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東京電力福島第一原子力 発電所事故 に由来する 汚染水問題を考える

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東京電力福島第一原子力 発電所事故 に由来する 汚染水問題を考える
特集汚染水:溶け出した炉心のゆくえ
東京電力福島第一原子力
発電所事故に由来する
汚染水問題を考える
青山道夫
あおやま みちお
福島大学 環境放射能研究所
年 1 月にかけて行った委託調査の結果*2では,外
1
増え続ける汚染水
洋での放射性セシウムの放射能は事故前のレベル
に戻りつつある。
2011 年 3 月におきた東京電力福島第一原子力
発電所(以下,東電福島第一原発)の事故からすでに
しかし,事故サイト近傍では事故時約 2 カ月
3
間の直接漏洩量の 3.5!0.7 PBq(ペタベクレル。ペタ
年以上が経過したにもかかわらず,原子炉の冷却
は 1015)3に比べれば桁違いに微量ではあるが,依然
のために注入している水と建屋地下に流入する地
と し て セ シ ウ ム-137 の 放 射 能 に し て 1000 Bq
下水の影響で,陸上に蓄積せざるをえない汚染水
3
1),漏洩量として 1 日あたり 10~30 GBq
m-(図
は増え続けている。2014 年 3 月時点で総容量約
(ギガベクレル。ギガは 109)程度の漏洩が継続してい
49 万 m3 のタンクが用意されており,その 90%
る*3。
以上に複数の化学組成をもつ何らかの処理をされ
国や福島県の調査では,最近福島県沿岸で採れ
た汚染水が溶液として保管されている。この汚染
るほとんどの魚種で放射性セシウムの放射能は国
水を貯蔵するタンクの総容量は来年 3 月末で 81
の基準値である 100 Bq kg
万 m に達する計画である。その汚染水を処理す
ごく一部の魚種で基準値を超えるものが見つかっ
るために導入された,トリチウム以外の核種を除
ている。水産庁によると,東電福島第一原発事故
3
-1
を下回っているが,
は
以降,福島県においてこれまで 2 万 0907 検体の
まともに稼働できていない状況であり,汚染水の
水産物の放射性物質調査を行っているが,調査の
処理計画は遅れている。
結果,基準値を超える割合は事故からの時間の経
去できるとされている多核種除去設備 ALPS
*1
海洋に目をやると,筆者が行った 2011 年事故
過に伴い低下してきている。2011 年 4~6 月期に
直 後 か ら 2012 年 12 月 ま で の 北 太 平 洋 で の 調
は基準値を超える割合が 53% となっていたが,
査 と,原子力規制庁が 2013 年 12 月から 2014
2014 年 1~3 月期は 1.7% まで低下している*4。
1, 2
本稿執筆時点の 2014 年 6 月 23 日現在でも福島
*1―東京電力によると,すでに設置している水処理設備では,
放射性物質のセシウムを主に除去しているが,セシウム以外の
除去が困難であった。ALPS ではトリチウムを除くセシウム以
外の放射性物質 62 種の除去が可能となっている。
県沿岸と茨城県沿岸では一部の試験操業を除くと
*2―http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/10000/9300/
24/northpacific.pdf
*3―2013 年 9 月の国際原子力機関[IAEA]の科学フォーラム
2013 での筆者の講演,http://www-pub.iaea.org/MTCD/Meet
On radioactive contaminated water derived from TEPCO Fuku-
ings/PDFplus/2013/cn207/Presentations/1028-Aoyama.pdf
shima Dai-ichi nuclear power plant accident
*4―2014 年 5 月 31 日現在,http://www.jfa.maff.go.jp/j/hou
Michio AOYAMA
syanou/kekka.html
0856
KAGAKU
Aug. 2014 Vol.84 No.8
2
東京電力福島第一原子力発電所事故の
経過と現状の把握
108
Cs 福島第一 5, 6 放水口
137
Cs 茨城県波崎
137
7
10
137
Cs
(Bq m−3)
106
105
2011 年の東電福島第一原発事故による放出は
どうであったかということをこの節で概説する。
4
10
一口で言えば東電福島第一原発事故は,海岸に立
103
地し,かつ人為的に丘を掘り下げて標高を下げ海
102
面すれすれの低いところに設置したため,地震と
津波に遭って冷却水を喪失し,結果として 3 つ
10
1
0
200
400
600
800 1000
2011 年 3 月 11 日からの日数
