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競争ルール/消費者保護ルール見直し - Nomura Research Institute
NRI K NOWLEDGE INSIGHT 2015 JAN. VOL.36 Copyright ⓒ 2015 Nomura Research Institute, 当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断 Ltd. All rights reserved. No reproduction or 転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の 著作権法及び国際条約により保護されています。 republication without written permission. 1 競争ルール/消費者保護ルール見直し ICT・メディア産業コンサルティング部 北 俊一 上席コンサルタント ている。つまり、関西以外の地域では、 おり、また、その光ファイバーはいわゆるボ ル及び 消 費 者 保 護ルールの見 直しは、 競争事業者が“本気で”設備投資を挑んで トルネック設備であるため、適正性・公平性・ 参入によって市場に新たな付加価値を創出 2014年2月に総務省情報通信審議会から いないことが、NTT東西のシェア高止まり 透明性を確保した上で、光サービス卸の提 するためには、市場の動向を常に注視しな 3 諮問を受けた「2020-ICT基盤政策特別部 を招き、それが規制をかけ続けるための言 供を行うことが求められる。 がら、スピード感を持って柔軟に制度設計・ 消費者保護ルール見直しの中で、最大 しで回線の「2年縛り」契約を解除でき 会」において検討が行われ、12月に答申 い訳になっているのではないか、という見 FVNOとなる事業者は、通信事業者に 変更を行うという、新たな政策的手法が必 の争点となったのが、いわゆる「クーリング る期間を現行の1ヶ月から2ヶ月に延長 がなされた。現在、2015年通常国会での 方である。 留まらないということも重要な点である。例 要となる。 オフ」導入の是非である。 すること、TCAの中に消費者からの苦情・ 電気通信事業法改正に向けた制度設計が 設備競争事業者については、多大な設 えば、アマゾンドットコムやカルチャー・コン 相談窓口を設置し、内容を分析して業界 行われている。 備投資を要することを考えると、今後その ビニエンス・クラブなど、映像サービスを 数の高止まりに業を煮やした内閣府消費者 の標準ルール作りに着手すること、端末 今回のルール見直しにおいて、総務省 数が増えるとは期待できない。このような OTT* にて提供するプレイヤーが、オリジナ 2 電気通信サービスに係る苦情・相談件 委員会からの要請に応える形で、 「販売形 の電波状況を事前に確認できる「試用 および有識者たちは、2020年代に向けた 膠着状況において、固定ブロードバンド市 ルタブレット端末+MVNO* +FVNO+映 モバイル市場の競争ルールにも大きな転 態によらず、クーリングオフを導入することが サービス」を提供することを現在検討中 我が国のICTグローバル競争力強化のた 場における競争を促進させるためには、設 像サービスをパッケージ化して提供すること 換があった。モバイル市場は、NTTドコモ、 適当」という文言が中間とりまとめに盛り込 である。 め、通信事業者への規制を緩和すると同 備競争に過度に拘らず、サービス競争を活 も可能となる。 KDDI(au) 、ソフトバンクモバイルの3社に まれた。 また、携帯電話販売代理店は大手12 時に、消費者保護の一層の強化を図ると 性化させる政策が必要となる。 その一方、大手携帯電話事業者による よって、エリアカバー率やデータ通信速度を それに対して、携帯電話の販売代理店 社を母体として、2014年12月15日付で いう、極めて難しい舵取りを求められること この状況を打ち破る取組みとして、2014 光サービス市場の寡占化が懸念される。 激しく競い合う設備競争が行われながら、 有 志と、 通 信 事 業 者の業 界 団 体である 「全 国 携 帯 電 話 販 売 代 理 店 協 会 になった。 年5月、NTT自らが、世界初の光アクセス NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモ ドコモへの非対称規制により、契約数シェ 電気通信事業者協会(TCA)を中心に、 (NAMD)」を設立し、携帯電話事業者 のサービス卸となる「光コラボレーションモ バイルの大手3社が、多額のキャッシュバッ アが拮抗し、“協調的寡占状態”にあるとの 携帯電話の店頭販売へのクーリングオフは、 や総務省と歩調を合わせながら、苦情・ デル 」 を 発 表した。 多 様 な 事 業 者 が クなど過度な販売奨励金競争を行うことに 見方がなされている。