...

もっと もっと

by user

on
Category: Documents
1

views

Report

Comments

Transcript

もっと もっと
新 島 八 重 関 連 書 籍紹 介
新 島 八 重 関 連 書 籍紹 介
対する理解を深めてもらうため
学生、卒業生、教職員に八重に
重像が浮上してきた。そして在
メージとは異なる、プラスの八
妻とも評された従来の八重のイ
認しつつある。これによって悪
の果たした役割の重要性を再確
女子大学の創設期において八重
研究会を発足させ、あらためて
る。女子大学でも昨年新島八重
直し作業も精力的に行われてい
て、同志社内では新島八重の見
を表明している。それと並行し
同 志 社 は、 大 河 ド ラ マ﹃ 八 重
の 桜 ﹄に 全 面 的 に 協 力 す る こ と
いきたい。
て、今後の女子教育に活用して
く学生のお手本となる女性とし
して忘れ去られることなく、長
が、女子大学において八重は決
いずれ八重ブームは去るだろう
かさを感じとっていただきたい。
読して、八重の人間的なあたた
摯な内容となっている。是非一
が、他の八重本とは一味違う真
めわずか120頁の小さな本だ
を並べることができた。そのた
学ならではのユニークなコラム
ーマを設定することで、女子大
筆者各自の専門性を活かしたテ
よしかいなお と
に、コンパクトな八重本を発行
介することはもちろんだが、執
けた。八重の生涯をきちんと紹
編集方針として、全体にわか
りやすい文章にすることを心掛
ただき、深く感謝している。
再現という難題をお引き受けい
水久美子先生には、八重の衣装
寄稿も含まれている。また、清
バーだが、メンバー以外の特別
る。執筆者は主に研究会のメン
島八重研究会の成果の一部であ
同志社の教員や卒業生が執筆した
「新島八重」をも っと知るための
書籍17冊を紹介します。
吉海直人︵女子大学表象文化学部教授︶
同志社女子大学新島八重研究会編
同志社の母 新 島 八 重
知りたい!
!
読
んでみたい
っと
することになった。本書は、新
み
お
新島八重子回想録
ながさわ か
本書を一読すれば、その内容
が夫・新島襄とのエピソードで
埋め尽くされていることは容易
に知りえよう。八重は襄との出
会いや夫婦生活について多くを
語らなかったが、本書はこれら
を雄弁に物語る。元がインタビ
ュー記事ということもあり、八
重が語るように綴られる本文は
大変読みやすく読み手にやさし
本書は1973年に永澤嘉巳
男 氏 の 編 集 で 出 版 さ れ た﹃ 新 島
味の一つである。明治時代の、
感を与えないことが本書の醍醐
に違和感を与えない。この違和
い。また、八重の言葉は読み手
八 重 子 回 想 録 ﹄の 復 刻 で あ る。
復刻された。そもそもは永澤氏
められた資料的価値を重視して
マの主人公新島八重の肉声が収
なかったが、この度、大河ドラ
る。つまり、八重が精神的に襄
間でも交わされそうな内容であ
わす会話は、まるで現代の夫婦
くはない時代に、八重が襄と交
いまだに女性の社会的立場が高
と等しく、もしくは襄がアメリ
行 ︶に 連 載 さ れ て い た。 こ の 掲
志社新聞﹄︵同志社学生新聞会発
記 事 は 当 時 発 行 さ れ て い た﹃ 同
人の関係に注目しながら是非本
エピソードも貴重であるが、二
接していたことをうかがわせる。
家庭を支えるパートナーとして
大学同志社社史資料センター
社史資料調査員 ︶
載記事を永澤氏自らが加筆訂正
こ えだひろかず
影響は、このシリーズにもあっ
た。八重について記した別巻が
あらたに企画され、このたび第
一巻︵会津編︶が発刊となった。
八重については、すでにシリー
