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MVNOの普及に伴うMNOへの規制と競争促進のあり方

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MVNOの普及に伴うMNOへの規制と競争促進のあり方
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
論
文
MVNO の普及に伴う MNO への規制と競争促進のあり方
The Way of Regulation and Competition Promotion of MNO with
the Spread of MVNO
柴
田
怜
SHIBATA Satoshi
【要約 】
経 済 財 政 諮 問 会 議 (2015(平 成 27)年 9 月 )に お い て 、家 計 支 出 に 占 め る 割 合 が 増 加 傾 向 に あ
る 携 帯 電 話 通 信 料 の 負 担 を 軽 減 す べ き と の 意 見 が 出 さ れ た 。既 に 生 活 必 需 品 や ラ イ フ ラ イ ン
と し て 位 置 づ け ら れ る 携 帯 電 話 は 、広 く 一 般 的 に 普 及 し て い る 。利 用 者 の 負 担 増 加 は 相 対 的
貧困率の増加に示されるように、社会的弱者に大きな負担となり得るため軽視できない。
し か し 大 幅 な 価 格 低 価 は 、通 信 事 業 者 の 経 営 を 悪 化 さ せ る 要 因 に な り か ね な い 。現 在 注 目
さ れ て い る MVNO は 大 手 通 信 事 業 者 の 回 線 を 一 部 利 用 す る こ と に よ り 、 安 価 な 価 格 体 系 の
供給を可能とし、柔軟な利用料金と選択肢を創出した。
本 稿 で は サ ー ビ ス の 質 に 大 差 な い MVNO の 普 及 が 、 公 平 な 競 争 を 可 能 と し て い る か を 注
視し、通信事業者に課せられた規制の妥当性を検討した。
Keywords: Regulation , Competition , Mobile Virtual Network Operator.
はじめ に
わ が 国 の 産 業 競 争 力 強 化 を 目 的 に 成 立 し た 産 業 競 争 力 強 化 法 (2013(平 成 25)年 12 月 )は 過
剰 規 制 、過 少 投 資 、過 当 競 争 へ の 対 策 で あ る 。こ れ に 先 駆 け て 同 年 6 月 に 掲 げ ら れ た 日 本 再
興 戦 略 に お い て 、 ICT の 利 活 用 の 促 進 が 急 務 と さ れ た 。
モ バ イ ル ビ ジ ネ ス 研 究 会 (2007(平 成 19)年 )の 審 議 を 経 て 、端 末 価 格 と 利 用 価 格 を 分 離 し た
販 売 形 態 が 採 用 さ れ た が 、 自 社 の 市 場 シ ェ ア 拡 大 が 商 慣 習 と な っ た 結 果 、 MNP(Mobile
Number Portability)制 度 を 推 奨 し 、 当 該 制 度 利 用 者 に 高 額 な キ ャ ッ シ ュ バ ッ ク (以 下 、 CB)
を 付 与 し た 。そ の 弊 害 は 柴 田 [2014]も 指 摘 し た が 、月 間 電 気 通 信 事 業 収 入 (Average Revenue
Per User; ARPU)の 減 少 傾 向 を 踏 ま え れ ば 、 追 加 課 金 が 容 易 な ス マ ー ト フ ォ ン へ の 優 遇 措
置 は や む を 得 な い か も し れ な い 。し か し 、各 事 業 者 が 獲 得 し た 契 約 者 数・純 増 数 に 焦 点 が あ
て ら れ 、そ れ を 重 要 業 績 評 価 指 数 (Key Performance Indicator;KPI)に 用 い た 商 慣 習 は 、過
剰 な 競 争 を 招 い た こ と は 否 め な い 1。
先 の ICT の 利 活 用 に 競 争 は 必 要 だ が 、 希 少 な 電 波 利 用 の 許 可 を 得 た 移 動 体 通 信 事 業 者
(Mobile Network Operator ; MNO) は 限 定 さ れ て お り 、 仮 想 移 動 体 通 信 事 業 者 (Mobile
Virtual Network Operator; MVNO)の あ り 方 が 注 目 さ れ て い る 2 。 MVNO の 市 場 シ ェ ア は
相 対 的 に 低 い (1:9)が MNO と 同 質 の サ ー ビ ス が 保 証 さ れ て い る こ と を 踏 ま え る と 、適 正 な 促
しばた さとし(経営情報学科)
- 1 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
進 、競 争 、お よ び 価 格 設 定 の 判 断 が 求 め ら れ る 。し た が っ て 、電 波 の 有 効 利 用 と 市 場 競 争 の
名 の 下 に 展 開 さ れ る 当 該 サ ー ビ ス を 経 た 公 平 性 に つ い て は 議 論 の 余 地 が あ り 、そ の 促 進 に 競
争が有効であれば、市場の力と政策で後押しする必要がある。
1. 市場変 化の 推移
1-1 ARPU の 減 少
総 人 口 に 対 す る 普 及 率 が 飽 和 状 態 を 迎 え た 携 帯 電 話 市 場 に お い て 、利 用 者 の 獲 得 を 巡 る 競
争 は 激 化 し て い る 。 同 様 の 通 信 イ ン フ ラ で あ る ブ ロ ー ド バ ン ド 市 場 の HHI が 200 ポ イ ン ト
程 度 の 増 加 傾 向 に 対 し て 、携 帯 電 話 市 場 は 500 ポ イ ン ト 以 上 の 減 少 傾 向 に あ り 、当 該 市 場 の
競 争 は 進 化 し た (図 表 1-1)。
図 表 1-1
携 帯 電 話 市 場 ・ ブ ロ ー ド バ ン ド 市 場 シ ェ ア の HHI 推 移 (2007~ 2014 年 度 )
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
携帯電話市場
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
ブロードバンド市場
出 所 : 総 務 省 「 電 気 通 信 サ ー ビ ス の 契 約 数 及 び シ ェ ア に 関 す る 四 半 期 デ ー タ の 公 表 (平 成 26 年 度 第 4
四 半 期 )」 (http://www.soumu.go.jp/main_content/000364681.pdf)pp.3-6。
た と え ば 過 当 競 争 状 態 下 で は 、 類 似 し た サ ー ビ ス を 展 開 さ れ や す い 3 。価 格 競 争 が 行 わ れ
た 結 果 、 ARPU は 年 々 減 少 傾 向 に あ る (図 表 1-2)。
- 2 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
図 表 1-2
携 帯 電 話 の ARPU の 推 移 (2007~ 2014 年 度 )(単 位 : 円 )
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
音声
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
データ等
*2014(平 成 26)年 度 は AUPU の み 算 出 。
出 所 : 総 務 省 [ 2015] p.356。
多 種 多 様 な ア プ リ ケ ー シ ョ ン を ダ ウ ン ロ ー ド す る こ と を 前 提 と し 、追 加 課 金 し や す い ス マ
ー ト フ ォ ン は ARPU の 減 少 を 食 い 止 め る 効 果 が 期 待 で き る 。 各 事 業 者 の 販 売 戦 略 に よ り 従
来 の 携 帯 電 話 (フ ィ ー チ ャ ー フ ォ ン )の 供 給 が 減 少 す る 一 方 で 、 ス マ ー ト フ ォ ン の 供 給 は 増 加
し て い る 。 以 上 よ り 、 広 く 一 般 的 に 普 及 さ せ る に は 安 価 な 価 格 体 系 が 求 め ら れ る 4。
当 該 市 場 は 寡 占 市 場 に よ る 過 当 競 争 状 態 だ が 、 MNO の 供 給 す る 垂 直 統 合 の 強 い サ ー ビ ス
は 多 様 な ニ ー ズ に 対 応 し て い る と は 言 い 難 い 。顕 示 選 好 理 論 に 基 づ け ば 利 用 者 は 与 え ら れ た
サ ー ビ ス を 各 自 が 好 ん で 選 択 し た と 考 え る が 、そ の 妥 当 性 に つ い て は 検 討 の 余 地 が あ る 。た
と え ば 、 MNO の 提 供 す る ス マ ー ト フ ォ ン を 対 象 と し た パ ケ ッ ト 定 額 制 は 上 限 通 信 量 が 設 定
さ れ て い る が 、利 用 者 の 通 信 量 の 分 布 は 分 散 し て お り 、サ ー ビ ス 内 容 は 必 ず し も 対 価 に 見 合
っ て い る と は 言 い 難 い 。こ れ を 含 む 諸 問 題 を 解 消 す る た め に 競 争 の 促 進 が 叫 ば れ て 久 し い が 、
有 限 性・希 少 性 を 有 す る 電 波 の 特 性 上 、新 規 参 入 に は 制 約 が あ る 。こ の 問 題 へ の ア プ ロ ー チ
は MNO の 有 す る 周 波 数 帯 域 に あ る 遊 休 回 線 の 有 効 活 用 、 つ ま り MVNO の 促 進 に あ る 。
MVNO と MNO、MVNO 支 援 事 業 者 で あ る MVNE の 関 係 に つ い て は 、以 下 の よ う に 示 す こ
と が で き る ( 図 表 1-3)。
- 3 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
図 表 1-3
MNO・ MVNO・ MVNE の 関 係 性
MNO
MVNO
MVNE+MVNO
ブランディング
マーケティング
MVNO
MVNO
コンテンツ
端末
MVNO
サポート業務
MNO
MVNE
MVNE
課金管理
SIM カード
通信回線・
MNO
通信インフラ
出 所 : MCA「 MVNO×格 安 ス マ ホ ×中 古 端 末 が も た ら す 新 領 域 市 場 の 動 向 と 将 来 予 測 2020」
( http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/2015_MVNO&SIM&used.html)
過 去 を 概 観 す れ ば 第 3 世 代 通 信 シ ス テ ム 導 入 時 に そ の 必 要 性 が 説 か れ て お り 、 MNO3 社
と 複 数 の MVNO に よ り 当 該 市 場 の 活 性 化 が 期 待 で き る 5 。
1-2 MVNO の 可 能 性
MVNO の 役 割 は 、 当 該 市 場 の 硬 直 し た 料 金 を 緩 和 で あ る 。 諸 外 国 と 比 較 し た 際 、 フ ィ ー
