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日本友和会・21世紀初頭における課題 ~二〇〇六年四月 総会での

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日本友和会・21世紀初頭における課題 ~二〇〇六年四月 総会での
日本友和会・21世紀初頭における課題 ~二〇〇六年四月
総会でのメッセージ~
新理事長
橋本
左内
1 世界は無自覚に存亡の危機に直面している
今この瞬間も、イラクで無用の戦争が強行され、殺人と破
壊と憎しみが増殖されています。この無用にして有害な戦争
は、「イラクに大量破壊兵器がある」というガセネタを「錦の御
旗」にした「ブッシュ大統領の戦争」政策から始められました。
すでに米国政府自らが、それがガセネタであったことを認め
たのですから「大義」を失った戦争は即時中止すべきであり
ます。しかし、元々はアメリカの石油メジャーの戦略から起こ
されたものでありますから、利権の確保が担保されるまで
は、引き上げることはしないのです。ベトナム侵略戦争の場
合も同様でありました。政府とマスコミにたやすく騙されたア
メリカ国民が、戦死者の数が忍耐の限界を超えるまで目覚め
ることがなかったのでした。
冷戦が終結した段階で、世界は平和に向かうものと人類は
期待していましたが、「冷戦」を造り出した「戦争勢力」は次の
一手を編み出しました。アメリカによる「一極支配」という方法
です。そして「錦の御旗」は「反テロリズム」というまことしやか
なスローガンです。日本の多くの市民も、この宣伝文句にコ
ロリと騙されています。しかし、私たちはここで立ち止まって、
歴史を動かしている悪の「主役」を見破る必要があります。
「アラビアのローレンス」(イギリス石油メジャーの傀儡)の暗
躍いらい、エネルギーによる利潤を独占する者が世界を制覇
するという戦略は不変であり、石油が今も主役です。そして限
りある石油の次世代の担い手として核エネルギーが秘密裏
に開発される途上で、副産物として原子爆弾が開発され、日
本降伏のためには全く必要がないのに、対ソ戦略上から無辜
の広島・長崎の市民=非戦闘員の上に作戦行為として投下
されたのでありました。
チェルノブイリ原発の事故いらい「原発の安全神話」は完全
に崩壊しました。しかし、メジャー産業に牛耳られた日本政府
はあらゆる手練手管を弄して、助成を必要とし・かつ反対運
動が小さいと見られる過疎地を選んで建設してきました。若
狭で・美浜で一基の「チェルノブイリ型事故」が起こるならば、
狭くて人工稠密な日本には彼の地とは比較を絶する地獄が
現出され、経済も政治も停止し、滅亡の淵に立たされること
は避けられません。これらの「危機」は主に「政府の行為」に
よって造り出されたものでありますが、国民の大多数が「化石
燃料」の大量消費と資本主義産業が利潤本位で造り出す消
費・宣伝文化に丸乗りさせられて来たことに今一つの原因が
あります。マックスヴェバーが「ピューリタニズムの鬼子」と規
定した資本主義が、今や NBC(核兵器・細菌兵器・化学兵器)
の宇宙的モンスターに成長して、地球温暖化と遺伝子破壊
ホルモンと放射能とで地球滅亡へ急旋回しています。今こ
そ、デイビッド・ソローが提唱した「自然と共に生きる」生活ス
タイル、仏教が教えた「少欲知足」の経済を回復すべき秋で
あります。
2 日本の為政者は憲法の放棄へ暴走している
日本国憲法に戦争放棄が盛り込まれたことは「奇跡」とも言
うべき歴史の綾でありましたが、単に「綾」という文学的表現
では済まされない、第2次世界大戦終結時に渦巻いたどす黒
い世界戦略の駆け引きの中での「落としどころ」でもありまし
た(拙著『国民学校一年生 ある少国民の戦中・戦後』エルピ
ス刊参照)。幣原首相提案の「戦争放棄」は「天皇制」存続と
の取引で決着しています。それゆえに、「国民主権」の憲法の
第1章(冒頭)に、将来、主権を脅かすであろう「天皇」が挿入
されました。私は、これを「日本国憲法の中の『トロイの木馬』
である」と指摘してきました(上掲書)。それは、日本の民主主