ズ 第 七 巻、﹃ ハ ン サ ム に 生 き る ﹄
で﹁家庭人としての新島先生﹂
を
語る上で﹁新島夫人﹂として描か
れ た。 今 回 の﹃ 日 本 の 元 気 印・
新 島 八 重 ﹄は、 そ こ に は 描 き き
れなかった八重の姿が、特に会
津とのかかわりにおいて詳しく
記されている。最初の夫・川崎
尚之助のこと、八重にも劣らず
魅力的な会津の女性たちのこと
などなど、これを読めば大河が
一層面白くなることは間違いな
い。
ともすると大河によって、あ
るいは大河に便乗し、真実とは
異なる八重の姿が伝えられかね
ないことへの研究者としての懸
念と真実を伝えなければならな
いという使命感から、別巻は誕
生したという。八重研究が一気
に深まったのは実にありがたく、
興味深い。別巻二︵京都編︶は、
八重の信仰についても記される
という。こちらにも大いに期待
したい。
やましたとも こ
山下智子︵新島学園短期大学准教授︶
特集◉もっと知りたい! 読んでみたい! ◉新島八重関連書籍紹介
思いがけなくも嬉しい大河の
小枝弘和︵
書をご一読いただきたい。
大河ドラマ﹁八重の桜﹂の放映
は、同志社関係者に大きな影響
をもたらした。新島襄研究の第
一人者・本井康博教授も例外で
はない。われらが本井先生は、
今や新島八重研究の第一人者と
して超多忙な日々を送られてい
る。
﹃新島襄を語る﹄シリーズは、
本 井 先 生 が 全 巻︵ 現 在 9 巻 ま
で 刊 行 済 ︶の 予 定 で、 ラ イ フ ワ
ーク的に出版されてきたもので
ある。各地で行った講演等をま
とめたものであるため、時に砕
けた今風の表現も交えた話し言
葉で、わかりやすく楽しい内容
である。
本井康博︵大学神学部教授︶
著
もと い やすひろ
│新島襄を語る・別巻
︵一︶
日本の元気印・
新島八重
である。
して出版したものが本書の原本
ューした記事が元の原稿である。 カの夫婦間に見られるように、
ほど八重の元を訪れ、インタビ
が同志社大学の学生時代に
回
刊行から既に
年を経て在庫も
永澤嘉巳男編集
同志社エンタープライズ
730円(税込)
10
思文閣出版
1,995円
(税込)
30
31
も
非売品
問い合わせ先:
女子大学広報課
39
10
■特集■
新 島 八 重 関 連 書 籍紹 介
すく記されている。逆境の中に
あっても道を切り拓いていく八
重の力強さは現代を生きる私た
ちに多くの示唆を与えてくれる。
本書の最大の特徴は、100
点を超える写真、文書資料、絵
画資料等が全ページにわたって
掲載されていることである。そ
の数は現在書店に数多く並ぶ八
重関連の書籍の中でも随一と言
え、写真集のように眺めるだけ
でも十分に楽しむことができる。
また昨今の研究によって明らか
になった新事実やこれまであま
り注目されることがなかった八
重を取り巻く人々についても数
多く取り上げられ、コラムも充
実している。まさに、これから
八重を知りたいと思う人から専
門的な知識を深めたいと考える
人まで幅広く活用できる内容と
なっている。
八重の故郷への想いについて
も丁寧に描かれており、巻末に
は会津若松市内のゆかりの地マ
ップが付いていることから、本
書を片手に八重が愛してやまな
かった会津を実際に巡ってみる
のも良いのではないだろうか。
ふるやまともゆき
福島県立博物館
古山智行︵ 副
主任学芸員 ︶
日本で初の公表です。八重の信
仰面を執拗に分析したのも、そ
う で す。﹁ 八 重 は ほ ん と に 信
徒?﹂の 答 え を 探 り ま し た。 い
ずれも、これまで誰も書かなか
った、いや、書けなかった秘話
でした。奇しきことに、発行が
八重さん、
本書と同日になった山下智子牧
お乗りになりますか
師 の﹃ 新 島 八 重 も の が た り ﹄︵ 日
