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特集:ダントツの商品力 ~Innovation through Teamwork

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特集:ダントツの商品力 ~Innovation through Teamwork
特 集
ダントツの商品力
∼ Innovation through Teamwork ∼
グローバルなチームワーク、特に新商品開発における組織横断的なチームワークはコマツの強み
のひとつです。燃費・
IT・安全あるいは環境において、現行機から飛躍的に進歩し、競合他社が 3
年以内には追いつくことができないような、いわゆるダントツ商品も、こうしたチームワークから
生み出されているのです。
このコーナーでは、私たちが誇るダントツ商品について、その高い性能と
ともに、チームワークのもと、技術革新を目指して日々努力を重ねた人た
ちにも焦点を当ててご紹介します。
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商
品
力
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Annual Report 2007
特集 ダントツの商品力
油圧ショベル
PC200-8 ハイブリッド
油圧ショベル「PC200-8 ハイブリッド」は燃費(環境)、
安全、IT に開発コンセプトを絞り、特に CO 2 削減に直結
する燃費の改善に主眼を置きました。主要コンポーネント
をすべて内製するコマツの強みを最大限に活かし、電動旋
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回システムによるエネルギー回生とエンジンとの最適マッ
チングにより、同型現行モデル比約 25%の CO2 排出なら
びに燃料消費量の低減を達成しています。
▲ 創立 87 周年記念日の 5 月 13 日に開催した油圧ショベル「PC200-8 ハイブリッド」新車発表会
南極における棚氷の崩壊やアフリカ大陸で進む砂漠化など世界各
するという、コマツの決意表明でもあるのです。
地で異常気象による被害が増大し、地球温暖化は私たちが直面する
同時にコマツは、国際的な排出ガス規制に対応することで、窒素
最も深刻な環境問題となっています。その原因のひとつと考えられ
酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の削減にも取り組んでいます。
る二酸化炭素
(CO2)
は、もちろん建設機械からも排出されます。世界
2011 年から一段と厳しい排出ガス規制が開始されますが、コマ
で使われる建設機械から排出される CO2 の量は、化石燃料の燃焼に
ツは、こうした規制にただ従うだけでなく、技術革新をさらに進め
より全世界で排出される CO2 の総量の約 0.35%* を占めると推定さ
て業界をリードしていきたいと考えています。
れます。コマツは、建設機械の作業量当たりの燃料消費量を低減する
* コマツの推定:2004 年における化石燃料の燃焼による全世界の二酸化炭素総排出量と全
世界で稼働する建設機械の主要4 機種(油圧ショベル、ブルドーザー、ホイー
ルローダーとダンプトラック)からの二酸化炭素排出量合計の割合
ことにより、地球温暖化の防止に少しでも貢献したいと考えます。
環境問題は、人々が「一個人や一企業の努力ではどうすることも
コマツ・ハイブリッド・システムの概要
できない。
」と考えることで、より一層深刻なものになってしまうの
独自開発の「コマツ・ハイブリッド・システム」は、車体旋回
ではないでしょうか。今回市場導入した油圧ショベル「PC200-8
の減速時に発生するエネルギーを電気エネルギーに変換し、キャ
ハイブリッド」は、コマツの 10 年間に亘る努力の結晶であり、CO2
パシター(大容量コンデンサー)と呼ばれる蓄電器に蓄え、これを
の排出量を削減するために、一企業として出来うる限りの努力を