義を徹底させないための、アメリカ支配層のアングロ・サクソ
ニズム(植民地に君主制を残すことによる民主主義の不徹底
策)と、日本の官僚体制(天皇制を護持することによる民主主
義の不徹底維持)との「共同戦略」でありました(ジョン・ダワ
ー著『敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本人 上・下』岩
波書店参照)。
今や、戦争放棄の「9条」を主なターゲット」にしながらも、
天皇元首化を目論む勢力も「改憲」という名の「憲法改悪」へ
翼賛体制ともいうべき(民主党も巻き込んで)状況を作り出し
ています。野党時代は、憲法五原則を主張していた公明党
も、自己保身を図る必要から政権党にすり寄よって与党にな
ったために、党是であった原則を放棄して、憲法改悪に翼賛
している状態です。これは歴史の前例からしても、政治と宗
教の野合による平和の破壊につながる危険な事態でありま
す。
昨年十一月二十二日に公にされた、自民党の「新憲法草
案」は、上に見たアメリカの一極支配と日本支配層の本音
を、殆どむき出しにしています。①七〇年にわたる戦争の惨
禍の反省から、人類史の悲願の結晶として制定された「憲法
前文」を全文削除して、「戦争をする国」「基本的人権のない
国」「国際平和を誠実に希求しない国」へ逆行する。②第9条
2項を削除して、「自衛軍」を設け、「戦力」を保持し、「交戦権
を認める」国へ逆行する。
③「草案」9条3項の「公の秩序を維持し」は、12条の「公益の
秩序に反しないように」と相乗して「旧・治安維持法」のように
国民を束縛し弾圧する。④さらに76条3項では「軍事裁判
所」を設置し、反戦・基地反対行動なども抑圧される。⑤第2
0条(信教の自由)の3項に社会的儀礼又は習俗的行為の範
囲を超える」活動はできないと、まことしやかに述べながら、
その「範囲内」に靖国神社公式参拝を滑り込ませる意図が隠
されている。⑥その上に、「共謀罪」まで設けて、平和や自由
を求める集会すら弾圧しようとしており、「戦争をする」政府は
「基本的人権」を認めないものであることを露骨に示してい
る。
人類最初に「戦争放棄」を宣言したのは旧約の預言者ミカと
イザヤであると承知していますが、仏教でも2世紀の『無量寿
経』で「国富民安 兵戈無用」を明らかにしています。インマヌ
エル・カントの『永久平和のために』をはじめとし、フランス憲
法(1791年)、
不戦条約(1928年)、大西洋宣言(1941年)、ポツダム宣言
(1945年)と積み重ねてきた「戦争放棄」への人類の悲願は
「国連憲章」に結晶されました。そして、核戦争の決定的惨禍
の反省を経て、より徹底した日本国憲法が産み出されたので
あります。
3 日本友和会の本領発揮の出番が待っている
上述のように、人類は戦争を発明していらい、その廃絶を
求めながら二回に及ぶ世界大戦を防ぐことができず、遂に核
戦争という「文明が速かに戦争を全滅をしなければ、戦争が
先ず文明を全滅するでありましょう。私は斯様な信念を以っ
て此の憲法改正の議に与ったのであります」と当時の幣原喜
重郎副首相は一九四六年八月二七日の憲法制定議会で明
言しています。その答弁の前の節では、次のように預言者に
共鳴する発言をしています。
「第九条は戦争の放棄を宣言し、我が国が全世界中最も徹底的な平
和運動の先頭に立って指導的役割を占めることを示すものである。
今日の時勢になお国際関係を律する一つの原則として、或る範囲の
武力制裁を合理化、合法化せんとするが如きは、過去に於ける幾多
の失敗を繰り返す所以であって、最早我が国の学ぶべきところでは
ない」。
改めて、この文言とミカの預言とを対比して読み取りたいと
思います。
「彼らは剣を打ち変えて鋤とし、
槍を打ち変えて鎌とし、
国は国に向かって剣を上げず
最早や戦争することを学ばない」(4章3節、1部試訳)
紀元前8世紀後半に、帝国間の戦争で災難を受けた民衆
の立場を代弁して「戦力の不保持と戦争放棄」のヴィジョンを
掲げたミカやイザヤの願いを、約二七〇〇年後の、文明国の
国会が成文憲法の中に取り入れていることを私たちは「摂
