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Cathulhu シナリオ 「ニャンと奇妙な共闘」

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Cathulhu シナリオ 「ニャンと奇妙な共闘」
Cathulhu シナリオ
「ニャンと奇妙な共闘」
■このシナリオの楽しみ方
本シナリオは幻夢郷と覚醒世界を自由に行き
来することが可能だ。また、覚醒世界だけでも
完結することが出来る。そのため、KP が幻夢郷
を舞台とした別のシナリオを用意している場合、
その導入として利用出来るかもしれない。
本シナリオでは神話生物である食屍鬼と交流
する必要がある。KP はこの奇妙な共闘を、後
に続くさまざまなシナリオのフックとして利用す
るといいだろう。
KP は可能なら「ラヴクラフトの幻夢郷」サプリメントを利
用するとより演出に臨場感がでるだろう。ウルタールの
大神官アタルや食屍鬼の指導者ピックマンなど、シナリ
オの演出に使える設定が盛りだくさんだ。
今回の冒険の設定イメージを掴みたいなら「未知なるカ
ダスを夢に求めて」ラヴクラフト全集〈6〉 (創元推理文
庫)を読むと参考になる。活字が苦手な場合は、クトゥル
フ神話の幻夢境 未知なるカダスを夢に求めて (クラッ
シック COMIC)がオススメだ。
今回の冒険に必要だと思われる用語解説は用意した
が、不思議な夢の世界を堪能したい諸兄は是非これら
の書籍を通じて詳細に触れてみて欲しい。
■用語集
幻夢郷とは地球人の意識を反映した一種の異
次元世界である。現代から見て数百年前の文
化様式を持ち、近代機器を持ち込んでも時代
様式に合ったものに変化してしまう(懐中電灯
は燭台になり、拳銃は弓矢になる)。まるで御伽
噺のような、不思議な土地や魔法、恐ろしい怪
物たちが存在する。現代では途絶えてしまった
英知や種族も、そこでは息づいているのかもし
れない。
幻夢郷に入るためには大きく分けて2つある。
通常の夢見る人は眠ることによって浅き眠りの7
0段の階段を降り幻夢郷に入るが、猫であれば
屋根や木の上のような高い場所から<月への
飛躍>をすることによって幻夢郷の月へと到達
する。また、<睡眠>技能の成功によっても幻
夢郷の好きな場所を訪れることができるだろう。
これらの場合、体は覚醒の世界に残されるが、
仮に夢の世界で何年にも渡る大冒険を繰り広
げたとしても、覚醒の世界ではせいぜい一晩の
時間が経過する程度である。
幻夢郷に渡るためのもう1つの方法として、肉
体を伴ったまま入ることが挙げられる。世界に
は数箇所の幻夢郷に繋がる洞窟が確認されて
いるし、食屍鬼たちの巣穴は幻夢郷に繋がるも
のもあるという。または、<クトゥルフ神話>に
深く通じるものであれば、幻夢郷に通じる魔術
の<門>を開くこともできるかもしれない。
だがこれらを通って夢の世界に入ろうとする夢
見る人や猫は”現実の死”の可能性を留意する
べきである。眠りによってこの異世界を訪れたも
のが悪夢の果てに開放されるのと異なり、夢の
世界の恐ろしい怪物の牙は覚醒世界の肉体に
もやすやすと突き立てられるからである。
○幻夢郷(ドリームランド)
・月
<月への飛躍>トリックを使って幻夢郷に行っ
た場合、ここがスタート地点となる。荒涼とした
大地で、そこかしこに崩れた遺跡が見られる。
眼下には、幻夢郷の地球が宇宙に浮いている
のが見え、猫たちは自由にそこへ飛び降りてい
ける。月の裏側には月棲獣の集落があり、たび
たび地球猫と月棲獣の戦争が起こっている。月
棲獣の集落には、彼らと同盟関係にある土星
からの猫がしばしば訪れる。
・土星(サイクラノーシュ)
幻夢郷の地球が存在するように、土星もまた幻
夢郷と覚醒世界の双方に存在する。幻夢郷の
土星にも猫が棲んでいるが、その姿は地球猫と
は似ても似つかない。
かつてハイパーボリアの大魔術師エイボンがそ
の地を負われるとき、ツァトゥグァの導きにより魔
術の<門>を通ってこの地に逃れたという。ま
た、ツァトゥグァやアトラク=ナチャといった神々
のいくつかは土星から地球にやってきたという。
土星には黒曜石のような光沢のある鉱物植物
や巨大なキノコが繁茂しており、ツァトゥグァの
おじにあたる神、フジウルクォイグムンズハーが
住民に崇拝されているという。
・ウルタール
商人と農民が住む封建時代的な街。上階が張
り出した三角屋根の家々が並ぶ。この街では
猫を殺してはならないという法律があるので、地
球猫たちの拠点となっている。パン屋の2階に
住んでいる老猫は地球猫たちを統括する、勇
ましい猫将軍である。
・あやかしの森
ならの木が頭上を覆いほとんど光が差し込まな
い薄暗くて深い森の中を、無数に生えた光るき
のこが照らしている。この森は夢見る人が深き
眠りの700段の階段を下りて初めて訪れる場所