│新島襄を語る・別巻︵二︶
本キリスト教団出版局、201
もと い やすひろ
本井康博︵大学神学部教授︶
著 2 年 ︶と 共 に、 神 学 部 教 員 な ら
ではの宗教色濃厚な﹁八重本﹂に
なればいいな、と思いました。
本書は、私にとって5冊目の
﹁八重本﹂です。類書がすでに数
八重の家族関係にも切り込み
十冊も噴出、というご時世に、
ました。夭折したと信じられて
﹁屋上屋を架す﹂愚は、ご法度で
きた姉は、どうしてどうして、
す。あえて出すからには、それ
京都で長寿でした。名前や子孫
なりの工夫と覚悟が要ります。
も突き止めました。さらに、八
重は襄に死なれた後、養子を3
前 著 の﹃ 日 本 の 元 気 印・ 新 島
八重﹄は、八重の会津時代でした。 人もとり、孫のひとりに同志社
思いっきり大河ドラマ寄りの構
を継がせる夢さえ、抱いていま
成です。八重の京都時代を扱っ
した。山形︵米沢人︶との人事交
た 本 書 は、 逆 に、﹁ 八 重 の 桜 ﹂と
流も盛んでした。
は一線を画しました。衝撃的な
八重の研究は、ようやく始ま
新発見と秘話の解明に努めまし
ったばかりです。どうやら私の
たので、ちょっと﹁危ない話﹂が ﹁八重本﹂も、5冊では終わりそ
入っています。
うにありません。
著者より
たとえば、八重の﹁不倫風評﹂。
共著
時代を駆ける 新島八重
の ぐちしんいち
野口信一・
こ えだひろかず
小枝弘和
大学社史資料センタ
︵ー
社史資料調査員 ︶
本 書 は、 大 河 ド ラ マ﹁ 八 重 の
桜 ﹂の 放 映 が 決 定 す る 前 か ら、
会津と京都で新島八重関係の資
料を最も近くで見て研究を進め
てきた野口・小枝両氏がタッグ
を組んで手がけた待望の一冊で
ある。
八重の生涯は3期から捉える
と理解しやすいといわれるが、
本書もそれに準じる形で3部構
では
成 と な っ て い る。 PART-1
会津における幼少時代から戊辰
で
戦 争 で の 奮 闘 ま で、 PART-2
は京都における新島襄夫人とし
では襄亡き
て の 八 重、 PART-3
後の篤志看護婦としての活動や
茶道に興ずる姿がそれぞれ時代
背景を織り交ぜながら分かりや
明治︿美人﹀論
さ えき
じゅん
こ
進がメディアでも盛んにとりあ
げられるなか、明治の女学生の
勉学風景や、作家や女優として
社会に進出する女性たちの姿が、
現代の私たちの目にも、写真入
りでリアルに伝わってくる。
明治の新聞記事は、虚実ない
まぜの内容ではあるが、鋭い社
会批評やユーモアに富み、現代
の記事よりもむしろ面白い。激
〝男前〟ぶり、新しい時代を切り
動の明治を生き抜く女性たちの
明治女性について研究し始め
たのは大学院時代。同志社で働
拓こうとする意欲は、
世紀の
くことも、新島八重が大河ドラ
佐伯順子︵大学社会学部教授︶
著
│ メディアは女性をどう変えたか
NHK出版
1,260円(税込)
いて単著にまとめることができ
治メディアが伝える女性像につ
だにしていなかった。今回、明
マの主人公となることも、予想
るもの。男女を問わず、現代を
八重の﹁ハンサム﹂な精神に通じ
充ち溢れ、それはまさに、新島
きな向上心やハングリー精神に
私たちが見失いがちな、ひたむ
生きる私たちにも大いに刺激に
作家、セレブといった多彩な女
みられる女学生、芸者、女優、
らえてみた。大河ドラマ鑑賞の
なかで、2人の人生の特徴をと
比較で論じ、広く時代の流れの
八重と襄についても、同時代
のメディアにおける女性像との
なる生き様である。
性たちを紹介。近代のメディア
なお、巻頭の写真には初公開
の も の も あ り、﹁ エ ピ ロ ー グ ﹂部
分の八重や覚馬の徳富蘇峰宛の
との共著というかたちです。
もので、新資料として公開され