1200
図 1―2014 年 3 月 22 日までの東電福島第一原子力発電所 5, 6
放水口
(図中○)
および茨城県沿岸波崎(2013 年 3 月まで,図
中□)での海水中セシウム-137 放射能の推移
の原子炉で燃料が鎔解しているという事故である。
その東電福島第一原発事故により環境に放出さ
れた放射性セシウム同位体(セシウム-134 とセシウム
-137)の広がりを知るため,筆者は
2011 年 4 月か
ら 2012 年 3 月にかけて北太平洋全域で観測を実
施した1, 2。それらの結果あきらかになった東電福
操業を自粛しており,出荷制限も行われている。
島第一原発事故に由来する放射性セシウムの北太
筆者は原子力規制委員会の海洋モニタリングに
平洋での分布と輸送経路を他の研究者による結
関する検討会の委員として,海洋側での東電福島
果4∼6 も含めてまとめると以下のようになる。
第一原発事故起源の人工放射性核種の測定や国と
東電福島第一原発は沿岸に立地しており,事故
して何をなすべきかについて,すでに意見を提出
サイト近傍の海洋では北向きあるいは南向きの沿
している 。本稿では,原子力規制委員会に提出
岸に沿う流れが卓越していることから,海洋へ直
した意見および岩波書店の雑誌『世界』臨時増刊
接漏洩した人工放射性物質は拡散ではなくその沿
(2014 年 1 月)に寄稿した論
『イチエフ・クライシス』
岸の流れの様相にしたがって輸送されたと考えら
考を発展させ,水産物の調査や汚染水の漏洩経路
れる。また,沿岸から沖合に視点を移すと,事故
についての議論にまで踏み込んで論じることとす
サイトの沖合である本州東方沖は,日本のはるか
る。
南からフィリピン―沖縄沿いに北上してくる黒潮
*5
とアリューシャン列島から千島列島沿いに南下し
本稿の主要な論点を,下記に列挙する。
(1)東電福島第一原発事故の経過と現状の把握
てくる親潮が出会い,さらに黒潮続流につながる
(2)事故サイト内と周辺海域における放射性セ
東向きの流れが卓越している海域である。事故時
には,沿岸では南向きの流れが卓越していたので,
シウムのマスバランス
(3)
「なぜ特定の魚種で放射性セシウムの放射
能がさがらないか?」をどのように解明するか
(4)新たな漏洩に備えた体制の整備(原子力規制委
東電福島第一原発事故起源の人工放射性物質は,
まず南に輸送され,その後東に輸送されることに
なった。
また,東電福島第一原発から大気に放出された
員会に提出した意見の補足改訂)
(5)放射性セシウム以外の核種の分析と汚染水
放射性セシウムが日本から主に東や北東方向へ大
気経由で輸送された結果を反映し,事故直後の
漏洩経路の議論
2011 年 4~6 月では西部北太平洋高緯度域で濃度
*5―2013 年 10 月,http://www.nsr.go.jp/committee/yuushi
kisya/kaiyou_monitoring/data/0002_09.pdf
が高い。また日本海側や日本の北および南では濃
度が低い。また,北太平洋のところどころに大気
東京電力福島第一原子力発電所事故に由来する汚染水問題を考える
科学
0857
104
104
(c)2012 年 10∼12 月
(a)2011 年 4∼6 月
Cs
(Bq m−3)
103
102
137
102
137
Cs
(Bq m−3)
103
10
1
120
10
140
160
東経
180
160
140
西経
1
120
120
104
180
160
140
西経
120
104
(b)2011 年 10∼12 月
(d)2013 年 12 月∼2014 年 1 月
103
Cs
(Bq m−3)
103
102
137
102
137
Cs
(Bq m−3)
140
160
東経
10
1
120
10
140
160
東経
180
160
140
西経
120
1
120
140
160
東経
180
160
140
西経
120
図 2―北太平洋表層海水中のセシウム 137 放射能の推移
経由で輸送されたものが雨に伴って局所的に降下
さらに,2012 年 1~3 月には表層でのセシウム
してできたと考えられる,周辺より高濃度となっ
-137 濃度が 10 Bq m
ている領域が北緯 40 度と北緯 50 度の間の日付
度線(日付変更線)付近まで達していることが観測さ
変更線付近や西経 140 度から 150 度付近に見え
れた。この観測結果から東への移動速度を見積も
た(図 2a)。表層でのセシウム-137 の濃度が 10 Bq
ると,270 日間で 1800 km 移動したことになり,
-3
を超える領域が東経 180
を超える領域は,2011 年 6 月には東経 160
8 cm s-1 という推定ができる。海洋物理学の観測
度までしか到達していなかったが,その後,海洋
から見積もられているこの海域での表層の流速は
表層での輸送により東に移動し,2011 年 7~9 月
4~16 cm s-1 であることから,得られた速度は,