チ ャ ー フ ォ ン の 利 用 価 格 は ス ト ッ ク ホ ル ム 、パ リ に 次 い で 安 価 だ が 、ス マ ー ト フ ォ ン は 諸 外
国 同 様 、 利 用 頻 度 に 応 じ て 増 加 傾 向 に あ り 、 フ ィ ー チ ャ ー フ ォ ン と 比 較 し て 高 価 で あ る (図
表 1-4)。
図 表 1-4
携 帯 電 話 料 金 の 国 際 比 較 (各 ユ ー ザ 別 )(単 位 : 円 )
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
スマートフォン(ヘビーユーザ)
出 所 : 総 務 省 「 平 成 26 年 度 電 気 通 信 サ ー ビ ス に 係 る 内 外 価 格 差 に 関 す る 調 査 」
- 4 -
ソウル
スマートフォン(ミドルユーザ)
ストックホルム
スマートフォン(ライトユーザ)
デュッセルドルフ
パリ
ロンドン
フィーチャーフォンユーザ
ニューヨーク
東京
0
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000370610.pdf)pp.4-10。
注 目 す べ き は ス マ ー ト フ ォ ン ユ ー ザ 全 体 の 平 均 を 概 観 し た 際 、ニ ュ ー ヨ ー ク( 12,929 円 )、
デ ュ ッ セ ル ド ル フ( 12,177 円 )に 次 い で 東 京( 8,714 円 )が 高 価 な 点 に あ る 。そ の 一 要 因 に
ス マ ー ト フ ォ ン の 利 用 に 伴 い 改 正 さ れ た 無 料 通 話 分 を 含 ま な い 料 金 体 系 や 、パ ケ ッ ト 定 額 制
の 上 限 金 額 の 増 額 な ど の 料 金 プ ラ ン が 挙 げ ら れ る 。OTT(Over The Top)の 普 及 に よ り 他 事 業
者 間 で も 無 料 通 話 を 享 受 で き る 環 境 が 整 備 さ れ た が 、多 様 な 利 用 者 が 存 在 す る 一 方 で 、パ ケ
ッ ト 定 額 制 の 選 択 肢 が 少 な い の は 典 型 で あ る 6。
協 調 的 寡 占 が 強 い 市 場 で は サ ー ビ ス や 価 格 が 類 似 (コ モ デ ィ テ ィ 化 )し や す い 。 サ ー ビ ス の
同 質 化 と 多 様 化 は 繰 り 返 さ れ る が 、事 業 者 間 の 既 得 権 益 や 競 争 に 対 す る 規 制 に よ り 、劇 的 な
低 価 は 期 待 で き ず そ の 弊 害 が 利 用 者 に 転 嫁 さ れ る こ と は 自 明 で あ る 。普 及 理 論 に 基 づ き 、ア
ー リ ー ア ダ プ タ ー を 巻 き 込 ん だ MVNO 普 及 の 背 景 に は 、 一 定 の 制 約 下 で も 安 価 な 利 用 を 望
ん で い た 層 が 利 用 し 始 め た こ と が 起 因 し て い る 。 こ れ に 並 行 し て シ ェ ア 1 位 の NTT ド コ モ
は 段 階 的 に 接 続 料 を 引 き 下 げ 、 市 場 環 境 の 改 善 ・ 整 備 に 努 め て い る (図 表 1-5)。
図 表 1-5
携 帯 電 話 [NTT ド コ モ ]の パ ケ ッ ト 接 続 料 の 推 移 (2008~ 2013 年 度 )(単 位 : 万 円 )
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
2008年度
2009年度
2010年度
レイヤ2
2011年度
2012年度
2013年度
レイヤ3
出 所 : NTT ド コ モ 「 報 道 発 表 資 料 」
(https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2014/03/24_00.html#notice0101)
特 に 近 年 で は 公 衆 無 線 LAN の 拡 大 や モ バ イ ル ル ー タ ー が 普 及 し た た め 、 通 信 速 度 が 遅 く
て も そ れ を 補 え る 環 境 が 整 備 さ れ つ つ あ る 7 。限 定 さ れ た 機 能 で も 、安 価 を 望 む 利 用 者 に 対
し て は 利 用 目 的 が 明 確 で あ る 8 。 こ こ に 従 来 の 新 規 参 入 と は 異 な る 、新 た な 価 格 競 争 が 導 入
さ れ る 意 義 が あ る 。 つ ま り MVNO の 促 進 は 、 通 信 事 業 者 が 通 信 サ ー ビ ス 需 要 と 端 末 需 要 を
満 た し て い た 統 合 し た モ デ ル か ら 、 各 々 を 分 離 さ せ た モ デ ル に 転 換 す る こ と が で き る (図 表
1-6)。こ れ は 先 の モ バ イ ル ビ ジ ネ ス 研 究 会 で も 審 議 さ れ た 、分 離 型 市 場 の あ り 方 を 加 速 さ せ
- 5 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
るインセンティブになり得る。
図 表 1-6
統 合 型 市 場 [左 ]と 分 離 型 市 場 [右 ]の イ メ ー ジ
出所:筆者作成。
1-3 MNO と の 比 較
こ れ ま で わ が 国 の 通 信 事 業 は 、段 階 的 な 規 制 緩 和 に 基 づ く 競 争 に よ り 発 展 し て き た 。例 え
ば 、 2001(平 成 13)年 以 降 ソ フ ト バ ン ク BB の ADSL サ ー ビ ス の 供 給 は 、 昨 今 の ブ ロ ー ド バ
ン ド の 普 及 に 寄 与 し た 9。 こ れ に 示 さ れ る よ う に 、 多 様 な ニ ー ズ へ 柔 軟 に 対 応 し た 価 格 設 定
は 不 可 欠 で あ り 、 こ こ に MVNO の 参 入 の 余 地 が あ る 。 MNO は 自 社 の 通 信 網 を 一 部 解 放 し
て MVNO の 普 及 に 努 め て い る が 、 当 該 市 場 全 体 の 過 当 競 争 や 寡 占 化 に よ り 普 及 し て い る と
は 言 い 難 い (図 表 1-7)。
図 表 1-7
MNO と MVNO の 推 移 (2009~ 2014 年 度 )
2009年度
2010年度
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
2011年度
携帯電話
2012年度
2013年度
2014年度
MVNO
出 所 : 総 務 省 「 電 気 通 信 サ ー ビ ス の 契 約 数 及 び シ ェ ア に 関 す る 四 半 期 デ ー タ の 公 表 (平 成 26 年 度 第 4
四 半 期 )」 (http://www.soumu.go.jp/main_content/000364681.pdf)pp.1-5。
し か し 、 2012(平 成 24)年 以 降 の 検 索 数 の 急 上 昇 に 示 さ れ る よ う に 、 興 味 や 関 心 は 高 ま っ
ている
10 。上 記 図 表
1-7 よ り MVNO の シ ェ ア は 10%以 下 だ が 微 増 傾 向 に あ り 、ク ー プ マ ン
- 6 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
の 目 標 値 に 基 づ け ば 、 市 場 認 知 シ ェ ア に 該 当 す る 水 準 に あ る (図 表 1-8)。 理 論 に 基 づ く 水 準
に 達 す る こ と で 、① 消 費 者 に 純 粋 想 起 が な さ れ る 、② 競 合 他 社 か ら も 存 在 が 認 め ら れ る よ う
に な る 、と さ れ て い る 。近 年 、当 該 市 場 に お い て 、グ ル ー プ 化 や 子 会 社 の 合 併 な ど に よ り 寡
占 化 か ら 抜 け 出 せ な い 状 況 が 続 い て い る 。実 際 に 周 波 数 帯 の 付 与 が な く て も 当 該 市 場 に ア プ
ローチでき、競合他社と利用者に認知されることは、今後の戦略次第では脅威となり得る。
図 表 1-8
段階
クープマンの 6 つのシェア目標値
シェア
独占的市場シェア
73.9%
安定的トップシェア
41.7%
市場影響シェア
26.1%
並列的競争シェア
19.3%
市場認知シェア
10.9%
市場存在シェア
6.8%
説明
「独占的寡占型」と呼ばれ、首位が絶対的な優位独占の状態をさ
す。
3社以上のシェア争いでは、41.7% 以上のシェアを取れば業界内で
安定した地位を確保できるとされる。
市場影響シェアを上回ると、競争状態から一歩抜け出した状態と判
断される。業界によってはこの値を取るのがシェアトップの企業であ
ることも多く、2位以下であっても、この値以上のシェアを持てば業
界に影響力を持つとされている。
複数企業の競合状態において見られる数値で、どの企業も安定し
たトップの地位を得られていない。この場合、まず26.1%を獲得する
ことが目標となる。
市場認知シェアを超えると、消費者に純粋想起がなされる。市場に
おいても競合他社からも存在を認められるようになる。
市場存在シェアを超えると、消費者に助成想起が可能となる。市場
に存在することが認められるシェアであり、多くの場合新規参入企
業はまずこれを目指すことになる。
出 所 : リ ッ ク テ レ コ ム [ 2014] pp.92-93。
ま た 、MNO と MVNO の ラ ン ニ ン グ コ ス ト を 比 較 す れ ば 、通 算 料 金 は 6 ヶ 月 か ら 12 か 月
程 度 で 前 者 が 後 者 を 上 回 る (図 表 1-9)。 つ ま り 、 MNO が 契 約 時 に 準 必 須 化 す る 長 期 利 用 (24
か 月 間 )の 契 約 期 間 を 踏 ま え れ ば 、MVNO の 利 用 は 経 済 的 な 選 択 と 言 え る
11 。こ れ が 利 用 者
の純粋想起に基づき周知されれば、市場に与えるインパクトはさらに大きくなる。
た と え ば 、 利 用 通 信 量 (LTE 通 信 対 応 )に 制 限 は あ る が MNP 可 能 な MVNO の 音 声 通 話 サ
ービスも供給されており、一定の制約下にあるが費用対効果は高い。
図 表 1-9
MNO と MVNO の 利 用 料 金 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン (単 位 : 円 、 ヶ 月 )
200,000
180,000
160,000
140,000
120,000
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
MNOユーザ
10
11
12
13
MVNOユーザ1
- 7 -
14
15
16
17
MVNOユーザ2
18
19
20
21
22
23
24
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