たことの意義は大きいと考えら
れます。とくに、八重の蘇峰宛
かれるところです。
況が語られている点は興味を惹
書簡では新島の死後の心境や状
の分担執筆としました。
坂井 誠
特集◉もっと知りたい! 読んでみたい! ◉新島八重関連書籍紹介
つの流れとして、フィクション
八重関係の出版物をすべて読
んだわけではありませんが、一
馬﹂﹁第3章 新島八重﹂
三人のめ
坂 井 誠 ﹁ 第 1 章
ぐ り あ い ﹂﹁ 第 2 章 山 本 覚
グ﹂
書簡も全く知られていなかった
とに力点をおいたつもりです。
なるものであったのかを描くこ
の事績を通してその意識が如何
頭において描くこと、また3人
あること、さらに時代状況を念
わりあいの中で把握する必要が
兄の﹁覚馬﹂や夫の﹁襄﹂とのかか
ーズ・アップさせることより、
そのためには﹁八重﹂のみをクロ
こうとしたところにあります。
我々が留意した点は、ノン・
フィクションとして﹁八重﹂を描
うに思われます。
として﹁八重﹂が語られているよ
著者より
︶、参考になれ
が登場した幕末・明治期は、女
共著
ばと願う。
お供としても︵
拙著では、明治の新聞、雑誌
記事、特に、写真入りの記事に
であろうか。
た の も、﹁ 見 え ざ る 御 手 の 導 き ﹂
21
性にとっても新しい時代の始ま
り。男女平等論、女子教育の推
八重・襄・覚馬
│三人の出会い│
よし だ ひろ じ
まこと
吉田曠二・ さか い
坂井 誠
大学人文科学研究所︶
︵嘱
託研究員 ⁉
吉 田 曠 二 ﹁ プ ロ ロ ー グ ﹂﹁ 第
4 章 新 島 襄 ﹂﹁ エ ピ ロ ー
昨年の 月に標記書籍が出版
されました。執筆は吉田曠二氏
芸艸堂
2,100円
(税込)
32
33
12
思文閣出版
1,995円(税込)
歴史春秋社
1,260円
(税込)
新 島 八 重 関 連 書 籍紹 介
新島八重
│ハンサムな女傑の生涯
同志社同窓会編
本書の特徴は、 人の著者が
八重の生涯を時系列的に語ると
いう手法ではなく、それぞれの
専門家の立場から、八重の思考・
行動を彼女の生きた時代に即し
て考察し、深く広く紹介してい
ることである。すなわち、﹁個性﹂
﹁ 夫 婦 生 活 ﹂﹁ 故 郷・ 会 津 で の
日々﹂﹁教育者としての姿﹂﹁キリ
スト教信仰﹂﹁看護の精神﹂﹁茶の
湯 ﹂と い う 七 つ の 切 り 口 か ら 八
重の実像に迫ることにより、単
に新島八重の生涯の読み物とし
て終わるのでなく、幕末から明
治・大正・昭和にわたって、め
まぐるしく変化する時代環境の
中を、様々な苦難を乗り越えて
小説・新島八重
勇婦、最後の祈り
ふくもとたけひさ
1965年 著
福本武久 ︵大
学法学部卒業 ︶
自らの人生を生き抜いた女性の
姿と、その意味を浮き彫りにす
ることを目指した書である。
それぞれの時代の八重の生き
方の根底にあったのは、進取の
気性と矜持の精神であり、具体
的には、常に前向きで一生懸命、
周囲を気にすることなく、逆境
に屈することなく、会津女性の
誇りを堅持して生きた八重の姿
である。しかし、そのような生
き方を見せた彼女の内面は、鶴
ヶ城での徹底的な敗北により打
ちのめされた自己を見つめ直し、
キリスト教の理念と、真正のク
リスチャン新島襄との恵まれた
結婚生活の中で徐々に立て直そ
うと格闘していたのである。ま
た夫の死後は、さらに新たな自
己の確立を求め、禅と茶道の境
地に心の安定を求めて生きる道
を見出そうと模索した。
近年、外国のキリスト教会で
座禅が積極的に取り入れられて
いる風景を見聞きするにつけ、
八重の先進性に驚かされる。
執筆者代表
さかもときよ ね
坂本清音︵女子大学名誉教授︶
て い ま す。 本 書﹃ 小 説・ 新 島 八