発電機モーターを通じてエンジン加速時の補助エネルギーとして
活用します。コマツ・ハイブリッド・システムを構成するコンポ
ーネントは、キャパシターセルを除きすべてコマツ内製です。
通常の建設機械との比較
通常、建設機械の車体旋回動作には油圧モーターを使用します
が、ハイブリッド式では旋回電気モーターを新規開発しました。こ
れにより旋回減速時に発生するエネルギーを回収することで、ハ
イブリッドが実現しました。
▲ コマツ・ハイブリッド・システムに熱い視線を向ける報道関係者
また実際に行ったユーザーテストでは、旋回動作の頻度が高い作
業現場において、最大で 41%の燃費低減が認められました。
ハイブリッド式自動車との比較:キャパシター v.s. バッテリー
自動車の場合は、発進加速の際に大容量の電気エネルギーを必
要とし、その後は比較的安定したエンジン回転で使われます。それ
に対して、建設機械の場合、掘削作業等で、短時間で頻繁なエンジ
ン回転の変動が生じます。この変動に追随してアシストするため
に、キャパシターを搭載しています。
自動車に使われるバッテリーは化学反応を伴い、放充電に時間
を要するため、十分なアシストが得られませんが、キャパシターで
あれば効率よく回収・蓄電し、また瞬時に放電することが可能とな
瞬発性
建設機械
パ
ワ
ー
密
度
︵
て、ハイブリッド式では、回生したエネルギーをエンジン加速の電
動アシストとして活用するため、エンジンは燃費効率の良い低速回
転域で使用することができます。また作業の待機時(デセル時)も、
フォークリフト
キャパシター
大
き
な
力
を
短
時
間
に
︶
超低速回転に抑えることができ、大幅な燃費低減を実現しました。
「PC200 − 8」通常機と比較して、平均 25%の燃費低減を実現
しました。
バッテリー
自動車
持続性
エネルギー密度(小さな力を長時間)(容量)
コマツ・ハイブリッド・システムの概要図
燃費低減効果
通常機比 燃料消費量
(市場平均試算*)
25%低減
ユーザーテストにおける
実測データ
最大41%低減
100
80
車体旋回
エンジン加速電動アシスト
−30%
60
−31%
−41%
40
旋回電気モーター
インバーター
発電機モーター
キャパシターから放電
された電気をエンジン
加速時のアシストに活用
積み込み作業の旋回で
減速時に発生する
エネルギーを回収
キャパシター
電気エネルギーを効率よく
瞬時に蓄電・放電可能
エ
ン
ジ
ン
20
0
PC200-8 PC200-8
通常機 ハイブリッド
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ります。
通常の建設機械がディーゼルエンジンのみで稼働するのに対し
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A社
B社
C社
(残土処理)
(一般土木)
(汚泥処理)
PC200-8ハイブリッドによる
ユーザーテストの実績値
*市場平均は、建設機械の平均的な使われ方から算出した社内基準で試算。
特集 ダントツの商品力
バッテリーハイブリッド
フォークリフト
アリオン・ハイブリッドは、従来のバッテリーに加えて補助電
源としてキャパシター(大容量コンデンサー)を搭載した二系
統の電源を持つ世界初のハイブリッドフォークリフトです。ハ
イブリッド化により、従来のバッテリー車から更に最大 20%
電気消費量(CO 2 排出量)を削減できます。その性能が評価
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され、社団法人日本機械工業連合会主催の平成 19 年度(第
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28 回)優秀省エネルギー機器表彰において、最高賞「経済
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産業大臣賞」を受賞しました。
▲ 横浜中央青果市場で終日稼働する 1.5トン・アリオン・ハイブリッド