に は 東 経 165 度 ま で 広 が っ た。2011 年 10~12
環境中に放出されたあと海洋表面から海洋に入っ
m
-3
月には東経 170 度程度まで広がっており,さら
たセシウム-137 がよく溶けて海水と共に輸送さ
にその東側の東経 170 度から西経 170 度の領域
れていることを示している2。
でも,わずかな表層セシウム-137 濃度の上昇が
見出されている(図 2b)。
0858
KAGAKU
Aug. 2014 Vol.84 No.8
その後,表層を輸送されていた東電福島第一原
発事故起源のセシウム-137 は,2011 年と 2012
年の間の冬季に冷却により表層から沈み込み(サブ
表 1―セシウム-137 のマスバランス
ダクション)
,その結果として,亜熱帯モード水あ
存在場所
るいは中央モード水の生成に伴って海洋内部へ輸
炉心内量(事故時)
送されたことが観測からわかっている。2012 年
回収量
6 月の時点で,東経 165 度線北緯 40 度では海水
中蓄積量の 80% が 200 m 以深に存在している。
表層からサブダクションで沈み込んだセシウム
-137 は,放射壊変と移流拡散により濃度は減少
していくが,今後は過去の研究結果であきらかに
なっている内部輸送過程7にしたがって,一部は
セシウム-137(PBq)
700
汚染水(事故時)
大気への漏洩量
海洋への漏洩量
炉心近傍残存量
140
200 以上
14∼17 3.5!0.7(3.6!0.7)
約 480 注:事故時の汚染水は炉心内の量の内数であるので残存量=炉
心内量−(回収量+大気への漏洩量+海洋への漏洩量)となる。
海洋への直接漏洩は継続しているので,事故直後の約 2 カ月
間では 3.5!0.7 PBq であるが期間を延長すると 3.6!0.7 PBq
となる。
日本近海にもどるとともに,インド洋から大西洋
かともいえる)の観点で整理すると,東電福島第一原
および太平洋の赤道の東で南に越えて南太平洋に
発の 1 号炉から 3 号炉までの 3 つの炉心の中に
輸送されるであろう。
2011 年 3 月の地震で停止した時点で 700 PBq10
さらに表層でのセシウム-137 の濃度が 10 Bq
のセシウム-137(とほぼ同量のセシウム-134)が存在し,
-3
を超える領域は 2012 年 10~12 月には西経
そのうち 140 PBq は溶けて壊れた原子炉の下に
170
度まで達していた(図 2c)。さらに原子力規制
滞留水としてたまっていたことがわかっている11。
m
庁の観測によると 2013 年 12 月から 2014 年 1 月
注ぎ込んでいる冷却水によって燃料からセシウム
では東電福島第一原発事故起源の放射性セシウム
-137 が洗い出され,回収されたセシウム-137*6
の極大はさらに東に進み,東部北太平洋の中央部
の総量はこの滞留水分の 140 PBq を超え,すで
に存在していたことがわかっている(図 2d)。
に 200 PBq を超えている状態であると推察でき
セシウム-137 の濃度変動を時間軸で見ると,
る(表 1)。
東電福島第一原発の 5, 6 放水口では事故の直後
外洋への放出量として今までの筆者と共同研究
に急上昇し,1 m あたり 1000 万 Bq を超えてい
者らによる観測と解析の結果,セシウム-137 に
た 。図 1 に示すように事故後 1 年くらいで濃度
ついては
(1)
直接原子炉から水に溶けた状態で海
3
8
は 1 m あたり 1000 Bq のオーダーまで低下した
へ出たのは 140 PBq あった滞留水の 3% 程度(炉
が,その後の下がり方は遅く,2014 年 1 月の時
心総量に対しては 0.5%)に相当する
3
3.6!0.7 PBq であ
点でも近傍では 1 m あたり 1000 Bq を維持して
り,
(2)
地震で停止した時点で 3 つの原子炉中に
いる。もし漏洩が止まっていれば,理論的には数
合わせて 700 PBq あり,うちその 2% 強の 14~
十日で事故前の水準の 1 m3 あたり数 Bq に戻る
17 PBq ぐらいのセシウム-137 が大気に放出され,
べきであるので,戻らないということは漏洩の継
そのうち 80% 程度相当する 12~15 PBq が西部
続を意味している。それに対しすでに述べたよう
北太平洋に降下したと推定されている。航空機サ
9
に,外洋や 2013 年 3 月時点での茨城県沿岸(図 1
ーベイの結果を福島県内について積分し,その他
の四角のプロットの時系列)
ではセシウム-137
の放射能
の都道府県の降下量を足し合わせると,日本の陸
3
はほぼ事故前の水準 1 m あたり数 Bq に戻って
3
いるというのが多くの観測結果から見える。
上には 2.5 PBq が降下している。
これらの炉心の外に出た量から逆算すると,現
時点で損傷している炉心あるいは建屋内に残され
3
事故サイト内と周辺海域における
放射性セシウムのマスバランス
