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我が国への石炭供給にかかるリスク 分析等調査
平成27年度JOGMEC石炭開発部成果報告会 海外炭開発高度化等調査 ② 我が国への石炭供給にかかるリスク 分析等調査 平成28年6月15日 本日の報告内容 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク (1) 生産・輸出に影響を与える要因 (2) 主要輸出国の評価 3.まとめ 本調査の内容 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 2.主要輸出国における石炭供給リスク (1) 世界の生産・消費・貿易 (2) 我が国の輸入量と輸入対象国 (3) 石炭価格動向 (4) 石炭供給国の生産・輸出に影響を与える要因 (5) 石炭供給国の供給リスク分析 3.世界の石炭需要予測 1 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 一般炭スポット価格 2011年1月をピークに下落 現状、50ドル/トン+で推移 (US$/トン) 140 130 136.30 123.57 NEWC Index 122.16 120 110 108.87 116.80 96.09 100 80 70 60 50 74.60 87.79 RB Index DES ARA Index 84.98 80.82 66.15 76.70 72.98 51.29 61.04 54.37 48.14 2010年1月 2010年3月 2010年5月 2010年7月 2010年9月 2010年11月 2011年1月 2011年3月 2011年5月 2011年7月 2011年9月 2011年11月 2012年1月 2012年3月 2012年5月 2012年7月 2012年9月 2012年11月 2013年1月 2013年3月 2013年5月 2013年7月 2013年9月 2013年11月 2014年1月 2014年3月 2014年5月 2014年7月 2014年9月 2014年11月 2015年1月 2015年3月 2015年5月 2015年7月 2015年9月 2015年11月 2016年1月 2016年3月 40 86.36 110.28 90 (注) NEWC Index - 豪州ニューカッスル港出し一般炭スポット価格(週平均) RB Index - 南アフリカリチャーズ・ベイ港出し一般炭スポット価格(週平均) DES ARA Index - 北ヨーロッパ(アムステルダム、ロッテルダム、アントワープ港)渡し一般炭スポット価格(週平均) (出所) globalCOAL 2 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 原料炭スポット価格 2011年1月をピークに下落 2016年に入り上昇、現状90ドル/トン前後 (US$/トン) 400 365.83 350 333.40 310.33 IHS McCloskey US high ash, low vol FOB index 300 253.55 301.57 250 225 200 198.17 171 200 151.95 150 150 100 IHS McCloskey Australian prime hard coking coal FOB 91.75 136.50 111.65 85.45 76.10 2010年3月 2010年5月 2010年7月 2010年9月 2010年11月 2011年1月 2011年3月 2011年5月 2011年7月 2011年9月 2011年11月 2012年1月 2012年3月 2012年5月 2012年7月 2012年9月 2012年11月 2013年1月 2013年3月 2013年5月 2013年7月 2013年9月 2013年11月 2014年1月 2014年3月 2014年5月 2014年7月 2014年9月 2014年11月 2015年1月 2015年3月 2015年5月 2015年7月 2015年9月 2015年11月 2016年1月 2016年3月 2016年5月 50 (注) IHS McCloskey Australian prime hard coking coal FOB:豪州高品位強粘結炭FOB価格 IHS McCloskey US high ash, low vol FOB index: 