金港青果株式会社
代表取締役社長
大倉 明博 様
「ご存知のように、日本で
するには、野菜や果物の生産者から小売業者の店頭にいたるまで、
は高齢化が進む一方で、少子
すべての関係者が情報を共有できる
「市場」にならなければいけない
化により人口が減っています。
と思います。そのためには、まず「市場」から食の安全について、積
人口減の社会では、自然環境や食べること、生き
極的な情報発信をする必要があります。当社が真っ先にハイブリッ
ることを原点から話し合い、行動することが大切
ドフォークリフトを購入したのも、食の安全を更に確実なものにし
だと思います。食を扱う青果市場では常に、
ようという
「市場」側の努力を伝えて、仲間作りをするためです。ま
環境、安心、安全が最優先されます
た、レシピなど食に関する情報も発信することで、お客さまである
が、
「市場」自体のハードとソフ
消費者の皆さんにより近い存在になるべきだとも考えています。
ト、さらには公的使命も
実用面でのハイブリット車の魅力は、なんと言っても急速補充電
含めて、その機能が見
機能です。従来のバッテリー車では、充電時間の長さが大きな問題
直される時代が来て
でした。また横浜中央青果市場では仲卸業者も含めると 100 台の
いると思います。
バッテリー車が稼働していますが、現在はまだ十分な数の充電用
食の安心や
ソケットがありません。もし 100 台がハイブリッド車になれば、市
安全を確保
場全体の業務の効率化は革新的に進むでしょう。」
8時間就業を余裕を持って確保
8:00
420Ah
バッテリー
標準バッテリー車では
稼働
12:00
13:00
昼休
17:00
定時までもちません。
稼働時間を延長するには
もっと大きなバッテリーが必要です。
稼働
稼働時間
(めやす)
ハイブリッド車では
360Ah
バッテリー
稼働
昼休
360Ah
バッテリー
稼働
昼休
17:20
稼働
急速補充電
14:40
稼働
約
15:40
充電
急速補充電
稼働
20:00
8 20
時間
分
10 00
約
時間
分
アリオン・ハイブリッドのハイブリッドシステム
制動エネルギーをキャパシターが効率よく回収
外部電源
制
動
エ
ネ
ル
ギ
ー
キャパシター
バッテリー
フォークリフト作業
「私たちのグループがコマツ
コマツ 開発本部
建機エレクトロニクス事業部
システム開発センタ
パワーエレクトロニクスグループ
グループ全体のハイブリッド・
グループマネジャー 新垣
ています。先般世界で初めて市
淑隆(右)
コントローラーの開発を担当し
コマツユーティリティ株式会社
開発本部
ユーティリティ第二開発センタ
副所長 吉田 正志(右)
第一バッテリ車開発グループ
チーム長 道願 能宏(左)
「今回の開発に当たっては、私た
ちはバッテリー車では後発メーカーで
すので、既存のバッテリー車の課題を
解決することに主眼を置きました。主
主幹技師 吉田
大輔(左)
場導入されたハイブリッド油圧
チーム長 遠藤
貴義(中央)
ショベルと、昨年 5 月にコマツ
間の延長、電圧低下によるパワーダウ
ユーティリティ(株)が発売し
ンの解消、バッテリー液の補水作業をなくすなどメンテナンスの
た世界初バッテリーハイブリッドフォークリフトのコントローラ
ーも私たちが開発しました。
な内容は、充電時間の短縮と稼働時
簡素化、そして走行性能の向上です。
試作車のコントローラーは確かに大きなサイズでしたが、工夫
私たちが取り組んでいるパワーエレクトロニクスは比較的新し
をすれば従来の車体の大きさを変えずに何とか押し込められると
い技術です。バッテリーハイブリッドフォークリフトの場合は、限
思いました。フォークリフトは倉庫など狭いスペースで働く車両
られた蓄電資源を有効に活用し、最大限の省エネと長時間稼働を
ですので、コンパクトでパワーのあるのが理想だからです。
実現するための制御にこれを応用しています。コントローラーの
熱問題の解消には、パワーエレクトロニクスグループの皆さん
CPU(中央演算装置)がいろいろな状況を計算・判断して、異なった
と一体となって取り組みました。不思議なもので、部品などの配