出 所 : 総 務 省 「 平 成 26 年 度 電 気 通 信 サ ー ビ ス に 係 る 内 外 価 格 差 に 関 す る 調 査 」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000370610.pdf)p.5。
と こ ろ で MVNO は MNO の 遊 休 回 線 を 利 用 し て い る た め 通 信 速 度 が 懸 念 さ れ る が 、 実 際
の 計 測 結 果 を 概 観 す れ ば MNO は 上 り・下 り の 通 信 速 度 に 開 き が 少 な く 安 定 し て い る 。双 方
と も LTE を 用 い た 通 信 速 度 は ベ ス ト エ フ ォ ー ト だ が 、興 味 深 い の は MVNO の 通 信 速 度 平 均
(上 り )が MNO の そ れ を 上 回 り 、同・下 り の 数 値 も 大 差 が な い 点 に あ る
12 (図 表
1-10)。ま た 、
数 値 が 低 い と 優 良 な 回 線 と 判 断 で き る 指 標 ・ ping 値 の 平 均 も MVNO が 優 位 で あ る 。
図 表 1-10
#
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
平均
MNO と MVNO の 通 信 速 度 比 較 (単 位 : Mbps)
MNO[上] MNO[下]
1.37
1.32
2.29
6.45
0.91
4.27
1.96
6.92
0.26
2.32
0.61
3.64
2.60
10.38
4.26
2.29
4.10
3.51
3.26
1.91
1.60
8.77
0.97
3.02
1.97
4.31
#
ping
95
101
65
123
129
101
55
89
104
358
104
101
101.2
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
平均
MVNO[上] MVNO[下]
7.12
5.36
3.78
4.31
7.58
2.68
3.75
1.66
5.43
2.18
4.51
9.12
4.11
2.74
1.60
2.13
5.05
2.76
5.58
2.68
5.80
4.31
4.65
1.57
4.98
3.08
ping
68
60
57
42
50
54
66
54
54
51
53
50
54.9
*平 均 は TRIMMEAN 関 数 を 用 い て デ ー タ の 中 間 項 平 均 (10 項 )を 求 め た 。
出所:筆者作成。
上 記 図 表 1-10 よ り 必 ず し も MNO が 優 位 で は な く 、時 間 帯 や 測 定 環 境 に よ っ て は MVNO
が 同 等 か そ れ 以 上 の 結 果 が 出 せ る 可 能 性 が あ る 。し た が っ て 、当 該 市 場 の 硬 直 し た 料 金 を 緩
和 さ せ る 役 割 も 必 要 だ が 、ク リ ー ム ス キ ミ ン グ に な り 得 る 状 態 ま で 緩 和 す る こ と は MNO の
競争を損なわせる可能性がある。
2. 政策の 妥当 性
2-1 事 前 規 制 と 事 後 規 制
総 務 省 の 調 査 に 基 づ け ば MVNO を 認 知 し て い る 利 用 者 の 約 50%の う ち 、約 60%が 音 声 通
話 サ ー ビ ス と LTE 通 信 対 応 サ ー ビ ス の 利 用 意 向 を 示 し て い る
13 。 ま た 、 双 方 の ラ ン ニ ン グ
コ ス ト を 分 析 し た 前 掲 図 表 1-9 よ り 、 長 期 的 に は MVNO が 優 位 に あ る 。
し か し MVNO の 普 及 が 進 展 し な い 背 景 に は 、前 述 の 過 当 競 争 が 影 響 し て い る
14 。た と え
ば 、 MNP 制 度 を 利 用 し 端 末 価 格 を 安 価 に 保 有 し 、 高 額 な CB を 得 た 方 が 賢 明 と 判 断 す る 利
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富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
用者が一部に存在する
15 。 当 該 制 度 が 参 入 障 壁 と な り 、 MVNO
の普及を阻害している可能
性 は 否 め な い 。こ の 背 景 に は 、ネ ッ ト ワ ー ク 外 部 性 に よ る 優 位 な 事 業 者 の 基 準 と し て 、契 約
者 数 (シ ェ ア )や 純 増 数 の 増 加 を 優 先 ・ 重 視 し た 商 慣 習 に あ る 。
自 社 の 規 模 拡 大 を 試 み る 弊 害 は 、全 利 用 者 に 安 価 で 良 質 な サ ー ビ ス を 提 供 せ ず 、一 部 の 利
用 者 へ 注 ぎ 込 ま れ る 先 の 高 額 な CB 問 題 か ら 明 ら か で あ る 。そ の 原 資 が 利 用 者 の 支 払 う 料 金
か ら 賄 わ れ て い る 倫 理 的 な 問 題 を 考 慮 す れ ば 、事 後 的 に 生 じ る 個 々 の 諸 問 題 へ の 対 策 、す な
わ ち 事 後 規 制 の 強 化 が 求 め ら れ る 。こ れ を 利 用 者 の 実 績 を 鑑 み て 評 価 し 、PDCA サ イ ク ル に
基 づ い て 規 制 の 是 非 が 問 わ れ な け れ ば な ら な い 。も ち ろ ん 慎 重 に 考 慮 す べ き だ が 、社 会 全 体
の 効 用 が 増 加 す る 可 能 性 と 、規 制 の 抜 け 穴 を 狙 う 倫 理 に 反 す る 行 為 を 踏 ま え れ ば 、事 前・事
後規制の是非を天秤にかけた際、後者の選択が政策的に正しい。
さ ら に 、 事 前 規 制 が 起 因 す る MVNO の コ モ デ ィ テ ィ 化 の 解 消 に 向 け て 、 主 要 MNO で あ
る NTT ド コ モ に 対 し て 規 制 を 見 直 す べ き 意 見 が あ る 。 そ も そ も 情 報 通 信 産 業 、 と り わ け 技
術 革 新 が 著 し い 携 帯 電 話 市 場 に 対 し て は 、事 前 規 制 そ の も の が 馴 染 み 難 い 。後 手 に 回 り そ の
都 度 、コ ス ト を か け て 議 論 を 交 え る こ と は 生 産 的 で は な い 。し た が っ て 、伝 統 的 に タ イ プ B
に 属 す る わ が 国 の 規 制 の あ り 方 を 再 検 討 す べ き で あ り 、 対 象 事 業 に 応 じ て タ イ プ D(ア メ リ
カ 型 )に 近 い 規 制 の 採 用 を 検 討 す べ き で あ る (図 表 2-1) 16 。
図 表 2-1
A
B
C
D
事前規制と事後規制の類型化
タイプ
メリット
デメリット
事前:強 ・ 規制の徹底により、禁止すべき行為をよく抑 ・徹底すればするほど運用コストが大きくなる
事後:強 制し得る
・ 運用で手を抜けば不公平感を高めルールへ
の信頼(順法精神)を低下させる
・関係者の創意工夫を削ぐ
事前:強 ・事前規制があるので行為規範を示し得る
・規制が尻抜けになる
事後:弱 ・事後規制をあまりしないので運用コストが大き ・事後規制が弱いのでルールの裏をかく者が続
出し正直者が馬鹿を見ると皆がルールを建前
くなり過ぎない
視してしまう
・ルールの建前化を防止しようとインフォーマル
な手法(行政指導等)に頼るとルール運営が不
透明になる
・事前規制の存在が関係者の創意工夫を削ぎ
かねない
・適切な社会ルールが生まれないといわゆる弱
事前:弱 ・コストが低くすむ
事後:弱 ・関係者の創意工夫の余地が大きい
肉強食の密林法則がばっこしかねない
・ 効率と公正が均衡する社会ルールの自生を ・被害者に対する適切な対応措置がとれないと
促す
不公平感と不信感が高まり社会を不安定にす
るおそれがある
・結果的に被害者や社会のコストをかえって高
くする可能性がある
・行政機構の弱体化を招きかねない
事前:弱 ・事前規制に要するコストがかからない
・事後規制に要するコストがしばしば大きい
事後:強 ・ 一定の部分を除き規制がないので関係者の ・事後規制は事前規制ほど徹底できないことが
創意工夫の余地が大きい
多い
・事後規制ルールが行為規範となる
・一罰百戒の効果を上げるため制裁措置を高め
ると不公平感を生みかねず、また違反者の更
正を阻害しかねない
・ 司法機構の強化の反面として行政機構の弱
体化を招きかねない
出 所 : 内 閣 府 ・ 総 合 規 制 改 革 会 議 「 中 間 と り ま と め ―経 済 活 性 化 の た め に 重 点 的 に 促 進 す べ き 規 制 改
革 ―」 (http://www8.cao.go.jp/kisei/siryo/020723/4-b.pdf)
現 行 、 他 の 公 益 事 業 と 比 較 し て 当 該 市 場 は 「 IP 化 の 進 展 に 対 応 し た 競 争 ル ー ル の 在 り 方
に つ い て 」に お け る 見 解 か ら も 確 認 で き る よ う に 、事 後 規 制 が 重 視 さ れ て い る
17 。し か し な
が ら 、 一 定 の シ ェ ア を 超 え る 事 業 者 に 対 し て 電 気 通 信 事 業 法 第 30 条 第 3 項 に は 、 事 前 規 制
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富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
と し て 平 等 な 立 場 (イ コ ー ル フ ィ ッ テ ィ ン グ )で な け れ ば な ら な い 、 と し て い る 。 こ の 規 定 に
則 り NTT ド コ モ は MVNO に 対 し て 相 互 接 続 が 必 至 で あ り 、卸 契 約 に よ る 個 々 の 要 望 に 応 じ
る こ と が で き な い 。前 掲 図 表 1-5 よ り 接 続 料 の 段 階 的 な 低 価 は 評 価 で き る が 、前 述 の コ モ デ
ィ テ ィ 化 を 招 い た 。 当 該 規 制 の 根 拠 は 市 場 シ ェ ア だ が 、 一 時 期 50%を 超 え て い た NTT ド コ
モ は 、現 在 40%弱 で あ る (図 表 2-2)。非 対 称 規 制 、お よ び 前 掲 図 表 1-1 よ り HHI の 減 少 に 伴
い競争の進化を踏まえれば、以前のような当該市場への絶対的な影響力は少ない。
図 表 2-2 携 帯 電 話 市 場 シ ェ ア と HHI の 推 移 (2007~ 2014 年 度 )
100%
3,000
90%
2,500
80%
70%
2,000
60%
50%
1,500
40%
1,000
30%
20%
500
10%
0%
0
2007年度
ドコモ
2008年度
KDDI
2009年度
SBM
2010年度
イー・アクセス
2011年度
ドコモ[HHI]
2012年度
KDDI[HHI]
2013年度
SBM[HHI]
2014年度
イー・アクセス[HHI]
出 所 : 総 務 省 「 電 気 通 信 サ ー ビ ス の 契 約 数 及 び シ ェ ア に 関 す る 四 半 期 デ ー タ の 公 表 (平 成 26 年 度 第 4