だが、ズーグ族という奇怪なねずみのような生
物の棲家となっている。森の中央付近には
木々が枯れ、大きな環状列石がある場所があ
る。その中央には鉄輪のついた石蓋があり、螺
旋階段が地下世界のガグの都市まで続いてい
る。
○幻夢郷の地下世界
・ズィンの窖
幻夢郷の地下世界の各所を繋ぐ連絡網。窖の
中にはガストという生物が棲む。
・食屍鬼の平野
食屍鬼の夢の世界での棲家。覚醒世界と近い
ところにある。巨大な地下峡谷にテーブルのよ
うにせりだした広大な平野であり、ナスの谷に
突き出ている食屍鬼の岩山から食屍鬼たちは
食べ残した骨を捨てる。
積もっている。よく夜鬼が連れ去った犠牲者を
処分するためにナスの谷の骨の海に落として
いく。骨の中にはさまざまなクリーチャーが棲ん
でおり、ナスの谷に落とされたものは恐ろしい
ドールと対峙することになるだろう。山脈のふも
とには食屍鬼の賢者シュッゴブの家がある。
○幻夢郷のクリーチャー
・土星からの猫
幻夢郷の土星からたびたび同盟関係にある月
の裏側の月棲獣の集落に訪れる。地球の猫の
ように次元跳躍する能力があるが、その姿は地
球猫とは程遠い。まるで無数の宝石が寄り集
まったかのような胴からは4~6本の足が突き出
し、それに付属したゆがんだバロック真珠のよう
な球体が頭部であるとわかるのは2つの大きな
目がそこにあるからである。彼らは地球猫に理
由のわからない敵対心を燃やしており、相容れ
ることは絶対にない。
・月棲獣(ムーンビースト)
幻夢郷の月の裏側に、月のくすんだ陰気な灰
色石材を用いた都市を築いており、レンの男を
奴隷として使役する。黒いガレー船を狩り、幻
夢郷のさまざまな都市と交易している。彼らは
レンの男たちにターバンを巻かせ、生贄に捧げ
るための奴隷や食料などを仕入れる交渉に当
たらせている。
・レンの男たち
その頭に生えた角をターバンで隠し、人々との
交易に臨む。大きな街の港には数ヶ月に1度、
異臭を放つ黒いガレー船が停泊し、彼らがさま
ざまな交渉を行うのである。彼らのよく使う手口
・ガグの都市
は酩酊作用の強いぶどう酒(実は月の裏側で
食屍鬼の平野に近いところにある。巨大な石で 栽培された樹木の樹液から作られた酒)を薦め、
作られた高い壁に囲まれており、たいまつを
寝ている間にガレー船に連れ込んでしまうもの
持ったガグの歩哨兵が外壁の内外を巡回する。 である。
都市の中央には灰色の石材で作られた丸い塔
があり、中は螺旋階段となっている。これがコス ・食屍鬼(グール)
の塔であり、塔はあやかしの森の環状列石の
犬のような顔、ゴムのような肌、鋭いかぎ爪に蹄
石のはね戸まで続いている。
のある足を持つ生物。墓場に出没し、彼らの食
料である死体をあさる。幻夢郷と覚醒世界の双
・ナスの谷
方に棲んでおり、行き来するものもある。人の身
地下世界の山脈のふもとに広がる広大な谷。
からグールになるものもある。ノーデンスを崇拝
幾世紀にもわたって食屍鬼の岩山から投げ捨
する夜鬼と同盟関係を結んでおり、彼らをある
てられたさまざまな獲物の骨が深さ 1km 以上も 程度使役することができる。幻夢郷の食屍鬼の
平野には彼らの集落があり、ガグの墓をあさっ
たり彼らを襲うこともある。ガグを1体仕留めれ
ば、当面の食料には困らないのである。
人間同様、多様な文化や思想を持っており、中
には英知を持った賢者や恐ろしい邪神を崇拝
しているものもいる。
にも造詣が深く、礼を失せぬ夢見る人にはその
恩恵を分け与えることもある。
幻夢郷の地球猫とは仲が悪く、しばしば両者は
戦争をしている。
・ガグ
巨人のようだが、おぞましいことに顔の中央に
大きな口が縦に裂けており、左右に赤く光る赤
い目がある。両手のひじから先が二手に分か
れており、4つの手があることになる。松明を
持った歩哨が集落の周囲を哨戒する程度の知
恵はあるが、ガストに襲われないために街を松
明で照らすようなことには思いもよらないのであ
る。食屍鬼を本能的に恐れ、ガグの都市のは
ずれにあるガグの墓地には、食屍鬼が出没す
るため出来うる限り近付かない。
幻夢郷の月ではしばしばウルタールの猫将軍
軍団とムーンビーストの戦争が繰り返されてい
る。猫たちは将軍の指揮の下、集団で相手に
飛び掛かり、これを撃破して戦争を有利に進め
ていた。だがムーンビーストもただ手をこまねい
ているわけではなく、土星からの猫と同盟を組
んでこれに対抗しているのだった。
・ガスト
ズィンの窖に住まう生物。カンガルーのように
ピョンピョンと跳ねるように移動する。頭部は人
間の顔のようだが、鼻と額がない。地下世界の
ガグの主な食料となっているが、群れで逆にガ
グを襲うこともある。明かりを恐れ、松明程度の
明かりがあれば近付いてくることはないが、彼ら
が光に弱いということでは無い様である。
・ドール
あまりにも巨大な白いミミズか芋虫といったク