米国低揮発分原料炭FOB価格 (出所) IHS Energy 3 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 価格低迷の要因 - 供給過剰+輸入増の減速、そして減少 中国の輸入量は2014年から減少、インドの輸入量は2015年に減少 インドの石炭輸入 中国の石炭輸入 (百万トン) 350 (百万トン) 250 327.0 212.1 291.6 288.7 300 200 250 221.5 203.8 184.6 200 その他石炭 100 40.8 50 146.1 145.8 150 132.5 150 166.9 褐炭 102.8 無煙炭 100 一般炭 50 59.0 73.3 無煙炭 その他石炭 68.9 一般炭 原料炭 原料炭 0 2008 0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2009 2010 2015 2011 2012 2013 2014 2015 (4-12) 年度 (千トン) 2014年1-3月 2015年1-3月 2016年1-3月 2014 4-12月 増減 14-15年 15-16年 2015 4-12月 増減 原料炭 12,970 10,923 11,426 -2,047 503 原料炭 31,118 33,463 2,345 一般炭 32,055 17,357 13,872 -14,698 -3,485 一般炭 111,415 89,305 -22,111 無煙炭 9,574 4,933 6,219 -4,641 1,286 無煙炭 761 896 135 その他石炭 9,733 3,550 4,440 -6,183 890 13,061 22,461 9,400 計 64,332 36,763 35,957 -27,569 -806 156,355 146,125 -10,230 19,681 12,294 12,488 -7,387 193 49,057 48,444 -34,957 -613 褐炭 総計 84,014 (出所) TEXレポート(元データは中国海関統計) その他石炭 合計 (出所) Ministry of Commerce and Industry, “Export Import Data Bank” 4 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 輸入需要の減少、価格下落の影響 – 豪州でのプロジェクトの遅延等 長期化する価格低迷 プロジェクトの遅延・延期・中止、炭鉱の休山・閉山、資産整理、石炭会社の倒産 豪州での石炭プロジェクトの遅延、中止・延期 Department of Industry, Innovation and Scienceが公表する“Resources and Energy Major Projects” から炭鉱の拡張および新規建設プロジェクトを比較 2014年4月と2015年10月の報告の比較 QLD州 : 14件のプロジェクト(生産能力 1億4,680万トン/年)の生産開始が遅延 9件のプロジェクト(生産能力 NSW州 : 6,380万トン/年)が延期またはリストから削除 1件のプロジェクト(生産能力 260万トン/年)の生産開始が遅延 3件のプロジェクト(生産能力 600万トン/年)が延期またはリストから削除 豪州での休山等 休山が続いている。直近では、 • Abel炭鉱(坑内) 2016年6月予定(Ynacoal) • West Eallsend炭鉱(坑内) 2016年6月半ば予定(Glencore) • Drayton炭鉱(露天) 2016年6月末予定 • Baralaba炭鉱 時期不明(2016年2月8日発表)(Cockatoo Coal) • Crinum炭鉱(坑内) 2015年末(BMA) 5 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 輸入需要の減少、価格下落の影響 – 石炭メジャー等の資産売却 長期化する価格低迷 プロジェクトの遅延・延期・中止、炭鉱の休山・閉山、資産整理、石炭会社の倒産 豪州では、以下の資産売却が進められている。 Rio Tinto: • Bengalla炭鉱の権益40%をNew Hopeに売却(2016年3月1日完了) • Mount Pleasantプロジェクトの権益100%をMACH Energy Australiaに売却予定 • Mount Thorley炭鉱、Warkworth炭鉱を予定している。 