四 半 期 )」 (http://www.soumu.go.jp/main_content/000364681.pdf)p.3。
前 述 の 通 り 利 用 者 が 柔 軟 な 選 択 肢 を で き る 環 境 に お い て 、不 必 要 で 過 度 な 規 制 が 最 終 的 に
利 用 者 の 便 益 を 損 な わ せ る 可 能 性 を 秘 め て い る 。つ ま り ネ ッ ト ワ ー ク イ ン フ ラ ベ ー ス で は な
く HHI 基 準 に 則 り 規 制 緩 和 の 対 象 と す る こ と を 徹 底 し 、 コ モ デ ィ テ ィ 化 し や す い 当 該 市 場
に お い て 価 格 低 下 が 過 度 な 競 争 や 市 場 の 歪 み を 誘 発 す る 一 要 因 と 判 断 し た 場 合 は 、適 切 に 規
制すべきである
18 。
電 気 通 信 事 業 法 第 29 条 に は 、 事 後 規 制 に 該 当 す る 業 務 改 善 命 令 が 定 め ら れ て い る 。 事 前
規制の緩和、事後規制の強化による弊害は事後規制の検討の度にコストを要する点にある。
ゆ え に 事 前 規 制 を 強 化 し て 峻 別 す る ほ う が 、相 対 的 に 合 理 的 で あ る 判 断 に 基 づ く 。し か し 競
争 力 を 強 化 す る 議 論 に お い て 、目 的 の 達 成 に 事 前 規 制 が 障 壁 な ら ば 緩 和 を 検 討 す べ き で あ る 。
個 々 の 行 為 や 業 務 に 対 し て 事 前 規 制 を 課 す こ と で 成 長 や 競 争 は 見 込 め な い た め 、そ れ ら 諸 問
題 に 対 し て は 個 々 に 事 後 的 な 対 応 が 望 ま し い 。そ の 基 準 は ビ ジ ネ ス モ デ ル で 差 別 化 が 図 ら れ
る 必 要 性 が あ る た め 、ビ ジ ネ ス ベ ー ス で 議 論 を 進 め な け れ ば な ら な い 。そ れ は 事 前 規 制 が 強
す ぎ る と 、萌 芽 期 に あ る よ う な 事 業 が 成 立 し 難 く な る た め で あ る 。す な わ ち ① 適 切 な 規 制 の
あり方、②利用者の便益が確保されているか、を問うべきである。
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2-2 規 制 の あ り 方 の 再 検 討
NTT の 牙 城 が 崩 れ つ つ あ り 、 産 業 競 争 力 の 強 化 を 図 ら な け れ ば な ら な い 現 在 、 新 た な 基
準 の 必 要 性 が 求 め ら れ る 。 当 該 市 場 内 で は NTT を 未 だ 支 配 的 な 事 業 者 と し て 位 置 付 け 、 圧
倒 的 な ネ ッ ト ワ ー ク イ ン フ ラ を 利 用 し た 再 独 占・独 占 回 帰 を 懸 念 し て い る 。だ が 、昨 今 の 他
事業者の追随に加えインフラベースでは他事業者が優位である見方もできる
19 。
保有する周
波 数 帯 を 概 観 す れ ば 単 独 で は 最 多 だ が 、共 同 で は ソ フ ト バ ン ク グ ル ー プ に 劣 る 。KDDI グ ル
ー プ も そ れ が 可 能 で あ る 反 面 、 唯 一 規 制 に よ り 実 行 で き な い の が NTT グ ル ー プ で あ り 、 減
少 傾 向 に あ る 市 場 シ ェ ア を 踏 ま え れ ば 、卸 契 約 を 認 め な い 規 制 の 見 直 し の 議 論 に は 余 地 が あ
る (図 表 2-3)。
図 表 2-3
移動通信システム用の周波数帯の割り当て
周波数帯 700MHz帯 800MHz帯 900MHz帯 1.5GHz帯 1.7GHz帯 2GHz帯 2.5GHz帯
docomo
20MHz
30MHz
30MHz
40MHz
40MHz
au
UQ
SoftBank
emobile
WCP
WILLCOM
20MHz
30MHz
20MHz
30MHz
20MHz
40MHz
20MHz
40MHz
30MHz
31.2MHz
合計
加入者数
160MHz
6,218
160MHz
6,218
110MHz
3,962
50MHz
50MHz
263
160MHz
4,225
90MHz
3,476
50MHz
450
30MHz
30MHz
416
31.2MHz
540
201.2Mhz
4,882
*2013(平 成 25)年 12 月 時 点 、 白 抜 き は 各 グ ル ー プ の 合 計 。
出所:各社ウェブページを参考に作成。
ま た 、 NTT ド コ モ へ の 規 制 は 当 該 事 業 者 の 活 動 制 約 だ け で な く 、 そ の ネ ッ ト ワ ー ク を 利
用 す る 事 業 者 、 そ こ か ら 便 益 を 享 受 す る 利 用 者 の 弊 害 に 繋 が る 。 NTT ド コ モ の 主 張 す る グ
ル ー プ 規 模 の 是 非 が 受 け 入 れ ら れ た 場 合 、競 合 他 社 は 支 配 的 事 業 者 を 盾 に 規 制 の 遵 守 を 主 張
す る こ と は 必 至 で あ る 。 従 前 の 規 制 に よ り NTT ド コ モ の シ ェ ア は 約 40%弱 に 低 下 し 、 規 制
か ら 回 避 可 能 な 2 位 以 下 の KDDI グ ル ー プ 、お よ び ソ フ ト バ ン ク グ ル ー プ は NTT ド コ モ に
課 せ ら れ た 規 制 か ら 得 た 便 益 を 自 陣 の シ ェ ア に 転 嫁 さ せ 、 規 模 を 25%前 後 ま で 拡 大 さ せ た 。
規 制 対 象 外 の 2 位 以 下 の 事 業 者 は こ の 配 置 が 最 適 で あ り 、そ の 根 拠 は 総 務 省 の 指 定 要 件 に 示
すことができる
20 。
上 記 よ り 事 前 規 制 の 制 約 下 で の 活 動 は 、現 行 の 市 場 シ ェ ア か ら 明 ら か な よ う に 、そ の 優 位
性 は 必 ず し も 盤 石 で は な く 、非 対 称 規 制 に 対 す る ア プ ロ ー チ が 求 め ら れ る 。た と え ば 、有 限
で 希 少 性 な 電 波 の 利 活 用 を 踏 ま え れ ば 、 ① MVNO へ の 貸 し 出 し に 対 す る 柔 軟 な 対 応 、 ② 質
の 保 証 、③ 貸 出 義 務 に 対 す る 実 施 率 の 明 確 化 、④ 適 宜 情 報 を 公 表 、な ど が 望 ま し く そ の 評 価
を KPI と す べ き で あ る 。ま た 、他 事 業 者 が 指 摘 す る NTT の ネ ッ ト ワ ー ク イ ン フ ラ に お い て
も 、 事 業 者 間 の 競 争 が 硬 直 し て い る 現 在 、 MVNO が 有 効 に 機 能 す る な ら ば 最 大 限 に 活 か せ
る制度設計が必要になる。
し た が っ て 規 制 基 準 は 市 場 シ ェ ア と す べ き か 、も し く は そ れ を 考 慮 せ ず 管 路 の 保 有 や ド ミ
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富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
ナ ン ト で あ る こ と と す べ き か の 議 論 と な る 。こ の 判 断 材 料 に 、相 互 接 続 と 卸 契 約 が 挙 げ ら れ
る 。前 掲 図 表 1-5 の 通 り 接 続 料 の 低 価 を 踏 ま え れ ば 、卸 契 約 に お け る 言 い 値 が 極 端 に 相 互 接
続 の そ れ と か け 離 れ れ ば 、外 部 か ら の 指 摘 は 必 須 で あ る た め 実 施 さ れ 難 い 。先 行 す る FTTH
の 卸 契 約 導 入 に 倣 い 、 MNO も 規 制 緩 和 に よ る 卸 契 約 導 入 に よ り 個 々 の MVNO に 柔 軟 な 対
応 が 可 能 と な り 、多 様 な 要 望 に 応 え る こ と が で き る 。当 該 サ ー ビ ス が 成 長 期 に あ る 現 在 、差
別 化 が 競 争 優 位 に お い て 不 可 欠 と な る 。こ れ ら を 考 慮 す れ ば 今 後 、事 業 者 間 の 対 等 な 規 制 の
あり方を検討しなければならない。
2-3 普 及 に 潜 む 課 題
前 述 よ り MVNO は MNO と 比 較 し て 安 価 か つ 、 理 論 上 は 同 等 の 通 信 速 度 を 享 受 で き る た
め 普 及 の 促 進 は 競 争 に 寄 与 す る が 、そ こ に は 2 つ の 課 題 が 潜 ん で い る 。そ の キ ー ワ ー ド は ①
ネットワークの負の外部性、②相互の公平性、である。
第 一 に 政 府 は MVNO の 普 及 を 通 じ て MNO 対 MVNO、MNO 対 MNO、そ し て MVNO 対
MVNO の 競 争 を 促 進 し て 、 当 該 市 場 の 硬 直 し た 料 金 の 緩 和 と 多 様 な ニ ー ズ へ の 対 応 を め ざ
し て い る 。従 来 、情 報 通 信 の 考 え 方 は ネ ッ ト ワ ー ク 効 果 に 基 づ き 、当 該 ネ ッ ト ワ ー ク 利 用 者
の 増 加 に 伴 い 、 そ こ か ら 得 ら れ る 価 値 や 効 果 も 増 大 す る と 考 え ら れ て き た 。 だ が 、 MVNO
は 利 用 者 の 増 加 が 逆 効 果 を 招 き か ね な い 。つ ま り 、限 ら れ た 帯 域 に 利 用 者 が 増 加・集 中 す れ
ば 、混 雑 現 象 に よ り 逼 迫 し た ネ ッ ト ワ ー ク を 利 用 す る 一 人 あ た り の 通 信 速 度 が 低 下 す る 負 の
外 部 性 を 招 き か ね な い 。 そ の 結 果 、 サ ー ビ ス の 劣 化 が 懸 念 さ れ る 。 MNO が 供 給 す る サ ー ビ
ス の よ う に 一 定 の 通 信 量 を 超 過 し た 場 合 、上 限 通 信 容 量 分 の 追 加 課 金 は 公 平 性 を 保 つ こ と に
寄 与 し て い る 。こ れ が 抑 止 力 と な り 、混 雑 現 象 に よ る 負 の 外 部 性 を 留 め て い る 。し か し 、ネ
ッ ト ワ ー ク に 負 担 を か け る 当 該 政 策 は 妥 当 と 判 断 で き る だ ろ う か 。確 か に 競 争 に よ り 安 価 な
MVNO が 増 加 す れ ば 、 当 該 事 業 者 の 利 用 者 は 増 加 す る 。 そ の 結 果 、 通 信 速 度 は 低 下 し て サ
ー ビ ス の 質 は 低 下 す る 。コ モ デ ィ テ ィ 化 が 進 ん だ 際 、安 価 を 求 め 当 該 事 業 者 を 見 切 り 他 事 業
者 を 探 し 求 め 、 転 々 と 移 動 す る こ と は 可 能 で あ る (図 表 2-4)。
