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富山大学
ラファエル・パラコウヂ・ソウト・マイオルさん / 富山大学 Mr. Rafael Plakoudi Souto Maior / University of Toyama <外国人研究者プロフィール Profile> 国籍: Nationality: 日本留学時の滞在期間: Pereiod of Stay During in Japan: 日本留学時の大学: Education Background in Japan: 専攻分野: Major Field: 現在の所属/職位: Present Institution / Status: ブラジル / Brazil 2005年4月1日~2007年3月31日 Apr 1, 2005 ~ Mar 31, 2007 富山医科薬科大学 Toyama Medical and Pharmaceutical University 医科学専攻 / Behavioral Neuroscience ブラジリア大学生物学研究所付属研究員 University of Brasilia/Associate researcher <研究報告 Follow up Research Fellowship> 受入研究者氏名: Research Adviser: 受入れ期間: Researching Period: 研究課題: Theme of Research: 顔写真 貼付け位置 ラファエル・パラコウヂ・ソ ウト・マイオルさん Mr. Rafael Plakoudi Souto Maior 西条寿夫教授 / Prof. Hisao Nishijo 2010年10月 1日~ 2010年12月 23日 Oct 1, 2010 ~ Dec 23, 2010 社会行動の発達における膝状体外視覚系の役割 Role of the extrageniculate visual system (superior colliculus-pulvinar-amygdala) in development of social behaviors. ■研究概要 Outline of Reserch ブラジリア大学生物学研究所は、霊長類の行動学的研究において非常に優れた研究を行っている。一方、当富山大 学では、サルの神経生理学的研究に関しては30年以上の研究実績を有している。今回の短期研修中に、Maior氏に 当大学の技術を取得して頂くことにより、2つの当該大学の技術を融合することを試みた。これにより、Maior氏の専門 である行動学的研究において、より精度の高い解析結果が得られるとともに、その行動実験の神経生理学的基盤が 明らかになると考えられる。具体的には以下の2つのテーマで、Maior氏に研修および研究をして頂いた。 I. 行動学的実験: 皮質下領域の脳機能、とくに社会的認知機能発達における膝状体外視 覚系(上丘-視床枕-扁桃体系)の役割を明らかにするため、幼若期のサ ル(オマキザル, 新世界サルの一種)を用いて膝状体外視覚系を破壊 し、破壊後の社会行動の変化を解析することを目的とした。膝状体外視 覚系の神経経路から明らかなように、上丘を破壊することにより膝状体 外視覚系の大脳皮質への情報を遮断できると考えらる。Maior氏は、ブラ ジリア大学において幼若期サルの上丘を両側性に破壊し、行動変化を 観察した。ついで、Maior氏がこれまでブラジリア大学で行った行動実験 データ(上丘破壊サルの社会行動をCCDカメラで撮影した画像データ)を 富山大学に持ち寄り、Maior氏は画像処理方法を学ぶとともに、当該研 究室が所有する行動実験解析プログラムで解析した。 顕微鏡手術中の写真 A photo during microsurgery using a microscope II. 神経生理学的実験: サルを用い、上丘から視覚入力を受け、社会行動に重要な 役割を果たしていると推測されている視床枕からニューロン 活動を記録し、さらに神経生理学的データの処理方法を学 ぶとともに、様々な社会刺激に対するニューロンの応答性を 解析した。本研究により、膝状体外視覚系のニューロンが社 会的刺激に応答性を有するのかどうか明らかになると考え られる。 研究室で同僚と歓談中 Taking with a coalleage in the laboratory ■研究成果 Result of Reseach I. 行動学的実験: 行動データを解析した結果、上丘破壊サルでは、社会行動の低下(他の健常成熟サルに対する近接行動、および探索 行動の低下; 他の幼若サルに対する遊び様行動、社会的接触、およびアイコンタクトの減少)、他の幼若サルに対する 社会的ランクの低下、および嫌悪動物(ヘビ)のモデルに対する嫌悪反応の低下などの特徴を呈することが明らかになっ た。 II. 神経生理学的実験: サルにヒトの表情などの様々な画像を呈示し、視覚識別を行わせた。同課題を遂行中のサル視床枕からニューロン活 動を記録し、184個のニューロン活動を記録した。これらニューロンのうち、41個(22.1%)が視覚刺激に応答し、そのうち18 個が表情刺激に識別的に応答した。これら視床枕ニューロンの応答潜時を解析した結果、16個は100ミリ秒以下の非常 に早い潜時を有しており、上丘からの入力に応答していることが推察された。一方、13個は、300ミリ秒以上の遅い潜時 を有していた。早い潜時のニューロンの存在は、上丘-視床枕-扁桃体系において、視床枕は上丘から早い入力を受け、 扁桃体に出力していることを示唆する。また、遅い潜時のニューロンの存在は、視床枕はさらに大脳皮質間の相互作用 を介在していることを示唆する。 以上の行動学的および神経生理学的実験結果は、膝状体外視覚系が社会的認知機能に重要な役割を果たしている ことを示唆する。 ■日本留学の思い出 Memories of Studying in Japan 地球の半周したところに住む西洋人は、日本に着いた途端に、テレビや映画あるいは民間伝承などで培われた日本 に対するステレオタイプの固定観念が脆くも崩れさることになります。これは、私の国であるブラジルおいても当てはま ります。ブラジルには、日本人の子孫が多く住んでおります。しかし、これまで彼らと知り合っても、子供の頃からの日 本に対する先入観を捨て去るには不十分でした。 最も下らない先入観の一つに、日本人はすべて侍、あるい はカンフーのようなマーシャルアーツ(軍用格闘術)の達人 であるというものがあります。私自身、子供の頃から柔道家 であり、日本人の子孫の方とおつきあいがありました。その 日本人は決して好戦的ではありませんでしたが、このような 先入観は私の頭の片隅からいつまでたっても離れることは なかったようです。もちろん、日本人の柔道家は、いかなる マーシャルアーツにおいても、最も恐ろしい敵でありますが、 このようなことが、すべての日本人はレンガを素手で割るこ とができるというような先入観を強めてしまうのかもしれませ ん。 日本人に対するブラジル人の先入観のもう一つ別の例とし て以下のようなものがあります。日本は最も未来的な国であ り、日本人はあらゆる機械でギュウギュウに詰めにされた社 会に生活しており、日常生活はロボットや機械と働いたり過 ごしているというものです。ブラジルでは、多くのレポートや テレビ番組が、大抵渋谷駅ビルやハイテクフェアにおけるロ ボットペットを紹介しています。したがって、実際には知りもし ない日本についてこのような先入観を抱くことは仕方がない ことかもしれません 大学での研究発表 Study presentation in the university しかし、日本に到着し、富山のような郊外での生活に慣れるにしたがい、このような考えは、現代や過去の日本の文化 に対する先入観の強い風刺画以外の何者でもないことが分かりました。日本人は、私がこれまで訪問した他のいかなる 国とほとんど同じように生活しています。また、日本の長年の歴史によって培われため、当然異なる風習や慣習もありま す。しかし、誇張されたかように感じられた先入観のいくつかは、幸いにも、現在においても間違っていませんでした。す なわち、仕事と義務に対する日本人の信頼性、平和に対する献身、および他者に対する忍耐と尊敬などに対する印象 は、現代においてもその通りです。実際、こうして知った日本の真実は、私にとって先入観よりもさらに印象的です。