重 勇 婦、 最 後 の 祈 り ﹄は、 そ
れら連作のフィナーレをなす作
品です。
新島襄亡き後の八重は社会活
動に身を投じ、たとえば日清・
日露戦争では篤志看護婦として
従軍、看護は女性にふさわしい
職業であり、女といえども国家
に役立つことをみずから実証し
て見せました。晩年は当時とし
ては珍しい女流茶道家として、
新島襄と八重
│同志の絆│
ふくもとたけひさ
1965年 著
福本武久 ︵大
学法学部卒業 ︶
八重を中心にして良人の新島
襄、兄の山本覚馬の人生を、ざ
は
いかといわれても、きっぱりと
日本人として帰国、キリスト教
撥ねつけ、誰にもしばられない
主義の学校をつくろうと胸に期
していました。
八重と兄覚馬は戊辰戦争で薩
長に敗れ、新政府からしめださ
れた人間でした。だから、同じ
幕府側にいた人間でありながら、
戊辰戦争を体験していないため
に、まったく挫折感もなく、薩
長の新政府と対等に向き合える
新島襄が好もしくみえたにちが
がよくわかります。本書はそん
強くしっかり結ばれていたこと
弟であるとともに、同志の絆で
夫婦であり、兄妹であり、義兄
八重、襄、覚馬がどのように
関わり、どのように歩んだのか。
たのです。
をキーワードにして同志となっ
で、いわば反中央、自主、自立
びつくのはごく自然のなりゆき
っと眺めてみると、この三人は、 いありません。ならば三人が結
な切り口から、三人についての
そういう観点から作成した詳し
評伝ふうの稿や講演録をおさめ
て編んだものです。
い年譜を巻末にかかげました。
団だったことになる。
後の明治政府はまさに奸賊の集
ぶやいた。八重にとって、その
八 重 は、﹁ 残 念 ⋮⋮ 奸 賊 共 ﹂と つ
士が駆け込んでくるのを見て、
が、城明け渡しのとき、官軍兵
戦1ヵ月、会津軍は敗者となる
著者より
密航者・新島襄は薩長中心の
明治新政府をまるで信用してい
ませんでした。新政府から仕官
をせよといわれてもなびかず、
アメリカ伝道協会から帰化しな
八重と新島襄
いつか主君のためにも朝敵の
汚名を晴らしたい、明治政府と
は一線を画す、というのが八重
新島八重の一生は、幕末から
明治、大正、昭和にと及ぶ。そ
日々の祈り、何より知性を土台
ちたいとの情熱、信仰を深める
するが、八重は、襄の大学を持
ほ さかまさやす
の人生を貫く一本の芯は何だっ
にした生活を尊ぶ、その生き方
の生きる姿勢だった。京都にあ
たのか、いかなる状況にあろう
に強い信頼を寄せた。
1963年 著
保阪正康 ︵大
学文学部卒業 ︶
と も 安 易 な 妥 協 を 拒 み、﹁ 市 民 ﹂
語を学び、聖書を学び、文字通
ス チ ャ ン レ デ ィ ー﹂の 時 代 は 英
新 島 襄 と と も に 暮 ら し た﹁ ク リ
くし、独り身となった八重が、
女が人間としてみとめられな
かった時代にあって、良人を亡
す。
か
り近代女性として颯爽と駈けぬ
著者より
著者より
社 会 ﹂が 誕 生 す る こ と を 予 見 し
って兄覚馬の縁で新島襄と結婚
としての自立を崩さなかったそ
ふたりの意識と生活は明治初
期にはあまりにも進歩的すぎて
女性の茶道人口拡大に力をつく
の姿勢は、今の私たちに何を教
い た が、 や が て 日 本 に も﹁ 市 民
数えで八八歳まで生きた新島
八重はいくつもの顔をもってい
えているのか、そのことをさぐ
ていたかのようでもあった。私
しながら、終生にわたり新島襄
ってみようと試みた書である。
たちは本学校祖のその精神に学
ま す。﹁ さ む ら い レ デ ィ ー﹂と い
八重の名は地元会津でもそれ
ほど知られていない。会津戊辰
ぶべきだ、それも本書に取り組
と会津戦争の語り部をつとめて
どのような思いで社会に関わり、
戦争で官軍と戦った女性は少な