ているセシウム-137 の総量は約 480 PBq と推定
*6―濃縮された吸着塔が保管されている。長期的保管の方法
セシウム-137 のマスバランス(どこにどれだけある
は課題とされている。セシウム以外の核種は後述するように大
部分が汚染水としてタンクに貯留されている。
東京電力福島第一原子力発電所事故に由来する汚染水問題を考える
科学
0859
される。これらは,損傷している炉心内あるいは
ヒラメ等の底魚では,現在でも基準値を上回る値
すでに事故サイト内で炉心の外にあり,容易に環
を示す魚種が存在するため,底魚について,広い
境に出ることができるという点で,今後の環境へ
範囲で調査が必要。海底付近での放射性セシウム
与えうる大きな潜在的危険として注視する必要が
の魚への移行について調査研究を実施。
」とある。
ある。
また,水産物の放射能の全体像として,
「現在
環 境 へ 与 え た 影 響 と い う 観 点 で,セ シ ウ ム
では,シラスやコウナゴ等の表層の魚,カツオ・
-137 の環境中への放出量を大きさで並べると,
マグロ類,シロザケ,サンマといった回遊魚,イ
過去最大は 1950 年代後半から 1960 年代の大気
カ・タコ類,エビ・カニ類,貝類や海藻類等につ
圏での核実験で大気中に放出されたセシウム
いては,全ての都道府県で基準値以下。一部のカ
-137 の 700 PBq(1970 年時点での総量) が最大であり, レイ・ヒラメ類やマダラ等の底魚を中心として,
12
チェルノブイリ事故で放出された 85 PBq,そし
現在でも一部の海域において基準値を上回る魚種
て英仏の再処理工場から大西洋へ放出された
が存在。
」としている。基本的にはすでに第 2 節
40 PBq,その次に今回の福島事故での放出総量
で述べたように,海水中の放射性セシウムの放射
18~20 PBq が位置づけられる。
能は事故サイト近傍を除けば事故以前の水準にほ
核実験で北太平洋に降下したセシウム-137 は
ぼ戻っており,海産物中の放射性セシウムの放射
1970 年時点で総量は 290!30 PBq であり,2011
能が徐々に下がってきている事実と辻褄があって
年 3 月の福島事故直前ではその量は 69!7 PBq
いる。
まで減少していた。その減少の理由として,半減
期 30 年での放射壊変による減少と合わせて,す
それでは,なぜ一部の魚種で放射性セシウムの
放射能が下がらないのであろうか?
でに述べた北太平洋からインド洋,大西洋,南太
具体的には底魚であってもアイナメやヒラメな
平洋への輸送ルートで運ばれた移流による減少で
どでは,基準値を超えるものは稀になってきてい
ある。福島事故直前の北太平洋のセシウム-137
る。一方,シロメバルなどの岩礁性の魚では放射
総量は 69 PBq 程度であったのに対し,事故によ
性セシウム濃度の低下が遅く,2014 年 4 月から
る海洋への放出 15~19 PBq(大気経由と直接流入の合
2014 年 6 月 19 日まで福島県沖で採取され測定
計)
は
されたたシロメバル 30 個体中 7 個体ではセシウ
20~30% に相当する。したがって,今後新
たな放出がなければ,福島事故による北太平洋全
ム-137 放 射 能 が 80 Bq kg
体でのインパクトはマスバランスの観点からは大
を超えており,セシウム-137 とセシウム-134 の
きくない量であると言える。
合計が基準値を超えていた*8。
4
「なぜ特定の魚種で放射性セシウムの放
射能がさがらないか」
をどのように解明
するか
-1
(範 囲 は 80~220 Bq kg 1)
-
筆者は水産学や放射線生態学は専門外であるが,
生物地球化学としてこの問題を考えることはでき
る。要するにシロメバル筋肉中のセシウム-137
とセシウム-134 のソースはどこにあるかという
問題を解けばよいことになる。候補となるソース
第 1 節で述べたように,国や福島県は水産物
は,
(1)
現時点でも漏洩が続いている海水中に溶
を週 1 回程度サンプリングして調査しており,
けている放射性セシウム,(2)
沈降粒子とともに
最近では福島県沿岸で採れるほとんどの魚種で,
移動する放射性セシウム,
(3)
懸濁粒子とともに
放射性セシウムの放射能は国の基準値である 100
Bq kg-1 を下回っている。しかし,ごく一部の魚
種で基準値を超えることが見られている。水産庁
の最新の報告(2014 年 6 月)*7においても「カレイや
0860
KAGAKU
Aug. 2014 Vol.84 No.8
*7―http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/gaiyou/pdf/140610
kousin.pdf
*8―水産庁ホームページ,「平成 26 年 6 月 19 日までの検査結
果」からシロメバルの福島県沖の結果を抽出。
移動する放射性セシウム,
(4)
事故直後に高濃度
ればならないのは,原子力規制委員会が言うよう