図 表 2-4
MVNO の 戦 略 と 利 用 者 の 選 択
利 用 者 を 巡る
MVNO の 競 争
高 品 質 を 求め る
競 争 他 社 より 安 価
利 用 者 の 移動
な価格設定
逼 迫 す る 一部 の
価 格 や サ ービ ス の
ネ ッ ト ワ ーク
コ モ デ ィ ティ 化
出所:筆者作成。
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富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
これが正常な市場のあり方、および適正な消費者の選択と判断できるかは懐疑的である。
つ ま り こ の ル ー プ が 過 当 競 争 を 招 き 、利 用 者 の 移 動 が 過 剰 に な る こ と で 選 択・判 断 を 誤 ら せ 、
市 場 を 負 の 方 向 に 傾 け る の で あ れ ば 、過 度 な 拡 大 路 線 が 見 受 け ら れ た 場 合 、適 切 な 対 策 が 求
められる。
第 二 に 前 掲 図 表 1-10 に 示 し た よ う に 、MNO と MVNO の 提 供 す る サ ー ビ ス の 質 に 大 き な
相 違 は な い 。 当 該 市 場 に 与 え た イ ン パ ク ト は 、 MNO で は 対 応 で き な か っ た ニ ー ズ へ 同 等 の
通 信 速 度 を 安 価 で 提 供 し た 料 金 体 系 に あ る 。し か し 周 波 数 帯 や 無 線 局 を 保 有 し て い な い に も
関 わ ら ず 、ベ ス ト エ フ ォ ー ト で は MNO と 同 等 の サ ー ビ ス を 安 価 で 供 給 が 可 能 で あ る 。基 幹
設 備 の 整 備 は MNO が 担 当 す る た め 、 過 剰 な 規 制 緩 和 に 基 づ き 極 端 に MVNO に 優 位 な 環 境
が 提 供 さ れ る こ と は 、ク リ ー ム ス キ ミ ン グ に な り 得 る 可 能 性 が あ り 、今 後 の 規 制 対 象 に な り
得る
21 。 利 用 者 間 に お い て も
MVNO 利 用 者 が 受 け る 恩 恵 は 、 MNO 利 用 者 の 支 払 っ た 料 金
で 当 該 イ ン フ ラ が 整 備 さ れ て い る 。こ れ は ネ ッ ト ワ ー ク 外 部 効 果 の 内 部 化 と は 異 な り 、不 公
平 で あ る 。 さ ら に MVNO、 MNO、利 用 者 間 に ネ ッ ト ワ ー ク 効 果 が 働 く た め 、 一 方 の 事 業 者
の 価 格 を 下 げ る こ と で 、も う 一 方 の 事 業 者 も 下 げ ざ る を 得 ず 、一 方 へ の 規 制 が 他 方 に も 影 響
を与えかねない。
現 在 の 普 及 期 に お い て 利 用 促 進 の た め の MNO へ の 働 き か け は 正 し い が 、当 該 事 業 者 側 の
視 点 か ら す れ ば 公 共 性 を 有 し 帯 域 の 開 放 が 義 務 付 け ら れ て い る と は い え 、過 度 に 迫 ら れ る こ
とは政府からの過剰な介入、もしくは圧力とみなすこともできる。
前 述 の 逼 迫 し た ネ ッ ト ワ ー ク に よ り 一 人 あ た り の 通 信 速 度 が 低 下 し た 場 合 、 MNO は
MVNO へ の ネ ッ ト ワ ー ク の 開 放 が 義 務 付 け ら れ て お り 、 周 波 数 の 接 続 請 求 に 応 じ な け れ ば
な ら な い 。例 え ば 、ク ー プ マ ン の 目 標 値 に あ る 安 定 的 ト ッ プ シ ェ ア( 41.7% )や 市 場 影 響 シ
ェ ア ( 26.1% )、 HHI に お け る 既 存 事 業 者 と 同 等 で あ る 第 4 の プ レ イ ヤ ー に 成 長 す る こ と は
理 論 上 可 能 で あ り 、 MNO を 脅 か す 規 模 に な っ た 場 合 で も 現 行 で は 排 除 ・ 拒 否 す る こ と は で
き な い 。 だ が 、 仮 に そ れ が 達 成 さ れ MNO と MVNO と の 間 に 公 平 が 確 保 さ れ 難 い と 判 断 し
た 時 点 で 、新 た な 競 争 政 策 が 模 索 さ れ る 可 能 性 は あ る 。問 題 は そ の よ う な 状 況 に な ら な け れ
ば適正な競争が進展しない現行の市場規模と、関連する法制・規制にある。
おわり に
寡占状態にある当該市場において従来、新規参入には電波割り当てが一般的であったが、
そ れ と は 異 な る 手 法 で 参 入 し た イ ン パ ク ト は 強 い 。し か し 、そ の 料 金 体 系 に 対 す る 利 用 者 の
増 加 と 通 信 速 度 の 高 速 化 に よ り 、通 信 帯 域 が 逼 迫 し て い る こ と が 指 摘 さ れ て い る
22 。幅 広 い
ニ ー ズ に 対 応 す る た め に 、各 事 業 者 に は 保 有 す る 帯 域 の 開 放 が 義 務 付 け ら れ て お り 、そ の 成
果 は ま だ 小 さ い が 市 場 に イ ン パ ク ト を 与 え た 。今 後 は 更 な る 電 波 の 効 率 的 な 配 分 と 、そ れ を
支える規制を時代に則して柔軟に対応すべきである。
当 該 市 場 の 場 合 、既 存 の 技 術 を 元 に し た 発 展 変 動 に よ り 生 じ る 矛 盾 の 発 生 に 対 し て 、促 進
政 策 を 検 討 し な け れ ば な ら な い 。そ の 規 制 に 対 し て は 、規 模 を 指 標 と す る の で は な く 社 会 的
公 正 を 考 慮 し て 、過 度 に 拡 大 を 遂 げ る 事 業 を 抑 制 す る 規 制 の 見 直 し も 必 要 に な る は ず で あ る 。
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富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
ま た 、 諸 外 国 で は 安 価 な SIM カ ー ド が 供 給 さ れ て お り 、 必 要 に 応 じ て 使 い 分 け が 達 成 さ
れ て い る 。こ の よ う に か つ て の 携 帯 電 話 が ガ ラ パ ゴ ス 化 と 揶 揄 さ れ 、伸 び 悩 ん だ こ と を 考 慮
す れ ば 、田 中 [1987]の 主 張 の よ う に 基 準 を も っ と も 緩 や か な 規 制 に 改 め る こ と で 、新 た な 販
路を開拓できる可能性を秘めている
23 。そ の 際 、留 意 す べ き は 総 務 省・情 報 通 信 審 議 会 が 基
本 5 原 則 に 挙 げ て い る「 利 用 者 視 点 の 原 則 」で あ る
24 。そ れ に よ れ ば「 民 間 事 業 者 の 自 由 な
事 業 活 動 を 促 進 し つ つ も 、常 に 利 用 者 視 点 に 立 っ て 、高 齢 者 や 青 少 年 を 含 む 全 て の 利 用 者 が
多 様 で 低 廉 な サ ー ビ ス を 安 心 し て 利 用 す る た め の 環 境 整 備 な ど 、利 用 者 便 益 の 最 大 化 を 目 指
す 」と 、あ る 。こ こ に あ る 利 用 者 視 点 と は 、単 に 利 用 価 格 に 特 化 し た 取 り 組 み を 求 め る べ き
な の だ ろ う か 。本 論 に 示 し た 通 り 、競 争 の 下 に 利 用 者 を 振 り 回 す こ と は 本 来 の 目 的 を 達 成 で
き な く な る こ と に 加 え 、当 該 市 場 が 敬 遠 さ れ る 理 由 に も な り か ね な い 。ネ ッ ト ワ ー ク の 逼 迫
問 題 よ り 、 MVNO を 拡 大 さ せ る に は 限 界 が あ り 、 競 争 を 促 進 さ せ る に は 電 波 の 有 効 活 用 を
改めて議論すべきである。
し か し 、電 波 オ ー ク シ ョ ン に よ る 優 位 性 は 資 本 力 に 比 例 す る た め 、特 定 の 事 業 者 へ 集 中 す
る 課 題 を 秘 め て い る 。 有 限 で 希 少 な 資 源 で あ る こ と を 考 慮 す れ ば 、 先 行 す る OECD 諸 国 の
導 入 例 を 参 考 に し た 議 論 を 進 展 す べ き で あ る 。そ し て MNO は 他 事 業 者 の 行 動 に 対 抗・便 乗
す る だ け で は な く 、 MVNO の 柔 軟 な 動 き に 倣 い 差 別 化 の 強 化 と 競 争 に 取 り 組 む こ と が 求 め
られる
25 。 政 府 の 提 言 が 市 場 競 争 の 誘 発 に 繋 が る こ と を 、 多 く の 利 用 者 は 望 ん で い る 。
な お 、 本 稿 は 日 本 経 済 政 策 学 会 第 72 回 全 国 大 会 ( 於 国 士 舘 大 学 ) に て 報 告 し た 論 文 に 加
筆・修 正 を 施 し た も の で あ る 。報 告 に あ た っ て は 討 論 者 の 甲 南 大 学 経 済 学 部 教 授・春 日 教 測
先生に、得難い助言と適切な指摘をいただいた。文責、および残された課題等については、
全て筆者に帰属する。
注:
1
実 際 に 電 気 通 信 事 業 者 協 会 (TCA)が 続 け て き た 各 事 業 者 の 月 次 契 約 数 の 公 表 は 取 り 止 め
ら れ 、 2014(平 成 26)年 度 以 降 は 四 半 期 単 位 に 移 行 し た 。
2
MVNO の 定 義 は 、 ① MNO の 提 供 す る 移 動 通 信 サ ー ビ ス を 利 用 し て 、 又 は MNO と 接 続
し て 、移 動 通 信 サ ー ビ ス を 提 供 す る 電 気 通 信 事 業 者 で あ っ て 、② 当 該 移 動 通 信 サ ー ビ ス に 係
る 無 線 局 を 自 ら 開 設 し て お ら ず 、か つ 、運 用 を し て い な い 者 、と さ れ て い る 。総 務 省 総 合 通
信 基 盤 局 「 MVNO に 係 る 電 気 通 信 事 業 法 及 び 電 波 法 の 適 用 関 係 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン 」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000249943.pdf)p.2。 ま た 、 以 下 の よ う な 分 類 も さ
れている。
総 務 省 に お け る MVNO の 分 類
分類
①販売チャネル型
②新プラン型
③セット販売型
④アプリ型
⑤法人サービス型
提供形態
MNOと基本的に同内容のものを家電量販店やISPが独自の販売チャネル(顧客網)を用いて提供
MNOとは異なる新しいプラン(低速度低料金、月毎プラン変更可等)で提供
固定ブロードバンド回線等とセットで販売することで、通常より低額な料金プランで提供