うべき会津若松時代は、洋式銃
時代をこじあけようとしていた
くないが、その中にあって八重
います。八重はこのように、つ
けました。
のか。孤独な闘いに挑んだ八重、
んだ所以である。
いたという一点で先駆的でした。 ねに時代の最先端を歩んでいま
先 に 刊 行 し た﹃ 小 説・ 新 島 八
作品世界に登場する彼女の半生
は砲術師範の娘として男勝りの
重 会津おんな戦記﹄﹃小説・新
島 八 重 新 島 襄 と そ の 妻 ﹄は、
そういう時代を描いており、そ
れぞれ自立した作品世界をなし
特集◉もっと知りたい! 読んでみたい! ◉新島八重関連書籍紹介
戦いを行っている。鶴ヶ城籠城
がそれにこたえてくれています。
砲という近代兵器に眼をむけて
原書房
1,680円(税込)
毎日新聞社
1,575円
(税込)
淡交社 1,260円(税込)
筑摩書房
1,680円
(税込)
34
35
1
新 島 八 重 関 連 書 籍紹 介
新島八重
図書館にとてもお世話になりま
した。図書館では、これまでに
発 行 さ れ た﹁ 新 島 研 究 ﹂や﹁ 同 志
社 時 報 ﹂、 そ し て 新 島 襄 先 生 に
ついての本をしっかり読むこと
ができました。
幕末から明治初めの日本は激
動の時代です。大きく揺れ動き
複雑な歴史の背景を、正確にわ
かりやすく書くことに努めまし
えたことは知っていました。け
で、同志社創立の頃の先生を支
た。八重さんが新島襄先生の妻
小・中学生向けに新島八重さ
んの生涯を書かせてもらいまし
八重さんの生きた日々はもち
ろん、同志社創立の頃の新島先
本にしたいと努力しました。
れ、どんどん読んでいくような
手にした子どもたちが引き込ま
に書きたいと思いました。本を
くにまつとしひで
│会津と京都に咲いた
大輪の花
れどどんな女性だったのか、ど
た。そして八重さんの少女時代
んな人生を送ったのかについて
生や山本覚馬らの苦闘する姿を
1964年 著
国松俊英 ︵大
学商学部卒業 ︶
は詳しく知りませんでした。
よかったと思っています。
本を読んで下さった人たちに
少しでも勇気と励ましをを与え
書くことができて、ほんとうに
が生き生きと浮かび上がるよう
調べていくにつれ、少女時代
のことや鶴ヶ城での籠城戦のこ
となどがわかってきました。自
らの手で人生を切り開き、力強
著者より
しいことはありません。
く生きていく姿に驚くとともに、 ることができれば、こんなうれ
深い感銘を受けました。
資料調査には、今出川の大学
新 島 八 重 │ 新 島 襄・八 重
夫妻の蒔いた一粒の麦
1993年 ︶
みさきりゅうま︵大
学商学部卒業 著
利用できるように作成できたの
ではないかと思っております
せんえつ
僭越ですが、大河ドラマ放映
を前にして次のような意識を校
友各人が持つことができれば、
2013年が同志社人にとって
かけがえの無い1年とすること
が出来るのではないかという想
いを持っております。
① 八「重の桜﹂を通じて、校友が
同窓意識を共有し、強い絆で
結ばれる。
② 八「重の桜﹂を通じて、校友が
建学精神や新島教育を改めて
認識する。
③ 八「重の桜﹂を通じて、校友が
歴史を学び教養を高め、同志
社人として強い意識を持って
社会に貢献する。
この特別な年を前に、永く埃
をかぶり人々の記憶から忘れ去
られようとしていた新島先生ご
夫妻の伝道記録と偶然にも出会
いました。色々と葛藤もござい
ましたが、私自身がこの責任と
向かい合えればと考え刊本させ
ていただきました。一介の同窓
の想いが、どうか皆様に伝われ
ばと祈っております。著者より
ジョーの夢
決断を下したのは廃藩置県が
断行された明治4年だが、会津
るのだと。
悩み、考え、八重は決断した、
京都へ行って自分の人生を変え
たいのか?