で放出され,有機物や生体中に取り込まれている
に,海洋での「正確な資料,数値,データの提
放射性セシウム,などであろう。また除外できる
供」「国際的な観点から誤解がないよう,信頼性
ソースとしては粘土鉱物に吸着した放射性セシウ
があって意味がある数値の提示」である。この観
ムがある。ソースの候補となるもののうち,1 つ
点から現在日本で行われていて公表されているデ
あるいは複数をソースとして食物連鎖による濃縮
ータや資料が満たしていない複数の事項,さらに
過程を経てシロメバル筋肉中に蓄積された経路を
国際的な視点で見たときに不足している事項を筆
丁寧に探ることで,なぜシロメバル筋肉中で放射
者はすでに原子力規制委員会の海洋モニタリング
性セシウムの放射能が相対的に他の魚種に比べて
に関する検討会や岩波書店の雑誌『世界』臨時増
高いのかがあきらかにできると考える。現在,先
刊,同『科学』2013 年 12 月号誌上で指摘してき
行して問題解決に取り組んできた水産学や放射線
ている。国際的な視点では,それぞれの核種ごと
生態学の専門家たちと協力して調査を開始してい
に,いったいどれくらいの量が太平洋に漏洩して
る。近いうちに明解な答えをお知らせできるよう
いてどのように分布し,それが生態系や水産生物,
に努力したい。
そして水産食品として人体にどのような影響があ
5
新たな漏洩に備えた体制の整備
るかが議論の中心になる。また,国と事業者の役
割を明確化し,事業者は原子力施設からの漏洩を
止め,再び起きないように努力するとともに,漏
メルトダウンした 3 つの原子炉内に残された
洩している量と濃度の検知,国は環境および人類
燃料の冷却のために,冷却水が必要である。本来
(国内外を含む)
に対する影響評価のための観測とそ
の冷却システムは壊れて使えないため,原子炉建
の解析に注力すべきであると筆者は考える。
屋地下から汲み出した汚染水を,放射性セシウム
を取り除く処理をし,再度冷却水として原子炉に
東電福島第一原発からの汚染水の漏出の監
(1)
注ぎ込み,循環させて冷却を行っている(これを系
視のために必要な連続データが欠落しているので,
と呼ぶことにする)
。建物地下の壁は地震で損傷し,
直ちに連続モニタリングを開始するべきであるこ
外部から地下水が建屋地下に容易に流入する状況
と。
であり,その地下水が循環の過程に加わる。その
現在行われている海水中の人工放射性核種のモ
ため,結果として過剰となった処理水は敷地内の
ニタリングは採水して分析するタイプのデータの
タンクにため続けざるを得ない状況である。この
みである。この方法で試料採取の時空間密度を上
状況を改善するには,外部からの地下水の流入を
げるには限度があり,効果的な汚染水の漏洩監視
一刻も早く食い止めることが必要である。また,
ができているとは言い難い。特に漏洩の検知にお
これを海側から見ると,建屋地下から港湾内に染
いては,近傍のモニタリングの時間密度を上げる
み出してさらに外洋へと漏洩し続けている(全体か
ことが重要である。たとえば,セシウム-137 濃
らは)
極微量な部分と,3
度は,東電福島第一原発港湾内では 10 万 Bq m
つの損傷した炉内にある
-3
溶融した燃料本体,取り除かれた放射性セシウム
程度,港湾外でも 1000 Bq m
を含むスラッジなどあるいはストロンチウム-90
NaI 検出器と波高分析器を利用した海水中での複
などを含むタンクにためた汚染水など,いまは陸
数の人工放射性核種の連続測定は技術的には十分
上にあるが潜在的に海洋を大規模高濃度汚染する
可能である。実際に欧州では,河川水でのガンマ
可能性を秘めた放射能総量としては極めて大きな
線放出核種の連続モニタリングや,原子力施設内
部分とに分かれる。
および近傍では連続モニタリングが行われている。
海洋汚染の観点では,日本が国家としてしなけ
-3
程度はあるので,
したがって,少なくとも東電福島第一原発の近
東京電力福島第一原子力発電所事故に由来する汚染水問題を考える
科学
0861
300
するべきである。(2013 年 10 月に意見を提出し,東京電
250
ニタリングを行うと明言したが,残念ながら 2014 年 6 月時点
でまだ実施されていない。
)
131
力も海洋モニタリングに関する第 2 回検討委員会席上で連続モ
(Bq
I
L−1)
傍と専用港内での連続モニタリングを大至急開始
Cs
(Bq L−1)
効率的に把握する方法として,沿岸海域での航空
ま放置されていた。最近の研究13によると,海上
での航空機計測も十分実用になるという結果が出
た(図 3)。
したがって,この分野の専門家の助けも借りて,
早急に海上での航空機計測の体制を整えるべきで
600 800 1000 1200 1400
I カウント(cps)
200
100
100
200
300
400
Cs カウント(cps)
500
Cs
(Bq L−1)
500
137
本政府に引き継がれたが,海上のデータはそのま
400
134