電源であるキャパシターとバッテリーの役割分担を制御するので
列が整然として綺麗に揃っていると、機械の性能も必然的に良く
すが、簡単に言えば、最適なエネルギー配分で機械が動くように指
なるものです。また、振動に関して、コマツの建機で蓄積した解析
示する頭脳みたいなものです。
力と多種多様な問題解決ノウハウは素晴らしいものでした。フォ
このハイブリッド・コントローラーは、もともと建機用に開発し
ていましたが、まず小松フォークリフト(現コマツユーティリティ)
のバッテリー式フォークリフトに採用してもらい、2004 年 1 月
ークリフトは舗装面を走行するのが常識ですが、建機はその逆で
すから、当然振動に対しては敏感になるのですね。
今回の共同開発では、パワーエレクトロニクスグループ以外にも、
に小松フォークリフトの車体技術陣との共同開発がスタートしま
コマツグループ全体からいろいろな協力を得ています。特にコマツ
した。最初の試作車では、大きなコントローラーを車両の屋根に
大阪工場からは大変貴重な支援をもらいました。当社では試作車
載せていましたが、約 2 年かけてコントローラーを 3 分の 1 のサ
を 300 時間動かして、不具合など問題点を洗い出して改善してい
イズにコンパクト化しました。
ますが、コマツ大阪工場に依頼したところ、同じオペレーターが作
コンパクト化の次は「熱」
との戦いでした。建機の場合も、最後の
戦いはほとんど、熱、騒音、振動です。勿論、事前にシミュレーショ
ンをしていますが、現実をすべて予測するのは不可能です。特にこ
の期間は、コマツの強みであるコンポーネントの内製技術を実感し
た時です。小松フォークリフトの技術陣は、熱を逃がすためにラジエ
ーターの配置や部品の配列パターンから、車体の空気の流れや傾斜
ファンの向きと数、ボルト用の穴の開け方にいたるまで、総合的かつ
綿密に構造を改良してくれました。フォークリフト製造で蓄積された
知識はもとより、3 次元でものを考えてきた人たちならではの力量
を見せつけられた思いで、大変貴重な経験となりました。
」
動環境の異なる現場に 1 年間以上出向いてくれ、通常のお客さま以
上の厳しい目で性能評価をしてくれました。
」
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特集 ダントツの商品力
中型ブルドーザー D51
ブレード接地面まで見えるダントツの前方視界性に加え、
コマツ独自の「電子制御ハイドロスタティックトランスミッ
ション(HST)」により、左右の履帯を2 組の油圧ポンプと
油圧モーターで駆動し、抜群の操作性と整地性を提供しま
す。また、構造をシンプル化したことにより、溶接部品が
減り、クラス最高の耐久性も実現しました。
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▲ D51-22 は同一クラスで世界最高の前方視界性をオペレーターに提供
「それは全員参加、すべてが未知への挑
を頂き救われました。さらにコマツアメリカ本社のマーケティング
戦でした。世界初スーパースラントノーズ
やサービス、欧州コマツの人たちからも、このニューモデルの市場
ブルドーザー D51-22 は、日本、米国、ブ
導入実現に向けて勇気付けられる支援をもらいました。
「成功体験
ラジルそしてヨーロッパと、コマツの仲間
をここの全員で!」この言葉が私を支え続けました。
がグローバルチームワークの旗のもと、困
コマツ 開発本部
建機第一開発センタ
小型開発グループ
グループマネジャー
迎野 雅行
難と感動を共有して開発されました。
コマツ初の海外開発のブルドーザー D51-22 は、開発から市場
導入までに 39 ヵ月を要しましたが、今、市場で熱い注目を浴びて
2002 年4 月、コマツブルドーザー D41-
いると聞いています。また、スーパースラントノーズがコマツの中・
6 が北米市場でシェアを落としていた頃、上
小型ブルドーザーの標準にもなりました。そして今年 5 月、私は後
司と共に、そのモデルチェンジ車の開発と
