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北西部(ロム市)廃棄物処理発電事業化調査に係る F/S 調査 報告書要約

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北西部(ロム市)廃棄物処理発電事業化調査に係る F/S 調査 報告書要約
北西部(ロム市)廃棄物処理発電事業化調査に係る F/S 調査
報告書要約
日本環境コンサルタント株式会社
1.調査の背景とプロジェクトの目標
2000 年初頭に、日本の通産省(当時)が資金提供し、ロシア東欧貿易会を中心とし
て活動した実情調査団がブルガリア共和国北西部に派遣され、いくつかのプロジェク
トを見つけた。この地域は、コソボ紛争で大きな被害を受けた対象地区で、同調査団
の仕事は地域の経済開発に役立つプロジェクトを見つけることであった。本報告書は、
見つけたプロジェクトの 1 つ、すなわちロム市における廃棄物からのエネルギー回収
に関するプロジェクトの全体像を示すため、予備的フィージビリティ・スタディ(F/S)
レポート(資金は UNIDO)に続き、2001 年に作成されたものである。
本プロジェクトは、2 組の一連のオペレーションによって構成されている。1 つはブ
ルガリア国内市場から出る EOL 車両の解体・破砕プラントであり、処理能力は 1 日
250 台である。もう 1 つは、EOL 車両のシュレッダーダストを原料とする、廃棄物を
エネルギーに変換するプラントで、処理能力は 1 日 500 トンである。そのうち 450 ト
ンは EU 諸国から輸入し、残りの 50 トンは最初のプラントから出るシュレッダーダス
トである。EOL 車両のリサイクルに関する厳しい EU 指令と、廃棄物による土地埋め
立てに関する厳しい規制が、このプロジェクト推進の原動力である。
プロジェクトの目標は次の通りである。
・ 放置された EOL 車両が引き起こすブルガリアの環境問題を、EU 指令を遵守しつつ
解決する。
・ 現在は埋め立てに使われている車のシュレッダーダストを再利用や回収し、商業
的に利用可能な方法を提供することによって、EU 加盟諸国に貢献する。
・ 市場経済システムへの移行とコソボ紛争終結をうけて、能力に余裕のあるインフ
ラを利用して千人分以上の職場を創出する。
2.プロジェクトの市場主導方針
EOL 車両の解体・破砕プラントがターゲットとする市場は、ブルガリア国内市場に限
る。
一方、EOL 車両のシュレッダーダストを使って、廃棄物からエネルギーを回収するプ
ラントがターゲットとする市場は、国際的にまたがっている。同プラントの能力の
90%は、EU 各国から出るシュレッダーダストの処理に充てられ、10%は社内の解体・
破砕プラントから出る国内シュレッダーダストを処理する。
3.プロジェクトのサービスと副産物
プロジェクトは、ブルガリア市場に対して、現行の EU 基準に準拠した EOL 車両の資
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材リサイクルを 2004 年から提供する。また 2005 年からは、EOL 車両に関する EU 指
令 2015 に盛られた、エネルギー・資材の再利用、リサイクル、回収の目標値をクリ
アする、より高度なサービスが利用可能となる。解体作業の工程を通じて、資材のリ
サイクルにとって有毒な物質や部品が回収されることになっている。これに続く破砕
工程では、鉄類・非鉄金属が副産物として回収される。シュレッダーダストは、廃棄
物からエネルギーを回収する隣のプラントへ鉄道で運ばれ、次段階のリサイクル・回
収へと進む。計画処理能力は 1 日 250 台(年間 7 万 5 千台)であるが、ブルガリアの
乗用車登録台数は 180 万台で、車齢 11∼15 年、16∼20 年、20 年超の台数がそれぞれ
44 万台、40 万台、22 万台であることから、国内市場需要とは依然大きなギャップが
ある。したがって本プロジェクトは、EOL 車両に関するブルガリア国家計画の一部と
して組み込まれる。この国家計画は、関連政府省庁の間で現在検討・策定中である。
本プロジェクトは 2005 年より EU 加盟諸国に対して、同水準の高度な EOL 車両リサイ
クルサービスを提供する。しかしながら、サービスは処理の「下流」、すなわち車両
のシュレッダーダストのガス化溶融での利用に限定されることになっている。この工
程では、シュレッダーダストの 50%をエネルギーに、40%を金属ならびに不活性建
材に変換する。計画処理能力 1 日 500 トンは、1,200 万台の車両が登録されている EU
諸国における需要の約 5%に相当する。本プロジェクトを、EU 解体・破砕業界の既存
構造に組み込むことが、EU 指令に盛られたリサイクルと回収目標を達成する最も有
力な選択肢である。
4.プロジェクトの実施現場
プロジェクトの候補地としては、ロム市が最も有力である。同市はドナウ川に沿って
ソフィアの北 200kmに位置し、年間 340 万トンのバルク品を取り扱うことができる
既存の河川港設備を有する。また鉄道によって、ソフィアその他の大都市と結ばれて
いる。
市場経済への転向とコソボ紛争の影響で、電気自動車の組み立て工場をはじめとする
同市の既存産業インフラには、十分な余力がある。このインフラを利用するなら、投
資コストを最小限に抑えることができ、プロジェクトにとって大きな利点となる。ま
た、シュレッダーダストは EU 諸国からドナウ川を船で運び、EOL 車両はソフィアな
どの大都市から鉄道で運ぶのが、最もエネルギー効率の良い方法である。このように
して、市場からの距離に拘わらず、EU 指令の規定する目標値を守っても、まだコス
ト競争力のあるサービスが維持できる。
