,看護師 として勤務するようになって か らでなければ経験で きない。 しか し,キャンプでは子 1.看護学生 として身に付 けておきたい要素がある どもたちや家族 と共に生活 しなが ら,さまざまな関わ り ,「聖路加 キャンプ」 に参加する児童の保護者 を を持つことがで きる。キャンプを実践する中で,問題や 対象 として事前 に行 った 「 家族へのアンケー ト」 には, チ ャンスは突然起 こり,それ らを瞬時にどう凍 えるかは 「 1学期 は不登校」「 決 まったお友だちとしか遊ばない」 キャンプスタッフそれぞれの個性 に左右 されるところが 「 お友だち とな じんで一緒 に行動 しているか」 など,千 で きない 自分」 大 きい。1日を振 り返ったとき,たとえ 「 どもたちのコミュニケーシ ョンスキルに関連する不安 を ばか りが頭に残っていたとしても,仲間のキャンプスタッ 述べた回答が多かった。そ して,長期子 どもキャンプ初 フから,自分では気づ くことができなかった肯定的なフィー ,「他人のことに興味 を ドバ ックを受けることによって,自分が選択 した行動へ 以前 日のスタッフミーティングでは 」「バスの隣に座 っている子の名前 も聞かない」 示 さない の価値 と自信 を認める横会 となる。 これ と酷似 した状況 「 友 だちの名前 を覚 えない」 といった子 どもたちにどう を著者 ( 吉越)は看護師 1年 目に経験 した。学生時代 の 対応 していけばよいか,キャンプスタッフか ら不安の声 知識や看護技術では対応できない日々。理想と現実のギャッ があがっていた。 しか し,最終 日に子 どもたちが書いた プに悩む新人は多 く,現時点での 「 で きない自分」 にと いろんな友だちと仲良 くな 「 ふ りかえ りシー ト」では 「 , らわれて しまいがちだ。その中で,キャンプに参加 した れた 経験 を持つ著者 ( 吉越)が 回答が得 られている。 これはキャンプスタッフが,子 ど れすぎることなく,看護師 1年 目を乗 り切れたのは,キャ もと丁寧に関わってきた結果 として獲得 した評価であ り, ンプで得た体験が生かされていたか ら, と思 う。 」「だんだん協力で きてい くのがわかった」 とい う ,「で きない 自分」 にとらわ 当初の不安は大 きな自信- と変わった。コミュニケーショ ンスキルに乏 しい子 どもたちに対する関わ りを通 して, 4.キャンプに集 うすべての人々が大切 な存在 子 どもたちにどのような支援が必要 とされるのか,につ 著者 ( 吉越)が学生 としてキャンプスタッフを務めた いて考 え,実践 を試みる姿勢は,看護学生 にとって,ぜ 動機 は主に 「 参加者や仲 間とキャンプを作 ってい くこと ひ身に付 けておきたい要素のひとつである。 -の楽 しさ」であった。 しか し,卒業後 ,「聖路加 キャ ,「新たな気づ きが仕事 に役立つ」 とい ンプ」 を訪れて 2.誰にでも主役になれる瞬間がある う,研修 にも似 た新 たな学びを求めている部分や ,「後 キャンプにはゆった りとした時間,生活 を共 にする仲 輩の新鮮 な感覚や問いかけに応 えなが ら自分の行動 を振 間,豊かな遊ぶ空間がある。学校だけでは分か らなかっ り返 り,自分の経験 を伝 えられる場がある」 という,意 たそれぞれの子 どもが見せる多様 な面 に, どの子 どもも 欲的な後輩 と出会 える刺激 と,経験豊かな先輩 として認 お互いに目が留 まるようになる。すると, どの子 どもに め られる喜びを感 じていることに気づいた。 さらに,千 とっても主役 になる瞬間が必ず訪れる。例 えば,補壊器 を持つ母 として参加 したキャンプでは,わが子 を客観的 を必要 とする A 君の名前す ら覚 えなかった,いわゆる に見る機会,家族以外の大人に褒め られた り,叱 られる "ガキ大将"の B 君の口か ら,昆虫に詳 しい博士のよう 機会.