継者の Karl さんと共に社長表彰の栄誉を受けました。これはひと
後継者の育成という2 つのミッションを胸
えに、今回のプロジェクトに惜しみなく協力してくれた仲間全員に
に、コマツアメリカチャタヌガ工場内に新設された北米第一開発セ
よるグローバルチームワークの成果であると確信しています。
」
ンタ
(USTC1)
に赴任しました。着任後現地設計者の採用を進めて
いた頃、北米開発本部長から、
「日本ではできない新しいブルを造ろ
う。
」
と激励され、ブルドーザーは他機種と比べて前方視界が顕著に
劣り運転が難しいという若手オペレーターの不満を思い出しました。
1990 年当時、既にスーパースラントノーズのアイデアは浮かんで
いましたが、技術的な達成手段がなく諦めていました。それから 12
年経ち、コマツの技術は大きく進歩していました。我々はメイフラ
ワー号でこの新天地に来たのだと言い聞かせ、世界初への挑戦の道
を歩み始めました。
2002 年 9 月、米国人設計者と共に開発を開始しましたが、道
半ばで 3 名の優秀な技術者が退職しました。これが私の一番辛い
思い出ですが、日本の建機第一開発センタから人材の支援を受け、
コマツブラジルと外装部品の製造を専門に扱う子会社のアトミッ
クス工業からお客さまの声や製造方法など、多くの前向きな提案
▲ クラス最大のパワーと大容量ブレードにより高生産性を実現
一方、品質の向上を目指して、両社の強みを活かす設計に努めまし
た。結果としてモジュラー型(複数機能を集約する部品構成)設計
の採用と大型鋳鋼部品の多用化により、部品点数の削減と組立時
間の短縮を達成できました。
最終的には、D51-22 がダントツ商品であることをお客さまが
証明してくれました。道具が使いやすければ、自然と所有者に大き
な利益をもたらします。お客さまによる試乗テストでは、一人のオ
ペレーターが運転席に座ったまま、今までのブルドーザーでは経験
したことのない何か素晴らしい感覚を「こりゃ凄い!」の一言で表
現してくれたことが耳に残っています。
」
「コマツブラジルでは、ブルドーザー
D41-6 のモデルチェンジを長く待っていま
した。新型の開発と生産に成功すれば、
USTC1 と協業で当社がマザー工場になる
ことを意味していたからです。
「我々が、北米第一開発センタ(USTC1)
コマツブラジル有限会社
取締役 製造担当
D41 と D51 のブルドーザーの一極生産・
できたことは、数多くの困難に挑戦(チャレ
Jorge Hosokawa
供給拠点でもありますので、新型モデルに
ンジ)
してきた結果です。
コマツアメリカ株式会社
北米開発本部
北米第一開発センタ
チーフエンジニア
Karl R. Dommert
また、当社はコマツグループにおける
を立ち上げ、ブルドーザー D51-22 を開発
採用してもらいたい要望を沢山持っていま
開発当初は、メンバーの言語が日本語、英
した。それにはお客さまからの苦情や提案だけでなく、生産性向上
語、ポルトガル語、ヒンディー語と異なり、
やコスト低減のための私たち自身のアイデアも含まれていました。
コミュニケーションにも苦労しましたが、エ
この機会は USTC1と当社にとってダブルチャレンジでした。まず、
ンジニアリングという共通言語のもと、設
当社にとって新型モデルを開発から生産まで担当することは初めて
計に関する専門用語やチャートを活用する
でした。二点目は、その新型モデルがダントツの基準を満たさなけ
ことで最終的にはメンバー全員が一体とな
ればならないことでした。
りました。
私たちは USTC1が設計図を描き始める前の段階から彼らと一
また、私たち米国人設計者にとっては、設計書類の多くが初めて
体となり参画しました。私たちのアイデアや市場ニーズに加えて、
目にするものばかりで英語にされていないものも多く、限られた
新型モデルには世界初となるスーパースラントノーズや車体後部
時間の中で、コマツ独自の技術標準や開発手順になれることも大き
に搭載するラジエーターなど多くのイノベーションがあったので
なチャレンジでした。
製造技術力や生産能力などの技術情報を共有する必要があったか