に留まりたいのか、京都へゆき
らない。わたしはこのまま会津
││何よりも、自分自身の気
持ちがどうなのか、知らねばな
ろうか?
ことをして迫害をうけないのだ
││兄は青森県の士族にはな
らないつもりらしいが、そんな
してくれるのか?
少年は、 歳だった同志社英学
校の新島襄に、ひと目で惚れ込
むのです。以来、蘇峰の新島に
対する尊敬と仰望の念は終生変
わりませんでした。
そして彼は、師のため、同志
社大学設立運動に尽力します。
﹃ジョーの夢﹄のチャームポイン
│新島襄と徳富蘇峰、
トとして、2013年の大河ド
ラマの主人公、新島の妻の八重
そして八重
も重要な役回りを演じます。さ
ます だ まさふみ
1983年
増田晶文 ︵大
︶
らに、襄のよき理解者となった
学法学部卒
業著
大隈重信はもちろん、私立大学
設立のうえでライバルだった福
ひたむきな男たちが、ひたす
澤諭吉、明治の政界を闊歩した
ら追い求めた夢とは││。
井上馨、陸奥宗光、勝海舟など
小説﹃ジョーの夢﹄の主人公は、
歴史上の人物もふんだんに登場
同志社を創立した新島襄と、明
します。
治の大ジャーナリスト徳富蘇峰
の2人です。
夢、師弟愛、夫婦の絆⋮⋮新
島襄の生涯には、真摯に生きた
日本の青春期ともいえる明治
人間だからこそ紡げた情念が折
時代、新島はわが国で初の私立
り重なっています。カネの多寡
総合大学創立の﹁夢﹂を抱いて疾
で人生の勝ち組と負け組と決め
駆しました。﹁良心を手腕に運用
つけ、教育の場においても混迷
す る 人 物 ﹂を 育 て る 必 要 を 声 高
から抜け出せない今日だからこ
に語り、物質文明に毒された日
そ、﹃ ジ ョ ー の 夢 ﹄を 手 に 取 り、
本に警鐘を鳴らしました。
﹁夢﹂に想いをめぐらせていただ
きたいと願っております。
著者より
きよし
33
だ。八重としては天から降って
京都へゆくか、ゆかないか│
│提案したのは兄の覚馬のはず
かった。
の八重の生涯のヤマ場を描けな
え、京都へゆくと決断するまで
けられなかったから、悩み、考
湧いた提案だが、最初の衝撃が
それが口惜しい。もういちど
チャンスがあればと渇望してい
著者より
特集◉もっと知りたい! 読んでみたい! ◉新島八重関連書籍紹介
││母や兄嫁や姪を連れての
京都ゆきを斗南藩︵青森県︶が許
そこから煩悶の日々がはじまる。 る。
いがたい誘惑があるのを知り、
消えたあと、兄の提案には逆ら
新 島 八 重 ﹄の 構 想 を 立 て た が、 落城から明治4年までの八重の
思い通りには書けなかった。
暮らしの詳細を知る史料を見つ
だ と 設 定 し て﹃ サ ム ラ イ ガ ー ル
会津を離れて京都へゆくと決
断したのが八重の生涯のヤマ場
1962年 著
髙野 澄 ︵大
学文学部卒業 ︶
たか の
│維新を駆け抜けた
﹁烈婦﹂の生涯
新島八重
サムライガール
弱冠
そんな彼の傍らには、徳富蘇
峰がいます。
歳、生意気盛りの徳富
講談社
1,680円(税込)
祥伝社黄金文庫
680円
(税込)
36
37
13
フォア文庫 岩崎書店
630円(税込)
新人物往来社
1,680円
(税込)
本書は、新島先生ご夫妻が、
だんじりの町・岸和田で行った
布教の記録を冒頭に紹介してい
ます。地方の具体的事例を通じ
て時代背景を身近に感じて理解
していただき、これを踏まえて
新島先生と八重夫人が生きた幕
末という時代と、勝海舟はじめ
坂本龍馬や土方歳三らの数々の
英雄との接点を紹介しています。
小学生にも読んでいただける
分かりやすい短い話を 話作成
し、ルポ形式で提供しました。