この市場にさらなる 現場への影響があまりにも大きいことから、 相談の分析と対応を行っていくことを表 「FVNO* 」となり、自社のサービスと光サー なれば、既存の電力系通信事業者やケー 競争と新たな価値創造をもたらすための政 導入除外を求める陳情が再三再四行わ 明している。 固定ブロードバンド市場は、NTT東日本 ビスを組み合わせて販売することにより、新 ブルテレビ事業者はもちろん、今後FVNO 策として、MVNOビジネスの活性化が改め れた。 およびNTT西日本(以降、両社を合わせ たな価値創造を図ろうというものである。こ として参入が期待されるOTTプレイヤーや、 て掲げられた。 最終的には、 「端末」については当面の てNTT東西とする)の光ファイバーのアクセ こではNTT東西は「黒子」となる。 他産業の多様なプレイヤーたちも駆逐され この政策は、光ファイバー市場と同様に 対象から除外されることになったものの、 「回 4 ス回線数シェア(設備シェア)が約78% もちろん、NTT東西には、電気通信事 る可能性がある。 今後基地局をゼロから整備して設備競争を 線」については販売形態によらず導入され 2020年代に向けたICT業界発展の要諦 (2014年3月末) 、契約数シェア(サービス 業法第30条の禁止行為規制が課せられて 携帯電話事業者による固定・移動市場 行う事業者の出現はもはや期待できないた ることとなった。加えて、クーリングオフとい は、「多様性」と「コラボレーション」 シェア)は約71%(2014年6月末)と高止 め、サービス競争を活性化するしかない、 う名称は「イメージが悪い」ということから、 である。通信事業者が、業界を超えた多 まりのまま、過去数年ほとんど変化が見ら という考え方に基づいている。 れない。KDDIや電力系通信事業者など MVNOビジネス活性化に向けて、ユー 換えられることになった。 ユーザーに対して新たな付加価値を共創 の設備競争事業者からは、 「NTT東西の ザーがMVNOに乗り換える際に、都度端 そもそも、なぜこのような事態に陥っ していく。すなわち、 「価格競争」から「価 末を買い換える必要のないよう、2015年5 てしまったのか。その理由は、行きすぎ 値共創」への転換である。その成功の大 月以降に販売される携帯電話端末からSIM たユーザー獲得競争に伴う不健全・不誠 前提となるのは、通信業界への信頼の早 ロック解除が義務化されることとなった。こ 実な販売の横行により、消費者委員会、 期回復である。 我が国の電気通信市場における競争ルー 1 固定ブロードバンド市場の活性化 ~光コラボレーションによる価値創造~ 2 3 1 シェアは高く、市場支配力も依然として強 A いことから、非対称規制をかけ続けるべき」 B C D 䠗♣ との意見が出された。 モバイル市場のさらなる活性化 ~SIMロック*4 解除の義務化~ 消費者保護ルールの見直し ~初期契約解除ルールの導入~ 「初期契約解除ルール」という名称に置き FVNO FVNO れによって、例えばソフトバンクの端末に、 消費者庁から「通信業界は自浄作用の効 NTTドコモのMVNOのSIMカードを挿して かない業界である」とのレッテルを貼ら MVNO MVNO 使えるようになる。 れたことにある。高齢者や知的障がい者 本の78.5%に対して西日本では66%と大き SIMロック解除義務化により、携帯電話 に必要のない端末やサービスを売りつけ な開きがある。関西地域における特徴とし 端末の修理・再生ビジネスや中古端末販 る、端末販売価格をゼロ円にする条件と 売ビジネスなどの周辺事業の拡大も期待さ してたくさんのアプリを抱き合わせて販 れる。 売する、MNP*5 によって一人10万円を 一方、有識者からは、設備競争事業者 FVNO の努力不足が指摘された。NTT東西の光 ファイバーにおける契約数シェアは、東日 MVNO ては、関西電力子会社のケイ・オプティコ ムおよびケーブルテレビ事業者が、設備競 1 の寡占を回避しつつ、多様なプレイヤーの EC EC EC 争の上でのサービス競争を行っており、 超えるキャッシュバックを行う、といっ NTT西日本の契約数シェアは50%を割っ たことが原因で、苦情・相談件数が増加 した。それに対して、業界として真摯な 対応を怠ってきた報いを受けたのである。 このため携帯電話事業者は、違約金な 「価格競争」から「価値共創」へ 様なプレイヤーと協業しながら、エンド *1 Fixed Virtual Network Operator:仮想的固定通信事業者 *2 Over the Top:通信事業者のサービスによらず、動画 データや音声データなどを提供すること *3 Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通 信事業者 *4 利用者識別を行うICカード(SIMカード)に対応した携 帯電話端末で、特定の通信事業者(キャリア)のカードしか 利用できないようにかけられている制限のこと *5 Mobile Number Portability:事業者間番号移動制度 2