リーチャーで、夢の世界ではナスの谷の骨の海
の中に棲んでいる。骨の上を移動する獲物の
気配を察知し、先端に開いた口から吐き出す
粘性のツバで獲物を捕らえ飲み込もうとする。
・ズーグ
あやかしの森を覆うならの木の大樹のうろや地
下トンネルに住まう生物。大きなねずみのあご
に触手が生えたような姿をしている。あやかし
の森には巨大なコロニーがあり、地下に複数の
集落を形成している。
彼らは浅き夢の70段の階段の先、さらに700
段の階段を下りた先にある深き夢の門の近くに
棲んでいるため、覚醒の世界の情報にも通じて
いる。あやかしの森の中にも覚醒世界と境界線
が薄い場所があるらしい。また、幻夢郷のあち
こちにスパイを放っているため、幻夢郷の知識
■物語の背景
さてある時、幻夢郷の月で大きな衝突が起こっ
た。ムーンビースト部隊を追撃していた地球猫
軍は、恐るべき土星猫の戦士からの攻撃を受
け、壊滅的打撃を負い撤退せざるを得なくなっ
た。ムーンビーストに対しては優勢をほこる地
球猫だが、宇宙的恐怖をまとう土星猫に対して
は決定打を持たないのだ。
だがそこは勇猛知略に長けるウルタールの猫
将軍率いる地球猫軍団である。さしもの強敵も
この戦力の前にさすがに無傷とはいかず、かな
りの重傷を負った土星猫もまた撤退を余儀なく
された。土星までの跳躍する力を蓄えるため、
ムーンビースト一個師団をともなって幻夢郷の
地球にひとまず逃れたのだった。
幻夢郷の地球に逃れた土星猫とムーンビースト
たちは、地上の猫たちの追撃を逃れるために
地下世界にもぐった。そこは地上と地下を結ぶ
トンネル網、ズィンの窖の一部であり、地下世界
にある食屍鬼の平野に程近いところであった。
道中、食屍鬼の集落に到達した土星猫師団は
食屍鬼たちと戦闘をするはめになった。ほとん
どのムーンビースト兵は食屍鬼に退治されたが、
恐るべき俊敏さをほこる土星猫は食屍鬼の追
撃を振り切り、ズィンの窖の先にある食屍鬼た
ちの秘密の通路を突き進み、ついに覚醒の世
界に迷い出ることとなった。
食屍鬼たちの秘密の通路は現代日本の忘れ
去られた路地裏のマンホールに繋がっており、
この恐ろしい手負いの土星猫は、覚醒世界に
暮らす生物を犠牲にして自らの傷を癒そうとし
ている。そして、集落を蹂躙した不届き者を追
撃するため、1 人の食屍鬼の戦士もまた、覚醒
世界に侵入することになった。
体躯ではやや勝る食屍鬼だが、土星猫には恐
るべき俊敏さと、ツァトゥグァの邪悪な魔術の力
がある。ましてやたかだか数匹の猫たちの爪や
牙では到底勝ち目のある相手ではない。PC た
ちは何とか食屍鬼の協力をとりつけ、街に潜む
土星猫を退治しなければならない。
■NPC
・土星からの猫
土星から月の裏側まで跳躍してきた地球猫の
敵対者。地球猫と相容れることは絶対にない。
猫将軍の軍団と食屍鬼に負わされた傷を癒し、
幻夢郷に帰還することを目的とする。日中は気
配を隠す魔術で身を潜め、夜間に獲物を狩る。
地球猫を警戒しているため、主に人間が犠牲
になることになる。
「我々ハ土星ねこダ!地球ねこハ全テ生命活動ヲ停止
サセル!慈悲ハナイ」
STR 14 CON 7 SIZ 11
INT 15 POW 24 DEX 22
移動 9 耐久力 9
ダメージボーナス:+1d4
武器:噛み付き 40% ダメージ 1d6+db
脚 50% ダメージ 1d4+db
1 ラウンドに 1d4 本の脚と噛み付きで攻撃することが出
来る。
装甲:貫通する武器は最低のダメージしか与えない。
正気度喪失:0/1d6
・食屍鬼(トモエ)
グールの雌固体、グーラ。かつてランドルフ・
カーターのカダスへの旅の道中で食屍鬼の穴
に逗留した際、ムーンビーストに捕らえられた
彼を助けた地球の猫たちの英雄譚を聞き感銘
を受けた。そのため片言だが猫語を操ることが
出来る。集落を襲った土星猫を討ち取る使命を
帯びる。人間世界に潜む土星猫を捜索するた
め、普段は人間のグラマラスな美女に化ける。
食屍鬼になる前の数百年前の日本でブイブイ
いわせていたらしい。
「土星猫倒せない、集落帰れない。困った!」
STR 17 CON 13 SIZ 13
INT 13 POW 13 DEX 13
移動 9 耐久力 13
ダメージボーナス:+1d4
武器:かぎ爪 30% ダメージ 1d6+db
噛み付き 30% ダメージ 1d6+牙でいたぶる(1d4)
1 ラウンドに 2 本のかぎ爪と噛み付きで攻撃することが
出来る。基本ルールブック参照。
装甲:火器と飛び道具はダメージ半減。
正気度喪失:0/1d6
・ライディーンワゴン
PC たちの縄張りのネオン街を取り仕切るボス
猫。夢の世界にも詳しくはないが、土星猫の危
険性は理解している。
習得トリック:ボス猫
「べ、別に怖かねーぜッ!だが司令官がやられちまうワ
ケにゃいかねーからなッ!」
・風来のマタムネ
全国を旅する放浪猫。たまたま今回 PC たちの