そして、コマツブラジルとアトミックス工業からの市場情報と製
らです。また、アトミックス工業も開発初期段階から参画して、彼
造知識は、頑強かつコスト競争力のある商品作りへのチャレンジに
らの持つ板金技術などの専門知識を提供してくれました。彼らの
大変有効でした。私たちは両社と共同して、製造原価の低減を図る
献身的な関与がなければ、スーパースラントノーズの様なデザイン
は生まれなかったと思います。
この共同プロジェクトが進むにつれ、社内の雰囲気に変化が現
れたのを感じました。社員全員がこのプロジェクトにおける自分
自身の役割や責任を明確に意識するようになり、これが自信と使
命感となって全社のモチベーションが大きく高揚しました。」
▲ 新型機 : D51-22
▲ 従来機 : D41-6
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特集 ダントツの商品力
大型 AC サーボプレス
コマツの「ダントツ商品」のひとつである大型 AC サーボプレ
スは、世界最高品質を誇るトヨタ自動車のグローバル生産に
大きく貢献しています。従来の機械式プレスでは、汎用モー
ターを用い、スライドを一定のモーションで上下動させて加
圧力を発生させていました。これを AC サーボ化することで、
位置・圧力を自由に制御できるようになったため、従来に比
べて、安定した成形品質の確保と高い生産性、生産立上げリ
20
ードタイムの大幅な短縮、省スペース化など、様々な利点を
特
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実現できました。環境面でも、機械式プレスに比べ、消費電
ダ
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ツ
の
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力が約 35%削減され、騒音も 20dB 低減されました。
▲ 最高級車レクサスのボディパネルの成形にも使用される大型 AC サーボプレス
トヨタ自動車株式会社
専務取締役
井川 正治 様
「トヨタでは、大型 AC サーボプレスの
次に、現在の AC サーボプレスは薄板を加工していますが、この
内製原価低減への貢献を高く評価し、2006
技術を発展させて将来は厚板加工や鍛造分野でも使えるプレスを
年度に「技術開発賞」をコマツに授与してい
開発して欲しいと考えています。
ますが、今後ともパートナーとして相互の強みを融合し、更なる発
3 番目は環境面での更なる向上を目指していただきたいと思いま
展を目指したいと考えています。そこで、コマツに期待することが
す。消費エネルギーについては、35%程低減できましたが、まだま
いくつかあります。
だロスエネルギーがあり、これもなくして全世界的な CO2 排出問題
まずは、プレスの設計から据付けまでのリードタイムの更なる短
の解消へ貢献したいと思っています。また、作動油の使用量は大幅
縮をお願いしたいと思います。車の場
に低減されていますが、潤滑油の使用量がそれほど低減されていま
合、開発から市場導入まで早いものでは
せん。それには、車のようにリサイクル循環型あるいは完全な油レ
1 年を切りますので、可能な限りそれに
ス化を希望します。トヨタでは、土壌汚染の防止として油の地下浸透
近づけて欲しいと思います。
を防ぐため、従来からコンクリート壁で密閉していますが、そのよう
な心配もなくなります。環境面では、騒音の問題もあります。サーボ
化により騒音も以前より顕著に低減されていますが、理想的
な作業環境という側面からは改善の余地がまだあると思い
ます。理想は白物家電並みの騒音ですね。
4 番目は、省資源の観点から、数百トンもあるプレスの
原材料である鉄のリサイクルにも取り組んでいただきたい
と思います。古いプレスを原材料として新しいサーボプレ
スに変える事ができれば、環境、コストに対しても優位性
が更に向上します。
最後に、コマツもトヨタもモノづくりのメーカーとして、
お互いの技術力を更に進化、あるいは融合させて、環境な