理」と受け止めて然るべきであると思います。ミカやイザヤと
同じ預言者の系譜に立って、同質の預言をしたイエスはロー
マ帝国とユダヤ属国との共謀によって抹殺されましたが、私
たちの先達は「抹殺された事態」の中に人類の指針と希望と
を読み取って、「キュリオス=イエスース(イエスは救世主で
ある=カエサル〈皇帝〉ではない)」と告白・宣言したのであり
ました。そして、二十一世紀の今こそ、私たちは「この預言者
の系譜」に属することに確信と誇りとをもって立ち現れるべき
であると思います。
一九一四年に第一次世界大戦の危機のなかで出発した友
和会(Fellowship of Reconciliation)は、一九二〇年ロンドン
での年会で次のように宣言しています。
私たちは、キリスト教が世界に向かってこういうべきだと信じる。すな
わち、あなたがたが武装に依存することは誤りであり、無益である。
武装とは組織された暴力と暴行の道具であり、それらを使用すること
は、よき生活へのまことの法則を否定するものであり、闘争を永続化
させ、人間のまことの交わりをさまたげ、人を貧困にみちびき、邪悪
にいざない、猜忌と、恐怖と、それから生まれる悲劇をかもし出すも
のである。それゆえ、キリスト者の倉庫に許さるべき道具ではな
い。」(阿部知二著『良心的兵役拒否の思想』岩波新書)。
今こそ、私たちは「誤りであり、無益である」「武装に依存す
る」アメリカの一極支配とそれに追随する日本政府に対して、
「悲劇をかもし出している」戦闘と武装と兵器産業に依存した
「ピューリタンの鬼子」としてのコングロマリット(産・軍・学複合
体制)の平和産業への転換を提唱すべきであります。
4 世界をリードする新方針が求められている
日本友和会は一九二六年(大正十五年)に結成されてい
らい、十五年戦争の試練の中で少数の非戦平和の実践例を
除いて大政翼賛の罪を犯しました。その反省・懺悔を込めて
国民主権・戦争放棄・基本的人権・民主主義・地方自治を基
調とする日本国憲法に賛同し、その後の日本政府の逆コー
ス政策に反対して今日まで絶対非戦平和主義の運動を続け
てきました。そうした、戦後の平和責任の歩みの積み重ねの
発展として、二〇〇四年に開催された全国大会において、ア
メリカFORの理事長エド・マクマナス夫妻とワリド・シアム駐
日イラク大使をお招きしてシンポジウムを開き、イラク戦争の
根本原因の認識と、平和のための共同行動において完全に
意見の一致を見ましたことは画期的な成果でありました。こ
の戦争当事国の政府代表と平和運動団体の代表との合意を
大切なマニフェストとして当事国人民に知らしめるとともに、
世界の良心に届ける責務があります。今年度の出版・宣伝の
課題として位置づけ、その普及・学習の徹底に尽力すること
は、IFOR九〇年の歴史の中でも大切な意義を持ち世界平
和への貢献になるものと信じます。
さらに、二〇〇五年、昨年の原水爆禁止世界大会(現時点
で二つの系統に分かれて開かれている)の二つの大会に、ア
メリカ FOR の代表八名が参加され、「核兵器禁止と九条の遵
守」を訴えたアメリカ大統領と小泉首相に宛てた数千筆の署
名を当局に提出して訴えたことは画期的な実践でありまし
た。この大会へのアメリカ代表の参加は毎年実現できるよう
に相互協力することが大切であります。また、平和憲法に反
して調印されたに日米安全保障条約によって日本全土に配
備・駐留されている「戦争をするための」米軍基地の撤退を
求める相互理解に基づく取り組みも追求されなければならな
い課題であります。政府の間違った戦争政策に協力すること
によって、イラクの無辜の市民を殺傷し、生活と文化を破壊
し、アメリカの有為の青年の多数を死と麻薬中毒と自殺に追
い込んでいる実情から一日も早く脱却させることは急務であ
ります。また、日本政府が憲法に違反して自衛隊をイラクに
派兵し、インド洋上で給油という「後方支援(ロジステイック)」
を行うがゆえに戦闘行為が可能になっているのですから、日
本はイラク侵略戦争の共犯者であります。この国際的無法を
止めさせるためにも、日米両国の非戦平和運動の共同行動
が緊急に強く求められていることを認識して「戦争を止めよ!