縄張りの食客として迎えられており、PC たちに
夢の知識を授ける。
習得トリック:放浪者
「東国で産声を上げ、流れ流れて放浪家業。猫呼んで風
来のマタムネと発しやす。どちらさんもどうぞよろしく」
・ちょび助
生後半年ほどのやんちゃ盛りの子猫。はじめて
見るものに何でも興味を示して痛い目にあうが
へこたれない。
習得トリック:好奇心
「ぼくしってるよ!ぼく見たよ!」
■舞台
現代日本の都市部にあるアーケード街。昼は
ショッピングやランチの客があふれ、夜にはうら
寂しいネオンサインが辺りを照らすような、そん
な街。PC たちは同じエリアを縄張りとする猫で、
基本的に知り合いであるとする。
都市部の猫にとって、人間の入ってくることのな
いビル間の狭い通路は極上の通路であり、秘
密の猫の道となっている。猫の道を進んでいく
と、ところどころに不自然なビルの谷間の広間
があり、それはさまざまな理由から人間に忘れ
去られた猫だけの空間である。ある程度の都市
部ならそのような広間がいくつもあり、都市部に
おける猫たちの集会会場となっているのである。
裏を冒険していたところ、人間とすれ違った。
直後にどさりと倒れるような音がしたので振り向
くと、倒れ付す干からびた死体と何か恐ろしい
影を見たという。彼はその場から逃げ出したが、
数十分後に恐る恐る戻ってみると、人間の警察
官たちが死体を運び出していくところだったと
いう。
■導入
これまでの話を PC たちが聞いたところで、全員
<聞き耳>で判定する。成功すればどこか近く
のビルの谷間から破壊音、まるで巨大な獣が
争っているかのような衝撃音が聞こえる。失敗
した場合は、ちょび助がそちらに駆けていく。猫
の道を通って近くまでいくと、人間の大人のオ
スくらいの影がもつれあっているのが遠くに見
える。片方は人型、もう片方は四足歩行の生物
のようだがたまに六足になっている。これは食
屍鬼のトモエと土星猫である。<嗅ぎ取り>に
成功すると、墓場の納骨堂のカビのような匂い
と、腐った卵のような匂いがする。硫化水素の
匂いは、土星からの猫のものである。
PCたちは深夜、ビルの谷間の広間で猫集会
に参加する。ボス猫のライディーンワゴンが出
す議題は以下の二点である。
1.新入りのマタムネの紹介
彼は現実の世界はもとより、幻夢郷世界のあち
こちを旅する見識の深い猫である。なんとマグ
ロが泳いでいるのを見たこともあるらしい。あん
な銀色の円筒(彼は缶詰のマグロしか知らな
い)が泳ぐなんて世界には不思議なことがある
ものだ。
2.「連続ミイラ殺人事件」について
近頃、我々の縄張り内で人間の不穏な事件が
起こっている。どうやら人間の他殺体がいくつ
か発見されているらしいのだが、どれも干から
びたミイラのようにしぼんでいたようだ。奇妙な
ことに、我々の仲間のうちで誰一匹として犯行
を目撃したものはない。死体は夜の人気のない
路地裏でこさえられるのに、夜も路地裏も我々
の世界であるにも関わらずだ。今のところ猫族
に被害が出ていないが、不穏なので各自気を
つけるように。
PCが2.について興味を持つなら、マタムネが
難しい顔をしているのに気付く。彼はこの事件
の陰に神話生物が絡んでいるのではないかと
懸念している。夢の世界を旅したときに、僻地
に隠遁している年老いた猫から、恐ろしい地底
の奥深くに潜む邪な神性存在は生贄の血を求
めるという話を聞いたことがあるのだ。
PC たちがもう少し近寄れば、もつれ合っている
2 つの影の正体を視認することができる。誰も
近寄らない場合はちょび助が特攻する。食屍
鬼と土星からの猫を視認することで、それぞれ
1/1d6 の SEN チェックを行う。「慣れ」のルール
を適用する場合は減少値を控える旨を説明す
ること。<夢の知識>に成功すれば、これらの
クリーチャーの詳細を知っていることになる。ま
た、マタムネは土星猫の恐ろしさと冷酷さを
知っている。土星猫は未知の理由で地球猫を
ひどく憎み、警戒していて、相容れることは絶
対にない。
この二体の恐ろしい怪物の戦いは、敏捷性に
勝る土星猫が優勢に見える。食屍鬼は、土星
猫のするどいかぎ爪や牙によって、かなり深い
傷を負っているのである。対して食屍鬼のかぎ
爪は土星猫に届いていない。土星猫はどのよう
な状況でも PC たちの存在に気付くと、距離を
とり、警戒し、憎悪に満ちた視線で見渡し、ビル
の壁を蹴って夜の街に消え去る。
PCたちが事件の詳細をボスに聞こうとしても、
それ以上のことはわからない。だが、集会に来
ている猫の中からちょび助の元気な声があがる。
争いが中断されたことで、PC たちは落ち着い
この子猫は、人気の無い路地裏で干からびた
て周囲に気をつけることができる。導入が終わ
死体を見たという。彼が夜間に人気のない路地
り、探索の段階に入ったことを宣言しよう。この
シナリオはあまり特定の場所をあらかじめ用意