Anglo American: • • • • Dartbrook炭鉱の権益83.33%をAustralia Pacific Coalに売却予定 Callide炭鉱をBatchfire Resourcesに売却予定 Foxleigh炭鉱の権益70%にTaurus Funds Managementに売却予定 Dawson炭鉱、Moranbah North炭鉱、Grosvenor炭鉱、Moranbah South鉱区の売却を予定 Peabody Energy: • Wilkie Creek炭鉱をSekitan Resources Pty. Ltd.に売却(2015年7月完了) • Wotonga鉱区の権益100%をStanmore Coal Ltd.に売却(2015年9月4日完了) Vale: • Isaac Plains炭鉱の権益50%をStanmore Coalに売却(2015年11月30日完了) • Integra炭鉱をGlencoreとBloomfield Groupに売却予定 Glencore: • NSW州石炭輸送事業の売却(2016年第3四半期までに予定) 6 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 輸入需要の減少、価格下落の影響 – 米国での石炭会社の破綻 長期化する価格低迷 プロジェクトの遅延・延期・中止、炭鉱の休山・閉山、資産整理、石炭会社の倒産 2012年以降に連邦破産法の 適用を申請した石炭会社 米国では2012年以降、 2016年4月までに40社が、 連邦倒産法第7条(清算 型倒産処理手続、日本の 破産法に相当)または同 11条(再生型倒産処理手 続、日本の民事再生法に 相当)を申請。 国内需要の減少と輸出 減・輸出価格低下のダブ ルパンチ 申請日 会社名 会社名 倒産法 倒産法 申請日 11* 11/22/13 Left Fork Mining 7 01/26/12 Larry Addington 02/15/12 Alpha & Omega Coal 7 11/22/13 Cloverfork Mining & Excavating 7 03/29/12 H & D Mining 7 11/22/13 Cumberland River Energies 7 06/11/12 B&B Coal 7 11/22/13 Bennett Resources 7 06/29/12 Panther Branch Coal 7 02/07/14 Cobalt Coal 7 07/09/12 Patriot Coal 11 04/07/14 James River Coal 11 07/11/12 Conshor Mining 7 05/22/14 US Coal 11* 09/21/12 Tennessee Classic Coal 11 05/22/14 Licking River Miing 11* 10/01/12 Haley Bros. Coal 7 06/27/14 IBCS Mining 11 11/07/12 King Coal Trucking 11 10/08/14 Coal Valley 7 02/01/13 Cobra Mining 7 02/24/15 Covington Coal 11 02/01/13 America West Resources 11 04/06/15 Xinergy 11 02/14/13 Trinity Coal 11 04/15/15 Grass Creek Coal 11 02/14/13 Excell Energy and Coal 11 05/12/15 Patriot Coal 11 02/19/13 T&T Energy 11* 05/27/15 Birmingham Coal & Coke 11 06/28/13 Twin Star Coal 11 06/03/15 A & M Coal 7 07/01/13 Detherage Coal Sales 7 07/15/15 Walter Energy Inc. 11 09/23/13 Lily Group 11 08/03/15 Alpha Natural Resources 11 10/08/13 Valley Mining 7 01/11/16 Arch Coal Inc. 11 11/22/13 Manalapan Mining 7 04/13/16 Peabody Energy Corp. 11 (出所) SNL Energy, ”Roster