を整備することを提案する。2011 年 3 月の事故
航空機計測を行っている。陸上の航空機計測は日
200
300
0
0
試料採取を行うという機動的なモニタリング体制
部隊が日本に投入され,陸上および海上の一部の
c=0.89
c=0.96
機計測とその結果により船舶を誘導し,効率的に
直後にはアメリカ・エネルギー省の航空機計測の
50
400
134
大量の漏洩がおこった場合,その総量と分布を
100
131
計測と船舶による調査を組み合わせた機動的なモ
海水中放射能予測モデルの整備。
バックグラウンド
150
0
0
(2)
大量の漏洩に備えて,沿岸海域での航空機
ニタリング体制と緊急時の沿岸域および外洋での
200
400
300
200
100
0
0
c=0.92
200
137
400
600
800
Cs カウント(cps)
図 3―航空機サーベイ結果と分析されたヨウ素-131,セシウム
-134,セシウム-137 放射能との関係
Inomata et al., 2014(文献 13)から引用。
ある。この航空機計測の出動時間スケールは 24
時間以内,できれば 12 時間以内が望ましい。
また,事故サイトからの放出にたいして,沿岸
を作って活動しているので,そこからの助言を得
るのも一方法であろう。
域および外洋での海水中放射能予測モデルを準備
し,放射能の予測モデルを走らせることができる
(3)
北太平洋での福島第一原発事故起源人工放
体制を構築するべきである。事業者が漏洩量の推
射能については,継続的に監視を行い,その状況
定や汚染状況の把握を行うために予測モデルをも
を解析した結果を政府としての報告や論文として
つことと別にして,原子力規制委員会として少な
世界に発信していくことは必須である。したがっ
くとも 2 つ以上の異なるモデルによる予測結果
て,北太平洋での篤志船や研究船による試料採取
を国の責任として把握する体制を確立する必要が
と継続的な監視の体制の構築を計るべきである。
ある。大気と海洋では物質輸送の時間と空間のス
また,国際原子力機関とも協力して太平洋沿岸諸
ケールが大きく異なるので,大気の SPEEDI の
国(アメリカ大陸西岸,太平洋の島嶼国,東―東南アジア諸国)
システムのような(準)リアルタイムである必要は
の沿岸における海水中放射能測定の支援も開始す
ないが,数日以内の時間スケールで,結果を得る
るべきである。
ことができるシステムを作る必要がある。日本学
術会議でもモデルについてのワーキンググループ
0862
KAGAKU
Aug. 2014 Vol.84 No.8
放射能を測定しているにもかかわらず,測
(4)
定値の不確かさが公表されていないデータが多い
おすこと。
ので,ただちに改めて不確かさをつけて公表する
こと。
現在の日本の環境放射能測定に関する放射
(7)
実際に放射能測定を行って正しく仕事をしてい
能測定法シリーズは定期的な見直しと最先端の科
るラボでは不確かさが評価されているにもかかわ
学技術の成果を取り入れて改訂されるべきである。
らず,公表されている資料からは不確かさが削除
また世界中で引用可能とするため,英語版が必要
されてしまっている。放射能測定は小さな数字を
である。
扱っているがゆえに統計的取り扱いが必須である。
6
放射性セシウム以外の核種の精密分析と
汚染水漏洩経路の議論
また,科学としては不確かさが評価されていない
数字は意味を成さない。例を挙げるならば同じよ
うに値は 1 と報告されても,1.00!0.01,1.0!
0.1,1!1,1!10 はあきらかに意味が違う。さ
第5節
(5)
で述べたように,沿岸域では少なく
らに不確かさがないと,2 つの異なるラボが分析
ともセシウム-134,セシウム-137,ストロンチ
した値を比較することもできない。例を挙げれば
ウム-90 およびトリチウムの 4 核種の高精度の分
10 と 9 は異なる値であるが,10!1 と 9!1 であ
析を行うことが必要である。なぜならば,その放
れば不確かさの範囲で同じ値とみなせる。また,
射能比を解析することによって,汚染水の継続流
不確かさがないと結果を使った研究成果を科学誌
出の監視および流出経路の特定など何が起きてい
へ投稿することも原則としてできない。過去に公
るかを推定する手がかりが得られるからである。
表されている各国政府のモニタリングデータを含
本節ではこの点についてもう少し説明する。
む世界中の海水中の放射能の測定値のほとんどす
べてには不確かさが付記されている。したがって,
今からでも遅くはないので過去を改め,不確かさ
を付記したデータとして公表するべきである。
まず明白なことは,セシウム-137 の総量 700
PBq のうちすでに 200 PBq 以上が回収されて系
(汚染水を用いた循環冷却系)から取り除かれていること
である。それに対し,トリチウムは原理的にまっ
たく取り除かれていない。ストロンチウム-90 は
(5)測定がセシウム-134 とセシウム-137 に偏
っているのを改め,他の核種についての測定も行