しているような親切なつくりではない。PC たち
がどういうことをしたいのかよく聞いて、状況に
あったイベントを選択すること。全部をこなす必
要はない。
■イベント
○現場を調べる
<嗅ぎ取る>に成功すれば、食屍鬼が流すも
のとは別に、広間の片隅から血の匂いがするこ
とがわかる。また、充満する硫化水素臭とカビ
の匂いに混じって、湿った土の匂いがする。匂
いはそれぞれ、広間のすみに転がった干から
びた死体、そして広間の床にある半開きになっ
たマンホールの中から漂ってくる。これらは重
要な情報なので、KP がよいと思ったのなら、こ
れらの情報は現場の描写として伝えてしまって
構わない。
・マンホールの中ははしごがかかっており、入り
口はさほど深くないので<登攀>に成功するま
でもなく上り下りができる。周囲はコンクリートの
打ちっぱなしであり、それは最奥手前まで続く。
最億部は砂岩の岩盤が崩れて地面がむき出し
になっており、ぽっかりと人間の大人がかがん
で通れる程度の洞穴が開いている。そして、洞
穴の前には砂岩を荒く削って作ったような像が
置かれている。
この洞穴は食屍鬼の秘密の通路のひとつであ
り、内部では幻夢郷の地下世界、ズィンの窖に
繋がっている。もしトモエに聞けば、自分も土星
からの猫もここを通って覚醒の世界にやってき
たのだということを教えてくれる。この洞穴を進
めば食屍鬼の平野まで到達することが出来る
が、道中では恐ろしいガストが跋扈する。
・干からびた死体を調べるには<自然>や<
人間知識>に成功する必要がある。直接の死
因は間違いなく背中の大きなかぎ爪での裂傷
だが、周囲に血は飛び散っていない。だが体
液のほとんどを失ってしなびているように見える。
死体を調べれば、その首筋に特徴的なミミズ腫
れがあるのを目にする。これは土星からの猫が
獲物につけた邪悪な目印である。
<マンホール地下>
この地下道は、かつて人間のなんらかの事情で作られ
たものが途中で放棄され、歳月を経て忘れ去られたも
のである。現実でも、主に都市部においてたびたびこ
のような地下道が発見されることがある。管理者が変
わったり、災害や軍事上の機密などで秘匿されたり忘
れ去られて歴史の中に埋もれてしまうのだ。そのような
秘密の通路を、食屍鬼たちはよく知っている。
<かぎ爪の印>
この魔術はツァトゥグァへの生贄となる獲物を捕らえるた
めの印である。この方法を行使するものは、対象を視認
する必要がある。できれば夜間、頭上にサイクラノー
シュ(土星)が瞬いているとなお良い。1d6 の SEN と任
意の MP を消費し、コストとして消費した MP と対象の
POW と抵抗させる。この抵抗に勝てば、対象の体に
”持ち主が変わった”ことを示す印が浮かび上がる。あと
はこの対象を捧げ者としてふさわしいように”調理”すれ
ば、できあがった料理は勝手に神の御前に配膳される
ことになる。印は数日で消え、効力を失う。
洞穴の前に立っている石造は、ガマガエルを
思わせるでっぷりとした胴体に蝙蝠のような耳、
眠たげな目に大きな口をした姿を模しているよ
うに見える。これは土星猫が砂岩から作り出し
たツァトゥグァの邪神像である。土星猫は幻夢
郷に戻るための力を取り戻すため、ツァトゥグァ
に多くの生贄を捧げる必要がある。
分は幻夢郷の地下世界に棲む食屍鬼であり、
集落を襲った土星猫を倒すため派遣されたの
だという。彼女は特に要請が無ければ、PC た
ちの目の前でグラマラスな人間の美女の姿に
変わると、夜のネオン街に消えていく。彼女が
話す重要な内容は以下である。
<ツァトゥグァ像>
・土星猫は実体を伴って覚醒世界に来たため、
なんらかの方法で実体を伴ったまま幻夢郷に
入る方法をとらないと帰ることができない。また、
夢の世界の影響から離れることができないので、
ズィンの窖(マンホール)からあまり遠くにいくこ
とができない。
<ある狂人の手記(コラム)>
ツァトゥグァ神に祈りを捧げるには、真夜中から午前 3
時の時間帯が好まれる。できれば真月の夜が望ましい。
重要なことは、できるだけ彼の神に近しい場所で行うこ
とである。そうすれば敬虔なる信徒の願いに、慈悲深き
神は必ずや耳を傾けてくださることだろう。
彼の神がおわす暗黒の世界ンカイは、クン・ヤンの赤く
輝く世界のさらにはるか地底にある。そしてグールども
の秘密の抜け道の先、ズィンの窖は必ずしやンカイに
通じていることだろう。でなければクン・ヤンの民が使役
し、爬虫類種族と自分たちの奴隷を掛け合わせて作っ
たおぞましいガストどもがズィンの窖を闊歩しているわ
けがないのだ。
トモエに邪神像について尋ねても、自分が来た
ときはこんなものは無かったということしかわか
らない。土星猫はトモエに追い立てられてこのト
ンネルを飛び出したが、実は狩りに行くとき以
外はこの地下通路に潜んでいる。気配をそらす