of US coal companies turning to bankruptcy continues to swell” June 04, 2015および各種報道 7 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 輸入需要の減少、価格下落の影響 – 米国での石炭会社の破綻 国内需要の減少と輸出減・輸出価格低下 米国の石炭輸出量 のダブルパンチ (百万ショート・トン) 140 コークス 120 米国の石炭国内販売量と発電用石炭価格 (ドル/ショート・トン) (百万ショート・トン) 1,200 その他 原料炭 100 発電用 一般炭 80 50 発電所引取価格 60 1,000 45 800 40 40 20 0 600 35 400 30 2000 2005 2010 2015 米国の石炭輸出価格 (ドル/ショート・トン) 200 25 250 一般炭 0 20 1990 1994 1998 2002 2006 2010 2014 200 原料炭 コークス 150 平均 100 50 (出所) EIA, ”Electric Power Annual”および”Quarterly Coal Report” 8 0 2000 2005 2010 2015 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 輸入需要の減少、価格下落の影響 – 為替変動 石炭供給国通貨安 販売収益面ではプラス要因 主要石炭輸出国通貨の対米ドル為替レート (2011年1月1日=1) 1.20 1.00 2016年5月時点 0.80 0.60 0.40 0.20 0.75 0.67 豪州ドル 0.67 インドネシアルピア 0.46 0.46 ロシアルーブル 南アランド 豪州一般炭スポット価格の推移 コロンビアペソ 0.00 (US$/t、A$/t) 140 US$/ton 120 A$/ton 100 80 60 40 20 (出所) IHS, ”Australian Coal Report” 9 2016/01 2015/10 2015/07 2015/04 2015/01 2014/10 2014/07 2014/04 2014/01 2013/10 2013/07 2013/04 2013/01 2012/10 2012/07 2012/04 2012/01 2011/10 2011/07 2011/04 0 2011/01 (出所) OWANDAホームページ 1.石炭供給、消費に影響を及ぼす要因 アセアンでの石炭需要増 一般炭需要は、2040年には4.6億トンに増加 一般炭輸入量は、2040年で1億4,700万トンに増加 アセアン5か国の一般炭需要見通し (百万トン) 500 450 400 350 300 250 200 150 100 15 50 0 1990 アセアン5か国の一般炭輸入見通し (百万トン) 160 460 147 140 320 ベトナム タイ 210 フィリピン 149 46 106 120 100 56 60 マレーシア 40 インドネシア 20 ベトナム 72 80 タイ フィリピン 5 マレーシア 14 0 2000 2013 2020 2030 1990 2040 2000 2013 2020 2030 2040 (百万トン) インドネシア マレーシア フィリピン タイ ベトナム アセアン計 1990 2000 2013 2020 2030 2040 6.3 2.2 2.6 0.3 4.0 15.2 22.6 3.7 8.6 3.7 7.8 46.3 59.8 24.3 18.7 18.5 28.1 149.4 94.1 31.1 22.1 22.6 40.6 210.5 147.3 40.7 33.5 33.0 65.7 320.2 213.5 50.0 47.5 43.1 106.3 460.4 増減 2040 - 2013 153.7 25.7 28.8 24.6 78.2 311.0 インドネシア マレーシア フィリピン タイ ベトナム アセアン計 1990 2000 2013 2020 2030 2040 0.8 2.3 1.3 0.3 0.0 4.6 0.0 3.1 7.2 3.7 0.0 14.0 0.0 22.1 14.2 18.7 1.3 56.3 0.0 26.7 16.6 22.6 6.1 72.0 0.0 35.6 23.9 33.0 13.8 106.3 0.0 45.0 32.9 43.1 26.2 147.2 (百万トン) 増減 2040 - 2013 0.0 22.9 18.7 24.4 24.9 90.9 (出所) IEEJ、「アジア/世界エネルギーアウトルック 2015」 10 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク 我が国の石炭輸入(2015年) 財務省「貿易統計」では、一般炭と して使用される石炭が原料炭とし て統計されている。 