ALPS によってある程度系から取り除かれている
と推測できる*9。
うべきであること。沿岸域では少なくともセシウ
事故直後の 3 つの炉心内のストロンチウム-90
ム-134,セ シ ウ ム-137,ス ト ロ ン チ ウ ム-90 お
総 量 は 500 PBq で あ り,炉 心 内 で の セ シ ウ ム
よびトリチウムの 4 核種の高精度の分析を行う
-137:ストロンチウム-90 放射能比は約 0.7 であ
こと。
った。それに対し,海洋へ直接漏洩した汚染水の
なぜならば,その放射能比を解析することによ
セシウム-137:ストロンチウム 90 放射能比は約
って,汚染水の継続流出の監視および流出経路の
1:0.05 で あ り,大 気 へ 放 出 さ れ た セ シ ウ ム
特定など,何が起きているかを推定する手がかり
-137:ストロンチウム-90 放射能比は 1:0.01 以
が得られるからである。この点については第 6
下であることがわかっている。この数字が意味す
節でさらに述べる。
ることは,放射性セシウムが選択的に環境中に出
たことであり,その逆に炉心ではストロンチウム
(6)濃度測定やその時系列のみが対象となって
-90 が相対的に多いことである。その後の沿岸で
いて,海水中や堆積物中総量あるいは漏洩総量を
把握する観点が欠落しているので,これらの数字
が提示できるようにモニタリング計画を策定しな
*9―筆者が知る範囲ではすでに ALPS で系から取り除かれた
ストロンチウム-90 の総量の数字は見つけられなかった。
東京電力福島第一原子力発電所事故に由来する汚染水問題を考える
科学
0863
の海水中のセシウム-137:ストロンチウム-90 放
故時の海洋での緊急時予測モデルの開発」として
射能比はストロンチウム-90 の割合が徐々に大き
提案してきた内容も含まれている。もちろん航空
くなり最近では 1:0.5 程度となっている。この
機サーベイのような新しく得られた知見にもとづ
理由は,容易に理解でき,放射性セシウムが除去
くものも含まれている。しかし残念なことに提言
され少なくなるに従って,系のセシウム-137:
のごく一部しか実行されていないように私には思
ストロンチウム-90 放射能比が相対的にストロン
えるので,速やかな実行を望むものである。人工
チウム-90 が多いほうに動いていることと整合的
放射性核種の海洋環境への新たな大量放出が起き
である。さらに,現在外洋に漏洩している汚染水
ないことを願って本稿を終える。
の源が冷却水の循環経路のどこかにあることも推
測できる。したがって,セシウム-137:ストロ
ンチウム-90 放射能比を事故サイト内や沿岸域で
正確に測定することによって,漏洩している源を
特定することも理論的には可能である。
また,トリチウムと放射性セシウム,ストロン
チウム-90 との放射能比も同様な情報を与えてく
文献
1―M. Aoyama et al.: “North Pacific distribution and budget of radiocesium released by the 2011 Fukushima nuclear accident”
(2012)
2―M. Aoyama et al.: “Surface pathway of radioactive plume of
TEPCO Fukushima NPP1 released
134
Cs and
137
Cs,” Biogeosci-
ences, 10
(5)
, 3067
(2013)
3―D. Tsumune et al.: “One-year, regional-scale simulation of
137
Cs radioactivity in the ocean following the Fukushima Daiichi
れる。
(4)
, 5601
Nuclear Power Plant accident ,” Biogeosciences , 10
(2013)
結びに
4―M. C. Honda et al.: “Dispersion of artificial caesium-134 and
-137 in the western North Pacific one month after the Fukushima
今回の東電福島第一原発事故により海洋環境に
放出された人工放射性核種の調査にあたっては,
筆者が長年行ってきた東電福島第一原発事故以前
の海洋環境における人工放射性核種の長期挙動の
研究成果が生かされたということができる。裏を
返せば,きちんとした体制で研究を行うことが今
(2012)
accident,” Geochem. J., 46, e1
5―Y. Kumamoto et al.: “Fukushima-derived radiocesium in the
northwestern Pacific Ocean in February 2012,” Appl. Radiat .