魔術をつかって認識されないようにしながら、
ひそかに砂岩を削って崇拝のための像を作り
出した。
食屍鬼の腕力をもってすればこの像を壊すこと
は容易だが、それは土星猫の怒りを招くことに
なる。多くの場合、気配をそらす魔術を解いて
襲い掛かってくることだろう。
○トモエの協力を得る
土星猫が逃げ去ったあと、食屍鬼はその場に
倒れ息を荒げており、受けた傷が深いことをう
かがわせる。適切なロールに成功すれば食屍
鬼は自分を持ち直し、PC たちに猫語で礼を言
い、対等の戦士として敬意を持って接する。自
・自分は数日間、敵を追ってきたが、土星猫は
奇妙な魔術を展開しているらしく気配を負うこと
ができない。ただし、真夜中に短い時間だけ気
配を感じ取れることがあり、実際に遭遇できた
のは今夜が初めてだった。
彼女は感覚的に土星猫を察知することができ
るが、土星猫は魔術で気配を消して潜んでいる。
幻夢郷で著しい手傷を負った土星猫は、<か
ぎ爪の印>によってツァトゥグァに生贄を捧げ、
その見返りとして失った跳躍の能力を回復させ
ようとしている。夜間に犠牲者を見繕う間だけ、
気配をあらわにするのである。
<サイクロノーシュの黒い霧>
自分の気配を他者の意識からそらす魔術。コストとして
1d6 の SEN と 10 ポイントの MP を支払う。対象の体を
黒い霧が覆い、次の瞬間から他者に認識されなくなる。
これは透明化とは違い、床に新しくついた足跡も含め
て存在自体が意識からそらされることになる。ただし、
他者に干渉する場合、その効力を失う。相手の体に
触ったり、攻撃しようと爪を振り上げた場合である。また、
あまりに鋭敏な感覚を持った相手が適切なロールに成
功した場合、痕跡を察知される場合がある。
○土星猫を追跡する
ビルの谷間の空間には土星猫の一番最近の
匂いが立ち込めている。嗅覚に優れる猫族なら、
匂いをたどっていくことは容易である。判定に
は<追跡>の成功が必要だが、<嗅ぎ取り>
の判定に成功することで+20%の追跡ボーナ
スを得ることができる。
匂いは近くの人気のない路地裏やビルの屋上
などに続いていくことになり、そこでまるで切り
取られたかのように匂いが途切れてしまう。匂
いが突然途切れることは、猫にとってとても異
常なことである。土星猫は、地球猫を過剰なま
でに警戒している。この場所が敵地のど真ん中
であると理解しているので、短い狩りの時間以
外は速やかに魔術を用いて完全に姿を隠す。
PC たちが何か提案して<幸運>ロールに成
功するなら、魔術を行使する瞬間を目撃した小
動物などがいるかもしれない。また<ゴースト視
野>を習得している猫がいれば、魔力の残照
を見ることになる。
○情報を集める
このシナリオのタイムスケジュールにおいて、
PC たちに受動的に与えられるヒントは驚くほど
少ない。KP は、PC が探索に難航しているよう
なら積極的に時間を経過させる提案が必要か
もしれない。
・街を調べる
土星猫は昼間はマンホールの地下で体力を回
復させ、夜間に獲物を探して徘徊する。土星猫
は対象に干渉しない限り、他社に認識されるこ
とはない(ただし<かぎ爪の印>はこれに抵触
しない。犠牲者の本質には関係のない話だか
らだ)。このため、猫たちは街の路地裏の隅々
まで目を光らせているにもかかわらず、聞き込
みで得られる情報はほぼない。
<幸運>ロールに成功した場合のみ、おぼろ
げな気配を感じた目撃者の話を聞けるかもしれ
ない。目に留まりにくい小動物が相手なら、彼
は土星猫が狩りをする瞬間を目撃したかも知れ
ない。また、夜間に単独で路地裏をうろついて
いたものは、首の毛が逆立つのを感じたかもし
れない。その猫は、幸運にも<かぎ爪の印>を
無意識に払いのけたのである。
・幻夢郷での聞き込み
PC たちは覚醒の世界で満足の行く調査ができ
ないとわかると、幻夢郷での調査を行おうとする
だろう。すべての猫は<月への飛躍>トリックを
習得しており、屋根や木の上から跳躍すること
で容易に夢の世界の月へ旅立つことができる。
<眠る>技能で幻夢郷に入ったときは、ウル
タールの街の花畑の中から顔を出すことだろう。
また、このシナリオではマンホールの食屍鬼の
穴を通って、実体を伴ったまま幻夢郷に入るこ
とができる。夢の世界に実態を伴って入ること
は非常に危険なことだ。夢で受けた傷は、その
まま現実の肉体の傷となって残るためである。
また、自らの野望のために、実体を伴った夢見
る人を探している魔術師すらいるのだ。
PC たちが<月への飛躍>を使用すると幻夢郷
の月へ到着する。荒涼とした大地で、ところどこ
ろにグレートオールドワン・ムノムクァをかつて
称えていた遺跡が崩れている。上空にはアザ
トースの使者(種子)が静止している。そして眼
下には幻夢郷の地球が浮いている。月の反対
側には、月棲獣のコロニーがある。
風来のマタムネの行動