特にHSコード2701.12-019に分類さ れる石炭で、特にインドネシア炭。 原料炭 一般炭 カナダ 米国 1.6% 1.1% その他 0.0% 中国 南アフリカ 0.1% 0.5% 中国 ニュージランド モザンビーク その他 0.5% 0.6% 0.1% 0.1% ロシア 米国 4.9% 6.6% ロシア 9.5% カナダ 8.8% インドネシア 11.0% 一般炭輸入量 財務省「貿易統計」より整理 1億1,384万トン インドネシア 28.3% 豪州 76.3% 原料炭 一般炭 財務省「貿易統計」で HSコード2701.12-019に分類される インドネシアからの輸入量を 一般炭として整理 カナダ 米国 1.4% 1.0% 中国 0.4% 豪州 50.1% 原料炭輸入量 7,095万トン 南アフリカ 0.1% その他 0.0% ロシア 8.1% インドネシア 0.7% 中国 0.2% 米国 9.2% カナダ 12.2% インドネシア 一般炭輸入量 24.2% 1億3,365万トン 豪州 65.0% ニュージランド 0.2% モザンビーク 0.7% その他 0.8% ロシア 6.8% 原料炭輸入量 5,221万トン 豪州 69.3% 11 (出所) 財務省、「貿易統計」 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク 生産・輸出に影響を与える要因 生産国おける生産・輸出に影響を与える要因として、以下の項目を調査。 調査対象国は以下の通り。 豪州、インドネシア、ロシア、カナダ、米国、南アフリカ、コロンビア、中国、ベトナム、モンゴル、 モザンビーク、ニュージーランド 項 目 内 容 政策 生産・輸出を抑制・制限するような政策(輸出税、数量管理、規 制)、政治的安定性など 環境問題 開発・生産・輸送を妨げるような事例、政策 住民・環境保護団体などの反対、CO2排出規制などの導入など 国内需要 国内需要の増加(輸出への影響) 炭鉱開発・生産 炭鉱開発状況、市況低迷による炭鉱開発の遅延、技術的課題、 深部への移行・奥地への移行など 輸送インフラ 輸送需要・炭鉱開発に見合った整備、内陸輸送距離など 埋蔵量 埋蔵量、炭質 海上輸送 海上輸送距離(我が国までの距離) その他 自然災害、スト、テロなど 12 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク 各国の評価手法 我が国への安定供給を念頭に置き、供給リスク(安定供給を阻害する要因)9項目を評価。 評価は、我が国の最大の相手国である豪州を基準に、各国を比較することで行い、 評価結果は、基本的に「大」、「中」、「小」の3段階で示し、微妙な差がある場合はその間として「小中」と 「中大」を使用。 例)我が国最大の輸入相手国の豪州は最もリスクが小さい。 しかし、豪雨など自然災害により供給に大きな影響。QLD州(原料炭)での被害が甚大。 輸送インフラ(輸送距離も考慮)では、NSW州でGunnedahへ移行、QLD州ではGalilee、Suratへ移行 原料炭 一般炭 豪州 豪州 政策 自然災害 等 大 環境問題 政策 自然災害 等 小 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 環境問題 中 中 海上輸送 大 炭鉱開発 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 13 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク 比較検討の結果 政策 生産・輸出管理 : インドネシア、ベトナム 政情安定性 : インドネシア、ロシア、南アフリカ、コロンビア、中国、モザンビーク、モンゴ ル、ベトナム 環境 全て「中」。米国は生産面においても規制等厳しい。 