異なる年齢の子 どもを持つ家族同士の交流 によっ 4 6 聖路加看護大学紀要 No. 3 72 0 1 1 _ 3 . て自分やわが子の数年後がイメージで きる機会で もあっ で きなかったとして も,それを仲間とともに価値あるこ た。「 子育てを孤立化 させない」役割 までもが,このキャ とと認めたときに自信 を取 り戻す こと,自己肯定感 を高 ンプに包含 されている。 自らの年齢や立場の変化 に応 じ めることが可能になるのではないか と考えられる。また, て参加動機が変化 しなが らも,その時々で 「 聖路加 キャ 「 聖路加 キャンプ」 に集 う,すべての人び とが大切 に想 ンプ」 に求めるものや 「 聖路加 キャンプに」貢献で きる われ,認め られていることをお互いが実感で きるからこ 聖路加 キャンプ」 に集 う,す 役割が必ずあることは,「 そ,キャンプに参加 した人,それぞれが 「自分 は大切な べての人びとが大切 に想われ,認められる雰B I l 気づ くり 存在である」 こと,「自分 は価値ある人間である」 こと によるものだと思 う。 を実感 し,その結果 として学生の自己肯定感が高め られ るのではないか と考 える。 Ⅳ.手薄学生の 自己肯定感 を高めるキャンプ スタッフ体験 とは V.健康管理の立場から こころやからだの健康問題を抱えて,健康管理室にやっ 学生生活の中で,学生 は様々な体験 をしなが ら,相手 て来る看護学生たちが共通 して持つ 「自己肯定感に乏 し を認め,自己を肯定することを学んでい く。それは,社 聖路加 キャンプ」 い」 とい う感覚 を変えてい くために,「 会人 として,看護専門職業人 として,また人生において の体験記録か ら,学生の自己肯定感向上 に寄与 している 聖路加 キャ も貴重 な体験 とな りうるだろう。今回は,「 と思われる体験要素の抽出を試みた。その結果,前述の ンプ」 とい うひ とつの試み を,健康管理の視点か ら, ∋参 キャンプで伝 えたい 5つの大切 なこと,すなわち,( 「自己肯定感」 に寄与で きる体験 として紹介 した。 この 加者全員が大切 な存在である,( 参さまざまな価値観が存 ような体験 を,学生生活の様々な機会に提供できる環境 在 していい,③見 まもりあうことによってお互いの自主 が整えられると,学生たちは伸 びやかに,また相手 との 性 を尊重で きる,④体験 したことは必ず何 らかの意味が かかわ りの中で成長する看護学生 としての資質を育てて あ り,価値がある,( 9感動 を共有することで他者の出来 い くことがで きるのではないか と考える。 事ではな く, 自分の出来事 としてもとらえられる,これ 看護学生の健康管理 を担 う著者 ( 中山) としては, 日 らがまさに自己肯定感 を高める要素 と考えられた。 これ 常的に学生同士,先_ gE が後発の相談 を受ける場,さらに らの要素 をキャンプスタッフとして参加する学生 自身が, は本学卒業生 による学生生活相談の場 を設けて,先輩は 先発や後難,あるいは教員,または参加者 との関わ りの 後難の頼れる存在 とな り,また後輩はモデル となる先輩 中で,他者か ら暴認 されるとい う体験 を通 して実感 し, に憧れ,その先輩か ら大切 な存在 として認め られる関係 これらの体験 を仲間と共有 し, どのような意味があった の構築 を目指すことが,学生 自身の自己肯定感の向上 に のかを語 り感 じあう中で,これらを価値あるもの として 不可欠であると考えられるO とらえ直 しているのではないか と考えられる。キャンプ の体験の中で主役 になる瞬間, リーダーになる瞬間を経 本箱 の作成 にあたっては,本学の健康管理室 開設の労 て,ポジティブなフィー ドバ ックを受けた ときや,失敗 をとられた聖隷 クリス トファー大学飯田澄美子教授のご した と感 じた り,自分 としては納得で きるような実践が 指導 をいただきました。厚 く御礼 申 し上げます。