月へいくことを PC たちが決めた場合、マタムネは PC た
ちにウルタールの街を目指すように進言する。そこのパ
ン屋の 2 階には、猫たちを束ねる猫将軍がいるのだ。
だが、自身は特に要請が無ければ覚醒世界に留まる。
弱いものから狙われかねないからだ。
PC たちは眼下の幻夢郷のどこにでも跳躍する
ことができる。だが安易な地に飛ぶことは危険
が伴う。特にサルコマンドやレン高原を含む北
部地域は月棲獣の支配するエリアであり、彼ら
は地球猫に敵対的だ。特に理由がないのであ
れば、ウルタールを訪ねるべきだろう。
・ウルタールの街
中世の商人と農民が住むといった風貌の街。
郊外には柵に囲われた畑と小屋が入り混じり、
家屋はスカイ川の岸沿いの丘の上に建ち並び、
市場には幻夢郷各地からの隊商が駐留する。
この街の家々は何故か上階が大きく作られて
いる。この街では「猫を殺してはいけない」とい
う法律があるため、幻夢郷の地球猫たちの拠点
となっている。
PC たちがこの街を訪れると、無数の猫がそれ
ぞれの住居でうんうんとうなっているのに気付く。
その怪我の理由を尋ねれば、最近、月棲獣と
の大きな戦争があったことを教えてくれる。猫軍
団は猫将軍の指揮の下、月棲獣軍団を壊滅さ
せる手前まで追い詰めたが、突如襲い掛かっ
てきた土星猫のために一時撤退の憂き目を見
たのだという。それでもなんとか土星猫に手傷
を負わせ、地球に追い落とすことに成功した。
しかし、その後、土星猫はどこかに潜伏してし
まったので、別の猫部隊によって追跡中なのだ
という。
PC たちがズィンの窖の中でどのような冒険を過
ごしたのかを表現するものとして、「追いかけっ
こ」を行う。ズィンの窖の中にはおぞましいガス
トどもが跋扈している。彼らから逃げ切らねば食
屍鬼の平野までたどりつくことは難しい。
※追いかけっこルール参照
START
ウルタールのパン屋ウォスの店の二階には猫
将軍が住んでいる。彼は幻夢郷の全ての猫た
ちの最高司令官であり、体中の傷跡が彼に威
厳を与えている。PC たちが猫将軍に謁見を求
めるのであれば、それは認められる。「土星猫」
の名を出せばなおさらである。ただし、将軍に
謁見するにはそれなりの敬意と品位が必要で
ある。あまりに無作法なものは近衛猫によって
たたき出されるかもしれない。これは適切な
ロールか<地位>の成功が必要だろう。
猫将軍は土星猫の話を聞けば、PC たちに協
力することを惜しまない。彼の軍団全てが PC
たちに協力するだろう。ただし、軍団を地下に
送り込むことはできない。地下にもぐることは、
彼らの次元跳躍力を失わせるからだ。また、夢
の世界の猫たちを覚醒の世界に送ることもでき
ない。多くの猫たちは、もはや覚醒の世界の体
を有してはいないか、はるか遠くの地にいるの
である。その上でどのような作戦をたてるかは、
PC たちのアイデアに委ねられる。単に土星猫
を追い立てる手段を教えてしまっても構わない。
ウルタールのもっとも高い丘にはナコト写本や
フサンの謎の七書を収め、幻夢郷でもっとも英
知に優れる人間の一人と呼ばれるアタル大神
官が務める旧きものの神殿がある。
ガスト
ガスト
GOAL
(KP は詳細を状況に合わせて改変すること)
・ラウンド制。DEX 順に行動する。
・共通のコマを使う。
・好きな技能でロールし、成功すれば 1 マス進める。自
分で一度使った技能は再び使うことができない。
・ラウンドの終わりにガストと同じコマに留まっていたら、
SEN チェック(1/1d8)を行う。
・ガストはラウンドの最後に PC のコマに向かって 1 マス
移動する。
GOAL までたどりつくと、PC たちは食屍鬼たち
に出迎えられることになる。そして、一体の威厳
のある食屍鬼、リチャード・アプトン・ピックマン
の元に引き立てられることになる。PC たちがど
のような扱いを受けるかは(殺されることはない
にしろ)、<地位>や類する技能の成功が必要
だろう。
ともあれピックマンは PC たちに協力してくれる
だろう。それがどのような形になるのかは、PC
たちのアイデアにゆだねられる。もし、PC たち
が土星猫の魔術を破ろうと考えているのなら、
ピックマンはナスの谷に住む食屍鬼の賢者
シュッゴブならその質問に答えられるのではな
いかという。数人の食屍鬼が巨大なガグの頭骨
を担いできて、食屍鬼の岩山から足元のナスの
谷に向かって骨を落とす。すると、しばらくして
から巨大なドールが鎌首をもたげる。先端がい
・地下世界にいく
くつにも裂けるように開き、恐ろしい細かい歯が
PC たちはマンホール地下の通路を通って、
無数に粘液にまみれている。1d2/1d10 の SEN
グールの集落に英知を求めに行くことを考える
チェックを行う。PC たちはドールの頭に乗って
かもしれない。それは危険な旅だが、トモエの
協力を得られるのであれば良いアイデアとなる。 一直線にナスの谷に降りることができる。