国内需要 需要増加が影響 : インドネシア、ベトナム、中国 政策 豪州 一般炭 原料炭 小 小 インドネシア 一般炭 原料炭 中大 中大 ロシア 一般炭 原料炭 中 中 カナダ 一般炭 原料炭 小 小 米国 一般炭 原料炭 小中 小中 南アフリカ 一般炭 原料炭 中 - 環境 中 中 中 中 中 中 中 中 大 中大 中 - 国内需要 小 小 中大 小 小中 小 小 小 小 小 小 - 政策 コロンビア 一般炭 原料炭 中 - 中国 一般炭 原料炭 中 中 モザンビーク 一般炭 原料炭 中 モンゴル 一般炭 原料炭 中 ニュージーランド ベトナム 一般炭 原料炭 無煙炭 小 大 環境 中 - 中 中 - 中 - 中 - 中 中 国内需要 小 - 中 中 - 小 - 小 - 小 大 14 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク 比較検討の結果 輸送インフラ 豪州: 輸送距離は短い。整備され需要に合わせた増強が可能。市況低迷の影響が懸念 NSW州ではGunnedah、QLD州ではガリリー、スラットへ移行(一般炭) インドネシア: バージ輸送システムが確立。河川輸送が限界。中央カリマンタンは鉄道施設が必要 ロシア:インフラ整備計画は多数あるが、進まない可能性大。 長距離(2,000~6,000km) カナダ: 整備されており、現状余裕あり。一部炭鉱(一般炭)を除き、輸送距離は1,000km以上 米国:西海岸の港湾建設は環境保護団体等の反対から建設が難しい。東海岸は整備済 南ア: 現状の輸送距離は500km以下、奥地移行に伴い鉄道整備が必要 コロンビア :炭鉱によるが、輸送距離は短い。 中国:過去は鉄道輸送がネック。需要が減少し、現状問題ない。 モザンビーク: 輸送インフラの開発必要 ニュージーランド: 整備済み、能力が小さい。 輸送インフラ 豪州 一般炭 原料炭 小中 小 インドネシア 一般炭 原料炭 中 中大 ロシア 一般炭 原料炭 中大 中大 カナダ 一般炭 原料炭 小中 中 米国 一般炭 原料炭 中大 小中 南アフリカ 一般炭 原料炭 小中 - 輸送インフラ コロンビア 一般炭 原料炭 小中 - 中国 一般炭 原料炭 小中 小中 モザンビーク 一般炭 原料炭 中 モンゴル 一般炭 原料炭 大 ニュージーランド ベトナム 一般炭 原料炭 無煙炭 小中 小 15 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク 比較検討の結果 炭鉱開発、生産 各国とも融資獲得が困難な状況。市況の低迷がキャッシュフローに影響。 豪州: 現状は十分な炭量を確保。NSW州ではカネダ、QLD州ではガリリー、スラットへ移行(一般炭) インドネシア: 技術的問題(坑内掘り技術)。 ロシア:古い炭鉱での設備老朽化問題。今後の開発は幹線から離れた地域が多い。 カナダ: 市況が戻るまでは休山が継続。 米国:多くの会社が倒産。アパラチアは中小炭鉱が多く、生産性が低い。西部は輸送コストがかかる。 南ア: 採炭の中心が奥地移行(ウォータベルク)に移行。 中国:坑内掘りが多く、高コスト モザンビーク:輸送インフラを含めた開発となり、設備高コスト モンゴル:低価格での中国への販売。生産コスト急上昇。アジア市場への供給は難しい。 ニュージーランド: ソリッドエナジーのみが操業。規模が小さく高コスト。 ベトナム:技術的問題(坑内掘りへの移行)。紅河デルタ開発は高リスク。 炭鉱開発 豪州 一般炭 原料炭 小 小 インドネシア 一般炭 原料炭 中 中 ロシア 一般炭 原料炭 中 中 カナダ 一般炭 原料炭 中 中 米国 一般炭 原料炭 中 中 南アフリカ 一般炭 原料炭 中 - 炭鉱開発 コロンビア 一般炭 原料炭 中 - 中国 一般炭 原料炭 中 中 モザンビーク 一般炭 原料炭 中大 モンゴル 一般炭 原料炭 中 ニュージーランド ベトナム 一般炭 原料炭 無煙炭 中 中 - 16 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク 比較検討の結果 埋蔵量、炭質 豪州: QLD州に強粘結炭、NSW州に高品位一般炭が豊富に賦存。ガリリー、スラットでは品質が落ちる。 インドネシア:亜瀝青炭、褐炭が多い。中央カリマンタンには原料炭が賦存。 ロシア:鉄道沿いは既に開発。東シベリア以東では亜瀝青炭、褐炭が多い。 カナダ: 強粘結炭がブリティッシュコロンビア州に賦存。一般炭の埋蔵量は少ない。 米国:パウダーリバーの埋蔵量は豊富であるが、亜瀝青炭。強粘結炭はアパラチアなどに賦存。 南アフリカ:これまでの開発エリアの埋蔵量は減少。ウォータベルグへ移行となるが、品質が低下。 コロンビア:埋蔵量は豊富。 