校友の皆様の会話の話題になる
ようなネタ本として、また大河
ドラマをより身近に感じられる
ようなテキストブックとして、
各校友が知っておくべき同志社
の記録をまとめた参考書として
48
めぐり逢い
と り ご え みどり
│新島八重回想記
鳥越
1967年 著
碧 ︵女
子大学学芸学部卒業 ︶
新島襄の妻、八重は、会津藩
の砲術指南役の家に生まれたお
転婆な少女でした。女性として
の稽古事には見向きもせず、武
術や砲術の稽古に夢中になり、
その腕は藩中に聞こえるほどに
上達します。やがて、京都守護
職の松平容保が新政府軍から追
われ、賊軍の汚名を着せられて
会津戦争となり、八重たち女も
籠城して藩士とともに戦います。
八重は、男装して銃を取って戦
いますが、1ヵ月の籠城後、鶴
ヶ城は落城し、一家は京にいる
兄の覚馬を頼って上洛します。
この京の地で、八重はアメリ
カから帰国したばかりで、キリ
スト教主義の学校設立の夢に燃
える襄にめぐり逢い、結婚しま
す。決して諦めず苦難に立ち向
かう襄に、八重はぐいぐい惹か
れていきます。
拙著﹁めぐり逢い﹂では、男ま
さりで、会津戦争の時には女で
あるよりも男として銃を取って
戦ったことを誇りとした八重が、
いつしか、愛する夫に、女とし
て愛されたいと望むように変わ
っていきます。が、夫婦の糸は、
キリスト教、会津への想い、襄
の理想の女性像などがからみ合
いもつれていきます。この世に
与えられた生を熱く生き抜くバ
イタリティあふれる襄の、あま
たの試練を一つひとつ乗り越え
ていく姿を史実に添って追いつ
つ、八重が、どのように夫婦の
もつれた糸を解して己の再生を
うち
果たしていくか、その心の裡を
描いてみました。ともあれ、拙
著﹁めぐり逢い﹂で、新島襄と八
重の奇跡のめぐり逢いを愉しん
でいただければ幸いです。
著者より
新島八重ものがたり
やましたとも こ
まが八重のよき友となり八重を
支えてくれたのでしょう。この
賛美歌﹁いつくしみふかき﹂
には
信仰者として最晩年を迎えた八
重の深い共感があり、だからこ
そ署名をする際に、その様ない
つくしみふかい神さまに自らも
積極的に応えて生きる幸いを思
い﹁神のよき友となれ﹂
と記した
のではないでしょうか。
歌 の 歌 詞 は﹁ い つ く し み ふ か き
重の葬儀でも歌われた愛唱賛美
歌というのがポイントです。八
見開きに残した言葉です。賛美
しました。
新しい資料をもちいて詳しく記
重の心のありようについては、
とくにクリスチャンとしての八
た襄の妻となって以降の八重、
﹃新島八重ものがたり﹄は、こ
れまであまり語られてこなかっ
主の手にひかれて このよの
れます。たとえ周囲に誤解され
く花開いていったように感じら
ようとものびやかに自分らしく
りて 御手にひかれつつ あめ
に の ぼ り ゆ か ん ﹂︵ 傍 線 山 下 ︶で
われるからです。
ち が そ れ ぞ れ に﹁ わ た し ら し く
しかしそうしたつらい時も神さ
著者より
にさらされたことが分かります。 生きる﹂励ましに満ちています。
生きた八重の生涯は、わたした
八重の生涯をみる時に、彼女
がたびたび心ない誤解や無理解
あり、これを踏まえていると思
の出会いを経て、より八重らし
戊辰戦争で見られた八重の八
重らしさは、襄とキリスト教と
﹁神のよき友となれ﹂、これは
満 歳の八重が友人の賛美歌の
山下智子 ︵新島学園短期大学准教授著
︶
日本キリスト教団出版局
1,575円
(税込)
たびじを あゆむぞうれしき いつくしみふかき 主の友とな
83
講談社
1,890円
(税込)
38
Fly UP