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5.プラント・エンジニアリング
本プロジェクトは、EOL 車両に関して 2015 年に EU 指令が予定している再利用、リサ
イクル、回収の厳しい目標値をクリアするために、2005 年から設計、建設、操業が
行われることになっている。
解体と破砕工程の設計は、操業と運送が引き起こす廃水、大気汚染、騒音、震動など
環境への悪影響を最小限に抑えることによって、現行の EU 規定に対応することにな
っている。操業段階では、継続的な訓練と教育を受けた労働者を集中的に投入して、
まず人力で解体、取り外しを行うことによって、車の部品や材料の安定した再利用と
リサイクルが可能になるだろう。
廃棄物からのエネルギー回収プラントの設計には、日本で開発され現在商業ベースで
稼動している、最先端の技術が利用される。この先端技術、すなわちガス化溶融の工
程は、すでに欧州の企業にライセンス供与され評判の高い、既存の技術である流動層
燃焼技術と灰溶融技術を組み合わせた革新的なものである。これら 2 つの技術を組み
合わせることによって、日産 7 トンの最初のパイロットプラントが 1995 年に作られ
た。廃棄物処理能力 1 日 24 トン、熱エネルギー量 5MW の、より大きなパイロットプ
ラントが 1997 年に稼動を開始し、現在でも操業を続けている。2001 年 2 月には、4
本の商業用ラインが稼動しており、14 本が建設中である。本プロジェクトに匹敵す
る最大のプラントは青森にあるが、その廃棄物処理能力は 1 日 2 x 240 トン、熱エネ
ルギー量は 2 x 40 MW である。このテクノロジーは、EU 指令が設定する目標値の達
成にとって望ましい方法で、資材リサイクルとエネルギー回収を結びつけるように設
計されている。
解体と破砕の工程は、ロム港から 2 キロ南にあるバルカン・カー社施設内の、オーバ
ーヘッドクレーンを備えたいずれかの既存工場の建物内で行うことになっている。エ
ネルギー回収プラントは、ロム港に隣接して建設する。この2つの場所は、すでに鉄
道で結ばれている。
6.法人としての組織
本プロジェクトは、経済的に採算が取れている。プロジェクトの性格と、同地域にお
いて進行している民営化の動きを考慮するならば、プロジェクトの実行主体は新規に
設立される共同出資会社とすべきと考えるのが合理的であろう。主たる出資者は多分、
ロム市、ロム港ならびにバルカン・カー社のような地元組織となるであろう。日本か
らの出資は、たとえ小額であっても、技術移転の観点から好ましいと思われる。しか
しながら本プロジェクトは、優先度の高い国家プロジェクトと認識されるべきで、特
i
にプロジェクトの初期段階においては、ブルガリア中央政府からの強力な支援が不可
欠である。プロジェクトは、東欧における最初のビジネスモデルであり、提案されて
いるサービスは、国際社会の中で認められ承認される必要がある。なぜなら、多数の
国にまたがる河川を用いた、シュレッダーダストの国境を越えての運搬は、ドナウ協
定やバーゼル協定に照らした注意深い検証を必要とするからである。
7.労働力
解体と破砕の工程は、250 人の労働者で、1 日 8 時間 x 300 日(年間)のベースで
操業することになる。エネルギー回収プラントの方は、約 10 人のオペレーターが 3
直で、1 日 24 時間 x 300 日(年間)稼動する。社内における輸送および保管業務に、
約 50 人のオペレーターが必要になる。
プロジェクト新会社の運営をサポートする必要がある仕事を考えると、直接・間接に
千人分以上の職場が誕生するだろう。
8.実施プログラム
できる限り速いオプションを採用したと仮定すると、プロジェクトの暫定的なスケジ
ュールは次のようになる。
2002 年春から秋にかけて:
ブルガリアで登記する法人の設立
融資の手配
環境への影響アセスメント
2002 年初頭:建設の開始
2004 年中頃:解体・破砕作業の商業運転開始(国内サービスの開始)
2005 年中頃:
ガス化溶融工程の商業運転開始(国際サービスとフル稼動の開始)
9.財務的・経済的な分析
プロジェクトの総コストは、解体・破砕とエネルギー回収の両プラントを合わせて、
概算で 2 億米ドルと見積もられる。プロジェクトコストの 30%、すなわち 6 千万米
ドルは資本金でまかない、残り 4 分の 3、つまり 1 億 4 千万米ドルは金融機関からの
借り入れで調達する。FIRR の予測値は 10.11%を超え、EIRR は 22.0%である。
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10.結論と勧告
本プロジェクトは経済的に成り立つプロジェクトである。
ブルガリアに対して、5 項目の勧告がなされた。次の通りである。
・ プロジェクトに対する関係者全員一致の承認および支持を得ること。
・ 国際間の法律的枠組みの整理を、政府がサポートすること。
・ 立法府と政府が、プロジェクトに法的正当性を与えるようサポートすること。
・ プロジェクト新会社の創立メンバーを任命すること。
・ 上記の事項を全般的に調整するため、政府内横断的なタスクフォースチームを立
ち上げること。
日本側に対しては、次の 4 項目の勧告がなされた。
・ブルガリア側の要請に応じて、プロジェクトに関わること。
・スムースな技術移転を確実なものとするために、資本参加に応ずること。
・フライアッシュを減量し、かつその利用法を探るための研究開発を継続すること。
・ EU 諸国内でのマーケティングのために、タスクフォースチームを立ち上げること。
以上
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