中国:埋蔵量は豊富であるが、生産量も多い。原料炭は山西省を中心に賦存。 モンゴル:南ゴビに強粘結炭が賦存。 モザンビーク:強粘結炭がテテ州に賦存。ただし、高灰分、可選性が悪い。コスト高。 ニュージーランド:原料炭は南島の西海岸沿いに賦存。埋蔵量は少ない。 ベトナム:北部に無煙炭が賦存。埋蔵量は少ない。 埋蔵量 炭質 埋蔵量 炭質 豪州 一般炭 原料炭 小 小 小 小 コロンビア 一般炭 原料炭 小 小中 - インドネシア 一般炭 原料炭 小中 小中 小中 小中 中国 一般炭 原料炭 中 中 小 小 ロシア 一般炭 原料炭 小中 小 中 小 モザンビーク 一般炭 原料炭 小 - 中 カナダ 一般炭 原料炭 中 小 小中 小 モンゴル 一般炭 原料炭 小 - 小 米国 一般炭 原料炭 小 小 中 小 南アフリカ 一般炭 原料炭 小中 小中 - ニュージーランド ベトナム 一般炭 原料炭 無煙炭 中大 中 - 小中 小 17 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク 比較検討の結果 海上輸送 輸送距離 (マイル) 航海日数 (日) 輸送距離 (マイル) 航海日数 (日) プリンス・ルパート 3,845 11.4 ヘイ・ポイント 3,666 10.9 バンクーバー 4,286 12.8 ニューキャッスル 4,305 12.8 ロング・ビーチ 4,862 14.5 リッテルトン 5,223 15.5 モービル 9,147 27.2 タンジュン・バラ 2,912 8.7 ハンプトン・ローズ 9,546 28.4 日照 1,133 3.4 リチャーズ・ベイ 7,734 23.0 秦皇島 1,299 3.9 915 2.7 港湾名 港湾名 ボストーチヌイ 注: モービル、ハンプトン・ローズはパナマ経由、リチャーズ・ベイはスンダ海峡経由 航海日数=輸送距離/本船速度(14ノット/時) 出所:船会社ヒアリング情報より作成 自然災害 豪州: 豪雨により甚大な被害(2回)、その他も供給に影響がでた事象あり。 カナダ、ロシア:冬期輸送での問題、 雨による供給への影響あり。 海上輸送 自然災害 海上輸送 自然災害 豪州 一般炭 原料炭 中 中 中大 大 コロンビア 一般炭 原料炭 大 小 - インドネシア 一般炭 原料炭 小中 小中 中 中 中国 一般炭 原料炭 小 小 小中 小中 ロシア 一般炭 原料炭 小 小 中 中 モザンビーク 一般炭 原料炭 大 - 小 カナダ 一般炭 原料炭 中 中 中 中 モンゴル 一般炭 原料炭 小 - 中 米国 一般炭 原料炭 中 大 小 中 南アフリカ 一般炭 原料炭 大 小 - ニュージーランド ベトナム 一般炭 原料炭 無煙炭 中 小中 - 小 小 18 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク 比較検討の結果 – 一般炭 豪州 米国(Powder River)政策 政策 自然災害 等 大 環境問題 自然災害 等 中 国内需要 インドネシア 大 輸送インフ ラ整備 埋蔵量 ロシア 環境問題 自然災害 等 国内需要 埋蔵量 環境問題 輸送インフ ラ整備 炭質 炭鉱開発 炭鉱開発 政策 自然災害 等 大 環境問題 中 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 国内需要 輸送インフ ラ整備 コロンビア 小 海上輸送 環境問題 炭質 中 小 埋蔵量 大 大 小 海上輸送 炭鉱開発 政策 中 海上輸送 国内需要 炭質 炭鉱開発 政策 自然災害 等 自然災害 等 中 小 海上輸送 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 環境問題 政策 中 小 海上輸送 大 カナダ 炭鉱開発 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 19 2.主要石炭輸出国における石炭供給リスク 比較検討の結果 – 原料炭 豪州 カナダ 政策 自然災害 等 大 環境問題 自然災害 等 小 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 ロシア 大 埋蔵量 環境問題 国内需要 輸送インフ ラ整備 モザンビーク 自然災害 等 国内需要 インドネシア 環境問題 輸送インフ ラ整備 炭質 炭鉱開発 自然災害 等 炭鉱開発 政策 大 環境問題 中 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 国内需要 輸送インフ ラ整備 埋蔵量 政策 小 海上輸送 環境問題 炭質 炭鉱開発 大 大 小 海上輸送 中 小 埋蔵量 自然災害 等 中 炭質 中 海上輸送 環境問題 小 海上輸送 炭鉱開発 政策 自然災害 等 大 政策 中 中 海上輸送 米国 政策 炭鉱開発 小 海上輸送 国内需要 輸送インフ ラ整備 炭質 埋蔵量 炭鉱開発 20 3.