(2013)
Isot., 81, 335
6―C. K. Kim et al.: “Radiological impact in Korea following the
Fukushima nuclear accident ,” J . Environ . Radioact ., 111, 70
(2012)
7―M . Aoyama et al .: “ Cross equator transport of
137
Cs from
North Pacific Ocean to South Pacific Ocean(BEAGLE2003 cruis-
回のような過酷な事故が起きた時にもそれなりに
es)
,” Progress in Oceanography, 89
(1-4)
,7
(2011)
対応できるということでもある。原子力規制委員
8―K. Buesseler et al.: “Impacts of the Fukushima nuclear power
会への提言の一部には,筆者が今回の事故以前か
9931
(2011)
ら当時の原子力安全委員会に対し「原子力施設事
9―M. Aoyama et al.: “Temporal variation of
(23)
,
plants on marine radioactivity,” Environ. Sci. Technol., 45
134
Cs and
137
Cs ac-
コラム
えるべきである。混入がある場合,外洋の海水の
汚染水対策の最近の出来事についてのコメント
ように実用塩分が 35 であれば凝固点はマイナス
東電福島第一原発 2 号機および 3 号機のター
1.8 度となり,純粋ではほぼ 0 度となるので,汚
ビン建屋とトレンチの間を凍結させ止水する計画
染水の凝固点は塩分に応じてその間の温度となる。
が,
「計画どおり凍らない」ことにより難航して
さらに,攪拌できない状態であれば,まず水の部
いる(7 月 7 日原子力規制委員会)。東電は流れがある
分から凍結が開始されるので,残った部分の塩分
ことを理由にあげているが,筆者は溶液の凝固点
は上昇し,凝固点がさらに低下するのは理科の実
降下も考慮するべきであると考える。トレンチ内
験を思い出せば明らかである。さらに核分裂生成
の汚染水の塩分は公表されていないようであるが,
物の放射壊変による熱の発生も極めてわずかはあ
普通に考えて,トレンチ内の汚染水のみならず構
るが考慮するべきである。
内のすべての地下水には海水が混入していると考
0864
KAGAKU
Aug. 2014 Vol.84 No.8
tivities in surface water at stations along the coastline near the
Atomic Energy Society of Japan, 11
(1)
, 13
(2012)
Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident site, Japan,”
12―M. Aoyama et al.: “Re-construction and updating our under-
(2012)
Geochem. J., 46, 321
standing on the global weapons tests 137Cs fallout,” J. Environ.
10―K. Nishihara et al.: “Estimation of Fuel Compositions in Fu-
(4)
, 431
(2006)
Monit., 8
kushima-Daiichi Nuclear Power Plant
(福島第一原子力発電所の
13―Y. Inomata et al.: “Distribution of radionuclides in surface
燃料組成評価)
,” JAEA-Data/Code, 18, 1
(2012)
seawater obtained by an aerial radiological survey,” Journal of
11―K. Nishihara et al.: “Radionuclide Release to Stagnant Wa-
Nuclear Science and Technology, 51, 1059(2014)
ter in Fukushima-1 Nuclear Power Plant,” Transactions of the
特集汚染水:溶け出した炉心のゆくえ
放射能測定から見える
事故後 3 年の問題点
――除染と汚染水を例に
小豆川勝見 しょうずがわ かつみ
東京大学大学院総合文化研究科(環境分析化学)
2014 年夏より帰還困難区域を通過する国道 6
によって路肩に移動し蓄積されてできたホットス
号線の双葉―富岡間(約 14 km)の通行規制が解除さ
ポットのはずだ。道路に降ってきた土壌粒子は,
れ,全線で自由に通行が可能になることが 2014
近くの土地からの集積によるものが多い。特に切
年 4 月の石原伸晃環境相の会見で明らかになっ
り通しになっている部分では,のり面から道路上
た。
に落ちてくる土壌粒子の影響が大きいことがこれ
国道 6 号線は福島県浜通りの基幹道路の一つ
までの測定で明らかになっている。
であり,復興のための物資の輸送をはじめ人々の
このような路肩の濃縮は,放射性セシウムを含
往来に非常に重要であることは間違いない。国道
む土壌粒子を物理的半減期に則った減衰(特に半減
6 号線の地震被災からの復旧工事は比較的早い段
期が 2 年と短い 134Cs)よりも速い速度で集めてしまう
階で行われていたが,帰還困難区域内は空間線量
ことによって生じており,路肩がホットスポット
率が高すぎることから,これまでは各市町村から
化していると考えられる。そのため本格的な除染
の許可証なしに通行することはできなかった。規
を行うのであれば,除染対象は,道路や路肩だけ
制区間は政府直轄の除染を行い,その効果を確認
では不十分である。路肩表面の土壌だけを引きは
したうえで規制を解除する方針だという。
がして一時的に線量が低下したとしても,いずれ
福島第一原子力発電所の事故から 3 年以上が
時間の経過とともにまた濃縮が起こりうる。こう
経過してなお,道路脇の路肩で空間線量率が上昇
いった環境の特性を十分に計算に入れて除染計画
している地点がある。2014 年 3 月に行った現地
が立てられていることを願うばかりだ。
調 査 で は,国 道 6 号 線 の 歩 道 上 5 cm で 約 560
本誌 6 月号の筆者コラム「放射線測定の現場
nSv/h を確認した地点があった。このような地点
から」では,このような路肩での測定の実例(2014
は,道路面に溜まった土壌粒子が,通行車両や雨
年 3 月測定)を紹介したが,その後,2014
年 5 月末
に再び規制区域内の除染後の国道 6 号線の調査
Suggestions for the ways to improve decontamination and contaminated water for the 3 years from Fukushima Dai-ichi nuclear
disaster
Katsumi SHOZUGAWA
を行う機会があったので,本稿ではまずこの点に
ついて報告したい。
図 1 は国道 6 号線(大熊町)の除染済みの路肩で
放射能測定から見える事故後 3 年の問題点
科学
0865
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