固定ブロードバンド回線等とセットで販売することで、通常より低額な料金プランで提供
M2M、企業内LANへのアクセス回線を提供
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富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
出 所 : 総 務 省 「 電 気 通 信 事 業 分 野 に お け る 競 争 状 況 の 評 価 2012」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000247827.pdf)p.16。
な お MNO と は 、電 気 通 信 役 務 と し て の 移 動 通 信 サ ー ビ ス を 提 供 す る 電 気 通 信 事 業 を 営 む
者 で あ っ て 、当 該 移 動 通 信 サ ー ビ ス に 係 る 無 線 局 を 自 ら 開 設 、又 は 運 用 し て い る 者 と 、定 義
されている。
3
た と え ば 、 学 割 サ ー ビ ス (若 年 時 か ら の 囲 い 込 み )や 月 額 基 本 料 金 割 引 サ ー ビ ス (契 約 年 数
に 比 例 し な い 優 遇 措 置 )、 CB(他 事 業 者 か ら の 転 入 に 伴 う 特 典 )な ど 、 い ず れ も 同 様 の 手 段 を
提供している。
4
高齢者層の潜在的な消費や、長期的な利用が見込める若年層は魅力的である。前者は定
期収入を期待し難く選択時に価格を最優先する傾向は、定期収入のある現役世代より高い。
後者は他の支出も多く、可処分所得も低いため、同じく価格を最優先する傾向が強い。
5
総務省「次世代移動体通信システム上のビジネスモデルに関する研究会報告書」
(http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrelease/j
apanese/joho_tsusin/010626_1-1.pdf)pp.84-86。伝 統 的 に 事 前 規 制 が 強 く 、事 後 規 制 が 弱 い
わ が 国 の 規 制 の あ り 方 は 議 論 の 対 象 に な り や す い が 、同 シ ス テ ム 導 入 時 に 開 放 を 強 く 進 め た
ことは既存概念に捕らわれず、一定の評価をすることができる。
6
通信容量を超過すれば通信制限を受け、それを回避するには追加料金を要するため利便
性に欠ける見方もできる。
7
公 衆 無 線 LAN は 9 年 で 10 倍 以 上 増 加 し て お り 、ス マ ー ト フ ォ ン の 普 及 に よ り 急 増 す る
モ バ イ ル ト ラ フ ィ ッ ク へ の 対 策 と し た オ フ ロ ー ド 手 段 の 成 果 と 言 え る 。 特 に 2011(平 成 23)
年後半からは顕著である。
公 衆 無 線 LAN 契 約 数 の 推 移 (2005~ 2015 年 )(単 位 : 1,000 台 )
90,000
80,000
70,000
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
10,000
2015年2月
2014年6月
2014年10月
2014年2月
2013年6月
2013年10月
2013年2月
2012年6月
2012年10月
2012年2月
2011年6月
2011年10月
2011年2月
2010年6月
2010年10月
2010年2月
2009年6月
2009年10月
2009年2月
2008年6月
2008年10月
2008年2月
2007年6月
2007年10月
2007年2月
2006年6月
2006年10月
2006年2月
2005年6月
2005年10月
0
出 所 : 総 務 省 ・ 情 報 通 信 統 計 デ ー タ ベ ー ス 「 ブ ロ ー ド バ ン ド サ ー ビ ス 等 契 約 数 の 推 移 (四 半
期 )」 (http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/new/index.html)
8
世 帯 消 費 支 出 が 3,238,022 円 (2002(平 成 14)年 )か ら 3,018,910 円 (2013(平 成 25)年 )と 約
7% 減 少 す る 一 方 で 、固 定 電 話 通 信 料 が 49,057 円 (2002 年 )か ら 29,354 円 (2013 年 )の 約 40%
- 15 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
減 少 、 移 動 電 話 通 信 料 は 50,933 円 (2002 年 )か ら 83,099 円 (2013 年 )で 約 60% 増 加 し 、 電 話
通 信 料 は 全 体 的 に 微 増 傾 向 に あ る 。固 定 電 話 の 縮 小 と 移 動 電 話 の 拡 大 が 今 後 も 続 く こ と を 考
慮 す れ ば 、 家 計 へ の 負 担 を 軽 減 す る た め に も 安 価 な MVNO の 普 及 促 進 が 求 め ら れ る 。
電 話 通 信 料 の 推 移 と 世 帯 支 出 に 占 め る 割 合 (2002~ 2013 年 )(単 位 : 円 )
120,000
4.00%
3.50%
100,000
3.00%
80,000
2.50%
60,000
2.00%
1.50%
40,000
1.00%
20,000
0.50%
0
0.00%
2002年
2003年
2004年
2005年
固定電話通信料
2006年
2007年
2008年
移動電話通信料
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
世帯消費に占める電話通信料の割合
出 所 : 総 務 省 [ 2014] p.371。
9
こ の 無 線 網 の 台 頭 は 、 2000(平 成 12)年 に MIT の N.ネ グ ロ ポ ン テ 教 授 が 予 測 し た 仮 説 ・
ネ グ ロ ポ ン テ・ス イ ッ チ に 例 示 さ れ る 。今 ま で 有 線 固 定 網 利 用 が 中 心 で あ っ た 電 話・イ ン タ
ー ネ ッ ト 等 は 無 線 網 に 切 り 替 わ り 、無 線 網 の 利 用 が 中 心 で あ っ た テ レ ビ な ど の 放 送 は FTTH
等 、 固 定 網 の 利 用 に 切 り 替 わ っ て い く と い う 。 以 上 は 、 テ レ ケ ー ブ ル 新 聞 社 [ 2010]。
10
ス マ ー ト フ ォ ン が 普 及 し 始 め た 2010(平 成 22)年 か ら 、 長 期 利 用 期 間 (24 か 月 )契 約 が 終
了 す る 2012(平 成 24)年 を 境 に 検 索 行 為 を 通 じ て 、 社 会 に お け る 興 味 ・ 関 心 が 増 加 し て い る
こ と が 確 認 で き る 。 一 部 の 通 信 事 業 者 が 自 社 端 末 の SIM ロ ッ ク 解 除 を 認 め た こ と や 、 機 種
変更後に利用されなくなった端末を低コストで運用する利用者の存在が考えられる。
わ が 国 に お け る MVNO 検 索 数 の 推 移 (2007~ 2014 年 度 )
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
2007-04-01 - 2007-04-07
2007-06-10 - 2007-06-16
2007-08-19 - 2007-08-25
2007-10-28 - 2007-11-03
2008-01-06 - 2008-01-12
2008-03-16 - 2008-03-22
2008-05-25 - 2008-05-31
2008-08-03 - 2008-08-09
2008-10-12 - 2008-10-18
2008-12-21 - 2008-12-27
2009-03-01 - 2009-03-07
2009-05-10 - 2009-05-16
2009-07-19 - 2009-07-25
2009-09-27 - 2009-10-03
2009-12-06 - 2009-12-12
2010-02-14 - 2010-02-20
2010-04-25 - 2010-05-01
2010-07-04 - 2010-07-10
2010-09-12 - 2010-09-18
2010-11-21 - 2010-11-27
2011-01-30 - 2011-02-05
2011-04-10 - 2011-04-16
2011-06-19 - 2011-06-25
2011-08-28 - 2011-09-03
2011-11-06 - 2011-11-12
2012-01-15 - 2012-01-21
2012-03-25 - 2012-03-31
2012-06-03 - 2012-06-09
2012-08-12 - 2012-08-18
2012-10-21 - 2012-10-27
2012-12-30 - 2013-01-05
2013-03-10 - 2013-03-16
2013-05-19 - 2013-05-25
2013-07-28 - 2013-08-03
2013-10-06 - 2013-10-12
2013-12-15 - 2013-12-21
2014-02-23 - 2014-03-01
2014-05-04 - 2014-05-10
2014-07-13 - 2014-07-19
2014-09-21 - 2014-09-27
2014-11-30 - 2014-12-06
2015-02-08 - 2015-02-14
0
*MVNO を 検 索 ワ ー ド に 作 成
- 16 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
出 所 : Google ト レ ン ド (https://www.google.co.jp/trends/)
ま た 、MVNO に 対 す る 認 知 度 は 49.4%(2013(平 成 25)年 度 )か ら 69.5%(2014(平 成 26)年 度 )
に み ら れ る よ う に 増 加 傾 向 に あ る 。 総 務 省 「 MVNO サ ー ビ ス の 利 用 動 向 等 に 関 す る デ ー タ
の 公 表 」 (http://www.soumu.go.jp/main_content/000362104.pdf)p.7。
11
な お 、 各 ユ ー ザ に 関 す る 条 件 は 次 の よ う に 仮 定 し た 。 MVNO ユ ー ザ 1 の 参 考 数 値 は 、
SIM フ リ ー 端 末 (Android)の 価 格 帯 に 幅 が あ る た め 、 ZenFone5(30,000 円 )を 一 例 と し た (価
格 は 2015(平 成 27)年 時 点 )。 内 訳 は 端 末 料 金 (30,000 円 )に 平 均 的 な 音 声 通 話 SIM(1,800 円 )
を 加 算 し た 。MVNO ユ ー ザ 2 の 参 考 数 値 も SIM フ リ ー 端 末 (iOS)と し 、iPhone6(75,000 円 )
に上記の条件を付与した。
12
ここでの条件は次の通りである。
1.