まとめ 世界の需要予測 石炭需要は、その比率は小さくな るが、アジアを中心に需要量は増 加。 (百万toe) 2040 2013 Current Policies IEA New Policies 2035 IEEJ レファレンス 技術進展 450 EIA BP 低価格 レファレンス 3,245 4,540 4,272 石 炭 3,923 5,618 4,414 2,495 4,577 3,105 石 油 4,210 5,348 4,735 3,351 5,496 4,658 4,855 6,200 5,115 天然ガス 2,902 4,610 4,239 3,335 4,741 3,665 3,940 5,327 4,428 646 1,036 1,201 1,627 1,127 1,597 1,597 1,159 859 原子力 水 力 326 507 531 588 434 443 443 再生可能エネルギー 1,538 2,523 2,815 3,801 2,587 2,928 2,953 合 計 13,545 19,643 17,934 15,197 18,963 16,396 17,033 (百万toe) 1,274 3,310 20,536 1,359 17,307 25,000 20,536 19,643 20,000 13% 15,000 13,545 11% 10,000 17,934 5% 3% 16% 23% 7% 2% 5% 15,197 25% 25% 4% 26% 31% 22% 5% 10% 3% 26% 26% 22% 30% 28% 22% 29% 29% 25% 16% 5% 水 力 原子力 天然ガス 30% 29% 再生可能エネルギー 8% 7% 18% 11% 21% 17,307 16% 2% 6% 24% 16,396 14% 3% 27% 5,000 18,963 石 油 石 炭 24% 19% 25% 25% 2040 2035 0 2013 2040 2040 2040 Current New 450 Policies Policies IEA 2040 2040 レファレンス 技術進展 レファレンス IEEJ EIA BP (注) EIAの予測では水力と再生可能エネルギーの数値が分かれていない。EIAの16%は水力と再生可能エネルギーの合計を示す。 (出所) IEA, ”World Energy Outlook 2015”、BP, ”BP Energy Outlook 2016 edition”、EIA, ”Inertnational Emergy Outlook 2016”およびIEEJ、「アジ ア/世界エネルギーアウトルック」より作成 21 3.まとめ 今後の石炭調達 石炭主要供給国を、政策、環境問題、輸送インフラ整備、埋蔵量、炭鉱開発の現状、自然災 害などから比較検討。 その結果、豪州が最も優れていると評価された。 しかし、過去の例から見るように、災害リスクの可能性が高い。 豪州以外の主要輸出国を評価すると、以下の通りである。 インドネシアが発電所で利用する石炭の多くは亜瀝青炭。 我が国が求める高品位炭への影響は少ないと思われる。 原料炭は内陸部に賦存しており、開発は遅れることになろう。 カナダは、FOBコストが割高であることが今後の供給に影響する。 米国は、多くの石炭会社が破綻しており、国内需要、主な輸出先である欧州市場も縮小する。 需要に見合った体制になると思われる。 アジア市場への一般炭の供給拡大は、港湾建設が環境問題からの反対、価格低迷による生 産会社の体力低下から難しいであろう。 原料炭ついては、価格の変動で生産を調整するスイングサプライヤーであったが、今回の価 格低迷が石炭会社に与えた影響は大きいことが懸念される。 ロシアは海上輸送距離が短く近距離ソースであるが、石炭価格の低迷とロシア内情から投資 が進まず、長距離内陸輸送(FOBコスト高)が今後の開発のネックとなろう。 モザンビークでは開発への投資額が巨額でFOBコストが高い。 今後の供給拡大は原料炭価格の上昇に大きく影響されることになろう。 22