PC たちがトンネルの中に入ると、やがて覚醒世
ナスの谷はさまざまな骨で埋め尽くされており、
界の時間間隔は失われ、まるで何日もさまよっ
遠くにシュッゴブの住む小屋のほのかな明かり
ているような、数時間しか経過していないような
が見える。窓からは安楽椅子に座り本を読む老
不思議な感覚に見舞われる。ズィンの窖に入っ
食屍鬼の姿を見ることができる。扉に鍵はか
たのである。
かっておらず煙突のつながる暖炉に火は焚か
れていないが、自分から戸を開けることはない。
探索猫たちの力量を試そうと面白がっているの
である。中に入ることができれば、PC たちをね
ぎらって望む知識を授けてくれる。そして、骨の
海からドールを呼び出して、食屍鬼の平野まで
送り届けてくれるだろう。
<夜なるものの正体を見破る>
闇夜に紛れて害をなすものから、対象を守る魔術。この
魔術を行使するには、上空に月が出ていることが望まし
い。対象の上部に乗り、闇夜に目を凝らす。コストとして
MP を 5 消費する。この状態の間、対象に危害を加えよ
うとするものはそれを行使できない。術者は追加で任意
の MP を消費する。近くにいるものなら、MP を提供する
ことができる。消費した MP と危害をくわえるものの
POW を抵抗させ、術者側が勝利すると相手はただちに
正体を現し、以後、対象を襲うことができなくなる。
PC たちがズィンの窖を引き返して覚醒の世界
に戻ると、中では何日も経過したように感じるに
も関わらず、あまり時間が経過していないことが
わかる。夢の世界で過ごした期間がたとえ何年
にも及ぼうとも、目が覚めればせいぜい一晩の
間の出来事になるのだ。
高い。彼は自分が事件を解決するという意気込
みに釣られ、一匹で無謀な行動をする。PC た
ちはちょび助の姿が見えないことに気付くだろ
う。あるいは遠くからかすかな叫び声が聞こえる
かもしれない。ちょび助を探すと、すれ違った
猫から彼が路地裏のほうに歩いていったのを
見たと聞くかもしれない。
もしマタムネが自由に行動しているなら、彼が
ちょび助の救援に駆けつける。この事態を警戒
していたのである。その場合、彼が PC たちが
駆けつけるまでの少々の時間を稼いでくれるだ
ろう。そうでない場合は、PC たちは可能な限り
のアイデアを駆使して現場に駆けつけねばなら
ない。猫の集団が駆けつければ、土星猫は不
利と感じて撤退する。それまでにちょび助が無
事かは PC たちの行動次第だ。
○土星猫を追い詰める
PC たちは仇敵を倒すためのさまざまなアイデ
アを考え出すだろう。猫将軍やピックマンの協
力を得られていれば、彼らの軍隊を利用するこ
とができる。あるいは覚醒の世界でケリをつけよ
○土星猫の襲撃
うとするかもしれない。猫の手下を集める方法と
土星猫は毎夜、狩りを試みる。あらかじめ<か
しては、フラグメントサプリの P63 に記述がある。
ぎ爪の印>で見繕われた犠牲者は、ふらふら
直接的な攻撃としては、トモエの攻撃で十分だ
と人気のない路地裏にいくような行動をとったり、
ろう。猫たちは何らかの手段で土星猫が逃げ回
一人で眠るような行動をとることになる。土星猫
ることををちょっと邪魔してやればいい。
が地球猫を警戒しているため、基本的には人
間が狙われることになるが、子猫や弱そうな単
■結末
独で行動している猫も狙われる可能性がある。
PC に飼い主の設定がある場合、飼い主が狙わ
れるイベントを設定することができる。これは、
PC たちが事態を解決できる確信が持てない不
慣れな KP が安易に行うべきではない性質のも
のだが、PC たちに絶対的な行動の理由付けと
意欲を与えるのに有効である。
土星猫を滅ぼせば、真珠のネックレスが弾ける
ように、無数の宝石のような体が弾けとび霧散
する。そして、数個の猫目石がその場に残され
る。トモエはそれのうちひとつを持って、PC たち
に礼を言う。彼女は PC たちに、何か困ったこと
があれば自分を呼べと<食屍鬼との接触>の
魔術を教え、そして自分の棲家に帰っていく。
PC が飼い主の下に戻ると、飼い主のうなじに
<かぎ爪の印>が浮き出ているのが見える。今
まで発見した死体にあったものと同様なもので
あることを伝え、0/1d2 の SEN チェックを行う。こ
の印は見た目以外は犠牲者に特別不快感を
与えるものではなく、飼い主はあまり気にしない。
無事に事態を解決できていれば、成功報酬と
して 1d6 の SEN を得る。星猫を倒した場合、
1d6 の SEN を報酬で得る。ガストとの追いか
けっこをしていたら、1d6 の SEN を得る。ドール
を目撃していたら、1d10 の SEN を得る。
飼い主以外ではちょび助が狙われる可能性が
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