行動(Stop War Mobilization)」の提起が求められていると思
います。
ちょうどこの秋にあたって、IFOR(世界友和会)総会(大会)
が日本の東京で開かれます。この時間的な一致は偶然でな
く、これまでに先達が積み重ねて来られた実践の発展のもた
らした成果であると考えます。覇権主義者が強行してきた世
界戦争と之に命と生活を賭して反対してきた「良心的兵役拒
否」の伝統を保持するIFORが、日本における総会におい
て、世界史に残る決定をし、宣言するために、日本友和会が
開催国側としての環境整備のみでなく、審議内容とその決定
においても大切な貢献ができるように、上述の諸課題につい
て、十分の学習と討議とを重ねて臨み、リーダーシップを発
揮することが要請されていると自覚するものであります。
5 「変革・連帯・前進」で使命に応えよう!
結成いらい約八〇年になる日本友和会は、各側面で変革
が求められています。
一つには、これまでは、キリスト教関係の個人で構成され
てきた会員組織も、M・R・キング牧師の実践にみられるよう
にヒンズー教徒であったマハトマ・ガンデイーを限りなく敬慕
し、宗教教派を超えて連帯していたことは、すでに世界のFO
R運動の常識になっています。この点では、規約委員会にお
いて調査・研究に基づいて、全ての市民が崇高な理念におい
て参加できる新しい組織方針・規約を作成し、次年度総会に
提起できるようにしたいと願います。
二つには、若い担い手の発掘・養成・登用です。日本全体
が高齢化していますので、あらゆる分野で「若者の不在・欠
乏」が訴えられていますが、この現象は従来の幹部や活動家
が信仰における原理主義的傾向や、活動における経験主義
的傾向を改善できなかったことも原因の幾つかになっている
ことを謙虚に認め、「先ず隗より始めよ」を実行すべきではな
いでしょうか。また、若い世代の者も「自分は未経験だから」と
いう消極的謙遜にとどまるのでなく、内心に示される真理の
光に従い、併せて諸科学を学習することによって年齢・性別
を超えて真実である真理に従って積極的謙遜の道を歩むべ
きでありましょう。
三つには、以上の二つが活きて働くならば必然的に前進
的プログラムが創出されて、会員全体が活発に活動するよう
になることは幾つもの先進例が証明しています。各種委員会
をワークショップとして関心と特技を持つものが結集して、個
性のある生き生きした活動を生み出すでしょう。また、自らに
示されている(召命と信じる)活動課題を披瀝して仲間を糾合
して新しい各種委員会を開拓することが積極的に保障される
べきでありましょう。
四つには、民主主義の確立・会議制の徹底であります。連
帯・団結の要は会議制を十分に機能させることです。従来と
もすれば、信仰を同じくするグループ内で保たれていた運営
方法が会議の中にまで影響を与え、会員の総意を結集でき
ないままに決定実施されるという問題点があり、民主的運営
に支障を来たした場合がありましたが、ここ数年の努力によ
り、改善されて歩み出していますので、この傾向をさらに豊か
なものへと成長させていくべきでありましょう。
新しい時代における日本友和会は、信仰のグループや個
人だけではなく、諸宗教とともに連帯して歩む方向を見据え
ていますが、そのためには各宗教・教派は夫々の宗教・教派
の優れて高貴で豊かな信仰と品性において互いに裨益しあ
うべきであり、セクト的な心性や行動様式を乗り越えていなけ
ればなりません。また、信仰を持たない人々とも対話と共同
が可能な開かれた精神と態度が俟たれています。その意味
でも、あらゆる「隔て中垣が」取り払われた真の「和解の立
場」を確立していなければならないでしょう。「キリストは私た
ちの平和であって、二つのものを一つにし、敵意という隔ての
中垣を取り除き、御自分の体において、規則と戒律で不自由
になっている律法を廃棄されました」(エフェソへの手紙2・1
4)すべての人々の間に建てられた「隔ての壁」を寛容と愛の
実践を通して取り去り、和解に基づく平和を創造する
FELLOWSHIP を広く厚く築きましょう!
完
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