ど巾広く社会に貢献できるよう頑張りましょう。」
「昔から言われてきたプレス工場の3K
「コマツでは、複数のモーターを多軸
(きつい、汚い、暗い)職場からの脱却。そ
で制御するサーボ技術をプレス機械に応
の作業環境を払拭し、誰もがこぞって働
用すべく、約 20 年前から研究開発を進め
きたくなる職場環境づくりへの思いがあ
てきました。2002 年に日本最大級の工
作機械展示会である「第 21 回日本国際工
りました。
トヨタ自動車株式会社
プレス生技部 技術管理室長
相馬 清親 様
2004 年、現職に就いた当時、会社で
はグローバル生産体制の強化に取り組ん
コマツ 産機事業統括本部
大型プレス事業本部 副本部長
西田 憲二
作機械見本市」に中・小型 AC サーボプレ
ス・シリーズを出展したほか、2004 年
でいました。まさに時機到来という思い
の同見本市でモジュールサーボプレスお
で、
『安全で環境に優しい』
『世界中で同品質の車両を同時に立上げ
よび大型プレス用 AC サーボ駆動式のダイクッションを世界で初め
られる』
『世界中の誰でも扱えて保全の手がかからない』
『生産性が
て出展し、熱い注目を浴びました。
高くコスト競争力がある』いわゆる質・量・コストのパフォーマンス
を具えたプレスの導入が私の責務であると考えました。
従来の大型機械式プレスでは、自動車のボディーパネルなど大き
21
なプレス材料を成形する際、フライホイールが運動エネルギーを
特
集
グローバル戦略の中、中国等のプロジェクトに間に合わせようと
蓄積し、1,000 ∼ 2,000トンもの加圧力で上下のダイ(金型)で
すると準備期間は評価を含めて約 1.5 年しかない。その危機感の
鋼板を挟み、絞り成形します。ダイクッションは、鋼板を挟む力を
中でコマツと待ったなしの開発に取り組みました。両社の専任メ
下部ダイの下から、空気圧あるいは油圧で制御する装置です。これ
ンバーでワーキングチームを結成し、企業間の壁を取り払って、毎
をサーボモーターに替えることにより、従来は職人技だった工程
週白熱した議論の末出来上がったのが現在の大型 AC サーボプレ
を数値化して制御できるようになりました。わずか 0.2 秒間で複
スです。その間、コマツの皆さんには、うるさくて厄介な奴だと思
雑な圧力調整を電気的に制御するという非常に高度な技術です。
われたと思いますが、関係者の方々には心から感謝したいと思い
大型プレスは基本的にカスタムメードですから、お客さまのスペ
ックに合わせて開発・製造し、現場に据え付けて最終調整を行いま
ます。
本音を言いますと、現在の大型 AC サーボプレスは、現時点で
す。今回、納入したのは世界初大型 AC サーボプレスの 1 号機でし
の世界最高水準ではありますが、実際に形にしてみると、まだま
たから、トヨタ自動車様のエンジニアの方々と議論を重ね、多くの
だ改善の余地があると感じます。技術の振り返りをし、反省すべ
技術的な課題を一つひとつクリアしていきました。特にサーボダ
き点や見逃した点も含めて、今後、更に進化させていきたいと考
イクッションの衝撃荷重を設定値に近づける制御技術は最難関とさ
えています。」
れていました。あの短期間に現在の世界最高レベルの成形性を達
成できたのは、トヨタ自動車様と一つのゴールを目指したチームワ
大型 AC サーボプレスによる主な改善ポイント
生産性向上
1 時間当たり生産量 350 枚→ 700 枚(2 倍)
ークの成果だと思います。」
トヨタグループ様向け 大型ACサーボプレス納入実績
省エネルギー
CO2 排出量年間 120 万トン削減(− 35%)
騒音低減
105dB → 85dB(騒音エネルギー 100 分の 1)
7ライン
北米
7ライン
中国
欧州
保全作業軽減
16 時間→ 4 時間(4 分の 1)
省スペース
プレス容積 50%削減
1ライン
19ライン
日本
2ライン
1ライン
合計
ライン
38
東南アジア
アフリカ
1ライン
オーストラリア
ダ
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Fly UP