計 測 日 時 : 2015(平 成 27)年 9 月 20 日 16 時 30 分 ~ 17 時 30 分 頃 ま で
2.
計測場所:東京都渋谷区
3.
利 用 モ バ イ ル ル ー タ ー : L-03E(docomo)
4.
利 用 携 帯 電 話 : iPhone4s(iOS 9.0)
5.
利 用 MNO: docomo(LTE)
6.
利 用 MVNO: BIGLOBE LTE・ 3G
7.
利 用 ア プ リ ケ ー シ ョ ン : RBB TODAY(http://speed.rbbtoday.com/)
定 刻 か ら MVNO、MNO の 順 に 各 回 、一 分 以 上 の 間 隔 を 用 い て 測 定 し た 。上 記 の 測 定 に 基
づけば、大差がないことが確認できる。なお、イメージは以下の通り。
MNO[左 ]と MVNO[右 ]の 通 信 速 度 比 較 イ メ ー ジ
出所:筆者作成。
13
総 務 省 「 電 気 通 信 事 業 分 野 に お け る 競 争 状 況 の 評 価 2013」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000319667.pdf)p.219。
14
そ の 他 に は 、 利 用 す る 際 に 比 較 的 高 価 な SIM フ リ ー 端 末 の 保 有 が 挙 げ ら れ る 。
15
北俊一「移動通信市場の現状と展望」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000282459.pdf)に て 、全 体 の 5% の 利 用 者 を 懸 念 し
- 17 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
て い る 。類 似 し た 弊 害 は 、パ ケ ッ ト 定 額 制 に お け る 一 部 の 過 度 な 利 用 者 が 通 信 回 線 の 負 担 と
なり、大多数の利用者が弊害を被るとして抑止策に通信量の規制が設けられた経緯がある。
利 用 期 間 に よ る 便 益 の 不 均 衡 に つ い て は 、 柴 田 [ 2014]。 ま た 、 日 本 通 信 株 式 会 社 「 2015
年 3 月 期 (第 19 期 )第 2 四 半 期 決 算 説 明 会 資 料 」
(http://www.j-com.co.jp/ir/pdf/shiryo_20141031.pdf)p.16 よ り 、 MNO が 年 度 末 に CB の 増
額 を 実 施 す る た め 、MNP を 用 い て MVNO 回 線 が 当 該 時 期 に 高 い 解 約 率 を 示 す 結 果 を 招 い て
い る 。 MNO と 異 な り 利 用 期 間 の 縛 り が 少 な い MVNO だ が 、 最 低 利 用 期 間 と 違 約 金 を 設 置
する事業者も出現し始めた。
16
規 制 の タ イ プ 別 に 関 す る 見 解 は 、内 閣 府・ 総 合 規 制 改 革 会 議「 中 間 と り ま と め ―経 済 活
性 化 の た め に 重 点 的 に 促 進 す べ き 規 制 改 革 ―」
(http://www8.cao.go.jp/kisei/siryo/020723/4-b.pdf)に 詳 し い 。
17
IP 化 の 進 展 に 対 応 し た 競 争 ル ー ル の 在 り 方 に 関 す る 懇 談 会 「 IP 化 の 進 展 に 対 応 し た 競
争 ル ー ル の 在 り 方 に つ い て ― 新 競 争 促 進 プ ロ グ ラ ム 2010― 」
(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/ip_ka/pdf/060913
_2_2.pdf)p.6。
18
構 造 的 規 制 が 機 能 し 難 い こ と に 加 え 、 HHI で は 測 定 で き な い 競 争 が 働 い て い る こ と が
当該市場の特徴でもある。
19
規 制 緩 和 後 も 旧 国 営 企 業 の 市 場 シ ェ ア 1 位 が 不 適 切 の 如 く 指 摘 さ れ て い る が 、当 該 企 業
は 2 番手以降でなければならないとすれば、他事業者の傲慢と言わざるを得ない。
20
前 提 条 件 と し て ① 第 二 種 指 定 電 気 通 信 設 備 を 設 置 し て い る 電 気 通 信 事 業 者 、② 当 該 電 気
通 信 事 業 者 の 最 近 1 年 間 に お け る 収 益 の 額 の 市 場 に 占 め る 割 合 が 25%を 超 え て い る 場 合 に
お い て 、③ 市 場 シ ェ ア の 推 移 そ の 他 の 事 情 を 勘 案 し て 行 わ れ る 。そ の 基 本 的 考 え 方 は 、① 当
該 電 気 通 信 事 業 者 が 一 定 期 間 継 続 し て 40%を 超 え る 高 い 市 場 シ ェ ア を 有 す る 場 合 に は 、市 場
支 配 力 が 推 定 さ れ る こ と か ら 、下 記 ③ で 説 明 す る 諸 要 因 を 勘 案 し た 結 果 、特 段 の 事 情 が 認 め
ら れ な い 限 り 指 定 す る 。 ② 一 定 期 間 継 続 し て 25%を 超 え 40%以 下 の 市 場 シ ェ ア を 有 す る 電
気 通 信 事 業 者 が 存 在 す る 場 合 に お い て 、 (ア )当 該 電 気 通 信 事 業 者 の 市 場 シ ェ ア が 1 位 で あ る
場 合 、当 該 市 場 シ ェ ア の 水 準 及 び 下 記 ③ で 説 明 す る 諸 要 因 を 勘 案 し た 結 果 、特 に 市 場 支 配 力
が 推 定 さ れ る 場 合 に 限 り 指 定 す る 。 (イ )当 該 電 気 通 信 事 業 者 の 市 場 シ ェ ア が 2 位 以 下 で あ る
場 合 、市 場 シ ェ ア の 順 位 が 1 位 の 電 気 通 信 事 業 者 と の 市 場 シ ェ ア の 格 差 が 小 さ く 、か つ 、下
記③で説明する諸要因を勘案した結果、特に市場支配力が推定される場合に限り指定する。
③ 上 記 ① 及 び ② の 考 え 方 を 基 本 と す る が 、そ の 際 に は 、例 え ば 以 下 の よ う な 当 該 電 気 通 信 事
業 者 の 総 合 的 な 事 業 能 力 を 測 定 す る た め の 諸 要 因 も 踏 ま え 、総 合 的 に 判 断 す る (事 業 規 模 (資
本 金 、 収 益 、 従 業 員 数 )、 市 場 へ の 影 響 力 ・ ブ ラ ン ド 力 、 製 品 ・ サ ー ビ ス の 多 様 性 、 潜 在 的
な 競 争 の 不 在 、技 術 上 の 優 位 性・卓 越 性 、需 要 及 び 供 給 の 代 替 性・価 格 の 弾 力 性 、サ ー ビ ス
や端末等の販売・流通における優位性、共同支配) 。
総 務 省 「 電 気 通 信 事 業 法 第 30 条 第 1 項 の 規 定 に 基 づ く 禁 止 行 為 等 の 規 定 の 適 用 を 受 け る 電
気 通 信 事 業 者 (移 動 通 信 分 野 に お け る 市 場 支 配 的 な 電 気 通 信 事 業 者 )の 指 定 に 当 た っ て の 基 本
- 18 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
的 考 え 方 」 (http://www.soumu.go.jp/main_content/000157531.pdf)
21
MNO 利 用 者 の 多 く は 、月 3 ギ ガ バ イ ト 以 内 の 通 信 料 内 に 収 ま る と さ れ て い る 。そ の 際
の 定 額 料 金 と 基 本 料 金 他 を 合 算 す る と 、5,000 円 程 度 で あ る 。こ れ に 対 し て MVNO は 、月 2
~ 3 ギ ガ バ イ ト で MNP が 可 能 な 音 声 通 話 を 有 し 、 2,000 円 程 度 で 提 供 可 能 で あ る 。 利 用 条
件 が 同 等 で あ れ ば 半 額 以 下 の 利 用 も 可 能 で あ り 、 MNO に と っ て は 競 合 す る MNO 以 上 に 脅
威である。
音 声 通 話 が 可 能 な 主 要 MVNO の サ ー ビ ス 概 要 (2015 年 10 月 1 日 時 点 )
MVNO
月額料金 通信規制 通信制限時通信速度 最低利用年数
U-NEXT
1,580円
3GBまで
200kbps
6ヶ月
フュージョン・
1,600円 3.1GBまで
200kbps
12ヶ月
コミュニケーションズ
ビッグローブ
1,600円
3GBまで
200kbps
12ヶ月
NTT
1,800円
3GBまで
200kbps
6ヶ月
コミュニケーションズ
日本通信
1,980円
3GBまで
200kbps
5ヶ月
*各 事 業 者 共 通 で 初 期 費 用 と し て 事 務 手 数 料 3,240 円 、 音 声 通 話 料 金 30 秒 /21 円 を 要 す る 。
**通 信 制 限 解 除 は オ プ シ ョ ン と し て 用 意 さ れ る が 、 各 事 業 者 で 価 格 は 異 な る 。
出所:各事業者のウェブページ。
22
岡 本 剛 和 ・ 中 村 彰 宏 「 我 が 国 に お け る 通 話 サ ー ビ ス の 利 用 形 態 に つ い て の 考 察 ― LINE
等 の 音 声 通 話 ア プ リ ケ ー シ ョ ン 等 の 受 容 性 及 び 利 用 動 向 並 び に LINE 等 の 音 声 通 話 ア プ リ
ケ ー シ ョ ン 、 3G/LTE 携 帯 電 話 に よ る 通 話 及 び 固 定 通 話 等 の 関 係 ― 」
(http://www.jotsugakkai.or.jp/doc/forum2014/a1_okamoto.pdf)情 報 通 信 学 会 2014 年 度 秋
季個人研究発表。
23
田 中 [1987]pp.78-79。
24
総 務 省 「 2020 年 代 に 向 け た 情 報 通 信 政 策 の 在 り 方 」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000328197.pdf)pp.5-6。
25
料 金 プ ラ ン や 事 業 者 に よ り 異 な る が 、MVNO が 供 給 す る 1GB あ た り の 単 価 は 数 百 円 で
あ る 。た と え ば 、NTT コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ズ の 容 量 追 加 オ プ シ ョ ン は 500 円 (0.5GB)で あ り 、
ド コ モ の 類 似 サ ー ビ ス・速 度 規 制 解 除 は 2,500 円 (2GB)が 設 定 さ れ て い る 。そ れ ぞ れ 1GB あ
た り の 単 価 は 1,000 円 前 後 で あ り 、 先 の MVNO も 踏 ま え れ ば 相 場 は 数 百 円 か ら 1,000 円 程
度 で あ る 。 携 帯 電 話 が 広 く 一 般 的 に 普 及 し た か ら こ そ 1GB 単 位 の 柔 軟 な 料 金 設 定 が 必 要 で
あ り 、 MVNO の 脅 威 を 考 慮 す れ ば 、 MNO は 前 向 き に 検 討 し な け れ ば な ら な い 。
参考文献:
1.
依 田 高 典・ 根 岸 哲 ・林 敏 彦『 情 報 通 信 の 政 策 分 析 ― ブ ロ ー ド バ ン ド・ メ デ ィ ア ・コ ン テ
ン ツ 』 NTT 出 版 、 2009 年 。
2.
川濱昇・大橋弘・玉田康成『モバイル産業―その発展と競争政策―』東京大学出版会、
2010 年 。
3.
岸 井 大 太 郎・鳥 居 昭 夫『 情 報 通 信 の 規 制 と 競 争 政 策 ― 市 場 支 配 力 規 制 の 国 際 比 較 ― 』白
- 19 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
桃 書 房 、 2014 年 。
4.
実 積 寿 也 『 通 信 産 業 の 経 済 学 2.0』 九 州 大 学 出 版 会 、 2010 年 。
5.
柴 田 怜「 ポ ス ト モ バ イ ル ビ ジ ネ ス 活 性 化 プ ラ ン の 弊 害 」(富 山 短 期 大 学『 紀 要 』第 49 巻 、
2014 年 )pp.57-70。
6.
総 務 省 『 情 報 通 信 白 書 (各 年 版 )』 ぎ ょ う せ い 。
7.
田 中 一 昭 「 政 府 規 制 の 緩 和 を ど う 進 め る か 」 (公 共 選 択 学 会 『 公 共 選 択 の 研 究 』 No.10、
1987 年 )pp.76-82。
8.
テ レ ケ ー ブ ル 新 聞 社「 第 83 回 CRI フ ォ ー ラ ム ― CATV+高 速 モ バ イ ル 通 信 (MVNO)に よ
る 新 た な 事 業 展 開 を 考 え る ― 」 (『 月 刊 衛 生 &ケ ー ブ ル テ レ ビ 』 2010,4)pp.49-51。
9.
リ ッ ク テ レ コ ム 『 テ レ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 』 第 31 巻 第 8 号 、 2014 年 。
インターネット資料:
1.
一 般 社 団 法 人 テ レ コ ム サ ー ビ ス 協 会 ・ MVNO 委 員 会
(http://www.telesa.or.jp/committee/mvno_new/)
2.
岡 本 剛 和 ・ 中 村 彰 宏 「 我 が 国 に お け る 通 話 サ ー ビ ス の 利 用 形 態 に つ い て の 考 察 ― LINE
等 の 音 声 通 話 ア プ リ ケ ー シ ョ ン 等 の 受 容 性 及 び 利 用 動 向 並 び に LINE 等 の 音 声 通 話 ア
プ リ ケ ー シ ョ ン 、 3G/LTE 携 帯 電 話 に よ る 通 話 及 び 固 定 通 話 等 の 関 係 ― 」
(http://www.jotsugakkai.or.jp/doc/forum2014/a1_okamoto.pdf)情 報 通 信 学 会 2014 年
度秋季個人研究発表
3.
北俊一「移動通信市場の現状と展望」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000282459.pdf)
4.
総 務 省 「 MVNO サ ー ビ ス の 利 用 動 向 等 に 関 す る デ ー タ の 公 表 」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000362104.pdf)
5.
総務省「次世代移動体通信システム上のビジネスモデルに関する研究会報告書」
(http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.soumu.go.jp/joho_tsusin/pressrele
ase/japanese/joho_tsusin/010626_1-1.pdf)
6.
総 務 省「 電 気 通 信 サ ー ビ ス の 契 約 数 及 び シ ェ ア に 関 す る 四 半 期 デ ー タ の 公 表 (平 成 26 年
度 第 4 四 半 期 )」 (http://www.soumu.go.jp/main_content/000364681.pdf)
7.
総 務 省 「 電 気 通 信 事 業 分 野 に お け る 競 争 状 況 の 評 価 2012」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000247827.pdf)
8.
総 務 省 「 電 気 通 信 事 業 分 野 に お け る 競 争 状 況 の 評 価 2013」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000319667.pdf)
9.
総 務 省 「 電 気 通 信 事 業 分 野 に お け る 競 争 状 況 の 評 価 2014」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000379089.pdf)
10.
総 務 省 「 電 気 通 信 事 業 法 第 30 条 第 1 項 の 規 定 に 基 づ く 禁 止 行 為 等 の 規 定 の 適 用 を 受 け
る 電 気 通 信 事 業 者 (移 動 通 信 分 野 に お け る 市 場 支 配 的 な 電 気 通 信 事 業 者 )の 指 定 に 当 た っ
ての基本的考え方」
- 20 -
富山短期大学紀要第 51 巻(2016.3)
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000157531.pdf)
11.
総 務 省 「 2020 年 代 に 向 け た 情 報 通 信 政 策 の 在 り 方 」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000328197.pdf)
12.
総 務 省 「 平 成 26 年 度 電 気 通 信 サ ー ビ ス に 係 る 内 外 価 格 差 に 関 す る 調 査 」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000370610.pdf)
13.
総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒック総量の把握」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000316564.pdf)
14.
総 務 省・情 報 通 信 統 計 デ ー タ ベ ー ス「 ブ ロ ー ド バ ン ド サ ー ビ ス 等 契 約 数 の 推 移 (四 半 期 )」
(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/new/index.html)
15.
総 務 省 総 合 通 信 基 盤 局 「 MVNO に 係 る 電 気 通 信 事 業 法 及 び 電 波 法 の 適 用 関 係 に 関 す る
ガ イ ド ラ イ ン 」 (http://www.soumu.go.jp/main_content/000249943.pdf)
16.
内閣府「中間とりまとめ ―経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革―」
(http://www8.cao.go.jp/kisei/siryo/020723/4-b.pdf)
17.
内 閣 府 ・ 総 合 規 制 改 革 会 議 「 中 間 と り ま と め ―経 済 活 性 化 の た め に 重 点 的 に 促 進 す べ き
規 制 改 革 ―」
(http://www8.cao.go.jp/kisei/siryo/020723/4-b.pdf)
18.
日 本 通 信 株 式 会 社 「 2015 年 3 月 期 (第 19 期 )第 2 四 半 期 決 算 説 明 会 資 料 」
(http://www.j-com.co.jp/ir/pdf/shiryo_20141031.pdf)
19.
Google ト レ ン ド (https://www.google.co.jp/trends/)
20.
IP 化 の 進 展 に 対 応 し た 競 争 ル ー ル の 在 り 方 に 関 す る 懇 談 会 「 IP 化 の 進 展 に 対 応 し た 競
争 ル ー ル の 在 り 方 に つ い て ― 新 競 争 促 進 プ ロ グ ラ ム 2010― 」
(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/ip_ka/pdf/06
0913_2_2.pdf)
21.
MCA「 MVNO×格 安 ス マ ホ ×中 古 端 末 が も た ら す 新 領 域 市 場 の 動 向 と 将 来 予 測 2020」
(http://www.mca.co.jp/pay_contents/FormMail/2015_MVNO&SIM&used.html)
22.
NTT ド コ モ 「 報 道 発 表 資 料 」
(https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2014/03/24_00.html#notice0101)
(平 成 27 年 10 月 30 日 に ア ク セ ス )
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